JP3558356B2 - 眼用レンズ製作用材の搬送装置 - Google Patents

眼用レンズ製作用材の搬送装置 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、コンタクトレンズや眼内レンズなどの眼用レンズの製作に用いられる材料や治具等の眼用レンズ製作用材を、眼用レンズの各製造工程の実施場所間で搬送する眼用レンズ製作用材の搬送装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
コンタクトレンズ等の眼用レンズは、一般に、円形ロッド状のレンズ素材から複数の厚肉円板状のレンズ材を切り出した後、かかるレンズ材の両面に、順次、荒削り加工を施し、更に、両レンズ面に、順次,仕上げ加工を施すことによって、製造される。
【0003】
ところで、これら各種の眼用レンズの製造工程は、それぞれ、加工に際して特別な装置が必要とされること等から、互いに異なる場所で実施されるようになっており、レンズ材や治具等が、それら各工程の実施場所に、順次、搬送されて、上述の如き加工が、加えられることとなる。
【0004】
そして、従来では、そのような各工程の実施場所間での、レンズ材や治具等の眼用レンズ製作用材の搬送手段として、一般に、ベルトコンベヤが用いられていた。
【0005】
ところが、コンタクトレンズや眼内レンズ用のレンズ材等は、非常に小さく且つ軽量であるために、ベルトコンベヤの継目部分に生ずる隙間に引っ掛かかって搬送不能となったり、反転したりし易く、スムーズな搬送ができないという問題があった。
【0006】
また、特に、荒削り加工や仕上げ加工が施されたレンズ材では、ベルトコンベヤの継目部分に生ずる隙間への引っ掛かり等によって、加工面に傷が付いたり角が欠けたりして損傷が生じ易く、そのような搬送時の問題に起因して品質および良品率が低下するという問題もあった。
【0007】
さらに、ベルトコンベヤでは、その構造上、曲線状の搬送路を形成することが難しいために、搬送路の設計自由度が低く、手作業による搬送が必要となったり、各製造工程の実施場所の選定が制約を受けるといった問題もあった。
【0008】
また、ベルトコンベヤは、ベルトの他、モータ等の駆動手段や歯車,プーリ等の駆動力伝達手段が必要であり、装置が大掛かりとなるために、設備費が高くつくと共に、工程変更等に際しての搬送装置のレイアウト変更が非常に煩雑で、困難であるという問題もあった。
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、コンタクトレンズや眼内レンズ用のレンズ材の如き眼用レンズ製作用材を、各製造工程の実施場所間で搬送するに際して、眼用レンズ製作用材の引っ掛かりや反転等が防止されて、スムーズな搬送が有利に且つ安定して実現され得る、眼用レンズ製作用材の搬送装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明は、眼用レンズ製作用材を各製造工程の実施場所間で搬送するに際して、眼用レンズ製作用材における傷や欠け等の損傷が防止されて、製品の品質および良品率が有利に向上され得る、眼用レンズ製作用材の搬送装置を提供することも、目的とする。
【0011】
更にまた、本発明は、曲線状の搬送路も自由に形成することができると共に、装置構成が簡略で、レイアウト変更等も容易な眼用レンズ製作用材の搬送装置を提供することも、目的とする。
【0012】
【解決手段】
そして、かかる課題を解決するために、請求項1に記載の本発明の特徴とするところは、眼用レンズの製作に用いられる材料や治具等の眼用レンズ製作用材を、眼用レンズの各製造工程の実施場所間で搬送せしめる眼用レンズ製作用材の搬送装置にて、(a)前記眼用レンズ製作用材より僅かに大きな口径を有し、両端部が開口された可撓性のチューブ部材と、(b)該チューブ部材の少なくとも一方の開口部から空気を供給乃至は吸引することにより、かかるチューブ部材の孔内に挿入された前記眼用レンズ製作用材に推進力を及ぼす空気圧手段と、(c)前記チューブ部材の開口部近くに配設されて、該チューブ部材を通じて搬送される前記眼用レンズ製作用材を保持する保持手段とを、有するものにおいて、前記チューブ部材の開口端部に、該チューブ部材の口径よりも小径で且つ前記眼用レンズ製作用材より大径のストッパ部を設ける一方、該ストッパ部の内径より大きな搬送補助具を該チューブ部材の孔内に移動可能に挿入せしめることにより、かかる搬送補助具によって前記眼用レンズ製作用材を保持せしめて搬送すると共に、前記チューブ部材の開口端部において、かかる眼用レンズ製作用材のみを、前記搬送補助具から分離させて取り出すようにした眼用レンズ製作用材の搬送装置にある。
【0013】
また、請求項2に記載の本発明の特徴とするところは、上記請求項1に記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置において、前記(c)の保持手段における眼用レンズ製作用材の保持面の中心部に、前記(b)の空気圧手段における空気の供給乃至は吸引のための空気口を開口せしめたことにある。
【0014】
更にまた、請求項3に記載の本発明の特徴とするところは、上記請求項1又は2に記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置において、前記(c)の保持手段における眼用レンズ製作用材の保持部が、前記(a)のチューブ部材の開口部に対して、接近/離隔方向に移動可能としたことにある。
【0015】
また、請求項4に記載の本発明の特徴とするところは、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置において、前記(a)のチューブ部材の内周面と該チューブ部材の孔内を搬送される前記眼用レンズ製作用材乃至は搬送補助具の外周面との間に、搬送方向に延びる係合部を設けて、かかるチューブ部材の孔内での該眼用レンズ製作用材乃至は搬送補助具の自由な回転が防止されるようにしたことにある。
【0016】
更にまた、請求項5に記載の本発明の特徴とするところは、眼用レンズの製作に用いられる材料や治具等の眼用レンズ製作用材を、眼用レンズの各製造工程の実施場所間で搬送せしめる眼用レンズ製作用材の搬送装置にして、(a)前記眼用レンズ製作用材より僅かに大きな口径を有し、両端部が開口された可撓性のチューブ部材と、(b)該チューブ部材の少なくとも一方の開口部から空気を供給乃至は吸引することにより、かかるチューブ部材の孔内に挿入された前記眼用レンズ製作用材に推進力を及ぼす空気圧手段と、(c)前記チューブ部材の開口部近くに配設されて、該チューブ部材を通じて搬送される前記眼用レンズ製作用材を保持する保持手段とを、有するものにおいて、前記チューブ部材の内周面と該チューブ部材の孔内を搬送される前記眼用レンズ製作用材の外周面との間に、搬送方向に延びる係合部が設けられて、かかるチューブ部材の孔内での該眼用レンズ製作用材の自由な回転が防止されるようにしたことにある。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施例について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0019】
先ず、図1には、本発明の一実施例としての眼用レンズ製作用材の搬送装置の要部が示されている。かかる搬送装置は、搬送すべきレンズ材10よりも僅かに大きな内径の円形断面形状を有するチューブ部材12を備えている。そして、このチューブ部材12は、ブラケット14により、長手方向複数箇所において、図示しない支持部材に固定されることにより、その両端開口部が、それぞれ、眼用レンズの所定の製造工程の実施場所に開口する状態で、固定的に配設されている。これにより、かかるチューブ部材12の内孔16によって、眼用レンズの所定の製造工程の実施場所間に跨がって延び、それら製造工程の実施場所間でレンズ材10を搬送せしめる搬送路が構成されているのである。
【0020】
なお、チューブ部材12の材質としては、搬送路のレイアウトの自由度を確保するために可撓性を有するものが採用されるが、安定した搬送性を得るために、レンズ材10が通過する際に大きく変形しない程度の強度を有するものが望ましい。また、レンズ材10が内孔16内でスムーズに移動し得るように、内周面が平滑で摩擦抵抗の低いものが望ましく、例えばフッ素樹脂等の合成樹脂製のチューブなどが好適に用いられ得る。
【0021】
また、チューブ部材12の両側開口部には、それぞれ、所定長さの直線状のパイプ構造を有するエア給排用管体18が配設されており、該エア給排用管体18の一方の開口部が、チューブ部材12の開口部に対向位置せしめられている。また一方、かかるエア給排用管体18の他方の開口部には、空気圧管路20が接続されており、この空気圧管路20を通じて、エア給排用管体18の内孔22が、エアコンプレッサや真空ポンプ等の図示しない空気圧源に連通されている。なお、図面上に明示はされていないが、空気圧管路20上には、切換バルブが配設されており、エア給排用管体18の内孔22に対する空気圧源の接続が切り換えられるようになっている。
【0022】
これにより、エア給排用管体18の内孔22を通じて、チューブ部材12の一方の端部において内孔16内に空気が供給されると共に、他方の端部において内孔16内から空気が吸引されることにより、チューブ部材12の内孔16内に空気流が生ぜしめられて、かかるチューブ部材12の内孔16に挿入されたレンズ材10に対して、チューブ部材12の一方の開口部から他方の開口部に向かう推進力が及ぼされるようになっているのである。なお、このことから明らかなように、本実施例においては、エア給排用管体18や空気圧管路20および図示しない空気圧源を含んで、空気圧手段が構成されている。
【0023】
また、かかるエア給排用管体18の内孔22を通じてチューブ部材12の内孔16に及ぼす空気圧は、レンズ材10とチューブ部材12の内孔16との間のクリアランスや、レンズ材10とチューブ部材12との摩擦力の大きさ等にもよるが、一般にレンズ材は小型軽量であり、特にコンタクトレンズ材は非常に軽量で重くても5g程度であることから、チューブ部材12の両端部間での圧力差が0.5〜1.0kg/cmとなる程度に設定すれば十分である。
【0024】
さらに、かかるエア給排用管体18の開口側端部には、略厚肉円板形状を呈する保持部材26が螺着固定されている。この保持部材26には、中心部を軸方向に延びる貫通孔28が形成されていると共に、レンズ材10を収容可能な大きさをもって、外方に向かって開口する収容凹所24が設けられており、かかる収容凹所24の中心部に、貫通孔28が開口せしめられている。そして、この保持部材26の貫通孔28を通じて、エア給排用管体18の内孔22が、凹所24の中心部に開口せしめられている。
【0025】
これにより、エア給排用管体18の内孔22に負圧空気が及ぼされた際に、保持部材26の貫通孔28を通じて及ぼされる吸引力によって、レンズ材10が収容凹所24内に保持せしめられるようになっているのであり、また一方、エア給排用管体18の内孔22が大気開放されたり、かかる内孔22に圧縮空気が及ぼされた際には、レンズ材10に対する吸引力が解除されて、レンズ材10が収容凹所24外に放出されるようになっているのである。なお、このことから明らかなように、本実施例においては、エア給排用管体18や空気圧管路20,図示しない負圧源および保持部材26を含んで、保持手段が構成されている。
【0026】
さらに、かかる保持手段を構成するエア給排用管体18の軸方向中央部分には、大径のピストン30が、外周面に突出して一体的に形成されていると共に、かかるピスント30の形成部位を覆うように、シリンダ部材32が、エア給排用管体18に組み付けられている。そして、このシリンダ部材32が、図示しない支持部材に固着されることにより、エア給排用管体18が、かかるシリンダ部材32を介して、支持せしめられている。
【0027】
また、シリンダ部材32の内部には、摺接スリーブ34が組み付けられており、かかる摺接スリーブ34内に形成されたシリンダ室36内を、ピストン30が滑動せしめられるようになっている。更に、かかるシリンダ室36の軸方向両端部には、エア供給路38,40が設けられており、これらのエア供給路38,40を通じて供給される圧縮空気により、ピストン30に駆動力が及ぼされるようになっている。
【0028】
そして、このようにシリンダ部材32のシリンダ室36内でピストン30を駆動することにより、図2に示されているように、エア給排用管体18が軸方向に移動せしめられて、かかるエア給排用管体18に装着された保持部材26がチューブ部材12の開口部に対して接近/離隔方向に変位せしめられるようになっているのである。
【0029】
さらに、図面上に明示はされていないが、シリンダ部材32は、シリンダ機構等の駆動手段によって、シリンダ室36の軸直角方向に移動可能とされており、かかるシリンダ部材32と共に、保持部材26が装着されたエア給排用管体18が移動せしめられるようになっている。
【0030】
かくの如き搬送装置によってレンズ材10を、所定の製造工程の実施場所間で搬送せしめるに際しては、先ず、図2に示されているように、チューブ部材12の搬出側開口端部に位置せしめられたエア供給用管体18を、チューブ部材12の開口部から離して位置せしめると共に、かかるエア供給用管体18の内孔22を負圧源に接続することにより、保持部材26の収容凹所24にレンズ材10を吸着保持せしめる。
【0031】
その後、エア給排用管体18を軸方向および軸直角方向に移動させて、図1に示されている如く、かかるレンズ材10を、チューブ部材12の開口部に導いて、エア供給用管体18の内孔22を正圧源に接続することにより、レンズ材10をチューブ部材12の内孔16に送り込む。また、それと同時に、チューブ部材12の搬入側開口部にエア供給用管体18を位置せしめて、その内孔22を負圧源に接続する。それによって、チューブ部材12の内孔16内に圧力勾配が生ぜしめられて、レンズ材10に推進力が及ぼされて、レンズ材10が内孔16内を搬送せしめられることとなる。
【0032】
そして、チューブ部材12内を搬送されて、該チューブ部材12の搬入側開口部に導かれたレンズ材10を、そこに位置せしめたエア給排用管体18に装着された保持部材26によって受け、収容凹所24に吸着保持せしめる。
【0033】
更に、その後、給排用管体18を軸方向および軸直角方向に移動して、レンズ材10を所定の加工場所に導く。即ち、例えば、図3に示されているように、かかるレンズ材10を、給排用管体18に装着された保持部材26によって保持せしめたまま、レンズ材の切削加工に使用されるチャック部材42の配設部位に導いて、チャック部材42のコレットチャック44に把持せしめることが可能である。なお、図3に示されたチャック部材42にあっては、レンズ材10の支持面上に開口するエア吸引孔46を備えており、レンズ材10に対して、コレットチャックによる把持力と共に、エア吸引力が及ぼされるようになっている。
【0034】
従って、上述の如き搬送装置においては、チューブ部材12の内孔16によって連続した搬送路が形成されることから、レンズ材10の搬送路上での引っ掛かりが防止されて、スムーズな搬送が可能となると共に、レンズ材10の損傷が有利に防止されて、製品の品質および良品率の向上も有利に達成され得るのである。
【0035】
また、かかる搬送装置においては、チューブ部材12の内孔16が、レンズ材10よりも僅かに大きな口径をもって形成されており、搬送路上でのレンズ材10の反転が防止されることから、チューブ部材12の搬入側開口部に位置せしめられた保持部材26によってレンズ材10を保持せしめる際におけるレンズ材10の方向性が有利に規定され得るのであり、それ故、レンズ材10を、続く工程における加工装置に対して、所定の方向性をもって装着することが可能となり、製造工程の自動化が一層有利に図られ得るといった利点もある。
【0036】
さらに、かかる搬送装置においては、可撓性のチューブ部材12を用いていることから、曲線状の搬送路を形成することも可能であり、搬送路の設計自由度が有利に確保され得るのである。
【0037】
また、かかる搬送装置においては、搬送路がチューブ部材12によって構成されることから、構造が極めて簡略であり、従来のベルトコンベヤに比べて製造容易で安価であると共に、搬送路のレイアウトを容易に変更することができるといった利点もある。
【0038】
更にまた、本実施例の搬送装置においては、チューブ部材12の開口部に位置せしめられた保持部材26の収容凹所24の中心部に、エア給排用管体18の内孔22が開口せしめられていることから、かかるエア給排用管体18の内孔22を通じてチューブ部材12の内孔16に及ぼされる空気圧を利用して、レンズ材10を吸着保持せしめたり、或いはレンズ材10をチューブ部材12内に送り込んだりすることができるのであり、それによって、レンズ材10の保持装置を簡略な構造をもって形成することができるといった利点もある。
【0039】
また、本実施例の搬送装置においては、保持部材26が装着されたエア給排用管体18が、チューブ部材12の開口部に対して接近/離隔方向に移動可能とされていることから、レンズ材10の保持部材26への吸着作業を、チューブ部材12から離れた位置で行なうことができると共に、搬送されて保持部材26に保持されたレンズ材10を、そのまま、続く加工場所に移送することができるのであり、それによって、レンズ材の搬送作業の一層の容易化および自動化が図られ得るのである。
【0040】
なお、前記実施例では、チューブ部材12が円形内周面をもって形成されていたが、搬送時におけるレンズ材10の周方向回転を防止するために、例えば、図4に示されている如く、かかるチューブ部材12の内孔16内に突出して長手方向に連続して直線状に延びる凸条48を形成する一方、図5及び図6に示されているように、チューブ部材12内を搬送されるレンズ材10の外周面に、かかる凸条48に対応する凹溝50を軸方向に形成することも可能である。即ち、レンズ材10の搬送時に、これら凸条48と凹溝50を係合させることにより、レンズ材10の周方向の回転が防止されることから、次工程の加工装置に対して、レンズ材10を、周方向に位置決めして装着することができるのである。
【0041】
また、前記実施例の搬送装置は、レンズ材の他、各種の眼用レンズ製作用材の搬送に適用され得るものであり、例えば、図7及び図8に示されているように、一方のレンズ面(凹面)が切削加工されたレンズ材52が、その凹面において接着される球状凸面54を有する切削加工用治具56の搬送にも、同様に用いられ得る。なお、この切削加工用治具56は、レンズ材52の凸面を切削加工する際に、かかるレンズ材52をチャック等で把持するために使用されるものであるが、このような切削加工用治具56にレンズ材52を接着して一体的に搬送することにより、加工済のレンズ面(凹面)の損傷が有利に防止され得るといった効果が発揮される。
【0042】
ところで、かかる切削加工用治具56は、円環板状の基台部58の内周縁部から逆カップ状の突出部60が軸方向一方の側に向かって突出形成されており、かかる突出部60の先端面が球状凸面54とされているが、基台部58の肉厚が薄いために、搬送時に、チューブ部材12の内孔16内で反転するおそれがある。そこで、このような切削加工用治具56の搬送時には、その反転を防止するために、例えば、図9及び図10に示されている搬送補助具62が、好適に用いられ得る。
【0043】
この搬送補助具62は、筒壁部64と底壁部66から成る、全体として略有底円筒形状を呈している。また、その筒壁部64には、開口側端部から底部側に向かって延びる複数本のスリット68が、周方向に所定間隔を隔てて設けられており、これらのスリット68により、筒壁部64に僅かな弾性変形が許容されて、筒壁部64の開口部が拡縮変形可能とされている。
【0044】
さらに、筒壁部64の内周面には、開口部近くに周方向に延びる段差部70が設けられて、開口部位が大径部72とされていると共に、かかる大径部72の開口端縁部にテーパ面が形成されている。なお、大径部72の内径は、搬送すべき切削加工用治具56の基台部58の外径よりも僅かに小さくされている。これにより、切削加工用治具56を、その突出部60側から、搬送補助具62の筒壁部64の開口部に押し込むことによって、切削加工用治具56の基台部58が、搬送補助具62の大径部72に圧入され、嵌着保持され得るようになっているのである(図12参照)。
【0045】
なお、搬送補助具62の大径部72の軸方向長さは、切削加工用治具56の基台部58の厚さよりも僅かに小さくされており、上述の如く、切削加工用治具56が搬送補助具62によって嵌着保持された状態下、その基台部58が、搬送補助具62の開口部から外方に所定寸法だけ突出せしめられるようになっている。
【0046】
また、搬送補助具62には、軸方向中央部分の外周面に小径部74が設けられており、チューブ部材12の内周面との摩擦抵抗の軽減が図られている。更に、かかる搬送補助具62の底壁部66には、外面側に開口するエア溜りとしての凹部76が設けられている。
【0047】
このような搬送補助具62を用いて切削加工用治具56を搬送するに際しては、先ず、図11に示されているように、エア給排用管体18の保持部材26に搬送補助具62を吸着保持せしめた後、エア給排用管体18を移動させて、かかる搬送補助具62を、切削加工用治具56の設置場所に導く。そして、エア給排用管体18を突出させて、搬送補助具62を、その開口部側から切削加工用治具56上にかぶせるように移動させ、かかる搬送補助具62の開口部に切削加工用治具56を嵌着保持せしめる。
【0048】
その後、図12〜14に示されているように、前述したレンズ材10の搬出操作と同様、エア給排用管体18を移動させて、搬送補助具62を、チューブ部材12の搬出側開口部に導き、続いて、エア給排用管体18の内孔22を通じて圧縮空気を噴出させることにより、切削加工用治具56を搬送補助具62と共に、チューブ部材12の搬出側開口部から内孔16内に挿入して送り込む。これによって、切削加工用治具56が、搬送補助具62と一体となって、チューブ部材12の内孔16内を搬送せしめられて、搬入側開口部において取り出されることとなる。
【0049】
ここにおいて、チューブ部材12の搬入側開口部で、切削加工用治具56を搬送補助具62と共に取り出した後、切削加工用治具56を搬送補助具62から分離させることも可能であるが、搬送効率および作業性の向上を図るために、チューブ部材12の搬入側開口部で、切削加工用治具56のみを取り出すようにすることが望ましい。
【0050】
具体的には、例えば、図15に示されているように、チューブ部材12の搬入側開口部に、径方向内方に向かって内フランジ状に突出するストッパ部78を形成する。そして、このストッパ部78の内径を、搬送補助具62の筒壁部64の外径よりも小さく、且つ切削加工用治具56の基台部58の外径よりも大きく設定する。また、かかるチューブ部材12の搬入側開口部に近接して、エア吸引孔80を有する受け台82を配設し、エア吸引孔80を通じて、チューブ部材12内のエアを吸引せしめる。なお、ストッパ部78は、金属等の硬質材にて形成されており、特に、本実施例では、チューブ部材12を固定するためのブラケット84に一体的に形成されている。
【0051】
これにより、チューブ部材12内を搬送されてきた搬送補助具62が、図16に示されているように、かかるチューブ部材12の開口部において、ストッパ部78に当接して、チューブ部材12の内孔16内に止められる一方、該搬送補助具62に嵌着保持された切削加工用治具56の基台部58の一部が、ストッパ部78の内孔を通じて外部に突出せしめられて、受け台82のエア吸引孔80を通じて及ぼされる吸引力により、受け台82上に吸着保持せしめられる。
【0052】
それ故、図17に示されているように、受け台82をチューブ部材12から離隔させることにより、受け台82上に吸着保持された切削加工用治具56のみを、搬送補助具62から分離せしめて、取り出すことができるのである。なお、チューブ部材12内に残留せしめられた搬送補助具62は、チューブ部材12の搬入側開口部から圧縮空気を吹き込むこと等により、再び、搬出側開口部に向かって搬送されることとなる。
【0053】
そして、このような搬送補助具62を使用することにより、小型の眼用レンズ製作用材も、有利に搬送することが可能となるのである。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述してきたが、これらは文字通りの例示であって、本発明は、かかる具体例にのみ限定して解釈されるものではない。
【0055】
例えば、前記実施例の搬送装置では、保持部材26におけるレンズ材10の保持力を得るために、搬送時にレンズ材10に推進力を及ぼすための空気圧が利用されていたが、それら保持部材26における保持力を得るための空気圧系と、レンズ材10に推進力を及ぼすための空気圧系とを、別々に構成することも可能である。
【0056】
また、レンズ材10の保持手段として、例示の如き空気圧による吸着構造のものの他、コレットチャック等の機構構造のものなどを採用しても良い。
【0057】
更にまた、保持手段におけるレンズ材10の保持部を、チューブ部材12の開口部に対して接近/離隔方向に移動せしめるための駆動手段としても、例示の如きエアシリンダの他、リニアモータ等、公知の各種の駆動機構が、適宜に採用され得る。
【0058】
さらに、レンズ材等の搬送されるべき眼用レンズ製作用材の外周面に、整流板のような凹凸を設けることにより、搬送時における安定性の向上を図ることも、有効である。
【0059】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、いずれも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0060】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に係る搬送装置によれば、チューブ部材の内孔によって連続した搬送路が形成されることから、眼用レンズ製作用材の搬送路上での引っ掛かりが防止されて、スムーズな搬送が可能となると共に、搬送時における損傷が防止されて、製品の品質および良品率が有利に向上され得るのである。
【0061】
また、本発明に係る搬送装置においては、チューブ部材を湾曲設置することにより、曲線状の搬送路を容易に形成することも可能であり、搬送路の設計自由度が有利に確保され得るのである。更にまた、この本発明に係る搬送装置においては、搬送補助具を用いることにより、各種の大きさの眼用レンズ製作用材を有利に搬送することが可能となると共に、薄肉の眼用レンズ製作用材等も反転を防止しつつ搬送することができるのであり、それ故、搬送装置の適用範囲が有利に拡大され得ることとなる。
【0062】
また、かかる搬送装置においては、構造が極めて簡略であることから、従来のベルトコンベヤに比べて製造容易で安価であると共に、搬送路のレイアウトを容易に変更することができるといった利点もある。
【0063】
さらに、請求項2に記載の本発明に係る搬送装置においては、眼用レンズ製作用材に推進力を及ぼすための空気圧を利用して、眼用レンズ製作用材を吸着保持せしめたり、チューブ部材の内孔に送り込んだりすることができることから、眼用レンズ製作用材の保持装置を簡略な構造をもって形成することが可能である。
【0064】
また、請求項3に記載の本発明に係る搬送装置においては、保持手段によって保持された眼用レンズ製作用材を、そのまま、チューブ部材の開口部や所定の加工場所、或いは把持装置等に移送できることから、レンズ材の搬送作業の一層の容易化および自動化が可能となる。
【0066】
さらに、請求項に記載の本発明に係る搬送装置においては、搬送時における眼用レンズ製作用材の自由な回転が防止されることから、次工程の加工装置に対して、眼用レンズ製作用材を、周方向に位置決めして装着することができ、位置決めの自動化も可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての搬送装置の要部を示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示された搬送装置の作動を説明するための縦断面説明図である。
【図3】図1に示された搬送装置の別の作動を説明するための縦断面説明図である。
【図4】図1に示された搬送装置に適用され得るチューブ部材の一具体例を示す横断面図である。
【図5】図4に示されたチューブ部材を用いた搬送装置によって搬送される眼用レンズ製作用材の一具体例を示す平面図である。
【図6】図5に示された眼用レンズ製作用材の縦断面図である。
【図7】図1に示された搬送装置によって搬送される眼用レンズ製作用材の一具体例としての切削加工用治具を示す縦断面図である。
【図8】図7に示された切削加工用治具の平面図である。
【図9】図7に示された切削加工用治具の搬送に際して好適に用いられる搬送補助具の一具体例を示す縦断面図である。
【図10】図9に示された搬送補助具の平面図である。
【図11】図9に示された搬送補助具を用いての切削加工用治具の一搬送工程を示す、チューブ部材の搬出側端部における工程説明図である。
【図12】図11に続く搬送工程を示す、チューブ部材の搬出側端部における工程説明図である。
【図13】図12に続く搬送工程を示す、チューブ部材の搬出側端部における工程説明図である。
【図14】図13に続く搬送工程を示す、チューブ部材の搬出側端部における工程説明図である。
【図15】図14に続く搬送工程を示す、チューブ部材の搬入側端部における工程説明図である。
【図16】図15に続く搬送工程を示す、チューブ部材の搬入側端部における工程説明図である。
【図17】図16に続く搬送工程を示す、チューブ部材の搬入側端部における工程説明図である。
【符号の説明】
10 レンズ材
12 チューブ部材
16 内孔
18 エア給排用管体
20 空気圧管路
24 収容凹所
26 保持部材
28 貫通孔
30 ピストン
32 シリンダ部材
36 シリンダ室
48 凸条
50 凹溝
56 切削加工用治具
62 搬送補助具
78 ストッパ部
80 エア吸引孔
82 受け台

Claims (7)

  1. 眼用レンズの製作に用いられる材料や治具等の眼用レンズ製作用材を、眼用レンズの各製造工程の実施場所間で搬送せしめる眼用レンズ製作用材の搬送装置にして、前記眼用レンズ製作用材より僅かに大きな口径を有し、両端部が開口された可撓性のチューブ部材と、該チューブ部材の少なくとも一方の開口部から空気を供給乃至は吸引することにより、かかるチューブ部材の孔内に挿入された前記眼用レンズ製作用材に推進力を及ぼす空気圧手段と、前記チューブ部材の開口部近くに配設されて、該チューブ部材を通じて搬送される前記眼用レンズ製作用材を保持する保持手段とを、有するものにおいて、 前記チューブ部材の開口端部に、該チューブ部材の口径よりも小径で且つ前記眼用レンズ製作用材より大径のストッパ部を設ける一方、該ストッパ部の内径より大きな搬送補助具を該チューブ部材の孔内に移動可能に挿入せしめることにより、かかる搬送補助具によって前記眼用レンズ製作用材を保持せしめて搬送すると共に、前記チューブ部材の開口端部において、かかる眼用レンズ製作用材のみを、前記搬送補助具から分離させて取り出すようにしたことを特徴とする眼用レンズ製作用材の搬送装置。
  2. 前記保持手段における前記眼用レンズ製作用材の保持面の中心部に、前記空気圧手段における空気の供給乃至は吸引のための空気口が開口されている請求項1に記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置。
  3. 前記保持手段における前記眼用レンズ製作用材の保持部が、前記チューブ部材の開口部に対して、接近/離隔方向に移動可能とされている請求項1又は2に記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置。
  4. 前記チューブ部材の内周面と該チューブ部材の孔内を搬送される前記眼用レンズ製作用材乃至は搬送補助具の外周面との間に、搬送方向に延びる係合部が設けられて、かかるチューブ部材の孔内での該眼用レンズ製作用材乃至は搬送補助具の自由な回転が防止されている請求項1乃至のいずれかに記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置。
  5. 眼用レンズの製作に用いられる材料や治具等の眼用レンズ製作用材を、眼用レンズの各製造工程の実施場所間で搬送せしめる眼用レンズ製作用材の搬送装置にして、前記眼用レンズ製作用材より僅かに大きな口径を有し、両端部が開口された可撓性のチューブ部材と、該チューブ部材の少なくとも一方の開口部から空気を供給乃至は吸引することにより、かかるチューブ部材の孔内に挿入された前記眼用レンズ製作用材に推進力を及ぼす空気圧手段と、前記チューブ部材の開口部近くに配設されて、該チューブ部材を通じて搬送される前記眼用レンズ製作用材を保持する保持手段とを、有するものにおいて、 前記チューブ部材の内周面と該チューブ部材の孔内を搬送される前記眼用レンズ製作用材の外周面との間に、搬送方向に延びる係合部が設けられて、かかるチューブ部材の孔内での該眼用レンズ製作用材の自由な回転が防止されていることを特徴とする眼用レンズ製作用材の搬送装置。
  6. 前記保持手段における前記眼用レンズ製作用材の保持面の中心部に、前記空気圧手段における空気の供給乃至は吸引のための空気口が開口されている請求項5に記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置
  7. 前記保持手段における前記眼用レンズ製作用材の保持部が、前記チューブ部材の開口部に対して、接近/離隔方向に移動可能とされている請求項5又は6に記載の眼用レンズ製作用材の搬送装置。
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