JP3548270B2 - 後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置 - Google Patents

後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は二輪車の後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
二輪車の後輪用緩衝器(リヤクッションユニット)のバネ荷重を調整するために、実開平4−8844号公報に開示されたようなものがある。
【0003】
これは、図6にも示すように、リヤクッションユニットのピストンロッド1の先端に固定部材2を取付け、この固定部材2に筒部材3を結合し、筒部材3の外側にバネ受筒4を摺動可能に挿入し、このバネ受筒4の固定部材側にはカム5を形成し、カム5を筒部材3に設けた突起6により支持し、バネ受筒4を回転させることによりカム5の乗り上げ点を変え、バネ受筒4で支持するバネ7の初期荷重(セット長)を調整するようにしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この場合、バネ受筒4の固定部材側にカム5があり、バネ受筒4の他側でバネ7を受けるため、バネ受筒4からシリンダ8のバネ受9までの距離がバネ7の有効格納長となり、緩衝器の全長に対するバネ7の格納長が制約を受け、大きいセット長を必要とするバネ定数の低いバネを取付る場合、緩衝器の全長を長くしなければならないという問題があった。
【0005】
また、筒部材3はその外周でバネ7の一部をガイドする機能を併有するので、バネ受筒4がカム5の最上位置にあるときにも常に所定の嵌合長をもたせる必要があり、このため筒部材3の要求長さが長くなり、その分だけ重量やコストの増大が免れえない。
【0006】
本発明はこのような問題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ダンパーのシリンダ外周と、ピストンロッド先端との間にバネを介在させ、バネの有効セット長を調整自在とした後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置において、ピストンロッドの先端に設けた固定部材と、この固定部材に係止するように同軸的に配置したカム筒と、これら固定部材、カム筒の外側に回転可能に嵌合したバネ受筒と、バネ受筒の外側に設けたバネの一端を受けるバネ受と、カム筒のカム面に係止するバネ受筒の内側に設けた突起と、バネの一部と嵌合するようにバネ受筒の外周に設けたガイド部とを備える。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、固定部材とカム筒とは同一外径に設定され、かつバネ受筒の内周突起を通過させるように外周面に縦方向に延びる凹部を備える。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記カム筒のカム面は、段階的に高さが変化するカム段に形成され、かつその両端において移動を阻止する段差が形成されている。
【0010】
第4の発明は、第1〜第3の発明において、前記カム筒が同一形状の2つの分割された半円筒で構成され、かつ両方の分割部材の突き合せ面に間隙をもたせて前記凹部が形成される一方、カム筒の内周は前記固定部材の内周に設けたガイド筒に嵌合する。
【0011】
第5の発明は、第1〜第3の発明において、前記固定部材とカム筒とが一体に形成されている。
【0012】
【作用】
第1の発明において、バネ受筒はバネの伸長力により、その内周の突起を介してカム筒に係止し、バネ受筒を回転させてカム筒のカムに対する突起の位置を変えることにより、バネの圧縮長さが変化し、その初期荷重が調整される。
【0013】
バネ受筒のバネ受は、ガイド部を介して突起とは反対側に位置し、カム面と重合する状態でガイド部の外周にはバネが嵌合しており、つまり、バネの軸方向端部よりも内側にカム面が位置するので、緩衝器のストロークに対するバネの有効長をそれだけ長くできる。
【0014】
また、バネ受筒の外周のガイド部にバネの一部が嵌合した状態で、バネの端部がバネ受に支持される。このバネの嵌合長は、バネ受とガイド部との関係が不変のため、バネ受筒のカム筒に対する相対位置が変化しても、常に同一に維持され、安定してバネをガイドできる。
【0015】
第2の発明において、バネ受筒は、固定部材とカム筒の凹部にバネ受筒の突起を通すことにより軸方向に移動できるので、バネの交換が簡単に行える。
【0016】
第3の発明において、カム面はその両端において段差があるので、バネ荷重調整時におけるバネ受筒の回り過ぎを確実に規制できる。
【0017】
第4の発明において、カム筒は半円筒形に2つに分割され、各々は同一形状のため、カム筒の製作が容易となり、コストダウンも図れる。
【0018】
第5の発明において、固定部材とカム筒とが一体に形成されているので、カム筒が安定し、組み立ても容易となる。
【0019】
【実施例】
図1〜図4は本発明の第1の実施例を示すもので、図1において、後輪用緩衝器(リヤクッションユニット)は、ダンパー本体11と、このダンパ本体11に伸縮するピストンロッド12と、これらの間に介装したバネ13を備える。
【0020】
バネ13はダンパー本体11のシリンダ周囲に固設したバネ受14と、ピストンロッド12の先端に取付けたバネ受筒15との間に介装される。
【0021】
ピストンロッド12に取付ブラケット16と共に結合した固定カップ部材17に同軸的にカム筒18が係合し、これらカップ部材17とカム筒18の外側にバネ受筒15が嵌合し、かつバネ受筒15の内周側に設けた突起20がカム筒18のカム面21に係止する。なお、固定カップ部材17の内側にはピストンロッド12に嵌入した最圧縮時のクッションゴム19が配設される。
【0022】
バネ受筒15はその外周をガイド部22としてバネ13の一部が嵌合し、その端部にフランジ形のバネ受23が形成される。前記突起20はこのバネ受23と反対側の端部に設けられ、バネ13は常にこの突起20とオーバラップするように重合配設される。
【0023】
固定カップ部材17とカム筒18の外径は同一に形成され、カップ部材17のカム筒18との接合面に設けた切欠部24に、カム筒18の接合面に設けた突起20が係合して位置決めがなされる一方、カップ部材17とカム筒18の外周には、前記バネ受筒15の突起20と対応する位置に、縦方向に延びる凹部27と28が形成され、バネ受筒15の突起20の位置をこの凹部27、28を通過させることにより、バネ受筒15の抜き出しを許容し、バネ13の交換等を可能としている。
【0024】
したがって、バネ受筒15の内側の対称位置に形成される一対の突起20と、カップ部材17とカム筒18に形成される凹部27と28の幅や深さは互いに対応しており、またバネ受筒15の内周とカップ部材17、カム筒18の外周とは隙間のあまり無い状態で密着する。
【0025】
なお、カム筒18にはスリット30が設けられ、このスリット30を介してピストンロッド12を通過させて、カム筒18の装着を可能としているが、このスリット30が一方の凹部28を兼ねている。
【0026】
また、カム筒18に形成するカム面21は、図4の展開図にもあるように、互いに同一的に形成した2つのカム段31a,31bをもち、カム段31a,31bは段階的に傾斜し、このカム段31a,31bに対する突起20の乗り上げ位置によりバネ13の初期荷重が調整される。カム段31a,31bの両端にはそれ以上の移動を阻止するため垂直な段差32が設けられ、バネ受筒15を回転させたときに、カム面21を外れて凹部28に突起20が入り、バネ受筒15が抜け出すことのないようにしている。
【0027】
なお、バネ受筒15のフランジ形のバネ受23の外周には、バネ受筒15を回転させるときに工具を挿入させるための係止溝29が形成されている。
【0028】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0029】
ピストンロッド先端のバネ受筒15とダンパー本体11のシリンダ外周のバネ受14との間に介装されたバネ13のセット長は、バネ受筒15のフランジ外周の係止溝29に工具を挿入してバネ受筒15を回転させて、カム筒18のカム面21に対する突起20の乗り上げ位置を変化させると、バネ受筒15が軸方向に移動することにより自由に調整される。
【0030】
この場合、カム面21の両端には垂直な段差32があり、回し過ぎによる突起20のカム面21からの逸脱を防止している。
【0031】
バネ受筒15にはその外周のガイド部22にバネ13の一部が嵌合し、バネ13の軸方向端部はカム面21よりも外側に位置するため、つまり、バネ13の両端よりもカム面21、突起20が内側に位置するため、バネ13の格納長がカム面21の位置により規制されず、緩衝器の全長に対するバネ13の格納長をそれだけ長くすることができる。
【0032】
また、バネ13の一部はバネ受筒15のガイド部22と重合し、その重合長はカム面21と突起20の係合位置とは無関係に常に一定の値となっている。このため、バネ13のガイドが安定して行われ、バネ13の横振動を安定的に抑制でき、また、従来のようにカム筒18との関係により重合長さが変化するものと異なり、ガイド部22の長さを必要以上に大きくしなくてもよく、その軽量化も図れる。
【0033】
バネ受筒15の内周面により、カム筒18の外周面を保持するので、カム筒18にかかるバネ13の荷重により、カム筒18の直径が拡大側に変形するのを押さえることができ、このためカム筒18の強度を単独で設定する必要がなく、それだけカム筒18の軽量化も図れる。
【0034】
一方、バネ13を組立たり交換するときなど、バネ受筒15の突起20の位置を、カップ部材17とカム筒18の凹部27、28と一致させると、この凹部27、28に沿って突起20を通過させつつバネ受筒15を移動させることができるので、バネ13をダンパー本体11の組立後に装着したり、あるいはバネ13の交換を自由に行うことができる。
【0035】
次に他の実施例を説明する。
【0036】
図5に示す実施例は、カム筒18を2つに分割した半円筒形のカム板33a,33bで構成したもので、各カム板33a,33bにはそれぞれカム段31a,31bが形成されるが、これらは互いに全く同一の形状からなる。
【0037】
なお、半円筒形の合わせ面には、それぞれ一定の間隙をあけ、この間隙の部分がバネ受筒15の突起20を挿通させるための凹部28を構成する。
【0038】
なお、この場合、クッションゴム19の外周の一部に図示しないガイド筒を嵌合し、このガイド筒によりカム筒18の内周面を支持すると共に、その外周のバネ受筒15との間に挟み込むことにより、このようにカム筒18を分割しても、各カム板33a,33bがバラバラに分解されることはない。
【0039】
このようにしてカム筒18を分割形成した結果、各カム板33a,33bを同一のプレス型により成型することができ、しかも小型化できるなど、生産コストの低減、品質の安定化などが図れる。
【0040】
この実施例では、カム筒18を2に分割したが、これとは別に、固定カップ部材17とカム筒18を一体に形成することもでき、この場合にはダンパー本体への組み付けが容易となる。なお、この一体化は固定カップ部材17とカム筒18を別々に作っておき、溶接等により一体的に結合してもよい。
【0041】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ダンパーのシリンダ外周と、ピストンロッド先端との間にバネを介在させ、バネの有効セット長を調整自在とした後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置において、ピストンロッドの先端に設けた固定部材と、この固定部材に係止するように同軸的に配置したカム筒と、これら固定部材、カム筒の外側に回転可能に嵌合したバネ受筒と、バネ受筒の外側に設けたバネの一端を受けるバネ受と、カム筒のカム面に係止するバネ受筒の内側に設けた突起と、バネの一部と嵌合するようにバネ受筒の外周に設けたガイド部とを備えるので、バネ受筒のバネ受がガイド部を介して突起とは反対側に位置し、カム面と重合する状態でガイド部の外周にはバネが嵌合しており、つまり、バネの軸方向端部よりも内側にカム面が位置するので、緩衝器のストロークに対するバネの有効長をそれだけ長くでき、また、バネ受筒のガイド部とバネの嵌合長は、バネ受とガイド部との関係が不変のため、バネ受筒のカム筒に対する相対位置が変化しても、常に同一に維持され、安定してバネをガイドでき、バネの横振動を抑制すると共に、ガイド部を不必要に長くすることがなく、それだけ軽量化も図れる一方、バネ受筒の内周面でカム筒を保持するため、バネの荷重を受けてカム筒が拡径する変形を防止し、その強度を高めることができる。
【0042】
第2の発明によれば、固定部材とカム筒とは同一外径に設定され、かつバネ受筒の内周突起を通過させるように外周面に縦方向に延びる凹部を備えるので、固定部材とカム筒の凹部にバネ受筒の突起を通過させることによりバネ受筒を移動できるので、バネの交換などが簡単に行える。
【0043】
第3の発明によれば、カム筒のカム面は、段階的に高さが変化するカム段に形成され、かつその両端において移動を阻止する段差が形成されているので、バネ荷重の調整時にバネ受筒をうっかり回し過ぎることもなく、保守、整備など作業性が改善される。
【0044】
第4の発明によれば、カム筒が同一形状の2つの分割された半円筒で構成され、かつ両方の分割部材の突き合せ面に間隙をもたせて前記凹部が形成される一方、カム筒の内周は前記固定部材の内周に設けたガイド筒に嵌合するので、カム筒は半円筒形に2つに分割され、各々は同一形状のため、カム筒の製作が容易となり、コストダウンも図れる。
【0045】
第5の発明によれば、固定部材とカム筒とが一体に形成されているので、カム筒が安定し、その強度も高まり、また組み立ても容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】バネ受筒を示すもので、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図3】固定カップ部材を示すもので、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図4】カム筒を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は展開図である。
【図5】カム筒の他の実施例を示すもので、その展開図である。
【図6】従来例を示す側面図である。
【符号の説明】
11 ダンパー本体
12 ピストンロッド
13 バネ
15 バネ受筒
17 固定カップ部材
18 カム筒
20 突起
21 カム面
22 ガイド部
23 バネ受
27,28 凹部
32 段差

Claims (5)

  1. ダンパーのシリンダ外周と、ピストンロッド先端との間にバネを介在させ、バネの有効セット長を調整自在とした後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置において、ピストンロッドの先端に設けた固定部材と、この固定部材に係止するように同軸的に配置したカム筒と、これら固定部材、カム筒の外側に回転可能に嵌合したバネ受筒と、バネ受筒の外側に設けたバネの一端を受けるバネ受と、カム筒のカム面に係止するバネ受筒の内側に設けた突起と、バネの一部と嵌合するようにバネ受筒の外周に設けたガイド部とを備えることを特徴とする後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置。
  2. 前記固定部材とカム筒とは同一外径に設定され、かつバネ受筒の内周突起を通過させるように外周面に縦方向に延びる凹部を備える請求項1に記載の後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置。
  3. 前記カム筒のカム面は、段階的に高さが変化するカム段に形成され、かつその両端において移動を阻止する段差が形成されている請求項1または2に記載の後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置。
  4. 前記カム筒が同一形状の2つの分割された半円筒で構成され、かつ両方の分割部材の突き合せ面に間隙をもたせて前記凹部が形成される一方、カム筒の内周は前記固定部材の内周に設けたガイド筒に嵌合する請求項1〜3のいずれか一つに記載の後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置。
  5. 前記固定部材とカム筒とが一体に形成されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の後輪用緩衝器のバネ荷重調整装置。
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