JP3551551B2 - 凹凸形状測定方法及び測定装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、凹凸形状の測定に関し、特に、光ディスクに刻まれた溝や半導体基板上に焼き付けられたパターンを非接触で測定することに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭57−187604号公報に開示されているように、従来は、測定物から生じる特定の回折光を用いて、光ディスクに刻まれた溝や半導体基板上に焼き付けられたパターンを非接触且つ高速で測定していた。
図1を用いて、詳細に説明する。図1(a)に示すように、レーザー光の入射光ILが周期的な溝を有する測定物である基板3上に照射され、基板表面に刻まれた溝によって回折される。受光器4を走査することにより、0次回折光DL0 、1次回折光DL1 及び2次回折光DL2 の強度が測定される。そして、これらの回折光強度の測定値をもとに溝形状を決定する。
【0003】
回折光強度の測定値から溝形状を決定するための原理は、以下の様に説明されている。
スカラー回折理論によれば、0次回折光強度、1次回折光強度及び2次回折光強度をそれぞれ、I0 、I1 及びI2 とすると、(1)式及び(2)式が成り立つ。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
ここで、λは波長、pは溝周期、Wは溝幅、Hは溝深さ、Φは反射位相差であり、溝周期p、溝幅W及び溝深さHの概念は図1(b)に示す。また、ここで、反射位相差Φは(3)式として表される。
Φ=4πH/λ (3)
上記(1)式、(2)式及び(3)式より、0次回折光、1次回折光及び2次回折光の強度比が決定される。
【0007】
従って、逆に、0次回折光、1次回折光及び2次回折光の強度比より、溝幅と溝深さとを決定することができる。
図2は、スカラー回折理論を用いて、入射光の波長632.8nm、入射光の入射角45°で、溝周期p=1.6μmの測定物を測定したときの、溝幅W、溝深さH、(I1 /I0 )、及び(I2 /I1 )を表した図である。縦軸左側のスケールは溝幅Wを表しており、横軸下側のスケールは溝深さHを表している。それぞれの等高線については、かぎ括弧付きの数字で表されている方が(I1 /I0 )を、括弧のついていない数字で表されている方が(I2 /I1 )を表している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、(1)式、(2)式、(3)式及び図2から分かるように、溝幅W=溝深さp/2に関して対称である。即ち、溝幅がa(任意の数)のときとp−aのときとでは区別がつかない、或いは凹凸の識別ができないといったことを表している。例えば、溝周期p=1.6μmとした場合、溝幅W=0.4μmと溝幅W=1.2μmとでは同じ回折光を生じるため、回折光の測定から溝幅を一意に決定できない。
【0009】
溝幅がある程度狭い場合や広い場合は、溝幅が狭いか広いかが予め明らかであることが多いので特に問題にはならない。しかし、W≒p/2の場合は、W=p/2より狭いか広いかが判別できないことが普通であり、凹凸の識別ができないことが大きな問題となっていた。そのため、別の方法で決定せざるを得なかった。
【0010】
ところで、溝周期pや溝幅Wが波長程度になると、回折光強度がW=p/2に関して対称でなくなる等、スカラー回折理論からのずれが顕著になってくる。この様な場合、特開平1−285806号公報に開示されたように、ベクトル回折理論で回折計算を行う必要がある。
図3は、図2のときと同様に、入射光の波長632.8nm、入射光の入射角45°、溝周期W1.6μm、基板を完全導体、入射光の偏光面(電場の振動面)が溝に平行な条件として、ベクトル回折理論を用いて計算した場合の回折光強度比を表した図である。また、図3の見方は、図2と同様である。図2と比較すると、もはやW=p/2に関して対称ではなくなっていることが分かる。しかしながら、この様な場合でも、回折光から溝形状が一意に決まらないという不定性は、相変わらず残ったままである。例えば、図3でA点とB点とでは、同一の回折光強度比を与える。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、回折光のみを用いて、溝形状を一意に決定する方法及び装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するために、本発明では、入射光を測定物に入射させ、前記測定物から生じた回折光を利用して凹凸形状を測定する方法において、偏光面と前記測定物とのなす角度を変化させることにより得られる偏光方向の異なる複数の直線偏光を前記測定物に入射させ、該測定物からの回折光に基づいて前記直線偏光毎に導きだされた複数の凹凸形状のうち、全ての直線偏光に共通する凹凸形状を測定物の凹凸形状と決定することを特徴とする凹凸形状測定方法を提供する。
【0013】
また、上記目的を解決するために、本発明による別の態様では、光源と、前記光源から放射される光線によって測定される測定物と、前記測定物から生じた回折光を検出する検出器と、を有する凹凸形状測定装置において、前記光源から前記測定物の光路中に配置され、偏光面と前記測定物とのなす角度を変化させて偏光方向の異なる複数の直線偏光を形成する偏光手段と、
前記測定物からの回折光に基づいて前記直線偏光毎に複数の凹凸形状を導きだし、該複数の凹凸形状のうち全ての直線偏光に共通する凹凸形状を測定物の凹凸形状と決定する処理機構とを有することを特徴とする凹凸形状測定装置を提供する。
【0014】
【作用】
溝の周期や溝幅が波長程度になると、回折光強度が入射光の偏光状態に依存する現象が現れる。即ち、入射光を直線偏光とした場合、偏光方向が溝に平行か垂直かで発生する回折光強度が異なる。この入射条件の違いによる回折光強度を利用する。
【0015】
【実施例】
図4は、ベクトル回折理論によって、入射光の偏光面(電場の振動面)が溝に垂直な場合の回折光強度比を表した図であり、計算条件は図2及び図3を計算したときと同一である。
図3及び図4は、同一の溝形状であっても入射光の偏光方向によって回折光強度比が明らかに異なっていることを示している。そこで、先ず、入射光に直線偏光を用い、偏光面が溝に平行な場合(平行偏光入射)と溝に垂直な場合(垂直偏光入射)に対して回折光強度の測定を行う。次に、平行偏光入射で得られた複数の解と垂直偏光入射で得られた複数の解とを照合し、同一の解を選定する。この様にして選定された同一の解が、被測定物の溝形状であり、一意に溝形状を決定することが可能となる。
【0016】
例えば、平行偏光入射のときの回折光強度比の測定値が、
I1 /I0 =0.1 I2 /I1 =0.2 (3)
であったとすると、図3より、
W=0.662μm H=0.067μm (4)
W=1.110μm H=0.064μm (5)
の2組の解が得られる(図3中のA点及びB点)。
【0017】
また、垂直偏光入射のときの回折光強度比の測定値が、
I1 /I0 =0.2 I2 /I1 =0.1 (6)
であったとすると、図4より、
W=0.662μm H=0.067μm (7)
W=0.878μm H=0.071μm (8)
の2組の解が得られる(図4中のC点及びD点)。
【0018】
(4)、(5)と(7)、(8)とで同一の解は、(4)と(7)となる。よって、溝形状は、
W=0.662μm H=0.067μm (9)
と決定する。
上記実施例では、測定物である基板を完全導体と仮定している。もし、基板が完全導体でない場合、基板の屈折率を考慮した回折計算を行えば、精度は更に向上する。
【0019】
尚、仮に溝が狭いか広いかが予め分かっているような場合、偏光方向の異なる2つのデータをもちいて溝形状が推定できるため、特定の偏光を用いた従来の測定よりも測定精度を向上させることができる。
また、矩形溝に限らず、溝形状が台形の場合も、一般的に、矩形溝と同様に2つの異なる溝形状が同一の回折光に対応しているから、従来の様な回折光の測定からは、溝形状を一意に決定することができない。それどころか、台形溝の場合、溝形状を決定するには、溝幅と溝深さと溝斜面の傾きとの3つの変数が必要である。従来の方法で得られる測定データは2つであるから、台形溝形状を決定することは原理的に不可能であった。
【0020】
しかし、本発明で示す様に、2つの異なる回折光を用いれば、平行偏光入射の(I1 /I0 )及び(I2 /I1 )並びに垂直偏光入射の(I1 /I0 )及び(I2 /I1 )という4つの測定データを得ることができるから、3つの変数を有する台形溝の溝形状を一意に決定することができる。
以上の測定は、複数の偏光方向の入射光を用いれば更に精度を向上できる。例えば、入射光の偏光面と溝のなす角とをθとしたとき、θ=0°、30°、60°及び90°の4点で測定を行い、得られた8つの回折光強度比のデータから溝形状を決定すれば、更に精度が向上する。即ち、複数の偏光方向の入射光を用いることで、矩形或いは台形溝の形状を一意に且つ高精度で決定することができる。
【0021】
本発明による測定手段は溝が周期的に配列している場合のみならず、凹状或いは凸状の孤立溝に対しても有効である。つまり、孤立凹形状或いは孤立凸形状による散乱光束の強度分布が偏光依存性を示すことを利用することで、孤立凹形状溝或いは孤立凸形状溝を精度良く計測することが可能である。
また、本発明による測定手段は、図5に示す透過型(位相変調型)回折格子の溝形状測定に対しても有効である。この場合、直行する2種類の入射光、或いは、偏光状態の異なる複数個の入射光を用い、透過した回折光の光量から、溝形状を測定する。勿論、反射回折光量の測定から、溝形状を測定することもできる。
【0022】
また、以下に、図6を参照しながら、装置の実施例を説明する。
光源であるヘリウム−ネオン(He−Ne)レーザーから射出された波長632.8nmの直線偏光の入射光ILが、偏光手段の一部である1/2波長(λ)板2を透過し、測定物である基板3に入射する。尚、回折光強度を測定する前に、1/2λ板2とモーター6とで構成される偏光手段によって、測定物へ入射する偏光方向を決定しておく。ここでは、例えば、平行偏光入射とする。
【0023】
次に、検出器4を走査することによって、0次回折光DL0 、1次回折光DL1 及び2次回折光DL 2の強度が測定される。測定して得られたデータをもとに、CPU5によって平行偏光入射の(I1 /I0 )と(I2 /I1 )と溝幅Wと溝深さHとが計算され、CPU5のメモリー内に計算結果が蓄積される。続いて、偏光方向を変えるために、CPU5からモーター6に、1/2λ板2を所定の角度動かすように指示が出される。ここでは、偏光状態を90°回転させ、垂直偏光入射とするため、1/2λ板2を45°回転させる。
【0024】
そして、今度は、受光器4を、平行偏光入射のとき走査した方向とは逆向きに、走査する。これにより、再び0次回折光DL0 、1次回折光DL1 及び2次回折光DL 2の強度を測定する。測定データをもとに、CPU5によって、垂直偏光入射の(I1 /I0 )と(I2 /I1 )と溝幅Wと溝深さHとが計算される。最終的に、メモリー内に蓄積された平行偏光入射の溝幅Wと溝深さHとのデータと、先程計算された垂直偏光入射の溝幅Wと溝深さHとのデータとが、CPU5によって比較され、一致する解が選び出される。これにより、測定物の溝幅Wと溝深さHとが決定される。
【0025】
尚、光源は、He−Neレーザーに限らず、半導体レーザーや、アルゴンレーザー等、レーザー一般が使用できる。また、偏光手段としては、偏光方向の定まったレーザーなら、レーザー自体を直接回転させてもよく、半導体レーザーを用いるときは1/2λ板の代わりに偏光板を使用し、これら半導体レーザーと偏光板とを一体に回転させてもよい。また、モーターも特にモーターとは限らず動力手段なら何でも応用可能なことは、言うまでも無い。
【0026】
【効果】
上記のごとく、本発明によれば、入射条件の違いによる回折光強度を利用することにより、溝形状を一意に決定することができる。なおかつ、本発明による方法及び装置では、迅速に溝形状を決定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は測定器の概略図であり、図1(b)は溝形状の断面図である。
【図2】図2は、スカラー回折理論による回折光強度比を示した図である。
【図3】図3は、ベクトル回折理論による平行偏光入射の回折光強度比を示した図である。
【図4】図4は、ベクトル回折理論による垂直偏光入射の回折光強度比を示した図である。
【図5】図5は、透過型(位相変調型)回折格子の測定概略図である。
【図6】図6は、実施例における装置の概略図である。
【符号の説明】
1 光源
2 1/2λ板
3 基板
4 検出器
5 CPU
6 モーター
IL 入射光
DL 回折光
【産業上の利用分野】
本発明は、凹凸形状の測定に関し、特に、光ディスクに刻まれた溝や半導体基板上に焼き付けられたパターンを非接触で測定することに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭57−187604号公報に開示されているように、従来は、測定物から生じる特定の回折光を用いて、光ディスクに刻まれた溝や半導体基板上に焼き付けられたパターンを非接触且つ高速で測定していた。
図1を用いて、詳細に説明する。図1(a)に示すように、レーザー光の入射光ILが周期的な溝を有する測定物である基板3上に照射され、基板表面に刻まれた溝によって回折される。受光器4を走査することにより、0次回折光DL0 、1次回折光DL1 及び2次回折光DL2 の強度が測定される。そして、これらの回折光強度の測定値をもとに溝形状を決定する。
【0003】
回折光強度の測定値から溝形状を決定するための原理は、以下の様に説明されている。
スカラー回折理論によれば、0次回折光強度、1次回折光強度及び2次回折光強度をそれぞれ、I0 、I1 及びI2 とすると、(1)式及び(2)式が成り立つ。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
ここで、λは波長、pは溝周期、Wは溝幅、Hは溝深さ、Φは反射位相差であり、溝周期p、溝幅W及び溝深さHの概念は図1(b)に示す。また、ここで、反射位相差Φは(3)式として表される。
Φ=4πH/λ (3)
上記(1)式、(2)式及び(3)式より、0次回折光、1次回折光及び2次回折光の強度比が決定される。
【0007】
従って、逆に、0次回折光、1次回折光及び2次回折光の強度比より、溝幅と溝深さとを決定することができる。
図2は、スカラー回折理論を用いて、入射光の波長632.8nm、入射光の入射角45°で、溝周期p=1.6μmの測定物を測定したときの、溝幅W、溝深さH、(I1 /I0 )、及び(I2 /I1 )を表した図である。縦軸左側のスケールは溝幅Wを表しており、横軸下側のスケールは溝深さHを表している。それぞれの等高線については、かぎ括弧付きの数字で表されている方が(I1 /I0 )を、括弧のついていない数字で表されている方が(I2 /I1 )を表している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、(1)式、(2)式、(3)式及び図2から分かるように、溝幅W=溝深さp/2に関して対称である。即ち、溝幅がa(任意の数)のときとp−aのときとでは区別がつかない、或いは凹凸の識別ができないといったことを表している。例えば、溝周期p=1.6μmとした場合、溝幅W=0.4μmと溝幅W=1.2μmとでは同じ回折光を生じるため、回折光の測定から溝幅を一意に決定できない。
【0009】
溝幅がある程度狭い場合や広い場合は、溝幅が狭いか広いかが予め明らかであることが多いので特に問題にはならない。しかし、W≒p/2の場合は、W=p/2より狭いか広いかが判別できないことが普通であり、凹凸の識別ができないことが大きな問題となっていた。そのため、別の方法で決定せざるを得なかった。
【0010】
ところで、溝周期pや溝幅Wが波長程度になると、回折光強度がW=p/2に関して対称でなくなる等、スカラー回折理論からのずれが顕著になってくる。この様な場合、特開平1−285806号公報に開示されたように、ベクトル回折理論で回折計算を行う必要がある。
図3は、図2のときと同様に、入射光の波長632.8nm、入射光の入射角45°、溝周期W1.6μm、基板を完全導体、入射光の偏光面(電場の振動面)が溝に平行な条件として、ベクトル回折理論を用いて計算した場合の回折光強度比を表した図である。また、図3の見方は、図2と同様である。図2と比較すると、もはやW=p/2に関して対称ではなくなっていることが分かる。しかしながら、この様な場合でも、回折光から溝形状が一意に決まらないという不定性は、相変わらず残ったままである。例えば、図3でA点とB点とでは、同一の回折光強度比を与える。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、回折光のみを用いて、溝形状を一意に決定する方法及び装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するために、本発明では、入射光を測定物に入射させ、前記測定物から生じた回折光を利用して凹凸形状を測定する方法において、偏光面と前記測定物とのなす角度を変化させることにより得られる偏光方向の異なる複数の直線偏光を前記測定物に入射させ、該測定物からの回折光に基づいて前記直線偏光毎に導きだされた複数の凹凸形状のうち、全ての直線偏光に共通する凹凸形状を測定物の凹凸形状と決定することを特徴とする凹凸形状測定方法を提供する。
【0013】
また、上記目的を解決するために、本発明による別の態様では、光源と、前記光源から放射される光線によって測定される測定物と、前記測定物から生じた回折光を検出する検出器と、を有する凹凸形状測定装置において、前記光源から前記測定物の光路中に配置され、偏光面と前記測定物とのなす角度を変化させて偏光方向の異なる複数の直線偏光を形成する偏光手段と、
前記測定物からの回折光に基づいて前記直線偏光毎に複数の凹凸形状を導きだし、該複数の凹凸形状のうち全ての直線偏光に共通する凹凸形状を測定物の凹凸形状と決定する処理機構とを有することを特徴とする凹凸形状測定装置を提供する。
【0014】
【作用】
溝の周期や溝幅が波長程度になると、回折光強度が入射光の偏光状態に依存する現象が現れる。即ち、入射光を直線偏光とした場合、偏光方向が溝に平行か垂直かで発生する回折光強度が異なる。この入射条件の違いによる回折光強度を利用する。
【0015】
【実施例】
図4は、ベクトル回折理論によって、入射光の偏光面(電場の振動面)が溝に垂直な場合の回折光強度比を表した図であり、計算条件は図2及び図3を計算したときと同一である。
図3及び図4は、同一の溝形状であっても入射光の偏光方向によって回折光強度比が明らかに異なっていることを示している。そこで、先ず、入射光に直線偏光を用い、偏光面が溝に平行な場合(平行偏光入射)と溝に垂直な場合(垂直偏光入射)に対して回折光強度の測定を行う。次に、平行偏光入射で得られた複数の解と垂直偏光入射で得られた複数の解とを照合し、同一の解を選定する。この様にして選定された同一の解が、被測定物の溝形状であり、一意に溝形状を決定することが可能となる。
【0016】
例えば、平行偏光入射のときの回折光強度比の測定値が、
I1 /I0 =0.1 I2 /I1 =0.2 (3)
であったとすると、図3より、
W=0.662μm H=0.067μm (4)
W=1.110μm H=0.064μm (5)
の2組の解が得られる(図3中のA点及びB点)。
【0017】
また、垂直偏光入射のときの回折光強度比の測定値が、
I1 /I0 =0.2 I2 /I1 =0.1 (6)
であったとすると、図4より、
W=0.662μm H=0.067μm (7)
W=0.878μm H=0.071μm (8)
の2組の解が得られる(図4中のC点及びD点)。
【0018】
(4)、(5)と(7)、(8)とで同一の解は、(4)と(7)となる。よって、溝形状は、
W=0.662μm H=0.067μm (9)
と決定する。
上記実施例では、測定物である基板を完全導体と仮定している。もし、基板が完全導体でない場合、基板の屈折率を考慮した回折計算を行えば、精度は更に向上する。
【0019】
尚、仮に溝が狭いか広いかが予め分かっているような場合、偏光方向の異なる2つのデータをもちいて溝形状が推定できるため、特定の偏光を用いた従来の測定よりも測定精度を向上させることができる。
また、矩形溝に限らず、溝形状が台形の場合も、一般的に、矩形溝と同様に2つの異なる溝形状が同一の回折光に対応しているから、従来の様な回折光の測定からは、溝形状を一意に決定することができない。それどころか、台形溝の場合、溝形状を決定するには、溝幅と溝深さと溝斜面の傾きとの3つの変数が必要である。従来の方法で得られる測定データは2つであるから、台形溝形状を決定することは原理的に不可能であった。
【0020】
しかし、本発明で示す様に、2つの異なる回折光を用いれば、平行偏光入射の(I1 /I0 )及び(I2 /I1 )並びに垂直偏光入射の(I1 /I0 )及び(I2 /I1 )という4つの測定データを得ることができるから、3つの変数を有する台形溝の溝形状を一意に決定することができる。
以上の測定は、複数の偏光方向の入射光を用いれば更に精度を向上できる。例えば、入射光の偏光面と溝のなす角とをθとしたとき、θ=0°、30°、60°及び90°の4点で測定を行い、得られた8つの回折光強度比のデータから溝形状を決定すれば、更に精度が向上する。即ち、複数の偏光方向の入射光を用いることで、矩形或いは台形溝の形状を一意に且つ高精度で決定することができる。
【0021】
本発明による測定手段は溝が周期的に配列している場合のみならず、凹状或いは凸状の孤立溝に対しても有効である。つまり、孤立凹形状或いは孤立凸形状による散乱光束の強度分布が偏光依存性を示すことを利用することで、孤立凹形状溝或いは孤立凸形状溝を精度良く計測することが可能である。
また、本発明による測定手段は、図5に示す透過型(位相変調型)回折格子の溝形状測定に対しても有効である。この場合、直行する2種類の入射光、或いは、偏光状態の異なる複数個の入射光を用い、透過した回折光の光量から、溝形状を測定する。勿論、反射回折光量の測定から、溝形状を測定することもできる。
【0022】
また、以下に、図6を参照しながら、装置の実施例を説明する。
光源であるヘリウム−ネオン(He−Ne)レーザーから射出された波長632.8nmの直線偏光の入射光ILが、偏光手段の一部である1/2波長(λ)板2を透過し、測定物である基板3に入射する。尚、回折光強度を測定する前に、1/2λ板2とモーター6とで構成される偏光手段によって、測定物へ入射する偏光方向を決定しておく。ここでは、例えば、平行偏光入射とする。
【0023】
次に、検出器4を走査することによって、0次回折光DL0 、1次回折光DL1 及び2次回折光DL 2の強度が測定される。測定して得られたデータをもとに、CPU5によって平行偏光入射の(I1 /I0 )と(I2 /I1 )と溝幅Wと溝深さHとが計算され、CPU5のメモリー内に計算結果が蓄積される。続いて、偏光方向を変えるために、CPU5からモーター6に、1/2λ板2を所定の角度動かすように指示が出される。ここでは、偏光状態を90°回転させ、垂直偏光入射とするため、1/2λ板2を45°回転させる。
【0024】
そして、今度は、受光器4を、平行偏光入射のとき走査した方向とは逆向きに、走査する。これにより、再び0次回折光DL0 、1次回折光DL1 及び2次回折光DL 2の強度を測定する。測定データをもとに、CPU5によって、垂直偏光入射の(I1 /I0 )と(I2 /I1 )と溝幅Wと溝深さHとが計算される。最終的に、メモリー内に蓄積された平行偏光入射の溝幅Wと溝深さHとのデータと、先程計算された垂直偏光入射の溝幅Wと溝深さHとのデータとが、CPU5によって比較され、一致する解が選び出される。これにより、測定物の溝幅Wと溝深さHとが決定される。
【0025】
尚、光源は、He−Neレーザーに限らず、半導体レーザーや、アルゴンレーザー等、レーザー一般が使用できる。また、偏光手段としては、偏光方向の定まったレーザーなら、レーザー自体を直接回転させてもよく、半導体レーザーを用いるときは1/2λ板の代わりに偏光板を使用し、これら半導体レーザーと偏光板とを一体に回転させてもよい。また、モーターも特にモーターとは限らず動力手段なら何でも応用可能なことは、言うまでも無い。
【0026】
【効果】
上記のごとく、本発明によれば、入射条件の違いによる回折光強度を利用することにより、溝形状を一意に決定することができる。なおかつ、本発明による方法及び装置では、迅速に溝形状を決定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は測定器の概略図であり、図1(b)は溝形状の断面図である。
【図2】図2は、スカラー回折理論による回折光強度比を示した図である。
【図3】図3は、ベクトル回折理論による平行偏光入射の回折光強度比を示した図である。
【図4】図4は、ベクトル回折理論による垂直偏光入射の回折光強度比を示した図である。
【図5】図5は、透過型(位相変調型)回折格子の測定概略図である。
【図6】図6は、実施例における装置の概略図である。
【符号の説明】
1 光源
2 1/2λ板
3 基板
4 検出器
5 CPU
6 モーター
IL 入射光
DL 回折光
Claims (8)
- 入射光を測定物に入射させ、前記測定物から生じた回折光を利用して凹凸形状を測定する方法において、偏光面と前記測定物とのなす角度を変化させることにより得られる偏光方向の異なる複数の直線偏光を前記測定物に入射させ、該測定物からの回折光に基づいて前記直線偏光毎に導きだされた複数の凹凸形状のうち、全ての直線偏光に共通する凹凸形状を測定物の凹凸形状と決定することを特徴とする凹凸形状測定方法。
- 前記偏光方向の異なる複数の直線偏光は、偏光面が互いに直交する2つの直線偏光を含むことを特徴とする請求項1記載の凹凸形状測定方法。
- 前記偏光方向の異なる複数の直線偏光は、偏光面が前記測定物の溝に平行な直線偏光と、偏光面が前記測定物の溝に垂直な直線偏光とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の凹凸形状測定方法。
- 前記入射光は、レーザー光であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の凹凸形状測定方法。
- 光源と、前記光源から放射される光線によって測定される測定物と、前記測定物から生じた回折光を検出する検出器と、を有する凹凸形状測定装置において、前記光源から前記測定物の光路中に配置され、偏光面と前記測定物とのなす角度を変化させて偏光方向の異なる複数の直線偏光を形成する偏光手段と、
前記測定物からの回折光に基づいて前記直線偏光毎に複数の凹凸形状を導きだし、該複数の凹凸形状のうち全ての直線偏光に共通する凹凸形状を測定物の凹凸形状と決定する処理機構とを有することを特徴とする凹凸形状測定装置。 - 前記偏光方向の異なる複数の直線偏光は、偏光面が互いに直交する2つの直線偏光を含むことを特徴とする請求項5記載の凹凸形状測定装置。
- 前記偏光方向の異なる複数の直線偏光は、偏光面が前記測定物の溝に平行な直線偏光と、偏光面が前記測定物の溝に垂直な直線偏光を含むことを特徴とする請求項5又6記載の凹凸形状測定装置。
- 前記光源は、レーザー光源であることを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載の凹凸形状測定装置。
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JP15283295A JP3551551B2 (ja) | 1995-06-20 | 1995-06-20 | 凹凸形状測定方法及び測定装置 |
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