JP3642151B2 - 表示発光素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷陰極を電子源に用いた表示発光素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、主流の画像表示装置はCRT(Cathode Ray Tube)であるが、それに代わる情報端末の表示装置として数多くのフラット・パネル・ディスプレイ(Flat Panel Display、平板型表示装置)が開発検討及び製品化されてきている。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、ELD(Electro Luminescence Display) などがあげられる。また、表示方法がCRTと同じ電子線励起の自発光方式で、表示画面の輝度や色再現性などに優れるFED(Field Emission Display、電界放出型表示装置)も注目されている。このFEDは、電子源に電界放出型エミッタを用いており、CRTの電子源である熱陰極素子に対して、冷陰極(Cold Cathode)素子と呼ばれている。
【0003】
このような冷陰極素子を用いた表示発光素子としては、例えば特開平3−208241号公報に記載のものが知られている。図15は同公報に記載された従来の表示発光素子の構成を示す側面断面図であり、図において、101は背面パネル (背面基板)、102は前面パネル(前面基板)、103はエミッタチップ(冷陰極チップ)、104はゲート電極(データ電極)、105は絶縁層、106は表示画素を構成する蛍光体、107はスペーサ(側板)、108は外部電極、109は陽極電極用外部端子、110は絶縁層、111はビーム集束用電極、112は陽極電極である、113は絶縁性基板である。この冷陰極素子を用いた表示発光素子は、透明な基板に陽極電極112と蛍光体106が形成された前面パネル102と表面に冷陰極素子が形成された背面パネル101を、スペーサ107をはさんで貼り合わせることにより真空容器を構成し、真空容器内部は排気管(図示せず。)により排気され真空状態とされる。また、冷陰極素子の構成を図16に示す。図示するように、背面パネル101の上にカソード電極114とゲート電極104が絶縁層105をはさんでマトリックスに配置されており、その交点に複数の開口部が設けられ、その中に電子放出部である円錐形のエミッタチップ103が形成されている。
【0004】
次に、動作について図をもとに説明する。多数の冷陰極からなる電子源のカソード電極114とゲート電極104の間に50〜100Vの電位差を与えることより、エミッタチップ103の先端に高電界がかかり、電子が引き出される。放出された電子は、陽極電極用外部端子109を介して高電圧の印加された対向する前面パネル102側の陽極電極112に引かれ、蛍光体106に衝突し、これによって蛍光体106が励起されて発光する。この際、ビーム集束用電極111に適当な電圧を印加しておくことにより、エミッタチップ103から放出される電子ビームが集束される。カソード電極114とゲート電極104は、順次画素(蛍光体)が発光するように外部電極108を介して線順次で駆動される。これにより、各画素に対向する蛍光体106が順次発光し、前面パネル102を通って表示画像が形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
冷陰極表示発光素子は、その性能が内部の真空度に依存されることが一般に知られている。10−7Paという超高真空装置の中では、10000時間以上安定して動作するが、10−4Pa以下の真空度になるとエミッション電流波形にノイズが発生し、数100時間で電流が半減する。特に、この現象は冷陰極表示発光素子の完成後、動作が安定するまでのエージング過程の初期段階で起こり、電子衝撃により蛍光面や電極などのパネル構成材料の内部から発生するガスで真空度が低下し、そのガスが冷陰極チップに大きなダメージを与え、その電流放出特性を著しく低下させている。これは、冷陰極表示発光素子単体もしくはそれを用いる表示装置としては致命的な欠点であり、画像のちらつきや輝度のバラツキが発生したり、寿命が短くなるなどの不都合を生じる。従って、素子完成後も真空容器(発光表示管)内部を高真空度で長時間維持する必要がある。そのためには、ガスを吸収するゲッターを容器内部に多く設置するか、容器内部から発生するガスを極めて少なくする必要がある。
【0006】
ところが、冷陰極表示発光素子では、真空容器内部の高さ(前面パネルと背面パネルとのギャップ)は数mm程度の薄型構造となるため、容器内部に多くのゲッターは設置できないといった問題があった。
【0007】
また、素子作成時に真空容器内部の放出ガスを十分に放出させるために、排気工程を例えば300℃程度の高温でベーキングしながら行ったとしても、蛍光体や金属薄膜の内部からも充分にガスを放出させることは不可能であるといった問題もあった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、内部に少ないゲッターしか設置することができない場合であっても、素子作成後に内部で発生するガス放出量を抑えて、内部真空度を高く維持することができ、長時間安定に動作することができる冷陰極表示発光素子を得ることを目的とする。
【0009】
また、素子作成時に内部を高真空度度にするための排気工程を効率良く短時間で行うことのできる冷陰極表示発光素子を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る表示発光素子は、蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向し、前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する冷陰極からなる第1の電子源が形成された背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、前記第1の電子源の間隙に、前記第1の電子源とは分離独立して、前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる冷陰極からなる第2の電子源を備え、前記第2の電子源が前記第1の電子源と同一平面にあるようにしたものである。
【0011】
また、前記第2の電子源の電極が、前記表示発光素子の動作時に、前記第1の電子源から放出される電子を偏向するようにしたものである。
【0012】
さらにまた、前記第2の電子源が前記第1の電子源の周囲に配置されたものである。
【0013】
本発明に係る別の表示発光素子は、蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向して配置される背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、第1の電極と前記第1の電極表面に形成された前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する第1の冷陰極チップと前記第1の電極と前記第1の冷陰極チップ上に開口部を有する第1の絶縁層を介して形成された第2の電極とで構成された第1の電子源、および前記第2の電極と前記第2の電極表面に形成された前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる第2の冷陰極チップと前記第2の電極と前記第1および第2の冷陰極チップ上に開口部を有する第2の絶縁層を介して形成された第3の電極とで構成された第2の電子源を備えたものである。
【0014】
さらに、前記第3の電極が、前記表示発光素子の動作時に、前記第1の電子源から放出される電子を偏向するようにしたものである。
【0015】
また、本発明に係る表示発光素子の製造方法は、蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向し、前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する冷陰極からなる第1の電子源、及び前記第1の電子源とは分離独立した第2の電子源が第1の電子源と同一平面にあるように形成された背面パネルを備えた表示発光素子を製造するための表示発光素子の製造方法において、少なくとも前記前面パネル及び前記背面パネルを封着して真空容器を作製したのちに前記真空容器を真空状態となるように排気するとき、もしくは上記真空容器を封止したのちに、前記第2の電子源を駆動して前記第2の電子源から放出させる電子により前記表示発光素子の構成部材の表面及び内部からガスを放出させるようにしたものである。
【0016】
さらには、本発明に係る別の表示発光素子の製造方法は、蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向して配置される背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、第1の電極と前記第1の電極表面に形成された前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する第1の冷陰極チップと前記第1の電極と前記第1の冷陰極チップ上に開口部を有する第1の絶縁層を介して形成された第2の電極とで構成された第1の電子源、および前記第2の電極と前記第2の電極表面に形成された前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる第2の冷陰極チップと前記第2の電極と前記第1および第2の冷陰極チップ上に開口部を有する第2の絶縁層を介して形成された第3の電極とで構成された第2の電子源を備えた表示発光素子を製造するための表示発光素子の製造方法において、少なくとも前記前面パネル及び前記背面パネルを封着して真空容器を作製したのちに前記真空容器を真空状態となるように排気するとき、もしくは上記真空容器を封止したのちに、前記第2の電子源を駆動して前記第2の電子源から放出させる 電子により前記表示発光素子の構成部材の表面及び内部からガスを放出させるようにしたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1である冷陰極表示発光素子の構成を示す斜視図、図2は背面プレートを前面側からみた平面図、図3は冷陰極表示発光素子の部分断面図、図4は前面プレートを前面側からみた平面図である。図において、1は背面プレート、2は前面プレート、3は前面プレート2の内面に形成されそれぞれ表示(発光)画素を構成する蛍光体、4は蛍光体3の間隙に形成された黒色絶縁体、5はスペーサであり、背面パネル1、前面パネル2、及びスペーサ3を低融点ガラス(フリットガラス)により接合・封着することにより真空容器が構成される。また、6は素子作成時に真空容器内を高真空状態に排気するための排気管、7は真空内部のガスを吸着するために排気管6内に設置されたゲッター、8は素子内部の各種電極を外部に取出すための外部取出し電極、9は陽極に加速電圧を供給するための陽極取出し電極、10は多数の冷陰極(Cold Cathode)からなる表示発光用電子源、11は多数の冷陰極からなるアウトガス用(ガス放出用)電子源である。また、12は蛍光体3の内面に形成された陽極電極となるアルミバック、13は表示発光用冷陰極チップ、14はアウトガス用(ガス放出用)冷陰極チップ、15は表示発光用電子源10及びアウトガス用電子源11の冷陰極チップに接続されたカソード電極(以降、X電極と記す。)、16は表示発光用冷陰極チップ13からの電子放出を制御するためのゲート電極(以降、Ys電極と記す。)、17はアウトガス用冷陰極チップからの電子放出を制御するための電極である。
【0018】
図1に示すように、冷陰極の形成された背面パネル1と対向して発光手段のある前面パネル1が周囲を取り囲むスペーサ3を挟んで低融点ガラスにより接合・封着されて真空容器を構成している。背面パネル1には、真空容器内部を高真空状態に排気するための排気管6が接合されており、排気管6上部にゲッター7が設置されている。そして、真空容器内はゲッター7によって10−5Pa程度の真空度に保持されている。また、冷陰極を駆動するための電圧を供給する外部取出し電極8は背面側からピンで引きだされている。本実施の形態においては、冷陰極発光表示素子をマトリクス状に配列して配列型ディスプレイを構成するものとして、外部取出し電極8を背面側から取出すようにしているが、冷陰極発光表示素子単独で表示パネルとして使用する場合には、背面パネル1上で電極を延長して端部より取り出すほうが容易で外部駆動基板にも容易に接続できるので、無論そのようにしてもよい。さらに、前面パネル2の蛍光体3に加速電圧を供給する陽極取出し電極17は、一端をアルミバック12に接合され、周囲をガラスのような絶縁物によって被膜され、排気管6を通って外部に取り出される。
【0019】
次に、背面パネル1側の構成について説明する。図2に示すように、背面パネル1上には多数の冷陰極からなるアウトガス用電子源11が、表示発光用電子源10と同一平面上にそれを囲むような形状で形成されている。ここで、表示発光用及びガス放出用電子源10及び11に用いられる冷陰極は例えばスピント型冷陰極が好適であるが、図3をもとに各電子源を中心に構成を以下説明する。
【0020】
背面パネル1に一方向のラインに区切られたX電極15(従来例におけるカソード電極に相当。)が構成されており、さらにそれと絶縁層18を挟んで対向して直交する他方向のラインのY電極(従来例におけるゲート電極に相当。)が構成されている。Y電極は、表示発光用冷陰極チップ13のためのYs 電極16とアウトガス用冷陰極チップ14のためのYg電極17からなり、それぞれ分離独立している。ここでは、X電極15は表示発光用冷陰極チップ13とアウトガス用冷陰極チップ14に共通に設けているが、それぞれに対し独立分離して設けてもよい。X電極15とYs電極16、Yg電極17はマトリックスを構成しており、その交点部分に複数の円形の開口部19が空いており、その中にそれぞれの電子放出部であるスピント型冷陰極チップである表示発光用冷陰極チップ13、アウトガス用(ガス放出用)冷陰極チップ14があり、各冷陰極チップはともに例えばモリブデン(Mo)から構成される。
【0021】
ここで、例えば、表示発光用冷陰極チップ13の配列ピッチを5μm、1画素に対応する冷陰極チップの形成される領域、すなわち表示発光用電子源10の各領域を400×400μm角とすれば、その中に6400個(80×80)の冷陰極チップ13が形成されていることになる。また、開口部19の直径は例えば3μm程度である。そして、このような画素に対応する表示発光用電子源10が背面基板1上に25×25ドット、2mmドットピッチで縦横方向に2次元マトリックス上に配置されている。
【0022】
アウトガス用電子源11は、上述したように表示発光用電子源10の周囲に配置される。例えば、ガス放出用冷陰極チップ14の集積度は表示発光用冷陰極チップ13と同じであり、Yg電極17は幅が200μmのラインで形成され、端部にて全Yg電極16と連結されている。なお、図示しないが、Yg電極は端部で連結せずに独立してもよい。Yg電極17とマトリックスを成すX電極15は、表示発光用冷陰極チップ13と共通の電極である。
【0023】
図4は本発明の実施の形態4である表示発光素子の前面プレートの構成を示す平面図であり、図4に示す発光手段のある陽極蛍光面は、透明材料からなる前面パネル2に赤R、緑G、青Bの蛍光体のパターンが表示発光用電子源10と1対1に対応するような位置に配置され、それぞれの蛍光体3領域の間隙には良好なコントラストを得るための黒色絶縁層4が形成されている。さらに、陽極蛍光面全体、または少なくとも蛍光体3領域の上には、電圧を印加するための電極、アルミバック12が形成されている。なお、本実施の形態では、赤緑緑青(RGGB)の4ドット分の蛍光体3で1画素を構成する田の字配列を例にしているが、赤緑青(RGB)をストライプ状に横に並べて1画素を構成するトリオ配列でもよい。また、高電圧印加して発光させるためにアルミ膜を陽極電極に選んでいるが、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極を前面パネル2上に設け、その上に蛍光体を配置する例えば陽極電圧1kV以下で駆動する低電圧駆動型の陽極蛍光面でもよい。
【0024】
次に、本実施の形態である表示発光素子の製造方法について説明する。まず、背面パネル1に例えばTa、Au、Cr、Nbなどの金属膜を0.5μmの厚さで成膜し、写真製版とフォトレジストによってマスクを形成し、リアクティブイオンエッチング(以下RIE)またはエッチング液によってウェットエッチングすることにより、X電極15のパターンを形成する。その上にSiO2からなる絶縁層8をCVD法により1.0〜1.5μm程度積層する。次に、その上に金属膜を成膜して前記と同様にYs電極16、Yg電極17のパターンを形成する。それから、写真製版とフォトレジストによりマスクを形成して、RIEによりY電極16、Yg電極17と絶縁層18に直径3μmの微小な複数の開口部19を形成する。そして、アルミニウムを斜めから蒸着し、犠牲層を形成する。その後、各冷陰極チップの材料であるモリブデンを真上から蒸着することにより円錐形の冷陰極チップ13、14が形成される。最後に、ウェットエッチングでアルミニウムを除去することによりスピント型の冷陰極が形成される。
【0025】
なお、このような冷陰極の製造方法にて、表示発光用冷陰極とアウトガス用冷陰極は、写真製版の工程で同じマスクで形状パターンを形成するので、特別に写真製版マスクを作る必要はない。
【0026】
陽極蛍光面は、透明材料からなる前面パネル2にカーボンなどの黒色絶縁材料で印刷、焼成することのより黒色絶縁層4が形成される。そして、赤R、緑G、青Bの蛍光体10が印刷法で塗布され、焼成し形成される。蛍光体10の形成された前面パネル2をスピナーで回転しながらフィルミング液を落とし、フィルミング膜を形成する。そして、放置、乾燥した後にアルミニウムを蒸着し、焼成することにより陽極電極であるアルミバック12が形成される。
【0027】
そして表示発光素子の構成部材である、冷陰極の形成された背面パネル1と蛍光体の塗布された前面パネル2とスペーサ5と排気管6が約450℃で焼結するフリットガラス(低融点ガラス)により焼成炉で封止接合され、真空容器(発光表示管)が作製される。
【0028】
排気装置に封止接合された真空容器をセットし、炉内の温度を300℃程度に上げ、ターボポンプやディフュージョンポンプなどを使用し、排気管16から真空容器内が所定の高真空状態となるよう排気を行う。排気完了後、排気管6に熱を加えてその先端部分を閉じ、表示発光素子を完成させる。完成後に、排気管6内に設置されたゲッター7に外部より高周波磁界を加え、800〜900℃程度に誘導加熱し、排気管6の背面パネル側のゲッター容器内にBaを拡散させて活性化を行い、内部真空度を向上維持する。なお、ゲッター7については、誘導加熱することなく、排気温度で活性化できる非蒸発型ゲッターを排気前に排気管6に挿入してもよい。
【0029】
次に、本実施の形態における電子源の駆動方法を図に基づいて説明する。図5は本発明の実施の形態1である表示発光素子の各冷陰極の駆動方法の動作を説明するための図である。陽極蛍光面のアルミバック12には、陽極電源33から電圧Vaが供給されている。アウトガス用冷陰極のYg電極17とX電極15の間には、駆動用電源31により電圧Vgが印加され、それぞれアウトガス用冷陰極チップ14より電子(e- )が放出される。この電子は、陽極電圧で加速されて蛍光体3に衝突して粒子状の蛍光体内部のガスが放出される。このとき、発光表示用冷陰極のYs電極16と接続した駆動用電源32の電圧Vsは、X電極15と同電圧にしておき、表示発光用冷陰極チップ13からは電子が放出しないようにしておく。これは、ガス放出動作を行う際に、表示発光用冷陰極チップ13から電子が放出され、蛍光体13に当たると、イオン状態のガスが表示発光用冷陰極チップ13に跳ね返ってきて、その衝撃により表示発光用冷陰極チップ13が破壊されるのを防ぐためである。
【0030】
アウトガス用冷陰極の動作条件としては、本来の表示動作を行うときと同様に陽極電圧Vaを例えば7kV程度にした状態のもとで、アウトガス用冷陰極駆動電圧Vgを例えば50Vから100Vまで2Vステップで段階的に上げ、その後100Vで保持(キープ)し、また2Vステップで下ろして全体で30分程度で、徐々にガス放出を行う。
【0031】
このようなアウトガス動作は、前述した発光素子製造工程中の排気時に行うのが望ましい。これは、蛍光面から放出されたガスが発光素子内部に残留なく素子外部に出ることにより、発光素子内の真空度が上がるためである。また、真空封止して素子を完成した後に上記のようなアウトガス動作を行っても良く、同様の効果は得られる。この場合にはゲッターのガス吸着量は限られるため内部真空度を長時間維持するためには排気時に行う場合に比べるとゲッターを多く必要とする。
【0032】
実施の形態2.
実施の形態2は、同じアウトガス用冷陰極を使って、表示発光用冷陰極のYs電極のガス放出を行うものである。図6は本発明の実施の形態2である表示発光素子のアウトガス用冷陰極の動作を説明するための図である。図に示すように、陽極電源電圧Va=0V、表示発光用冷陰極のYs電極16に電源32によりVs>Vgの条件で電圧を印加することにより、アウトガス用冷陰極チップ14から放出した電子をYs電極16に衝突させることができ、Ys電極16表面からのガス放出が可能となる。この場合、アウトガス用冷陰極チップ14と表示発光用冷陰極チップ13のX電極もY電極同様に独立分離する構造であり、表示発光用冷陰極チップ13からは電子が放出されないように表示発光用冷陰極の電位を制御するX電極にはYs電極と同じ電圧を印加しておく。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1で示した表示発光素子の動作時に、アウトガス用冷陰極のYg電極を偏向手段として使用したものである。図7は本発明の実施の形態3である表示発光素子のアウトガス用冷陰極の電子ビーム集束動作を説明するための図である。
【0034】
図7に示すように、順次画素を発光して画像を表示しているとき、陽極蛍光面には電源33から例えば5kV以上の電圧が加えられ、Ys電極16とX電極15の間には駆動用電源32から50〜100Vの電圧差が与えられ、表示発光用冷陰極チップ13から電子(e- )が放出されて、蛍光体10に衝突して蛍光体を発光させている。このとき、アウトガス用冷陰極のYg電極17に、素子作製の際のアウトガス動作における電子放出時とは逆極性の負電圧Vfを電源31より印加することにより、表示発光用冷陰極チップ13からの電子ビームを偏向し、蛍光面に集束させることができる。
【0035】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4である表示発光素子の構成を示す部分断面図である。図において、18はYs電極16上に形成された例えばSiO2からなる絶縁層である。本実施の形態においては、Ys電極16上にアウトガス用冷陰極素子14及び絶縁層20を介してYg電極17がそれぞれ形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。また、背面パネルの製造方法も実施の形態1において説明したものに対して、Ys電極16上に絶縁層20とYg電極17を形成する工程を追加すればよく、詳細な説明は省略する。
【0036】
そして、表示発光素子作製時もしくは完成後におけるガス放出動作時には、実施の形態1同様、本来の表示動作を行うときと同様に陽極電圧Vaを例えば7kV程度にした状態のもとで、Ys電極16とYg電極17の間に例えば50〜100Vの電位差を与えるようにYg電極17に電圧を印加する。また、順次画素を発光して画像を表示しているときには、実施の形態3で説明したのと同様に、陽極蛍光面には電源33から5kV以上の電圧が加えられ、Ys電極16とX電極15の間には駆動用電源32から50〜100Vの電圧差が与えられ、表示発光用冷陰極チップ13から電子(e- )が放出されて、蛍光体10に衝突して蛍光体を発光させる。このとき、アウトガス用冷陰極のYg電極17に、素子作製の際のアウトガス動作における電子放出時とは逆極性の負電圧Vfを電源31より印加することにより、表示発光用冷陰極チップ13からの電子ビームを偏向し、蛍光面に集束させることができる。ここで、本実施の形態においては、アウトガス用冷陰極のYg電極17を、表示発光用冷陰極よりも上部に配置しているので、実施の形態3におけるものよりもさらに表示発光用冷陰極チップ13からの電子ビームの集束性を向上させることができる。
【0037】
実施の形態5.
上記実施の形態1においては、背面パネル1上には多数の冷陰極からなるアウトガス用電子源11が、表示発光用電子源10と同一平面上にそれを囲むような形状で形成されるよう構成したが、アウトガス用電子源11を他の形状に形成することも可能であり、以下実施の形態5として説明する。図9は本発明の実施の形態5である表示発光素子の背面パネルの構成の一例を示す平面図であり、いわば、表示発光用電子源10の領域以外の領域の一面にアウトガス用電子源11を配置した例である。アウトガス用のYg電極はアウトガス用電子源11を構成する冷陰極に共通につながっている。素子作製時の排気中もしくは排気後のアウトガス処理においては、Yg電極17に電圧を印加すると、一面に配置されたアウトガス用電子源11の全面から陽極に向かって電子が放出されるため、蛍光体部分以外にも電子が当たることになるので、蛍光体のみならず陽極全面からのガス放出ができる。
【0038】
また、図10、図11に示すようにアウトガス用電子源11を簡単なライン形状やクシ型形状に配置してもよい。図9に示したように一面にアウトガス用電子源11を形成した場合には、Y電極も一面に形成しなければならず、X電極との間に容量の大きなコンデンサが形成されることになり、駆動時の無効電力が増大し消費電力も大きくなるが、図10や図11に示したようにアウトガス用電子源11を簡単なライン形状やクシ型形状に配置すれば、Y電極とX電極間のコンデンサの形成に伴う消費電力の増大を抑えることができる。また、図10や図11に示した構成においても、実施の形態3に示したように、アウトガス用冷陰極のYg電極17に素子作製の際のアウトガス動作における電子放出時とは逆極性の負電圧Vfを印加することにより表示発光用冷陰極チップ13からの電子ビームを集束させることが可能である。この際、実施の形態1や図9に示したアウトガス用電子源11の配置に比べ、電子ビームの集束効果が非対象なものとなるが、集束度をあまり大きくとらないときには、実用上特に問題はない。また、本実施の形態においても、製造方法、駆動方法は実施の形態1と同様であり、その詳細は省略する。
【0039】
参考例1.
上記各実施の形態においては、アウトガス用電子源を冷陰極により構成したが、熱陰極により構成することも可能である。図12は本発明の参考例1である表示発光素子の背面パネルの構成を示す平面図である。図において、10は表示発光用電子源、40はワイヤー状の熱陰極、41は熱電極40の両端に接合された電極、42は熱陰極40を支持するためのサポートである。
【0040】
例えばタングステンからなるワイヤー状の熱陰極40は、その両端に接合された電極41と中間部に設けられたサポート42により支持され、表示発光用電子源10の間隙に略平行にライン状に配置されている。また、電極41は背面パネル1を貫通して素子外部に取出されている。
【0041】
次に、参考例1における電子源の駆動方法を図13をもとに説明する。素子作成時の排気中もしくは排気後におけるアウトガス処理時には、電源Vg31に電圧が印加し、電極41から熱陰極40に通電することにより、熱陰極40から電子が放出され、前面パネル2側に設けられた蛍光体や黒色絶縁層に当たることにより、ガス放出が行われる。これにより真空容器内の真空度を上げることが可能である。なお、ワイヤー状の熱陰極40をさらに図において横方向にも張ることにより格子状となるよう配置してもよい。
【0042】
参考例2 .
参考例2は、表示発光素子の動作時に、参考例1に示したワイヤー状の熱陰極40を偏向手段として使用したものである。
【0043】
図14に示すように、表示用冷陰極チップ13から電子を放出して蛍光体10に衝突し、順次画素を発光させている。このとき、アウトガス用のワイヤー状の熱陰極40の両端の電極41に、電源31から負電圧Vfを印加することにより、表示発光用冷陰極チップ13からの電子ビームを偏向し、蛍光面に集束させることができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態に基づき説明したが、この実施の形態に限定されるわけではない。アウトガス用電子源を含めた電子源としては、実施の形態に示した金属蒸着して形成するスピント型電界放出素子のほかに、Si基板を熱酸化、エッチングした電界放出素子やMIM(金属層/絶縁層/金属層)型電界放出素子、表面伝導型電界放出素子などの冷陰極素子を用いてもよい。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0046】
蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向し、前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する冷陰極からなる第1の電子源が形成された背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、前記第1の電子源の間隙に、前記第1の電子源とは分離独立して、前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる冷陰極からなる第2の電子源を設け、前記第2の電子源が前記第1の電子源と同一平面に設けることによって、素子作製における排気時もしくは排気完了後に第2の電子源を駆動して第2の電子源から放出される電子によって、表示発光素子を構成する部材のガスを効率良く放出させるので、素子完成後の素子内部におけるガス放出が極めて少なくなり、素子内部の真空度を十分に高くすることができる。この結果、冷陰極からなる第1の電子源の初期活性化を高真空度の状態で行えるので、冷陰極に与えるダメージを抑え、良好な電流特性を引き出すことが可能となる。
【0047】
また、表示発光素子が薄型形状でゲッターを数多く配置する場所がない場合であっても、素子完成後の内部からの放出ガスを少なくすることができ、少量のゲッターで高真空度を維持することが可能となる。その結果、表示発光素子の寿命が長くすることができ、信頼性を高めることができる。
【0048】
また、表示発光素子の動作時に、冷陰極からなる第2の電子源の電極が第1の電子源から放出される電子を偏向するようにしたので、電子放出角度の大きい冷陰極からの電子ビームが隣接する画素に与える影響をなくすることが可能となる。
【0049】
さらにまた、前記第2の電子源が前記第1の電子源の周囲に配置されるようにしたので、第1の電子源からの電子源を均一に偏向することが可能となる。
【0050】
また、蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向して配置される背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、第1の電極と前記第1の電極表面に形成された前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する第1の冷陰極チップと前記第1の電極と前記第1の冷陰極チップ上に開口部を有する第1の絶縁層を介して形成された第2の電極とで構成された第1の電子源、および前記第2の電極と前記第2の電極表面に形成された前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる第2の冷陰極チップと前記第2の電極と前記第1および第2の冷陰極チップ上に開口部を有する第2の絶縁層を介して形成された第3の電極とで構成された第2の電子源を備えるようにしたので、素子作製における排気時もしくは排気完了後に第2の電子源を駆動して第2の電子源から放出される電子によって、表示発光素子を構成する部材のガスを効率良く放出させるので、素子完成後の素子内部におけるガス放出が極めて少なくなり、素子内部の真空度を十分に高くすることができる。この結果、冷陰極からなる第1の電子源の初期活性化を高真空度の状態で行えるので、冷陰極に与えるダメージを抑え、良好な電流特性を引き出すことが可能となる。
【0051】
また、表示発光素子が薄型形状でゲッターを数多く配置する場所がない場合であっても、素子完成後の内部からの放出ガスを少なくすることができ、少量のゲッターで高真空度を維持することが可能となる。その結果、表示発光素子の寿命が長くすることができ、信頼性を高めることができる。
【0052】
さらに、表示発光素子の動作時に、第2の電子源の第3の電極が第1の電子源から放出される電子を偏向するようにしたので、電子放出角度の大きい冷陰極からの電子ビームが隣接する画素に与える影響をなくすることが可能となる。
【0053】
真空容器を真空状態となるように排気するとき、もしくは真空容器を封止したのちに、第2の電子源を駆動して第2の電子源から放出させる電子により表示発光素子の構成部材の表面及び内部からガスを放出させるようにして製造するようにしたので、素子完成後の素子内部におけるガス放出が極めて少なくなり、素子内部の真空度を十分に高くすることができる。この結果、冷陰極からなる第1の電子源の初期活性化を高真空度の状態で行えるので、冷陰極に与えるダメージを抑え、良好な電流特性を引き出すことが可能となる。
【0054】
また、表示発光素子が薄型形状で真空容器内にゲッターを数多く配置する場所がない場合であっても、素子完成後の内部からの放出ガスを少なくすることができ、少量のゲッターで高真空度を維持することが可能となる。その結果、表示発光素子の寿命が長くすることができ、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1である表示発光素子の構成を示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施の形態1である表示発光素子の背面プレートの構成を示す平面図である。
【図3】 本発明の実施の形態1である表示発光素子の構成を示す部分断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態1である表示発光素子の前面プレートの構成を示す平面図である。
【図5】 本発明の実施の形態1である表示発光素子の各冷陰極の駆動方法の動作を説明するための図である。
【図6】 本発明の実施の形態2である表示発光素子のアウトガス用冷陰極の動作を説明するための図である。
【図7】 本発明の実施の形態3である表示発光素子のアウトガス用冷陰極の電子ビーム集束動作を説明するための図である。
【図8】 本発明の実施の形態4である表示発光素子の構成を示す部分断面図である。
【図9】 本発明の実施の形態5である表示発光素子の背面パネルの構成の一例を示す平面図である。
【図10】 本発明の実施の形態5である表示発光素子の背面パネルの構成の他の一例を示す平面図である。
【図11】 本発明の実施の形態5である表示発光素子の背面パネルの構成の他の一例を示す平面図である。
【図12】 本発明の実施の形態6である表示発光素子の背面パネルの構成を示す平面図である。
【図13】 本発明の参考例1である表示発光素子の冷陰極及び熱陰極の駆動方法の動作を説明するための図である。
【図14】 本発明の参考例1である表示発光素子の熱陰極の電子ビーム集束動作を説明するための図である。
【図15】 従来の表示発光素子の構成を示す側面断面図である。
【図16】 冷陰極素子の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 背面パネル、2 前面パネル、3 蛍光体、10 表示発光用電子源、11 アウトガス用電子源、13 表示発光用冷陰極チップ、14 アウトガス用冷陰極チップ、40 熱陰極。
Claims (6)
- 蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向して配置される背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、第1の電極と前記第1の電極表面に形成された前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する第1の冷陰極チップと前記第1の電極と前記第1の冷陰極チップ上に開口部を有する第1の絶縁層を介して形成された第2の電極とで構成された第1の電子源、および前記第2の電極と前記第2の電極表面に形成された前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる第2の冷陰極チップと前記第2の電極と前記第1および第2の冷陰極チップ上に開口部を有する第2の絶縁層を介して形成された第3の電極とで構成された第2の電子源を備えたことを特徴とする表示発光素子。
- 蛍光体が形成された前面パネルと、前記前面パネルと対向し、前記蛍光体を励起発光するための電子を放出する冷陰極からなる第1の電子源が形成された背面パネルを含む表示発光素子において、前記背面パネルには、前記第1の電子源の間隙に、前記第1の電子源とは分離独立して、前記表示発光素子の構成部材の表面および内部からガスを放出させる冷陰極からなる第2の電子源を備え、前記第2の電子源が前記第1の電子源と同一平面にあることを特徴とする表示発光素子。
- 前記第2の電子源の電極が、前記表示発光素子の動作時に、前記第1の電子源から放出される電子を偏向することを特徴とする請求項2記載の表示発光素子。
- 前記第3の電極が、前記表示発光素子の動作時に、前記第1の電子源から放出される電子を偏向することを特徴とする請求項1記載の表示発光素子。
- 前記第2の電子源が前記第1の電子源の周囲に配置された請求項3記載の表示発光素子。
- 請求項1または請求項2記載の表示発光素子を製造するための表示発光素子の製造方法において、少なくとも前記前面パネル及び前記背面パネルを封着して真空容器を作製したのちに前記真空容器を真空状態となるように排気するとき、もしくは上記真空容器を封止したのちに、第2の電子源を駆動して前記第2の電子源から放出させる電子により前記表示発光素子の構成部材の表面及び内部からガスを放出させることを特徴とする表示発光素子の製造方法。
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