JP3547352B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は孔版印刷装置に係り、特に孔版印刷によって印刷用紙に印刷を施し、その印刷済みの印刷用紙を排紙台などに向けて排紙する機能を備えた孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
製版された孔版原紙が着版されて印刷用紙に印刷を施すように回転駆動される版胴を備えた従来の孔版印刷装置では一般に、版胴とそれに対面する押圧手段とによって、印刷用紙を搬送しながら印刷用紙に対して印刷を施し、その印刷された印刷用紙を例えばベルト搬送装置のような搬送機構によって排紙口まで搬送し、排紙台あるいは排紙トレイと呼ばれるような排紙受け部(以後、排紙台と呼ぶ)へ向けて排出している。
【0003】
このような孔版印刷装置においては一般に、通常の印刷工程に入る前に、製版された孔版原紙を皺が生じたり破損したりすることなく版胴に対して確実に着版させるために、通常の印刷工程よりも小さい速度で版胴を回転させて、孔版原紙を版胴の周りに巻き付けると共に印刷用紙を送り込んで、いわゆるファーストプリントあるいは版付動作と呼ばれる工程を行なっている。このような工程によれば、孔版原紙を確実に着版させることができると共に、版胴からのインクで押圧手段等が汚れることを防ぐことができる。このようにしてファーストプリントによって印刷が施された印刷用紙は、搬送機構によって搬送されて排紙口から排紙台に向けて排紙される。
【0004】
また、そのようにして孔版原紙を版胴に着版した後、印刷用紙に対する通常の印刷工程を実行するが、その際には印刷スループットを高めるために、一般にファーストプリントのときよりも速い回転速度で版胴を回転させるようにしている。このような場合には、一般に版胴と連動して搬送機構の運転速度(例えばベルト搬送機構の場合ではそのベルト上面が動く線速度)も速くなり、結果的にそのとき排出される印刷済みの印刷用紙の排出速度も速くなる。
【0005】
ところで、上記のようなファーストプリント工程の場合、通常よりも遅い速さで回転する版胴と連動して搬送機構による印刷用紙の搬送速度が遅くなると、排紙台に向かって排出される印刷済みの印刷用紙の排出速度も遅くなってしまい、排紙台に所定の状態で到達できないで途中で停止するといった場合があり、この途中で停止している印刷用紙が障害となって、その後に通常の印刷工程で印刷されて排出されて来た印刷用紙が排紙ジャム状態を引き起こす場合があった。
【0006】
そこで、このような不都合を解消するために、ファーストプリント工程が終了した後にその印刷済みの印刷用紙を搬送する速度を増大する技術が、例えば特許第2679896号等により提案されている。またその他にも、ファーストプリント工程の際の版胴における印刷用紙の搬送速度(線速度)よりも大きな速度(線速度)で排紙するという技術なども提案されている。このような技術はファーストプリント工程において通常の印刷工程よりも遅い速さで版胴を回転させた場合でも、排紙手段による搬送速度を大きくしておくなどして印刷済みの印刷用紙の排紙される速さを大きくすることによって、ファーストプリントの際に排紙される印刷用紙が排出速度不足に起因して途中で停止することを防いで、その後の排紙ジャム状態の発生等を解消できるようにするというものである。
【0007】
また、一般に従来の孔版印刷装置では、版胴と搬送機構とを一つの駆動力源から連動して駆動する場合が多く、その場合には、例えば通常の印刷の際に版胴の回転の速さを速くすると、それに連動して搬送機構の搬送速度(運転速度)も速くなるので、そのように版胴と搬送機構との全体を増速させることによって、ファーストプリントの際などに印刷用紙が排紙口と所定位置との間に停止するという不都合を回避できる場合も多い。
【0008】
ところが、通常の孔版印刷工程において印刷速度を大きくすると、最終的な印刷用紙の排出速度も大きくなり過ぎて、印刷用紙が勢いよく飛び過ぎてしまい、かえって用紙ジャムを引き起こすという場合や、逆に印刷速度を低くした場合には最終的な印刷用紙の排出速度が不足して、上記のファーストプリントのときと同様に、排紙される印刷用紙が途中で停止してしまい、後続して印刷済みの印刷用紙が排紙されて来たときに排紙ジャムを引き起こす要因となる場合があった。また、そのように途中で印刷用紙が停止した場合に外部からユーザが手作業で用紙揃えを行うと、既に排紙台上に載置されている印刷用紙に付着しているインクが、さらにその上に載置された別の印刷用紙の裏面側に付着してしまうという、いわゆる裏移りの問題が生じる場合もあった。
【0009】
そこで、このような印刷時に排紙された印刷用紙が途中で停止する現象に起因した不都合を解決するために、版胴とベルト搬送機構とが一つの駆動力源によってプーリーや歯車等を介して駆動される装置の場合には、そのそれぞれの動力伝達機構における回転速度比を変化させて、印刷速度が小さいときには版胴の外周面の線速度に対するベルト搬送機構の表面の線速度の比(以下、線速度比と呼称)を大きくし、印刷速度が大きいときには版胴の外周面の線速度に対するベルト搬送機構の表面の線速度比を小さくする、あるいはそのような線速度比を可変にするために版胴とベルト搬送機構とをそれぞれ別個のモータによって各別に駆動する、という技術が、例えば特開平8−67387号公報によって提案されている。この手法は、版胴の回転速度が小さいときにはベルト搬送機構の線速度比すなわち版胴の回転の線速度に対するベルト搬送機構の上面(印刷用紙を載置して搬送する側の面)の線速度の比kを例えばk=1.8のように大きくし、版胴の回転速度が大きいときにはベルト搬送機構の線速度比kを例えばk=1.2のように前記のk=1.8よりも下げて、ベルト搬送機構の上面の線速度を低くするようにして、ベルト搬送機構による印刷用紙の搬送速度を調節する。このように線速度比を変化させることによって、排紙ジャムを発生することなく印刷用紙の排紙を安定して行なうというものである。
【0010】
また、版胴で印刷用紙に印刷を施している途中でその版胴の回転速度を増大させると、印刷用紙の濃度バランスが崩れたり、孔版原紙に皺が生じるなどの不都合を引き起こすことになるので、その印刷用紙の搬送方向の後端位置を検知し、それに基づいて印刷用紙が版胴から離間するタイミングを把握して、その離間タイミングに合わせて版胴の回転速度を増大させるという技術なども種々提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような技術によって版胴の回転速度や搬送機構による搬送速度を変化させても、その印刷用紙の用紙サイズが異なると、排紙台に向かって排出された印刷済みの印刷用紙がその排紙台上に最終的に停止する位置や状態が顕著に異なったものとなり、これに起因して排紙ジャムが発生するという問題がある。ここで、仮に版胴の回転速度や搬送機構による搬送速度を上記のような技術を用いて排紙ジャムが発生しないように設定した場合でも、例えばA3判のように大きな判の場合とB5判のように小さな判の場合とでは、排紙された印刷済みの印刷用紙が最終的に停止する位置は、顕著に異なったものとなる。
【0012】
例えば、版胴の回転速度および搬送機構による搬送速度(搬送機構の運転速度)を、A5判のように小さな用紙サイズの印刷用紙を排紙する場合に好適な速度に設定したとしても、それと同じ設定で、例えばA3判のように大きな印刷用紙を排紙すると、その印刷用紙の最終的な排出速度が排紙台などの上の所定の位置に到達するには不十分な排出速度となり、これに起因して、印刷用紙が途中で停止してしまう場合がある。また逆に、例えばA3判のような大きさの印刷用紙を排紙する場合に好適な設定であったとしても、それよりも小さな、例えばB4判のような印刷用紙を排紙すると、今度は排出速度が大き過ぎてしまい、一般に排紙台に配置されている衝突壁と呼ばれるようなストッパに当った印刷用紙が湾曲したり折れ曲ったりして停止する場合も多く、これに起因して後続して排紙されて来た印刷用紙とで排紙ジャム状態を引き起こす場合がある。また、排紙された印刷用紙がストッパに強く当って跳ね返り過ぎて、所定の位置からずれた位置に停止してしまい、甚だしくは後から手作業で紙揃えをしなおすことが必要となる場合がある。
【0013】
本発明は上記のような問題点を鑑みて成されたもので、孔版印刷装置において、種々の異なる用紙サイズの印刷用紙に対して印刷を施す場合であっても、またファーストプリントの際でも通常印刷の際でも、排紙される印刷済みの印刷用紙を、排紙ジャム状態を発生させることなく所定の排紙位置あるいは載置位置に的確に停止(載置)させることを達成することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明による孔版印刷装置は、孔版原紙が巻装されて回転しながら(印刷用紙を繰出しつつ)印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、前記印刷用紙の仕様に対応して、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御することを特徴とするものである。
【0015】
すなわち、印刷用紙を最終的に排紙台の所定の位置に停止させることができるような的確な排出速度は、印刷用紙の用紙サイズや重量といった仕様に対応して異なったものとなる。そこで本発明による孔版印刷装置は、印刷用紙の仕様に対応して、印刷用紙を最終的に排紙受け部の所定位置に停止できるような的確な排出速度で排出するようにしたものである。
【0016】
なお、排紙手段とは、ここでは印刷用紙を排出する機構を意味するものであって、さらに詳細には、最終的に排紙口で印刷用紙を付勢して排出させるような排紙機構であってもよく、印刷済みの印刷用紙を排紙口まで搬送し、さらに排出させるまでを行なうような排紙機構であってもよい。あるいは、印刷済みの印刷用紙を排紙口まで搬送する機構とさらにそれを排紙口から付勢して排出させる機構とを併せ用いた排紙機構であってもよい。
【0017】
本発明による孔版印刷装置は、孔版原紙が巻装されて回転しながら印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を搬送し排紙受け部に向けて排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、前記印刷用紙の仕様を検知する用紙仕様検知手段と、検知された前記印刷用紙の仕様に基づいて、前記排紙手段の搬送速度を制御することによって、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御する排出速度制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
すなわち、用紙仕様検知手段によって印刷用紙の仕様を検知し、その検知された仕様に基づいて排紙手段による印刷用紙の搬送速度を制御して、印刷用紙をその用紙サイズに対応して最終的に所定の位置に停止させることができるような的確な排出速度で排出するようにしたものである。
【0019】
なお、排紙受け部とは、例えば排紙台や排紙トレイと呼ばれるようなものであって、排紙口から排紙された印刷済みの印刷用紙が載置される平坦な受け部分を備えたものを意味している。その意味で、孔版印刷装置に元から備えられていた排紙台や排紙トレイは言うまでもなく、その他にも、例えば孔版印刷装置本体に対していわゆる後付けで装着あるいは換装される排紙台や、後付けで孔版印刷装置本体に装着されるソータの排紙トレイなどについても、ここでは排紙受け部として呼ばれるものに含まれるものであることは言うまでもない。また、いわゆる孔版印刷装置や複写機のような印刷装置あるいは複写装置においては一般にストッパのような衝壁が設けられたものがよく用いられているが、そのような構造の排紙台などが上記の排紙受け部として好適なものである。ただしこれのみには限定されず、排紙口付近の一面以外の3方の周囲を囲むように衝壁が設けられたものでもよく、あるいはトレイ状のものなどでもよいことは言うまでもない。
【0020】
また、排紙手段による印刷用紙の搬送速度とは、排紙手段の機構の運転速度とは必ずしも一致するとは限らない。換言すれば、排紙手段として例えばベルト搬送機構を採用した場合などには、版胴から繰り出された印刷用紙はベルトの表面を滑りながら移動することもあるので、ベルト搬送機構の運転速度(ベルト表面の線速度)とその上を搬送される印刷用紙の搬送速度とは、必ずしも一致しない場合があり得る。従って、このような搬送時の印刷用紙の滑り現象なども計算に入れた上で、印刷用紙を所定位置に停止させることができるような的確な排出速度が得られるように排紙手段を制御することが望ましい。
【0021】
本発明による孔版印刷装置は、孔版原紙が巻装されて回転しながら印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を搬送し排紙受け部に向けて排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、前記印刷用紙の仕様を検知する用紙仕様検知手段と、検知された前記印刷用紙の仕様に基づいて、前記版胴の回転速度と前記排紙手段の搬送速度とを制御することによって、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御する排出速度制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0022】
すなわち、用紙仕様検知手段によって印刷用紙の仕様を検知し、その検知された仕様に基づいて、その印刷用紙に対して印刷を施す際の版胴の回転速度を制御すると共に、そのときの版胴の回転速度と相まって最終的に排出される印刷済みの印刷用紙が最終的に所定位置に停止するような的確な排出速度となるように、排紙手段による印刷用紙の搬送速度を制御するものである。
【0023】
また、孔版原紙が巻装されて回転しながら印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を搬送し排紙受け部に向けて排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、前記印刷用紙の仕様を検知する用紙仕様検知手段と、前記版胴の回転速度と前記印刷用紙の仕様とに基づいて、前記排紙手段の搬送速度を制御することによって、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御する排出速度制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
すなわち、用紙仕様検知手段によって検知された印刷用紙の仕様と、そのときの版胴の回転速度とに基づいて、版胴の回転速度と相まって最終的に排出される印刷済みの印刷用紙が所定位置に的確に停止できるような的確な排出速度となるように、排紙手段による印刷用紙の搬送速度を制御するものである。
【0025】
ここで、上記の仕様としては、前記印刷用紙の用紙サイズまたは外形寸法および1枚当たりの重量のうち少なくともいずれか一つであるようにすることが望ましい。
【0026】
すなわち、多種類の仕様のうちの、どの仕様の場合でも、印刷用紙を所定の位置に的確に停止させるために、その印刷用紙を排紙する際の最終的な排出速度をその仕様に基づいて変化させるが、このような排出速度の制御を行うために特に必要な(検知すべき)情報としては、印刷用紙の用紙サイズあるいは外形寸法および重量のうち少なくともいずれか一つである。それらのうち、用紙サイズを検知することがまず第1に望ましい。印刷用紙としては一般に、いわゆる普通紙が用いられる場合が多いが、その用紙サイズは例えばB5からA2までというように、最大のものと最小のものとの間で外形寸法が2倍以上も異なっており、その中のバリエーションとしてA2,A3,A4,B3,B4,B5…というように、多種類の用紙サイズが用意されている。そのように用紙サイズが種々異なっていると、それに対応して印刷用紙の重量も異なったものとなり、またその印刷用紙が排出される際に空気抵抗を受ける面積も異なったものとなるので、それが排出された後の最終的な停止位置や状態を異ならせる要因となる。あるいは途中で停止したり飛び過ぎたりして排紙ジャムを生じさせる要因にもなる。一方、印刷用紙として一般的に用いられることの多い普通紙における用紙の厚さについては、例えばA4判の場合の一例を述べると、1平方メートルあたり64グラムというように、ほぼ規格化されているので、その重量は主に用紙サイズに依存して変化することになる。このように定型の印刷用紙の場合には、重量については用紙サイズに対応して定まる場合が多い。
【0027】
ただし、そのような普通紙の他にも、例えばハガキやメッセージカードのような特殊な仕様の印刷用紙(印刷対象物)もある。またそれらは用紙のサイズも厚さも種々異なっているので、重量は必ずしも用紙サイズに依存して定まるとは限らない。従って、このような場合には、印刷用紙の重量を検知することが望ましい。あるいは、さらに外形寸法や材質をも含めた仕様を検知するようにしてもよい。
【0028】
このように、排紙された印刷用紙を所定の位置に停止させるためには、印刷用紙の用紙サイズや重量といった仕様に対応した的確な排出速度で排出することが必要となる。そこで、そのような排出速度の制御を行うための重要なファクターである印刷用紙の用紙サイズや重量などの仕様を検知する。なお、検知することが望ましい仕様の種類としては、用紙サイズのみでもよく、または重量のみでもよい。あるいは用紙サイズと重量との両方でもよい。あるいはその他にも、印刷用紙の材質や厚さなどを検知するようにしてもよい。
【0029】
また、前記排出速度制御手段は、前記排紙受け部の所定の領域内に前記印刷用紙が停止するように前記排出速度を制御するものとしてもよい。
【0030】
すなわち、排紙された印刷用紙が最終的に排紙受け部の所定の領域内に停止するような的確な排出速度となるように、排紙手段による印刷用紙の搬送速度を制御することも好ましい。
【0031】
また、前記版胴の回転速度と前記排紙手段の搬送速度とを、互いに独立して制御可能であるようにしてもよい。
【0032】
また、前記版胴を駆動するためのモータと前記排紙手段を駆動するためのモータとが各別に設けられているようにすることは、本発明に係る孔版印刷装置における簡易で実際的な一態様である。
【0033】
すなわち、上記のような版胴の回転速度と排紙手段による搬送速度とをそれぞれ的確な速度となるように制御するためには、版胴を駆動するためのモータと排紙手段を駆動するためのモータとを各別に設けたものとすることにより、版胴の回転速度と排紙手段の搬送速度とを互いに独立して制御可能とすることができるので望ましい。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、孔版印刷装置において、印刷用紙の仕様に対応して、排紙手段から排出される印刷用紙の排出速度を制御することにより、印刷用紙の用紙サイズが異なるものとなった場合でも、またファーストプリントの場合や通常印刷の場合でも、排紙される印刷済みの印刷用紙を、排紙ジャム状態を発生させることなく所定位置(あるいは載置位置、以下同様)に的確に停止させることができる。
【0035】
また、用紙仕様検知手段によって印刷用紙の仕様を検知し、その検知された仕様に対応して所定の位置に的確に停止させることができるような的確な排出速度で印刷用紙を排出することにより、印刷用紙の用紙サイズが異なる場合でも、またファーストプリントの場合および通常印刷の場合のいずれでも、排紙される印刷済みの印刷用紙を、排紙ジャム状態を発生させることなく最終的に排紙受け部上の所定位置に的確に停止させることができる。
【0036】
また、検知された印刷用紙の仕様に基づいて、版胴の回転速度と排紙手段の搬送速度とを制御することにより、印刷用紙に対して印刷を施す際に的確な回転速度で版胴を回転させ、またそのときの版胴の回転速度と相まって最終的に排出される印刷済みの印刷用紙を的確な排出速度で排出することができ、その結果、排出された印刷用紙を最終的に所定位置に的確に停止させることができる。
【0037】
また、版胴の回転速度と検知された印刷用紙の仕様とに基づいて、排紙手段の搬送速度を制御することにより、排紙手段から排出される印刷用紙の排出速度を、所定位置に停止できるような的確な排出速度とすることができ、その結果、排出された印刷用紙を最終的に所定位置に的確に停止させることができる。
【0038】
また、上記の仕様として、的確な排出速度を割り出すための重要なファクターである印刷用紙の外形寸法および1枚当たりの重量のうち少なくともいずれか一方を検知することによって、それに基づいて割り出された的確な排出速度で印刷用紙を排出することができ、その結果、印刷用紙を最終的に所定位置に的確に停止させることができる。
【0039】
また、印刷用紙が排紙受け部の所定の領域内に停止することができるような最終的な排出速度が得られるように、その印刷用紙を搬送する搬送速度を制御することによって、排出された印刷用紙を最終的に所定位置に的確に停止させることができる。
【0040】
また、版胴の回転速度と排紙手段の搬送速度とを完全に独立して制御することによって、その各々を的確な速度および搬送力あるいはトルクで各別に動作させるようにすることができる。
【0041】
また、版胴を駆動するためのモータと排紙手段を駆動するためのモータとを各別に設けたことにより、版胴の回転速度と排紙手段による搬送速度とをそれぞれ的確な速度となるように機構的にもまた時間的(動作タイミング的)にも独立して自由に制御することを、簡易かつ実際的に達成することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1は本実施の形態の孔版印刷装置の概要構成を示す図である。この孔版印刷装置は、孔版原紙1が巻装されて回転しながら印刷用紙2を搬送しつつその印刷用紙2に印刷を施す版胴3と、版胴3から繰り出される印刷用紙2を搬送し、それを排紙台(排紙受け部)4に向けて排出するベルト搬送機構(排紙手段)5と、印刷用紙2の仕様を検知する用紙仕様検知部(用紙仕様検知手段)6と、検知された印刷用紙2の仕様に基づいて、ベルト搬送機構5の搬送速度を制御することによって、排紙台4に向けて排出される印刷用紙2の排出速度を制御する排出速度制御部(排出速度制御手段)7を含む制御部8とを、その主要部に備えている。
【0044】
さらには、ロール状に保持されたロールマスタと呼ばれる未穿孔の孔版原紙1と、印刷用の原稿(図示省略)を読み取る原稿読取部9と、読み取られた原稿の画像に基づいて、繰り出されて来た未穿孔の孔版原紙1に対して感熱穿孔を施すサーマルヘッド10と、そのサーマルヘッド10との間に孔版原紙1を押圧しつつ繰り出すためのプラテンローラ11と、感熱穿孔済みの孔版原紙1が版胴3に所定の状態に着版されると、その後端部をロール状の未穿孔の孔版原紙1側から切り離すカッター機構12と、版胴3との間に印刷用紙2を挟んで押圧しつつ繰り出しながら印刷を施すためのプレスローラ13と、ユーザの手入力などによって印刷モードの設定が入力されるモード設定部16と、未印刷の印刷用紙2が載置される給紙台14と、給紙台14から未印刷の印刷用紙2を版胴3へと給紙する給紙機構15a,15bと、排出されて来た印刷済みの印刷用紙2が載置される排紙台4とを備えている。また上述の制御部8は、サーマルヘッド10、プラテンローラ11、カッター機構12、プレスローラ13、版胴3等の動作についても制御するものである。
【0045】
まず、これから行う印刷モードの情報をユーザが手入力によってモード設定部16に対して入力する。その印刷モードの情報とは、例えば用紙サイズ、印刷に用いられるインクの色、印刷部数、原稿の拡大/縮小率、印刷濃度など、これからユーザが印刷する予定の印刷物の設定あるいは仕様に関する情報である。従って、このときモード設定部16に入力される印刷モードの情報の中には一般に、用紙サイズの情報が含まれている場合が多い。そこで、用紙仕様検知部6は、まずこのとき入力された情報の中から用紙サイズの情報を抽出し、これを印刷用紙2の仕様(の情報)として検知する。なお、このモード設定部16におけるその他の一般的な動作、例えば印刷濃度の設定がユーザによってインターフェイスを介して入力されると、その入力に基づいて制御部8がプレスローラ13と版胴3との間の押圧力やインクの供給量を制御するといった一般的な孔版印刷装置と同様の動作については、説明の簡潔化を図るために、その概要の説明については省略する。
【0046】
原稿読取部9では、原稿載置台に載置された原稿(図示省略)の画像を、イメージセンサ17によって光学的に読み取る。このときイメージセンサ17が読み取りを行う領域の範囲は、上記のモード設定部16に入力された用紙サイズの情報などに基づいて一般的な孔版印刷装置と同様に制御されるものであることは言うまでもない。こうしてイメージセンサ17によって光学的に読み取られた原稿の画像情報は電気信号として一旦制御部8内の画像データ処理部18に伝送されて所定の信号処理等が施された後、サーマルヘッド10を駆動するための画像データとしてサーマルヘッド10に伝送される。
【0047】
サーマルヘッド10では、未穿孔の孔版原紙1が繰り出されて来ると、それに対して、上述の原稿に対応して得られた画像データに基づいて感熱穿孔を施す。そして原稿に対応した感熱穿孔が終了すると、カッター機構12が動作して、それまでロールから繰り出されて帯状のままであった孔版原紙1の穿孔済みの部分が枚葉(1枚)の状態となるように、その後端部に相当する部分をカットする。
【0048】
こうして1枚の孔版原紙1として、いわゆる製版が完了した孔版原紙1は、搬送方向先端部をクランプされて版胴3の外周に巻き付けられる。一方、未印刷の印刷用紙2が給紙台14から給紙機構15a,15bによって版胴3へと供給されて来る。この時点から、実質的にいわゆるファーストプリントが開始されることになるが、このとき既に、版胴3の回転速度もベルト搬送機構5の運転速度も、印刷用紙2の仕様(即ちここでは用紙サイズ、以下同様)に対応して決定される運転速度に制御されている。すなわち、例えばファーストプリント時の版胴3の回転速度モードが装置本来の設定あるいはユーザによる手入力などによって、予めファーストプリントに好適な版胴3の回転速度に決定されており、さらにその版胴3の回転速度とあいまって最終的に排出された印刷用紙2を所定の位置に的確に停止できるような排出速度が得られるように、ベルト搬送機構5の運転速度(即ちベルト表面の線速度)が決定される。しかも、そのベルト搬送機構5の運転速度は、排紙される印刷用紙2の仕様が種々に変化しても、その排出された印刷用紙2が最終的に排紙台4上の的確な位置に停止するような排出速度を得ることができるように、印刷用紙2の仕様に対応して決定される。このようにして回転速度および運転速度がそれぞれ制御された状態の版胴3およびベルト搬送機構5に対して印刷用紙2が供給されて、ファーストプリントが実行される。そして印刷済みの印刷用紙2は、ベルト搬送機構5から前記のような排出速度で排紙台4に向かって排出される。このようなファーストプリントの際の印刷用紙2に対する印刷から搬送および排紙を介して最終的に排紙台4に停止させるまでの工程について、図2乃至図4を参照しながら説明する。
【0049】
図2は、この孔版印刷装置の版胴3およびベルト搬送機構5ならびに排紙台4の概要構成を模式的に示す図、図3はその機構的な概要構成を示す一部省略斜視図、図4はそれらを含めてファーストプリントを実行する際の、この孔版印刷装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【0050】
上述したように印刷モードの情報がモード設定部16に入力されると(S1)、制御部8の中に設けられた用紙仕様検知部6は、その入力された印刷モードの情報のうちから、用紙サイズの情報の入力を検知して抽出する(S2)。
【0051】
その用紙サイズの情報に基づいて、排出速度制御部7は、ベルト搬送機構5の運転速度をあらかじめ定めておいた最適な速度となるように制御する。さらに詳細には、版胴3の回転によって繰り出される印刷用紙2の線速度とあいまって、ベルト搬送機構5から最終的に排出された印刷済みの印刷用紙2を所定位置に的確に停止できるような排出速度が得られるように、ベルト搬送機構5の運転速度を制御する。
【0052】
ここで、この第1の実施の形態では、版胴3の回転速度は低速モード(20rpm)および高速モード(40rpm)の2モードの中から一方を選択して設定することができるようになっている。この版胴3の回転速度モードの選択については、例えばユーザがモード設定部16に対して手入力によって一方のモードを選択する命令を入力するようにしてもよく、あるいは制御部8などが、あらかじめ定めておいた用紙サイズと版胴3の回転速度との(ファーストプリント時における)最適な組み合わせの中から、そのときの用紙サイズに基づいて自動的に選択するようにしてもよいことは言うまでもない。いずれにしても、未印刷の印刷用紙2が供給されてファーストプリントが開始する際までには、版胴3の回転速度は既に設定されており、その設定速度で版胴3が回転するようにその版胴を駆動するためのモータ20が制御される。
【0053】
一方、排出速度制御部7は、ファーストプリントにおける版胴3の回転速度が低速モード(20rpm)であるか高速モード(40rpm)であるかを検知し、その版胴3の回転速度の情報を用紙サイズの情報と加味した上で、ベルト搬送機構5の運転速度を制御する。その制御は直接的にはベルト駆動用のモータ21に対して行なわれる。
【0054】
すなわち、図4および図5に示すように、版胴3の回転速度が20rpm(低速モード)であって(S3のLおよびS4)、かつ用紙サイズがB4判以上であることが検知された場合には(S5のY)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で60rpmに制御する(S6)。あるいは、用紙サイズがB4判未満であることが検知された場合には(S5のN)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で40rpmに制御する(S7)。このように、版胴3の回転速度が低速のとき、用紙サイズがB4判以上と大きい場合にはベルト搬送機構5の運転速度を高くし、用紙サイズがB4判未満と小さい場合にはベルト搬送機構5の運転速度を低速の版胴3の回転速度と同速度にする。
【0055】
また、版胴3の回転速度が40rpm(高速モード)であって(S3のHおよびS8)、かつ用紙サイズがB4以上であることが検知された場合には(S9のY)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で40rpmに制御する(S10)。あるいは用紙サイズがB4未満であることが検知された場合には、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で30rpmに制御する(S11)。このように、版胴3の回転速度が中速のとき、用紙サイズがB4判以上と大きい場合にはベルト搬送機構5の運転速度を中速の版胴3の回転速度と同速度とし、用紙サイズがB4判未満と小さい場合にはベルト搬送機構5の運転速度をむしろ版胴3から繰出される印刷用紙2の線速度よりも低い速度にする。
【0056】
このようにして、ファーストプリントの際に、印刷用紙2の用紙サイズがB3判とB5判のように顕著に異なる場合でも、また版胴3が低速で回転している場合でも、高速で回転している場合でも、その用紙サイズに適合した好適な排出速度で最終的に印刷用紙2を排出することができ、その結果、排出された印刷用紙2を、排紙ジャムのような不都合な事態を生じることなく、最終的に排紙台4上の所定位置に的確に停止させることができる。
【0057】
ここで、本実施の形態の孔版印刷装置では(即ち下記の第2および第3の実施の形態も同様に)、直径がφ=0.18[m]の版胴3を用いている。従って、上記のような版胴3の回転速度やベルト搬送機構5の運転速度の回転速度換算量(これを角速度ω[rpm]とする)を、いわゆる線速度v[m/s]に換算する場合には、v=πφω/60=0.003πωと表されるような計算を行えばよいことは言うまでもない。
【0058】
また、本実施の形態では、ファーストプリントの際の版胴の高速モードにおける回転速度を40rpmとしたが、この高速モードの回転速度としては、孔版原紙を版胴に着版させる際に皺や破損等を引き起すことの無いような範囲内で、より高速な回転速度に設定することが望ましいことは言うまでもない。
【0059】
(実施形態2)
この第2の実施の形態では、本発明による孔版印刷装置における通常印刷を行なう場合について説明する。なお説明の簡潔化を図るために、以下の説明では第1の実施の形態と同様の部位については同一の符号を付して述べる。図6は、版胴3の回転速度とベルト搬送機構5の運転速度との組み合わせを示す図、図7はこの第2の実施の形態の孔版印刷装置における通常印刷時の主要動作を示すフローチャートである。
【0060】
例えば50枚/1原稿(ロット)といった通常印刷が開始される際には一般に、そのとき用いられる印刷用紙2の用紙サイズをはじめとした印刷用紙2の仕様が既にモード設定部16に入力されている。そこで、印刷モードの情報が入力されると(S701)、それを用紙仕様検知部6が検知し、その入力された情報の中から用紙サイズの情報を抽出する(S702)。
【0061】
その用紙サイズの情報に基づいて、排出速度制御部7は、ベルト搬送機構5の運転速度を、あらかじめ定めておいた最適な速度となるように制御する。さらに詳細には、版胴3の回転によって繰り出される印刷用紙2の線速度とあいまって、ベルト搬送機構5によって加速または減速される印刷用紙2の最終的な搬送速度すなわち排出速度が、その印刷用紙2を所定位置に停止できるような的確な排出速度となるように、その印刷用紙2の用紙サイズに対応してベルト搬送機構5の運転速度を制御する。
【0062】
ここで、この第2の実施の形態の孔版印刷装置では、通常速度で印刷を行うための版胴3の回転速度を中速モード(60rpm)とし、また高速印刷を行うための版胴3の回転速度を高速モード(120rpm)として、それら2モードのうちのいずれか一方をユーザが選択することができるように設定されているものとした。このようなモードの選択的な設定手法については、第1の実施の形態と同様に、モード設定部16に対してユーザが手入力などにより入力すればよいことは言うまでもない。また、この版胴3の回転速度モードの設定は通常印刷が行われている期間中は一定であって、その印刷開始の時点では既に用紙サイズに適合した速度設定が決定済みとなっており、印刷用紙2が版胴3に供給される際にはその速度設定通りに版胴3およびベルト搬送機構5が定速で動作していることも上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0063】
排出速度制御部7は、図6に示したように、版胴3の回転速度が60rpm(中速モード)であって(S703のLおよびS704)、かつ用紙サイズがB4判以上であることが検知された場合には(S705のY)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で110rpmに制御する(S706)。あるいは用紙サイズがB4判未満であることが検知された場合には(S705のN)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で90rpmに制御する(S707)。このように、版胴3の回転速度が通常印刷時における中速モードのとき、用紙サイズがB4判以上と大判の場合には、ベルト搬送機構5の運転速度を版胴3の回転速度よりも大幅に高くし、用紙サイズがB4判未満と小型判の場合にもベルト搬送機構5の運転速度を高くするが、大判の場合ほどには高くしない。
【0064】
また、版胴3の回転速度が120rpm(高速モード)であって(S703のHおよびS708)、かつ用紙サイズがB4判以上であることが検知された場合には(S709のY)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で80rpmに制御する(S710)。あるいは用紙サイズがB4未満であることが検知された場合には(S709のN)、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で70rpmに制御する(S711)。このように、版胴3の回転速度が通常印刷時における高速モードのとき、用紙サイズがB4判以上と大判の場合には、ベルト搬送機構5の運転速度を版胴3の回転速度よりも顕著に低くする。また用紙サイズがB4判未満と小型判の場合には、ベルト搬送機構5の運転速度を大判の場合よりもさらに低くする。このように、通常印刷の際に版胴3の回転速度が高速の場合には、ベルト搬送機構5の運転速度を、版胴3によって繰出される印刷用紙2の線速度よりも低くする方が良い。これは、排出速度を高くし過ぎると、排出の際に勢いが付き過ぎてしまい、排紙台4のストッパ(衝壁)41などに衝突して跳ね返った拍子にその印刷用紙2が湾曲したり折れ曲るなどして、その後に継続して排紙されて来た別の印刷用紙2と共に排紙ジャムを発生させたり、跳ね返り過ぎて所定位置から外れた位置に停止してしまうといった不都合な事態を引き起こす要因となる場合があるからである。このように、印刷済みの印刷用紙2は、適切な範囲内の排出速度で排紙台4に向けて排出させることが望ましい。従って、そのような適切な範囲内の排出速度で印刷用紙2を排出することができるように、版胴3の回転速度も計算に入れた上で、ベルト搬送機構5による印刷用紙2の搬送速度を制御することにより、適切な排出速度で印刷用紙2を排紙台4に向けて排出させて、最終的に所定の位置に的確に停止させることができる。
【0065】
このようにして、通常印刷の際に、印刷用紙2の用紙サイズがB3とB5のように顕著に異なる場合でも、また版胴3の回転速度が中速あるいは高速いずれの場合でも、用紙サイズに適合した好適な排出速度で印刷用紙2を排出することができ、その結果、排出された印刷用紙2を、排紙ジャムのような不都合な事態を生じることなく、最終的に排紙台4の平坦部上の所定位置に的確に停止させることができる。
【0066】
(実施形態3)
この第3の実施の形態では、本発明による孔版印刷装置における、通常印刷を行なう場合について図7を参照しつつ説明する。なお説明の簡潔化を図るために、以下の説明では第1および第2の実施の形態と同様の部位については同一の符号を付して述べる。図8は、版胴3の回転速度とベルト搬送機構5の運転速度との組み合わせを示す図、図9はこの第3の実施の形態の孔版印刷装置における通常印刷時の主要動作を示すフローチャートである。
【0067】
例えば200枚/1原稿(ロット)といった通常印刷が行われる場合には一般に、そのとき用いられる印刷用紙2の用紙サイズをはじめとした印刷用紙2の仕様が既にモード設定部16に入力されている(S901)。そこで、入力された印刷モードの情報のうち用紙サイズの情報を用紙仕様検知部6が検知してそれを抽出する(S902)。
【0068】
その用紙サイズの情報に基づいて、排出速度制御部7は、版胴3の回転速度およびベルト搬送機構5の運転速度の両方を、それぞれに対してあらかじめ定めておいた最適な速度となるように制御する。さらに詳細には、版胴3の回転によって繰り出される印刷用紙2の線速度とあいまってベルト搬送機構5によって加速または減速される印刷用紙2の最終的な搬送速度すなわち排出速度が、所定位置に印刷用紙2を停止できるような的確な排出速度となるように、その印刷用紙2の用紙サイズに対応して版胴3の回転速度とベルト搬送機構5の運転速度との両方を制御する。
【0069】
この第3の実施の形態では、高速印刷を実現するために、B4判未満の印刷用紙2に対する通常印刷の際には(S903のN)、版胴3の回転速度を中速モード(60rpm)とし(S904)、B4判以上の印刷用紙2に対する通常印刷の際には(S903のY)、版胴3の回転速度を高速モード(120rpm)とする(S905)ことができるように、版胴3の回転速度が印刷用紙2の用紙サイズに対応して可変であるように設定されている。このような用紙サイズに対応した版胴3の回転速度モードの設定の切り替えは、用紙仕様検知部6によって検知された用紙サイズの情報に基づいて、排出速度制御部7によって行われるようにすればよい。あるいは、版胴3の回転速度を制御する制御系が制御部8内に別に設けられている場合などには、その制御系によって行われるようにしてもよいことは言うまでもない。なお、この版胴3の回転速度モードの設定は、通常印刷が行われている間は一定で、その印刷開始の時点では、既に用紙サイズに適合した速度が設定済みとなっており、印刷用紙2が版胴3に供給される際にはその速度設定通りに版胴3およびベルト搬送機構5が定速で動作している状態とすることが望ましいことは、上記第1およびの第2の実施の形態と同様である(その理由については後述する)。
【0070】
上記のようにして、用紙サイズがB4判以上である場合には(S903のY)、版胴3の回転速度は120rpm(高速モード)に制御される(S905)と共に、ベルト搬送機構5の運転速度は、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で80rpmに制御される(S906)。一方、用紙サイズがB4判未満である場合には(S903のN)、版胴3の回転速度は60rpm(中速モード)に制御される(S904)と共に、ベルト搬送機構5の運転速度は、版胴3の回転速度を基準とした回転速度換算で90rpmに制御される(S907)。
【0071】
このように、用紙サイズが小さい場合には、版胴3の回転速度を中速程度とし、ベルト搬送機構5の運転速度をそれに適合した速度とすることにより、高速印刷を実現しつつ、しかも最終的にその印刷用紙2が排紙台4に向けて排出される際の排出速度を的確な速度とすることができる。その結果、異なった用紙サイズの印刷用紙2であっても、高速印刷を実現しつつ、排出された印刷済みの印刷用紙2を所定位置に的確に停止させることができる。
【0072】
ここで、前記のベルト搬送機構5は、いわゆるサクションベルト方式の搬送機構であって、図3に示すようにその主要部が構成されている。すなわち、ベルト50がその両端をプーリ51,52によって張架されており、その2つのプーリ51,52のうち一方のプーリ52がギヤ機構系53等を介してベルト駆動用のモータ21によって駆動されて、ベルト50がいわゆるエンドレスベルトとして無端運動する。そのベルト50の下側には、サクションファンを用いたサクション吸引装置54が設けられており、ベルト50上の空気を吸引することによって、ベルト50上に乗った搬送対象物である印刷用紙2をそのベルト50上面に吸い付けながら搬送させる。
【0073】
このような、いわゆるサクションベルト方式のベルト搬送機構5では、上記のように主要部が構成されていることに起因して、ベルト50上を搬送される印刷用紙2の搬送速度は、ベルト50自体の運転速度すなわちベルト50上面の水平方向の移動速度とは必ずしも一致しない。これは、上記のようにサクション吸引によって印刷用紙2をベルト50上面に吸い付けながら搬送させるようにしていても、実際には、印刷用紙2がベルト50上面に完全には吸い付けられないで、その上を滑っている場合があることに起因するものである。
【0074】
例えばA3判のような大判の印刷用紙2を搬送する場合には、版胴3から繰り出されて来る印刷用紙2は、その後端部が版胴3から完全に離れないうちに先端部がベルト50上に乗り上がるので、その先端部では空気力学的な吸引力に基づくベルト50上面と印刷用紙2との摩擦力によってベルト50の搬送力が印刷用紙2に伝達されて、その先端部は搬送方向へと引っ張られるが、このとき後端部はまだ版胴3とプレスローラとの間に挟まれて引き止められるので、結局、このとき印刷用紙2はベルト50上面に対して滑ることになる。そして印刷用紙2の後端部が版胴3を離れると、印刷用紙2は搬送を引き止める力から解放されるのでベルト50の搬送力によって加速されて行くが、しかしこのときベルト50の搬送方向の長さや吸引力の大きさなどの組み合わせによっては、最終的に排出される直前までに印刷用紙2の搬送速度がベルト50上面の運転速度まで達しないで低い速度に終わる場合がある。あるいは逆に、例えばB5判のような小型判の印刷用紙2を搬送する場合には、印刷用紙2が版胴3から繰り出されて版胴3を離れるまでに要する時間及び距離が短くて済み、版胴3を離れてからベルト50上面に完全に乗り上げて加速される時間及び距離を長く取ることができると考えられるが、しかしその一方で、用紙サイズが小さいためにその面積全体に対して加えられる吸引力(あるいは摩擦力)も小さくなり、ベルト50上面に対する滑りが生じて印刷用紙2の実際の搬送速度とベルト50上面の運転速度とが必ずしも一致しなくなる場合もある。例えば、通常印刷の際に版胴3の回転速度が高すぎる場合などには、印刷用紙2がベルト50上面をやや滑りながら搬送されてしまい、望ましい排出速度よりも高い速度で排出されたり、あるいは逆に通常印刷の際でも版胴3の回転速度が低い場合には、印刷用紙2がベルト50上で滑ってしまい十分には加速されないままに排出されるといった場合もある。従って、そのような搬送時の印刷用紙2の滑り現象なども計算に入れた上で、印刷用紙2を所定位置に停止させることができるような好適な排出速度が得られるように、少なくともベルト搬送機構5の運転速度を制御することが望ましい。あるいは、さらにそれと併せて版胴3の回転速度をも制御するようにすることも望ましい。従って上記各実施の形態では、そのような印刷用紙2の滑り現象なども計算に入れた上で、印刷用紙2の最終的な排出速度が適切な速度となるように、版胴3やベルト50の速度を制御している。
【0075】
また、サクションベルト50方式のベルト搬送機構5は、印刷用紙2の印刷された側の面に対して空気以外はほとんど非接触のまま搬送を行うことができることから、印刷済みの印刷用紙の搬送機構として極めて好適な搬送手段であるが、上述のような滑り現象が生じる場合があるため、滑り現象をあらかじめ計算に入れた上で版胴3の回転速度とベルト搬送機構5の運転速度との組み合わせによって最終的な排出速度のが得られるように逆算される設定を用意しておけばよいことは上述した通りであるが、このような設定をさらに時間的に変化させて、所望の好適な印刷用紙の排出速度を得るという手法を実現することは、実際上極めて煩雑な制御手法とならざるを得ないことが想定される。また、1枚の印刷用紙2に対して孔版印刷を施している途中で版胴3の回転速度を変化させると、印刷濃度に顕著なむらが生じる確率が大幅に高くなる。さらには、一般に印刷が開始される時点までには、印刷を施す対象の印刷用紙2についての仕様やそのときユーザが意図する(実行したい)印刷に関する種々の設定の情報については、まずユーザが手入力によって既に入力している場合が多く、そのような仕様の情報は入力され次第直ちにそれを検知して抽出することができるので、印刷動作の開始時点で既に用紙サイズなどの仕様の情報を検知すること自体も困難ではない。これらの点を考慮すると、印刷用紙2が版胴3に対して供給される際には、既に版胴3もベルト搬送機構5も、その印刷用紙2の仕様に対応して設定される適切な一定速度でそれぞれ動作しているようにすることが望ましい。
【0076】
ただし、印刷用紙2に関する用紙サイズなどの仕様を検知する手法としては、そのようなモード設定部16に手入力された情報を検知(抽出)することのみには限定されないことは言うまでもない。その他にも、例えば印刷用紙2が給紙台14から版胴3まで搬送されて行く行程の途中などに光センサなどを設けておき、印刷用紙2が光センサを通過した際に、その印刷用紙2の用紙サイズを光センサが検知するようにしてもよい。あるいは、印刷用紙2が給紙台14に載置されると、その用紙サイズや重量などの仕様を自動的に検知(あるいは読み取り)する用紙仕様検知装置(図示省略)をさらに付加するなどして、印刷用紙2が給紙台14にセットされた段階でその用紙サイズなどを検知することも可能である。さらに詳細には、例えば印刷用紙が給紙台14に載置された段階で既に用紙サイズを自動的に検知可能とするためには、給紙台14に印刷用紙が載置されると、手動または自動的に印刷用紙の幅方向両端それぞれに接するようにセットされる給紙フェンスと、その給紙フェンスの位置を検出することにより、給紙台14に載置されている印刷用紙の幅方向の大きさを検知する用紙幅検知装置と、給紙台14に載置されている印刷用紙の搬送方向後端部の位置を反射型光センサなどを用いて検出することにより、その印刷用紙の搬送方向長さ(用紙長)を検知する用紙長検知装置と、検知された用紙幅および搬送方向長さ(用紙長)に基づいて、そのとき給紙台14に載置されている印刷用紙の用紙サイズを判定する判定部とを設けておき、これらによって、その印刷用紙の用紙サイズを自動的に検知することができる。いずれにしても、印刷用紙2が版胴3に到達する前に印刷用紙の用紙サイズや重量などの仕様を検知可能なものであれば、どのような検知手段でも適用可能であることは言うまでもない。
【0077】
なお、版胴3の回転速度モードの設定が、上記各実施の形態とは異なり、1種類のモードのみに固定されている場合などには、印刷用紙2の仕様のみに対応してベルト搬送機構5の運転速度を制御すればよいことは言うまでもない。
【0078】
また、上記各実施の形態では、印刷用紙2として、B4やB5といった用紙サイズや重量が規格化された定型のいわゆる普通紙を用いると共に、印刷用紙2の仕様として用紙サイズを検知する場合について述べたが、印刷用紙2としては、普通紙のみには限定されず、この他にも例えばグリーティングカードやハガキのような特殊な仕様(用紙サイズ、重量、厚さ等)のものについても適用可能である。またそのような特殊な仕様の印刷用紙2に対して印刷を行う場合には、用紙サイズだけではなく、重量や厚さなどについての情報も検知し、それらに基づいて排出速度を制御することが望ましい。また、定型の普通紙に対して印刷を施す場合でも、その印刷用紙2の1枚ごとの重量を検知し、その重量の情報に基づいて排出速度を制御するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、版胴3とベルト搬送機構5とのそれぞれに個別にモータ20,21を設けるという、実際的で簡易な手法を採用することによって、版胴3とベルト搬送機構5との両者を、より自由に独立して制御できるようにしたが、駆動力源あるいは駆動機構系としては、このような独立モータのみには限定されないことは言うまでもない。この他にも、例えば一つのモータから別個のギヤ比可変の変速ギヤ系あるいは流体変速機などをそれぞれ介して版胴3とベルト搬送機構5とに駆動力を伝達するようにして、版胴3とベルト搬送機構5との回転速度を個別に独立して制御可能にすることなども可能である。
【0080】
また、上記実施の形態では、用紙サイズがB4判以上であるか未満であるかという判別の仕方で、印刷用紙2の仕様を検知する場合について示したが、このような判別ロジックは、例えばA3未満〜B4以上,B4未満〜A4以上,A4未満〜B5以上…のように、さらにきめ細かく細分化して、排出速度をさらにきめ細かく制御するようにしてもよい。その結果、排出された印刷用紙2が最終的に排紙台4上で停止する位置を、所定の領域内にさらに的確に収束させることも可能となる。
【0081】
また、排出された印刷済みの印刷用紙は、排紙台上の所定位置に的確に停止できればよいので、ストッパ41で一旦跳ね返ってから排紙台上の平坦な所定位置に停止させてもよく、あるいはその所定位置に直接に飛来して停止するようにしてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の孔版印刷装置の概要構成を示す図
【図2】本実施の形態の孔版印刷装置の版胴およびベルト搬送機構ならびに排紙台の概要構成を模式的に示す図
【図3】本実施の形態の孔版印刷装置における機構的な概要構成を示す一部省略斜視図
【図4】第1の実施の形態の孔版印刷装置におけるファーストプリント時の主要動作を示すフローチャート
【図5】第1の実施の形態の孔版印刷装置における版胴の回転速度およびベルト搬送機構の運転速度ならびに用紙サイズの関係を示す図
【図6】第2の実施の形態の孔版印刷装置における版胴の回転速度およびベルト搬送機構の運転速度ならびに用紙サイズの関係を示す図
【図7】第2の実施の形態の孔版印刷装置における通常印刷時の主要動作を示すフローチャート
【図8】第3の実施の形態の孔版印刷装置における版胴の回転速度およびベルト搬送機構の運転速度ならびに用紙サイズの関係を示す図
【図9】第3の実施の形態の孔版印刷装置における通常印刷時の主要動作を示すフローチャート
【符号の説明】
1 孔版原紙
2 印刷用紙
3 版胴
4 排紙台
5 ベルト搬送機構
6 用紙仕様検知部
7 排出速度制御部
8 制御部

Claims (7)

  1. 孔版原紙が巻装されて回転しながら印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を搬送し排紙受け部に向けて排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、
    前記印刷用紙の仕様を検知する用紙仕様検知手段と、
    検知された前記印刷用紙の仕様と前記排紙手段における前記印刷用紙の滑り現象とに基づいて、前記排紙手段の搬送速度を制御することによって、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御する排出速度制御手段とを備えたことを特徴とする孔版印刷装置。
  2. 孔版原紙が巻装されて回転しながら印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を搬送し排紙受け部に向けて排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、
    前記印刷用紙の仕様を検知する用紙仕様検知手段と、
    検知された前記印刷用紙の仕様と前記排紙手段における前記印刷用紙の滑り現象とに基づいて、前記版胴の回転速度と前記排紙手段の搬送速度とを制御することによって、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御する排出速度制御手段とを備えたことを特徴とする孔版印刷装置。
  3. 孔版原紙が巻装されて回転しながら印刷用紙に対して印刷を施す版胴と、前記印刷用紙を搬送し排紙受け部に向けて排出する排紙手段とを有する孔版印刷装置において、
    前記印刷用紙の仕様を検知する用紙仕様検知手段と、
    前記版胴の回転速度と検知された前記印刷用紙の仕様と前記排紙手段における前記印刷用紙の滑り現象とに基づいて、前記排紙手段の搬送速度を制御することによって、前記排紙手段から排出される前記印刷用紙の排出速度を制御する排出速度制御手段とを備えたことを特徴とする孔版印刷装置。
  4. 前記仕様は、前記印刷用紙の用紙サイズまたは外形寸法および1枚当たりの重量のうち少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1乃至いずれか1項に記載の孔版印刷装置。
  5. 前記排出速度制御手段が、前記排紙受け部の所定の領域内に前記印刷用紙が停止するように前記排出速度を制御するものであることを特徴とする請求項乃至いずれか1項に記載の孔版印刷装置。
  6. 前記版胴の回転速度と前記排紙手段の搬送速度とが互いに独立して制御されるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至いずれか1項に記載の孔版印刷装置。
  7. 前記版胴を駆動するためのモータと前記排紙手段を駆動するためのモータとが各別に設けられていることを特徴とする請求項記載の孔版印刷装置。
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