JP3548951B2 - 低温被膜形成組成物、同組成物で形成した被膜を有する物品、同組成物で成型した物品 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PMMA,PC,PET等のプラスチックス、鉄,チタン,アルミ等の金属、あるいは、ガラス、セラミックス等各種基材に透明で密着性のよい保護被膜を低温で形成することができる低温被膜形成組成物、同組成物で形成した被膜を有する物品、同組成物で成型した物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者は、既に、特定のシラン化合物を特定の加水分解・重縮合触媒で反応して得た加水分解・重縮合反応物を主成分とする無機系被膜形成組成物を、特定のプロセスで高温焼成することによって、光沢のある着色被膜を得る方法について提案している(特開平5−39460号公報)。
【0003】
ここで、特定のシラン化合物としてはγ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシランおよびメチルトリアルコキシシランから選ばれた少なくとも2種の混合物であり、特定の加水分解・重縮合触媒としてはりん酸を用いている。また、特定のプロセスで高温焼成するとは、乾燥後、およそ400℃以下、およそ600℃以上1500℃未満、必要に応じさらに、およそ1500℃以上で焼成することを示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記無機系被膜形成組成物による被膜は、基材に塗布して室温で1週間程度放置しても、鉛筆硬さが6B以下にとどまるというように非常に軟らかく、かつそれは容易に水に溶解するという欠点があった。しかし、それを180℃程度で数時間熱処理すれば鉛筆硬さが3Hレベルの硬い被膜になり、耐水性も向上することは判明していた。
【0005】
本発明は、被膜の形成を、室温〜120℃前後の比較的低い温度においても可能とすることを課題として行い、完成したもので、低温被膜形成ができることによって、熱的に耐性のない基材への無機系被膜形成が可能となるとともに、必要に応じ各種の成型物品を簡単に得ることができ、しかも、その被膜の形成や成型物品の成型に、過大な熱エネルギ消費の必要がないので地球環境の保全にも寄与できる特徴を有する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明低温被膜形成組成物は、りん酸を加水分解・重縮合触媒とし、特定のシラン化合物を加水分解・重縮合させることによって得られたシラン化合物の加水分解・重縮合物を主成分とする無機系被膜形成組成物に、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物を組み合わせたことを内容とするものである。
【0007】
ここで、無機系被膜形成組成物に用いられる特定のシラン化合物は、少なくともγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含み、これにメチルトリメトキシシランおよび/またはジメチルジメトキシシランを混合した混合物である。
【0008】
つまり、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランは、基材への密着性、風乾性(自然乾燥性)に優れた無機系被膜を与えるが、その被膜は沸騰水に十分の抵抗性を持たないが、これにメチルトリメトキシシランおよび/またはジメチルジメトキシシランを配合すると耐水性が向上し沸騰水に十分の抵抗性を持つようになる。
【0009】
加水分解・重縮合触媒として使用するりん酸としては、化学用純85%りん酸が好ましいが、75%、89%、100%のりん酸、105%、115〜116%のポリりん酸あるいは重りん酸も使用できる。
りん酸の特定シラン化合物に対する比率は、特定シラン化合物100部に対し1〜20部、好ましくは5〜15部である。
【0010】
上記において、特定のシラン化合物の加水分解・重縮合物を主成分とする無機系被膜形成組成物は、通常、特定のシラン化合物を均一に混合し、これを加水分解に必要な水と特定の加水分解・重縮合触媒を溶解したアルコール溶液に加えて、室温付近で反応させることによって得られる。
【0011】
一方、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物は、アルキルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物の存在下にアクリルモノマーとγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを共重合して得られる。
【0012】
ここで、アルキルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物は、メチルシリケートやエチルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物であり、固形分換算で有機・無機組成物中の10〜50%として配合される。
【0013】
アクリルモノマ−としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレ−ト、(メタ)アクリル酸等を組み合わせて用いることができる。
【0014】
なお、メチルイソブチルケトンを上記有機・無機重合体組成物を希釈するのに使用することが、室温〜120℃前後という低温下で所望の被膜を形成するのに効果的と認められる。
【0015】
また、上記無機系被膜形成組成物と上記有機・無機重合体組成物の混合比は、固形分(不揮発分)重量比で95/5〜99/1であることが好ましい。この値以上に有機・無機重合体組成物が多いと耐熱性の低下が生じ、この値以下では、室温硬化性が得られず耐水性の悪い被膜しか形成できない。
【0016】
本発明複合材料組成物には、それにより被膜を形成する場合はもちろん、上記成型物品を成型する場合であっても、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種の機能性微粒子、例えば、硬度を向上させる炭化ケイ素、チッ化ケイ素シリカ、ジルコニア等、導電性を付与する酸化インジユウム、酸化錫、カーボン粒子、グラファイト粒子等、熱伝導性を付与する酸化マグネシウム、アルミナ、または、磁性を付与する磁鉄鉱微粒子等を添加することができる。
また、各種の色顔料、塗布性を改良するための濡れ剤、チクソトロピー性付与剤、希釈溶剤または消泡剤等の添加も可能である。
【0017】
こうして得られた本発明低温被膜形成組成物は、各種基材を浸漬、スプレー、スピンコート、刷毛塗りなどの方法で塗布して、室温あるいは120℃前後の低温で硬化被膜とすることができる。
【0018】
硬化被膜の膜厚は、硬化被膜に要求する物性・機能により任意に選択される。例えば、ポリエステル(PET)繊維からなる衣類の帯電防止のためならミクロンオーダの膜厚で十分であり、ポリカーボネート板の接着性向上のためのプライマーとして使う場合にも、数ミクロンの厚さに塗布すれば良い。
また、アクリル樹脂板やポリカーボネート板等のような透明プラスチック板の傷つき防止をするには、厚さ10〜20ミクロン程度の厚さの被膜とすることが好ましいものである。
【0019】
上記膜厚の調整は、塗布条件を変更して行う。例えば、スプレー塗布では、一回目のスプレーののち、室温で1時間程度乾燥後、2回目の塗布をする方法で厚膜化が可能である。塗布後、室温に放置しても硬化反応が進行して透明な固体被膜が形成できるが、必要に応じ加熱することも可能である。加熱温度は被塗布物である基材の耐熱性に応じ任意に選択できる。
【0020】
本発明低温被膜形成組成物による被膜の形成に用いることができる基材としては、PMMA、PC、PET等のプラスチックス、鉄、チタン、アルミ等の金属、ガラス、セラミックス等各種に及ぶ。
【0021】
また、本発明低温被膜形成組成物は、所要の型で所望の物品を成型し、乾燥し、必要に応じ加熱により表層処理して目的の物品を製造することができる。その場合の乾燥は、室温〜120℃で数時間から数日程度で行われる。
【0022】
成型の仕方としては、1.複合材料組成物を所定の型に注入する 2.さらに、加圧する 3.樹脂母型にスプレー塗布し、乾燥してから外す 4.フィルム状乾燥膜にしたものを、熱プレスにより変形加工する 5.複合材料組成物を粉末状に乾燥し、それを加熱加圧する等各種の手段がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下実施例について説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0024】
無機系被膜形成組成物の合成例
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン230g、メチルトリメトキシシラン110gおよびジメチルジメトキシシラン100gの混合物を作成し、これを、正りん酸34g、純水46gを溶解した480gのイソプロピルアルコール中に加えて、室温に24時間放置し、無機系コーティング組成物、すなわち無機系被膜形成組成物を得た。以下、これをB1液という。
【0025】
有機・無機重合体組成物の合成例
イソプロピルアルコール(IPA)40gとメチルシリケート51(日本コルコート製品、不揮発分51%)30gの混合物を窒素雰囲気で76℃に加熱し、これに、
メチルメタクリレート 35g
n−ブチルアクリレート 15g
グリシジルメタクリレート 5g
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 10g
アゾイソブチロニトリル(重合触媒) 0.3g
の混合物を滴下し、2時間反応させ、室温にて冷却後、IPA215gとメチルイソブチルケトン(MIBK)400gで希釈した。
このようにして作成した、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物10gを、さらに、MIBK90gで希釈した。以下、これをA1液という。
【0026】
実施例1〜5、比較例1〜5
B1液とAl液を表1に示す割合で混合して、実施例1〜5、比較例1〜5の無機・有機複合系被膜形成組成物を得た。
【0027】
【表1】
【0028】
これら実施例1〜5、比較例1〜5の無機・有機複合系被膜形成組成物を、スプレー塗布により各種基材に塗布、硬化させて、被膜特性を評価した。
硬化性は、アクリル樹脂板に約20ミクロンに塗布し、室温下に24時間放置後に、鉛筆硬さが3H以上となったものを硬化性あり(○)とした。
耐水性は、ガラス板に塗布乾燥、標準条件(80℃,30分)下で硬化後、純水に24時間浸漬したとき被膜が溶解したかどうかで判定した。○は溶解せず、×は部分的または完全に溶解したことを示す。
帯電防止性は、アクリル樹脂板に約10ミクロンに塗布し、上記と同じく標準条件下で被膜化した後、体積抵抗率を測定し、○は107Ω・cmレベル、△は107〜1015Ω・cmレベル、×は1015Ω・cmレベルとした。
耐熱性は、チタン板に塗布し、乾燥した後、上記と同じく標準条件で硬化して約10ミクロンの被膜を形成し、任意の温度に加熱してから急冷したとき被膜が剥離するかどうかで判定した。表に記載の温度処理した時に剥離が起こったことを示す。
【0029】
実施例6
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン220g、メチルトリメトキシシラン110g、ジメチルジメトキシシラン110gの混合物を作成し、これを正りん酸34g、純水46gを溶解した480gのイソプロピルアルコール中に加えて、室温に24時間放置し、無機系コーティング組成物、すなわち無機系被膜形成組成物を得た。以下、これをB2液という。
【0030】
そして、40gのB2液と60gのAl液を混合して無機・有機複合系被膜形成組成物を作成した。
これをアクリル樹脂板にスプレー塗布して80℃30分硬化した場合、鉛筆硬さは9Hの無色透明被膜(厚さ約10ミクロン)が得られた。これの体積抵抗率は1.4×107Ω・cm、体積抵抗は1.9×108Ωであり半導体レべルの導電性を示した。
【0031】
また、この無機・有機複合系被膜形成組成物をポリカーボネート板にスプレー塗布して25℃、30%RHの環境に放置し、経時的に鉛筆硬さを測定した。その結果、15分後は6B以下であったが、30分後5B、45分後B、1時間後3H、1.5時間後4H、2時間後5H、3時間後6Hと上昇し、7時間で7Hに達した。その後38時間でも7Hであった。
【0032】
【発明の効果】
本発明低温被膜形成組成物によれば、PMMA,PC,PET等のプラスチックス、鉄,チタン,アルミ等の金属、あるいは、ガラス、セラミックス等各種基材に対し、透明で密着性のよい保護被膜を、室温〜120℃前後という低温下で簡単に形成することができる。
【0033】
本発明の低温被膜形成組成物から形成された被膜は、半導体レベルの導電性を有し、帯電防止能に優れているので、合成繊維やプラスチック成型品にこれを施すことによって繊維間の摩擦帯電が防止できるし、成型品の静電気による汚染が低減できる。さらに、プラスチックにプライマーとして薄膜形成したものは、その表面への塗装性や接着性が、無処理に比べ格段と向上する。
【0034】
その上、本発明低温被膜形成組成物は、それ自体により所望の物品を成型することができる等、広い産業分野において有効に利用することが可能なものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、PMMA,PC,PET等のプラスチックス、鉄,チタン,アルミ等の金属、あるいは、ガラス、セラミックス等各種基材に透明で密着性のよい保護被膜を低温で形成することができる低温被膜形成組成物、同組成物で形成した被膜を有する物品、同組成物で成型した物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者は、既に、特定のシラン化合物を特定の加水分解・重縮合触媒で反応して得た加水分解・重縮合反応物を主成分とする無機系被膜形成組成物を、特定のプロセスで高温焼成することによって、光沢のある着色被膜を得る方法について提案している(特開平5−39460号公報)。
【0003】
ここで、特定のシラン化合物としてはγ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシランおよびメチルトリアルコキシシランから選ばれた少なくとも2種の混合物であり、特定の加水分解・重縮合触媒としてはりん酸を用いている。また、特定のプロセスで高温焼成するとは、乾燥後、およそ400℃以下、およそ600℃以上1500℃未満、必要に応じさらに、およそ1500℃以上で焼成することを示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記無機系被膜形成組成物による被膜は、基材に塗布して室温で1週間程度放置しても、鉛筆硬さが6B以下にとどまるというように非常に軟らかく、かつそれは容易に水に溶解するという欠点があった。しかし、それを180℃程度で数時間熱処理すれば鉛筆硬さが3Hレベルの硬い被膜になり、耐水性も向上することは判明していた。
【0005】
本発明は、被膜の形成を、室温〜120℃前後の比較的低い温度においても可能とすることを課題として行い、完成したもので、低温被膜形成ができることによって、熱的に耐性のない基材への無機系被膜形成が可能となるとともに、必要に応じ各種の成型物品を簡単に得ることができ、しかも、その被膜の形成や成型物品の成型に、過大な熱エネルギ消費の必要がないので地球環境の保全にも寄与できる特徴を有する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明低温被膜形成組成物は、りん酸を加水分解・重縮合触媒とし、特定のシラン化合物を加水分解・重縮合させることによって得られたシラン化合物の加水分解・重縮合物を主成分とする無機系被膜形成組成物に、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物を組み合わせたことを内容とするものである。
【0007】
ここで、無機系被膜形成組成物に用いられる特定のシラン化合物は、少なくともγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含み、これにメチルトリメトキシシランおよび/またはジメチルジメトキシシランを混合した混合物である。
【0008】
つまり、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランは、基材への密着性、風乾性(自然乾燥性)に優れた無機系被膜を与えるが、その被膜は沸騰水に十分の抵抗性を持たないが、これにメチルトリメトキシシランおよび/またはジメチルジメトキシシランを配合すると耐水性が向上し沸騰水に十分の抵抗性を持つようになる。
【0009】
加水分解・重縮合触媒として使用するりん酸としては、化学用純85%りん酸が好ましいが、75%、89%、100%のりん酸、105%、115〜116%のポリりん酸あるいは重りん酸も使用できる。
りん酸の特定シラン化合物に対する比率は、特定シラン化合物100部に対し1〜20部、好ましくは5〜15部である。
【0010】
上記において、特定のシラン化合物の加水分解・重縮合物を主成分とする無機系被膜形成組成物は、通常、特定のシラン化合物を均一に混合し、これを加水分解に必要な水と特定の加水分解・重縮合触媒を溶解したアルコール溶液に加えて、室温付近で反応させることによって得られる。
【0011】
一方、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物は、アルキルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物の存在下にアクリルモノマーとγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを共重合して得られる。
【0012】
ここで、アルキルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物は、メチルシリケートやエチルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物であり、固形分換算で有機・無機組成物中の10〜50%として配合される。
【0013】
アクリルモノマ−としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレ−ト、(メタ)アクリル酸等を組み合わせて用いることができる。
【0014】
なお、メチルイソブチルケトンを上記有機・無機重合体組成物を希釈するのに使用することが、室温〜120℃前後という低温下で所望の被膜を形成するのに効果的と認められる。
【0015】
また、上記無機系被膜形成組成物と上記有機・無機重合体組成物の混合比は、固形分(不揮発分)重量比で95/5〜99/1であることが好ましい。この値以上に有機・無機重合体組成物が多いと耐熱性の低下が生じ、この値以下では、室温硬化性が得られず耐水性の悪い被膜しか形成できない。
【0016】
本発明複合材料組成物には、それにより被膜を形成する場合はもちろん、上記成型物品を成型する場合であっても、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種の機能性微粒子、例えば、硬度を向上させる炭化ケイ素、チッ化ケイ素シリカ、ジルコニア等、導電性を付与する酸化インジユウム、酸化錫、カーボン粒子、グラファイト粒子等、熱伝導性を付与する酸化マグネシウム、アルミナ、または、磁性を付与する磁鉄鉱微粒子等を添加することができる。
また、各種の色顔料、塗布性を改良するための濡れ剤、チクソトロピー性付与剤、希釈溶剤または消泡剤等の添加も可能である。
【0017】
こうして得られた本発明低温被膜形成組成物は、各種基材を浸漬、スプレー、スピンコート、刷毛塗りなどの方法で塗布して、室温あるいは120℃前後の低温で硬化被膜とすることができる。
【0018】
硬化被膜の膜厚は、硬化被膜に要求する物性・機能により任意に選択される。例えば、ポリエステル(PET)繊維からなる衣類の帯電防止のためならミクロンオーダの膜厚で十分であり、ポリカーボネート板の接着性向上のためのプライマーとして使う場合にも、数ミクロンの厚さに塗布すれば良い。
また、アクリル樹脂板やポリカーボネート板等のような透明プラスチック板の傷つき防止をするには、厚さ10〜20ミクロン程度の厚さの被膜とすることが好ましいものである。
【0019】
上記膜厚の調整は、塗布条件を変更して行う。例えば、スプレー塗布では、一回目のスプレーののち、室温で1時間程度乾燥後、2回目の塗布をする方法で厚膜化が可能である。塗布後、室温に放置しても硬化反応が進行して透明な固体被膜が形成できるが、必要に応じ加熱することも可能である。加熱温度は被塗布物である基材の耐熱性に応じ任意に選択できる。
【0020】
本発明低温被膜形成組成物による被膜の形成に用いることができる基材としては、PMMA、PC、PET等のプラスチックス、鉄、チタン、アルミ等の金属、ガラス、セラミックス等各種に及ぶ。
【0021】
また、本発明低温被膜形成組成物は、所要の型で所望の物品を成型し、乾燥し、必要に応じ加熱により表層処理して目的の物品を製造することができる。その場合の乾燥は、室温〜120℃で数時間から数日程度で行われる。
【0022】
成型の仕方としては、1.複合材料組成物を所定の型に注入する 2.さらに、加圧する 3.樹脂母型にスプレー塗布し、乾燥してから外す 4.フィルム状乾燥膜にしたものを、熱プレスにより変形加工する 5.複合材料組成物を粉末状に乾燥し、それを加熱加圧する等各種の手段がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下実施例について説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0024】
無機系被膜形成組成物の合成例
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン230g、メチルトリメトキシシラン110gおよびジメチルジメトキシシラン100gの混合物を作成し、これを、正りん酸34g、純水46gを溶解した480gのイソプロピルアルコール中に加えて、室温に24時間放置し、無機系コーティング組成物、すなわち無機系被膜形成組成物を得た。以下、これをB1液という。
【0025】
有機・無機重合体組成物の合成例
イソプロピルアルコール(IPA)40gとメチルシリケート51(日本コルコート製品、不揮発分51%)30gの混合物を窒素雰囲気で76℃に加熱し、これに、
メチルメタクリレート 35g
n−ブチルアクリレート 15g
グリシジルメタクリレート 5g
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 10g
アゾイソブチロニトリル(重合触媒) 0.3g
の混合物を滴下し、2時間反応させ、室温にて冷却後、IPA215gとメチルイソブチルケトン(MIBK)400gで希釈した。
このようにして作成した、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物10gを、さらに、MIBK90gで希釈した。以下、これをA1液という。
【0026】
実施例1〜5、比較例1〜5
B1液とAl液を表1に示す割合で混合して、実施例1〜5、比較例1〜5の無機・有機複合系被膜形成組成物を得た。
【0027】
【表1】
【0028】
これら実施例1〜5、比較例1〜5の無機・有機複合系被膜形成組成物を、スプレー塗布により各種基材に塗布、硬化させて、被膜特性を評価した。
硬化性は、アクリル樹脂板に約20ミクロンに塗布し、室温下に24時間放置後に、鉛筆硬さが3H以上となったものを硬化性あり(○)とした。
耐水性は、ガラス板に塗布乾燥、標準条件(80℃,30分)下で硬化後、純水に24時間浸漬したとき被膜が溶解したかどうかで判定した。○は溶解せず、×は部分的または完全に溶解したことを示す。
帯電防止性は、アクリル樹脂板に約10ミクロンに塗布し、上記と同じく標準条件下で被膜化した後、体積抵抗率を測定し、○は107Ω・cmレベル、△は107〜1015Ω・cmレベル、×は1015Ω・cmレベルとした。
耐熱性は、チタン板に塗布し、乾燥した後、上記と同じく標準条件で硬化して約10ミクロンの被膜を形成し、任意の温度に加熱してから急冷したとき被膜が剥離するかどうかで判定した。表に記載の温度処理した時に剥離が起こったことを示す。
【0029】
実施例6
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン220g、メチルトリメトキシシラン110g、ジメチルジメトキシシラン110gの混合物を作成し、これを正りん酸34g、純水46gを溶解した480gのイソプロピルアルコール中に加えて、室温に24時間放置し、無機系コーティング組成物、すなわち無機系被膜形成組成物を得た。以下、これをB2液という。
【0030】
そして、40gのB2液と60gのAl液を混合して無機・有機複合系被膜形成組成物を作成した。
これをアクリル樹脂板にスプレー塗布して80℃30分硬化した場合、鉛筆硬さは9Hの無色透明被膜(厚さ約10ミクロン)が得られた。これの体積抵抗率は1.4×107Ω・cm、体積抵抗は1.9×108Ωであり半導体レべルの導電性を示した。
【0031】
また、この無機・有機複合系被膜形成組成物をポリカーボネート板にスプレー塗布して25℃、30%RHの環境に放置し、経時的に鉛筆硬さを測定した。その結果、15分後は6B以下であったが、30分後5B、45分後B、1時間後3H、1.5時間後4H、2時間後5H、3時間後6Hと上昇し、7時間で7Hに達した。その後38時間でも7Hであった。
【0032】
【発明の効果】
本発明低温被膜形成組成物によれば、PMMA,PC,PET等のプラスチックス、鉄,チタン,アルミ等の金属、あるいは、ガラス、セラミックス等各種基材に対し、透明で密着性のよい保護被膜を、室温〜120℃前後という低温下で簡単に形成することができる。
【0033】
本発明の低温被膜形成組成物から形成された被膜は、半導体レベルの導電性を有し、帯電防止能に優れているので、合成繊維やプラスチック成型品にこれを施すことによって繊維間の摩擦帯電が防止できるし、成型品の静電気による汚染が低減できる。さらに、プラスチックにプライマーとして薄膜形成したものは、その表面への塗装性や接着性が、無処理に比べ格段と向上する。
【0034】
その上、本発明低温被膜形成組成物は、それ自体により所望の物品を成型することができる等、広い産業分野において有効に利用することが可能なものである。
Claims (6)
- りん酸を加水分解・重縮合触媒とし、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを必須成分とし、これにメチルトリメトキシシランおよび/またはジメチルジメトキシシランを混合したシラン化合物を加水分解・重縮合させることによって得られた、シラン化合物の加水分解・重縮合物を主成分とする無機系被膜形成組成物に、アルキルシリケートの部分加水分解・重縮合反応物の存在下でアクリルモノマーとγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを共重合して得られる、アルコキシシラン変性アクリル樹脂基を含有する有機・無機複合体を主成分とする有機・無機重合体組成物を組み合わせたことを特徴とする低温被膜形成組成物。
- 上記無機系被膜形成組成物と有機・無機重合体組成物の混合比が固形分重量比で95/5〜99/1であることを特徴とする請求項1記載の低温被膜形成組成物。
- 硬度を向上させる炭化ケイ素、チッ化ケイ素シリカ、ジルコニア、導電性を付与する酸化インジユウム、酸化錫、カーボン粒子、グラファイト粒子、熱伝導性を付与する酸化マグネシウム、アルミナ、または、磁性を付与する磁鉄鉱微粒子である機能性微粒子を添加していることを特徴とする請求項1または2記載の低温被膜形成組成物。
- 各種着色顔料、塗布性を改良するための濡れ剤、チクソトロピー性付与剤、希釈溶剤または消泡剤を添加していることを特徴とする請求項1,2または3記載の低温被膜形成組成物。
- 請求項1,2,3または4記載の低温被膜形成組成物で形成した被膜を有することを特徴とする物品。
- 請求項1,2,3,4または5記載の低温被膜形成組成物で成型したことを特徴とする物品。
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