JP3551612B2 - カップリング付ダンパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸に取り付けられるダンパに関し、特に、モータの主軸に対して取り付けられるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
数値制御工作機械(NC工作機械)は、工具の移動位置や速度などを指定する数値や、運動の種類を示す記号などで構成される数値情報により、いくつかの運動を自動制御する工作機械であり、これによれば、普通の工作機械で製作困難な複雑な形状も高精度で作り出すことが容易になると共に、多種少量生産の加工工場の自動化、省力化、加工費の低減、加工時間の短縮などにも大きな役割を果たしている。
【0003】
このNC工作機械のような高速高精度加工設備においては、一般に、ワークが載置されるテーブルに取り付けられるボールナットねじに、ボールスクリュー軸を螺合させ、このボールスクリュー軸をサーボモータなどにより回転させテーブルを移動させることにより、当該ワークを、加工を施す所定の正確な位置に位置決めする。このような位置制御は、例えばX,Y,Z軸の三軸方向について行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高速高精度加工設備においては、精度を決定する前記X,Y,Z軸などのNC軸方向の位置制御に用いるサーボモータの追従精度、すなわち指令に対する実際の動きの誤差を極力小さくする必要がある。
【0005】
しかしながら、サーボモータの追従性を向上させようとして、サーボ回路における位置出しのためのサーボゲインを上げてやると、一方において、モータは敏感になって自身で振動(高周波の振動)し始める結果となり、このため前記サーボゲインを一定値より上げることができず、追従精度には一定の限界が存在していた。
【0006】
これに対し、図2〜図4に示すように、回転軸上に、振動を減衰させるダンパを取り付ける方法が考えられる。
【0007】
図2は、モータMの主軸1を出力側と反対側にも延長させ、その端部に連結させるためのカップリング22を介してダンパ23を取り付けたものであって、モータMの主軸1の出力側は、別のカップリング21によりボールスクリュー軸2と連結される。しかし、この図2のものは、回転位置を検出するためにモータMの主軸1に直結されるロータリエンコーダ付のサーボモータには取り付けることができない欠点がある。
【0008】
また、図3は、モータMの主軸1自体に直接カップリング22を介してダンパ23を取り付けたものであるが、もともと主軸1が長いモータでなければ取り付けることは困難であり、図4は、個別設計となるボールスクリュー軸2をダンパ23の分だけ延長して取り付けたものであるが、ダンパ23がモータMの主軸1に直接取り付けられていないために、モータ自身に対するダンピング効果が小さくなってしまう。
【0009】
さらに、図2〜図4のものは、いずれもカップリング2個とダンパとから構成されているので部品点数が多く、しかも必ず軸方向の全長が長くなるものであるため、適用する箇所に所定のスペースを確保できないような場合にはダンパの取り付けができなかったり、一方、取り付けられたとしても、適用する箇所のスペースの大きさによっては同様な取り付け方法を採ることができず、同一の設備内であってもそれぞれに専用設計が必要となるものであった。
【0010】
本発明の目的は、全長を増加させることなく簡単に取り付け可能で、軸に伝わる振動を効率良く減衰させることができるダンパを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、請求項毎に次のように特定される。
請求項1に記載の発明は、所定の質量を有する外輪を、略円筒状の内輪に対し軸受部材を介して回転自在に設けると共に、前記内輪および外輪間の隙間に緩衝部材が介装され、前記内輪に伝わる振動を減衰させるダンパ部材と、前記ダンパ部材の内方に一体的に設けられ、直列に並ぶ二つの軸を前記ダンパ部材の前記内輪にそれぞれ固定することにより当該二つの軸を連結させるカップリング部材とを備え、前記軸受部材は外側の軌道輪と内側の軌道輪とを有し、前記内輪の両端面に、前記軸受部材の内側の軌道輪を位置決めするための位置決め部材を取付けてなるカップリング付ダンパである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載のカップリング付ダンパにおいて、前記二つの軸の一方は、回転駆動手段としてのモータの主軸であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載のカップリング付ダンパにおいて、前記内輪に当該軸に直交して外方に突出する円板部を設け、当該円板部を前記外輪の内側に形成した溝部に収容してなることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載のカップリング付ダンパにおいて、前記緩衝部材は、シリコンゲルであることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1に記載のカップリング付ダンパにおいて、前記カップリング部材は、前記内輪の内側に一体的に形成され両軸端から軸中央に向けて径が小さくなる二つの内円錐面部と、前記各内円錐面部に接触する外円錐面部が形成されると共に径の小さい端面同士が対向して配置される二つの楔部材とを有し、当該両楔部材を相互に軸方向に近接移動させることにより、前記二つの軸を前記内輪にそれぞれに固定させてなることを特徴とする。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、請求項毎に次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明では、軸に伝わる振動を効率良く減衰させることができると同時に、二つの軸の連結とカップリング付ダンパの取り付けとを一部品で一括して行うことができるので、ダンパ部材を取り付ける前の軸方向全長を増加させることなく、様々な設備の様々な二軸の連結箇所に、特殊な改造を必要とすることなく、簡単かつ迅速に取り付けることが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明ではさらに、モータに誘起される振動を効率良く減衰させることができるため、モータのゲインを飛躍的に高めることが可能となり、モータ動作の精度を大幅に向上させることができる。また、ダンパ部材とモータとの位置関係が一定化するため、ダンピング効果が安定し、確実に所望の精度が得られる利点がある。
【0019】
請求項3に記載の発明ではさらに、緩衝部材を介して互いに接触する外輪と内輪との接触面積を拡げ、ダンパ部材による減衰振動系の粘性減衰係数を大きく設定することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明ではさらに、緩衝部材は、粘性が高くしかも耐熱性のあるものとなる。
【0021】
請求項5に記載の発明ではさらに、楔部材を相互に軸方向に近接移動させると、二つの軸の外面と内輪の内円錐面部との間に両楔部材が軸方向から嵌入され、各々の接触面同士で押圧し合うことにより、前記二つの軸を、同軸度を維持しつつ、簡単に内輪にそれぞれ固定して連結することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態であるカップリング付ダンパをモータの主軸の連結箇所に取り付けた様子を示す半断面図である。なお、図2〜図4に示した部材と共通する部材には、同一の符号を付してある。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態であるカップリング付ダンパは、振動を減衰させるダンパ部材3の内方に、二つの軸を連結するカップリング部材4を前記ダンパ部材3に一体的に設けるようにして構成されている。
【0024】
前記ダンパ部材3は、略円筒状の内輪6と、この内輪6に対し、軸受部材7を介して回転自在に設けられ所定の質量を有する外輪5とを有している。軸受部材7としては、例えばラジアル玉軸受が使用されるが、アンギュラタイプのものでもよく、また他のラジアル軸受を使用することもできる。
【0025】
外輪5は、略円板状を呈した一対のハウジング5a,5bがボルト10により最中合わせに接合されて構成されており、両者の間にリング状の溝部9が形成されている。この外輪5は、その外径を適宜変更することにより、当該ダンパ部材3による減衰振動系の質量、すなわちイナーシャを変化させて調整することが可能である。
【0026】
一方、内輪6には、当該軸に直交して外方に突出する円板部11がボルト12により固定されており、この円板部11は、前記外輪5の両ハウジング5a,5b間に形成された前記溝部9の中に収容されるように設置される。また、内輪6の両端面には、軸受部材7を位置決めするためのプレート18がボルト19により取り付けられている。
【0027】
このように配設された前記外輪5および内輪6間の隙間には、所定の粘性を有する緩衝部材8が充填され、この緩衝部材8は、図示のように、溝部9内における円板部11の回りにも充填される。なお、緩衝部材8は、外輪5のハウジング5bの外周面に形成された注入口13から内部に注入され、注入口13は、栓14が螺着されて塞がれる。
【0028】
したがって、外輪5と内輪6とは、緩衝部材8を介して互いに接触する構成となっており、円板部11は、その接触面積を拡げる機能を有している。ここで、円板部11の形状や外径などを適宜変更することにより、ダンパ部材3による減衰振動系の粘性減衰係数を変化させて調整することが可能である。なお、図1では円板部11が1枚だけ示されているが、その厚さや枚数などは適宜設定することが可能である。
【0029】
緩衝部材8としては、例えばシリコンゲルのようなゼリー状で粘性が高くしかも耐熱性を有するものが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば他の半固体状物、流動物、液状物、粉状物あるいは粒状物など、外輪5と内輪6との間に介装されて相互の相対運動に抵抗力を付与することのできるものであれば使用可能である。
【0030】
前記カップリング部材4は、ダンパ部材3の内輪6の内側に一体的に形成され両軸端から軸中央に向けて径が小さくなる二つの内円錐面部6a,6bと、前記各内円錐面部6a,6bに接触する外円錐面部15a,16aがそれぞれ形成されると共に、径の小さい端面同士が対向して配置される二つの楔部材15,16とを有している。つまり、前記内円錐面部6a,6bは、ダンパ部材3の内輪6の一部であると共に、カップリング部材4の構成をも成すものであり、この意味においてカップリング部材4は前記ダンパ部材3に一体的に設けられている。
【0031】
これら楔部材15,16は、ボルト17を締め付けることにより相互に軸方向に近接移動させられるようになっている。したがって、軸方向からボルト17を締め付けるだけで、モータMの主軸1およびボールスクリュー軸2の外面と、内輪6の内円錐面部6a,6bとの間に、両楔部材15,16が軸方向から嵌入され、各々の接触面同士で押圧し合うことにより、前記二つの軸1,2は、同軸度を維持しつつ簡単に内輪6にそれぞれ固定されて連結される。
【0032】
ここで、モータMの主軸1の径が標準化されていることを考慮すれば、本カップリング付ダンパは種々のモータに対して適用することができ汎用性の高いものとなる。なお、モータMの主軸1と連結される相手軸は、上記ボールスクリュー軸2に限られず、種々の回転軸を使用することができ、これを介してボールスクリュー軸と連結させることもできる。
【0033】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
本発明の実施の形態であるカップリング付ダンパは、例えば、NC工作機械のような高速高精度加工設備において、位置決め精度を決定する重要なNC軸の回転駆動に用いるサーボモータに関して適用される。
【0034】
このカップリング付ダンパを使用するときは、図1に示すように、モータMの主軸1と、このモータMの主軸1からの回転駆動力を伝達するためのボールスクリュー軸2とが同軸となるように一直線状に配置すると共に、これらの軸1,2を内部に挿通させるようにしてカップリング付ダンパをセットし、ボルト17を締め付ける。これにより、前記二つの軸1,2の連結と、カップリング付ダンパの取り付けとを一部品で一括して行うことができる。
【0035】
このようにボールスクリュー軸2に主軸1が連結されたサーボモータを動作させる場合にあっては、モータMの追従性を向上させるためにサーボ回路におけるゲインを上げてやると、前述したように、モータMは敏感になって自身で振動し始めるが、本実施の形態では、ダンパ部材3は、モータMが振動しようとすると、所定のイナーシャを有する外輪5が一定速で回ろうとし、外輪5および内輪6間の隙間に封入された緩衝部材8によって、モータMの主軸1に直結の内輪6の振動を抑制しようとする。すなわち、振動しようとする内輪6と、一定速で回ろうとする外輪5との間の速度差を緩衝部材8が吸収しようとする作用が働く。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、誘起される振動を効率良く減衰させることができるため、モータのゲインを飛躍的に高めることが可能となり、サーボモータの追従精度を大幅に向上させることができる。例えば、一般的なNC工作機械に適用した実験では、ワーク先端の位置決め精度において、ダンパ部材の取り付け無しのものに比べて約半分以下となるきわめて高い追従精度を得ることができた。
【0037】
しかも、モータMの主軸1およびボールスクリュー軸2の連結と、カップリング付ダンパの取り付けとを一部品で一括して行うことができるので、ダンパ部材を取り付ける前の軸方向全長を増加させることなく、様々な設備の様々なモータについて例えば主軸を長くするとか半出力側に延長させるとかの特殊な改造を必要とすることなく、簡単かつ迅速に取り付けることが可能となる。
【0038】
また、ダンパ部材3とモータMとの位置関係が一定化するため、ダンピング効果が安定し、確実に所望の追従精度が得られる利点がある。
【0039】
なお、以上説明した実施の形態は、本発明を限定するために記載されたものではなく、種々変更が可能である。上述した実施の形態では、NC工作機械に用いるサーボモータに関して適用したものについて説明したが、これに限られることなく、例えばステッピングモータに関して適用することも可能であり、高速高精度な位置決めを要する種々の回転軸の連結箇所に適用して好ましい。また、モータの主軸との連結箇所に限られず、一般的な二軸の連結箇所においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態であるカップリング付ダンパをモータの主軸の連結箇所に取り付けた様子を示す半断面図である。
【図2】モータの主軸を出力側と反対側にも延長させ、その端部にダンパを取り付けた様子を示す断面図である。
【図3】モータの主軸自体に直接ダンパを取り付けた様子を示す断面図である。
【図4】モータの主軸と連結される相手軸をダンパの分だけ延長して取り付けた様子を示す断面図である。
【符号の説明】
1…主軸(軸)、
2…ボールスクリュー軸(軸)、
3…ダンパ部材、
4…カップリング部材、
5…外輪、
6…内輪、
6a,6b…内円錐面部、
7…軸受部材、
8…緩衝部材、
9…溝部、
11…円板部、
15,16…楔部材、
15a,16b…外円錐面部、
M…モータ。
Claims (5)
- 所定の質量を有する外輪を、略円筒状の内輪に対し軸受部材を介して回転自在に設けると共に、前記内輪および外輪間の隙間に緩衝部材が介装され、前記内輪に伝わる振動を減衰させるダンパ部材と、
前記ダンパ部材の内方に一体的に設けられ、直列に並ぶ二つの軸を前記ダンパ部材の前記内輪にそれぞれ固定することにより当該二つの軸を連結させるカップリング部材とを備え、
前記軸受部材は外側の軌道輪と内側の軌道輪とを有し、
前記内輪の両端面に、前記軸受部材の内側の軌道輪を位置決めするための位置決め部材を取付けてなるカップリング付ダンパ。 - 前記二つの軸の一方は、回転駆動手段としてのモータの主軸である請求項1に記載のカップリング付ダンパ。
- 前記内輪に当該軸に直交して外方に突出する円板部を設け、当該円板部を前記外輪の内側に形成した溝部に収容してなる請求項1に記載のカップリング付ダンパ。
- 前記緩衝部材は、シリコンゲルである請求項1に記載のカップリング付ダンパ。
- 前記カップリング部材は、前記内輪の内側に一体的に形成され両軸端から軸中央に向けて径が小さくなる二つの内円錐面部と、前記各内円錐面部に接触する外円錐面部が形成されると共に径の小さい端面同士が対向して配置される二つの楔部材とを有し、当該両楔部材を相互に軸方向に近接移動させることにより、前記二つの軸を前記内輪にそれぞれに固定させてなる請求項1に記載のカップリング付ダンパ。
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