JP3556105B2 - 電流補償型電圧受電方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、単純な構造で軌道回路境界を電気的に明確にできるようにした無絶縁軌道回路における電流補償型電圧受電方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レールを電気的に絶縁することのない無絶縁軌道回路では、軌道回路の送信器と受信器の間に列車が存在しない状態でも信号が遮断されることがある。無絶縁軌道回路では列車が軌道回路の受信器から一定の距離以上に離れていると、レールの電気的インピーダンスにより受信器に入力する信号レベルの低下は生じない。図3に示すように無絶縁軌道回路に列車が接近すると、列車車輪の短絡により信号電流が分流し、受信器に入力する信号成分がレベル低下し、受信器の最小動作レベル未満の値になると、列車検知機能が働く。それで、列車が接近して受信器が動作できなくなる列車位置と軌道回路の受信器の位置との差を無絶縁軌道回路の列車位置検知誤差と称しており、この列車位置検知誤差を小さくする工夫が必要となる。
【0003】
無絶縁軌道回路における軌道回路境界を特定する方法には、従来、共振式電圧受電方法、電圧電流受電方法など種々のものが提案されている。
【0004】
共振式電圧受電方法は、列車の接近が信号の受信レベルに変化を生じないように信号周波数に合わせた共振子を受電端近傍のレールに取り付ける方法である。この方法は列車位置検知誤差が比較的大きく、信号周波数ごとに共振子を使い分ける不便さと複雑さがある。
電圧電流受電方法は、左右のレール間に現れる電圧成分とレールに流れる電流成分とをそれぞれ独立して取り込み、その合成したものを受信器に入力して列車の有無を検知する。これを電圧電流受電と称する。この方法は図4に示すように列車が軌道回路の近傍にいない場合、受信器入力は電圧成分が支配的であり、列車が軌道回路に接近してくると、列車車軸の短絡効果により電流成分が支配的となる。列車が電流検出点を踏み込むと急激に電流成分が減衰して、軌道回路の境界が明瞭に現れる。列車位置検知誤差の非常に小さい特性を有する。しかしながら、この方法にはレールに流れる電流成分を取り込む検知コイルの設備が不可欠であり、保線作業の障害となる。さらに検知コイルは電気車からの直達磁界の影響を受けやすいという弱点をもつ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの発明は、前記のような従来の問題点を解決し、単純な構成で、電圧電流受電方法がもつ良好な軌道回路境界特性を実現することができる電流補償型電圧受電方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1の発明は、列車の進入を検知して軌道回路境界を電気的に明確にできるようにするために受電端の受電電圧信号を受信する受信器を設置した無絶縁軌道回路において、受電端のレールのそれぞれに接続した2対の電気ケーブル、該ケーブルと受信器を接続して設置した複合トランスを用いて、受電端付近の電位差を取り込み、その二地点間の電位差からレール間電圧成分とレール電流の電圧降下成分の二つの成分を取り出し、この二つの成分の和により受信器への受電電圧信号を受信入力として合成することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、複合トランスが、レール間電圧成分を取り出す整合トランスと、レール電流の電圧降下成分を取り出す差動トランスとを含み、これらの出力を合成する機能を有することを特徴とする。出力を合成する機能としては合成トランスが一例として挙げられるが、そのほかに整合トランスと差動トランスの出力側の電線等としてもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1において1は受電端のレールのそれぞれに接続した2対の電気ケーブル、2は該ケーブルと受信器3を接続して設置した複合トランスである。複合トランス2は整合トランス4と、差動トランス5と、合成トランス6からなっている。差動トランス5の例としては差動三巻線トランスが好ましい。
【0009】
前記のような電気ケーブル1と複合トランス2を用いたものにおいて、まず受電端付近の二地点間の電位差を取り込む。その二地点間の電位差から二つの成分を取り出す。1つはレール間電圧成分Vr、もう1つはレール電流の電圧降下成分Vi(ViL+ViR)である。この二つの成分の和により受信器3への受電電圧信号を受信入力として合成する。この合成は実施の形態では合成トランス6が行う。前記の電圧電流受電方法と同様に受信入力は列車のいない状態ではレール間電圧成分Vrが支配的であり、列車が接近すると、レール電流の電圧降下成分Viが支配的となる。レール電流による電圧降下成分Viを差動トランス5でインピーダンス変換・電圧変換を行い、Viとすることが、この発明のポイントである。
【0010】
図1においてレールに流れる信号成分は左右逆に流れ還流となる。電気車電流は電気車から変電所に向かって流れるので左右同一方向となる。従って、レール電流の電圧降下成分Viを取り出す差動トランス5は、信号成分に対して和動効果を示し、電気車の電流成分に対して差動効果をもたらす。用いるトランスはレールとの接続時に信号成分に対して和動効果が現れるようにすればよい。レールの電流による電圧降下は左右2本のレール間相互インダクタンスが主インピーダンスである。トランスを差動巻きで用いることはこの相互インダクタンスをさらに強調する。
【0011】
ここで、この発明の電流補償型電圧受電方法についてシミュレーションした結果を説明する。図2において線Aは電圧受電点Vrに相当し、線Bはレール電流の電圧降下成分Viに相当し、線Cは受信入力でこれらの合成Vr+Viに相当する。図2においては短絡点5m付近で大きく受信レベルが変化しているのがわかる。これはレール電流の電圧降下成分Viの有無で大きく変わっているものである。そのため、列車検知位置の誤差がきわめて小さくなる。レール電流の電圧降下成分Viを電圧受電点Vrのどちらの側に採っても受電特性はほぼ等しいので単線区間においても双方向に列車検知ができる。信号の二成分の和で受信入力を合成するので、レールと接続する電気ケーブルやトランスの巻線など各部の故障により受信レベルが増加するようなフェイルセーフにならない事象は生じない。レール電流成分(電流による電圧降下分Vi)を差動トランス5を用いて入力することで、雑音は減極性に、信号は加極性に変換し、S/N比が著しく向上する。
【0012】
前記に示した実施の形態は好ましい一例を示すものであって、この発明はこの実施の形態のものに限定されるものではない。
【0013】
【発明の効果】
請求項1,2の発明は前記のようであって、無絶縁軌道回路において、受電端のレールのそれぞれに接続した2対の電気ケーブル、該ケーブルと受信器を接続して設置した複合トランスを用いて、受電端付近の電位差を取り込み、その二地点間の電位差からレール間電圧成分とレール電流の電圧降下成分の二つの成分を取り出し、この二つの成分の和により受信器への受電電圧信号を受信入力として合成するので、単純な構成で、電圧電流受電方法がもつ良好な軌道回路境界特性を実現することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態を示す概要図である。
【図2】同上のものを用いてシミュレーションした結果を説明するグラフである。
【図3】従来から知られている無絶縁軌道回路による列車検知装置の一例である。
【図4】無絶縁軌道回路における軌道回路境界を特定する方法の一例として知られている電圧電流受電方法の概要図である。
【符号の説明】
1 電気ケーブル
2 複合トランス
3 受信器
4 整合トランス
5 差動トランス
6 合成トランス
Claims (2)
- 列車の進入を検知して軌道回路境界を電気的に明確にできるようにするために受電端の受電電圧信号を受信する受信器を設置した無絶縁軌道回路において、受電端のレールのそれぞれに接続した2対の電気ケーブル、該ケーブルと受信器を接続して設置した複合トランスを用いて、受電端付近の電位差を取り込み、その二地点間の電位差からレール間電圧成分とレール電流の電圧降下成分の二つの成分を取り出し、この二つの成分の和により受信器への受電電圧信号を受信入力として合成することを特徴とする電流補償型電圧受電方法。
- 複合トランスが、レール間電圧成分を取り出す整合トランスと、レール電流の電圧降下成分を取り出す差動トランスとを含み、これらの出力を合成する機能を有する請求項1記載の電流補償型電圧受電方法。
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- 1998-09-24 JP JP26988698A patent/JP3556105B2/ja not_active Expired - Fee Related
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