JP3553654B2 - ディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構 - Google Patents

ディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、U字状の板ばねによってスライドピンを支持ブラケットのピン支持穴の内面に押し付けて、ガタが生じることなく、かつキャリパの支持に必要な所定の自在性を持たせたディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構に関するものであり、ピン支持穴内面に設けられていて、上記板ばねを保持する縦溝の加工を容易にし、かつ板ばねが上記縦溝から脱落することを防止して、板ばねおよびスライドピンの支持ブラケットへの組み付け作業を容易にすることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のフローティングタイプのディスクブレーキのキャリパについて、スライドピンを波形板ばねによってピン支持穴の内面に押し付けて、ガタが生じることなく、かつキャリパの支持に必要な所定の自在性を持たせた摺動ガイド機構がある(特願平5−349310号、以下これを「前提技術」という)。この前提技術の概略を図8、図9を参照しつつ説明する。
このものは、支持ブラケット10のピン支持穴11の内面に縦溝12を形成し、この縦溝12に波形板ばね(以下これを単に「波形板ばね」という)13を装着し、これによってスライドピン14をピン支持穴11の反対側の内面に押し付けてガタをなくすとともに、キャリパの支持に必要な所定の自在性を持たせたものである。縦溝12に板ばね13を装着した後、スライドピン14をピン支持穴に挿入して組み付けるのであるが、上記の縦溝12は断面形状が四角の角形溝であり、波形板ばねはばね板の両端部を曲げた波形板ばねであるために、スライドピン14をピン支持穴11に挿入する段階で板ばねが縦溝12からピン支持穴11の方へ脱落することがあり、これらの組み付けに手間取ることがある。また縦溝12が断面四角形の角溝であるためにその加工が単純ではなく、加工能率が悪く加工コスト増を招いている。
したがって、前提技術については上記の問題の解消が求められる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の要請に応えることを目的とし、そのために加工が単純で、かつ板ばねに対する保持機能を有するように、縦溝の形状および板ばねの形状、構造を工夫することをその課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題解決のために講じた手段は、上記前提技術を前提とし、次の要素(イ)〜(ハ)によって構成されるものである。
(イ)縦溝を断面C字状のC形溝としたこと、
(ロ)板ばねの一方の辺の左右両側に他方の辺の方へ張り出したウイングを設けたこと、
(ハ)板ばねの上記一方の辺の左右両側のウイングの外幅を上記C形溝の入口幅よりも大きくしたこと。
【0005】
【作 用】
U字状の板ばねを、そのウイングが設けられている一方の辺をC形溝の底の方にして支持ブラケットの上記C形溝に挿入する。C形溝に装着されたとき、上記左右両ウイングの外幅がC形溝の入口幅よりも大きいので、左右のウイングの先端がC形溝の入口の内側内面に係合して上記一方の辺がC形溝内にしっかりと保持される。したがって、スライドピンがピン支持穴に挿入されていない状態においても、C形溝からピン支持穴の方に板ばねが脱落することはない。C形溝に装着された状態において板ばねの他方の辺はピン支持穴に突出しているが、スライドピンをピン支持穴に挿入すると、他方の辺はスライドピンによってC形溝内に押し込まれ、その弾発力によってスライドピンをピン支持穴の反対側の内面に押し付ける。
板ばねを収容する溝はC形溝であるから、ドリル加工によってこれを形成することができる。したがって、従来の角形の縦溝に比してその切削加工が極めて簡単であり、その加工能率は遥かに良い。
したがって、上記手段によって上記課題を十分解決することができる。
【0006】
【実 施 例】
次いで、図1〜図7を参照しつつ実施例を説明する。
U字状の波形板ばね20の一方の辺21は断面形状が円弧状であり、その左右両側に断面形状が円弧状のウイング22を他方の辺23に向けて突設させている。他方の辺23の先端に脚24を設けており、当該他方の辺23がスライドピンに当接してスライドピンを弾性的に押圧する。
この実施例では一方の辺21およびその左右両側に突設したウイング22がともに円弧状断面を有するものであるから、一方の辺21とウイング22とによって断面C形を成すことになる。そして、両ウイング22、22の外幅wは後述のC形溝の入口幅bよりも若干大きい。またウイング22は波形板ばねの一方の辺21のほぼ全長にわたって設けられている。
ピン支持穴11の内面に設けたC形溝30の大きさは波形板ばねがスムーズに挿入される大きさであることが必要であり、入口幅bがその直径(半径R×2)よりも若干小さくなるように、その中心はピン支持穴11の内周の外側に位置している。
C形溝30に波形板ばね20を挿入したとき、ウイング22の先端22aがC形溝30の入口の内面に当接して、波形板ばね20の一方の辺21がC形溝内にしっかりと保持される。したがって、スライドピン40がピン支持穴11に挿入されていないとき、波形板ばね20がC形溝30からピン支持穴11の方へ脱落することはない。
また、スライドピン40がピン支持穴11に挿入されたとき、その他方の辺23の脚24の先端24aがC形溝30の端部に設けた溝31に係合して抜け止めし、さらに当該溝31の底に脚24の先端24aが当接して他方の辺23の先端を支えるので、他方の辺23は両端を支えられた状態でスライドピンを押圧することができる。この板ばね20それ自体の機能は前提技術のU字状の板ばね13と異なるところはない。
この実施例は、一方の辺21およびその左右両側に突設したウイング22がともに円弧状断面を有し、一方の辺21とウイング22とによって断面C形を形成したものであるから、金属平板をC形溝とほぼ同じ曲率の円弧状にプレス加工することによって、ウイングを簡単に成形することができる。
一方の辺21の断面形状については、多角形断面でもよく、要はC形溝の底面に安定的に当接する形状であればよい。
また、ウイングの断面形状については直線的なものでもよく、あるいは一方の辺21の断面形状を円弧状にするとき、その曲率半径よりも大きい曲率半径をもつ円弧状でもよい。要は、C形溝にスムーズに挿入され、かつその外幅wがC形溝の入口幅bより若干大きくてその先端が当該入口の内側面に当接するものであればよい。
さらにウイング22は、その機能確保の観点からは幅狭のものを一方の辺21の左右両側にそれぞれ2〜3個設けたものでもよい。この場合は予めそのように打ち抜いたものをプレス加工すればよいから、加工コストの面で特に不利であるということはなく、板ばねの軽量化を図る上では有利である。
なお、この実施例においてはスライドピン40に平坦面41を形成してこれに波形板ばね20の他方の辺23を当接させることによってスライドピン40に対する回り止めを行うことができるので、取付ボルト15をスライドピンの捩子穴に螺合させるとき(図8参照)のスライドピンに対する回り止め手段を省略することができる。
上記の平坦面41は切削加工によって形成することもでき、鍛造によることもできる。しかも、最も能率的な加工法は引き抜き加工である。この平坦面41を引き抜き加工によって形成するときは、平坦面が一面であるとスライドピンに加工圧力が不均一に掛るので、スライドピンの断面形状が歪むことがある。これを避けるためにスライドピンの外周に等間隔に三つの平坦面を配置するとよい。(図7参照)。
【0007】
【効 果】
上記のとおり、本発明はピン支持穴内面の縦溝にU字状の板ばねを装着し、これによってスライドピン14をピン支持穴11の反対側の内面に押し付けてガタをなくすとともに、キャリパの支持に必要な所定の自在性を持たせた前提技術について、縦溝の加工を著しく簡単にして、その能率化を図ることができ、かつ、板ばねの縦溝からの脱落を防止して、板ばねおよびスライドピンの支持ブラケットのピン支持穴への組み付け作業を容易にし、その組み付け作業の能率化を図ることができたものである。このことが本発明の特有の効果である。
すなわち、
板ばねの脱落を防止するという課題は、板ばねの断面形状を略コ形にして、これを四角な縦溝に若干の締め代をもって嵌着させることによって解決することができないではない。しかし、これでは縦穴の加工を容易にするという課題を解決することはできない。
また、縦溝の加工を容易にするという課題は、縦溝をC形溝にすることによって解決することができる。しかし、これでは板ばねの脱落を防止するという課題を解決することはできない。
縦溝をC形溝にし、板ばねの断面形状をC形にしてその外幅をC形溝の入口幅よりも大きくすることによって、縦溝の加工を容易にするという課題と、板ばねの脱落を防止するという課題とをあわせて解決することができる。この実施の形態は本発明の1実施形態であり、この両課題を一つの解決手段によって解決したことが本発明の最大の効果である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の波形板ばねの正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施例のピン支持穴および縦溝の断面図である。
【図5】図4の縦溝に図1の波形板ばねを装着した状態の断面図である。
【図6】本発明の実施例の組み立て断面図である。
【図7】図6のブーツを除いた状態でのB−B線矢視図である。
【図8】本発明の前提技術であるディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構の概略図である。
【図9】図8のDーD断面図である。
【符号の説明】
10・・・支持ブラケット
11・・・ピン支持穴
12・・・縦溝
13、20・・・U字状の波形板ばね(波形板ばね)
14、40・・・スライドピン
15・・・取付けボルト
21・・・一方の辺
22・・・ウイング
22a・・・ウイングの先端
23・・・他方の辺
24・・・脚
24a・・・脚の先端
30・・・C形溝
31・・・溝
41・・・平坦面
w・・・ウイングの外幅
b・・・C形溝の入口幅
R・・・C形溝の半径

Claims (3)

  1. U字状の板ばねをピン支持穴内面の縦溝に装着し、これによってスライドピンをピン支持穴の反対側の内面に押し付けてガタをなくすとともにキャリパの支持に必要な所定の自在性を持たせたディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構において、
    上記縦溝を断面C字状のC形溝とし、
    上記U字状の板ばねの一方の辺の左右両側から他方の辺に向けて張り出したウイングを設け、
    上記板ばねの上記一方の辺の左右両側のウイングの外幅を上記C形溝の入口幅よりも大きくしたディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構。
  2. 上記一方の辺とその左右両側に設けたウイングとの断面形状をC形にした請求項1記載のキャリパの摺動ガイド機構。
  3. スライドピンの外周に等間隔に複数の平坦面を設け、そのいずれかに上記板ばねの上記他方の辺を当接させた請求項1記載のディスクブレーキのキャリパの摺動ガイド機構。
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