JP3553697B2 - 二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、二次電池、特にリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来技術】
近年の電子機器の小型化、薄型化、軽量化の進歩は目覚ましいものがあり、とりわけOA分野においてはデスクトップ型からラップトップ型、ノートブック型へと小型軽量化している。加えて、電子手帳、電子スチルカメラなどの新しい小型電子機器の分野も出現し、さらには従来のハードディスク、フロッピーディスクの小型化に加えて新しいメモリーメディアであるメモリーカードの開発も進められている。このような電子機器の小型化、薄型化、軽量化の波の中でこれらの電力を支える二次電池にも高性能化が要求されている。
このような要望の中、鉛蓄電池やニッカド電池に代わる高エネルギー密度電池としてリチウム二次電池の開発が急速に進められてきた。
二次電池からの集電方法については数多くの提案がなされており、例えば、集電体としてモリブデンを含む鉄合金(特開昭59−173962号公報)やチタンまたはチタン被覆金属(特開昭59−68169号公報)が提案されている。また、電極活物質と集電体との密着性は集電効率を上げるうえで重要であることから、有機二次電池用の集電体については数多くの検討がなされてきた。例えば、特開昭58−112271号公報や特開昭58−189968号公報には炭素系集電体が、また、特開昭59−112584号公報には金属薄膜集電体、さらに特開昭58−115777号公報や特開昭58−115776号公報には集電体と活物質との密着方法が報告されている。
本発明者らも電池の実装、ポリマー電池の集電法、容量の向上について従来から研究をおこなっており、すでに特願昭62−92791号では集電体とポリマー活物質の密着性の改善、特願昭63−28923号ではシート状集電体に打ち抜き孔を設けることによる電池のエネルギー容量の増加、またPCT/JP88100373ではシート状電極の実装法(折りたたみ方法)により、やはりエネルギー容量の向上について提案を行っている。以上のように本発明者らは電極活物質からの集電法、実装法を改善することにより電池のエネルギー容量を上げる研究を行ってきた。
【0003】
本出願人は先に特開平2−78152号で正極負極の端子を互いに反対方向に設けることを提案しているが、該方法によっても、活物質からの集電を考えた場合十分な配慮がなされているとはいえない。
このようなリチウム二次電池は、LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiSbF,LiCFSO等の電解質塩を溶解した電解液が用いられていることが良くしられている。これに対し、近年LiN(CFSOやLiC(CFSOを電解質とする電解液をリチウム二次電池に用いることが提案されている〔L.A.Dominey, Fifth International Seminor on Lithium Battery Technology and Applications, March 4−6,1(1991)〕。これらの電解質は、イオン伝導度を高くできることを始めとして、自己放電、負荷特性、低温特性に優れる電解質塩として注目を集めている。しかしながら、これらの塩は腐食性があり、電極の金属材料や容器の金属材料を侵す欠点を有するとともに、我々が開発を続けてきた複合正極(後述)や炭素負極において、自己放電、サイクル特性の点で好ましい特性の得られない塩であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に使用する正負極とは集電体上に活物質層を複合化したものであり、このような電極を用いて図1のような積層型の電池を構成した場合、電気化学的な反応挙動は端子に近い方で優勢におこる。このため端子部に近い方から電位(電圧)が下がってゆく。結果として電流を取出せる実質の面積は徐々に小さくなり、一定の電流値を取出そうとすると、電圧降下がはげしく充分な放電反応がおこらない部分を残したまま電力が取り出せなくなってしまう。この現象は大きな電流を取出そうとするほど顕著にあらわれるとともに例えば電池の容量をふやすため、図2のように正負極およびセパレータを折りたたんで積層した場合や単純に正負極を1枚づつ積層した場合、すなわち電極面積が大きくなるほど加速度的にエネルギー効率が悪くなってくる。これに対して正負極の端子を図3、図4のように互いに反対側に配置すると、電極反応が比較的均一に起こるようになり、端子を同一端から取る場合より、高エネルギー容量で負荷時の電圧降下の小さい電池を提供することが可能となるが充分と言えるものではなく、特に電極が長い場合、端子がはなれていることから、電極反応は比較的均一におきやすいが電流負荷に対して、全体的に電池電圧を下げやすい欠点がある。これは、電極の中心部に近い側ほど電極反応をおこし難く、未反応部分を残したまま電池電圧(電極電位)が下がり、電流がとり出せなくなることに起因していると考えられる。
本発明の目的は以上の不具合を考え、これらの塩を用いたときに金属の腐食を押さえると共に、本発明の複合正極、炭素負極においても自己放電、サイクル特性に優れる電解質塩を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、正極集電体層、正極活物質層、電解質層、炭素系負極活物質層および負極集電体層の各層よりなる層構造単位を2個以上有して構成される二次電池において、前記の層構造単位のすべての正極集電体層および負極集電体層の二ヶ所に電気的導電手段を設けるとともに、該二ヶ所の電気的導電手段を、該電気的導電手段が設けられる正極集電体層または負極集電体層の周辺部に沿って3/4L〜Lだけ離れて存在させることにより、前記の技術課題が解決できることを見い出し、本発明に到達した。
(ただし、前記Lは、二個の電気的導電手段が、それぞれもっとも離れた位置に
存在する場合の両者間の距離を意味する。)
以下、本発明の二次電池の構成を図面に基づいて具体的に説明する。ただし本発明の二次電池は図面に示すものに限定されるものではない。
図5において、集電体1、5あるいは9と正極活物質層よりなる正極または集電体3あるいは7と負極活物質層よりなる負極の各集電体の周辺に2個の正極端子部1′、5′、9′、1″、5″、9″あるいは負極端子部3′、7′、3″、7″を、両者がもっとも離れた位置Lに存在するように対向辺に設けたことを特徴とするものである。
前記2個の正極端子部あるいは負極端子部は、互いに3/4L〜Lだけ離れた位置、好ましくはもっとも離れた位置Lあるいはその近傍に存在することが好ましい。
図6に本発明の別の実施態様を示す。
図6のものは、図5に示す層構造において、2個の正極端子部1′、5′、9′、1″、5″、9″あるいは負極端子部3′、7′、3″、7″を、両者がもっとも離れた位置Lに存在するように対向辺に代えて対頂角に設けたことを特徴とするものである。
【0006】
リチウム電池の電解質塩としては、非水溶媒に溶解し、高いイオン伝導度を示すものが用いられる。このようなものとしては、例えば、カチオンとしてはアルカリ金属イオンが例示できる。アニオンとしてはCl,Br,I,SCN,ClO ,BF ,PF ,SbF ,CFSO ,(CFSOが例示できる。これらの電解質塩のうちイオン伝導度が高いこと、負荷特性、低温特性に優れることからLiN(CFSOを用いることが好ましい。しかしながら、LiN(CFSOは腐食性があり、特に正極集電体層をアルミニウムとしたときは顕著であり、電界が印加されるとアルミニウムの溶出電流がながれることが本発明における検討によりわかっている。この腐食性を押さえることを検討した結果、LiN(CFSOに他の電解質塩を加えることにより腐食性を押さえることができることが判った。加えられる電解質塩としては上記したカチオン、アニオンの組合せよりなる電解質塩の添加が効果があったが、腐食の防止、本発明の複合正極、複合負極とのマッチングの面からより好ましくはアニオンとしてBF を持ち且つカチオンとしては意外にもリチウム以外のアルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオンあるいはテトラアルキルアンモニウムイオンの組み合わせを持つ塩が好ましいことが判った。すなわち本発明の好ましい実施形態としては電解質塩としてLiN(CFSOと次式で表せる少なくとも1種の電解質との混合電解質を用いることである。
【化2】
M(BF)x (I)
(R)NBF (II)
(式中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、xは1または2、R
,R,Rは同一または相異なっていてもよいアルキル基)
【0007】
リチウム二次電池の正極活物質としてはTiS,MoS,CoO,V,FeS,NbS,ZrS,MnOなどの遷移金属酸化物、あるいは遷移金属カルコゲン化合物であり、無機材料を活物質として使用した例が数多く研究されている。このような材料はリチウムイオンを電気化学的に可逆的にその構造内に出し入れが可能であり、この性質を利用することによりリチウム二次電池の開発が進められてきた。このような無機材料を活物質とするリチウム二次電池は、一般に活物質自体の真密度が高いため、高いエネルギー密度の電池を構成しやすく、リチウムの吸蔵、放出が活物質の結晶構造中へのインターカレート、デインターカレートである場合、電圧平坦性に優れる電池を構成しやすいという特徴をもつ。反面、必要以上のリチウムイオンが結晶構造中に蓄積された場合、結晶構造の破壊がおこり、二次電池の活物質としての機能を著しく低下させるという欠点を持つ。このことは、二次電池用電極として過放電に弱いということを現している。
このような無機材料を活物質とするリチウム二次電池の開発過程のなかで近年になってリチウム二次電池の電極活物質の可能性としてアニオンを可逆的に吸蔵、放出させることで電極反応を行える導電性高分子の発見があった。導電性高分子は、電極材料として軽量で高出力密度等の特徴を有するほか、材料固有の性質である導電性により集電性に優れ、100%の放電深度に対しても高いサイクル特性を示し、また電極としての成形加工性も良好であるなど無機材料に無い特徴を有している。
【0008】
導電性高分子の例としては、ポリアセチレン(例えば、特開昭56−136489)、ポリピロール(例えば、第25回電池討論会、講演要旨集、P2561,1984)、ポリアニリン(例えば、電気化学協会第50回大会、講演要旨集、P2281,1984)などが報告されている。
リチウム二次電池には上述したような正極の開発の他に、負極の開発という技術課題がある。従来リチウム二次電池の負極はリチウムやリチウムアルミニウム合金が使用されてきたが、リチウムは充放電のサイクル特性が悪いこと、デンドライトによりショートの危険がある欠点を有するとともに、リチウムアルミニウム合金は、サイクル特性はある程度確保できるものの、材料の電位が貴な方向に移動するため高電圧電池をつくりずらいとともに可とう性がないという欠点を有している。このため最近になり、リチウムを吸蔵、放出できる炭素材料を負極に用いたリチウム二次電池が注目され、さかんに研究開発が行われている。この電池がリチウムイオン電池と称されるものである。
本発明の電池において用いられる正極活物質はTiS,MoS,Co,V,MnO,CoO等の遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化合物及びこれらとLiとの複合体(Li複合酸化物;LiMnO,LiMn,LiCoO等)、有機物の熱重合物である一次元グラファイト化物、フッ化カーボン、グラファイト、あるいは10−2S/cm以上の電気伝導度を有する導電性高分子、具体的にはポリアニリン、ポリピロール、ポリアズレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリフタロシアニン、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリピリジン、ポリジフェニルベンジジン等の高分子及びこれらの誘導体が挙げられるが、100%の放電深度に対しても高いサイクル特性を示し、無機材料に比べ比較的過放電に強い導電性高分子を使用することが好ましい。また導電性高分子は、成形加工性の点でプラスチックであるために、従来にない特徴を生かすことができる。以上のような利点を導電性高分子は有しているものの、導電性高分子を正極に用いた二次電池には、活物質の密度が低いため体積エルギー密度が低く、また、電解液中に電極反応に充分足りるだけの電解質が必要であり、且つ充放電反応に伴い電解液濃度の変化が大きいため、液抵抗等の変化が大きく、スムーズな充放電反応を行なうには、過剰な電解液が必要となるという問題点がある。このことはエネルギー密度を向上させる点で不利となる。
【0009】
これに対し、体積エネルギー密度の高い活物質として、上記無機カルコゲナイド化合物、無機酸化物を正極に用いることが考えられるが、これらは充放電に伴う電極反応でカチオンの電極中の拡散速度が遅く急速充放電が難しく、且つ、過放電に対し可逆性が悪く、サイクル寿命が低下するという問題点がある。また、無機活物質はそのままでは成形することが難しいため、結着剤として四弗化エチレン樹脂粉末等を用いて加圧成形することが多いが、その場合電極の機械的強度は充分とは言えないとともに、過放電についてもリチウムイオンが過剰に蓄積されると結晶構造の破壊がおこり二次電池としても機能をはたさなくなる。
このような不具合を解決するため、有機および無機の複合活物質を使用することが考えられる。この場合、使用される高分子活物質としてはいずれも電気化学ドーピングにより高い電気伝導度を示し、電極材料としては10−2S/cm以上の電気伝導度を有することが要求される。また、イオンの拡散性においても高いイオン伝導度が要求される。これらの高分子材料は、電気伝導度の高さが集電能を有し、高分子としての結着能を持ち、更には活物質としても機能する。また導電性高分子は卑な電位において絶縁化するため、この複合正極が過放電状態になった時にも、導電性高分子が絶縁化するため内部に含む無機活物質に必要以上のリチウムイオンが蓄積されるのを防ぎ、無機活物質の結晶構造の破壊を防いでいる。結果として実質上過放電に強い電極を構成できることとなる。
複合正極に用いられる導電性高分子とは、▲1▼活物質としての能力を有する、▲2▼電解液に溶解しない、▲3▼高分子材料間の結着性を有している、▲4▼導電性を示す材料であり、結着剤として無機活物質を固定する。このとき、無機活物質は導電性高分子に全体を包括される形となり、その結果、無機活物質の周りすべてが導電性を帯びることとなる。このような導電性高分子としてはポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリジフェニルベンジジンなどのレドックス活性材料をあげることができるが、特に含窒素化合物において顕著な効果がみられる。これらの導電性高分子材料には、導電性もさることながらイオンの拡散性においても高いイオン導電性が要求される。これらのなかでも重量あたりの電気容量が比較的大きく、しかも汎用非水電解液中で、比較的安定に充放電を行うことのできる点でポリピロール、ポリアニリンあるいはこれらの共重合体がこのましい。さらに好ましくはポリアニリンである。複合正極にもちいる無機活物質は電位平坦性に優れるものが好ましく、具体的には、V,Co,Mn,Ni等の遷移金属の酸化物あるいは前記遷移金属とアルカリ金属との複合酸化物を例示することができ、電解液に安定な電極電位、電圧平坦性、エネルギー密度を考慮すると結晶性バナジウム酸化物が好ましく、特に、五酸化バナジウムが好ましい。その理由は、結晶性五酸化バナジウムの放電曲線の電位平坦部が、上記導電性高分子のアニオンの挿入、脱離にともなう電極電位に比較的近いところにあることによる。
【0010】
本発明の電池に用いられる負極材料としては炭素質材料が用いられる。炭素質負極活物質としてはグラファイト、ピッチコークス、合成高分子、天然高分子の焼成体が挙げられるが、本発明では、▲1▼フェノール、ポリイミドなどの合成高分子、天然高分子を400〜800℃の還元雰囲気で焼成することにより得られる絶縁性乃至半導体炭素体、▲2▼石炭、ピッチ、合成高分子、あるいは天然高分子を800〜1300℃での還元雰囲気で焼成することにより得られる導電性炭素体、▲3▼コークス、ピッチ、合成高分子、天然高分子を2000℃以上の温度で還元雰囲気下焼成することにより得られるもの、および天然グラファイトなどのグラファイト系炭素体が用いられるが▲3▼の炭素体が好ましく、中でもメゾフェーズピッチ、コークスを2500℃以上の還元雰囲気下焼成してなる炭素体とが電位平坦性に優れ、好ましい電極特性を有する。本発明に使用する正極集電体としては、例えば、ステンレス鋼、金、白金、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、チタン等の金属シート、金属箔、金属網、パンチングメタル、エキスパンドメタル、あるいは金属メッキ繊維、金属蒸着線、金属含有合成繊維等からなる網や不織布があげられる。なかでも電気伝導度、化学的、電気化学安定性、経済性、加工性等を考えるとアルミニウム、ステンレスを用いることが特に好ましい。さらに好ましくは、その軽量性、電気化学的安定性からアルミニウムが好ましい。
さらに本発明に使用される正極集電体層および負極集電体層の表面は粗面化してあることが好ましい。粗面化を施すことにより活物質層の接触面積が大きくなるとともに、密着性も向上し、電池としてのインピーダンスを下げる効果がある。また、塗料溶液を用いての電極作製においては、粗面化処理を施すことにより活物質と集電体の密着性を大きく向上させることができる。粗面化処理としてはエメリー紙による研磨、ブラスト処理、化学的あるいは電気化学的エッチングがあり、これにより集電体を粗面化することができる。特にステンレス鋼の場合はブラスト処理、アルミニウムの場合はエッチング処理したエッチドアルミニウムが好ましい。アルミニウムはやわらかい金属であるためブラスト処理では効果的な粗面化処理を施すことができなくアルミニウム自体が変形してしまう。これに対してエッチング処理はアルミニウムの変形やその強度を大きく下げることなくミクロのオーダーで表面を効果的に粗面化することが可能であり、アルミニウムの粗面化としては最も好ましい方法である。
【0011】
本発明に使用する電解液としては有機非水系極性溶媒を使用するが、有機非水系極性溶媒として非プロトン性で且つ、高誘電率のものが好ましい。その具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、ジメトキシカーボネート、ジエトキシカーボネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。有機非水系極性溶媒は1種類のみを使用してもまたは2種類以上混合して使用してもよい。電解質濃度は、使用する正極、電解質及び有機非水系極性溶媒の種類などによって異なるので一概に規定することはできないが、通常、0.1から10モル/リットルの範囲とするのがよい。
本発明に用いる固体電解質としては例えば無機系ではAgCl,AgBr,AgI,LiIなどの金属ハロゲン化物、RbAg,RbAgCNイオン伝導体などが挙げられる。また、有機系では、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリルなどをポリマーマトリクスとして電解質塩を溶解せしめた複合体、あるいはこれらの架橋体、低分子ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、クラウンエーテルなどのイオン解離基をポリマー主鎖にグラフト化した高分子固体電解質が挙げられる。あるいは高分子量重合体に前記電解液を含有した構造を有するゲル状高分子固体電解質が挙げられる。ゲル状高分子固体電解質は、通常の電解液に重合性化合物を加え、熱あるいは光により重合を行い電解液を固体化するものである。より具体的には、WO91/14294記載のものが用いられる。重合性化合物としてアクリレート(例えばメトキシジエチルグリコールメタアクリレート、メトキシジエチレングリコールジアクリレート)系化合物を過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、メチルベンゾイルホルメート、ベンゾインイソプロピルエーテル等の重合開示剤を用い重合させ電解液を固体化するものである。このような固体電解質の中でイオン伝導度、可とう性の点からゲル状高分子固体電解質を用いることが好ましい。ゲル状固体電解質に用いる電解質塩としては特に制限はないが、非水溶媒に溶解し、高いイオン伝導度を示すものが用いられる。このようなものとしては、例えば、カチオンとしてはアルカリ金属イオンが例示できる。アニオンとしてはCl,Br,I,SCN,ClO ,BF ,PF ,SbF ,CFSO ,(CFSOが例示できる。好ましくはLiN(CFSOと前式(I)および/または(II)で示されるテトラフルオロボレートの塩よりなる混合電解質である。また電解液としては有機非水系極性溶媒を使用するが、有機非水系極性溶媒として非プロトン性で且つ、高い誘電率のものが好ましい。その具体例としては、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を挙げることができる。有機非水系極性溶媒は1種類のみを使用してもまたは2種類以上混合して使用してもよい。好ましくはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートの2種以上の混合溶媒である。電解質濃度は、使用する正極、電解質及び有機非水系極性溶媒の種類などによって異なるので一概に規定することはできないが、通常、0.1〜10モル/リットルの範囲とするのがよい。
本発明の電池においてはセパレーターを使用することもできる。セパレーターとしては、電解質溶液のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ、溶液保持に優れたものを使用するのがよい。そのようなセパレーター例としては、ガラス繊維、フィルター、ポリエステル、テフロン、ポリフロン、ポリプロピレン等の高分子繊維からなる不織布フィルター、ガラス繊維とそれらの高分子繊維を混用した不織布フィルターなどを挙げることができる。
【0012】
【実施例】
実施例1
アニリンを含む3MのHBF水溶液中で反応極として20μmのブラスト処理を施した0.9mmφの貫通孔を有するステンレスシート4×7.5cm(重合部)を用い、3mA/cmで両面に重合した。端子は図5の正極と同じ位置に配置した。このステンレスポリアニリン電極を流水で洗浄した後、0.2N硫酸中、−0.4V vs SCEまで電位をかけて充分に脱ドーピング操作を行った。これを20%ヒドラジン水溶液を用いて還元し、洗浄、乾燥してポリアニリン電極を得た(厚み660μm)。また、同様な手法で片面のみポリアニリンを重合した正極を2枚作製した。作製した計3枚の正極を端子部を除き活物質層全体をポリプロピレンポアフィルターを筒状にして全体をおおう様にして固定した。ついでプロピレンカーボネートとジメトキシエタンの7/3(体積比)混合液にLiN(CFSOを1.97M、NaBFを0.03M溶解させた電解液を84.9%、エトキシジエチレングリコールアクリレート14.77%、トリメチロールプロパントリアクリレート0.23%、ベンゾインイソプロピルエーテル0.1%の割合で混合した溶液をポリアニリンに充分しみこませ、高圧水銀灯の光を照射した。電解液は固体化し、圧力をかけても液がしみ出るようなことはなかった。これらを正極部材とした。
コークスを2500℃で焼成した炭素を47.4重量部、ポリビニリデンフルオライド5.2重量部、n−メチルピロリドン47.4重量部からなる塗布用溶液をブラスト処理を施したステンレス鋼(SUS304)集電体上に塗布し、80℃で乾燥、厚さ20μmの負極活物質層(4×7.5cm)を両面に形成した。炭素にリチウムイオンを挿入する操作をしたのち、前記混合液を浸透させ高圧水銀灯を照射し電解液を完全に固体化した。これを2枚作製し、負極部材とした。正極部材と負極部材を図5のような層構成となるように積層し、1′、5′、9′及び1″、5″、9″及び3′、7′及び3″、7″をそれぞれ溶接により導通させた。積層体全体をアルミ心材入り熱融着フィルムで減圧下封止することにより電池を完成させた。この二次電池の充放電試験を行ったところ初期容量45mAh(20mA放電)、40mAh(60mA放電)であり、自己放電は8.5%/月、容量が2/3になるまでのサイクルは305回であった。
【0013】
実施例2
ポリアニリン9.9重量部、結晶性V 23.1重量部、n−メチルピロリドン67重量部からなる塗布用溶液を外装を兼ねるブラスト処理を施したステンレス正極集電体上に塗布し、120℃で乾燥させた厚さ120μm(両面)、60μm(片面)の正極活物質を形成した。また、負極活物質層を60μm(両面)とした。これ以外は実施例1と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は60mAh(30mA放電)および55mAh(90mA放電)であり、自己放電は6.3%/月、サイクルは371回であった。
【0014】
実施例3
端子部を図6の様に配置する以外は実施例2と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は61mAh(30mA放電)および60mAh(90mA放電)であった。
【0015】
比較例1
端子部を図6の1′、5′、9′と3′、7′とした以外は実施例2と同様にして電池を作製した。二次電池の初期容量は60mAh(30mA放電)および40mAh(90mA放電)であった。
【0016】
比較例2
端子部を図7の様にした以外は実施例2と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は60mAh(30mA放電)および51mAh(90mA放電)であった。
【0017】
比較例3
実施例1の電解質塩を2M LiBFとする以外は同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は40.5mAh(30mA放電)であり、自己放電11%/月、サイクルは245回であった。
【0018】
実施例4
正極集電体層としてエッチドアルミニウムを使用する以外は実施例2と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は61.5mAhであり、自己放電は8.0%/月、サイクルは315回であった。
【0019】
比較例4
電解質塩として2M濃度のLiN(CFSOを用いる以外は実施例4と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は60.5mAhであったが、サイクル20回後には16mAhしかなく、分解してみるとアルミの溶解が起こっていることが判った。
【0020】
実施例5
電解質塩として1.98M LiN(CFSOおよび0.02M KBFを用いる以外は実施例2と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は59.5mAhであり、自己放電は7.1%/月、サイクルは361回であった。
【0021】
実施例6
電解質塩として1.98M LiN(CFSOおよび0.02M テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(CNBFを用いる以外は実施例2と同様に電池を作製した。二次電池の初期容量は62mAhであり、自己放電は6.8%/月、サイクルは381回であった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば電流特性に優れ高容量であり、自己放電、サイクル特性、耐腐食性に優れるリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】公知の二次電池の電極、セパレータおよび電極端子の配置の1例を示す図である。
【図2】電極およびセパレータを折りたたんで積層した場合の公知の二次電池の1例の電極、セパレータおよび電極端子の配置を示す図である。
【図3】本発明の二次電池の電極、セパレータおよび電極端子の配置の1例を示す図である。
【図4】それぞれ1個の正負極の端子を、正極および負極集電体の互いに反対側に配置した二次電池の配置を示す図である。
【図5】実施例1の二次電池の電極、セパレータおよび電極端子の配置を示す図である。
【図6】実施例3の二次電池の電極、セパレータおよび電極端子の配置を示す図である。
【図7】比較例2の二次電池の電極、セパレータおよび電極端子の配置を示す図である。
【符号の説明】
A 正極
B 正極端子部
C セパレータ層
D 負極
E 負極端子部
1 集電体+正極活物質層
1′ 正極端子部
1″ 正極端子部
2 セパレーター層
3 集電体+負極活物質層
3′ 負極端子部
3″ 負極端子部
4 セパレーター層
5 集電体+正極活物質層
5′ 正極端子部
5″ 正極端子部
6 セパレーター層
7 集電体+負極活物質層
7′ 負極端子部
7″ 負極端子部
8 セパレーター層
9 集電体+正極活物質層
9′ 正極端子部
9″ 正極端子部

Claims (5)

  1. 正極集電体層、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体層の各層よりなる概ね四角形の層構造単位を2個以上有して構成される二次電池において、前記の層構造単位のすべての正極集電体層および負極集電体層の二ヶ所に電気的導電手段が設けられており、該二ヶ所の電気的導電手段が、該電気的導電手段が設けられる正極集電体層または負極集電体層の周辺部に沿って3/4L〜Lだけ離れて存在しているとともに、正極集電体層の二ヶ所の電気的導電手段が向かい合う負極集電体層の二ヶ所の電気的導電手段とは異なる辺に設けてあることを特徴とする二次電池。
    (ただし、前記Lは、二ヶ所に電気的導電手段が、それぞれもっとも離れた位置に存在する場合の両者間の距離を意味する。)
  2. 請求項1記載の二次電池において、負極活物質層が炭素系負極活物質層である二次電池。
  3. 請求項1または2記載の二次電池において、正極集電体層および負極集電体層が四角形の形状であって、二ヶ所の電気的導電手段が四角形の対向辺に設けられている二次電池。
  4. 請求項1、2または3記載の二次電池において、電解質層の電解質として、LiN(CFSOと下式(I)および/または(II)で表わされるテトラフルオロボレート塩の少なくとも1種との混合電解質を用いる二次電池。
    【化1】
    M(BF)x (I)
    (R)NBF (II)
    (式中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、xは1または2、R
    ,R,Rは同一または相異なっていてもよいアルキル基)
  5. 請求項1、2、3または4記載の二次電池において、正極集電体がエッチドアルミニウムである二次電池。
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