JP3555129B2 - 車両用操舵制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との間の伝達比を変化させる伝達比可変機構を備えた車両用操舵制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との間の伝達比を変化させる伝達比可変機構を備えた車両用操舵制御装置が提案されている。この伝達比可変機構は、操舵ハンドル側の入力軸と転舵輪側の出力軸とを相対回転可能に連結する連結機構を有しており、この連結機構を駆動モータによって回転駆動することで、入力軸−出力軸間の回転量の伝達比、すなわち操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との間の伝達比を変化させ得る構造となっている。
【0003】
従って、操舵ハンドル、伝達比可変機構及び転舵輪は、機械的に一連に連結された状態で操舵系を構成するため、例えば転舵輪が最大転舵角付近まで転舵されている状況下で、操舵ハンドルをさらに切り込もうとする操作が継続されると、伝達比可変機構の駆動モータにかかる負荷が増加した状態が継続し、その結果、駆動モータには通常よりも大きな負荷電流が流れ続け、駆動モータの発熱量が増加する場合があった。
【0004】
そこで、例えば、特開昭63−227472号では、転舵輪の転舵角が最大転舵角付近になると、伝達比可変機構の駆動モータを停止させる技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように転舵輪の転舵角が最大転舵角付近になった時点で、伝達比可変機構の駆動モータを停止させると、負荷増大に伴う駆動モータの発熱は抑えられるが、最大転舵角に至る前に駆動モータが停止するため、操舵角と転舵角との間に設定されている伝達比が、駆動モータが停止した時点で急変してしまい、運転者に操舵違和感を与えるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、このような操舵違和感を与えることなく、最大転舵角付近での駆動モータの発熱を抑えることができる車両用操舵制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明にかかる車両用操舵制御装置は、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との間の伝達比を変化させる伝達比可変機構を備えた車両用操舵制御装置であって、操舵ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、伝達比可変機構を駆動する駆動手段と、走行状態に応じて設定する伝達比と操舵角検出手段で検出された操舵角とをもとに制御目標を設定すると共に、この制御目標に追従するように駆動手段の動作を制御する制御手段と、転舵輪の転舵角が、最大転舵角付近に設定した所定のしきい値を超えた場合に、転舵輪から操舵系に作用する転舵負荷トルクをTl、伝達比可変機構自体を機械的に変位させるのに必要な摩擦トルクをTμとするとき、駆動手段の出力トルクTmを、Tl−Tμ≦Tm≦Tl+Tμとなるよう制限する制限手段とを備えて構成する。
【0008】
転舵輪が最大転舵角付近まで転舵された状態を想定すると、この状態では、駆動手段によって伝達比可変機構を積極的に変位駆動させて、伝達比を変化させるような動作は不要である。そこで、転舵輪の転舵角が最大転舵角付近に設定した所定のしきい値を超えた場合に、制限手段によって、実際に伝達比可変機構を変位駆動させる際に必要となる出力に比べ、駆動手段の出力を制限することで、その分、駆動手段の発熱量が抑えられる。また、この間、駆動手段からの出力が継続されるため、伝達比の急変が防止される。
【0010】
伝達比可変機構自身の機械的な摩擦トルクを考慮し、制限手段によって、この摩擦トルクによって伝達比可変機構の不動状態が維持できる程度に、駆動手段の出力を制限することで、伝達比可変機構は、作用する外力によって相対的な機械的変位を生じることがないため、その結果、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との位置関係が一定に保たれる。
【0011】
伝達比可変機構の相対的な機械的変位を拘束するロック手段と、出力が制限された駆動手段が、外力によって通常とは逆方向に駆動される状況であると判定した場合に、ロック手段を作動させるロック制御手段とをさらに備えてもよい。
【0012】
制限手段によって駆動手段の出力を制限している関係で、外力として操舵系に作用する操舵トルクが大きい場合には、駆動手段が通常とは逆方向に駆動される状況も想定される。従って、このような外力によって通常とは逆方向に駆動手段が駆動される状況であると判定した場合には、ロック制御手段によってロック手段を作動させ、伝達比可変機構の相対的な機械的変位を拘束する。これにより、操舵ハンドル、伝達比可変機構及び転舵輪で構成する操舵系の連結剛性が維持される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態につき、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1に第1の実施形態にかかる操舵装置の構成を示す。
【0015】
入力軸20と出力軸40とは伝達比可変機構100を介して連結されており、入力軸20には操舵ハンドル10が連結されている。出力軸40は、ラックアンドピニオン式のギヤ装置50を介してラック軸51に連結されており、ラック軸51の両側には転舵輪FWが連結されている。
【0016】
また、操舵ハンドル10の操舵角が入力軸20の回転角に対応するため、入力軸20には、入力軸20の回転角としての操舵角θhを検出する操舵角センサ21を設けている。
【0017】
伝達比可変機構100は、入力軸20と出力軸40とを相対回転可能に連結しており、駆動モータ110によって伝達比可変機構100を変位駆動することで、入力軸20−出力軸40間の回転量の伝達比を変化させる機構となっている。
【0018】
図2に伝達比可変機構100の構造を示す。伝達比可変機構100は、筒形状のハウジング101を有しており、ハウジング101の筒面内側にステータ111を固定し、さらにその内側には、中空シャフト113と一体化したロータ112を配置しており、これらステータ111とロータ112によって駆動モータ110を構成している。なお、この駆動モータ110は、例えば、磁極数2のブラシレスモータで構成する。
【0019】
中空シャフト113は、波動歯車減速機120を構成する楕円カム121と一体化しており、駆動モータ110によって楕円カム121を回転駆動することで、可動フランジ122がハウジング101に対して相対的に回転する構造となっている。この可動フランジ122に対して入力軸20を固定し、ハウジング101に対して出力軸40を固定しているため、駆動モータ110が回転駆動することで、入力軸20と出力軸40とは相対的に回転することになる。この作用によって入力軸20−出力軸40間の回転量の伝達比が変化する機構となっており、駆動モータ110の回転を制御することで伝達比の可変制御が実施される。
【0020】
図3に示すように、中空シャフト113の外周部には、半円の円弧形状にN極130NとS極130Sとを配したリング状のマグネット130を固定しており、駆動モータ110の磁極数が2極であるため、N極130NとS極130Sは、180°幅となっている。また、このマグネット130と向かい合う位置には、3つの作動角センサ131を120°ピッチで配し、ハウジング101に対して固定している。この作動角センサ131はホールICで構成しており、ホールICによって磁極変化を検出することで、駆動モータ110の作動角θmを検出している。
【0021】
また、ハウジング101内には、ロータ112とステータ111との相対回転を阻止して、伝達比の可変動作を禁止するロック機構を備えている。
【0022】
このロック機構は、図4に示すように、円弧状に湾曲したロックアーム140と、溝ピッチ90°の凹凸溝を周囲に形成したロックホルダ114とを備えており、ロックアーム140はハウジング101側に固定した支持軸141を中心に傾動し、ロックホルダ114は中空シャフト113の端部において、中空シャフト113と一体的に形成している。
【0023】
ロックアーム140には凸部140aを設けており、ロックホルダ114の凹部内に、ロックアーム140の凸部140aを係止させることで、ロータ112とステータ111との相対回転が禁止されるロック状態となる。
【0024】
ロックアーム140の駆動機構は次のようになっている。ロックアーム140の先端部には駆動コイル142を設けており、この駆動コイル142と相対するハウジング101側にマグネット143を固定している。また、図示は省略したが、ロックアーム140の支持軸141には、コイルスプリングが設けられており、ロックアーム140がロックホルダ114側に傾動するように常時押圧している。そして、駆動コイル142に電流が流れることで、駆動コイル142とマグネット143との間に電磁力による反発力が発生し、コイルスプリングの押圧力に抗して、ロックアーム140がロックホルダ114から離間する方向に傾動しロックが解除される。また、駆動コイル142への通電が停止されると、これによって反発力が消滅するため、コイルスプリングの押圧力により、ロックアーム140が傾動して、図4に示すようなロック状態に復帰する。
【0025】
このように構成する伝達比可変機構100における駆動モータ110及びロック動作の制御は操舵制御装置70によって実施する。操舵制御装置70には、操舵角センサ21、作動角センサ131の他、車両の速度を検出する車速センサ60の各検出信号が与えられ、操舵制御装置70はこれらの信号をもとに伝達比Gを設定すると共に、伝達比G及び操舵角θhに応じて設定される制御信号Isを駆動モータ110に対して出力する処理を繰り返し、伝達比可変機構100の駆動制御を実施している。
【0026】
なお、出力軸40の回転角を出力角θp、波動歯車減速機120の減速比をKとすると、操舵ハンドル10の操舵角θh、伝達比可変機構100における駆動モータ110の作動角θm、及び出力軸40の出力角θpは、下記(1)式の関係となる。従って、操舵制御装置70では、操舵角θhと作動角θmとをもとに、出力角θpを検知しており、この出力角θpはラック軸51のストローク位置に対応し、さらにラック軸51のストローク位置は車輪FWの転舵角に対応するため、出力角θpが車輪FWの転舵角に対応する。
【0027】
θp=θh+K・θm …(1)
また、車輪FWの転舵角が最大転舵角付近では、最大転舵角に近づくに連れて、車輪FWを転舵させるための転舵負荷トルクが増加傾向となり、伝達比可変機構100の駆動モータ110にかかる負荷が増加してモータ発熱量が増加してしまう。そこで、この転舵負荷トルクが増加する転舵角θpをしきい値θpthとして規定し、操舵制御装置70では、転舵角θpがしきい値θpthを超えると、伝達比可変機構100の駆動モータ110の出力を制限する処理を実施する。これは、以下に説明するように、伝達比可変機構100自体を機械的に変位させる際に必要となる摩擦トルクを利用している。
【0028】
図5に示すように、操舵ハンドル10、伝達比可変機構100及び車輪FWが一連に連結されて操舵系を構成しており、図中「Th」は操舵ハンドル10に付与される操舵トルク、「Tl」は車輪FWから操舵系に作用する転舵負荷トルク、「Tm」は伝達比可変機構100の駆動モータ110によって発生する出力トルクをそれぞれ示す。操舵トルクThと転舵負荷トルクTlが一定の大きさで釣り合っている状態を想定すると、この状態から車輪FWを転舵させるために、駆動モータ110で発生させる出力トルクTmは次の(2)式で示すことができる。なお(2)式中、「Tμ」は伝達比可変機構100自体を機械的に変位させる際に必要となる摩擦トルクである。
【0029】
Tm>Tl+Tμ …(2)
また、同じ釣り合い状態において、駆動モータ110の出力トルクTmを徐々に低下させていくと、駆動モータ110が、負荷トルクTlによって(2)式の場合とは逆方向に駆動され始める。このときの出力トルクTm、負荷トルクTl及び摩擦トルクTμの関係は、(3)式で示すことができる。
【0030】
Tm+Tμ<Tl …(3)
そこで、操舵トルクThと負荷トルクTlが一定の大きさで釣り合っている状態において、伝達比可変機構100の不動状態が維持できる出力トルクTmの範囲は、(2)式及び(3)式より、(4)式で表すことができる。操舵制御装置70では、この(4)式の関係を利用して、伝達比可変機構100の駆動モータ110の出力を制限する処理を実施している。
【0031】
Tl−Tμ≦Tm≦Tl+Tμ …(4)
以下、操舵制御装置70で実施する制御処理につき、図6のフローチャートに沿って説明する。
【0032】
このフローチャートはイグニションスイッチのオン操作によって起動する。後のS120で説明するように、イグニションスイッチのオフ操作によりロック機構がロック状態となっているため、まずステップ(以下、ステップを「S」と記す。)102では、ロック機構の駆動コイル142に通電を開始する。これにより、ロックアーム140がロックホルダ114から離間する方向に傾動しロックが解除される。
【0033】
続くS104では、操舵角センサ21で検出された操舵角θh、作動角センサ131で検出された駆動モータ110の作動角θm、車速センサ60で検出された車速Vの値をそれぞれ読み込む。
【0034】
続くS106では、図7に示すマップをもとに、車速Vに応じた伝達比Gを設定する。
【0035】
続くS108では、制御目標となる駆動モータ110の目標作動角θmmを設定する。操舵角θh、伝達比G及び出力角θpは下記(5)式の関係となるため、(1)式、(5)式より目標作動角θmmは(6)式で規定される。
【0036】
θp=G・θh …(5)
θmm=(G−1)・θh/K …(6)
続くS110では、S104で読み込まれた駆動モータ110の作動角θmと、S108で設定された目標作動角θmmとの偏差eを、e=θmm−θmとして演算し、続くS112では、オーバーシュートすることなく偏差eを0にするように、駆動モータ110を制御する制御信号Isを設定する。この処理の一例としては、Is=C(s)・eの演算式に基づいて、PID制御のパラメータを適切に設定することにより制御信号Isを決定することができる。なお、式中の「(s)」はラプラス演算子である。
【0037】
続くS114では、S104で読み込んだ操舵角θh及び作動角θmをもとに、(1)式より車輪FWの転舵角に対応する出力角θpを求め、求めた出力角θpが前述したしきい値θpth以下であるかを判断する。例えば、転舵角の中立を基準として、右操舵領域を正、左操舵領域を負として出力角θpが設定されるものとすると、S114で示したように、出力角θpの絶対値としきい値θpthとを比較する。
【0038】
車輪FWが最大転舵角付近以下の場合には、S114で「Yes」と判断されてS116に進み、S112で設定した制御信号Isに基づいて駆動モータ110を作動させる。
【0039】
続くS118では、イグニションスイッチ(IG)がオフ操作されたかを判断し、「No」の場合にはS104に進み前述した処理が繰り返し実行され、「Yes」の場合にはS120に進み、ロック機構の駆動コイル142に対する通電を停止する。これにより、コイルスプリングの押圧力によりロックアーム140がロックホルダ114側へ傾動し、図4に示すロック状態となる。
【0040】
一方、S114において「No」、すなわち、車輪FWの転舵角に対応する出力角θpがしきい値θpthを超えた場合にはS200に進み、駆動モータ110の出力を制限する制限処理を実施する。この場合、例えば図8に示すマップをもとに、S112で設定した制御信号Is(in)の最大値以下となるように制限し、制限された制御信号Is(out)を新たに制御信号Isとして設定する。この後、S116へ進むため、駆動モータ110は、S200において制限処理が施された制御信号Isをもとに駆動される。制御信号Is(out)が取り得る最大値Ismaxは、実際に伝達比可変機構100を変位駆動させる際に必要となるモータ出力に比べ、小さなモータ出力となるように予め規定した値である。
【0041】
続くS202では、ロック機構を作動させるロック条件が成立したかを判断する。これは、前段のS200において、駆動モータ110の最大出力を予め規定した所定値に制限したことに関連し、想定したトルクよりも大きな操舵トルクThが操舵系に作用した場合には、この操舵トルクThによって増加した転舵負荷トルクTlを受け、操舵ハンドル10をさらに切り込む場合に駆動モータ110が通常回転駆動される方向とは逆方向に駆動される場合も起こり得る。そこで、S202では、このような状況に移行しつつある状況を判断する。この場合、例えば、操舵角θhと作動角θmとの変化状態に基づき判断することができる。具体的には、操舵角θhがさらに切り込み側に増加し、且つ、駆動モータ110の作動角θmがこの切り込み側に応対する方向とは逆方向に変化した場合には、駆動モータ110が外力によって通常とは逆方向に駆動されつつある状況と判断できる。このような状況下では、S202で「Yes」と判断されてS204に進み、ロック機構の駆動コイル142に対する通電を停止させ、伝達比可変機構100をロック状態とする。これにより、伝達比可変機構100内に相対的な機械的変位が生じることがないため、操舵ハンドル10の操舵角θhと車輪FWの転舵角との位置関係が一定に保たれ、操舵系の連結剛性を維持できる。
【0042】
これに対し、操舵ハンドル10を中立方向へ戻す操作に移行しつつある状況などでは、操舵トルクThが弱まるため操舵系に作用する転舵負荷トルクも低下し、駆動モータ110が逆方向へ駆動され得る状況から復帰する。このような状況下では、S202におけるロック条件が不成立となるため、S202で「No」と判断されてS206に進み、再びロック機構の駆動コイル142に対する通電が開始され、伝達比可変機構100のロックが解除される。
【0043】
このような処理を繰り返し実施することで、車輪FWの転舵角が最大転舵角付近を超える領域では、駆動モータ110の最大出力を制限しつつ、ロック機構の動作制御を実施する。
【0044】
なお、ロック機構を動作させて伝達比可変機構100をロック状態とした場合には、ロック解除時に、ロックアーム140とロックホルダ114との間に咬み込みが発生して、ロック解除後、直ちに通常の伝達比可変制御に移行することができない場合があり、また、ロック解除に伴う機械的振動が操舵ハンドル10に伝達され、運転者に操舵違和感を与える場合もあった。これに対し、S200において出力制限処理を実施した場合には、例えば付与される操舵トルクThが想定した通常範囲内の大きさであれば、ロック機構を作動させることなく、伝達比可変機構100の相対的な機械的変位を拘束した状態を維持できるため、操舵違和感等を与え得るロック解除動作の発生頻度を抑えることができる。
【0045】
先に説明したS202のロック条件としては、この他にも、目標作動角θmmがθmm=(G−1)・θh/Kの関係にあるため、操舵角θhに代えて目標作動角θmmを用い、作動角θmの変化状態と目標作動角θmmの変化状態とをもとに同様に判断することもできる。さらに、ロック条件が成立し得る状況下では、目標作動角θmmと作動角θmとの偏差eが増大するため、偏差eが所定値を超えた場合にロック条件が成立したとして判断することもできる。また、この他にも、操舵トルクThが所定値以上となった場合、駆動モータ110に流れる負荷電流が所定値以上となった場合などを、ロック条件として採用することもできる。
【0046】
また、先に示した図8のマップでは、制御信号Is(out)の取り得る最大値Ismaxが一定の場合を示したが、例えば出力角θpに応じて最大値Ismaxの値を可変設定することも可能である。この場合図9に示すように、出力角θpがしきい値θpth内の範囲では最大値Ismaxを一定とし、しきい値θpthを超える領域では、出力角θpの増加に伴って最大値Ismaxが徐々に小さな値となるように設定することもできる。これにより制御信号Isの急変が防止される。
【0047】
なお、路面凹凸などによって車輪FWから操舵系に外力(逆入力)が作用する場合があり、このように制御信号Is(out)を制限することで、制限した分、駆動モータ110で発生される駆動出力が低下することになるため、通常想定される逆入力が操舵系に作用した場合にも、この影響によって伝達比可変機構100に相対的な機械的変位が生じない程度に、制御信号Is(out)の最大値Ismaxを規定している。
【0048】
また、先のS200では、駆動モータ110の出力を制限する手法として、最大出力を制限する手法を例示したが、S112において通常どおりに設定される制御信号Isに対して、所定の制御量を減少させる処理を実施することで、駆動モータ110の出力を制限する手法を採用することもできる。具体的には、S112で設定される制御信号Isに対する減少分をα(α>0)とすると、S200では、S112で設定された制御信号Isを(Is−α)として新たに設定する。このαに対応する駆動モータ110の出力分をβとすると、先の(4)式より、伝達比可変機構100の不動状態が維持できるβの範囲は、原理的には下記の(7)式で示す範囲となり、制御信号Isの減少分αは(7)式を満たす範囲内で設定すればよい。
【0049】
0<β<2Tμ …(7)
さらに、制御信号Isの減少分αを大きな値に設定すると、出力制限処理(S200)を開始した直後には、制御信号Isが急変する場合も起こり得る。そこで、このような制御信号Isの急変を防止し得るように、減少分αの値を比較的小さな値α0に規定し、制御信号Isをルーチン毎に段階的に徐々に抑制することも可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる車両用操舵制御装置によれば、転舵輪の転舵角が最大転舵角付近に設定した所定のしきい値を超えた場合に、伝達比可変機構を変位駆動させる際に必要となる出力に比べ、駆動手段の出力を制限する制限手段を備える構成を採用した。これにより、操舵ハンドルの切り込みに対応する側に、伝達比可変機構を変位駆動させることはできなくなるが、このような最大転舵角付近では、この方向に対し伝達比可変機構を実際に変位駆動させなくとも何ら支障はなく、その分、駆動手段の発熱量を抑えることができる。また、この間、駆動手段からは所定レベルの出力が継続されるため、伝達比の急変が防止され、運転者に与える違和感を抑制することができる。
【0051】
さらに、伝達比可変機構に相対的な機械的変位が生じない程度に、すなわち伝達比可変機構自身の機械的な摩擦トルク分だけ、駆動手段の出力を制限することとした。この結果、駆動手段の出力を制限した場合にも、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との位置関係を一定に保つことが可能となる。
【0052】
伝達比可変機構のロック手段と、駆動手段が外力によって通常とは逆方向に駆動される状況であると判定した場合にロック手段を作動させるロック制御手段とをさらに備えることで、駆動手段の出力制限分を超える外力が操舵系に作用した場合にも、操舵ハンドル、伝達比可変機構及び転舵輪で構成する操舵系の連結剛性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】操舵装置の全体的な構成を示すブロック図である。
【図2】伝達比可変機構の縦断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図2におけるB−B線断面図である。
【図5】操舵系に作用する各トルクを示す説明図である。
【図6】操舵制御装置で実施する制御処理を示すフローチャートである。
【図7】車速Vと伝達比Gとの関係を規定したマップである。
【図8】制御信号Isの制限処理の一例を示すマップである。
【図9】出力角θpと制御信号Isの最大値Ismaxとの関係を規定したマップである。
【符号の説明】
70…操舵制御装置、100…伝達比可変機構
110…駆動モータ、131…作動角センサ、FW…車輪(転舵輪)
Claims (2)
- 操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との間の伝達比を変化させる伝達比可変機構を備えた車両用操舵制御装置であって、
前記操舵ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記伝達比可変機構を駆動する駆動手段と、
走行状態に応じて設定する前記伝達比と前記操舵角検出手段で検出された操舵角とをもとに制御目標を設定すると共に、この制御目標に追従するように前記駆動手段の動作を制御する制御手段と、
前記転舵輪の転舵角が、最大転舵角付近に設定した所定のしきい値を超えた場合に、転舵輪から操舵系に作用する転舵負荷トルクをTl、前記伝達比可変機構自体を機械的に変位させるのに必要な摩擦トルクをTμとするとき、前記駆動手段の出力トルクTmを、Tl−Tμ≦Tm≦Tl+Tμとなるよう制限する制限手段とを備える車両用操舵制御装置。 - 前記伝達比可変機構の相対的な機械的変位を拘束するロック手段と、
出力が制限された前記駆動手段が、外力によって通常とは逆方向に駆動される状況であると判定した場合に、前記ロック手段を作動させるロック制御手段とをさらに備える請求項1記載の車両用操舵制御装置。
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