JP3557938B2 - 熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いた絶縁コイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば発電機用回転機、一般産業用回転機または車両用回転機の絶縁コイル、全含浸方式で製造する回転電機用の絶縁コイルに用いる熱硬化性樹脂組成物に並びにその熱硬化性樹脂組成物を用いた絶縁コイル関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電機用回転機、一般産業用回転機または車両用回転機は高電圧化や小型化の要求が高く、上記回転機に組み込まれる絶縁コイルには耐電圧性、耐熱劣化性の優れたものが求められている。
【0003】
通常の絶縁コイルは、適当な絶縁被覆を施した素線を組み合わせて所定の形状を形成したコイル導体上に、絶縁テープを巻回しこれを含浸タンクの中で真空乾燥し、絶縁層の揮発性分や空気などを除去した後に、熱硬化性樹脂からなる含浸樹脂を注入して更に加圧してその巻回層に浸透させ、これを取り出し硬化させることにより絶縁層を形成することにより製造していた。
【0004】
一方、絶縁コイルの絶縁処理方式は、コイル単体で樹脂含浸を行い、ヒートプレスにより加熱硬化させた後に、固定子鉄心スロットに組み込み結線する単体含浸方式と、樹脂含浸前のコイルを固定子鉄心スロットに組み結線した後、これを一括して含浸する全含浸方式とがある。
従来は、小型の絶縁コイルは全含浸方式、大型の絶縁コイルはコイル単体で処理する単体含浸方式がとられていたが、全含浸方式には以下の利点があるため、大型な絶縁コイルに対しても全含浸方式の適用が望まれている。
(1)含浸および硬化工程が1度で済むため加工費が低減できる。
(2)コイルと固定子鉄心とが含浸樹脂により強固に固着されるため巻線全体としての機械的剛性が向上する。
(3)コイルと固定子鉄心スロット間に含浸樹脂が充填されるため、この間の熱抵抗が単体含浸方式のそれと比べ小さくなり、機器運転時に固定子コイル導体で発生する熱に起因するコイルの温度上昇を、単体含浸方式に比べ効率的に押さえることが可能となる。
【0005】
含浸樹脂としては低粘度の不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられるが、その硬化物の電気的、機械的特性が優れているエポキシ樹脂を酸無水物で硬化する樹脂系が一般に使用されている。
【0006】
エポキシ樹脂―酸無水物硬化系の含浸樹脂は、硬化速度が遅いため硬化促進剤を配合して使用するのが一般的である。しかし、硬化促進剤を含浸樹脂に配合すると樹脂粘度の上昇が早くなり、可使時間が短くなる問題があった。
特に、全含浸方式では樹脂の含浸性を向上させるために、含浸樹脂の温度を上げ、含浸樹脂の粘度を下げて絶縁層への含浸を行うので、含浸中、樹脂が加熱された状態で保存され、可使時間が一層短くなる問題があった。
【0007】
絶縁コイルの絶縁層への樹脂含浸は、含浸樹脂を満たした含浸タンクに絶縁コイルを浸漬して行い、含浸が終わると、また、新たな絶縁コイルを入れ、繰り返し含浸樹脂を使用することから、含浸樹脂は含浸中や保存中に粘度上昇がなく可使時間が長いことが望まれる。
【0008】
従来、含浸樹脂の可使時間を長くするため、含浸樹脂に配合する硬化促進剤の添加量を減らしたり、含浸樹脂が増粘する度に頻繁に新たな含浸樹脂を追加している。しかし、硬化促進剤の添加量を減らすことは、含浸樹脂の硬化に長時間が必要となり、絶縁コイルの生産性を低下させ、製造コストが上昇する。新たな含浸樹脂を頻繁に追加することも、絶縁コイルの生産性を低下させ、製造コストが上昇する問題がある。
【0009】
また、エポキシ樹脂―酸無水物硬化系の含浸樹脂は、樹脂厚が数百ミクロンメータ−以下になると硬化性が不十分になるため、絶縁コイルの表面や機構部などに付着した薄膜樹脂部分で未硬化の状態になる。そこで、この未硬化部分を除くための作業が必要となり、絶縁コイルの生産性が低下する問題があった。
【0010】
この薄膜部での硬化性を改善するためにエポキシ樹脂―酸無水物硬化系の含浸樹脂に硬化促進剤の配合量を増やす必要があるが、配合量を増やすと可使時間が短くなる。このため、含浸樹脂の粘度上昇による含浸不良が起こり絶縁層の信頼性が低下する。これを防止するには、含浸樹脂が増粘する度に頻繁に含浸樹脂を交換する必要があり、絶縁コイルの製造コストが上昇する問題があった。
【0011】
薄膜用途での表面硬化性および細部に含浸されたエポキシ樹脂の硬化がいずれも良好で、しかもポットライフや貯蔵安定性も改善され、かつ適当な硬化速度を有する硬化物を与える液状エポキシ樹脂組成物として、特公平6−27183号公報に、(A)液状エポキシ樹脂、(B)液状カルボン酸無水物、(C)三塩化ホウ素の錯化合物からなる硬化促進剤および(D)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有してなる液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。
しかし、上記公報の液状エポキシ樹脂組成物では、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いているため以下の欠点があった。
▲1▼マイクロカプセル型潜在性硬化剤はエポキシ樹脂−酸無水物からなる熱硬化性樹脂組成物に溶解せず分散状態になるため保存中に沈降する。
▲2▼撹拌等の機械的剪断力によりマイクロカプセルのシェルが破壊し、貯蔵安定性が低下する。
▲3▼長期間の保存によりマイクロカプセルのシェルが溶解し貯蔵安定性が低下する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、エポキシ樹脂−酸無水物からなる熱硬化性樹脂組成物に溶解する硬化促進剤を用い、良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する熱硬化性樹脂組成物はなかった。
また、薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する熱硬化性樹脂組成物を用いた信頼性が高く、低コストで製造作業性の良い絶縁コイルはなかった。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する熱硬化性樹脂組成物を得ることを目的とするものである。
また、信頼性が高く、低コストで製造作業性の良い絶縁コイルを得ることを目的とするものである。
さらに、全含浸方式により製造する信頼性が高く、低コストで製造作業性の良い絶縁コイルを得ることを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩または/およびテトラフェニルボレート塩または/および三塩化ホウ素錯体を含有してなるものである。
【0015】
本発明に係る第1の絶縁コイルは、コイル導体、およびこの導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回し、熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層を備えた絶縁コイルにおいて、含浸に用いる熱硬化性樹脂が(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩または/およびテトラフェニルボレート塩または/および三塩化ホウ素錯体を含有する熱硬化性樹脂組成物であるものである。
【0016】
本発明に係る第2の絶縁コイルは、コイル導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回した絶縁層を設け、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性樹脂を含浸して硬化し、上記熱硬性樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される絶縁コイルにおいて、含浸に用いる熱硬化性樹脂が、(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩または/およびテトラフェニルボレート塩または/および三塩化ホウ素錯体を含有する熱硬化性樹脂組成物であるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩または/およびテトラフェニルボレート塩または/および三塩化ホウ素錯体を含有してなるものであり、良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する。
【0018】
本発明の絶縁コイルは、コイル導体、およびこの導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回し、熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層を備えた絶縁コイルであり、含浸樹脂が良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する熱硬化性樹脂組成物からなっており、信頼性が高く、低コストで製造作業性の良い絶縁コイルが得られる。
【0019】
また、本発明の絶縁コイルは、コイル導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回した絶縁層を設け、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性樹脂を含浸して硬化し、この熱硬化性樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される絶縁コイルであり、含浸樹脂が良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する熱硬化性樹脂組成物からなっており、信頼性が高く、低コストで製造作業性の良い絶縁コイルが得られる。
【0020】
本発明に係わるエポキシ樹脂としては分子中にエポキシ基を2個以上含むものであれば特に制限はない。そのような化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テルペンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂および複素環式エポキシ樹脂等があり、単独またはその混合物があげられる。
硬化物の耐熱性の観点から分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いるのが望ましい。含浸性の観点から低粘度の液状エポキシ樹脂を用いるのが望ましい。貯蔵安定性の観点から分子中に2級の水酸基がない低粘度の液状エポキシ樹脂を用いるのが望ましい。
【0021】
本発明に係わる液状の酸無水物は、エポキシ樹脂と硬化反応が可能な液状の酸無水物であれば特に制限はない。
そのような化合物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸などがあり、単独またはその混合物があげられる。
液状の環状酸無水物の配合量としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に起因するエポキシ基の合計当量1に対して、0.8〜1.2当量が望ましい。0.8当量未満では、熱硬化性樹脂組成物中の低粘度成分である酸無水物の割合が低下することにより粘度が高くなる、また硬化物の耐熱性、機械特性が低下する。1.2当量を越えた場合は、硬化物の耐熱性、機械特性が低下する。
【0022】
本発明に係わる硬化促進剤としては、カチオン重合系の硬化促進剤および有機酸金属塩または/およびテトラフェニルボレート塩または/および三塩化ホウ素錯体を含有する必要がある。
エポキシ樹脂−酸無水物系では樹脂厚が薄いと硬化不良となる問題がある。その原因解明の結果、樹脂厚が薄い部分では硬化の加熱時に、沸点の低い酸無水物が揮発し、樹脂組成物中のエポキシ樹脂と酸無水物の配合量比率のバランスが崩れるためであることがわかった。
特に、有機酸金属塩、テトラフェニルボレート塩または三塩化ホウ素錯体などの潜在性のある硬化促進剤を添加したエポキシ樹脂−酸無水物系では、促進剤が潜在性であるため、硬化の加熱時に、促進剤が促進効果を発現する温度までエポキシ樹脂と酸無水物の硬化が促進せず、促進剤が促進効果を発現する温度以下の領域で大部分の酸無水物が揮発してしまい硬化不良が発生しやすい。硬化不良をおこさないためには、硬化剤である酸無水物が揮発して残ったエポキシ樹脂を単独で十分に硬化させる必要がある。
【0023】
エポキシ樹脂を単独で硬化可能な促進剤としてカチオン重合系の硬化促進剤があるが、カチオン重合系の硬化促進剤は硬化剤に酸無水物を用いたエポキシ樹脂系では、カチオン重合系の硬化促進剤から発生するカチオン種が、酸無水物により補足され失活し、硬化反応を促進せず、十分な硬化物が得られないことが、知られている。
【0024】
しかし、カチオン重合系硬化促進剤のエポキシ樹脂−酸無水物樹脂組成物の薄膜部分での硬化性を調べた結果、カチオン重合系硬化促進剤に十分な硬化性が有ることを見出した。
すなわち、硬化促進剤として、カチオン重合系の硬化促進剤およびエポキシ樹脂−酸無水物の硬化促進剤を含有することにより、含浸された樹脂や樹脂厚の厚い部分はエポキシ樹脂−酸無水物の硬化促進剤により硬化が促進され、樹脂厚が薄い部分はカチオン重合系の硬化促進剤により硬化が促進されるため、いずれにおいても良好な硬化物が実現できる。
【0025】
本発明に係わるカチオン重合系の硬化促進剤としては、加熱により硬化促進剤が開裂してカチオンを発生し、カチオン重合によりエポキシ樹脂を単独で硬化可能なものであれば、特に制限はない。
例えば、SbF6、SbF4、AsF6、PF6などのブレンステット酸のアニオン成分と、窒素、硫黄、リンまたはヨウ素などからなるオニウム塩化合物があげられる。
そのような化合物としては、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、 N,N−ジエチル−N−ベンジルアニリニウム四フッ化アンチモン、 N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素、 N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウム六フッ化アンチモン、 N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸、 N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジルベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、 N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジルベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、 N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジルベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、 N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジルベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモンなどの4級アンモニウム塩型化合物、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム六フッ化アンチモン、3−メチル−2−ブチニルテトラメチレンスルホニウム六フッ化アンチモン、、ベンジル−4−(エトキシカルボニルオキシ)フェニルメチルスルホニウム六フッ化アンチモン、ベンジル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルメチルスルホニウム六フッ化アンチモン、4−(ベンゾイルオキシ)フェニルベンジルエチルスルホニウム六フッ化アンチモン、p−メチルベンジル−4−アセトキシフェニルメチルスルホニウム六フッ化アンチモン、 p−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム六フッ化アンチモン、4−(ベンゾイルオキシ)フェニルベンジルメチルスルホニウム六フッ化ホウ素、アデカオプトンCP−66(旭電化工業(株)社製)、CI−2481(日本曹達(株)社製)、 CI−2624(日本曹達(株)社製)、CI−2639(日本曹達(株)社製)、CI−2064(日本曹達(株)社製)、サンエイドSI−60L(三新化学工業(株)社製)、サンエイドSI−80L(三新化学工業(株)社製)、サンエイドSI−100L(三新化学工業(株)社製)などのスルホニウム塩型化合物、およびエチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモンなどのホスホニウム塩型化合物、ジフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ−4−クロロフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ−4−ブロムフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ−p−トリルヨードニウム六フッ化ヒ素、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウム六フッ化ヒ素などのヨードニウム塩型化合物があり、単独またはその混合物があげられる。
【0026】
カチオン重合系の硬化促進剤の配合量としては特に制限はないが、樹脂組成物全体の0.001〜3重量%が望ましい。0.001重量%に満たないと薄膜部で十分な硬化物が得られない。また、3重量%を越えると熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が悪くなり可使時間が短くなる。
カチオン重合系の硬化促進剤に加え必要に応じて、ベンゾフェノン等のポットライフ安定剤を配合しても良い。
【0027】
エポキシ樹脂−酸無水物の硬化促進剤としては、エポキシ樹脂−酸無水物の硬化を促進し、潜在性を示し、更にカチオン重合系の硬化促進剤を失活させない特性を具備する必要がある。
そのような特性を具備する化合物としては、有機酸金属塩、テトラフェニルボレート塩および三塩化ホウ素錯体がある。
【0028】
本発明に係わる有機酸金属塩としては、エポキシ樹脂−酸無水物の硬化を促進し、潜在性を示し、更にカチオン重合系の硬化促進剤を失活させない特性を具備すれば特に制限はない。
そのような化合物としては、2−エチルヘキサン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸鉛、2−エチルヘキサン酸マンガン、ナフテン酸スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、ラウリンサン亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセチネート、スズアセチルアセチネート、コバルトアセチルアセチネートもしくはマンガンアセチルアセトネート等などがあり、単独またはその混合物があげられる。
このうち、樹脂組成物の貯蔵安定性、樹脂組成物への溶解性の観点からカルボン酸金属塩類が望ましい。
【0029】
本発明に係わるテトラフェニルボレート塩としては、エポキシ樹脂−酸無水物の硬化を促進し、潜在性を示し、更にカチオン重合系の硬化促進剤を失活させない特性を具備すれば特に制限はない。
例えば、4級アミン化合物、イミダゾール化合物、リン化合物、および1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン誘導体などである複素環状化合物などのテトラフェニルボレート塩があげられる。
そのような化合物としては、2―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2―エチル―4―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2―フェニルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1―ベンジル―2―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1―ベンジル―2―エチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1―シアノエチル―2―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1―シアノエチル―2―エチル―4―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1―メチル―2―エチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、もしくは1―イソブチル―2―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート等のイミダゾール化合物のテトラフェニルボレート塩類、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリオクチルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリウラリルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、もしくはフェニルトリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート等の4級アミン化合物のテトラフェニルボレート塩類、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラトリルホスホニウムテトラフェニルボレートもしくはもしくはテトラオクチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のリン化合物のテトラフェニルボレート塩類、1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート、8−ベンジル−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート、8−メチル−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート、8−エチル−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート、8−(3−メチルプロピル)−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート、8−プロピル−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート、8−ブチル−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート等の1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7化合物のテトラフェニルボレート塩類などがあり、単独またはその混合物があげられる。
このうち、樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7化合物のテトラフェニルボレート塩類が好ましい。また、樹脂組成物の貯蔵安定性、硬化物の絶縁特性の観点から4級アミン化合物のテトラフェニルボレート塩類が望ましい。
【0030】
テトラフェニルボレート塩類はソジウムテトラフェニルボレートと所定のアミン化合物、リン化合物を反応させて高収率で得ることができる。この反応はすでに公知の方法で実施できる。例えば水溶媒に双方の化合物を混合すれば不溶物として生成する。ろ過後、乾燥して目的の化合物を得る。
【0031】
本発明に係わる三塩化ホウ素錯体としては、エポキシ樹脂−酸無水物の硬化を促進し、潜在性を示し、更にカチオン重合系の硬化促進剤を失活させない特性を具備すれば特に制限はない。
そのような化合物としては、三塩化ホウ素モノエチルアミン錯体、三塩化ホウ素フェノール錯体、三塩化ホウ素ピペリジン錯体、三塩化ホウ素硫化ジメチル錯体、三塩化ホウ素N,N−ジメチルオクチルアミン錯体(DY9577(チバSC社(株)製))、三塩化ホウ素N,N−ジメチルドデシルアミン錯体、三塩化ホウ素N,N−ジエチルジオクチルアミン錯体などがあり、単独またはその混合物があげられる。
このうち、樹脂組成物の貯蔵安定性および硬化物の絶縁特性の観点から三塩化ホウ素N,N−ジメチルオクチルアミン錯体が望ましい。
【0032】
有機酸金属塩および/またはテトラフェニルボレート塩および/または三塩化ホウ素錯体の配合量としては特に制限はないが、樹脂組成物全体の0.01〜1重量%が望ましい。0.01重量%に満たないと十分な硬化物が得られない。また、1重量%を越えると熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が悪くなり可使時間が短くなる。
【0033】
本発明に係わる熱硬化性樹脂組成物を調整する方法としては、所定量のエポキシ樹脂と酸無水物を撹拌容器に配合し混合後、所定量のカチオン重合系の硬化促進剤、潜在性硬化促進剤を配合し、均一混合して得ることができる。有機酸金属塩は溶解性が悪いため、始めに所定量のエポキシ樹脂と有機酸金属塩を加熱撹拌可能な容器に配合し、100〜120℃で30〜60分加熱混合して完全に有機酸金属塩を溶解後、室温に冷却の後、所定量の酸無水物およびカチオン重合系の硬化促進剤を配合し、均一混合して熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0034】
本発明に係わる絶縁テープは、バインダ樹脂で絶縁材を補強材にしたものである。
絶縁テープは、バインダ樹脂を溶剤に溶解させ、これを絶縁材および補強材に塗工し溶剤を揮発させて作製する。
絶縁テープの絶縁材としては、マイカ原鉱を薄くはがして得られる薄片からなるマイカ箔と、マイカ原鉱またはマイカ箔の残品などを焼成法、水ジェット法などで処理して細かい鱗片状とし、これを抄紙してシート状に形成した集成マイカ箔とが用いられる。
絶縁テープの補強材としては上記マイカ箔を補強できるものであれば特に制限はなく、例えば、ガラスクロス、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステル不織布などの絶縁性裏打ち材を用いる。
【0035】
本発明の絶縁コイルは、上記絶縁テープと絶縁被覆を施した素線を組み合わせて所定の形状を形成したコイル導体上に巻回し、これを含浸タンクの中で真空乾燥し、絶縁層の揮発性分や空気などを除去した後に熱硬化性樹脂からなる含浸樹脂を注入して更に加圧してその巻回層に浸透させ、これを取り出し硬化させることにより絶縁層を形成して得ることができる。
また、絶縁層の外側に固定子鉄心と絶縁コイルの絶縁層の間のコロナ放電を防止するための表面コロナ防止層を形成することも可能である。更に、絶縁コイルと固定子鉄心間の熱膨張係数の差に起因する剪断応力を緩和するため、絶縁層の外側に固定子鉄心と離型可能な応力緩和層を形成することも可能である。
【0036】
絶縁コイルの絶縁処理方式は、上記のようにコイル単体で樹脂含浸を行いヒートプレスにより加熱硬化させた後に、固定子鉄心スロットに組み込み結線する単体含浸方式と、樹脂含浸前のコイルを固定子鉄心スロットに組み結線した後、これを一括して含浸する下記全含浸方式とがある。
【0037】
全含浸方式とは、コイル導体に上記絶縁テープを巻回した絶縁層を設け、固定子鉄心スロットに収納し、固定子鉄心と共に上記熱硬化性樹脂を含浸して硬化し、上記樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化させる方法である。
【0038】
カチオン重合系の硬化促進剤と潜在性硬化促進剤を添加することにより良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備する熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0039】
カチオン重合系の硬化促進剤と潜在性硬化促進剤を添加した熱硬化性樹脂組成物は良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備するため、それを含浸樹脂に用いることにより、信頼性が高く、低コストで製造作業性の良い絶縁コイルが得られる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されない。
なお、実施例および比較例中で用いるエポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤の略号は下記のとおりである。
カチオン重合系の硬化促進剤類
SI−100L:{商品名:サンエイドSI−100L,三新化学工業(株)社製}
CP−66:{商品名:アデカオプトンCP−66,旭電化工業(株)社製}
CI−2639:{商品名: CI−2639,日本曹達(株)社製}
テトラフェニルボレート塩
BTEA−TPB:ベンジルトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート
2E4MZ−TPB:2―エチル―4―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート
DBU−TPB:8−ベンジル−1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセニウムテトラフェニルボレート{商品名:U−CAT5002,サンアプロ(株)社製}
有機酸金属塩
ZnOct:2−エチルヘキサン酸亜鉛{商品名:オクチル酸亜鉛,日本化学工業(株)社製}
ZnNp:ナフテン酸亜鉛{商品名:ナフテン酸亜鉛,日本化学工業(株)社製}
三塩化ホウ素錯体
DY9577:三塩化ホウ素N,N−ジメチルオクチルアミン錯体{商品名:DY9577,チバSC社(株)製}
上記以外の硬化促進剤として
DBU:1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン―7{商品名:DBU,サンアプロ(株)社製}
エポキシ樹脂
E825:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量178){商品名:E825,油化シェルエポキシ(株)製}
YX4000:テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量173){商品名:YX4000,油化シェルエポキシ(株)社製}MY790:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175){商品名:MY−790−1,チバSC(株)製}
E1750:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165){商品名,E1750,油化シェルエポキシ(株)社製}
酸無水物
QH―200:メチルテトラヒドロフタル酸無水物(酸無水物当量166)
{商品名:QH―200,日本ゼオン(株)社製}
【0041】
合成例1(ベンジルトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート)
ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(22.78g,0.1mol)とテトラフェニルホウ素化ナトリウム(34.22g,0.1mol)をそれぞれ250gのイオン交換水に溶解させた。テトラエチルアンモニウムクロライド水溶液中にテトラフェニルホウ素化ナトリウム水溶液をゆるやかに滴下し、撹拌しながら反応させた。その後30分間、80℃にて反応溶液を還流した後、得られた白色の沈殿をろ別した。沈殿物は N, N−ジメチルスルホオキシドから再結晶し目的とする化合物を得た。
【0042】
合成例2(2―エチル―4―メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート)
2―エチル―4―メチルイミダゾール(11.02g,0.1mol)とテトラフェニルホウ素化ナトリウム(34.22g,0.1mol)をそれぞれ250gのイオン交換水に溶解させた。2―エチル―4―メチルイミダゾール水溶液中にテトラフェニルホウ素化ナトリウム水溶液をゆるやかに滴下し、撹拌しながら反応させた。その後30分間、80℃にて反応溶液を還流した後、得られた乳白色の沈殿をろ別した。沈殿物は蒸留精製アセトンから再結晶し目的とする化合物を得た。
【0043】
実施例1.
(1)熱硬化性樹脂組成物の調製
エポキシ樹脂(商品名:E825)54.4部、酸無水物硬化剤(商品名:QH―200)45.6部、カチオン重合系の硬化促進剤(商品名:SI−100L)0.01部、有機酸金属塩(ZnOct)0.212部を配合して含浸用の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0044】
(2)薄膜部の硬化性評価
アルミシャーレに上記(1)の熱硬化性樹脂組成物を約2g秤量し、厚さ約200ミクロンメータの樹脂層を作製し、室温から毎分0.36℃の昇温条件で155℃まで昇温し、155℃で16時間保持し熱硬化性樹脂を硬化して評価した。硬化性評価は室温で硬化物表面のタック性の有無により行い、この結果をタックがない場合は○でタックがある場合は×で表1に示した。
【0045】
(3)貯蔵安定性試験
上記(1)の熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性試験は、温度45℃の恒温槽で約3ケ月間の試験を行い、E型粘度計{東機産業(株)製}を用い粘度の経時変化を測定した。判定は熱硬化性樹脂組成物の粘度が500mPa・sに達する日数とした。この結果を表1に示した。
【0046】
(4)樹脂板の作製
樹脂板は、1.0mmのスペーサをセットしたテフロンテープを張り離型処理したガラス板に、上記(1)の熱硬化性樹脂を注型して、室温から毎分0.36℃の昇温条件で155℃まで昇温し、155℃で16時間保持し熱硬化性樹脂を硬化して評価用の樹脂板を得た。
【0047】
(5)樹脂板の誘電正接、体積抵抗測定
誘電正接(tanδ)、体積抵抗の温度依存性は、上記(4)で作製した、板厚1.0mmの10cm×10cmの樹脂板を評価サンプルとしてJIS C 2103に準拠して測定を行った。この結果を表1に示した。
【0048】
実施例2〜6.
実施例1で用いたZnOctのかわりに有機酸金属塩硬化促進剤であるZnNp、テトラフェニルボレート塩系硬化促進剤であるDBU−TPB、BTEA−TPB、2E4MZ−TPBまたは三塩化ホウ素錯体系硬化促進剤であるDY9577を用いた以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表1に示した。
【0049】
実施例7〜9.
カチオン重合系硬化促進剤として実施例1で用いたSI−100LのかわりにCP−66を用いた以外は実施例1、3、6と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表1に示した。
【0050】
実施例10〜12.
カチオン重合系硬化促進剤として実施例1で用いたSI−100LのかわりにCI−2639を用いた以外は実施例1、3、6と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例13〜15.
熱硬化性樹脂組成物にMY790:23.5部、E1750:23.5部、YX4000:5部およびQH200:48.0部を用いた以外は実施例1、3、6と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表2に示した。
【0053】
実施例16.
実施例1で用いたZnOctのかわりに、ZnOctとテトラフェニルボレート塩系硬化促進剤DBU−TPBの2種類を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表2に示した。
【0054】
実施例17.
実施例1で用いたZnOctのかわりに、ZnOctおよび三塩化ホウ素錯体系硬化促進剤DY9577の2種類を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表2に示した。
【0055】
実施例18.
実施例1で用いたZnOctのかわりにテトラフェニルボレート塩系硬化促進剤DBU−TPBおよび三塩化ホウ素錯体系硬化促進剤DY9577を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表2に示した。
【0056】
実施例19.
実施例1で用いたZnOctのかわりに、ZnOct、テトラフェニルボレート塩系硬化促進剤DBU−TPBおよび三塩化ホウ素錯体系硬化促進剤DY9577の3種類を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表2に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
比較例1.
ZnOctを添加しない以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤のみを添加しているため、樹脂板の硬化反応が十分に進行せず、実施例1〜6に比較すると誘電正接が上昇し、体積抵抗が低下し、絶縁特性が低下している。
【0059】
比較例2.
ZnOctを添加しない以外は実施例7と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤のみを添加しているため、樹脂板の硬化反応が十分に進行せず、実施例7〜9に比較すると誘電正接が上昇し、体積抵抗が低下し、絶縁特性が低下している。
【0060】
比較例3.
ZnOctを添加しない以外は実施例10と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤のみを添加しているため、樹脂板の硬化反応が十分に進行せず、実施例10〜12に比較すると誘電正接が上昇し、体積抵抗が低下し、絶縁特性が低下している。
【0061】
比較例4.
ZnOctを添加しない以外は実施例13と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤のみを添加しているため、樹脂板の硬化反応が十分に進行せず、実施例13〜15に比較すると誘電正接が上昇し、体積抵抗が低下し、絶縁特性が低下している。
【0062】
比較例5〜7.
カチオン重合系硬化促進剤を添加しない以外は実施例1、3、6と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤を添加していないため、実施例1、3、6に比較して薄膜樹脂部分の硬化性が低下している。
【0063】
比較例8.
カチオン重合系硬化促進剤を添加しない以外は実施例14と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤を添加せず、テトラフェニルボレート塩系硬化促進剤のみを添加しているため、実施例14に比較して薄膜樹脂部分の硬化性が低下している。
【0064】
比較例9.
実施例3で用いたDBU−TPBのかわりにDBUを用いた以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、樹脂板を作製して評価を行った。この結果を表3に示した。
表3から明らかなように、 DBU−TPBのかわりに潜在性のないDBUを用いため貯蔵安定性が2日と実施例3に比較し大きくて低下した。
【0065】
【表3】
【0066】
実施例20
(1)全含浸方式による絶縁コイルの作製
図1は、本発明の実施例の絶縁コイルを説明するための説明図で、絶縁コイルを高圧回転電機に用いた場合のスロット出口部を示す。図中、1はケイ素鋼板を積層した固定子鉄心、2は本発明の実施例の絶縁コイル、3は導体、4は絶縁層、5はウエッジ、6は中間フィラー、7は固定子鉄心スロット、8は保護絶縁層である。
絶縁コイル2は導体3の周りに絶縁テープを所定回数巻回し、コイルの絶縁層4を形成し、この絶縁層4の表面に、ガラステープを巻回して保護絶縁層8とする。
これを鉄心スロット7へ挿入し、ウエッジ5を打ち込みコイル2を固定した。しかる後、実施例1で調製した熱硬化性樹脂を45℃で含浸後、室温から毎分0.36℃の昇温条件で155℃まで昇温し、155℃で16時間保持し熱硬化性樹脂を硬化して絶縁コイルを得た。
【0067】
(2)単体含浸方式による絶縁コイルの作製
コイル導体の周りに絶縁テープを所定回数巻回し、対地絶縁層を形成し、更に保護絶縁層としてガラステープを巻回し、しかる後、実施例1で調製した熱硬化性樹脂を45℃で含浸を行い、金型に挿入して、金型温度155℃、圧力20kg/cm2で16時間保持し加熱加圧して熱硬化性樹脂を硬化して絶縁コイルを得た。
【0068】
(3)絶縁コイルの絶縁特性測定
絶縁コイルの絶縁特性は、初期および180℃で16時間熱劣化後の絶縁コイルの誘電正接―電圧特性(Δtanδ)(12kV―2kV間の誘電正接の差)および絶縁破壊電圧(BDV)(1kV/秒の一定昇圧で油中での測定)測定により得た。これらの結果を表4に示した。
【0069】
(4)絶縁コイル薄膜樹脂部分の硬化性評価
上記(1)(2)で作製した絶縁コイルの薄膜樹脂部分で評価した。硬化性評価は室温でタック性の有無により行い、この結果をタックがない場合は○でタックがある場合は×で表4に示した。
【0070】
実施例21〜38.
含浸用熱硬化性樹として、実施例2〜19で調整した熱硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例20と同様にして絶縁コイルを作製して評価を行った。この結果を表4、5に示した。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
比較例10〜13.
含浸用熱硬化性樹脂として、比較例1〜4で調整した熱硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例20と同様にして絶縁コイルを作製して評価を行った。この結果を表6に示した。
表6から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤のみを添加して熱硬化性樹脂組成物を用いたため、十分な硬化反応が進行せず、実施例20、26、29、32に比較すると絶縁コイルの絶縁特性が低下している。
【0074】
比較例14〜17.
含浸用熱硬化性樹脂として、比較例5〜8で調整した熱硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例20と同様にして絶縁コイルを作製して評価を行った。この結果を表6に示した。
表6から明らかなように、カチオン重合系硬化促進剤を添加していないため、実施例20、22、25、33に比較して絶縁コイル薄膜樹脂部分の硬化性が低下している。
【0075】
比較例18.
含浸用熱硬化性樹として、比較例9で調整した熱硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例20と同様にして絶縁コイルを作製して評価を行った。この結果を表6に示した。
表6から明らかなように、DBU−TPBのかわりに潜在性のないDBUを用いため含浸中に熱硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して細部にまで樹脂が含浸されなかったため実施例22に比較して絶縁コイルの絶縁特性が低下している。
また、貯蔵安定性が2日と短いため頻繁な樹脂交換が必要で絶縁コイルのコストが上昇する。
【0076】
【表6】
【0077】
【発明の効果】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩および/またはテトラフェニルボレート塩および/または三塩化ホウ素錯体を含有してなるもので良好な薄膜部での硬化性と貯蔵安定性を具備するという効果がある。
【0078】
本発明に係る第1の絶縁コイルは、コイル導体、およびこの導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回し熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層を備えた絶縁コイルにおいて、上記熱硬化性樹脂が、(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩および/またはテトラフェニルボレート塩および/または三塩化ホウ素錯体を含有してなるものであり、信頼性が高く、低コストで製造作業性が良いという効果がある。
【0079】
本発明に係る第2の絶縁コイルは、コイル導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回した絶縁層を設け、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性含浸樹脂を含浸して硬化し、上記樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される絶縁コイルにおいて、上記熱硬化性含浸樹脂が、(A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩および/またはテトラフェニルボレート塩および/または三塩化ホウ素錯体を含有してなるものであり、信頼性が高く、低コストで製造作業性が良いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の絶縁コイルを説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 固定子鉄心、2 絶縁コイル、3 導体、4 絶縁層、5 ウエッジ、
6 中間フィラー、7 固定子鉄心スロット、8 保護層。
Claims (3)
- (A)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)液状の環状酸無水物、(C)カチオン重合系の硬化促進剤、(D)有機酸金属塩または/およびテトラフェニルボレート塩または/および三塩化ホウ素錯体を含有してなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- コイル導体、およびこの導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回し、熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層を備えた絶縁コイルにおいて、上記熱硬化性樹脂が、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする絶縁コイル。
- コイル導体に、絶縁材を補強材にバインダ樹脂で接着してなる絶縁テープを巻回した絶縁層を設け、固定子鉄心スロットに収納され、固定子鉄心と共に熱硬化性樹脂を含浸して硬化し、上記熱硬化性樹脂の硬化物により上記固定子鉄心と一体化される絶縁コイルにおいて、上記熱硬化性樹脂が、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする絶縁コイル。
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