JP3553164B2 - 細胞数測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被検液中の細胞数を測定する細胞数測定装置、特に、血液成分中の血球または血小板の数を測定する細胞数測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
採血を行う場合、現在では、血液の有効利用および供血者の負担軽減などの理由から、採血血液を遠心分離などにより各血液成分に分離し、輸血者に必要な成分だけを採取し、その他の成分は供血者に返還する成分採血が行われている。
【0003】
このような成分採血において、血小板製剤を得る場合、供血者から採血した血液を血液成分分離回路に導入し、該血液成分分離回路に設置された遠心ボウルと呼ばれる遠心分離器により、血漿、白血球、血小板および赤血球の4成分に分離し、その内の血小板をバッグ等の容器に回収して血小板製剤とし、残りの血漿、白血球および赤血球は、供血者に返血することが行われる。そして、より多くの血小板数を確保するために、前記採血、採血血液の遠心分離、血小板の回収および返血の工程を複数回繰り返し行う。
【0004】
この場合、得られた血小板製剤中の血小板数を知る必要があり、そのため、全ての処理が終了した後、バッグ内に回収された濃厚血小板血漿をサンプリングして血小板数を測定し、バッグ内全体の血小板数を計算により求めていた。
【0005】
しかしながら、このような方法では、採血や血液処理工程中に、どの程度の量の血小板が採取されたのかを知ることができないという欠点がある。そのため、血小板数の目標値(例えば5、10、15または20単位の血小板)に到達しているか否かが判断できず、血小板を目標値より過剰に採取することがあり、供血者の負担が増大する等の問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、血小板等の細胞の数をリアルタイムに測定することができる細胞数測定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 内部に貯血空間が形成された回転可能なローターと、前記貯血空間に連通する流入口および流出口とを有し、前記ローターの回転により前記流入口より導入された血液を前記貯血空間内で複数の血液成分に遠心分離する遠心分離器に対し、前記ローターの回転下で、複数に分離された血液成分を有する前記貯血空間に下方より血漿を供給して血小板を浮上させ、前記流出口より血漿とともに流出した血小板の数を測定する細胞数測定装置であって、
前記流出口に接続された流路と、前記流路の途中に設置され、前記流路を流れる血漿中の血小板濃度を測定する測定部と、前記貯血空間への血漿の供給量および前記測定部で得られた血小板濃度に関する情報を入力し、処理する情報処理手段とを有し、
前記情報処理手段により、前記貯血空間への血漿の供給量と、前記血小板濃度とに基づいて、前記測定部を通過した血小板の数を求めることを特徴とする細胞数測定装置。
【0008】
(2) 前記細胞数測定装置は、前記貯血空間に血漿を供給するポンプを有し、
前記貯血空間への血漿の供給量に関する情報は、前記ポンプの回転数に関する情報である上記(1)に記載の細胞数測定装置。
【0009】
(3) 前記測定部は、前記流路を介して対向配置された投光部と受光部とを有し、前記投光部から発せられ、前記流路を透過した光を前記受光部で受光し、その受光光量に応じた電気信号を出力する光学センサーで構成されている上記(1)または(2)に記載の細胞数測定装置。
【0010】
(4) 前記投光部と前記受光部との間の流路が扁平形状をなしている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の細胞数測定装置。
【0011】
(5) 測定された細胞数を表示する表示手段を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の細胞数測定装置。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の細胞数測定装置を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の細胞数測定装置を搭載する血液成分分離装置の構成例を示す平面図、図2は、図1に示す血液成分分離装置の制御系を示すブロック図である。まず、これらの図に基づき、血液成分分離装置の全体構成について説明する。
【0016】
血液成分分離装置1は、遠心ボウル(遠心分離器)4と、その回転駆動装置5と、遠心ボウル4に血液および血漿を選択的に導入する第1のライン2(血液または血漿導入ライン)と、遠心ボウル4にて分離された血液成分を回収する第2のライン3(血液成分回収ライン)と、血液成分の界面を検出する光学センサー61と、血小板の濃度を検出する光学センサー62と、制御手段7と、血液貯留部106を有する第3のライン(供血者を想定した脱・返血ライン)10と、第1のライン2に設置されたポンプ9と、表示手段75とを有する。
【0017】
図1に示すように、第3のライン10は、主に、チューブ101と、チューブ101の途中にト字状の分岐コネクタ102を介して接続されたチューブ103と、チューブ101、103の先端にそれぞれ接続された血液バッグ104、105とで構成されている。両血液バッグ104、105により、血液貯留部106が構成されている。
【0018】
チューブ101の基端は、T字状の分岐コネクタ12を介してチューブ13および20の一端と接続されている。チューブ101の途中には、チューブ101の内部流路を遮断・解放し得る流路開閉手段であるバルブ83が設置されている。
【0019】
第1のライン2は、チューブ13およびその一端に接続された分岐コネクタ12により構成されている。チューブ13の他端は、遠心ボウル4の流入口43に接続され、チューブ13の途中には、例えばローラポンプよりなる送液用のポンプ9が設置されている。
【0020】
図3に示すように、遠心ボウル4は、上端に流入口43が形成された鉛直方向に伸びる管体41と、該管体41の回りで回転し、上部45に対し液密にシールされたローター42とで構成されている。ローター42の内部には、ローター周壁内面に沿って環状の貯血空間46が形成されている。この貯血空間46は、図3中下部から上部に向けてその内外径が漸減するような形状(テーパ状)をなしている。貯血空間46の下部は、ローター42の底部に沿って形成されたほぼ円盤状の流路47を介して管体41の下端開口と連通し、貯血空間46の上部は、流路48を介して流出口44に連通している。また、このローター42において、貯血空間46の容積は、例えば、100〜350ml程度とされる。
【0021】
このようなローター42は、回転駆動装置5によりあらかじめ設定された所定の遠心条件(回転速度および回転時間)で回転される。この遠心条件により、ローター42内の血液の分離パターン(例えば、分離する血液成分数)を設定することができる。本実施例では、図3に示すように、血液がローター42の流路内で内層より血漿層31、バフィーコート層32および赤血球層33に分離されるように遠心条件が設定される。
【0022】
回転駆動装置5は、図3に示すように、遠心ボウル4を収納するハウジング51と、脚部52と、駆動源であるモータ53と、遠心ボウル4を保持する円盤状の固定台55とで構成されている。
【0023】
ハウジング51は、脚部52の上部に載置、固定されている。また、ハウジング51の下面には、ボルト56によりスペーサー57を介してモータ53が固定されている。モータ53の回転軸54の先端部には、固定台55が回転軸54と同軸でかつ一体的に回転するように嵌入されており、固定台55の上部には、ローター42の底部が嵌合する凹部551が形成されている。また、遠心ボウル4の上部45は、図示しない固定部材によりハウジング51に固定されている。
【0024】
このような回転駆動装置5では、モータ53を駆動すると、固定台55およびそれに固定されたローター42が、例えば、回転数3000〜6000rpm で回転する。
【0025】
ハウジング51の内壁には、ローター42内の分離された血液成分の界面、すなわち、バフィーコート層32と赤血球(濃厚赤血球)層33との界面Bの位置を光学的に検出する光学センサー61が、取付部材58により設置、固定されている。この光学センサー61としては、ローター42の外周面に沿って上下方向に走査し得るラインセンサーが用いられる。すなわち、LEDのような発光素子とフォトダイオードのような受光素子とが列状に配置され、発光素子から発っせられた光の血液成分での反射光を受光素子により受光し、その受光光量を光電変換するように構成されている。分離されたバフィーコート層32と赤血球層33とで反射光の強度が異なるため、受光光量すなわち出力電圧が変化した受光素子に対応する位置が、界面Bの位置として検出される。
【0026】
図1に示すように、遠心ボウル4の流出口44には、チューブ14の一端が接続され、チューブ14の他端は、T字状の分岐コネクタ15を介してチューブ16および18の一端と接続されている。
【0027】
チューブ16の他端は、血小板バッグ17に接続され、チューブ16の途中には、チューブ16内の流路を開閉するバルブ85が設置されている。
また、チューブ18の他端は、気泡除去用のチャンバー19に接続され、チューブ18の途中には、チューブ18内の流路を開閉するバルブ86が設置されている。
【0028】
一端が分岐コネクタ12に接続されているチューブ20の他端は、気泡除去用のチャンバー19に接続され、チューブ20の途中には、チューブ20内の流路を開閉するバルブ84が設置されている。
【0029】
空気貯留バッグ22は、一連の処理後に血漿バッグ21内からエアーを排出し、これを貯留するためのバッグであり、そのため、血漿バッグ21および空気貯留バッグ22は、チューブ23により接続されてその内部同士が連通している。また、血漿バッグ21には、チューブ24の一端が接続され、チューブ24の他端は、気泡除去用のチャンバー19に接続されている。
【0030】
このような構成において、チューブ14、16、18、20、23、24、分岐コネクタ15、チャンバー19およびバッグ17、21、22により、第2のライン3が構成されている。このうち、チューブ18、チャンバー19、チューブ23、24およびバッグ21、22は、血漿を回収するための血漿回収用分岐ラインを構成し、チューブ14、16および血小板バッグ17は、血小板を回収するための血小板回収用分岐ラインを構成する。
なお、図示されていないが、血漿バッグ21は、チューブ24の接続側端部を上方または下方へ選択的に向けることができる装置にセットされていてもよい。
【0031】
チューブ14の途中には、チューブ14内に形成された流路140を流れる血液成分(被検液)中の血小板の濃度を測定する測定部として、光学センサー62が設置されている。図4は、光学センサー62の構成を示す縦断面図である。同図に示すように、光学センサー62は、チューブ14を介して対向配置された投光部63および受光部64で構成されている。
【0032】
投光部63は、ケーシング630を有し、その内部に例えば半導体レーザのような光源631と、コリメータレンズ632とが設置されている。一方、受光部64は、ケーシング640を有し、その内部にコンデンサレンズ642と、フォトダイオードのような受光素子641とが設置されている。また、投光部63および受光部64の対向する面側には、それぞれ、チューブ14を挟持する透明板633および643が固定されており、それらの上部には、チューブ14を透明板633、643間に装填する際にチューブ14を導くテーパ状のガイド部65が形成されている。投光部63および受光部64は、透明板633、643間の距離が一定に保持されるように、基台66上に固定されている。
【0033】
なお、透明板633および643の間隙距離Sは、チューブ14の外径より小さく設定されている。これにより、チューブ14は、透明板633、643に挟持されて、その流路140が扁平形状となるので、チューブ14の図中上下方向の多少の位置ずれに対し、流路140におけるレーザ光Lの光路長を一定とすることができ、より高精度の濃度測定が可能となる。
【0034】
なお、間隙距離Sは、チューブ14の円形横断面の外径に対し、50〜99%程度、特に80〜90%程度に設定されているのが好ましい。99%を超えると、前記扁平形状による効果が得られず、また、50%未満であると血液成分の流れの抵抗が増大するからである。
【0035】
また、間隙距離Sを可変調節可能としてもよい。例えば、赤血球数を測定する場合には、光学センサー62の感度に対応するように、間隙距離Sをより小さく設定するのがよい。
【0036】
投光部63の光源631から発せられたレーザ光Lは、コリメートレンズ632により平行光束とされ、透明板633およびチューブ壁を透過した後、流路140を透過し、さらにチューブ壁および透明板643を透過し、コンデンサレンズ642により受光素子641の受光面上に集光される。この場合、受光素子641は、その受光光量に応じた電圧の電気信号を出力するが、流路140を流れる血液成分中の血小板濃度に対応して流路140におけるレーザ光Lの透過率が変化するため、前記血小板濃度の変化を受光素子641からの出力電圧の変化として検出することができる。
なお、流路140の通過時のレーザ光Lのビーム径は、0.5〜2mm程度とするのが好ましい。
【0037】
図5は、流路140を流れる血液成分中の血小板濃度と受光素子641での受光光量(出力電圧)との関係を示すグラフである。このグラフに示すデータは、半導体レーザの波長:670nm、レーザ出力:0.8mW、レーザビーム径:1mm、チューブ14の外径:4.4mm、チューブ壁の厚さ:0.7mm、間隙距離S:3.7mmの条件下でのデータである。
【0038】
前記各バルブ83〜86は、例えば、ソレノイド、電動モーター、またはシリンダ(油圧または空気圧)等の駆動源で作動し、該駆動源は、後述する制御手段7からの信号に基づいて作動する。なお、本発明において、流路開閉手段は、前記バルブ(コック)に限らず、例えば可撓性チューブを挟持してその内腔を閉塞し得るクレンメであってもよい。
【0039】
前記各バッグ17、21、22、104、105は、それぞれ、樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁部を融着(熱融着、高周波融着等)または接着して袋状にしたものである。
【0040】
各バッグ17、21、22、104、105を構成するシート材の構成材料としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニルが好適に使用される。この軟質ポリ塩化ビニルにおける可塑剤としては、例えば、ジ(エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、ジ−(n−デシル)フタレート(DnDP)等が使用される。なお、このような可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、30〜70重量部程度とするのが好ましい。
【0041】
また、各バッグ17、21、22、104、105のシート材の他の構成材料としては、ポリオレフィン、すなわちエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィンあるいはジオレフィンを重合または共重合した重合体を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVAと各種熱可塑性エラストマーとのポリマーブレンド等、あるいは、これらを任意に組み合せたものが挙げられる。さらには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)のようなポリエステルや、ポリ塩化ビニリデンを用いることもできる。
【0042】
なお、血小板バッグ17を構成するシート材は、血小板保存性を向上するために、ガス透過性に優れるものが好ましく、そのために、例えば、シート材として、前記ポリオレフィンやDnDP可塑化ポリ塩化ビニル等を用いたり、また、シート材の厚さを比較的薄く(例えば、0.1〜0.5mm程度、特に、0.1〜0.3mm程度)するのが好ましい。
【0043】
血液バッグ104、105の少なくとも一方の内部には、予め血液が貯留されている。この血液中には、例えば、ACD−A液、CPD液、CPD1液、ヘパリンナトリウム液等の抗凝固剤が添加されているのが好ましい。なお、血液貯留部106に設置される血液バッグの数は、1または3以上であってもよく、その接続方法、接続パターンも任意可能である。例えば、実開平6−26877号公報等に記載されているチューブ接続装置により、1または2以上の血液バッグを無菌的に接続、交換して使用することもできる。
また、血小板バッグ17は、空の状態でもよいが、例えば、生理食塩水、GAC、PAS、PSM−1のような血小板保存液が予め入れられていてもよい。
【0044】
チューブ101、103、13、14、16、18、20、23および24の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETやPBTのようなポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリエステルエラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、その中でも特に、ポリ塩化ビニルが好ましい。各チューブがポリ塩化ビニル製であれば、十分な可撓性、柔軟性が得られるので取り扱いがし易く、また、クレンメ等による閉塞にも適するからである。
また、分岐コネクタ102、12、15の構成材料についても、前記チューブの構成材料と同様のものを用いることができる。
【0045】
図2に示すように、血液成分分離装置1は、例えばマイクロコンピュータで構成される制御手段(CPU)7を有し、この制御手段7は、演算部(情報処理手段)71およびメモリー72を有している。この制御手段7には、前記ポンプ9、バルブ83〜86、回転駆動装置5および表示手段75がそれぞれ電気的に接続されており、また、光学センサー61、62が、それぞれ、信号処理回路67、68を介して電気的に接続されている。本発明の細胞数測定装置6は、流路140を構成するチューブ14、光学センサー(測定部)62、信号処理回路68、演算部(情報処理手段)71および表示手段75で構成されている。
【0046】
信号処理回路67、68は、それぞれ、光学センサー61、62からのアナログ信号をデジタル信号に変換した後、クロックパルスに従った信号のサンプリング等の所望の信号処理を施す回路である。信号処理回路67、68から一定の周期で出力された信号は、演算部71に入力される。また、メモリー72から読み出されたポンプ9の吐出量等に関する所定の信号も、演算部71に入力される。
【0047】
表示手段75としては、例えば、発光素子アレイ、液晶表示素子(LCD)、CRT等を用いることができる。なお、表示手段75に加え、またはこれに代わり、音声による報知やプリンターによる表示内容の印字を行うような構成としてもよい。
【0048】
光学センサー61からの信号(界面位置検出情報)および光学センサー62からの信号(血小板濃度情報)は、それぞれ、信号処理回路67、68で所望に信号処理された後、制御手段7へ随時入力される。制御手段7は、光学センサー61、62からの各信号に基づき、メモリー72に予め記憶されているプログラムに従って、ポンプ9の回転/停止、回転方向(正転/逆転)および回転数を制御するとともに、必要に応じ、各バルブ83〜86の開閉および回転駆動装置5の作動を制御する。また、演算部71は、光学センサー62からの血小板濃度に関する情報とポンプ9の吐出量(後述するサージ工程における流路140を流れる血液成分の流量に対応する情報)とから、後述するようにして血小板数を求め、この血小板数を表示手段75に表示する。
【0049】
次に、図1に示す血液成分分離装置1を用いた血液成分分離移送方法および本発明の血小板数測定装置の作動について説明する。
【0050】
[1] 血液バッグ104、105内には、それぞれ、例えば400mlの採血血液が充填されており、チューブ103をクレンメで閉塞し、バルブ83、85を開、その他のバルブを閉とした状態で、ポンプ9を作動(正転)する。これにより、血液バッグ104内の血液は、チューブ101および13を介して移送され、遠心ボウル4の流入口43より管体41を経てローター42内に導入される。なお、ポンプ9の回転速度は、血液吐出量(血液供給速度)が例えば30〜80ml/min 程度となるように設定される。
【0051】
[2] また、前記工程[1]の血液移送と同時に、回転駆動装置5を作動して、ローター42を好ましくは3000〜6000rpm (例えば、4800rpm )で回転する。管体41の下端開口より流出した血液は、ローター42の回転による遠心力により、流路47を外周方向へ向けて放射状に流れ、貯血空間46に集められ、該貯血空間46において内層より血漿層31、バフィーコート層32および赤血球層33に分離される。
【0052】
[3] 前記工程[1]、[2]を継続しつつ、血漿層31が貯血空間46の上部に到達したら、バルブ85を閉じ、バルブ86を開く。これにより、ローター42内の血漿が流出口44よりオーバーフローし、チューブ14、18、チャンバー19、チューブ24を介して血漿バッグ21内に回収される。
【0053】
[4] ローター42内からの血漿の排出に伴い、バフィーコート層32と赤血球層33との界面Bも徐々に上昇する。この界面Bは、光学センサー61により随時検出されており、界面Bが所定レベル(サージ開始レベル)に到達したことが検出されると、制御手段7は、その検出信号(界面位置検出情報)に基づき、ポンプ9の回転を停止するよう制御する。これにより、血液の移送および血漿の回収が終了する。
【0054】
[5] 続いて、制御手段7の制御により、バルブ84、85を開、その他のバルブを閉とし、かつ再度ポンプ9を作動(正転)するとともに、血漿バッグ21のチューブ24の接続側端部を下方に向け、血漿バッグ21内の血漿を、チューブ24、チャンバー19、チューブ20、13および管体41を介してローター42内に供給する。管体41の下端開口より流出した血漿は、ローター42の回転による遠心力により、流路47を外周方向へ向けて放射状に流れ、貯血空間46の下部を経て貯血空間46内を上昇する。これにより、バフィーコート層32中の血小板が遠心力に抗して浮上し(舞い上がり)、この血小板が血漿とともに流路48を経て流出口44より流出し、チューブ14および16を介して血小板バッグ17内に回収される(サージ工程)。
【0055】
このサージ工程において、制御手段7は、ポンプ9の回転速度(血漿吐出量)を制御し、ローター42内への血漿の供給速度を設定する。この場合、血漿供給速度は、例えば100ml/min 以下の所定値に設定される。なお、図6に示すように、血小板の回収中において、血漿供給速度、すなわちローター42から流出する血液成分の流量を適宜変更してもよく、以下この例で説明する。また、このサージ工程において、ローター42の回転数は、前記工程[1]と同一でも異なっていてもよい。
【0056】
このようなサージ工程においては、ローター42より流出しチューブ14内の流路140を流れる血液成分(血小板血漿)中の血小板濃度を光学センサー62により随時測定し、制御手段7の演算部71へ入力するとともに、ポンプ9の吐出量に関する情報も演算部71へ入力される。演算部71においては、以下のようにして血小板総数を求める。
【0057】
単位体積当りの血小板数Mは、次式1で示される。式1中、Aは、血小板数が0のときのセンサー62の出力電圧(図5では約4V)、aは、測定中のセンサー62の実際の出力電圧、kは、実験的に求められる定数である。
【0058】
M=k×(A−a) ・・・(式1)
【0059】
また、流路140を流れる血液成分の流量は、貯血空間46へ血漿を供給するポンプ9の回転数(吐出量)に対応しており、その変化は、例えば図6に示すようなパターンとなる。この場合、微小時間においては、血液成分の流量は、一定と考えられる。
【0060】
一方、流路140を流れる血液成分中の血小板濃度の変化に対応する光学センサー62での受光光量の変化は、図7に示すように、経時的に変化する所定の関数となっている。この関数の曲線の方程式をF(t)とすると、血小板バッグ17に回収される血小板総数Plt(t)は、次式2で示される。
【0061】
Plt(t)=血小板数M×血液成分通過量 ・・・(式2)
【0062】
なお、光学センサー62での受光光量の変化の割合は、比較的小さいので、血液成分通過量は、1秒間当りの血液成分量とすることができる。また、図6に示すように、流路140を流れる血液成分の流量(ポンプ9の吐出量で換算)は、予めQ 〜Q の5段階に設定されており、流量Q(n)(n=1〜5)で表すと、血液成分通過量は、{Q(n)/60}×10 μl となることから、上記式2は、次式3となる。
【0063】
【数1】
Figure 0003553164
【0064】
ここで、k、A、Q(n)は、既知の値であることから、1回の処理で得られる血小板総数N は、光学センサー62での受光光量を示すF(t)値を少なくとも1秒毎にモニターし、その値を上記式3に代入して演算することにより、求めることができる。求められた血小板総数N は、表示手段75に表示される。
【0065】
[6] 血漿の供給開始から所定時間(例えば120秒)経過したら、血小板バッグ17への血小板の回収が終了したものとみなし、制御手段7の制御により、ポンプ9を停止してローター42内への血漿の供給を停止し、さらに回転駆動装置5を停止する。これにより、サージ工程による血小板の回収が終了する。
【0066】
[7] バルブ83、85を開、その他のバルブを閉とし、ポンプ9を逆回転する。これにより、遠心ボウル4内に残った赤血球、白血球および少量の血漿が、管体41、チューブ13、101を介して、血液バッグ104内に返血される。
【0067】
また、本工程の後またはその途中で、バルブ84、86を開、その他のバルブを閉としてポンプ9を作動(正転)し、血漿バッグ21内の血漿をチューブ24、チャンバー19、チューブ20、13を介してローター42内に入れ、続いて、バルブ83、85を開、その他のバルブを閉としてポンプ9を逆回転し、血漿バッグ21から移した遠心ボウル4内の血漿を、管体41、チューブ13、101を介して、血液バッグ104内に返血してもよい。
【0068】
[8] 分岐コネクタ102と血液バッグ104との間のチューブ101の途中を例えば融着により封止し、さらにこの封止部を切断、分離する。これにより、返血用乏血小板血液入りの血液バッグ104が得られる。血液バッグ104内の乏血小板血液は、必要に応じ、供血者に返血される。
【0069】
[9] チューブ103のクレンメによる閉塞を解除し、ポンプ9を作動(正転)して、前記工程[1]を行い、さらに前記工程[2]〜[7]を行う。これにより、血液バッグ105内の採血血液に対し、血小板バッグ17への2回目の血小板の回収およびその他の血液成分の血液バッグ105への返血がなされる。
【0070】
この2回目の血小板回収においても、前記と同様にして回収される血小板総数N を求め、これを表示手段75に表示する。また、前記血小板総数N と血小板総数N との合計N=N +N を表示することもできる。
【0071】
[10] チューブ103の途中を例えば融着により封止し、さらにこの封止部を切断、分離する。これにより、返血用乏血小板血液入りの血液バッグ105が得られる。血液バッグ105内の乏血小板血液は、必要に応じ、供血者に返血される。
【0072】
[11] 血小板バッグ17付近のチューブ16を例えば融着により封止し、さらにこの封止部を切断、分離することにより、血小板製剤入りの血小板バッグ17が得られる。
【0073】
以上のように、本発明では、血小板バッグ17に回収された血小板数を、血液処理工程中にリアルタイムに測定することができる。従って、最小処理回数で血小板の採取目標数(単位数)に到達させることができ、供血者の負担軽減、処理血液の節減、処理時間の短縮化を図ることができる。しかも、回収された血小板をサンプリング等をすることなく、閉鎖系で血小板数の測定を行うことができるので、塵や細菌の侵入等による汚染の問題も生じず、安全性が高い。
なお、血小板数の演算方法は、前述した方法に限らないことは言うまでもない。
【0074】
また、光学センサー(測定部)62は、他の位置、例えばチューブ16の途中に設けられていてもよい。
また、前記実施例では、流路140を流れる血液成分の流量を、サージ工程におけるポンプ9の吐出量として把握しているが、これに限らず、例えば、チューブ13、14または16の途中等に流量計を設け、該流量計で得た情報を用いてもよい。
【0075】
本発明の細胞数測定装置は、前述したような血液成分分離装置に搭載されているものに限られず、その他の装置に搭載されているものまたはそれ自体単独で使用されるものであってもよい。
【0076】
また、本発明は、血小板数の測定に限らず、例えば、白血球、赤血球等の血球数の測定やその他の細胞数の測定に適用することもできる。
また、測定部における細胞濃度測定は、前述したような光学センサーによらず、例えば、被検液が電解質の場合、その導電性を測定することにより細胞濃度を測定するような構成であってもよい。
【0077】
また、流路に沿って測定部を複数設け、各測定部で得られた測定値のそれぞれまたはそれらの例えば平均値を血小板数の演算に利用するような構成としてもよい。
【0078】
また、本発明では、求められた血小板数に基づいて、血液成分分離装置の作動を制御することもできる。例えば、血小板バッグ17に回収される血小板数が目標値に到達したら、血小板回収動作を停止し、返血動作へ移行するような自動制御を行うこともできる。
【0079】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の細胞数測定装置によれば、細胞数をリアルタイムに測定することができる。従って、例えば、血小板製剤を製造する際に、採取された血小板数を血液処理中に知ることができ、これにより最小血液処理回数で血小板の採取目標数に到達させることができるので、供血者の負担軽減、処理血液の節減、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0080】
また、血小板等の細胞をサンプリングすることなく、閉鎖系で測定を行うことができるので、空気との接触による変質、劣化や、塵、細菌の侵入等による汚染の問題も生じない。
【0081】
また、測定部を、投光部と受光部とを有する光学センサーで構成し、特に投光部と受光部との間の流路を扁平形状とすることにより、より正確な細胞濃度の測定が可能となり、高精度の細胞数測定が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の細胞数測定装置を搭載した血液成分分離装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す血液成分分離装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】図1に示す血液成分分離装置における遠心ボウルおよび回転駆動装置の構成例を示す部分断面正面図である。
【図4】測定部(光学センサー)の構成例を示す断面正面図である。
【図5】測定部における血液成分中の血小板濃度と光学センサーの受光光量との関係を示すグラフである。
【図6】サージ工程(血小板回収工程)における、流路を流れる血液成分の流量の経時変化を示すグラフである。
【図7】サージ工程(血小板回収工程)における、光学センサーの受光光量(血液成分中の血小板濃度)の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 血液成分分離移送装置
2 第1のライン
3 第2のライン
4 遠心ボウル
41 管体
42 ローター
43 流入口
44 流出口
45 上部
46 貯血空間
47、48 流路
5 回転駆動装置
51 ハウジング
52 脚部
53 モータ
54 回転軸
55 固定台
551 凹部
56 ボルト
57 スペーサー
58 取付部材
6 細胞数測定装置
61、62 光学センサー
63 投光部
630 ケーシング
631 光源
632 コリメータレンズ
633 透明板
64 受光部
640 ケーシング
641 受光素子
642 コンデンサレンズ
643 透明板
65 ガイド部
66 基台
67、68 信号処理回路
7 制御手段
71 演算部
72 メモリー
75 表示手段
83〜86 バルブ
9 ポンプ
10 第3のライン
101 チューブ
102 分岐コネクタ
103 チューブ
104、105 血液バッグ
106 血液貯留部
12 分岐コネクタ
13、14 チューブ
140 流路
15 分岐コネクタ
16 チューブ
17 血小板バッグ
18 チューブ
19 チャンバー
20 チューブ
21 血漿バッグ
22 空気貯留バッグ
23、24 チューブ
31 血漿層
32 バフィーコート層
33 赤血球層
B 界面
L レーザ光

Claims (5)

  1. 内部に貯血空間が形成された回転可能なローターと、前記貯血空間に連通する流入口および流出口とを有し、前記ローターの回転により前記流入口より導入された血液を前記貯血空間内で複数の血液成分に遠心分離する遠心分離器に対し、前記ローターの回転下で、複数に分離された血液成分を有する前記貯血空間に下方より血漿を供給して血小板を浮上させ、前記流出口より血漿とともに流出した血小板の数を測定する細胞数測定装置であって、
    前記流出口に接続された流路と、前記流路の途中に設置され、前記流路を流れる血漿中の血小板濃度を測定する測定部と、前記貯血空間への血漿の供給量および前記測定部で得られた血小板濃度に関する情報を入力し、処理する情報処理手段とを有し、
    前記情報処理手段により、前記貯血空間への血漿の供給量と、前記血小板濃度とに基づいて、前記測定部を通過した血小板の数を求めることを特徴とする細胞数測定装置。
  2. 前記細胞数測定装置は、前記貯血空間に血漿を供給するポンプを有し、
    前記貯血空間への血漿の供給量に関する情報は、前記ポンプの回転数に関する情報である請求項1に記載の細胞数測定装置。
  3. 前記測定部は、前記流路を介して対向配置された投光部と受光部とを有し、前記投光部から発せられ、前記流路を透過した光を前記受光部で受光し、その受光光量に応じた電気信号を出力する光学センサーで構成されている請求項1または2に記載の細胞数測定装置。
  4. 前記投光部と前記受光部との間の流路が扁平形状をなしている請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞数測定装置。
  5. 測定された細胞数を表示する表示手段を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の細胞数測定装置。
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