JP3556662B2 - 銅耐性酵母菌の産生するペクチナーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、銅耐性酵母菌の産生するペクチナーゼ、およびその使用方法に関する。
また、本発明はペクチン含有物中のペクチンの分解方法に関する。さらに本発明はガラクツロン酸を生産する方法に関する。
我が国において、以前に公害においても河川に排水が流入し、鉱毒の被害が非常に広範囲に渡り、人体への深刻な影響が取りざたされた。銅による足尾銅山鉱毒事件(1890年頃)、メチル水銀による水俣病(1950年代)、カドミウムによるイタイイタイ病(1940年頃)がそれである。しかし、細胞レベルで見た場合、重金属が生物にどのような影響をおよぼすかについては不明な点が多い。自然環境下で重金属の影響を最初に受けるのは微生物である。生体への作用を明らかにすること、また、河川、土壌などの汚染区域の浄化などを目的として重金属耐性菌が数多く取得されてきており、利用された多くの微生物は細菌類だった。
また、重金属耐性の中でも、銅耐性微生物とその耐性に関わる報告がこれまでに、多くなされてきた。大腸菌では、ある種のプラスミドが関与しており、Cu(+2)がCu(+1)に還元されることによって銅耐性を有している(Brown et al., 1992)。また、出芽酵母S. cerevisiae でも銅耐性株が得られており、この株では、大量のH2Sの生成によりCu(+2)を不溶性のCuSにして無毒化し、1 mM程度の銅に対する銅耐性を獲得している(Ashida, 1965)。このように従来知られてきた微生物の銅耐性機構においては、細胞内に銅イオンを取り入れ、Cu(+2)がCu(+1)に還元されることが耐性の基本となっている。このような研究の多くは細菌類について行なわれており、実際にこれまでに利用された多くの微生物は細菌類であった。上述のS. cerevisiaeは真核生物における数少ない研究例の一つである。
酵母は真核生物の代表例であり、真核生物の別の代表例であるヒトに対する重金属の影響を考慮する上で重要な微生物である。酵母の分離源は動植物の表層または内部、土壌、大気、河川など広範囲にわたっている。海洋からの酵母の分離例は少ないが、有人潜水調査艇「しんかい2000」および「しんかい6500」によって採取された深海底泥サンプルから相模湾(深度1100〜1400m)から24株、日本海溝(深度4500〜6500m)から13株の深海酵母が取得されている。このような特殊な環境に棲む酵母菌は、前述したようにそれ自体が入手困難であったため、その性質は従来あまり明らかにされ得なかった。また、そのような深海底酵母菌がどのような酵素を分泌するかについても未知であった。
一般に酵素は食品や化粧品の分野で種々の応用例が知られており、特に食品業界では透明果汁の製造、柑橘類柑橘類内果皮を取り除くための手段としてペクチンを分解するペクチナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ等が用いられている。ペクチンは植物体の非木質化組織に特有の酸性多糖類で、甘橘類果実の皮、リンゴなどの果実、液汁に富む根など、多くの植物の細胞壁および細胞間物質を形成し、ガラクタンやアラビナンと結合して存在していることが知られている。また、果実を原材料とする食品業界では、果実を得るため除去された膨大な量の果皮は廃棄されるので、その処理に係るコストや資源の有効利用という観点から問題とされてきた。一方、ペクチン分解物であるガラクツロン酸は酸味剤として食品加工の際に使用されることがあり、かつ、ノンカロリーであるためダイエット食品としても注目されているため、資源の有効利用が望まれている。さらに、果皮には一般に果肉を上回る量のビタミン類が含まれているのにも拘わらず、果皮と一緒に廃棄されることとなるので、この点でも資源の有効利用がなされていなかったと言える。従って、ペクチンを効率よく分解する方法が望まれており、特に、幅広い条件下で高い活性を有するペクチナーゼおよび、そのようなペクチナーゼを安価かつ大量に供給する方法が強く望まれていた。
一方、酵母のペクチナーゼに関してこれまでにいくつかの報告がある。例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae が分泌するペクチナーゼは、至適pHがpH5.5、至適温度が45℃である(Blanco, et al., 1994)ことが知られている。一方、Cryptococcus albidusが分泌するペクチナーゼについての報告は非常に少なく、Brown et al.(1985)によれば、Cry. albidusが分泌するペクチナーゼは分子量が41,000、至適pHはpH3.7、至適温度は37℃であると記載されている。また、現在までに報告されているペクチナーゼは、Hg2+、Cu2+、Fe2+、Al3+が存在するとタンパク質の変性によりほとんど失活してしまうことが知られている。
しかしながら、ペクチンを分解する酵素がこのような深海底酵母菌において産生されているか、および、分泌されているか否か、その物理化学的および生化学的特性がどのようなものであるかについての詳細な報告はなかった。
本発明の目的は銅耐性ペクチナーゼを提供することである。
また、本発明の別の目的は低温においても高い活性を有するペクチナーゼを提供することである。
本発明の更なる目的は、果実の果皮を効率よく分解する方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、ガラクツロン酸の生産方法を提供することである。
本発明は、銅耐性酵母菌が産生するペクチナーゼおよびその利用法である。
特に、本発明は、深海底泥から分離した銅耐性酵母Cryptococcus sp. N6株が産生するペクチナーゼおよびその利用法である。
本発明の酵母菌、Cryptococcus sp. N6株は通商産業省工業技術院生命工学工業研究所(現、独立行政法人、産業技術総合研究所、特許生物寄託センター)にFERM BP-6998の受託番号の下に寄託されている。
本発明により、高濃度の銅に耐性の酵母、およびその酵母の産生するペクチナーゼが提供される。本発明により、高濃度の銅イオン存在下で酵母菌またはその分泌するペクチナーゼによるペクチン分解を行なうことができる。また、本発明のペクチンにより、低温においてもペクチンを分解することが可能である。
本発明においては、まず、深海底から採取した泥から適切な培地および選抜方法を用いて酵母菌株が単離される。特定の新規な微生物の機能を研究する際、比較対照とする菌株を選定することは一般に重要であるため、本発明においては最初にこの酵母菌の属が決定される。次に、それによって得られた知見から対照菌株が選ばれ、銅耐性の評価および銅の取込能の評価が行なわれる。さらに、単離された酵母菌株が分泌するペクチナーゼが単離され、その物理化学的性質および生化学的性質が決定される。本明細書においては、本発明の酵母菌、FERM BP-6998は、Cryptococcus sp. N6株または、Cryp. sp. N6株または単にN6株と記載されることがある。
本発明において深海酵母は深海泥から適当な培地および培養条件を用いて単離することができる。培地及び培養条件は当業者によく知られた一般的な培地および条件を使用することができる。この場合、糸状菌などの他の微生物の混入を除去するために使用し得る既知の手段を併せて使用してよい。このようにして単離した深海酵母菌の分類上の同定は一般に微生物の分類同定に使用される方法によればよく、例えば、コロニーの形態、糖の資化性、発酵能、硝酸資化性、ビタミン要求性、カロテノイド生産性などを指標に分類される。より詳しい属の決定は、例えば、18S rDNAの塩基配列によって決定されるのが好ましい。
次に、単離した深海酵母の増殖および生存率に対する重金属の影響が調べられる。重金属はイオンとして培地中に与えられ、具体的には硫酸塩、塩化物等として与えられる。例えば、銅の場合、硫酸銅(CuSO4)あるいは塩化銅(CuCl2)として与えることができる。対数増殖期まで増殖させた酵母菌をこのような培地中で一定時間培養し、その菌体数が算定される。菌体数の産生は血球計算盤によるのが好ましいが、他のどんな方法を使用してもよい。一方、生存率は対数増殖期まで増殖させた酵母菌を重金属イオンを含む培地中に移し、一定時間培養後、増殖培地に移して更に増殖させて出現したコロニー数をカウントすることによって計算される。計算式は以下の通りである。

生存率CFU(%)=(出現したコロニー数)/YPD寒天培地に塗布した細胞数x100

または、より簡単には、重金属を含む寒天培地に酵母菌をスタッビングし、一定時間培養後に得られるコロニーの大きさが比較される。
本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌の培養においては、通常の酵母の培養と同様な温度が使用され、約15℃〜約26℃程度が好ましく、約24℃〜約26℃が特に好ましいが必要に応じて約1℃〜約15℃の低温で培養してもよい。本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌の銅耐性確認のためには、培地中の銅イオンの濃度が約1mM〜約10mMであることが好ましく、約5mM〜約10mMであることが特に好ましい。更に高濃度の銅に耐性である酵母菌を得るために、同イオンに対して本発明の酵母菌を順化させることができる。この場合、銅イオン濃度1mMの濃度の培地中で生育した酵母菌を選抜し、徐々に銅イオン濃度の上昇する培地に酵母菌を移して順化させる。この方法により、少なくとも約50mMまでの銅イオンを含む培地中で生育する酵母を得ることができる。50mMの銅イオン濃度は猛毒であることが知られている。
更に、本発明のペクチナーゼを産生する酵母は20mMを越える高濃度の銅イオン存在下で培養されると菌体内に多量の銅を取り込むことができる。本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌へ銅イオンを取り込ませるためには、単に高濃度の銅イオンを含む環境で培養すればよい。培養時間は少なくとも30分間、通常約1〜15時間、好ましくは約1時間〜約8時間、特に好ましくは約4時間〜6時間程度である。培養に際して、銅イオン濃度以外は酵母菌の培養に通常用いられる条件を使用することができる。本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌菌体内へ銅を取り込ませるためには外液の銅イオン濃度が約20mM以上であることが好ましく、外液の銅イオン濃度が約20mM〜約50mMであることが更に好ましい。このような条件で本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌を培養することにより、酵母菌体内あるいはその細胞表面に約100pppm〜約200ppm程度まで銅を蓄積させることができる。または、本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌を固定化した膜またはカラムに銅を含む溶液を通過させることによって銅を菌体内または菌体表面に蓄積させることができる。このような方法によって銅を蓄積させた菌体を回収し、バッファー中で菌体を常法に従って破砕し、次に菌体破砕物を遠心等によって除去した後、一般に知られた方法によって銅を回収することができる。このような目的に適したバッファーおよび菌体破砕方法は当業者によく知られたものである。
上述したような銅耐性酵母がどのような酵素を分泌するかは、酵素に応じて一般的に知られた方法で調べることができる。特に、ペクチナーゼ活性を有する酵素を分泌するか否かは例えばペクチンを含む寒天培地上で形成されるハローの有無を調べることによって行なうことができる。このような方法によって、上述したような銅耐性酵母菌株がペクチナーゼを産生することが確認される。従って、本発明のペクチナーゼは本発明のペクチナーゼを産生する酵母菌を培養し、その培養液を精製することによって得ることができる。本発明のペクチナーゼの精製は、本発明の酵母菌の培養液に対して通常ペクチナーゼの精製に使用される方法を適用することによって行なうことができる。簡単にいえば、以下のようにして培養液中に分泌されたペクチナーゼを精製することができる。
YAP液体培地などの適当な培地で酵母菌を約24℃で15時間程度培養した培養液を約5分間遠心(8000 rpm)し、培養上清を調製する。この上清を、タンパク質の分画に使用される一般的な方法である硫安沈殿法に供する。硫安沈殿によって得られる各画分は、以下に述べる測定法によってペクチナーゼ活性について調べられる。ベクチナーゼ活性が認められた画分を、対応する硫酸アンモニウム濃度の水溶液で洗浄後、適切な緩衝液、例えば10 mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解し、一晩脱塩する。脱塩はゲル濾過または透析によるのが好ましい。次に、これを陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、単一のタンパク質分子種を含むフラクションを得る。分子量の決定のためには、この技術分野で知られたどんな方法も使用することができ、例えばSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決定することができる。このように精製されたベクチナーゼはそのまま使用、あるいは低温にて保存することもできるが、濃縮してもよい。各試料の濃縮には、商業的に入手可能な遠心式限外ろ過ユニット、例えばミリポア社のメンブレン装着ウルトラフリー15ユニットなどを用いることができる。また、必要に応じて、得られたペクチナーゼを凍結乾燥して保存することもできる。
ペクチナーゼ活性は以下のように測定される。べクチナーゼ活性の測定は、この酵素の活性測定に使用される一般的方法を使用することができ、例えば、Grossら(Gross., K.C., Hort. Science, 17, 933-934, 1982) によるガラクツロン酸の定量法を利用することができる。簡単に言うと、酵母菌をYAP液体培地中で24℃程度にておよそ15時間培養し、その上清をペクチナーゼ精製のための出発材料とする。ペクチン標品は不純物を多く含んでいるため、酵素活性測定用の基質には、ポリガラクツロン酸(Sigma, P-3889, Rot No.106H1004)を80 %エタノールで洗浄して用いるのが好ましい。0.2%程度の一定の濃度にポリガラクツロン酸を溶解した0.2M 酢酸緩衝液(pH5.0)に1/9容の試料を加え、24℃で1〜3時間反応させる。この反応物1/10容に、氷冷した100 mM ホウ酸緩衝液(pH9.0 )を5倍量加え、次いで、0.2% 2-Cyanoacetamide(Wako, 030-04942, Rot No.PAQ1877)溶液を試料と等量加えて、100℃で約10分間加熱し、276 nmにおける吸光度(A276) を測定する。また、別法として反応物の一定容量に3,5-dinitrosalicylic acid(DNS)試薬3倍量を加え100℃で10分間加熱し、500nmにおける吸光度(A500)を測定してもよい(DNS法)(Summer, 1921 ; Hostettler et al., 1951 ; Borel et al., 1952)。活性は、1分間に276nmにおける吸光度(A276)が1変化した場合に1ユニット(1U)と定義し、その1/1000をmUとして、または、各測定において活性の最高値を100としたときの相対値をパーセント(%)で表記する。比活性は、タンパク質1μgあたりのユニット数(U/μg)として定義する。
上述の方法によって精製ペクチナーゼが得られたならば、次にそれらのアミノ酸配列が解析される。アミノ酸配列の決定はこの技術分野で知られた一般的な方法を使用することができ、商業的に入手可能な全自動アミノ酸シーケンサーを利用してよい。本発明のペクチナーゼは、ペクチンを分解するために通常のペクチナーゼと同様な方法で使用することができるが、通常のペクチナーゼと異なる銅イオン環境下、温度下でも活性を有するため、より広範囲の条件において、例えば20℃程度の低い温度、あるいは10mM程度の銅イオン存在下において作用させることもできる。特に、本発明のペクチナーゼは0℃付近の低温領域から70℃付近の高温領域にわたって活性を維持するため様々環境で使用することができる。より具体的には、例えば、pH4〜6、温度約0℃〜60℃において本発明のペクチナーゼを作用させることができる。
特に、本発明の分子量約36kのペクチナーゼは約0℃〜約50℃、好ましくは約10℃〜約40℃、更に好ましくは約20℃〜約40℃、最も好ましくは約20℃〜約40℃で作用させる。分子量約40kのペクチナーゼは約0℃〜約60℃、好ましくは約10℃〜50℃、更に好ましくは約10℃〜約40℃、最も好ましくは30℃〜50℃で作用させる。しかしながら、本発明の2種類のペクチナーゼはいずれも低温での活性がかなり高いため、0℃〜20℃においても使用することができる。従って、二種類のペクチナーゼは目的または環境に応じて選択することができる。
本発明のペクチナーゼはペクチン含有物、例えば果実の果皮を分解するために使用することができる。このためには本発明の精製あるいは部分精製ペクチナーゼをペクチン含有物、例えば果実の果皮に直接添加することができるが、より簡便には本発明のペクチナーゼを分泌する本発明の酵母菌をペクチン含有物、例えば果実の果皮の存在下で培養する、あるいは、本発明の酵母菌の培養上清を直接あるいは部分精製および/または濃縮してペクチン含有物と接触させてもよい。この場合、他の微生物の増殖を抑えるため、果実の果皮などのペクチン含有物を予め滅菌処理してもよい。滅菌処理を行なう場合、その方法は処理後に酵母の生存またはペクチナーゼの活性を阻害しない方法であればよく、一般には高温殺菌処理が使用される。また、本発明のペクチナーゼを作用させる条件は、上述したペクチナーゼの活性を有する範囲で選択することができる。例えば、温度範囲として約0℃〜約60℃、pH範囲として4〜6を選択することができる。
この条件は分解すべきペクチン含有物の性質および分解の目的に応じて選択することができる。しかしながら、本発明のペクチナーゼの供給源として本発明の酵母菌を直接使用する場合は、この酵母菌が増殖し得る条件が更に好ましい。例えば、温度しては室温〜約37℃を使用することができる。このような方法によって、ペクチン含有物、例えば果実の果皮を容易かつ簡便に分解することができ、また、ペクチンの分解産物であるガラクツロン酸を含む分解産物を得ることができる。ペクチン含有物として果実の果皮を使用する場合は、ガラクツロン酸および種々のビタミン類を含む分解産物を得ることもできる。これらの分解産物は、固形成分を除去した後、当業者に善く知られた方法で処理され、処理後の分解産物からガラクツロン酸およびビタミンを回収することができる。
実施例1.深海酵母の同定
(1)分類学
糖資化能、発酵能、硝酸資化能糖についてN6株の性質を調べた。その結果を表1に示す











表1.N6株の特性
形態:球形
糖の資化性:
G Ra Er Su St Ri Ma Xy Mn Ce Ar Sa Tr Ri Ca La Rh I Mz Me
+ + - + + + + + + + + - + + - + + + + +
発酵能:
G Ga Ra Ma Su Tr La
-
硝酸資化性:+
ウレアーゼ:−
ビタミン要求性:+
カロテノイド生産:+
デンプン分解:−
DNase産生:−
G:ガラクトース、Ra:ラフィノース、Er:エリスリトール、Su:スクロース、St:可溶化デンプン、Ri:リビトール、Ma:マルトース、Xy:D-キシロース、Mn:D-マンニトール、Ce:セロビオース、Ar:L-アラビノース、Sa:コハク酸、Tr:トレハロース、Ri:D-リボース、Ca:クエン酸、La:ラクトース、Rh:L-ラムノース、I:イノシトール、Mz:メレチトース、Me:メリビオース
(2)18S rDNAの部分塩基配列の決定
YM(0.5% Bacto peptone 、0.3% Bacto yeast extract 、 0.3% malt extract 、1.0 % glucose )寒天培地で培養した Cryptococcus sp. N6株を白金耳で少量とり、Extraction buffer( 50 mM Tris-HCl(pH7.5), 50 mM EDTA, 3% SDS) 200μlに懸濁し、スパチュラ1杯分の酸化アルミナを入れ氷槽中で1分間ミクロプレステルですり潰した。その中にTE(50mM Tris-HCl(pH8.5), 1mM EDTA)で飽和にしたフェノール100μl、クロロホルム 100μl入れ、3分間激しく懸濁した後、、1分間遠心(1200 rpm)した(フェノール・クロロホルム抽出)。その上清に、クロロホルム 100μl加え、1分間激しく懸濁した後、1分間遠心(1200 rpm)した上清を取った(クロロホルム抽出)。これに3M酢酸ナトリウム(pH5.2)20μl、イソプロパノール200μl加え、-20℃で10分間冷却後、20分間遠心(1200 rpm)し上清を捨てた(イソプロパノール沈澱)。残った沈澱物を70%エタノールで洗浄し脱塩した後、10分間、真空遠心乾燥機で乾燥させ、TE 200μlに溶解した。これにRNase(RNase A 80 mg/ml、RNase 1T 50 units/ml)10μl加え、37℃、1時間反応させた。この溶液に対し、フェノール・クロロホルム抽出1回、クロロホルム抽出1回、イソプロパノール沈澱を行い、これをPCR用鋳型DNAとした。
これをNS1(gTA gTC ATA TgC TTg TCT C )(配列番号1)およびNS8 ( TCC gCA ggT TCA CCT ACg gA)(配列番号2)をプライマーとしEx Taq Kits(TaKaRa)を用いてPCR(94℃、2分→(94℃、1分→58℃、1分→72℃、2分)を30回)を行った。次いで、プライマーとして、NS1 (gTA gTC ATA TgC TTg TCT C)、NS2 ( ggC TgC Tgg CAC CAg ACT TgC )(配列番号3)、NS3( gCA AgT CTg gTg CCA gCA gCC)(配列番号4)、NS7 ( gAg gCA ATA ACA ggT CTg TgA TgC)(配列番号5)を用い、SewuiTherm Long-Read Sequencing(EPICENTRE TECHNOLOGIES) Kitsで行った。PCR(95℃、2分→(95℃、30秒→50℃、15秒→70℃、15秒)を30回→4℃)を行った後、18S rDNAの部分塩基配列を決定後、データベース上で既知種との比較を行った。
N6株の18SrDNAの塩基配列を解析した結果、Cryptococcus albidus と98.6%の相同性が見い出された。そこで、N6株はCryptococcus 属に属する担子菌であるものと判断し、Cryptococcus albidus の標準菌株 IFO 0378株を比較対照株として選択した。
実施例2.増殖におよぼす銅イオンの影響
(1)銅イオンの増殖曲線におよぼす影響
YPD(1.0% Bacto yeast extract、2.0% Bacto peptone、2.0% glucose)液体培地で、対数増殖期中期(1.0×107cells/ml)まで増殖させた N6株および、Cry. albidus IFO 0378株の培養液に終濃度0、1、10および20mMとなるよう塩化銅(CuCl2)あるいは硫酸銅(CuSO4)を添加し、24℃で培養した。その後、2、4、8および10時間後に、血球計算盤を用いて菌体数を算定した。その結果、N6株は、CuCl2あるいはCuSO4の終濃度が、1〜10 mMのYPD液体培地においては、通常のYPD液体培地とほぼ同様に増殖した(図 1A)。一方、Cry. albidus IFO 0378株では、CuCl2あるいはCuSO4を加えた場合、1 mMでは、2時間を経過したところで、徐々に増殖速度が低下し始め、10 mMにおいては、増殖不可能であった(図 1B)。
(2)順化による銅耐性の向上
上述のようにN6株は、CuSO4 10 mMまで含む培地中で増殖可能であることが明らかになった。そこで、順化によりどの程度までCuSO4に対するN6株の耐性が向上するのかを調べた。順化培養は、26℃でYPD寒天培地上で行い、1mM CuSO4を含む培地で生えてきた菌体を5mM CuSO4を含む培地に植え継ぐことによって行なった。その結果、増殖速度についてはYPD寒天培地に含まれるCuSO4の濃度が1〜20 mMであれば、通常のYPD寒天培地と同程度であり、20 mM以上では徐々に増殖速度が遅くなったが、最終的にはCuSO4を50 mMまで含む培地上で増殖可能なことがわかった。このとき、コロニーの色がもとの黄白色から徐々に水和した銅イオンの色である淡青色に変わっていくことが観察された。
一方、比較対照として用いたCry. albidus IFO 0378株、清酒酵母Saccharomyces cerevisiae IFO 2347株、 あるいは典型的な海洋酵母であるRh. ingeniosa IFO 10002株では、1 mM CuSO4 を含むYPD寒天培地において増殖速度が遅くなり、5 mMでは、殆ど増殖しなかった。これらの結果を表2にまとめた。以上と同様な結果が、 CuCl2を用いた場合でも認められた。





















Figure 0003556662
+++:良好に増殖、++:中程度の増殖、+:増殖可能、−:増殖不可能
実施例3.生存率におよぼす銅イオンの影響
YPD液体培地で、対数増殖期中期(1.0×107cells/ml)まで増殖させたN6株およびCry. albidus IFO 0378株の培養液に終濃度0、1、10および20mMとなるようCuCl2あるいはCuSO4を添加し、24℃で培養した。その後、2、4、8および10時間後に、菌液をYPD寒天培地に塗布し、26℃で2日間培養し、出現したコロニー数から生存率を算定した。
その結果、N6株は、1 mM CuSO4を含むYPD液体培地中では100%が生菌であることがわかった。また、10 mMのCuSO4を培地に加えたところ、10時間後まで急激に生存率は低下したが、その後、徐々に生菌数が増えていくことがわかった(図 2A)。一方、Cry. albidus IFO 0378株では、1 mM CuSO4を加えただけで生存率が著しく低下し、10 mM CuSO4存在下では25時間後に菌は完全に死滅した(図 2B)。なおN6株およびCry. albidus IFO 0378株を集菌したところ、生菌は白色であるが、死菌は、濃青色になることが観察された。以上と同様な結果がCuCl2を用いた場合にも得られた。
実施例4.菌体内銅濃度の測定
対数増殖期中期のN6株にCuSO4を加えて培養し、一定時間培養後の菌体内に含まれる銅を原子吸光法によって測定した。その結果を図3に示す。CuSO4濃度を添加しない培地を使用した場合は菌体内にはほとんど銅は検出されず、CuSO4濃度が10mM以下である場合は細胞内のCuSO4濃度は108細胞あたり7ppmと低かったが、培地中のCuSO4濃度が20mM〜50mMである場合には、108細胞あたり150〜200ppm以上と極めて高濃度であった。銅の菌体内への蓄積はCuSO4投与後30分程度から見られ、5〜8時間程度までは上昇し、その後若干の減少が見られた(図3)。
実施例5.その他の性質の解析
細胞の脂肪酸組成を調べたところ、10 mM CuSO4 の投与後、C18:1(オレイン酸)の割合の減少に伴い、C18:3(リノレン酸)が増加することが分かった。
一方、培養中の銅イオンの有無による細胞内タンパク質のSDS-PAGE上での電気泳動パターンに違いは見られなかった。また、超音波処理あるいは熱処理などによって細胞破壊に対して、N6株は、Cry. albidus IFO 0378に比べ著しく細胞壁が強固で、殆ど破壊しないことがわかった。そこで、表層に含まれる糖類の分析を行なった結果、主成分は中性糖であることが示唆されたが、N6株とCry. albidus IFO 0378との有意な差は認められなかった。
実施例6.ハロー形成の確認
YPP(1.0% Bacto yeast extract、2.0% Bacto peptone、1.0% pectin)寒天培地、YAP(0.1% (NH4)2SO4、0.2% KH2PO4、0.09% Na2HPO4・12H2O 、0.1% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto yeast extract、1.0% pectin)寒天培地およびSDP(0.67% yeast nitrogen base、1.0% pectin)寒天培地にN6株およびCry. albidus IFO 0378株を穿刺し、26℃で4日間培養した後、ハローの形成の有無を調べた。また、CuSO4を10mMを含むYPP寒天培地、YAP寒天培地およびSDP寒天培地を用いても同様の実験を行った。
その結果、SDP寒天培地のコロニーの周辺にハローが形成された。また、10mM CuSO4を含む寒天培地にN6株を穿刺し、26℃で2日間培養したところ、YPP寒天培地を用いたときにのみコロニーの周辺にハローが形成された。一方、Cry. albidus IFO 0378株では、コロニーもハローも形成されなかった。ハローが形成されたことで N6株が、ペクチナーゼを菌体外に分泌していることが予想され、特に10 mM CuSO4存在下でもハローが認められたことは、このペクチナーゼが銅イオン存在下でも酵素活性をもつことを示している。
実施例7.ペクチナーゼ活性の検出法
N6株をYAP液体培地中で24℃で15時間培養し、その上清をペクチナーゼ精製のための出発材料とした。精製の各段階で得られた試料中のぺクチナーゼ活性を、以下のガラクツロン酸の定量法で検出した(Gross, 1982)。なお、ペクチン標品は不純物を多く含んでいるため、基質には、ポリガラクツロン酸(Sigma, P-3889, Rot No.106H1004)を80 %エタノールで洗浄して用いた。0.2%ポリガラクツロン酸を溶解した0.2M 酢酸緩衝液(pH5.0)900μlに試料100μlを加え、24℃で1〜3時間反応させた。この反応物100μlに、氷冷した100 mM ホウ酸緩衝液(pH9.0 ) 500μlを加え、次いで、0.2% 2-Cyanoacetamide(Wako, 030-04942, Rot No.PAQ1877)溶液100μlを加えて、100℃で10分間加熱し、276 nmにおける吸光度(A276) を測定した。
その結果、明らかに時間とともに、ポリガラクツロン酸を分解していることがわかった(図4)。次に、上清を熱処理し、ペクチン分解活性を測定した(表 3)。その結果、60〜100℃にて1時間の処理で完全に活性が消失したことから、この因子は確かにタンパク質であることが判明した。








Figure 0003556662

以下の実施例では、この因子をペクチナーゼ、その活性をペクチナーゼ活性と称する。
実施例8.ぺクチナーゼの精製
YAP液体培地でN6株を24℃で15時間培養した培養液を5分間遠心(8000 rpm)し、培養上清を調製した。この上清を以下の方法で、タンパク質の硫安沈殿に供した。上清3 lに硫酸アンモニウムを729g(終濃度40%)を加え、30分撹拌し15分間遠心(8000 rpm)した。沈澱物を捨て、上清にさらに硫酸アンモニウムを1125g(終濃度90 %)を加え、30分撹拌し15分間遠心(8000 rpm)し、タンパク質を回収した。この沈殿を90%硫酸アンモニウム水溶液30 ml で洗浄後、50 mlの10 mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解し、一晩、透析によって脱塩した。次に、これをCM-TOYOPEARL(TOSOH)を用いたFPLCによる陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、単一のタンパク質分子種を含むフラクションを得た。各試料の濃縮には、遠心式限外ろ過ユニット(メンブレン装着ウルトラフリー15ユニット 5,000, MILLIPORE )を用いた。また、分子量を推定するため、試料の一部をとり、sample bufferを加え、100℃、5分間の熱処理後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った。
ペクチナーゼの精製に際し、まず初めに硫安沈殿を行った。YPPあるいはYAP培養液を用い、各100 mlの培養上清にそれぞれ、終濃度30、50、70、90%になるように硫酸アンモニウムを加え沈殿を回収し、透析後、0.2%ポリガラクツロン酸を基質としてペクチナーゼ活性を測定した。その結果、50〜90%で硫安沈殿した分画に活性が見られた。そこで、40 %で硫安沈澱したタンパク質を捨て、次に90 %で沈澱したタンパク質を硫安分画試料とし、以後の解析に用いた。
硫安沈殿によって得られた試料の精製をさらに進めるため、次に、イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーを行なった。まず初めに、陽イオン交換樹脂としてCM-TOYOPEARLを、陰イオン交換樹脂としてDEAE-Sephadexを用い、10 mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解した試料をのせ、これを通過した試料のペクチナーゼ活性を測定した。その結果、CM-TOYOPEARLを用いた場合は、ペクチナーゼ活性が樹脂に吸着されたが、DEAE-Sephadexでは、素通りしてきた溶液に活性が認められた。この結果から、目的とするタンパク質はpH5.0でCM-TOYOPEARLに吸着することが示された。さらに精度良く分離を進めるため、FPLC(Pharmacia Biotech)を用いたクロマトグラフィーを行った。溶出液として、10 mM 酢酸緩衝液(pH5.0)、0.3 M NaCl水溶液を用いた。1分間に2mlの流速でクロマトグラフィーを行ない、試験管に2mlずつ採取したところ、36〜53番目(72〜106mlの溶出分に相当)の分画に、280 nmの吸収によるタンパク質の大きなピークが2つ見られた(図5A)。
次に、この範囲におけるペクチナーゼ活性を調べたところ、タンパク質のピークと非常に良く合致するペクチナーゼ活性が2つのピークとして確認された(図5B)。SDS-PAGEによる推定分子量は、それぞれ、およそ36,000および40,000であることが示された(図6)。これらを、それぞれ、p36およびp40と呼ぶ。次に、この酵素がペクチンリアーゼでないことを確認するために、ポリガラクツロン酸の分解によって生じ得る4,5不飽和ガラクツロナイドの生成によって起こる235 nmにおける吸収(A235)の増大を調べた。0.2%ポリガラクツロン酸を基質とし、p36あるいはp40を含む試料を加え、A235を測定した。その結果、1時間後においてもA235の上昇は見られなかった。従って、この2種類の酵素が、確かにペクチナーゼであることが確認された。
実施例9.p36およびp40ペクチナーゼの至適pH、至適温度の決定
試料7μlを0.2%ポリガラクツロン酸を溶解した0.1 M 酢酸緩衝液(pH2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0)、0.1 M HEPES緩衝液(pH7.0、8.0)193mlに加え、24℃で10分間反応させ、ペクチナーゼ活性を測定した。同様に、0.1 M 酢酸緩衝液(pH5.0)に試料7μlを入れ、0、5、10、15、20、30、40、50、60℃で10分間反応させペクチナーゼ活性を測定した。
次に、これらの酵素の至適pHおよび至適温度に関する検討を行った。緩衝能を考慮し、pH2.0〜7.0では0.1 M 酢酸緩衝液を、pH7.0〜8.0では、0.1 M HEPES緩衝液を用い、24℃で10分間反応させ、活性を測定した。測定結果は1分間に276nmにおける吸光度(A276)が1変化した場合を1ユニット(1U)として数値化した後に、各測定における活性の最高値を100としたときの相対値をパーセント(%)として酵素活性をグラフ化した。測定に際してはタンパク質量を一定とした。タンパク質量の測定にはBio-Rad社のProtein Assayを用いた。
その結果、p36では、活性のピークはpH5.0にあり、pH2.0〜3.0およびpH8では、全くペクチナーゼ活性は認められなかった(図7)。同様な傾向がp40でも認められたが、pH3.0においても若干の活性をもつ点でp36とは異なっていた(図8)。従って、p36およびp40いずれも至適pHはpH5.0であることがわかった。
次に、この至適pHにおける至適温度について検討した。0.1 M 酢酸緩衝液(pH5.0)を用い、0〜60℃で、10分間反応させ、活性を測定した。測定結果は前述のように相対活性(%)を用いてグラフ化した。その結果、p36およびp40にいずれについても、20℃以下の低温域においても極めて高い酵素活性を示し、0℃でも活性が認められ、40℃〜50℃付近まで徐々に上昇し、その後、減少することが分かった(図9、10)。すなわち、20℃においても至適温度における活性の40〜60%程度の活性を有し、0℃においても15〜30%程度の活性を有している(図9、10)ことが明らかになった。更に、p40では、50℃における活性が最も高いことが明らかになった(図10)。従って、p36の至適温度は40℃で、p40の至適温度は50℃であることが明らかとなった。
実施例10.Cryptococcus sp. N6株が生産するペクチナーゼによる果実の果皮の分解
(a) 滅菌処理したみかん1房を滅菌水にいれ、そこにCryptococcus sp. N6株を少量投与し室温で培養した。対照としてCryptococcus albidus IFO0378株を使用し、清酒酵母のSaccharomyces cerevisae IFO2347株について同様の検討を行なった。
(b) また、Cryptococcus sp. N6株をYPP培地で生育させた培養上清を硫安沈殿方によって100倍濃縮した溶液に滅菌処理したみかん一房を入れ、37℃で処理した。対照として、滅菌水にみかんを入れ同様の検討を行なった。
(c)みかんの果皮についても同様の検討を行なった。
これらの結果を以下の表4に纏めた。
Figure 0003556662
++:原型をとどめず著しく溶解した、+:原型はなくなり小さな断片になった、−:全く溶解しなかった、NT:未試験
以上のことから、Cryptococcus sp. N6株の産生するペクチナーゼが果実の果皮を分解するのに極めて適しており、Cryptococcus sp. N6株自体を使用してもその培養上清を使用しても良好な結果が得られることが明らかになった。
実施例11.p36、p40の比活性の測定
p36、p40、および市販のポリガラクツロナーゼ1種類(Sigma社、P-3304)、ペクチナーゼ3種類(Sigma社、P-4716、同、P-2401、Calbiochem社、441201)の比活性を測定して比較した。測定は実施例7に記載した方法に従って、20℃にて10分間、または40℃にて15分間の反応を行なったときのA276の値の変化を基準として行なった。市販のそれぞれの酵素は購入直後の最も新鮮な状態、すなわち、最も酵素活性が高い状態にある標品を使用した。また、各酵素のタンパク質の量はBio-Rad社のProtein Assayを用いて定量した。比活性はタンパク質1μgあたりのユニット数として計算した。その結果を表5に示す。















Figure 0003556662
1U=A276/分
その結果、p36は20℃および40℃において調べたいずれの酵素よりも比活性が非常に高く、p40は20℃においては調べたうちの3種類いずれよりも高く、40℃においては比較した4種の酵素のいずれよりも比活性が非常に高いことが示された(図11)。
実施例12.p36およびp40のN末端アミノ酸配列の決定
SDS-PAGEにより、単一バンドとして同定された2種のタンパク質p36およびp40のN末端アミノ酸配列を決定した。
これらのN末端のアミノ酸配列は同一であり、*-T-A-T-I-S-S-Y-S-D-V-A-T-A-V-S-S-K-*-S-T-Vであった(*は同定できなかったアミノ酸を示す)。なお、N末端の最末端のアミノ酸残基は、アミノ基が修飾されており同定できなかったがおそらくシステインであるものと考えられる。配列番号6および図12にその配列を示す。
このアミノ酸配列をデータベース(FASTA)上で、既知タンパク質種と比較したところ、興味深いことに、カビの一種であるFusarium moniliformeのendopolygalacturonase(pgA)(Caprari, et al., 1993)と47.4 %の相同性が認められた(図 11)。従って、p36およびp40は、いずれも新規のペクチナーゼ(ポリガラクツロナーゼ)であることが示された。
N6株の銅イオン存在下での増殖の様相を示したグラフである。図中、縦軸は単位体積あたりの細胞数(cells/ml)、横軸はCuCl2投与後の時間(hr)を示す。●:0mM、□:1mM、○:10mM、■:20mM。 Cryptococcus sp. N6株またはCryptococcus albidus IFO-0378株をCuSO4存在下で液体培養し、一定数の菌をYPD寒天培地に塗布して出現したコロニー数から算出した生存率を表したグラフである。図2AはCryptococcus sp. N6、図2BはIFO-0378の生存率を表す。図中、●:0mM、□:1mM、○:10mM、■:25mM、△:50mMを表す。 CuSO4投与後のCryptococcus sp. N6株菌体内銅濃度の経時変化を示したグラフである。図中、○はCuSO4無添加、△は1mM CuSO4、□は10mM CuSO4、●20mMCuSO4、▲は50mMの外液濃度それぞれ表す。縦軸は菌体内銅濃度(ppm)である。 Cryptococcus sp. N6株のYAP培養上清におけるペクチナーゼ活性を示す。横軸は培養時間(hr)、縦軸は276nmにおける吸光度を示す。 FPLCによる画分のペクチナーゼ活性とタンパク質の溶出パターン。図5Aは画分の280nmにおける吸光度A280、図5Bはピーク周辺の画分のペクチナーゼ活性を示したグラフである。いずれにおいても横軸は分画した試験管番号を表す。 Cryptococcus sp. N6株培養上清由来のペクチナーゼ活性を有するタンパク質のSDS-PAGE。 p36の至適pHを示したものである。測定は0.1M酢酸緩衝液(pH2.0〜7.0;●)または0.1M HEPES緩衝液(pH7.0、8.0;■)中で行なった。縦軸は、最高値を100としたときの相対活性を表す。 p40の至適pHを示したものである。測定は0.1M酢酸緩衝液(pH2.0〜7.0;●)または0.1M HEPES緩衝液(pH7.0、8.0;■)中で行なった。縦軸は、最高値を100としたときの相対活性を表す。 p36の至適温度を示したグラフである。縦軸は、最高値を100としたときの相対活性を表す。 p40の至適温度を示したグラフである。縦軸は、最高値を100としたときの相対活性を表す。 p36およびp40の20℃(A)または40℃(B)における活性を市販のペクチナーゼまたはガラクツロナーゼの活性と比較したグラフである。縦軸はタンパク質1μgあたりのミリユニット数(mU)を表し、1U=A276 /分である。 p36およびp40のN末端アミノ酸配列と既知タンパク質との比較。図中、Aはp36およびp40のN末端22残基のアミノ酸配列、BはFusarium moniliformeのエンドポリガラクツロナーゼ(pgA)のアミノ酸配列を表す。
配列番号1-5:18S rDNA部分配列を増幅するためのPCRプライマー
配列番号6:Cryptococcus sp. ペクチナーゼの N-末端ペプチド。アミノ酸残基No.1 および No.22 は未同定。

Claims (11)

  1. 以下の性質を有するペクチナーゼ:
    i)ポリガラクツロン酸分解活性を有する;
    ii)至適pHがpH5.0である;
    iii)至適温度が40℃である;
    iv)配列番号6に記載のN末端アミノ酸配列を有する;
    v)SDS-ポリアクリルアミドゲル法によって測定される分子量が36Kである;
    vi)20℃において至適温度における活性の40〜60%を有し、0℃において至適温度における活性の15〜30%の活性を有している。
  2. 以下の性質を有するペクチナーゼ:
    i)ポリガラクツロン酸分解活性を有する;
    ii)至適pHがpH5.0である;
    iii)至適温度が50℃である;
    iv)配列番号6に記載のN末端アミノ酸配列を有する;
    v)SDS-ポリアクリルアミドゲル法によって測定される分子量が40Kである;
    vi)20℃において至適温度における活性の40〜60%を有し、0℃において至適温度における活性の15〜30%の活性を有している。
  3. 10mMの濃度の銅イオンに耐性である、請求項1記載のペクチナーゼ。
  4. 10mMの濃度の銅イオンに耐性である、請求項2記載のペクチナーゼ。
  5. 20mM〜50mMの濃度の銅イオン存在下で増殖可能なCryptococcus属酵母菌の産生する、請求項1または3記載のペクチナーゼ。
  6. 20mM〜50mMの濃度の銅イオン存在下で増殖可能なCryptococcus属酵母菌の産生する、請求項2または4記載のペクチナーゼ。
  7. 受託番号がFERM BP-6998である銅耐性酵母菌Cryptococcus sp.N6株の産生する、請求項1または3記載のペクチナーゼ。
  8. 受託番号がFERM BP-6998である銅耐性酵母菌Cryptococcus sp.N6株の産生する、請求項2または4記載のペクチナーゼ。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のペクチナーゼを作用させることを特徴とする、ペクチンの分解方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のペクチナーゼをペクチン含有物に作用させ、溶解液からガラクツロン酸を回収することを特徴とする、ガラクツロン酸の生産方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のペクチナーゼをペクチン含有物に作用させ、溶解液からビタミン類を回収することを特徴とする、ビタミン類の生産方法。
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