JP3557783B2 - 耐熱性、ガスバリア性に優れたシートおよび成形体 - Google Patents
耐熱性、ガスバリア性に優れたシートおよび成形体 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、ガスバリア性、透明性に優れた包装材料に関するものである。さらに詳しくは食品などが高温充填可能であり、保存性に優れ、かつ内容物の臭いを保つ機能(保香性)に優れた透明容器、トレイに適する積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品分野ではレトルト処理(高温殺菌)可能な耐熱性とバリア性を有した包装材料が望まれている。
かかる課題に対して、例えば、特開昭54−30272号、特開昭60−217151号にはポリオレフィン系樹脂と塩化ビニリデン系樹脂の積層体が、特開昭63−270142号にはポリブチレンテレフタレート樹脂と塩化ビニリデン樹脂の積層体が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂と塩化ビニリデン系樹脂の積層体の場合には、ポリオレフィン系樹脂の耐熱温度が120℃までであり、かつポリオレフィン系樹脂特有の臭いが食品に移る可能性がある。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂と塩化ビニリデン樹脂の積層体の場合には透明性が不十分である。
一方、耐熱性を有する透明包装材料の観点から見れば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル/メタクリル酸エステルの共重合体などが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート樹脂はガラス転移温度が約70℃であることからレトルト処理は不可能であり、ポリカーボネート樹脂は保香性が優れることからカレーの容器などに使用されているが、ガスバリア性が不十分である。また、アクリロニトリル/メタクリル酸エステルの共重合体は着色しており、強度も低い。
【0004】
本発明は、食品などの分野において、透明でレトルト処理または高温充填可能で保香性に優れた包装材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アクリル酸および/またはメタクリル酸単位を含むビニル単量体単位からなる共重合体でその単位構造中に6員環酸無水物単位を有するアクリル系樹脂層の片面または両面にポリカーボネート樹脂層を積層したシートおよび成形体が、上記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は、メタクリル酸および/またはアクリル酸と、これに共重合可能なビニル単量体を共重合し、熱処理をして一般式 化3
【化3】
(式中、R1、R2はHまたはCH3を表す。)
で示される6員環酸無水物単位を形成させたアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂層の片面または両面にポリカーボネート樹脂層を積層してなる食品包装材料である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0006】
【化3】
(式中、R1 、R2 はHまたはCH3 を表す。)で示される6員環酸無水物単位を有するアクリル系樹脂層の片面または両面にポリカーボネート樹脂層が積層してなるシートおよび成形体である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる6員環酸無水物単位を有するアクリル系樹脂は、例えば、特開昭61−254608号に開示されており、メタクリル酸および/またはアクリル酸と、これに共重合可能なビニル単量体を共重合し、150〜350℃、好ましくは220〜320℃の範囲で熱処理をして6員環酸無水物構造単位を形成させたものである。
【0008】
メタクリル酸およびアクリル酸以外のビニル単量体としては、一般に汎用熱可塑性樹脂の単量体として用いられるものが適用でき、オレフィン類、塩化ビニル、アクリロニトリル、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
なかでも不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物から選ばれた1種または2種以上が望ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルであり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0009】
共重合体は上記の単量体を公知の懸濁重合、塊状重合、乳化重合、溶液重合等の重合方法で製造できるが、不純物がより少ない点で懸濁重合、塊状重合が好ましい。
【0010】
共重合体の熱処理は、通常、揮発成分除去のための真空機能を有する加熱炉、押出機等を用いて、必要により水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ジエチルアミン、グアニジン、ナトリウムメチラート等の有機塩基化合物、次亜リン酸等の存在下に、150〜350℃、好ましくは220〜320℃の範囲で行われ、共重合体中に6員環酸無水物構造単位を形成させる。150℃より低いと酸無水物構造への閉環が不充分となり、350℃より高いと着色が著しくなり好ましくない。
【0011】
熱処理後の共重合体に含まれる6員環酸無水物の量は3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%が成形加工性、耐熱性の点から好ましい。すなわち6員環構造が3重量%未満の場合は耐熱性、ガスバリア性が低く、51重量%以上の場合は溶融粘度が高く成形加工に支障をきたす。
【0012】
この6員環酸無水物構造単位を有するアクリル系樹脂は酸素バリア性、耐熱性に優れるが、本発明のシートまたは成形体の用途が必要とする薄肉仕様に対しては機械的強度が弱く、かつアクリル系樹脂特有の臭気を有する。したがって、保香性、機械的強度の高いポリカーボネート樹脂と積層することにより目的を達成することができる。
【0013】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、一般的なビスフェノールAを主成分とした炭酸エステル重合体からなるものでよく、必要に応じて着色したものも用いることが出来る。
【0014】
積層シートの製造方法は公知の方法でよく、例えば二台の押出機を用いて、それぞれの樹脂を溶融しダイ内で重ね合わせる共押出法、一台の押出機を用いて6員環酸無水物構造単位を含むアクリル系樹脂を押し出す際に、予め製造されたポリカーボネートシートを貼合する押出貼合法、それぞれの樹脂シートを予め製造しておき、それらを加熱しプレス等で加圧する熱圧着法などが挙げられる。
【0015】
また、成形体の製造方法も公知の方法でよく、例えばトレイの場合は前記の製造方法で製造した積層シートを熱成形機を用いて真空成形、圧空成形する方法が一般的に使用される。
ボトルなどの容器については一般的な多層ボトルの製造方法が適用できる。例えば二本のシリンダを有する射出ブロー成型機を用いて、まずポリカーボネート樹脂を適量金型に充填し、その後6員環構造単位を有するアクリル系樹脂を充填して加圧空気を金型に送り込んで賦形させるインジェクションブロー法、二台の押出機と積層ダイを用いて積層された半溶融状態のパリソンを押し出し、それを金型で挟み込み加圧空気を送り込んで賦形させるダイレクトブロー法などが挙げられる。
【0016】
積層体における6員環酸無水物構造単位を有するアクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂の層の厚みは積層体の使用目的に応じて決定され、特に限定されるものではない。すなわち高ガスバリア性が要求される場合は6員環酸無水物構造単位を有するアクリル系樹脂層を厚くし、高強度が要求される場合はポリカーボネートの層を厚くすることが好ましい。
【0017】
【発明の効果】
本発明の積層シート、成形体は従来のものに比べて、耐熱性、保香性に優れ、かつ従来の耐熱性の包装材料にはない透明性を有することから、食品包装材料として機能面、商品イメージにおいて極めて有用である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
なお、分析、物性の測定方法は次の通りである。
(1)6員環無水構造物の定量:
赤外分光光度計を用い酸無水物構造特有の1805cm−1の吸収を用いて定量した。
(2)全光線透過率
JIS K7105に準拠して測定した。
(3)耐熱性試験
〔積層シート〕
シートに直径100mmの円を書き、温度120℃の熱風循環式オーブン中で1時間加熱し、寸法の変化(収縮率)を測定した。
〔ボトル〕
内容積1.5リットルの中空ボトルを成形して90℃の熱水を充填したのち、80℃の湯浴中に15分浸漬し、内容積の変化を測定した。
(4)酸素透過係数
酸素透過試験機(Mocon社製、2−20型)を用いて等圧法、温度23℃、湿度65%RHの条件で測定した。
(5)保香性
真空成形で成形した幅100mm×長さ150mm×深さ20mmのトレイに沸騰水を入れて蓋をして5分間放置したのち、蓋を取りすぐに臭気を嗅いだ。
(6)トレイの強度試験
真空成形で成形した幅100mm×長さ150mm×深さ20mmのトレイを底部を上にして置き、その中央部に500gの鋼球を1mの高さから落下させた。
【0019】
実施例1
撹拌機の備わった5Lオートクレーブに2.2Lの水と2.4gのヒドロキシセルロースを仕込み溶解したのちに、160gのメタクリル酸と1440gのメタクリル酸メチルと6.4gのラウリルメルカプタン、5.6gのラウロイルパーオキサイドを加え、この混合物を撹拌し80℃に加熱し重合を行った。
1時間40分後に温度を98℃に上げ、更に1時間重合を行い反応を完結させた。その後、重合物を冷却、遠心分離、水洗して80℃で乾燥を行った。
【0020】
この乾燥ビーズにビーズ100部に対して水酸化ナトリウム0.03部をヘンシェルミキサーで混合し、40mm脱気押出機(田辺プラスチック機械製VS−40−28型、L/D=28)を用いてスクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃で造粒を行った。この造粒品中に含まれる6員環無水構造の量は7.8重量%であった。
【0021】
この造粒品とポリカーボネート樹脂(カリバー300−4、住友ダウ社製)を250℃の樹脂温度で共押出成形を行い内層がアクリル系樹脂で両外層がポリカーボネート樹脂からなる全厚み0.5mm、内層厚み0.15mm積層シートを得た。
この積層シートを用いて耐熱性、酸素透過係数、全光線透過率を測定した。
結果を表1に示す。
【0022】
さらにこの積層シートを用いて、加熱温度190℃で真空成形を行い、幅100mm×長さ150mm×深さ20mmのトレイを成形し、保香性と強度を評価した。
結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
メタクリル酸とメタクリル酸メチルの仕込み量を480gと1120gにした以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を第1表に示す。
【0024】
実施例3
実施例1で合成したアクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂(カリバー300−4、住友ダウ社製)を用いて二軸延伸ブロー成形機(日精エー・エス・ビー機械社製、ASB−50TH型)により内層がアクリル系樹脂で両外層がポリカーボネート樹脂の内容積1.5リットルの中空容器を成形した。
【0025】
成形方法は、まず樹脂温度280℃のポリカーボネート樹脂を温度90℃の金型に射出し、その後樹脂温度270℃のアクリル系樹脂を射出しプリフォームを成形した。このプリフォームを180℃に加熱しブロー型に挿入して、20kg/cm2 の圧縮空気を吹き込み、中空容器を得た。この容器の厚みは0.4mmで内層のアクリル系樹脂層の厚みは0.12mmであった。
この中空容器の耐熱性と酸素透過係数と全光線透過率を測定した。
結果を表2に示す。
【0026】
比較例1
ポリカーボネート樹脂(カリバー300−4、住友ダウ社製)を250℃で押出を行い0.5mm厚みの単層シートを作成し実施例1と同様の成形と評価を行った。
結果を表1に示す。
【0027】
比較例2
実施例1の6員環構造単位を有するアクリル系樹脂を250℃で押出を行い、0.5mm厚みの単層シートを作成し実施例1と同様の成形と評価を行った。
結果を表1に示す。
【0028】
比較例3
ポリエチレンテレフタレート樹脂(EASTMAN 9921)を用いて二軸延伸ブロー成型機により単層の中空容器を成形した。樹脂温度280℃、金型温度20℃でプリフォームを成形し、このプリフォームを90℃に加熱して85℃のブロー型に挿入し、30kg/cm2 の圧縮空気を吹き込み、内容積1.5リットルの中空容器を得た。この中空容器厚みは0.35mmであった。
この中空容器を実施例3と同様の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、ガスバリア性、透明性に優れた包装材料に関するものである。さらに詳しくは食品などが高温充填可能であり、保存性に優れ、かつ内容物の臭いを保つ機能(保香性)に優れた透明容器、トレイに適する積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品分野ではレトルト処理(高温殺菌)可能な耐熱性とバリア性を有した包装材料が望まれている。
かかる課題に対して、例えば、特開昭54−30272号、特開昭60−217151号にはポリオレフィン系樹脂と塩化ビニリデン系樹脂の積層体が、特開昭63−270142号にはポリブチレンテレフタレート樹脂と塩化ビニリデン樹脂の積層体が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂と塩化ビニリデン系樹脂の積層体の場合には、ポリオレフィン系樹脂の耐熱温度が120℃までであり、かつポリオレフィン系樹脂特有の臭いが食品に移る可能性がある。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂と塩化ビニリデン樹脂の積層体の場合には透明性が不十分である。
一方、耐熱性を有する透明包装材料の観点から見れば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル/メタクリル酸エステルの共重合体などが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート樹脂はガラス転移温度が約70℃であることからレトルト処理は不可能であり、ポリカーボネート樹脂は保香性が優れることからカレーの容器などに使用されているが、ガスバリア性が不十分である。また、アクリロニトリル/メタクリル酸エステルの共重合体は着色しており、強度も低い。
【0004】
本発明は、食品などの分野において、透明でレトルト処理または高温充填可能で保香性に優れた包装材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アクリル酸および/またはメタクリル酸単位を含むビニル単量体単位からなる共重合体でその単位構造中に6員環酸無水物単位を有するアクリル系樹脂層の片面または両面にポリカーボネート樹脂層を積層したシートおよび成形体が、上記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は、メタクリル酸および/またはアクリル酸と、これに共重合可能なビニル単量体を共重合し、熱処理をして一般式 化3
【化3】
(式中、R1、R2はHまたはCH3を表す。)
で示される6員環酸無水物単位を形成させたアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂層の片面または両面にポリカーボネート樹脂層を積層してなる食品包装材料である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0006】
【化3】
(式中、R1 、R2 はHまたはCH3 を表す。)で示される6員環酸無水物単位を有するアクリル系樹脂層の片面または両面にポリカーボネート樹脂層が積層してなるシートおよび成形体である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる6員環酸無水物単位を有するアクリル系樹脂は、例えば、特開昭61−254608号に開示されており、メタクリル酸および/またはアクリル酸と、これに共重合可能なビニル単量体を共重合し、150〜350℃、好ましくは220〜320℃の範囲で熱処理をして6員環酸無水物構造単位を形成させたものである。
【0008】
メタクリル酸およびアクリル酸以外のビニル単量体としては、一般に汎用熱可塑性樹脂の単量体として用いられるものが適用でき、オレフィン類、塩化ビニル、アクリロニトリル、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
なかでも不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物から選ばれた1種または2種以上が望ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルであり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0009】
共重合体は上記の単量体を公知の懸濁重合、塊状重合、乳化重合、溶液重合等の重合方法で製造できるが、不純物がより少ない点で懸濁重合、塊状重合が好ましい。
【0010】
共重合体の熱処理は、通常、揮発成分除去のための真空機能を有する加熱炉、押出機等を用いて、必要により水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ジエチルアミン、グアニジン、ナトリウムメチラート等の有機塩基化合物、次亜リン酸等の存在下に、150〜350℃、好ましくは220〜320℃の範囲で行われ、共重合体中に6員環酸無水物構造単位を形成させる。150℃より低いと酸無水物構造への閉環が不充分となり、350℃より高いと着色が著しくなり好ましくない。
【0011】
熱処理後の共重合体に含まれる6員環酸無水物の量は3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%が成形加工性、耐熱性の点から好ましい。すなわち6員環構造が3重量%未満の場合は耐熱性、ガスバリア性が低く、51重量%以上の場合は溶融粘度が高く成形加工に支障をきたす。
【0012】
この6員環酸無水物構造単位を有するアクリル系樹脂は酸素バリア性、耐熱性に優れるが、本発明のシートまたは成形体の用途が必要とする薄肉仕様に対しては機械的強度が弱く、かつアクリル系樹脂特有の臭気を有する。したがって、保香性、機械的強度の高いポリカーボネート樹脂と積層することにより目的を達成することができる。
【0013】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、一般的なビスフェノールAを主成分とした炭酸エステル重合体からなるものでよく、必要に応じて着色したものも用いることが出来る。
【0014】
積層シートの製造方法は公知の方法でよく、例えば二台の押出機を用いて、それぞれの樹脂を溶融しダイ内で重ね合わせる共押出法、一台の押出機を用いて6員環酸無水物構造単位を含むアクリル系樹脂を押し出す際に、予め製造されたポリカーボネートシートを貼合する押出貼合法、それぞれの樹脂シートを予め製造しておき、それらを加熱しプレス等で加圧する熱圧着法などが挙げられる。
【0015】
また、成形体の製造方法も公知の方法でよく、例えばトレイの場合は前記の製造方法で製造した積層シートを熱成形機を用いて真空成形、圧空成形する方法が一般的に使用される。
ボトルなどの容器については一般的な多層ボトルの製造方法が適用できる。例えば二本のシリンダを有する射出ブロー成型機を用いて、まずポリカーボネート樹脂を適量金型に充填し、その後6員環構造単位を有するアクリル系樹脂を充填して加圧空気を金型に送り込んで賦形させるインジェクションブロー法、二台の押出機と積層ダイを用いて積層された半溶融状態のパリソンを押し出し、それを金型で挟み込み加圧空気を送り込んで賦形させるダイレクトブロー法などが挙げられる。
【0016】
積層体における6員環酸無水物構造単位を有するアクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂の層の厚みは積層体の使用目的に応じて決定され、特に限定されるものではない。すなわち高ガスバリア性が要求される場合は6員環酸無水物構造単位を有するアクリル系樹脂層を厚くし、高強度が要求される場合はポリカーボネートの層を厚くすることが好ましい。
【0017】
【発明の効果】
本発明の積層シート、成形体は従来のものに比べて、耐熱性、保香性に優れ、かつ従来の耐熱性の包装材料にはない透明性を有することから、食品包装材料として機能面、商品イメージにおいて極めて有用である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
なお、分析、物性の測定方法は次の通りである。
(1)6員環無水構造物の定量:
赤外分光光度計を用い酸無水物構造特有の1805cm−1の吸収を用いて定量した。
(2)全光線透過率
JIS K7105に準拠して測定した。
(3)耐熱性試験
〔積層シート〕
シートに直径100mmの円を書き、温度120℃の熱風循環式オーブン中で1時間加熱し、寸法の変化(収縮率)を測定した。
〔ボトル〕
内容積1.5リットルの中空ボトルを成形して90℃の熱水を充填したのち、80℃の湯浴中に15分浸漬し、内容積の変化を測定した。
(4)酸素透過係数
酸素透過試験機(Mocon社製、2−20型)を用いて等圧法、温度23℃、湿度65%RHの条件で測定した。
(5)保香性
真空成形で成形した幅100mm×長さ150mm×深さ20mmのトレイに沸騰水を入れて蓋をして5分間放置したのち、蓋を取りすぐに臭気を嗅いだ。
(6)トレイの強度試験
真空成形で成形した幅100mm×長さ150mm×深さ20mmのトレイを底部を上にして置き、その中央部に500gの鋼球を1mの高さから落下させた。
【0019】
実施例1
撹拌機の備わった5Lオートクレーブに2.2Lの水と2.4gのヒドロキシセルロースを仕込み溶解したのちに、160gのメタクリル酸と1440gのメタクリル酸メチルと6.4gのラウリルメルカプタン、5.6gのラウロイルパーオキサイドを加え、この混合物を撹拌し80℃に加熱し重合を行った。
1時間40分後に温度を98℃に上げ、更に1時間重合を行い反応を完結させた。その後、重合物を冷却、遠心分離、水洗して80℃で乾燥を行った。
【0020】
この乾燥ビーズにビーズ100部に対して水酸化ナトリウム0.03部をヘンシェルミキサーで混合し、40mm脱気押出機(田辺プラスチック機械製VS−40−28型、L/D=28)を用いてスクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃で造粒を行った。この造粒品中に含まれる6員環無水構造の量は7.8重量%であった。
【0021】
この造粒品とポリカーボネート樹脂(カリバー300−4、住友ダウ社製)を250℃の樹脂温度で共押出成形を行い内層がアクリル系樹脂で両外層がポリカーボネート樹脂からなる全厚み0.5mm、内層厚み0.15mm積層シートを得た。
この積層シートを用いて耐熱性、酸素透過係数、全光線透過率を測定した。
結果を表1に示す。
【0022】
さらにこの積層シートを用いて、加熱温度190℃で真空成形を行い、幅100mm×長さ150mm×深さ20mmのトレイを成形し、保香性と強度を評価した。
結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
メタクリル酸とメタクリル酸メチルの仕込み量を480gと1120gにした以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を第1表に示す。
【0024】
実施例3
実施例1で合成したアクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂(カリバー300−4、住友ダウ社製)を用いて二軸延伸ブロー成形機(日精エー・エス・ビー機械社製、ASB−50TH型)により内層がアクリル系樹脂で両外層がポリカーボネート樹脂の内容積1.5リットルの中空容器を成形した。
【0025】
成形方法は、まず樹脂温度280℃のポリカーボネート樹脂を温度90℃の金型に射出し、その後樹脂温度270℃のアクリル系樹脂を射出しプリフォームを成形した。このプリフォームを180℃に加熱しブロー型に挿入して、20kg/cm2 の圧縮空気を吹き込み、中空容器を得た。この容器の厚みは0.4mmで内層のアクリル系樹脂層の厚みは0.12mmであった。
この中空容器の耐熱性と酸素透過係数と全光線透過率を測定した。
結果を表2に示す。
【0026】
比較例1
ポリカーボネート樹脂(カリバー300−4、住友ダウ社製)を250℃で押出を行い0.5mm厚みの単層シートを作成し実施例1と同様の成形と評価を行った。
結果を表1に示す。
【0027】
比較例2
実施例1の6員環構造単位を有するアクリル系樹脂を250℃で押出を行い、0.5mm厚みの単層シートを作成し実施例1と同様の成形と評価を行った。
結果を表1に示す。
【0028】
比較例3
ポリエチレンテレフタレート樹脂(EASTMAN 9921)を用いて二軸延伸ブロー成型機により単層の中空容器を成形した。樹脂温度280℃、金型温度20℃でプリフォームを成形し、このプリフォームを90℃に加熱して85℃のブロー型に挿入し、30kg/cm2 の圧縮空気を吹き込み、内容積1.5リットルの中空容器を得た。この中空容器厚みは0.35mmであった。
この中空容器を実施例3と同様の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
Claims (4)
- アクリル系樹脂およびポリカーボネート樹脂をインジェクションブロー法またはダイレクトブロー法を用いて成形してなる請求項1記載の食品包装材料。
- アクリル系樹脂の層に含まれる6員環酸無水物単位の含有量が5〜50重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の食品包装材料。
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JP09096996A JP3557783B2 (ja) | 1996-04-12 | 1996-04-12 | 耐熱性、ガスバリア性に優れたシートおよび成形体 |
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