JP3553505B2 - 発光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷陰極を用いた平板型表示装置(フラットパネルディスプレイ)、特にその中でもオーロラビジョン(登録商標)等の大画面の表示装置に用いられる配列型の発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、表示装置の大画面化に伴い、フラット・パネル・ディスプレイの開発が益々盛んに行われている。なかでも平面状に配置された電界放出型陰極、即ち冷陰極(Cold Cathode)からなる電子源を備えた電界放出型表示装置(FED:Field Emission Display)は、高輝度および広視野角、高速応答、低消費電力の実現が可能な自発光型表示装置として注目されている。この中でも特に注目されているのが、半導体プロセスを必要とせず印刷やCVD(Chemical Vapor Deposition)で作成可能なCNT(Carbon Nano−Tube)を用いた電子源であり、学会や研究会で盛んに発表されている。
【0003】
図7は、冷陰極を用いた従来の発光素子を示す模式断面図であり、カラー大画面表示装置に適用される。ここでは冷陰極の代表としてCNT陰極を用いて従来の技術の説明をするが、もちろん、冷陰極であれば、その種類はCNTに限定されるものではない。図中、1はガラスなどでできた真空容器の前面パネルであり、2は前面パネルから約5〜10mm隔てて対向配置された背面パネルで、その内表面には印刷又はCVD法によりCNT陰極6が四角や丸の所定の形に多数マトリクス状に形成されている。なお、このときのCNT陰極6の厚さは印刷・焼成後10〜20μm程度であり、前面パネル1と背面パネル2の厚さは2〜4mm、大きさは〜80mm角である。3は前面パネル1の内面に多数マトリクス状に塗布された赤R、緑G、青Bの略正方形の蛍光体で、蛍光面を形成している。4は矩形枠状のガラス製のスペーサで、これら前面パネル1と背面パネル2とスペーサ4とが低融点ガラスにより気密に封止されて真空容器を形成している。蛍光面全体には、発光効率を高めること及び電子加速用の陽極として機能させることを目的としたアルミバックを施している。すなわち前面パネル1内面の蛍光体3は10kV程度の陽極電位に保てるようになっている。5は良く知られた折り曲げ式の金属ゲート電極で、通常厚さが0.1〜0.3mmでCNT陰極6から約1〜2mm離して設置されており、電圧を印加することによりCNT陰極6から電子を引き出す作用をもっている。8はゲート電極5に開けられた電子を通過させるメッシュ開口部である。
【0004】
ここで示したもの以外にも実際には発光素子の内部を真空に引くための穴や排気管、外部への信号取り出し電極などが背面パネル2の中央部に、また内部ガスを吸着するためのゲッタがスペーサガラス4側面などに設置されているが、本願発明の要旨とは本質的に無関係であるので、簡明のために略している。
【0005】
このように構成された発光素子は、縦横にマトリクス状に所定個ずつ配列され、大画面の表示装置を構成する。ここで、隣接する発光素子間の間隙が大きい場合、画面全体を見たときに、その境界部分(継目、シーム)が目立つという問題がある。従って隣接する発光素子間の間隔はできるだけ小さいことが望ましく、そのために、スペーサガラス4をできるだけ薄くしたり、外部電極(図示せず)や排気管(図示せず)を背面側に設けている。
【0006】
次に、このように構成された発光素子や大画面表示装置の動作について説明する。
図7に示す従来例においては、CNT陰極6とゲート電極5との間に適当な電圧を印加してゲート電極5のメッシュ開口部8を通してCNT陰極6からエミッション電流を取り出す。一般に、このときのゲート電圧は点灯位置を制御するためパルス電圧が加えられる。このようにしてゲート電極5から取り出されたエミッション電流は、陽極として機能する蛍光体3に印加された約10kV程度の高電圧により加速され、蛍光体を励起して発光させ、個々の発光素子に所定のカラー画像を出す。そしてその結果、全体として大画面表示装置にカラー画像を表示できることになる。また、個々の発光素子においては、エミッション電流が蛍光体3に当ったときに出るガスは、ゲッタ(図示せず)により吸着され、発光素子本体、真空容器の内部を高真空に保つことによりエミッション電流の劣化が起こりにくくなるようにしてある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
CNT陰極とゲート電極間に印加されるパルス電圧の値は、入手しやすい市販の安い駆動用ICを使うためには200V以下程度が望ましい。しかし、従来の発光素子は以上のように、ゲート電極に0.1〜0.3mm程度の薄い折り曲げ式の金属電極を用い、CNT陰極6から約1〜2mm離して設置しているため、ゲート電極5にかける電圧が高いという問題があった。陰極6とゲート電極5間のギャップを小さくして低い駆動電圧で動作させようにも、折り曲げ式のゲート電極のため曲がりや反りなどもあって精度が出せず、0.5〜1.0mm程度にしか小さくできない。その結果、低い駆動電圧で動作させられないという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、陰極とゲート電極間のギャップを小さくでき、低い駆動電圧で十分なエミッション電流が得られる発光素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる発光素子の第1の構成は、前面パネル及び背面パネルを有する真空容器と、上記前面パネルの内面に形成された蛍光面と、上記背面パネルの内面に形成され、複数個の冷陰極が配線により連結された複数列の冷陰極部列と、上記背面パネルの複数列の冷陰極部列上にそれらと交差され、それらとでマトリクス状に形成される複数列のゲート電極列とを備え、上記冷陰極から放出された電子を上記蛍光面に衝突させることによりこれを発光させるものであって、上記ゲート電極列は、上記冷陰極部との間に空隙部が形成されるように上記冷陰極部との対向部毎に凹部を形成するとともに、上記冷陰極との対向部に電子引き出し用の開口部が形成された金属平板とされ、上記背面パネルに載置されたものである。
【0010】
また、本発明に係わる発光素子は、ゲート電極列が個々の冷陰極を覆っているものである。
【0011】
さらに、本発明に係わる発光素子は、ゲート電極列が凹部にアウトガス抜きを兼ねた上記冷陰極配線との接触防止用空隙を有しているものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による表示装置の発光素子を示す模式断面図、図2は図1における背面パネルに形成された複数列のCNT陰極部列を示す正面図、図3は図1におけるゲート電極列の一製造過程を示す平面図で、ゲート電極列の底面を示している。図4(a)は図1における1個のゲート電極列の詳細構造を示す正面図で、ゲート電極列の上面を示し、同図(b)はそのA−A線断面図、(c)はB−B線断面図、(d)はC−C線断面図、図5は図1における背面パネル上にゲート電極列を直置きした状態を示す正面図である。なお、簡略化のため陰極部列、ゲート電極列とも4列で図示している。
図において、1はガラスなどでできた厚さ2〜4mmの真空容器の前面パネル、2は前面パネルから約5〜10mm隔てて対向配置された前面パネルと同様の背面パネルで、その内表面には印刷又はCVD法により矩形CNT陰極6が多数マトリクス状に形成されている。なお、このときのCNT陰極6の厚さは印刷・焼成後10〜20μm程度であり、複数個のCNT陰極6が陰極配線層7により連結され冷陰極部列60を構成している。3は前面パネル1の内面に塗布された赤R、緑G、青Bの略正方形の蛍光体で、蛍光面を形成している。4は矩形枠状のガラス製のスペーサで、前面パネル1と背面パネル2とスペーサ4とが低融点ガラスにより気密に封止されて真空容器を形成している。蛍光面全体には、発光効率を高めるとともに電子加速用の陽極として機能させるためにアルミバックを施しているので、前面パネル1内面の蛍光体3は10kV程度の陽極電位に保てるようになっている。5aは冷陰極部列60毎との間に空隙部が形成されるように凹部、すなわちCNT陰極6との対向部に陰極用開口部10と陰極配線層7との対向部に接触防止用空隙11とが形成され、CNT陰極6を覆って背面パネル2に直置きされたゲート電極列、8はゲート電極列5aの陰極用開口部10に開けられた電子を通過させるメッシュ開口部である。複数列のゲート電極列5aは複数の冷陰極部列60とでマトリクス状に形成されている。
【0013】
まず、本発明の主要部の折り曲げなし直置きゲート電極列5aについて説明する。このゲート電極列5aは図3に示すように1枚の薄い四角形の金属平板からエッチングにより不要な部分を除去してその骨格、複数列のゲート電極列5a、陰極用開口部10等の凹部を作る。なお、9は精度良く設置するために設けられ、ハーフエッチングで切れ目を付け、設置後折り曲げて分離除去する部分である。このハーフエッチングで特に重要なのは、陰極用開口部10の空隙の高さ(すなわち凹部の深さ)であり、この空隙の高さがCNT陰極6とのギャップを決める。図4では、その値の一例として、金属板厚が0.1〜0.2mm、陰極用開口部10が0.05〜0.1mmの場合を示している。また、このゲート電極列5aは図2で示したような背面パネル2の上に形成されている冷陰極部列60の上に図1や図5で示すように直に置かれるが、接触防止用空隙11が設けられているので陰極配線層7との接触を避けることができる。
【0014】
また、このゲート電極列5aは背面パネル2の上に直置きされるが、直置きしたゲート電極列5aとCNT陰極6とのギャップを精度よく狙いどおり出すために、ゲート電極列5aを背面パネル2の所定の位置に置いた後、適当な治具を用いてゲート電極列5aを押さえ、曲げやそりの影響を受けにくくした状態で背面パネル2とゲート電極列5aを低融点ガラスなどで固定している。なお、ゲート電極列5aに背面パネル2と熱膨張率が異なる材料を使えば、発光素子を作る上で欠かせない熱工程で、固定した部分にクラックが入るおそれがあるため、ゲート電極列5aの材料としては、背面パネル2の一般的な材料である光学ガラスやソーダガラスの熱膨張率と同程度の熱膨張率を持つ426合金(42%Ni−6%Cr−52%Fe)や50−50合金(50%Fe−50%Ni)を使っている。
【0015】
以上述べたように、ゲート電極列5aを折り曲げ式にせず、薄い1枚の金属平板をハーフエッチングして所定の位置に個々のCNT陰極6を完全に覆う陰極用開口部10と接触防止用空隙11を作り、陰極用開口部10に孔を多数開けメッシュ開口部8形成し作製している。このように作製した薄い1枚板の金属板からなるゲート電極列5aをCNT陰極6が形成されている背面パネル2の上に直接載せているので、適当な治具を用いて押さえることにより、薄い金属板であるが曲げや反りの影響を受けにくく、CNT陰極6とのギャップを0.05〜0.1mmと従来の折り曲げ式ゲート電極5の場合より1桁程度小さくできる。これにより、ゲート電極5aにかける印加電圧も従来の数分の一以下の極めて低い電圧ですむようになる。
曲がりや反りのない高精度なゲート電極列5aを簡便に形成でき、絶縁破壊の心配もなく、冷陰極とゲート電極間のギャップを極く狭くすることができるので、制御用ゲート電圧を低くでき、入手しやすい安い駆動用ICを用いることができる。
【0016】
また、ゲート電極列5aが陰極配線層7との接触防止用空隙11を除き個々のCNT陰極6を完全に覆っているので、陰極とゲート電極列との距離が均一となり、陰極全面から一様で均一なエミッション電流が取り出せる。
メッシュ開口部8は丸孔又は4角形、6角形などの多角形孔のメッシュ形状としたので、陰極全面から均一に電子が引き出せ、蛍光面に放出できる。
【0017】
実施の形態2.
図6(a)は本発明の実施の形態2に係わる1個のゲート電極列の詳細構造を示す正面図で、ゲート電極列の上面を示し、同図(b)はそのA−A線断面図、(c)はB−B線断面図である。この実施の形態2では図4に示す実施の形態1のゲート電極列5aと異なり、陰極配線層7との接触防止用空隙11を図示のように大きくし、エミッション時の電子とゲート電極メッシュ開口部との衝突によるアウトガスをトンネル効果で抜けやすくしている。接触防止用空隙11がアウトガス抜き用の空隙を兼ねる構成となっている。これによりアウトガスがトンネル効果で抜けやすく、電子が良好に引き出され、十分なエミッション電流が得られる。
【0018】
以上、本発明の好ましい実施の形態である配列型冷陰極素子を例に、折り曲げ式ではない直置き型のゲート電極について説明したが、この実施の形態に限定されるわけではない。例えば、冷陰極の一例としてCNTを例に取って説明したが他の冷陰極でもかまわない。
【0019】
【発明の効果】
本発明に係わる発光素子は、前面パネル及び背面パネルを有する真空容器と、上記前面パネルの内面に形成された蛍光面と、上記背面パネルの内面に形成され、複数個の冷陰極が配線により連結された複数列の冷陰極部列と、上記背面パネルの複数列の冷陰極部列上にそれらと交差され、それらとでマトリクス状に形成される複数列のゲート電極列とを備え、上記冷陰極から放出された電子を上記蛍光面に衝突させることによりこれを発光させるものであって、上記ゲート電極列は、上記冷陰極部との間に空隙部が形成されるように上記冷陰極部との対向部毎に凹部を形成するとともに、上記冷陰極との対向部に電子引き出し用の開口部が形成された金属平板とされ、上記背面パネルに載置されたものであるので、ゲート電極列は曲がりや反りの影響の少ない高精度なものとなり、絶縁破壊の心配も少なく、冷陰極とゲート電極間のギャップを極く狭くすることができるので、十分なエミッション電流を低い駆動電圧で提供できる。
特に、本発明の発光素子は、大画面の表示装置に用いられる発光素子に関し、半導体プロセスを必要とせず印刷やCVDで作成可能な電子源に適用されるものであって、ゲート電極列は、金属平板であるが曲げや反りの影響を受けにくく、冷陰極とのギャップを従来の折り曲げ式ゲート電極(図7)の場合より1桁程度小さくできる。これにより、ゲート電極にかける印加電圧も従来の数分の一以下の極めて低い電圧ですむようになる。曲がりや反りの影響を受けにくい高精度なゲート電極列を簡便に形成でき、絶縁破壊の心配もなく、冷陰極とゲート電極間のギャップを極く狭くすることができるので、制御用ゲート電圧が低い駆動用ICを用いることができる。
【0020】
本発明に係わる発光素子によれば、ゲート電極列が個々の冷陰極を覆っているので、陰極とゲート電極列との距離が均一となり、陰極全面から一様で均一なエミッション電流が取り出せる。
【0021】
本発明に係わる発光素子によれば、ゲート電極列が上記凹部にアウトガス抜きを兼ねた上記冷陰極配線との接触防止用空隙を有しているので、アウトガスがトンネル効果で抜けやすく、電子が良好に引き出され、十分なエミッション電流が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光素子を示す模式断面図である。
【図2】図1の発光素子の背面パネル上に形成した冷陰極部列を示す正面図である。
【図3】図1の発光素子に係わる複数のゲート電極列の一製造過程を示す平面図である。
【図4】図1のゲート電極列の詳細を示す正面図と断面図である。
【図5】図1の発光素子の冷陰極部列が形成された背面パネル上にゲート電極列を載置した状態を示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係わるゲート電極列の詳細を示す正面図と断面図である。
【図7】従来例の発光素子を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 前面パネル 2 背面パネル
3 蛍光体 5 折り曲げ式ゲート電極
6 CNT陰極 7 陰極配線層
8 メッシュ開口部 10 陰極用開口部
11 接触防止用空隙 60 冷陰極部列。

Claims (3)

  1. 前面パネル及び背面パネルを有する真空容器と、上記前面パネルの内面に形成された蛍光面と、上記背面パネルの内面に形成され、複数個の冷陰極が配線により連結された複数列の冷陰極部列と、上記背面パネルの複数列の冷陰極部列上にそれらと交差され、それらとでマトリクス状に形成される複数列のゲート電極列とを備え、上記冷陰極から放出された電子を上記蛍光面に衝突させることによりこれを発光させるものであって、上記ゲート電極列は、上記冷陰極部との間に空隙部が形成されるように上記冷陰極部との対向部毎に凹部が形成されるとともに、上記冷陰極との対向部に電子引き出し用の開口部が形成された金属平板とされ、上記背面パネルに載置されたことを特徴とする発光素子。
  2. 上記ゲート電極列が個々の上記冷陰極を覆っていることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
  3. 上記ゲート電極列が上記凹部にアウトガス抜きを兼ねた上記冷陰極配線との接触防止用空隙を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の発光素子。
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