JP3549147B2 - 天然ガス用内燃機関の触媒劣化検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガス用内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスを浄化する触媒の劣化を検出する触媒劣化検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気通路に装着された触媒の下流側に設けた酸素濃度センサの出力に応じて機関に供給する混合気の空燃比をフィードバック制御し、その時の酸素濃度センサ出力の変化周期が判定基準値より短いときに触媒が劣化していると判定する触媒劣化検出装置において、前記判定基準値を触媒温度に応じて設定するようにしたものが、従来より知られている(特開平5−248227号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら内燃機関に供給する燃料として、ガソリンではなく圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas、以下「CNG」という)を用いる場合、上記従来の装置では以下のような問題があった。
【0004】
CNGの主成分はメタンであるが、メタンは触媒で酸化されにくいため、機関から排出される未燃メタンは触媒の下流側にも一部が排出される。そのとき、酸素濃度センサの電極温度が高いと、未燃メタンが電極付近で燃焼する反応(CH4+2O2→CO2+2H2O)が促進され、酸素が消費されるために、電極付近の酸素分圧が変化し、酸素濃度センサの出力電圧の変化周期が短くなる傾向を示す。図11は、この特性を示す図であり、温度T1、T2、T3は、T1<T2<T3なる関係を有する。この図から明らかなように酸素濃度センサ素子温TSO2が上昇するほど、周期TPRDが短くなる傾向を示す。
【0005】
上記従来の装置では、触媒温度に応じて劣化判定値を変更しているが、酸素濃度センサの温度は考慮していないため、CNGを燃料とする内燃機関に適用した場合には、触媒が劣化していないにもかかわらず、劣化していると誤判定する場合があった。
【0006】
本発明はこの問題を解決するためになされたものであり、CNGを燃料とする内燃機関の排気系に装着される触媒の劣化を正確に検出することができる触媒劣化検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、天然ガス用内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの浄化を行う触媒と、該触媒の下流側に設けられ、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、該酸素濃度検出手段の出力に応じて前記機関に供給する混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段と、該空燃比制御手段による空燃比フィードバック制御時の前記酸素濃度検出手段の出力の変化周期が、判定基準値より短いとき前記触媒が劣化していると判定する触媒劣化判定手段とを有する天然ガス用内燃機関の触媒劣化検出装置において、前記空燃比フィードバック制御時の前記酸素濃度検出手段の出力の最大値及び該最大値の平均値の少なくとも一方に応じて前記判定基準値を設定する判定基準値設定手段を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、空燃比フィードバック制御時の酸素濃度検出手段の出力の最大値及び該最大値の平均値の少なくとも一方に応じて判定基準値が設定される。図11に示すように酸素濃度検出手段の温度が上昇すると、酸素濃度検出手段の出力が低下するので、この出力に応じて判定基準値を設定することにより、酸素濃度検出手段の近傍におけるメタンの酸化の影響を排除して触媒の劣化を正確に検出することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る天然ガス用内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の全体構成図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力してエンジン制御用電子コントロールユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0011】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射の開弁時間が制御される。燃料噴射弁6は、燃料通路20を介して燃料であるCNGを貯蔵するCNGタンク22に接続されており、燃料通路20の途中には、燃料噴射弁6に供給するCNGの圧力を調整するプレッシャレギュレータ21が設けられている。
【0012】
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には吸気管内絶対圧(PBA)センサ7が設けられており、この絶対圧センサ7により電気信号に変換された絶対圧信号は前記ECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ8が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0013】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ9はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。エンジン回転数(NE)センサ10及びCRKセンサ11はエンジン1の図示しないカム軸周囲又はクランク軸周囲に取付けられている。エンジン回転数センサ10はエンジン1のクランク軸の180度回転毎に所定のクランク角度位置でパルス(以下「TDC信号パルス」という)を出力し、CRKセンサ11は所定のクランク角毎、例えば45度のクランク角度位置で信号パルス(以下「CRK信号パルス」という)を出力するものであり、これらの各信号パルスはECU5に供給される。
【0014】
排気管12には排気ガスを浄化する三元触媒(以下単に「触媒」という)13が設けられ、触媒13は、フロント触媒13aとリア触媒13bとから成る。触媒13の上流位置には、酸素濃度検出手段としての上流側O2センサ14が装着されているとともに、フロント触媒13aとリア触媒13bとの間には酸素濃度検出手段としての下流側O2センサ15が装着され、それぞれ排気ガス中の酸素濃度を検出してその検出値に応じた電気信号(PVO2,SVO2)がECU5に供給される。また触媒13にはその温度を検出する触媒温度(TCAT)センサ16が装着され、検出された触媒温度TCATに対応する電気信号がECUに供給される。
【0015】
なお、下流側O2センサ15は、リア触媒13bの下流側に装着してもよい。ECU5にはさらに、エンジン1が搭載された車両の速度を検出する車速センサ(VH)17、大気圧(PA)センサ18が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
【0016】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路5a、中央演算処理回路(以下「CPU」という)5b、CPU5bで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶手段5c、前記燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路5d等から構成される。
【0017】
CPU5bは、上述の各種エンジンパラメータ信号に基づいて、空燃比フィードバック制御領域や空燃比フィードバック制御を行わない複数の特定運転領域(以下「オープンループ制御領域」という)の種々のエンジン運転状態を判別するとともに、該判別されたエンジン運転状態に応じて、下記数式(1)に基づき、前記TDC信号パルスに同期する燃料噴射弁6の燃料噴射時間TOUTを演算する。
【0018】
TOUT=TIM×KO2×K1+K2 …(1)
ここに、TIMは基本燃料量、具体的には燃料噴射弁5の基本燃料噴射時間であり、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたTIマップを検索して決定される。TIマップは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに対応する運転状態において、エンジンに供給する混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。すなわち、基本燃料量TIMは、エンジンの吸入空気量(重量流量)にほぼ比例する値を有する。
【0019】
KO2は空燃比補正係数(以下、単に「補正係数」という)であり、空燃比フィードバック制御時、O2センサ14,15により検出された排気ガス中の酸素濃度に応じて求められ、さらにオープンループ制御領域では各運転領域に応じた値に設定される。
【0020】
K1及びK2は夫々各種エンジンパラメータ信号に応じて演算される他の補正係数および補正変数であり、エンジン運転状態に応じた燃費特性、エンジン加速特性等の諸特性の最適化が図れるような所定値に決定される。
【0021】
CPU5bは上述のようにして求めた燃料噴射時間TOUTに基づいて燃料噴射弁6を開弁させる駆動信号を出力回路5dを介して燃料噴射弁6に供給する。
【0022】
次に、触媒13の劣化判定(劣化モニタ)について説明する。
【0023】
この触媒13の劣化モニタを行う場合のフィードバック制御は下流側O2センサ15の出力SVO2のみに基づいて行われる。そして出力SVO2が所定の基準電圧SVREFに対してリーン側からリッチ側へ反転した時点から出力SVO2が逆方向に反転した時点までの時間TL、及び出力SVO2が基準電圧RVREFに対してリッチ側からリーン側へ反転した時点から出力SVO2が逆方向に反転した時点までの時間TRが計測され、これらの時間TL,TRに基づいて触媒13の劣化が判定される(図7参照)。
【0024】
図2及び3は、触媒劣化モニタ処理の全体構成を示すフローチャートであり、本処理はCPU5bで所定時間(例えば10msec)毎に実行される。
【0025】
ステップS101では、劣化モニタを実行するための前提条件(以下「前条件」という)が成立していることを「1」で示す前条件フラグFMCNDが「1」か否かを判別し、FMCND=0であるときは直ちに本処理を終了する。
【0026】
ここで図4を参照して、前条件判定処理(前条件フラグFMCNDの設定を行う処理)を説明する。
【0027】
先ず、ステップS21では、モニタ許可フラグFGO67が「1」か否かを判別する。このモニタ許可フラグFGO67は、触媒劣化モニタ以外の例えばO2センサ劣化モニタ、フュエル系異常モニタ等が実行中のとき「0」に設定され、他のモニタが実行されていないとき「1」に設定されるフラグである。モニタ許可フラグFGO67が「0」であって、他のモニタが実行中のときは、タイマtCATMに所定時間TCATMを設定してスタートさせ、前条件不成立(FMCND=0)とする。
【0028】
モニタ許可フラグFGO67が「1」であって触媒劣化モニタが許可されているときは、リミットフラグFKO2LMTが「1」か否かを判別する。リミットフラグFKO2LMTは、補正係数KO2が所定上限値又は下限値に所定時間以上貼り付いている(KO2リミット貼り付き状態の)とき「1」に設定されるフラグである。
【0029】
FKO2LMT=1であってKO2リミット貼り付き状態のときは、触媒劣化モニタの終了を「1」で示す終了フラグFDONEを「1」に設定して前記ステップS30に進む。
【0030】
FKO2LMT=0であってKO2リミット貼り付き状態でないときは、さらに吸気温TAが所定上下限値TACATCHKH(例えば100℃)、TACATCHKL(例えば−0.2℃)の範囲内にあるか否か、エンジン水温TWが所定上下限値TWCATCHKH(例えば100℃)、TWCATCHKL(例えば80℃)の範囲内にあるか否か、エンジン回転数NEが所定上下限値NECATCHKH(例えば3500rpm)、NECATCHKL(例えば1000rpm)の範囲内にあるか否か、吸気管内絶対圧PBAが所定上下限値PBCATCHKH(例えば510mmHg)、PBCATCHKL(例えば300mmHg)の範囲内にあるか否か、車速Vが所定上下限値VCATCHKH(例えば80km/h)、VCATCHKL(例えば32km/h)の範囲内にあるか否かを判別し(ステップS25)、これらの運転パラメータのすべてが所定上下限値の範囲内にあるときは、さらに触媒13の温度TCATが所定範囲(例えば350℃〜800℃)内にあるか否かを判別する(ステップS26)。この触媒温度TCATは、センサの検出値を用いるが、エンジン運転状態に応じて推定した温度値を用いてもよい。
【0031】
触媒温度TCATが所定範囲内にあるときはさらに、当該車両がクルーズ状態にあるか否かを判別する(ステップS27)。この判別は、例えば車速Vの変動が0.8km/sec以下の状態が所定時間(例えば2秒)継続したか否か判別することにより行う。そして車両がクルーズ状態あるときは、吸気管内絶対圧PBAの変動量ΔPB4(例えば5msecの間の変化量)が所定値PBCAT(例えば16mmHg)以下か否かを判別する(ステップS28)。ここで変動量ΔPB4が所定値PBCAT以下のときは、さらに上流側O2センサ出力PVO2に基づくフィードバック制御の実行中か否かを判別する(ステップS29)。
【0032】
そして、ステップS25〜S29のいずれかの答が否定(NO)のときは、前記ステップS30に進む一方、すべての答が肯定(YES)のとき、即ち運転状態が所定の状態となったときは、ステップS30でスタートしたタイマtCATMのカウント値が「0」か否かを判別する。最初はtCATM>0なので、前条件不成立となり(ステップS32)、運転状態が所定の状態となってから所定時間TCATM(例えば5秒)経過したとき、前条件成立と判定され、前条件フラグFMCNDを「1」に設定して(ステップS33)、本処理を終了する。
【0033】
図2に戻り、FMCND=1であって前条件が成立しているときは、終了フラグFDONEが「1」か否かを判別し(ステップS102)、FDONE=1であるときは直ちに本処理を終了する。FDONE=0であるときは、SVO2周期計測処理を実行する(ステップS103)。
【0034】
図6は、この周期計測処理のフローチャートであるが、FMCND=1かつFDONE=0であるときは、下流側O2センサ15の出力SVO2に応じて空燃比補正係数KO2を算出し、空燃比フィードバック制御を実行するので、先ず図5を参照して、KO2算出処理を説明する。
【0035】
図5のステップS41では、出力SVO2と基準電圧SVREFとの大小関係が反転したか否かを判別し、反転したときは、出力SVO2が基準電圧SVREFより低いか否かを判別する(ステップS42)。そして、SVO2<SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値にリッチ側スペシャルP項PRSPを加算する一方、SVO2>SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値からリーン側スペシャルP項を減算する比例制御を行う(ステップS43、S44)。
【0036】
ステップS41の答が否定(NO)のときは、出力SVO2が基準電圧SVREFより低いか否かを判別し(ステップS45)、SVO2<SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値にスペシャルI項IRSPを加算する一方、SVO2>SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値からスペシャルI項ILSPを減算する積分制御を行う(ステップS46、S47)。
【0037】
図5の処理により、下流側O2センサ出力SVO2及び補正係数KO2は図7に示すように周期的に変化する。以下センサ出力SVO2の変化周期を「SVO2周期」という。
【0038】
次に図6を参照して、SVO2周期計測処理を説明する。
【0039】
ステップS51では、本処理の最初の実行時であることを「0」で示す初期化フラグFCATMSTが「0」か否かを判別する。最初はFCATMST=0であるので、ステップS52に進み、このフラグFCATMSTを「1」に設定し、次いで各種パラメータの初期化を行う(ステップS53)。すなわち、周期の計測回数をカウントするカウンタnT、周期計測を開始したことを「1」で示す計測開始フラグFCATMON、時間TLの積算値TLSUM及び時間TRの積算値TRSUMをいずれも「0」に設定する。続くステップS54では、周期計測用アップカウントタイマtmSTRGをクリア(「0」に設定)し、ステップS55に進む。
【0040】
本処理の次回以降の実行時は、FCATMST=1であるので、ステップS51から直ちにステップS55に進む。
【0041】
ステップS55では、下流側O2センサ出力SVO2と基準電圧SVREFとの大小関係が反転したか否かを判別し、反転していないときは直ちに本処理を終了する。また反転したときは、計測開始フラグFCATMONが「1」か否かを判別し(ステップS56)、最初はFCATMON=0であるので、このフラグFCATMONを「1」に設定するとともに、計測管理フラグFCATMEASを「0」に設定して、ステップS64に進む。計測管理フラグFCATMEASは、時間TLまたはTRのどちらから計測を開始しても、偶数回の計測を実行する(すなわち、積算値TRSUMとTLSUMの演算を同じ回数行う)のために設けたフラグである。ステップS64では、タイマtmSTRGをクリアして本処理を終了する。
【0042】
ステップS56でFCATMON=1であるときは、出力SVO2が基準電圧SVREFより高いか否かを判別し(ステップS58)、SVO2>SVREFであるときは、積算値TRSUMの直前値にタイマtmSTRGの値を加算することにより積算値TRSUMを算出し(ステップS59)、SVO2<SVREFであるときは、積算値TLSUMの直前値にタイマtmSTRGの値を加算することにより積算値TLSUMを算出して(ステップS60)、ステップS61に進む。出力SVO2の反転直後のタイマtmSTRGの値は、図6に示すように、時間TL又はTRに相当するので、(TRSUM+TLSUM)がSVO2周期(センサ出力の反転周期)の積算値となる。
【0043】
ステップS61では、計測管理フラグFCATMEASが「1」か否かを判別する。最初はFCATMEAS=0であるので、このフラグFCATMEASを「1」に設定して(ステップS63)、前記ステップS64に進む。また、FCATMEAS=1であって、今回の計測が偶数回目のときは、カウンタnTを「1」だけインクリメントし、フラグFCATMEASを「0」に戻して(ステップS62)、前記ステップS64に進む。
【0044】
図2に戻り、ステップS104では、図8に示すSVO2MAX検出処理を実行する。この処理は、下流側O2センサ15の出力SVO2の最大値SVO2MAXを検出するとともにその積算値SVO2MAXIを算出する処理である。
【0045】
図8のステップS81では、本処理の最初の実行時であることを「0」で示す初期化フラグFMAXが「0」か否かを判別する。最初はFMAX=0であるので、ステップS82に進み、このフラグFMAXを「1」に設定し、次いで最大値SVO2MAXを検出した回数をカウントするカウンタnMAX、積算値SVO2MAXIをともに「0」に設定し(ステップS83)、ステップS84に進む。
【0046】
本処理の次回以降の実行時は、FMAX=1であるので、ステップS81から直ちにステップS84に進む。
【0047】
ステップS84では、下流側O2センサ出力の今回値SVO2(n)から前回値SVO2(n−1)を減算することにより、変化量DSVO2を算出し、次いで変化量DSVO2の符号が正かる負に変化したか否かを判別する(ステップS85)。この答が否定(NO)のときは直ちに本処理を終了し、肯定(YES)のときは、最大値SVO2MAXを前回値SVO2(n−1)に設定する(ステップS86)。次いで下記式により積算値SVO2MAXIを算出するとともに(ステップS87)、カウンタnMAXを「1」だけインクリメントして(ステップS88)、本処理を終了する。
【0048】
SVO2MAXI=SVO2MAXI+SVO2MAX
図2に戻り、ステップS105では、ステップS104で検出した最大値SVO2MAXが所定出力値SVO2MET以下か否かを判別する。所定出力値SVO2METは、図11に示すように、下流側O2センサ15の温度TSO2が低いとき(TSO2=T1(例えば400℃より低い温度))のセンサ出力の最大値(=約1.0V)と、温度TSO2が上昇したとき(TSO2=T2(例えば500℃))の最大値の中間程度の値に設定される。
【0049】
ステップS105でSVO2MAX≦SVO2METであって、温度TSO2が高いときは、下流側O2センサ15の近傍におけるメタンの酸化の影響が無視できない程度であることを「1」で示す酸化促進フラグFSO2METを「1」に設定し(ステップS107)、SVO2MAX>SVO2METであるときは、酸化促進フラグFSO2METを「0」に設定して(ステップS106)、ステップS108に進む。
【0050】
ステップS108ではカウンタnTの値、すなわち周期の計測回数が所定値NTLMT(例えば3)以上か否かを判別し、nT<NTLMTである間は直ちに本処理を終了する。このようにして、SVO2周期計測処理及びSVO2MAX検出処理が繰り返し実行され、nT=NTLMTとなるとステップS109に進む。
【0051】
ステップS109では下記数式(2)により、NTLMT回計測したSVO2周期の平均値として判定時間TCHKを算出する。なお、所定値NTLMTは「1」としてもよく、その場合には判定時間TCHKは計測値そのものである。
【0052】
本実施の形態においては、酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表するパラメータとして判定時間TCHKが用いられる。
【0053】
TCHK=(TLSUM+TRSUM)/nT …(2)
続くステップS110では、下記数式(3)により触媒13の酸素蓄積能力を表す第1の判定パラメータOSCINDEXを算出し、バッテリでバックアップされた(イグニッションスイッチをオフしても記憶内容が消えない)リングバッファに格納する。
【0054】
OSCINDEX=TCHK×GAIRSUM …(3)
ここで、GAIRSUMは、排気ガス流量を代表するパラメータの、SVO2周期計測期間中の積算値(以下「流量積算値」という)であり、図9の処理により算出される。図9の処理はTDC信号パルスの発生毎に実行される。
【0055】
同図のステップS71では、終了フラグFDONEが「1」か否かを判別し、FDONE=0であるときは、計測開始フラグFCATMONが「1」か否かを判別する(ステップS72)。そして、FDONE=1であって触媒劣化モニタが終了しているとき又はFCATMON=0であってSVO2周期の計測を開始していないときは、流量積算値GAIRSUMを「0」に設定して(ステップS73)、本処理を終了する。
【0056】
一方FDONE=0かつFCATMON=1であるときは、下記数式(4)により、流量積算値GAIRSUMを算出する(ステップS74)。
【0057】
GAIRSUM=GAIRSUM+TIM …(4)
ここで、右辺のGAIRSUMは前回算出値、TIMは前記数式(1)の基本燃料量である。基本燃料量TIMは前述したように吸入空気量に比例する値を有し、吸入空気量は排気ガス流量とほぼ等しいので、排気ガス流量を代表するパラメータとして用いている。これにより、吸入空気量センサ又は排気ガス流量センサを設けることなく、排気ガス流量の積算値に相当するパラメータを得ることができる。
【0058】
このようにして算出した流量積算値GAIRSUMを判定時間TCHKに乗算することにより判定パラメータOSCINDEXを算出し、これを用いて触媒の劣化判定を行うことより、エンジン運転状態の影響を受け難くなり、エンジン運転状態の広い範囲に亘って正確な劣化判定を行うことが可能となる。
【0059】
ここで、判定パラメータOSCINDEXにより触媒13の酸素蓄積能力、すなわち最大酸素蓄積量を正確に把握することができる理由を以下に説明する。
【0060】
図7においてセンサ出力SVO2が基準電圧SVREFより高い期間(TL)は、触媒に酸素が蓄積される期間であるが、このとき補正係数KO2は時間経過に対して直線的に減少するように制御されるので、排気ガス中の空気過剰率λは、時間に対してほぼ直線的に増加すると考えられる。したがって、排気ガス流量の積算値に対応する流量積算値GAIRSUMに判定時間TCHKを乗算することにより算出される判定パラメータOSCINDEXは、判定時間TCHKの期間中に触媒13に蓄積される酸素量に比例するパラメータとなる。なお、厳密には判定時間TCHKの約1/2が酸素を蓄積する期間であり、残りの約1/2が酸素を放出する期間であるが、判定パラメータOSCINDEXが、触媒13の酸素蓄積能力にほぼ比例するということにかわりはない。
【0061】
図2に戻り、ステップS111では、判定パラメータOSCINDEXの算出回数をカウントするカウンタndetectを「1」だけインクリメントする。このカウント値ndetectは、判定パラメータOSCINDEXと同様に、バッテリでバックアップされたメモリに格納される。
【0062】
続くステップS112では、ステップS110で算出した第1の判定パラメータOSCINDEXが第1の判定基準値LMTDC以上か否かを判別し、OSCINDEX≧LMTDCであるときは、直ちにステップS114に進む。またOSCINDEX<LMTDCであるときは、触媒13が劣化していると判定し、第1の判定(ステップS112)で劣化と判定したことを示すべく、第1のOKフラグFOKDCを「0」に設定するとともに第1の劣化フラグFNGDCを「1」に設定して(ステップS113)、ステップS114に進む。
【0063】
ステップS114では、カウント値ndetectが所定値nDC(例えば6)以上か否かを判別し、ndetect<nDCであるときは直ちに、またndetect≧nDCであるときはndetect=nDCとして(ステップS115)、ステップS121(図3)に進む。
【0064】
ステップS121では、下記数式(5)により、第1の判定パラメータOSCINDEXの移動平均値OSCMAを算出し、この移動平均値OSCMAを第2の判定パラメータとする。
【0065】
OSCMA={OSCINDEX(n)+OSCINDEX(n−1)+…+OSCINDEX(n−ndetect+1)}/ndetect…(5)
ここで、(n)は今回値を示し、(n−1)は前回値、(n−ndetect+1)は、(ndetect−1)回前の算出値を示す。なお、第1の判定パラメータOSCINDEXは、前述したようにバッテリでバックアップされたリングバッファに順次格納されている。また、OSCINDEXのリングバッファは、当初は「0」に初期化されており、算出値が格納されるとバッテリが取り外される等の事態が発生しない限り、過去の算出値が保持される。
【0066】
続くステップS122では、酸化促進フラグFSO2METが「1」であるか否かを判別し、FO2MET=1であって下流側O2センサ15の近傍におけるメタンの酸化の影響が無視できない程度であるときは、直ちにステップS128に進む。ステップS128では、カウント値ndetectに応じて図10に丸(○)で示すLMTMAMETテーブルを検索し、酸化促進時用の第2の判定基準値LMTMAMETを算出する。LMTMAMETテーブルは、カウント値ndetectが増加するほど第2の判定基準値LMTMAMETが減少するように(劣化と判定しにくくなる方向に)設定され、かつ後述する通常時用の第2の判定基準値LMTMANより小さい値に設定されている。続くステップS129では、第2の判定基準値LMTMAを、ステップS128で算出した酸化促進時用の第2の判定基準値LMTMAMETに設定してステップS130に進む。
【0067】
ステップS122でFSO2MET=0であるときは、下記式により、ステップS104で検出したO2センサ出力SVO2の最大値SVO2MAXの平均値SVO2MAXAVEを算出する(ステップS123)。
【0068】
SVO2MAXAVE=SVO2MAXI/nMAX
次いで平均値SVO2MAXAVEが、前記所定出力値SVO2MET以下か否かを判別し(ステップS124)、SVO2MAXAVE≦SVO2METであるときは、酸化促進フラグFSO2METを「1」に設定して(ステップS125)、前記ステップS128に進む一方、SVO2MAXAVE>SVO2METであるときは、メタンの酸化の影響は無視しうる程度であるので、ステップS126に進んで、カウント値ndetectに応じて図10に×で示すLMTMANテーブルを検索し、通常時用の第2の判定基準値LMTMANを算出する。LMTMNテーブルは、カウント値ndetectが増加するほど第2の判定基準値LMTMANが減少するように設定され、かつ前記酸化促進時用の第2の判定基準値LMTMAMETより大きい値に設定されている。続くステップS127では、第2の判定基準値LMTMAを、ステップS126で算出した通常時用の第2の判定基準値LMTMANに設定してステップS130に進む。
【0069】
なお、前記第1の判定基準値LMTDCは、ndetect=1のときの通常時用の第2の判定基準値LMTMAN(すなわち、第2の判定基準値LMTMAの中で最も劣化と判定し易い基準値)より小さな値(劣化と判定しにくい値)に設定されている。
【0070】
次いでステップS121で算出した第2の判定パラメータOSCMAが第2の判定基準値LMTMA以上か否かを判別し(ステップS130)、OSCMA≧LMTMAであるときは、正常と判定して、第2のOKフラグFOKMAを「1」に設定して(ステップS131)、ステップS133に進む。またOSCMA<LMTMAであるときは、触媒13が劣化していると判定し、第2のOKフラグFOKMAを「0」に設定するとともに第2の劣化フラグFNGMAを「1」に設定して(ステップS132)、ステップS133に進む。ステップS133では、劣化モニタの終了を示すべく終了フラグFDONE=1に設定して、本処理を終了する。
【0071】
図2の処理は、イグニッションスイッチがオンされると所定時間毎に実行されるが、エンジンが始動されてステップS108からS133の処理が1回実行されると、以後はステップS108からS133処理は実行されなくなる。その後エンジンが停止され、再度始動されると、またステップS108からS133の判定処理が1回実行される。すなわち、イグニッションスイッチがオンされから、エンジンが始動され、停止するまでの期間を1運転期間とすると、1運転期間に1回劣化判定が実行される。そして、本実施形態では、図示しない処理により、第1の劣化フラグFNGDCが2回連続して「1」となったとき、または第2の劣化フラグFNGMAが2回連続して「1」となったとき、劣化判定を確定し、運転者に触媒の劣化を警告するランプを点灯させるようにしている。これ以外の場合は、警告ランプを点灯させない。
【0072】
以上のように、本実施形態では、下流側O2センサ15の出力SVO2の最大値SVO2MAXまたは最大値SVO2MAXの平均値SVO2MAXAVEが、所定出力値SVO2MET以下であって下流側O2センサ15の近傍におけるメタンの酸化の影響が無視できない程度であるとき、すなわち第2の劣化判定パラメータOSCMAが触媒13が正常であっても減少する傾向を示すときは、第2の判定基準値LMTMAをより小さな値(LMTMAMET)に変更するようにしたので、触媒13が正常であるに劣化していると誤判定することを防止し、より正確な劣化検出を行うことができる。
【0073】
また、ステップS112で、第1の判定パラメータOSCINDEXの今回算出値による劣化判定を行うことにより、第2の判定パラメータOSCMAによる判定ではすぐに検出されないおそれのある突然の劣化(例えば失火に起因する異常燃焼による劣化、質の悪い燃料に起因する被毒による劣化など)をも早急に検出することが可能となる。すなわち、第2の判定パラメータOSCMAは、移動平均値であるので、第1の判定パラメータOSCINDEXの過去値が正常で、今回のみ劣化を示すような値に低下したときは、OSCMA値はそれほど低下しないため、サンプルの回数が増えないとその突然の劣化を検出できない可能性があるが、ステップS112の判定により、そのような劣化も早急に検出することができる。
【0074】
本実施形態では、図5の処理が空燃比制御手段に相当し、図2、3のステップS103、S109、S110、S111、S121、S130〜S132が触媒劣化判定手段に相当し、ステップS104〜S107、S122〜S129が判定基準値設定手段に相当する。
【0075】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、下流側O2センサ15の出力SVO2の最大値SVO2MAXの平均値SVO2MAXAVEを用いて、メタンの酸化促進の影響を判定する(ステップS124)ようにしたが、センサ出力SVO2そのものの平均値SVO2AVEを用いて判定するようにしてもよい。ただし、最大値の平均値SVO2MAXAVEを用いる方が、センサ出力SVO2の変化特性、すなわちデューティ(高レベルである期間と低レベルである期間の比率)の影響を受けないので、より正確な判定を行うことができる。
【0076】
また、図2のステップS105の判定閾値と、図3のステップS124の判定閾値を、同一の所定出力値SVO2METとしたが、異なる判定閾値を使用してもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、空燃比フィードバック制御時の酸素濃度検出手段の出力の最大値及び該最大値の平均値の少なくとも一方に応じて、触媒の劣化判定に使用する判定基準値が設定されるので、酸素濃度検出手段の近傍におけるメタンの酸化の影響を排除して触媒の劣化を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる天然ガス用内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】触媒の劣化判定を行う処理のフローチャートである。
【図3】触媒の劣化判定を行う処理のフローチャートである。
【図4】触媒の劣化判定を行うための前提条件を判定する処理のフローチャートである。
【図5】触媒の劣化判定処理中において空燃比補正係数(KO2)を算出する処理のフローチャートである。
【図6】触媒下流側にO2センサの出力の変化周期を計測する処理のフローチャートである。
【図7】空燃比補正係数及びO2センサ出力の推移を示す図である。
【図8】O2センサ出力の最大値を検出する処理のフローチャートである。
【図9】排気ガス流量を代表するパラメータの積算値(GAIRSUM)を算出する処理のフローチャートである。
【図10】図3の処理で使用するテーブルを示す図である。
【図11】O2センサの温度とO2センサの出力特性との関係を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
1 天然ガス用内燃機関
5 電子コントロールユニット(ECU)(空燃比制御手段、触媒劣化判定手段、判定基準値設定手段)
6 燃料噴射弁
12 排気管
13 三元触媒
15 下流側O2センサ(酸素濃度検出手段)
Claims (1)
- 天然ガス用内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの浄化を行う触媒と、該触媒の下流側に設けられ、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、該酸素濃度検出手段の出力に応じて前記機関に供給する混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段と、該空燃比制御手段による空燃比フィードバック制御時の前記酸素濃度検出手段の出力の変化周期が、判定基準値より短いとき前記触媒が劣化していると判定する触媒劣化判定手段とを有する天然ガス用内燃機関の触媒劣化検出装置において、
前記空燃比フィードバック制御時の前記酸素濃度検出手段の出力の最大値及び該最大値の平均値の少なくとも一方に応じて前記判定基準値を設定する判定基準値設定手段を有することを特徴とする天然ガス用内燃機関の触媒劣化検出装置。
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