JP3553181B2 - 緩衝器の氷除去構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば雪上スクータ等の冬期に使用される車両の懸架装置に好適の緩衝器に関し、特にピストンロッドの外表面に付着形成された氷等を掻き落として除去するようにした氷除去構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば雪上スクーターなどの緩衝器においてピストンロッドに付着した雪,氷等を掻き落とすための構造として、各種のものがある。例えば、ゴム等の弾性体で構成されたピストンロッド外表面に摺接するリング状部材をピストンロッドを囲むように配設し、ピストンロッドの伸縮によって氷を掻き落とすようにしたものがあった。また、ピストンロッドの露出部分をゴムのケーシングあるいはゴムのスリーブで覆うことにより氷等の付着そのものを防止しようとする試みもあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
雪, 氷の掻き落とし部材を弾性体で形成すると、弾性体は一般に温度条件に依存してその機能が変化することから、外気温度の如何によっては十分な掻き落とし機能が得られない場合がある。また弾性体の場合、着氷した氷がしばしば非常に硬いため、その物理的特性自体が高硬度の氷膜を掻き落とすには十分でないといった場合も生じる。
【0004】
仮に、ピストンロッドがシリンダ内に進入するときに着氷が一緒にシリンダの内部に入って行くと、シリンダ内で氷が溶けて緩衝器の作動媒体と混じり合ってしまう。そして雪上スクーターが例えば戸外での駐車により低温に曝されると、上記水が凍結し、緩衝器の作動に若干の影響を与える可能性がある。
【0005】
ピストンロッドの露出部分をケーシングによって密閉する方法の場合、緩衝器の機能それ自体の性能に影響を及ぼすことなく、また緩衝器の生産,作業行程を複雑にすることなく、さらには緩衝器を高価にすることなく上記ケーシングによる密閉構造を採用するのは困難である。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、氷等のシリンダ内侵入を確実に防止でき、また緩衝器の性能自体に影響を及ぼしたり、高コストなることのない緩衝器の氷除去構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、両端部が閉塞されたシリンダ内にピストンを摺動自在に挿入配置し、該ピストンに接続されたピストンロッドをシリンダの一端の閉塞部材を貫通して外方に突出させた車両用緩衝器の、上記ピストンロッドの外表面に付着した氷等を除去するための氷除去構造において、上記シリンダの上記閉塞部材より軸方向外側に、ロッド貫通孔を有する環状の掻落環を軸方向に移動不能に配設し、上記ロッド貫通孔を上記ピストンロッドの外径より僅かに大径として該ロッド貫通孔の内周面とピストンロッドの外周面との間に隙間を形成するとともに、該掻落環の外周面と上記シリンダの端部内面との間に該掻落環の半径方向移動を許容する弾性体を介設したことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、上記閉塞部材の外端部にピストンロッド貫通孔と同軸の保持凹部を形成し、該保持凹部内に環状の弾性環の外周面を密着嵌合させるとともに、該弾性環の内周面をピストンロッドの外周面に摺動自在に密着させたことを特徴としていいる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記掻落環が、上記シリンダの上記閉塞部材より外側端部に嵌合装着された環状の切妻板の半径方向内側に配設されており、上記弾性体が、該掻落環の外周面と上記切妻板の内周面との間に介設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2において、上記掻落環が、上記シリンダの上記閉塞部材より外側端部に嵌合装着された環状の切妻板の軸方向内側に配設されており、上記弾性体が、該掻落環の外周面と上記切妻板の内周面との間に介設されており、該切妻板に上記掻落環を覆うとともに上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成したことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1において、上記掻落環が、上記閉塞部材の外端部にピストンロッド貫通孔と同軸をなすよう形成された保持凹部内に配設されており、上記弾性体が、該掻落環の外周面と上記保持凹部の内周面との間に介設されており、上記切妻板に上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成したことを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項2ないし4の何れかにおいて、上記掻落環が、上記弾性環との対向面に該弾性環の外端部が挿入される凹部を有していることを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし6の何れかにおいて、上記掻落環が、ピストンロッドより低硬度の金属製であることを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7の何れかにおいて、上記掻落環のロッド貫通孔とピストンロッドとの隙間が0.01〜0.05mmの範囲内で選択されることを特徴としている。
【0015】
【作用】
請求項1の発明によれば、シリンダの閉塞部材より軸方向外側に、ピストンロッド外径より僅かに大径(例えば両者の隙間が0.01〜0.05mmとなる径) のロッド貫通孔を有する環状の掻落環を配設したので、ピストンロッドの外表面に付着形成された氷膜はピストンロッドがシリンダ内に進入する際に掻落環により掻き落とされ、氷等がシリンダ内に侵入するのを回避できる。
【0016】
一方、掻落環のロッド貫通孔とピストンロッドの外表面との隙間が極めて小さく設定されているので、ピストンロッドの伸縮動作が掻落環によって阻害される懸念があるが、本発明では、弾性体により掻落環が半径方向に少し移動可能になっているので、ピストンロッドの動作の支障になることはない。
【0017】
請求項2の発明によれば、上記閉塞部材の外端部にピストンロッドの外周面に摺動自在に密着する環状の弾性環を配設したので、仮に僅かな氷等が上記掻落環によって掻き落とされずに該掻落環より内部に侵入した場合には、上記弾性環がこの侵入した氷等を確実に掻き落とし除去する。つまり2段階に掻き落とし除去するので、氷等のシリンダ内侵入がより一層確実に防止される。
【0018】
請求項3の発明によれば、上記掻落環を、上記シリンダの端部に嵌合装着された環状の切妻板の半径方向内側に配設したので、つまり掻落環と切妻板とを同じ軸方向位置に配置したので、掻落環を配置したことによるシリンダ長の延長が最小限に抑えられる。
【0019】
請求項4の発明によれば、上記掻落環を上記シリンダの端部に嵌合装着された環状の切妻板の軸方向内側に配設し、該切妻板に上記掻落環を覆うとともに上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成したので、ピストンロッドの外表面に付着した氷等は、まず上記延長部のロッド挿通孔部分で掻き落とし除去され、続いて掻落環のロッド貫通孔部分で掻き落とし除去される。つまり2段階に掻き落とされるので、氷等のシリンダ内侵入がより一層確実に防止される。
【0020】
請求項5の発明によれば、上記掻落環を上記閉塞部材の外端部にピストンロッド貫通孔と同軸をなすよう形成された保持凹部内に配設し、上記切妻板に上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成したので、ピストンロッドの外表面に付着した氷等は、まず上記延長部のロッド挿通孔部分で掻き落とし除去され、続いて掻落環のロッド貫通孔部分で掻き落とし除去される。つまり2段階に掻き落とされるので、氷等のシリンダ内侵入がより一層確実に防止される。
【0021】
また上記掻落環を閉塞部材に配設したので、該掻落環はピストンロッドと閉塞部材のロッド貫通孔との間をシールするシール部材としても機能する。
【0022】
請求項6の発明によれば、上記掻落環の上記弾性環との対向面に該弾性環の外端部が挿入される凹部を形成したので、氷掻き落とし機能を有する弾性環と掻落環とを二重に設けながらシリンダ長の延長が抑制されるとともに、掻落環の半径方向移動が弾性環により阻害されることがない。
【0023】
請求項7の発明によれば、掻落環をピストンロッドより低硬度の金属製としたので、上述の掻き落とし機能を発揮できるとともに、ピストンロッドが掻落環により損傷してシール性が低下する等の問題を回避できる。
【0024】
請求項8の発明によれば、上記掻落環のロッド貫通孔とピストンロッドとの隙間を0.01〜0.05mmの範囲内で選択したので、上記氷等の掻き落とし機能をより一層確実に実現できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1及び図2は本発明の一実施例(第1実施例)を説明するための図であり、図1は全体構成を示す断面側面図、図2は要部の拡大断面図である。
【0026】
図1,図2において、30は本実施例の緩衝器であり、該緩衝器30は、円筒の両端開口を閉塞してなるシリンダ1と、該シリンダ1内に軸方向に摺動自在に挿入配置され、該シリンダ1内を2室に画成するピストン3と、該ピストン3に接続され、上記シリンダ1の図示左端部の閉塞板9を貫通してシリンダ1の左方に突出する鋼合金製のピストンロッド4とを備えている。
【0027】
上記シリンダ1の右端閉塞部に固着された締結部材5は車体フレーム側に接続されたブラケット6に揺動可能に連結されており、また上記ピストンロッド4の左端部に固着された締結部材7は車輪側のブラケット8に揺動可能に連結されている。なお、勿論上記シリンダ1を車輪側に、ピストンロッド4を車体フレーム側に連結しても良いし、該緩衝器30を垂直方向に向けて配置する等、その配置方向に制限はない。
【0028】
上記ピストン3は、上記ピストンロッド4の右端部にナット3aにより固定されており、該ピストン3の右,左端面には伸張時,及び圧縮時の作動油が流通する油孔3bの通路面積を調整する板弁3c,3dが配設されている。なお、3eはストッパであり、弾性部材3fを介して上記閉塞板9によって無荷重状態(最大伸長時)の位置が規制される。
【0029】
上記閉塞板9は上記シリンダ1の左端部内付近に挿入配置され、止めリング9bで固定されている。該閉塞板9の外周面とシリンダ1の内周面との間はオーリング9cでシールされており、また該閉塞板9のピストンロッド摺動孔には軸受金属等からなるガイド部材20が挿入固着され、該閉塞板9とピストンロッド4との間はシール部材21でシールされている。
【0030】
なお、図1,図2の緩衝器30は、その基本的な構造に関しては既知であって、その緩衝器の一例としては、オーリンス・レーシングAB(Ohlins Racing AB.)社が販売してきた雪上スクーターやその他冬季の乗り物用の緩衝器を参照するとよい。
【0031】
そして上記緩衝器30のシリンダ1左端部には、第1の氷掻き落とし機能部14が、シリンダ1の該第1機能部14より軸方向内側には第2の氷掻き落とし機能部22が配設されている。上記第1機能部14は、シリンダ1の左端部に圧入固着された切妻板2と、該切妻板2の半径方向内側に同心円状に配置された掻落環15とを有し、該掻落環15と上記切妻板2とでシリンダ1の端部1aの開口を閉塞する切妻部を構成している。
【0032】
上記切妻板2は、上記掻落環15が配置される溝部2aと該掻落環15の軸方向位置を規制するフランジ部2bとを有する環状のものである。また上記掻落環15は、青銅または銅合金,焼結鋼,あるいは鉄合金等の金属製環状のものであり、上記ピストンロッド4より低硬度の金属材料が選択される。この掻落環15は上記切妻板2の溝部2a内に配置され、そのフランジ部15aが上記フランジ部2bとロックワッシャ17とで軸方向に移動不能に挟持固定されている。
【0033】
上記掻落環15の軸芯には直径Dのロッド貫通孔15bが形成されており、該直径Dは上記ピストンロッド4の外径D1よりやや大径になっている。これらの直径D,D1は、両者の隙間が0.01〜0.05mm、好適には0.02〜0.03mmの範囲となるように選択される。
【0034】
また上記掻落環15のフランジ部15aの外径は上記溝部2aの内径より小さく設定されており、両者の間にはゴム製オーリング状の弾性体18が介設されている。これにより上記掻落環15は、その半径R方向に若干移動可能となっている。その結果、仮にピストンロッド4がシリンダ軸芯に対して僅かに傾斜した場合には上記掻落環15はこの傾斜動作に伴って上記半径方向に移動し、掻落環15がピストンロッド4の伸縮動作を阻害することを回避している。また上記弾性体18は、掻落環15と切妻板2との間をシールするシール部材としても機能する。
【0035】
また上記掻落環15のシリンダ内側の面には凹部15cが形成されており、その結果掻落環15は、軸芯部分の厚みT′はその外側の厚みTより薄くなっている。上記凹部15cの深さは2ないし10mm程度、好ましくは約5mmに設定される。
【0036】
上記第2機能部22は、上記閉塞板9の左端部にシリンダ軸と同心の保持凹部9aを形成し、該保持凹部9a内にリング状の弾性環19を嵌合挿入した構造を有している。上記弾性環19は、例えば、ニトリルゴム、硬質ゴムなどの弾性部材から構成されており、そのリップ状に形成されたリップ部19aがピストンロッド4の外表面4bに摺動自在に密接している。また該先端部19aは、上記掻落環15に凹設された凹部15c内にに位置しており、該凹部15cを設けたことにより、掻落環15及び弾性環19からなる二重掻き落とし構造を備えながらシリンダ全体の軸方向長さの増大を抑制でき、また掻落環15の半径方向移動時に該掻落環15と弾性環19とが干渉するのを回避している。
【0037】
上記第2機能部22によって掻き落とされた氷等は、上記凹部15c周囲の空間部a内に溜まることとなるので、本実施例では該空間部aと外部とを連通する排出用孔(図示せず)が形成されている。該排出用孔は、外部から水等が侵入し難い位置に形成するのが望ましい。
【0038】
次に本実施例の作用効果を説明する。
冬期に上記緩衝器30を備えた雪上スクーターが戸外に駐車されている場合等には、ピストンロッド4のシリンダ1から外方に突出する部分の外表面4bに氷膜13が形成されることがある。このような状態で雪上スクータを走行させて緩衝器30が伸縮すると、氷膜13はピストンロッド4がシリンダ1の内方に進入する際に、第1機能部14の掻落環15によって粉砕されて掻き落とされる。
【0039】
また掻落環15のロッド貫通孔15bとロッド外表面との隙間から内部に進入した僅かな氷等は、第2機能部22の弾性環19の先端部19aによって全て捕捉され、半径方向外側に押しやられて空間部aに溜まり、該空間部aから排出用孔を通って外部に排出される。このように2段階で氷を掻き落とすようにしたので、氷等がシリンダ1内に進入するを確実に回避できる。
【0040】
また上記弾性環19の先端部19aを掻落環15の凹部15c内に位置させたので、二重掻き落とし構造を採用しながら、シリンダ全体の長さの延長を抑制でき、また弾性環19の先端部19aが掻落環15に干渉し、該掻落環15の半径方向移動が阻害されることもない。
【0041】
本実施例では、金属製掻落環15のロッド貫通孔15bとピストンロッド4の外表面4bとの隙間が極めて狭く設定されているので、上述のように、高い氷掻き落とし機能が発揮されるのであるが、仮にピストンロッド4が斜めに傾斜した状態で伸縮した場合には、それに伴って掻落環15は弾性体18によって半径R方向に移動し、ピストンロッド4の伸縮動作を阻害することはなく、緩衝器自体の性能に悪影響を及ぼすことはない。
【0042】
また掻落環15はピストンロッド4より低硬度の金属で形成されているので、ピストンロッド4を損傷することはなく、ピストンロッド4の傷によるシール性低下の問題を回避でき、この点からも緩衝器自体の性能に悪影響を及ぼすことはない。
【0043】
さらにまた、本実施例で示した氷除去構造は、既存の緩衝器においても分解,組立等のやり直しを行うことなく組み込み可能であり、生産行程,組立行程が複雑になったり、高コストになったりするのを回避できる。
【0044】
図3は本発明の第2実施例を示し、図2と同一符号は同一又は相当部分を示す。
本実施例では、掻落環15′を切妻板2′の軸方向内側に配置している。上記切妻板2′には、シリンダ1の左端開口を閉塞する延長部2cが半径方向内側に延長形成されており、該延長部2cは掻落環15′を覆っており、該掻落環15′の軸方向のストッパとなっている。また上記延長部2cには直径D2のロッド挿通孔2dが形成されており、該直径D2はピストンロッド4との遊び(隙間)が、上記直径DとD1との遊びよりかなり大きく(例えば0.2〜0.5mm)なるように設定されている。
【0045】
上記掻落環15′は断面厚さが均一となるように平板状に形成されており、該掻落環15′のロッド貫通孔15bの直径は上記第1実施例と同様にDに設定されている。また上記掻落環15′は、上記切妻板2′の延長部2cと、軸方向内側に配設されたロックワッシャ17とで軸方向に移動不能に挟持固定されている。
【0046】
また上記掻落環15′の外周面と切妻板2′の溝部2aの内周面との間には弾性体18が介設されており、これにより本実施例でも掻落環15′は半径R方向にある程度動くことができ、またピストンロッド4の僅かな傾斜を許容できるようになっている。
【0047】
本実施例では、切妻板2′に延長部2cを設け、該延長部2cに比較的遊びの大きいロッド挿通孔2dを形成したので、ピストンロッド4の外表面4bに付着形成された氷膜13が比較的厚い場合には、上記切妻板2′の延長部2cが第1の氷掻き落とし機能部として働く。しかる後、掻落環15′が第2の掻き落とし機能部として作用し、最後に弾性環19が第3の掻き落とし機能部として作用する。このように氷等を3段階に掻き落とすようにしたので、シリンダ1内に氷,水等が侵入するのをより一層確実に防止できる。
【0048】
図4は本発明の第3実施例を示し、図2,図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。
本第3実施例では、掻落環15′は、閉塞板9の左端部に形成された保持凹部9d内に配置され、該保持凹部9dの底壁とロックワッシャ17とで軸方向移動不能に固定されている。そして掻落環15′のロッド貫通孔15bの直径は上記実施例と同様にDとなっており、また該掻落環15′の外周面と上記保持凹部9dの内周面との間には弾性体18が介設されており、これにより該掻落環15′は半径R方向に少し移動可能となっている。また該掻落環15′と上記切妻板2の延長部2cとの間に空間部bが形成されている。
【0049】
本第3実施例では、ピストンロッド4の外表面4bに付着形成された氷膜13は、まず切妻板2′のロッド挿通孔2d部分で掻き落とされ、該ロッド挿通孔2dとピストンロッド外表面4bとの隙間を通って内部に侵入した氷等は、掻落環15′で外表面4b上から掻き落とされて上記空間b内に溜まり、排出用孔から外部に排出される。
【0050】
そして本実施例では上記掻落環15′は、内部に侵入した氷の掻き落とし機能を果たすだけでなく、上記ピストンロッド4と閉塞板9との間をシールし、ガイド部材20,シール部材21のそれぞれに対して一定の密閉機能をも果たすという二重の機能を有する。
【0051】
なお、上記緩衝器30において、ピストン3は、それ自体公知の媒体の中で作動する。作動媒体は、作動油,気体でもよいし、あるいはこれらのエマルジョンで構成されていてもよい。また本発明は、上記各実施例に示した実施態様に限定されないのは勿論である。
【0052】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、シリンダの閉塞部材より軸方向外側に、ピストンロッド外径より僅かに大径(例えば請求項8に示すように両者の隙間を0.01〜0.05mmとする径) のロッド貫通孔を有する環状の掻落環を配設したので、ピストンロッドの外表面に付着形成された氷膜はピストンロッドがシリンダ内に進入する際に掻落環により掻き落とされ、氷等がシリンダ内に侵入するのを回避できる効果がある。
【0053】
また弾性体により掻落環を半径方向に少し移動可能にしたので、隙間を僅かに設定しながら掻落環がピストンロッドの動作の支障になるのを防止でき、緩衝器自体の性能に悪影響を及ぼすことはない。
【0054】
請求項2の発明によれば、上記閉塞部材の外端部にピストンロッドの外周面に摺動自在に密着する環状の弾性環を配設し、氷等を2段階に掻き落とすようにしたので、氷等のシリンダ内侵入をより一層確実に防止できる効果がある。
【0055】
請求項3の発明によれば、上記掻落環を、上記シリンダの端部に嵌合装着された環状の切妻板の半径方向内側に配設したので、つまり掻落環と切妻板とを同じ軸方向位置に配置したので、掻落環を配置したことによるシリンダ長の延長を最小限に抑えることができる効果がある。
【0056】
請求項4の発明によれば、上記掻落環を上記シリンダの端部に嵌合装着された環状の切妻板の軸方向内側に配設し、該切妻板に上記掻落環を覆うとともに上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成し、氷等を2段階で除去するようにしたので、氷等のシリンダ内侵入をより一層確実に防止できる効果がある。
【0057】
請求項5の発明によれば、上記掻落環を上記閉塞部材の外端部にピストンロッド貫通孔と同軸をなすよう形成された保持凹部内に配設し、上記切妻板に上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成し、氷等を2段階で除去するようにしたので、氷等のシリンダ内侵入をより一層確実に防止できる効果がある。
【0058】
また上記掻落環を閉塞部材に配設したので、該掻落環がピストンロッドと閉塞板のロッド摺動孔との間をシールするシール部材としても機能する効果がある。
【0059】
請求項6の発明によれば、上記掻落環の上記弾性環との対向面に該弾性環の外端部が挿入される凹部を形成したので、氷掻き落とし機能を有する弾性環と掻落環とを二重に設けながらシリンダ長の延長を抑制できるとともに、掻落環の半径方向移動が弾性環により阻害されるのを回避できる効果がある。
【0060】
請求項7の発明によれば、掻落環をピストンロッドより低硬度の金属製としたので、上述の掻き落とし機能を発揮しながら、ピストンロッドが掻落環により損傷しシール性が低下する等の問題を回避できる効果がある。
【0061】
請求項8の発明によれば、上記掻落環のロッド貫通孔とピストンロッドとの隙間を0.01〜0.05mmの範囲内で選択したので、上記氷等の掻き落とし機能をより一層確実に実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による緩衝器の氷除去構造を示す断面側面図である。
【図2】上記第1実施例構造の要部を示す断面拡大図である。
【図3】本発明の第2実施例による緩衝器の氷除去構造の要部を示す断面拡大図である。
【図4】本発明の第3実施例による緩衝器の氷除去構造の要部を示す断面拡大図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 切妻板
2d ロッド挿通孔
3 ピストン
4 ピストンロッド
4b 外表面
9 閉塞板(閉塞部材)
13 氷
15 掻落環
15b ロッド貫通孔
18 弾性体
30 緩衝器

Claims (8)

  1. 両端部が閉塞されたシリンダ内にピストンを摺動自在に挿入配置し、該ピストンに接続されたピストンロッドをシリンダの一端の閉塞部材を貫通して外方に突出させた車両用緩衝器の、上記ピストンロッドの外表面に付着した氷等を除去するための氷除去構造において、上記シリンダの上記閉塞部材より軸方向外側に、ロッド貫通孔を有する環状の掻落環を軸方向に移動不能に配設し、上記ロッド貫通孔を上記ピストンロッドの外径より僅かに大径として該ロッド貫通孔の内周面とピストンロッドの外周面との間に隙間を形成するとともに、該掻落環の外周面と上記シリンダの端部内面との間に該掻落環の半径方向移動を許容する弾性体を介設したことを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  2. 請求項1において、上記閉塞部材の外端部にピストンロッド貫通孔と同軸の保持凹部を形成し、該保持凹部内に環状の弾性環の外周面を密着嵌合させるとともに、該弾性環の内周面をピストンロッドの外周面に摺動自在に密着させたことを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  3. 請求項1又は2において、上記掻落環が、上記シリンダの上記閉塞部材より外側端部に嵌合装着された環状の切妻板の半径方向内側に配設されており、上記弾性体が、該掻落環の外周面と上記切妻板の内周面との間に介設されていることを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  4. 請求項1又は2において、上記掻落環が、上記シリンダの上記閉塞部材より外側端部に嵌合装着された環状の切妻板の軸方向内側に配設されており、上記弾性体が、該掻落環の外周面と上記切妻板の内周面との間に介設されており、該切妻板に上記掻落環を覆うとともに上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成したことを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  5. 請求項1において、上記掻落環が、上記閉塞部材の外端部にピストンロッド貫通孔と同軸をなすよう形成された保持凹部内に配設されており、上記弾性体が、該掻落環の外周面と上記保持凹部の内周面との間に介設されており、上記切妻板に上記ロッド貫通孔より僅かに大径のロッド挿通孔を有する延長部を形成したことを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  6. 請求項2ないし4の何れかにおいて、上記掻落環が、上記弾性環との対向面に該弾性環の外端部が挿入される凹部を有していることを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  7. 請求項1ないし6の何れかにおいて、上記掻落環が、ピストンロッドより低硬度の金属製であることを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
  8. 請求項1ないし7の何れかにおいて、上記掻落環のロッド貫通孔とピストンロッドとの隙間が0.01〜0.05mmの範囲内で選択されることを特徴とする緩衝器の氷除去構造。
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