JP3549027B2 - Al系製品の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばAl−Si系合金をろう材として用いた熱交換器等の製品の製造方法に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
芯材の表面にろう材が貼り合わされたブレージングシートを用いてフィン(あるいはチューブ)を作製し、このフィンとチューブとを組み合わし、ろう付けすることによって熱交換器が製造されている。
この熱交換器に要求されている特性の一つとして耐蝕性に富むことが挙げられる。すなわち、腐食環境下に置かれていると、徐々に腐食が進行する。この為、各種の耐蝕性技術が提案されている。しかし、更なる耐蝕性技術が求められている。
【0003】
【発明の開示】
前記の問題点に対する研究が本発明者によって鋭意押し進められた。
先ず、従来の製品についての検討が行われた。すなわちアルミニウム又はアルミニウム合金製(Al製)熱交換器において、ブレージングシートを用いて構成したフィンとチューブとを結合しているろう材(Al−Si系合金)が如何なる状態にあるかを検討した。ろう付けに際して溶融したAl−Si系合金は冷却する過程において、先ず、初晶α相が図1に示す如く析出し、成長する。そして、共晶温度に至った時点で液相が凝固し、共晶相(α相+Si)が形成され、そして室温まで冷却される。この時、理論的には、初晶α相のSi固溶度と共晶α相のSi固溶度とは同じである。しかし、凝固後の冷却過程で、共晶α相のSiは析出し易く、このため共晶α相のSi固溶度は初晶α相のSi固溶度より低くなっていることが判って来た。ところで、共晶α相のSi固溶度が初晶α相のSi固溶度より低いと言うことは、共晶α相は初晶α相よりも電気化学的に卑な状態にある。この為、腐食環境下にあると、共晶α相が優先的に溶解してしまい、残った初晶α相が脱落し、この脱落による減量が溶解減量よりも大きく寄与し、腐食速度が高くなると考えられた。この結果、フィンとチューブとが外れてしまい易くなる。
【0004】
又、前記のような腐食(粒界腐食)が進行して行くと、ブレージングシートの芯材が露出し、孔食が芯材にまで進み易く、貫通孔が形成され易い。これがチューブの場合には致命的なものとなる。そして、ろう材と芯材との関係を鑑みると、芯材内部との電位差が最も大きいのは共晶α相であるが、この共晶α相におけるSi固溶度は充分に小さいものではないから前記電位差が充分なものとは言えない。この為、ろう材に充分な犠牲陽極効果を期待することは出来ない。
【0005】
このようなことから、初晶α相のSi固溶度と共晶α相のSi固溶度とを同等にすることが大事であると考えられた。特に、初晶α相のSi固溶度と共晶α相のSi固溶度とを同等にし、かつ、Si固溶量を低くすることが好ましいことが判って来た。すなわち、斯の如くにしていると、ろう材のα相における電気化学的特性が等しくなり、初晶α相と共晶α相とは略同時に溶解し、全面溶解となって粒界腐食が起き難いものとなる。更には、α相は内部の芯材に対して大きな電位差を持つ卑なものとなり、犠牲陽極効果が発揮され、芯材の孔食が起き難いものとなる。
【0006】
このような状態を達成する為には、ろう付け作業後に熱処理を施せば良いことが判った。すなわち、ろう付け作業後に熱処理を施すと、初晶α相に固溶したSi量と共晶α相に固溶したSi量とが同等に、かつ、Si固溶量が低くなり、電気化学的特性は均等に、かつ、芯材に対して卑なものとなる。
このような知見を基にして本発明が達成されたものであり、耐蝕性に優れたAl系製品を提供することを目的とする。
【0007】
この本発明の目的は、少なくともMnを含むAl合金からなる芯材の表面に少なくともSiを含むAl系ろう材が設けられたAl材料が用いられた製品の製造方法であって、前記ろう材によるろう付け作業の後、100〜400℃の温度で15分以上の熱処理を行うことを特徴とするAl系製品の製造方法によって達成される。
【0008】
尚、上記Al材料は、芯材の表面(片面または両面)にろう材が貼り合わされた(クラッドされた)ブレージングシートであったり、芯材の表面にろう材粉末(粒子)を溶射若しくはバインダによって付けたシートが挙げられる。このようなシートを用いてフィンやチューブ(特に、チューブ)を成形する。
芯材は少なくともMnを含むAl合金である。このMn含有量は0.1〜2wt%が好ましい。例えば、Mn含有量が1.2wt%で、残部がAlと不可避不純物のAl−Mn合金(3103合金)、Mn含有量が1.2wt%、Cuが0.15wt%、残部がAlと不可避不純物のAl−Mn−Cu合金(3003合金)などを挙げることが出来る。このようなAl−Mn系合金を用いることによって、芯材として必要な機械的強度が確保される。
【0009】
芯材に対して設けられるろう材はAl−Si系合金のような合金であっても、ろう材成分の粉末が混合されたものであっても良い。ろう材に含まれるSi量は3〜11wt%(特に、4〜9wt%)が好ましい。例えば、Si含有量が4〜9wt%で、残部がAlと不可避不純物のAl−Si系合金を挙げることが出来る。具体的には、Al−7%Si(AA4343)、Al−9%Si(AA4045)、Al−9%Si−1%Mg(AA4104)等のAl−Si合金が挙げられる。
【0010】
上記Al材料で作製されたシートを用いて構成したチューブ(又はフィン)とAl製フィン(又はチューブ)とを組み合わし、ろう付けした後、冷却する。この冷却後の製品を100〜400℃の温度で15分以上熱処理する。熱処理温度が低い場合には、初晶α相のSiの固溶度と共晶α相のSiの固溶度との差をなくすことが出来なかったことより、100℃以上とした。逆に、高くなり過ぎると、冷却時に急冷しないとろう付け後と同様に初晶α相と共晶α相とのSiの固溶度差が再び生じてしまい、本発明の熱処理の意味がなくなることから、400℃以下とした。尚、好ましい熱処理温度は200〜300℃である。又、熱処理時間が短い場合には、初晶α相のSiの固溶度と共晶α相のSiの固溶度との差をなくすことが出来なかったことより、15分以上とした。熱処理時間は長くても差し支えなかったが、生産効率を考えると50時間以内である。好ましい熱処理時間は1〜20時間である。
【0011】
以下、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0012】
【実施例】
〔実施例1〕
Mnが1.0wt%で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn合金からなる芯材の片面に、Siが4wt%で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Si合金をクラッドしたブレージングシートを用意した。そして、これを用いて熱交換器の熱媒体の流路を構成する管(チューブ)を構成した。
【0013】
上記チューブとAl製フィンとを組み合わし、不活性雰囲気下においてフラックスを用いたろう付け手段により600℃、5分間のろう付けを実施し、フィンとチューブとを結合した。
このようにして組み立てられた熱交換器を表−1に示す条件で熱処理し、この後は空冷によって徐々に室温まで冷却した。そして、耐蝕性テストを行った。
【0014】
表−1
熱処理条件 耐蝕性
熱処理なし ×
ろう付後50℃で50時間 ×
ろう付後130℃で50時間 ◎
ろう付後200℃で20時間 ◎
ろう付後300℃で20時間 ◎
ろう付後300℃で2時間 ◎
ろう付後300℃で20分間 ◎
ろう付後300℃で6分間 ×
ろう付後400℃で15分間 ◎
ろう付後450℃で30分間 ×
*耐蝕性テストはASTM G85−85に規定されるSWAAT試験を10日間行った。◎印は、共晶部の優先溶解はなく、侵食はろう材表面のみで全面腐食となる。×印は、共晶部の優先溶解となり、芯材まで深く腐食が進行。
【0015】
〔実施例2〕
Mnが1.0wt%で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn合金からなる芯材の片面に、Siが9wt%で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Si合金をクラッドしたブレージングシートを用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0016】
このようにして組み立てられた熱交換器を表−2に示す条件で熱処理し、この後は空冷によって徐々に室温まで冷却した。そして、実施例1と同様な耐蝕性テストを行った。
表−2
熱処理条件 耐蝕性
熱処理なし ×
ろう付後50℃で50時間 ×
ろう付後130℃で50時間 ◎
ろう付後200℃で20時間 ◎
ろう付後300℃で20時間 ◎
ろう付後300℃で2時間 ◎
ろう付後300℃で20分間 ◎
ろう付後300℃で6分間 ×
ろう付後400℃で15分間 ◎
ろう付後450℃で30分間 ×
〔実施例3〕
Mnが1.7wt%で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn合金からなる芯材の片面に、Siが9wt%で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Si合金の粉末(粒径30μm)をアクリル系の樹脂バインダで設けたシートを用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0017】
このようにして組み立てられた熱交換器を表−3に示す条件で熱処理し、この後は空冷によって徐々に室温まで冷却した。そして、実施例1と同様な耐蝕性テストを行った。
表−3
熱処理条件 耐蝕性
熱処理なし ×
ろう付後50℃で50時間 ×
ろう付後130℃で50時間 ◎
ろう付後200℃で20時間 ◎
ろう付後300℃で20時間 ◎
ろう付後300℃で2時間 ◎
ろう付後300℃で20分間 ◎
ろう付後300℃で6分間 ×
ろう付後400℃で15分間 ◎
ろう付後450℃で30分間 ×
【0018】
【効果】
本発明によれば、耐蝕性に優れたAl製熱交換器などの製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】初晶相と共晶相との関係を示す模式図
Claims (5)
- 少なくともMnを含むAl合金からなる芯材の表面に少なくともSiを含むAl系ろう材が設けられたAl材料が用いられた製品の製造方法であって、前記ろう材によるろう付け作業の後、100〜400℃の温度で15分以上の熱処理を行うことを特徴とするAl系製品の製造方法。
- Al材料は、芯材の表面にろう材が貼り合わされたものであることを特徴とする請求項1のAl系製品の製造方法。
- Al材料は、芯材の表面にろう材粒子が設けられたものであることを特徴とする請求項1のAl系製品の製造方法。
- Mn含有量が0.1〜2wt%であることを特徴とする請求項1のAl系製品の製造方法。
- Si含有量が3〜11wt%であることを特徴とする請求項1のAl系製品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP5298695A JP3549027B2 (ja) | 1995-03-13 | 1995-03-13 | Al系製品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP5298695A JP3549027B2 (ja) | 1995-03-13 | 1995-03-13 | Al系製品の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH08243733A JPH08243733A (ja) | 1996-09-24 |
JP3549027B2 true JP3549027B2 (ja) | 2004-08-04 |
Family
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Family Applications (1)
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JP5298695A Expired - Fee Related JP3549027B2 (ja) | 1995-03-13 | 1995-03-13 | Al系製品の製造方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP3549027B2 (ja) |
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CN110640345A (zh) * | 2019-08-23 | 2020-01-03 | 广州洲宗金属制品有限公司 | 自钎焊铝合金板材、发热盘、复合锅底和它们的制造方法 |
-
1995
- 1995-03-13 JP JP5298695A patent/JP3549027B2/ja not_active Expired - Fee Related
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