JP3556735B2 - 電動パワーステアリング装置の減速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電動パワーステアリング装置の減速機構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は一般的なラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置の全体図を示し、図5は、電動モーターmと減速機Rからなる電動駆動部の従来例を示すものである。
車輪1は、ナックルアーム2を介して操舵リンク3に連結している。この操舵リンク3にはラック4を形成するとともに、このラック4には、ピニオン軸5に形成したピニオン5aと、減速機Rのピニオンシャフト6に設けた第2のピニオン7とをかみ合せている。
この減速機Rは、電動モーターm側に位置するA列側遊星ギア機構と、ピニオンシャフト6側に位置するB列側遊星ギア機構と、ケース8の内周側に設置されたA列側リングギア20とB列側リングギア21とから構成されている。B列側リングギア21は複数のピン24によってその回転を規制されている。一方A列側リングギア20は、摩擦式トルクスリップ機構27のスプリング29により押し付けられるパッド28との間の摩擦力により、その回転を規制している。
【0003】
このA列側遊星ギア機構は、電動モーターmの出力軸11に固定されたA列側サンギア12と、A列側プラネットギア13と、A列側リングギア20と、A列側キャリア15とから構成されている。
A列側プラネットギア13は、A列側サンギア12に噛み合うとともに、A列側リングギア20にも噛み合い、上記A列側サンギア12からの回転力により自転しながらA列側サンギア12の回りを公転する。A列側キャリア15は、A列側プラネットギア13にベアリング14を介して連結され、A列側プラネットギア13の自転を許容するとともに、A列側プラネットギア13の公転にともなって回転する。
また、B列側遊星ギア機構は、上記A列側キャリア15に固定されたB列側サンギア16と、このB列側サンギア16及び上記B列側リングギア21の両方に噛み合うB列側プラネットギア17と、このB列側プラネットギア17にベアリング18を介して連結されたB列側キャリア19とから構成されている。
【0004】
B列側プラネットギア17は、B列側サンギア16からの回転力により自転するとともに、上記B列側リングギア21に沿ってB列側サンギア16の回りを公転し、B列側キャリア19は、B列側プラネットギア17の自転を許容するとともに、B列側プラネットギア17の公転にともなって回転する。
なお、B列側キャリア19はピニオンシャフト6に固定され、A列側キャリア15とB列側サンギア16をA列側プラネットギア13とB列側プラネットギア17とで支持している。図5中の符号22はオイルシール、23はベアリングである。
ステアリングホィール25とともに入力軸26を回すと、それに関連してピニオン軸5が回転しようとするが、このとき車輪1の接地抵抗のためにラック4が移動しがたいのでピニオン5aが回転しない。このようにピニオン5aが回転しないと、そこにひずみが発生するが、このひずみは図示していない歪センサで検出されてコントローラCに伝達される。
【0005】
そして、このコントローラCは、上記歪センサーからの信号に応じて電動モーターmを回転させる。このように電動モーターmが回転すれば、その出力軸11とともにA列側サンギア12が回転する。このA列側サンギア12の回転により、A列側プラネットギア13が、自転するとともにA列側リングギア20に沿ってA列側サンギア12の回りを公転する。このようなA列側プラネットギア13の公転によりA列側キャリア15が回転する。A列側キャリア15が回転すれば、B列側サンギア16が回転するとともに、その回転にともなってB列側プラネットギア17が自転しながらB列側リングギア21に沿ってB列側サンギア16の回りを公転する。B列側プラネットギア17の公転により、B列側キャリア19が回転し、さらにピニオンシャフト6が回転する。このような作用により電動モーターm側の回転が減速された状態でピニオンシャフト6側に伝達される。
上記のようにしてピニオンシャフト6が回転すれば、それに固定した第2のピニオン7も回転してラック4を左右いずれかに移動して車輪1を転舵させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような減速機Rでは、A列側プラネットギア13を支持し、B列側サンギア16を固定するA列側キャリア15が、A列側プラネットギア13とB列側プラネットギア17とでフローティング支持される構造となっているため、バックラッシュ分や、各ギアなどの部品の、寸法精度のばらつきによって、ギアの噛み合いが不均一になることがあった。ギアの噛み合いが不均一になると、電動モーターmの駆動力の滑らかな伝達ができずに、振動や異音が発生する原因となる。
また、部品の寸法精度だけに頼って、滑らかなギアの作動を確保するためには、非常に高い部品精度が要求されることになる。
そこで、本発明の目的は、減速機ギアの噛み合いによる振動や異音の発生を低減することである。
また、高い部品精度を必要としないで、プラネットギア列の自動調芯機能を有する電動パワーステアリング装置用減速機を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電動パワーステアリング装置の減速機は、電動モーターの出力軸と車輪に連繋されたラックに噛み合うピニオン軸との間に、それぞれサンギアとリングギアとプラネットギアを備えた、電動モーター側に位置するA列とピニオン軸側に位置するB列の2組の遊星ギア機構を備えた減速機構を配置してなる電動パワーステアリング装置の減速機において、上記A列側遊星ギア機構のA列側プラネットギアを円筒状の内ギア部と外周にギア歯を形成した外側ギア部とに分割して構成し、両ギア部を所定の間隙を保って遊嵌させ、かつ、上記内側ギア部はA列側遊星ギア機構のキャリアに設けたプラネットギア軸にベアリングを介して回転自在に支承するとともに、上記内側ギア部の外周面あるいは、外側ギア部の内周面に軸方向に間隔を保って複数個の環状溝を形成し、この環状溝に各々弾性リング部材を装着することによって、上記外側ギア部が、弾性リング部材を介して内側ギア部に支持されるとともに、上記外側ギア部が、内側ギア部に対し、上記所定の間隙の範囲内で径方向に相対変位可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
【作用】
電動モーターmが回転すれば、減速機がその駆動力を減速して、ピニオンシャフトへ伝達する。
減速機のA列側プラネットギアは、内側ギア部と外側ギア部とからなり、弾性リング部材を介して径方向に相対変位可能にフローティング支持されている。このため、A列側サンギアとA列側プラネットギア、あるいは、A列側プラネットギアとA列側リングギアとの噛み合いが悪いと振動や異音が発生することになるが、A列側サンギアとA列側プラネットギアの噛み合い反力と、A列側プラネットギアとA列側リングギアとの噛み合い反力が釣り合うように、軸方向に隔置された複数個の弾性リング部材が変形する。
この複数個の弾性リング部材の変形によって、内側ギア部に対して外側ギア部が、平行同軸状態を保持して径方向に変位する。つまり、自動調芯され、A列側サンギアとA列側プラネットギア、あるいは、A列側プラネットギアとA列側リングギアとの噛み合いは、常に、均一で安定なものとなる。
【0009】
【実施例】
図1、図2に示す第1実施例は、従来例のA列側プラネットギア13が外側にギア歯を形成した外側ギア部13aと円筒状の内側ギア部13bとからなる以外は、従来例と同様であり、図1と図5において、同一の部品には、同一の符号を付した。
図1は、図4と同様の一般的なラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置の電動モーターmと減速機Rからなる電動駆動部を示し、図2は、A列側プラネットギア13部分の拡大断面図である。A列側プラネットギア13は、外側ギア部13aと、筒状の内側ギア部13bと、弾性部材であるOリング10とからなり、内側ギア部13bの内径にベアリング14が圧入されている。
内側ギア部13bの外周には、軸方向に間隔を隔てて2個の環状溝9が形成され、この環状溝9にOリング10を装着した状態で、外側ギア部13aの内径部に嵌合させる。この際、内側ギア部13bの外径と外側ギア部13a内径と間には、間隙cを有することにより、外側ギア部13aは、Oリング10を介して、内側ギア部13bに対し、径方向に相対移動可能にフローティング支持される。
【0010】
本実施例の減速機Rの基本的動作は、従来例と同様であるので、詳細は省略する。
内側ギア部13bは、ベアリング14を介して、相対回転可能にA列側キャリア15に設けたプラネットギア軸に支承されているが、外側ギア部13aは軸方向に隔てた複数個のOリング10の弾性変形により、間隙c分だけ、内側ギア部13bに対して、その軸線が傾くことなく径方向に相対変位が可能である。したがって、各ギアの部品精度などにより、A列側サンギア12とA列側プラネットギア13、あるいは、A列側プラネットギア13とA列側リングギア20との噛み合いが悪い場合、A列側サンギア12とA列側プラネットギア13の噛み合い反力と、A列側プラネットギア13とA列側リングギア20との噛み合い反力がつりあうよう、Oリング10が変形して、内側ギア部13bに対して外側ギア部13aが変位する。つまり、軸線が傾くことなく自動調芯され、A列側サンギア12とA列側プラネットギア13、あるいは、A列側プラネットギア13とA列側リングギア20との噛み合いは、常に、均一で安定なものとなる。
このように、ギアの噛み合いが、均一になれば、がたつきによる異音の発生は無くなる。また、振動も、Oリング10の弾性が吸収することで減衰される。
【0011】
図3に示す第2実施例は、内側ギア部13bの代わりに外側ギア部13aの内周部に2個の環状溝9を形成した以外は、第1実施例と同様である。
この場合も、複数個の環状溝9を軸方向に間隔を保って形成したので、複数個のOリング10が軸方向に間隔を保って装着される。このため、外側ギア部13aと内側ギア部13bの回転軸線が傾き難く、A列側プラネットギア13とA列側サンギア12および、A列側プラネットギア13とA列側リングギア20の噛み合い幅が長くなり、噛み合いが、より安定し、異常摩耗や偏摩耗を防止できる。
外側ギア部13aに偏荷重がかかった場合には、Oリング10が変形し、内側ギア部13bに対し、外側ギア部13aが傾き、偏荷重を逃がす効果がある。
なお、外側ギア部13aと内側ギア部13bの半径方向の間隙c量および、Oリング10などの弾性部材の弾性率を調整すれば、異音の低減や振動減衰効果のチューニングが可能である。
特に、音および、振動に対して厳しい車両に対しては、A列側ギアにクラウニング加工や消音効果のある表面処理当を施せば、さらに効果はあがる。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、A列側プラネットギア内側ギア部と外側ギア部とに分割して構成し、両ギア部が径方向に相対変位可能な構成とするとともに、両ギア部間に、軸方向に隔置して複数個の弾性リング部材を介在させたので、部品精度のばらつきを自動調芯機能により吸収できる。
このため、特に高度な部品精度を必要とせずに、ギアの噛み合いが均一で、安定なものとなり、異音や、振動の発生を防止できる。また、特に、内側ギア部と外側ギア部の間に装着した軸方向に隔置した複数個の弾性リング部材がギア部の軸線の傾きを復元するように反発力を発生して、軸を平行に保つので、ギアの噛み合いの均一性を確保できるとともに、ギアの噛み合いにより発生する振動を安定的に減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の断面図である。
【図2】第1実施例のA列側プラネットギア部分の拡大断面図である。
【図3】第2実施例のA列側プラネットギア部分の拡大断面図である。
【図4】一般的な電動パワーステアリング装置の構成図である。
【図5】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 車輪
4 ラック
5 ピニオン軸
9 環状溝
10 Oリング
11 出力軸
12 A列側サンギア
13 A列側プラネットギア
13a 外側ギア部
13b 内側ギア部
15 A列側キャリア
16 B列側サンギア
17 B列側プラネットギア
19 B列側キャリア
20 A列側リングギア
21 B列側リングギア
R 減速機
m モーター

Claims (1)

  1. 電動モーターの出力軸と車輪に連繋されたラックに噛み合うピニオン軸との間に、それぞれサンギアとリングギアとプラネットギアを備えた、電動モーター側に位置するA列とピニオン軸側に位置するB列の2組の遊星ギア機構を備えた減速機構を配置してなる電動パワーステアリング装置の減速機において、上記A列側遊星ギア機構のA列側プラネットギアを円筒状の内ギア部と外周にギア歯を形成した外側ギア部とに分割して構成し、両ギア部を所定の間隙を保って遊嵌させ、かつ、上記内側ギア部はA列側遊星ギア機構のキャリアに設けたプラネットギア軸にベアリングを介して回転自在に支承するとともに、上記内側ギア部の外周面あるいは、外側ギア部の内周面に軸方向に間隔を保って複数個の環状溝を形成し、この環状溝に各々弾性リング部材を装着することによって、上記外側ギア部が、弾性リング部材を介して内側ギア部に支持されるとともに、上記外側ギア部が、内側ギア部に対し、上記所定の間隙の範囲内で径方向に相対変位可能に構成したことを特徴とする電動パワーステアリング装置の減速機。
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