JP3624586B2 - 内燃機関の触媒劣化判定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスを浄化する触媒の劣化を判定する触媒劣化判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気ガスを浄化する触媒の劣化を判定する手法として、機関の排気通路に装着された触媒の下流側に設けた酸素濃度センサの出力に応じて機関に供給する混合気の空燃比をフィードバック制御し、そのときの酸素濃度センサ出力の反転周期を計測し、該計測した反転周期を用いて触媒の劣化判定を行う手法(例えば特開平5−106494号公報)が従来より知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の手法では、計測した反転周期をそのまま判定基準値と比較して劣化判定を行っているので、計測時の機関運転状態による計測の誤差が出てしまい、判定精度の点で改善の余地があった。
【0004】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、触媒の劣化状態をより高精度に判定することができる触媒劣化判定装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置は、内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの浄化を行う触媒手段と、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、該酸素濃度検出手段の出力に応じて前記機関に供給する混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段と、該空燃比制御手段による空燃比制御時の前記酸素濃度検出手段の出力に基づいて前記触媒手段の劣化を判定する触媒劣化判定手段とを備えた内燃機関の触媒劣化判定装置において、前記触媒劣化判定手段は、所定の診断期間で前記酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表する周期パラメータを計測する計測手段と、該計測手段により異なる前記診断期間で計測された複数の前記周期パラメータの平均値を算出する平均値算出手段と、前記複数の周期パラメータの標準偏差を算出する標準偏差算出手段と、該算出された標準偏差に応じた監視域を前記平均値算出手段により算出された平均値が越える場合、劣化指標を更新する劣化指標更新手段とを備え、該更新される劣化指標に基づいて前記劣化判定を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置は、請求項1記載の内燃機関の触媒劣化判定装置において前記劣化指標更新手段により更新される劣化指標に基づいて前記監視域を更新する監視域更新手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置では、請求項1記載の内燃機関の触媒劣化判定装置において前記劣化指標更新手段は、前記平均値算出手段により算出された平均値と前記劣化指標との差分に所定係数を乗算し、該乗算した値を加算することにより前記劣化指標を更新する際、前記所定係数を値1未満に設定することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置では、請求項1記載の内燃機関の触媒劣化判定装置において前記平均値は移動平均により算出されることを特徴とする。
【0009】
本発明では、酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表する周期パラメータが所定の診断領域において計測され、異なる診断期間において計測された周期パラメータを平均化することにより平均値が算出され、該算出された平均値が監視域を越える場合、劣化指標を更新し、更新される劣化指標に基づいて触媒の劣化判定が行われる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の全体構成図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力してエンジン制御用電子コントロールユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0012】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射の開弁時間が制御される。
【0013】
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には吸気管内絶対圧(PBA)センサ7が設けられており、この絶対圧センサ7により電気信号に変換された絶対圧信号は前記ECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ8が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0014】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ9はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。エンジン回転数(NE)センサ10及びCRKセンサ11はエンジン1の図示しないカム軸周囲又はクランク軸周囲に取付けられている。エンジン回転数センサ10はエンジン1のクランク軸の180度回転毎に所定のクランク角度位置でパルス(以下「TDC信号パルス」という)を出力し、CRKセンサ11は所定のクランク角毎、例えば45度のクランク角度位置で信号パルス(以下「CRK信号パルス」という)を出力するものであり、これらの各信号パルスはECU5に供給される。
【0015】
排気管12には排気ガスを浄化する三元触媒(以下単に「触媒」という)13が設けられ、触媒13は、フロント触媒13aとリア触媒13bとから成る。触媒13の上流位置には、酸素濃度検出手段としての上流側O2センサ14が装着されているとともに、フロント触媒13aとリア触媒13bとの間には酸素濃度検出手段としての下流側O2センサ15が装着され、それぞれ排気ガス中の酸素濃度を検出してその検出値に応じた電気信号(PVO2,SVO2)がECU5に供給される。また触媒13にはその温度を検出する触媒温度(TCAT)センサ16が装着され、検出された触媒温度TCATに対応する電気信号がECUに供給される。
【0016】
なお、下流側O2センサ15は、リア触媒13bの下流側に装着してもよい。
【0017】
ECU5にはさらに、エンジン1が搭載された車両の速度を検出する車速センサ(VH)17、大気圧(PA)センサ18が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
【0018】
吸気管2には、通路19を介して燃料タンクで発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタ(図示せず)が接続されており、通路19の途中にパージ制御弁20が配設されている。パージ制御弁20は、ECU5に接続されており、ECU5によりその開閉が制御される。パージ制御弁20は、エンジン1の所定運転状態において開弁され、キャニスタに貯蔵された蒸発燃料を吸気管2に供給する。
【0019】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路5a、中央演算処理回路(以下「CPU」という)5b、CPU5bで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶手段5c、前記燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路5d等から構成される。
【0020】
CPU5bは、上述の各種エンジンパラメータ信号に基づいて、空燃比フィードバック制御領域や空燃比フィードバック制御を行わない複数の特定運転領域(以下「オープンループ制御領域」という)の種々のエンジン運転状態を判別するとともに、該判別されたエンジン運転状態に応じて、下記数式(1)に基づき、前記TDC信号パルスに同期する燃料噴射弁6の燃料噴射時間TOUTを演算する。
【0021】
TOUT=TIM×KO2×K1+K2 …(1)
ここに、TIMは基本燃料量、具体的には燃料噴射弁5の基本燃料噴射時間であり、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたTIマップを検索して決定される。TIマップは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに対応する運転状態において、エンジンに供給する混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。すなわち、基本燃料量TIMは、エンジンの吸入空気量(重量流量)にほぼ比例する値を有する。
【0022】
KO2は空燃比補正係数(以下、単に「補正係数」という)であり、空燃比フィードバック制御時、O2センサ14,15により検出された排気ガス中の酸素濃度に応じて求められ、さらにオープンループ制御領域では各運転領域に応じた値に設定される。
【0023】
K1及びK2は夫々各種エンジンパラメータ信号に応じて演算される他の補正係数および補正変数であり、エンジン運転状態に応じた燃費特性、エンジン加速特性等の諸特性の最適化が図れるような所定値に決定される。
【0024】
CPU5bは上述のようにして求めた燃料噴射時間TOUTに基づいて燃料噴射弁6を開弁させる駆動信号を出力回路5dを介して燃料噴射弁6に供給するとともに、エンジン運転状態に応じたパージ制御弁20の開閉制御を行う。
【0025】
次に、触媒13の劣化判定(劣化モニタ)について説明する。
【0026】
この触媒13の劣化モニタを行う場合のフィードバック制御は下流側O2センサ15の出力SVO2のみに基づいて行われる。そして出力SVO2が所定の基準電圧SVREFに対してリーン側からリッチ側へ反転した時点から出力SVO2が逆方向に反転した時点までの時間TL、及び出力SVO2が基準電圧RVREFに対してリッチ側からリーン側へ反転した時点から出力SVO2が逆方向に反転した時点までの時間TRが計測され、これらの時間TL,TRに基づいて触媒13の劣化が判定される(図6参照)。
【0027】
図2は、触媒劣化モニタ処理の全体構成を示すフローチャートであり、本処理はCPU5bで所定時間(例えば10msec)毎に実行される。
【0028】
ステップS1では、劣化モニタを実行するための前提条件(以下「前条件」という)が成立していることを「1」で示す前条件フラグFMCNDが「1」か否かを判別し、FMCND=0であるときは直ちに本処理を終了する。
【0029】
ここで図3を参照して、前条件判定処理(前条件フラグFMCNDの設定を行う処理)を説明する。
【0030】
先ず、ステップS21では、モニタ許可フラグFGO67が「1」か否かを判別する。このモニタ許可フラグFGO67は、触媒劣化モニタ以外の例えばO2センサ劣化モニタ、蒸発燃料排出抑止系故障モニタ、フュエル系異常モニタ等が実行中のとき「0」に設定され、他のモニタが実行されていないとき「1」に設定されるフラグである。モニタ許可フラグFGO67が「0」であって、他のモニタが実行中のときは、タイマtCATMに所定時間TCATMを設定してスタートさせ、前条件不成立(FMCND=0)とする。
【0031】
モニタ許可フラグFGO67が「1」であって触媒劣化モニタが許可されているときは、キャニスタから吸気管2への蒸発燃料のパージをカットすべき運転状態のとき「1」に設定されるパージカットフラグFPGSCNTが「1」か否かを判別し(ステップS22)、FPGSCNT=1であってパージカットすべき運転状態のときは、前記ステップS30、S32に進み、前条件不成立とする。FPGCNT=0のときは、リミットフラグFKO2LMTが「1」か否かを判別する。リミットフラグFKO2LMTは、補正係数KO2が所定上限値又は下限値に所定時間以上貼り付いている(KO2リミット貼り付き状態の)とき「1」に設定されるフラグである。
【0032】
FKO2LMT=1であってKO2リミット貼り付き状態のときは、触媒劣化モニタの終了を「1」で示す終了フラグFDONEを「1」に設定して前記ステップS30に進む。
【0033】
FKO2LMT=0であってKO2リミット貼り付き状態でないときは、さらに吸気温TAが所定上下限値TACATCHKH(例えば100℃)、TACATCHKL(例えば−0.2℃)の範囲内にあるか否か、エンジン水温TWが所定上下限値TWCATCHKH(例えば100℃)、TWCATCHKL(例えば80℃)の範囲内にあるか否か、エンジン回転数NEが所定上下限値NECATCHKH(例えば3500rpm)、NECATCHKL(例えば1000rpm)の範囲内にあるか否か、吸気管内絶対圧PBAが所定上下限値PBCATCHKH(例えば510mmHg)、PBCATCHKL(例えば300mmHg)の範囲内にあるか否か、車速Vが所定上下限値VCATCHKH(例えば80km/h)、VCATCHKL(例えば32km/h)の範囲内にあるか否かを判別し(ステップS25)、これらの運転パラメータのすべてが所定上下限値の範囲内にあるときは、さらに触媒13の温度TCATが所定範囲(例えば350℃〜800℃)内にあるか否かを判別する(ステップS26)。この触媒温度TCATは、センサの検出値を用いるが、エンジン運転状態に応じて推定した温度値を用いてもよい。
【0034】
触媒温度TCATが所定範囲内にあるときはさらに、当該車両がクルーズ状態にあるか否かを判別する(ステップS27)。この判別は、例えば車速Vの変動が0.8km/sec以下の状態が所定時間(例えば2秒)継続したか否か判別することにより行う。そして車両がクルーズ状態にあるときは、吸気管内絶対圧PBAの変動量ΔPBA(例えば5msecの間の変化量)が所定値PBCAT(例えば16mmHg)以下か否かを判別する(ステップS28)。ここで変動量ΔPBAが所定値PBCAT以下のときは、さらに上流側O2センサ出力PVO2に基づくフィードバック制御の実行中か否かを判別する(ステップS29)。
【0035】
そして、ステップS25〜S29のいずれかの答が否定(NO)のときは、前記ステップS30に進む一方、すべての答が肯定(YES)のとき、即ち運転状態が所定の状態となったときは、ステップS30でスタートしたタイマtCATMのカウント値が「0」か否かを判別する(ステップS31)。最初はtCATM>0なので、前条件不成立となり(ステップS32)、運転状態が所定の状態となってから所定時間TCATM(例えば5秒)経過したとき、前条件成立と判定され、前条件フラグFMCNDを「1」に設定して(ステップS33)、本処理を終了する。
【0036】
図2に戻り、FMCND=1であって前条件が成立しているときは、終了フラグFDONEが「1」か否かを判別し、FDONE=1であるときは直ちに本処理を終了する。FDONE=0であるときは、SVO2周期計測処理を実行する(ステップS3)。
【0037】
図5は、この周期計測処理のフローチャートであるが、FMCND=1かつFDONE=0であるときは、下流側O2センサ15の出力SVO2に応じて空燃比補正係数KO2を算出し、空燃比フィードバック制御を実行するので、先ず図4を算出して、KO2算出処理を説明する。
【0038】
図4のステップS41では、出力SVO2と基準電圧SVREFとの大小関係が反転したか否かを判別し、反転したときは、出力SVO2が基準電圧SVREFより低いか否かを判別する(ステップS42)。そして、SVO2<SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値にリッチ側スペシャルP項PRSPを加算する一方、SVO2≧SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値からリーン側スペシャルP項を減算する比例制御を行う(ステップS43、S44)。
【0039】
ステップS41の答が否定(NO)のときは、出力SVO2が基準電圧SVREFより低いか否かを判別し(ステップS45)、SVO2<SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値にスペシャルI項IRSPを加算する一方、SVO2>SVREFであるときは、補正係数KO2の直前値からスペシャルI項ILSPを減算する積分制御を行う(ステップS46、S47)。
【0040】
図4の処理により、下流側O2センサ出力SVO2及び補正係数KO2は図6に示すように周期的に変化する。以下センサ出力SVO2の変化周期を「SVO2周期」という。
【0041】
次に図5を参照して、SVO2周期計測処理を説明する。
【0042】
ステップS51では、本処理の最初の実行時であることを「0」で示す初期化フラグFCATMSTが「0」か否かを判別する。最初はFCATMST=0であるので、ステップS52に進み、このフラグFCATMSTを「1」に設定し、次いで各種パラメータの初期化を行う(ステップS53)。すなわち、周期の計測回数をカウントするカウンタnT、周期計測を開始したことを「1」で示す計測開始フラグFCATMON、時間TLの積算値TLSUM及び時間TRの積算値TRSUMをいずれも「0」に設定する。続くステップS54では、周期計測用アップカウントタイマtmSTRGをクリア(「0」に設定)し、ステップS55に進む。
【0043】
本処理の次回以降の実行時は、FCATMST=1であるので、ステップS51から直ちにステップS55に進む。
【0044】
ステップS55では、下流側O2センサ出力SVO2と基準電圧SVREFとの大小関係が反転したか否かを判別し、反転していないときは直ちに本処理を終了する。また反転したときは、計測開始フラグFCATMONが「1」か否かを判別し(ステップS56)、最初はFCATMON=0であるので、このフラグFCATMONを「1」に設定するとともに、計測管理フラグFCATMEASを「0」に設定して、ステップS64に進む。計測管理フラグFCATMEASは、時間TLまたはTRのどちらから計測を開始しても、偶数回の計測を実行する(すなわち、積算値TRSUMとTLSUMの演算を同じ回数行う)ために設けたフラグである。ステップS64では、タイマtmSTRGをクリアして本処理を終了する。
【0045】
ステップS56でFCATMON=1であるときは、出力SVO2が基準電圧SVREFより高いか否かを判別し(ステップS58)、SVO2>SVREFでないときは、積算値TRSUMの直前値にタイマtmSTRGの値を加算することにより積算値TRSUMを算出し(ステップS59)、SVO2>SVREFであるときは、積算値TLSUMの直前値にタイマtmSTRGの値を加算することにより積算値TLSUMを算出して(ステップS60)、ステップS61に進む。出力SVO2の反転直後のタイマtmSTRGの値は、図6に示すように、時間TL又はTRに相当するので、(TRSUM+TLSUM)がSVO2周期(センサ出力の反転周期)の積算値となる。
【0046】
ステップS61では、計測管理フラグFCATMEASが「1」か否かを判別する。最初はFCATMEAS=0であるので、このフラグFCATMEASを「1」に設定して(ステップS63)、前記ステップS64に進む。また、FCATMEAS=1であって、今回の計測が偶数回目のときは、カウンタnTを「1」だけインクリメントし、フラグFCATMEASを「0」に戻して(ステップS62)、前記ステップS64に進む。
【0047】
図2に戻り、ステップS4ではカウンタnTの値、すなわち周期の計測回数が所定値NTLMT(例えば3)以上か否かを判別し、nT<NTLMTである間は直ちに本処理を終了する。このようにして、SVO2周期計測処理が繰り返し実行され、nT=NTLMTとなるとステップS5に進む。
【0048】
ステップS5では下記数式(2)により、NTLMT回計測したSVO2周期の平均値として判定時間TCHKを算出する。なお、所定値NTLMTは「1」としてもよく、その場合には判定時間TCHKは計測値そのものである。
【0049】
本実施の形態においては、酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表するパラメータとして判定時間TCHKが用いられる。
【0050】
TCHK=(TLSUM+TRSUM)/nT …(2)
続くステップS6では、下記数式(3)により触媒13の酸素蓄積能力を表す第1の判定パラメータOSCINDEX(本発明の周期パラメータに相当する)を算出し、バッテリでバックアップされた(イグニッションスイッチをオフしても記憶内容が消えない)リングバッファに格納する。
【0051】
OSCINDEX=TCHK×GAIRSUM …(3)
ここで、GAIRSUMは、排気ガス流量を代表するパラメータの、SVO2周期計測期間中の積算値(以下「流量積算値」という)であり、図7の処理により算出される。図7の処理はTDC信号パルスの発生毎に実行される。
【0052】
同図のステップS71では、終了フラグFDONEが「1」か否かを判別し、FDONE=0であるときは、計測開始フラグFCATMONが「1」か否かを判別する(ステップS72)。そして、FDONE=1であって触媒劣化モニタが終了しているとき又はFCATMON=0であってSVO2周期の計測を開始していないときは、流量積算値GAIRSUMを「0」に設定して(ステップS73)、本処理を終了する。
【0053】
一方FDONE=0かつFCATMON=1であるときは、下記数式(4)により、流量積算値GAIRSUMを算出する(ステップS74)。
【0054】
GAIRSUM=GAIRSUM+TIM …(4)
ここで、右辺のGAIRSUMは前回算出値、TIMは前記数式(1)の基本燃料量である。基本燃料量TIMは前述したように吸入空気量に比例する値を有し、吸入空気量は排気ガス流量とほぼ等しいので、排気ガス流量を代表するパラメータとして用いている。これにより、吸入空気量センサ又は排気ガス流量センサを設けることなく、排気ガス流量の積算値に相当するパラメータを得ることができる。
【0055】
このようにして算出した流量積算値GAIRSUMを判定時間TCHKに乗算することにより第1の判定パラメータOSCINDEXを算出し、これを用いて触媒の劣化判定を行うことより、エンジン運転状態の影響を受け難くなり、エンジン運転状態の広い範囲に亘って正確な劣化判定を行うことが可能となる。すなわち、触媒の酸素蓄積能力が同一でも、排気ガス流量が大きいほど、上記判定時間TCHKは短くなる傾向があり、従来の手法では判定時間TCHKを所定基準値と比較して、触媒の劣化を判定してしていたため、劣化判定を行うエンジン運転状態を比較的狭い範囲に限定する必要があったが、本実施形態によれば、排気ガス流量の変化を加味して判定されるので、上記効果を得ることができる。
【0056】
ここで、第1の判定パラメータOSCINDEXにより触媒13の酸素蓄積能力、すなわち最大酸素蓄積量を正確に把握することができる理由を以下に説明する。
【0057】
図6においてセンサ出力SVO2が基準電圧SVREFより高い期間(TL)は、触媒に酸素が蓄積される期間であるが、このとき補正係数KO2は時間経過に対して直線的に減少するように制御されるので、排気ガス中の空気過剰率λは、時間に対してほぼ直線的に増加すると考えられる。したがって、排気ガス流量の積算値に対応する流量積算値GAIRSUMに判定時間TCHKを乗算することにより算出される第1の判定パラメータOSCINDEXは、判定時間TCHKの期間中に触媒13に蓄積される酸素量に比例するパラメータとなる。なお、厳密には判定時間TCHKの約1/2が酸素を蓄積する期間であり、残りの約1/2が酸素を放出する期間であるが、第1の判定パラメータOSCINDEXが触媒13の酸素蓄積能力にほぼ比例するということにかわりはない。
【0058】
図2に戻り、ステップS7では、第1の判定パラメータOSCINDEXの算出回数をカウントするカウンタndetectを「1」だけインクリメントする。このカウント値ndetectは、第1の判定パラメータOSCINDEXと同様に、バッテリでバックアップされたメモリに格納される。
【0059】
続くステップS9では、ステップS6で算出した第1の判定パラメータOSCINDEXが第1の判定基準値LMTDC以上か否かを判別し、OSCINDEX≧LMTDCであるときは、直ちにステップS11に進む。またOSCINDEX<LMTDCであるときは、触媒13が劣化していると判定し、第1の判定(ステップS9)で劣化と判定したことを示すべく、第1のOKフラグFOKDCを「0」に設定するとともに第1の劣化フラグFNGDCを「1」に設定して(ステップS10)、ステップS11に進む。
【0060】
ステップS11では、カウント値ndetectが所定値nDC(例えば6)以上か否かを判別し、ndetect<nDCであるときは直ちに、またndetect≧nDCであるときはndetect=nDCとして(ステップS12)、ステップS13に進む。
【0061】
ステップS13では、下記数式(5)により、第1の判定パラメータOSCINDEXの移動平均値OSCMAを算出する。
【0062】
Figure 0003624586
ここで、(n)は今回値を示し、(n−1)は前回値、(n−ndetect+1)は、(ndetect−1)回前の算出値を示す。なお、第1の判定パラメータOSCINDEXは、前述したようにバッテリでバックアップされたリングバッファに順次格納されている。また、OSCINDEXのリングバッファは、当初は「0」に初期化されており、算出値が格納されるとバッテリが取り外される等の事態が発生しない限り、過去の算出値が保持される。
【0063】
ステップS13Aでは、移動平均値OSCMAの中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSC(本発明の劣化指標に相当する)を算出する。図9は移動平均値OSCMAの中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSCを算出する処理手順を示すフローチャートである。まず、第1の判定パラメータOSCINDEXの算出回数をカウントするカウンタndetectが所定値nDC(例えば、値6)以上であるか否かを判別する(ステップS81)。カウンタndetectが所定値nDC未満である場合、そのまま処理を終了する。
【0064】
一方、カウンタndetectが所定値nDC以上である場合、第1の判定パラメータOSCINDEXの標準偏差MASTDEVを下記数式(6)により算出する(ステップS82)。
【0065】
Figure 0003624586
ここで、本処理が最初に行われる場合、監視域の上限値EVLMTHiは初期値としてステップS13で算出された移動平均値OSCMAに上記標準偏差MASTDEVを加算した値に設定され、同様に監視域の下限値EVLMTLoは初期値として移動平均値OSCMAから標準偏差MASTDEVを減算した値に設定される。
【0066】
ステップS13で算出された移動平均値OSCMAが監視域内に入っているか否かを判別する(ステップS83)。移動平均値OSCMAが監視域内に入っている場合、そのまま処理を終了する。一方、移動平均値OSCMAが監視域内に入っていない場合、移動平均値OSCMAの中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSCを下記数式7により更新する(ステップS84)。
【0067】
Figure 0003624586
ここで、第2の判定パラメータMROSCは当初「0」に初期化されており、算出値が格納されるとバッテリが取り外される等の事態が発生しない限り、過去の算出値が保持される。MROSC(−1)はMROSCの前回値を示す。Kは偏差加重率を示し、値0.6〜0.8の範囲に設定されることが望ましい。
【0068】
つづいて、ステップS84で更新された第2の判定パラメータMROSCおよびステップS82で算出された標準偏差MASTDEVを用いて、監視域の上限値EVLMTHiおよび下限値EVLMTLoを下記数式8により更新する(ステップS85)。
【0069】
Figure 0003624586
ここで、σは標準偏差加重率であり、値1.0〜2.0の範囲に設定されることが望ましい。
【0070】
図10は第2の判定パラメータMROSCおよび監視域の上下限値EVLMTHi,EVLMTLoの更新を示す図である。移動平均値OSCMAが下限値EVLMTLoより小さくなると(図中a)、第2の判定パラメータMROSCおよび上下限値EVLMTHi,EVLMTLoはそれぞれ前回よりも小さな値(図中、New MROSC,New EVLMTHi,New EVLMTLo)に更新される。
【0071】
図11は偏差加重率K=1の場合の移動平均値OSCMAおよび第2の判定パラメータMROSCの変化を示すグラフである。同図は所定値nDC=6の少区間、つまり第1の判定パラメータOSCINDEXの算出回数が「6」である区間で移動平均を行った場合を示す。少区間の移動平均値OSCMAは多区間(例えば、所定値nDC=20)の移動平均値OSCMAと比べて変動が大きくなるが、その中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSCは区間の多寡に拘らずほぼ同じ推移を示すようになる。
【0072】
図12は偏差加重率K=0.6の場合の移動平均値OSCMAおよび第2の判定パラメータMROSCの変化を示すグラフである。同図は所定値nDC=6の少区間で移動平均を行った場合を示す。偏差加重率K=0.6の場合、移動平均値OSCMAの中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSCは偏差加重率K=1の場合と同様に区間の多寡に拘らずほぼ同じように推移し、しかも、その変動は偏差加重率K=1の場合より小さくなる。
【0073】
続くステップS14では、カウント値ndetectに応じて図8に示すLMTMAテーブルを検索し、第2の判定基準値LMTMAを得る。LMTMAテーブルは、ndetect値が増加するほど、減少するように(劣化と判定しにくくなる方向に)設定されている。なお、前記第1の判定基準値LMTDCは、ndetect=1のときの第2の判定基準値LMTMA(すなわち、第2の判定基準値LMTMAの中で最も劣化と判定し易い基準値)より小さな値(劣化と判定しにくい値)に設定されている。
【0074】
次いでステップS13Aで算出した第2の判定パラメータMROSCが第2の判定基準値LMTMA以上か否かを判別し(ステップS15)、MROSC≧LMTMAであるときは、正常と判定して、第2のOKフラグFOKMAを「1」に設定して(ステップS16)、ステップS18に進む。また、MROSC<LMTMAであるときは、触媒13が劣化していると判定し、第2のOKフラグFOKMAを「0」に設定するとともに第2の劣化フラグFNGMAを「1」に設定して(ステップS17)、ステップS18に進む。ステップS18では、劣化モニタの終了を示すべく終了フラグFDONE=1に設定して、本処理を終了する。
【0075】
図2の処理は、イグニッションスイッチがオンされると所定時間毎に実行されるが、エンジンが始動されてステップS5からS18の処理が1回実行されると、以後はステップS5からS18の処理は実行されなくなる。その後エンジンが停止され、再度始動されると、またステップS5からS18の判定処理が1回実行される。すなわち、イグニッションスイッチがオンされてから、エンジンが始動され、停止するまでの期間を1運転期間とすると、1運転期間に1回劣化判定が実行される。そして、本実施形態では、図示しない処理により、第1の劣化フラグFNGDCが2回連続して「1」となったとき、または第2の劣化フラグFNGMAが2回連続して「1」となったとき、劣化判定を確定し、運転者に触媒の劣化を警告するランプを点灯させるようにしている。これ以外の場合は、警告ランプを点灯させない。
【0076】
以上のように、本実施形態では、1運転期間に1回、第1の判定パラメータOSCINDEXを算出し、その算出値の移動平均値OSCMAの中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSCを第2の判定基準値LMTMAと比較し、劣化判定を行うようにしたので、劣化判定の精度を向上させることができる。なお、移動平均をとるサンプル数が多いほど、判定精度が向上することは一般的な統計理論で証明されている。
【0077】
また、第1の判定パラメータOSCINDEXの算出回数(TCHKの計測回数)が少ないときは、その算出回数ndetectに応じて第2の判定基準値LMTMAを設定するようにしたので、平均化するデータが少ないときでも、確実に劣化を判定することができる。
【0078】
また、ステップS9で、第1の判定パラメータOSCINDEXの今回算出値による劣化判定を行うことにより、第2の判定パラメータMROSCによる判定ではすぐに検出されないおそれのある突然の劣化(例えば失火に起因する異常燃焼による劣化、質の悪い燃料に起因する被毒による劣化など)をも早急に検出することが可能となる。すなわち、第2の判定パラメータMROSCは、移動平均値OSCMAの中心的傾向を示すので、第1の判定パラメータOSCINDEXの過去値が正常で、今回のみ劣化を示すような値に低下したときは、OSCMA値はそれほど低下しないため、サンプルの回数が増えないとその突然の劣化を検出できない可能性があるが、ステップS9の判定により、そのような劣化も早急に検出することができる。
【0079】
さらに、第2の判定パラメータMROSCは、少区間の移動平均でも多区間の移動平均でも同じように推移するので、移動平均を行う区間の多寡に拘らず移動平均値OSCMAの中心的傾向を正確に示すことができ、正確な劣化判定を行うことができる。特に、偏差加重率Kを値1未満に設定する場合、移動平均値OSCMAの変動を抑えてその中心的傾向をより正確に示すことができる。
【0080】
尚、上記実施形態では、第2の判定基準値LMTMAはndetect値が増加するほど減少するように(劣化と判定しにくくなる方向に)設定されていたが、第2の判定パラメータMROSCは少区間の移動平均でも多区間の移動平均でもほぼ同じように推移するので、第2の判定基準値LMTMAをndetect値によらず一定値に設定してもよい。
【0081】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、図4の処理により下流側O2センサ15の出力SVO2に応じた補正係数KO2の算出を行い、酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表する周期パラメータとして判定時間TCHKを算出する為に図5の処理でSVO2周期の計測、すなわち積算値TRSUM及びTLSUMの算出を行ったが、本実施形態では、これらの処理に代えて、図13及び図14の処理により、補正係数KO2の算出並びに積算値TRSUM及びTLSUMの算出を行う。これ以外は第1の実施形態と同一である。なお、本実施形態では、触媒劣化モニタ中は図13の処理により算出されるCATKO2を前記数式(1)のKO2として用いて、フィードバック制御を行う。
【0082】
図13は、CATKO2算出処理のフローチャートである。また、図15は下流側O2センサ出力SVO2、各種フラグ等の推移を示す図であり、この図も併せて参照する。
【0083】
先ずステップS141では、下流側O2センサ出力SVO2が基準値SVREFより低いか否かを判別し、SVO2<SVREFであるときは、第1リッチフラグFAFR1を「0」に、またSVO2≧SVREFであるときは、同フラグFAFR1を「1」に設定する(ステップS142、S143)。続くステップS144では、第1リッチフラグFAFR1が反転したか否かを判別し、反転していなければ直ちにステップS148に進む一方、反転したときは、第1リッチフラグFAFR1が「0」か否かを判別する(ステップS145)。そして、FAFR1=0であって下流側O2センサ出力SVO2がリッチ側からリーン側へ反転したときは(図15、時刻t1,t5,t9)、ダウンカウントディレイタイマTDLYRにリーン側所定時間TLDをセットしてスタートさせ(ステップS146)、逆にFAFR1=1であってリーン側からリッチ側へ反転したときは(図15、t3,t7,t11)、リッチ側所定時間TRDをセットしてスタートさせ(ステップS147)、ステップS148に進む。
【0084】
ステップS148では、計測開始フラグFCATMONが「1」か否かを判別する。モニタ実行開始当初はFCATMON=0であるので、ステップS149に進んで各種タイマ、カウンタ、フラグ等の初期設定を行う。すなわち、ディレイタイマTDLYR、遅れ時間TL,TR計測用のアップカウントタイマTSTRG、遅れ時間TL,TRの計測回数をカウントするカウンタNTL,NTR、及び遅れ時間の積算値TLSUM,TRSUMをすべて「0」に設定し、第2リッチフラグFAFR2を第1リッチフラグFAFR1と同一とし、劣化モニタ時用空燃比補正係数CATKO2を空燃比補正係数KO2(劣化モニタ開始直前のKO2値)に設定し、計測開始フラグFCATMONを「1」に設定する。
【0085】
続くステップS158では、第2リッチフラグFAFR2が「1」か否かを判別し、FAFR2=0であるときは(図15、t2〜t4,t6〜t8)、補正係数CATKO2の直前値にスペシャルI項ILSPを加算する積分制御を行い(ステップS159)、FAFR2=1であるときは(図15、t4〜t6,t8〜t10)、補正係数CATKO2の直前値からスペシャルI項ILSPを減算する積分制御を行い(ステップS160)、本処理を終了する。
【0086】
本処理の次回実行時にステップS148に至ると、前回ステップS149でFCATMON=1とされているので、ステップS150に進み、第1リッチフラグFAFR1と第2リッチフラグFAFR2とが等しいか否かを判別する。そして、FAFR1=FAFR2であるときは(図15、t2〜t3,t4〜t5,t6〜t7,t8〜t9,t10〜t11)、前記ステップS158に進み、FAFR1≠FAFR2であるときは(図15、t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6,t7〜t8,t9〜t10)、第1リッチフラグFAFR1が「1」であるか否かを判別する(ステップS151)。
【0087】
ステップS151でFAFR1=0であるときは(図15、t1〜t2,t5〜t6,t9〜t10)、ディレイタイマTDLYRの値が「0」か否かを判別し(ステップS152)、TDLYR>0であるときは前記ステップS158に進む。そして、TDLYR=0となると(図15、t2,t6,t10)、第2リッチフラグFAFR2を第1リッチフラグFAFR1と等しくし(ステップS154)、補正係数CATKO2の直前値にスペシャルP項PRSPを加算して(ステップS155)、本処理を終了する。
【0088】
ステップS151でFAFR1=1であるときは(図15、t3〜t4,t7〜t8)、ディレイタイマTDLYRの値が「0」か否かを判別し(ステップS153)、TDLYR>0であるときは前記ステップS158に進む。そして、TDLYR=0となると(図15、t4,t8)、第2リッチフラグFAFR2を第1リッチフラグFAFR1と等しくし(ステップS156)、補正係数CATKO2の直前値からスペシャルP項PRSPを減算して(ステップS157)、本処理を終了する。
【0089】
以上のように図13の処理によれば、下流側O2センサ出力SVO2の反転時点(t1,t3,t5,t7,t9)から所定時間(TRD又はTLD)遅延して比例制御が実行され(t2,t4,t6,t8,t10)、第2リッチフラグFAFR2=0の期間中はCATKO2値の増加方向の積分制御が実行され、FAFR2=1の期間中はCATKO2値の減少方向の積分制御が実行される。
【0090】
図14は、TL,TR算出処理のフローチャートである。なお、図15も併せて参照する。
【0091】
図14において先ずステップS171では、第1リッチフラグFAFR1(図15(b))が反転したか否かを判別し、反転したときは、遅れ時間計測期間であることを「1」で示す反転タイマフラグFTSTRG(図15(e))が「1」か否かを判別する(ステップS172)。そしてステップS171又はS172の答が否定(NO)のとき、すなわち第1リッチフラグFAFR1が反転していないとき又は反転タイマフラグFTSTRGが「0」であるときは、ステップS186に進み、ディレイタイマTDLYR(図15(c))の値が0か否かを判別し、TDLYR>0であるときは、遅れ時間計測用アップカウントタイマTSTRG(図15(f))を「0」にセットし(ステップS187)、下流側O2センサ出力SVO2の変化が所定以上であることを「1」で示す出力範囲フラグFSVO2CATを「0」に設定して(ステップS188)、ステップS192に進む。
【0092】
ステップS186で、TDLYR=0となるとステップS189に進み、下流側O2センサ出力SVO2が所定上側レベルSVO2CATH(例えば0.586V)より低いか否かを判別し、SVO2<SVO2CATHであるときは、さらにSVO2値が所定下側レベルSVO2CATL(例えば0.430V)より高いか否かを判別する(ステップS190)。その結果、SVO2CATL<SVO2<SVO2CATHであるときは直ちに、またSVO2≧SVO2CATH又はSVO2≦SVO2CATLであるときは、出力範囲フラグFSVO2CATを「1」に設定して(ステップS191)、ステップS192に進む。すなわち、出力範囲フラグFSVO2CATは、第1リッチフラグFAFR1(下流側O2センサ出力SVO2)の反転から所定時間(TLD又はTRD)経過後における、SVO2値が基準値SVREF近傍にあるとき「0」に維持され、下流側O2センサ出力SVO2の変化が小さいことを示す。
【0093】
ステップS192では、第2リッチフラグFAFR2(図15(d))が反転したか否かを判別し、反転していなければ直ちに、また反転したときは反転タイマフラグFTSTRGを「1」に設定して(ステップS193)、本処理を終了する。
【0094】
一方ステップS171、S172の答が共に肯定(YES)、すなわち第1リッチフラグFAFR1が反転し且つ反転タイマフラグFTSTRGが「1」であるときは、ステップS173に進み、反転タイマフラグFTSTRGを「0」に戻し、出力範囲フラグFSVO2CATが「1」か否かを判別する(ステップS174)。そして、FSVO2CAT=0であって下流側O2センサ出力SVO2の変化が小さいときは、ホールドフラグFSVO2HLDを「1」に設定し(ステップS175)、またFSVO2CAT=1であるときは、該フラグFSVO2CATを「0」に戻して(ステップS176)、ステップS177に進む。
【0095】
ステップS177では、第1リッチフラグFAFR1が「1」か否かを判別し、FAFR1=0であって下流側O2センサ出力SVO2が基準値SVREFに対してリーン側にあるときは(図15、t1,t5,t9)、下記式によりリーン側積算値TLSUMを算出する(ステップS178)。ここで加算されるタイマTSTRGの値が、図15の遅れ時間TLに相当する。
【0096】
TLSUM=TLSUM+TSTRG
次いでリーン側カウンタNTLを「1」だけインクリメントし(ステップS179)、アップカウントタイマTSTRGの値を「0」に戻して(ステップS180)、前記ステップS192に進む。
【0097】
ステップS177でFAFR1=1であって下流側O2センサ出力SVO2が基準値SVREFに対してリッチ側にあるときは(図15、t3,t7,t11)、下記式によりリッチ側積算値TRSUM(図15(g))を算出する(ステップS181)。ここで加算されるタイマTSTRGの値が、図15の遅れ時間TRに相当する。
【0098】
TRSUM=TRSUM+TSTRG
次いでリッチ側カウンタNTR(図15(h))を「1」だけインクリメントし(ステップS182)、アップカウントタイマTSTRGの値を「0」に戻して(ステップS183)、リーン側カウンタNTLの値が「0」か否かを判別する(ステップS184)。そして、NTL>0であるときは直ちに、またNTL=0であって劣化モニタ開始直後であるときはリッチ側積算値TRSUM及びリッチ側カウンタNTRを「0」に戻して(ステップS185)、前記ステップS192に進む。
【0099】
ステップS184、S185は、遅れ時間の計測はTLの方から開始するために、最初にTRの計測を行ったときは、リッチ側積算値TRSUM及びカウンタNTRを「0」に戻すために設けたものである。
【0100】
以上のように図14の処理によれば、下流側O2センサ出力SVO2が反転する毎に遅れ時間TL又はTRが積算され、積算値TLSUM,TRSUMが算出される。なお、図15ではリーン側積算値TLSUM及びリーン側カウンタNTLの推移は図示していないが、時刻t1,t5,t9においてリッチ側積算値TRSUM及びリッチ側カウンタNTRと同様にインクリメントされる。
【0101】
以上のようにして算出した積算値TRSUM及びTLSUMを前記数式(2)に適用するとともに、リッチ側カウンタNTRのカウント値を前記数式(2)のnTに適用して、判定時間TCHKを算出する。
【0102】
このように判定時間TCHKは、下流側O2センサ出力SVO2の変化周期に限らず、その変化周期に相関するパラメータを用いてもよい。
【0103】
(その他の実施形態)
本発明は上述した第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。
【0104】
上述した実施形態では、第1の判定パラメータOSCINDEXを数式(3)により算出し、その移動平均値OSCMAに基づいて図2のステップS15の判定を行うようにしたが、判定時間TCHK及び流量積算値GAIRSUMのそれぞれの移動平均値TCHKAVE及びGAIRSUMAVEを下記数式(9)、(10)により算出し、TCHKAVE×GAIRSUMAVE=OSCMAとしてもよい。
【0105】
Figure 0003624586
また、図2のステップS15の判定に代えて、次にようにしてもよい。すなわち、移動平均値TCHKAVE及びGAIRSUMAVEに応じて予め図16に示すような判定マップを設定しておき、算出したTCHKAVE値及びGAIRSUMAVE値がこのマップ上の劣化領域にあるか、正常領域にあるかを判定するようにしてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態では第1の判定パラメータOSCINDEXを平均化して移動平均値OSCMAを算出するようにしたが、判定時間TCHKを平均化したものを移動平均値OSCMAとしてもよい。
【0107】
また、上述した実施形態では移動平均値を算出するようにしたが、下記数式(11)のようないわゆるなまし式を用いて平均化を行うようにしてもよい。本明細書中における「平均化」は、このような演算処理も含むものとする。
【0108】
Figure 0003624586
ここでCは、値1より小さい正の定数である。
【0109】
また上述した実施形態では、基本燃料量TIMを積算することにより、流量積算値GAIRSUMを算出したが、実際にセンサによって吸入空気量又は排気ガス流量を検出してもよく、さらにエンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて予め排気ガス流量を設定したマップを設けておき、検出したNE値及びPBA値に応じてそのマップを検索して、排気ガス流量を求めて、それを積算することにより流量積算値GAIRSUMを算出してもよい。
【0110】
また上述した実施形態では、診断期間として1運転期間に1回の劣化モニタを行うようにしたが、2回以上行ってもよい。
【0111】
また上述した実施形態では、2回連続して劣化と判定された場合に、警告ランプを点灯するようにしたが、例えば3回の劣化モニタを行い、その内2回劣化と判定された場合に点灯するようにしてもよい。すなわち、劣化した判定する頻度が所定頻度以上のとき、劣化判定を確定し警告ランプを点灯することが望ましい。
【0112】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置によれば、酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表する周期パラメータが所定の診断領域において計測され、異なる診断期間において計測された周期パラメータを平均化することにより平均値が算出され、該算出された平均値が監視域を越える場合、劣化指標を更新し、更新される劣化指標に基づいて触媒の劣化判定が行われるので、劣化判定の精度を向上させることができる。特に、周期パラメータの計測回数が少なくて平均値の変動が大きい診断期間(少区間)でも、あるいは計測回数が多くて平均値の変動が少ない診断期間(多区間)でも、劣化指標を同じように推移させることができ、平均値を算出する区間の多寡に拘らず正確な劣化判定を行うことができる。
【0113】
請求項2に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置によれば、前記劣化指標更新手段により更新される劣化指標に基づいて監視域更新手段により前記監視域を更新するので、劣化指標の更新と同時に適正な監視域を設定することができ、劣化判定の精度を向上できる。
【0114】
請求項3に記載の内燃機関の触媒劣化判定装置によれば、前記平均値算出手段により算出された平均値と前記劣化指標との差分に所定係数を乗算し、該乗算した値を加算することにより前記劣化指標を更新する際、前記所定係数を値1未満に設定するので、劣化指標の変動を抑えて平均値の中心的傾向をより正確に示すことができ、平均値を算出する区間の多寡に拘らず正確な劣化判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】触媒の劣化判定を行う処理のフローチャートである。
【図3】触媒の劣化判定を行うための前提条件を判定する処理のフローチャートである。
【図4】触媒の劣化判定処理中において空燃比補正係数(KO2)を算出する処理のフローチャートである。
【図5】触媒下流側にO2センサの出力の変化周期を計測する処理のフローチャートである。
【図6】空燃比補正係数及びO2センサ出力の推移を示す図である。
【図7】排気ガス流量を代表するパラメータの積算値(GAIRSUM)を算出する処理のフローチャートである。
【図8】図2の処理で使用するテーブルを示す図である。
【図9】移動平均値OSCMAの中心的傾向を示す第2の判定パラメータMROSCを算出する処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の判定パラメータMROSCおよび監視域の上下限値EVLMTHi,EVLMTLoの更新を示す図である。
【図11】偏差加重率K=1の場合の移動平均値OSCMAおよび第2の判定パラメータMROSCの変化を示すグラフである。
【図12】偏差加重率K=0.6の場合の移動平均値OSCMAおよび第2の判定パラメータMROSCの変化を示すグラフである。
【図13】触媒の劣化判定処理中において空燃比補正係数(CATKO2)を算出する処理のフローチャートである。
【図14】触媒下流側にO2センサの出力の変化周期を代表するパラメータを算出する処理のフローチャートである。
【図15】図13及び図14の処理を説明するための図である。
【図16】触媒劣化判定用のマップを示す図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
5 電子コントロールユニット(ECU)
6 燃料噴射弁
12 排気管
13 三元触媒
15 下流側酸素濃度センサ

Claims (4)

  1. 内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの浄化を行う触媒手段と、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、該酸素濃度検出手段の出力に応じて前記機関に供給する混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段と、該空燃比制御手段による空燃比制御時の前記酸素濃度検出手段の出力に基づいて前記触媒手段の劣化を判定する触媒劣化判定手段とを備えた内燃機関の触媒劣化判定装置において、
    前記触媒劣化判定手段は、
    所定の診断期間で前記酸素濃度検出手段の出力変化周期を代表する周期パラメータを計測する計測手段と、
    該計測手段により異なる前記診断期間で計測された複数の前記周期パラメータの平均値を算出する平均値算出手段と、
    前記複数の周期パラメータの標準偏差を算出する標準偏差算出手段と、
    該算出された標準偏差に応じた監視域を前記平均値算出手段により算出された平均値が越える場合、劣化指標を更新する劣化指標更新手段とを備え、
    該更新される劣化指標に基づいて前記劣化判定を行うことを特徴とする内燃機関の触媒劣化判定装置。
  2. 前記劣化指標更新手段により更新される劣化指標に基づいて前記監視域を更新する監視域更新手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化判定装置。
  3. 前記劣化指標更新手段は、前記平均値算出手段により算出された平均値と前記劣化指標との差分に所定係数を乗算し、該乗算した値を加算することにより前記劣化指標を更新する際、前記所定係数を値1未満に設定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化判定装置。
  4. 前記平均値は移動平均により算出されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化判定装置。
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