JP3546820B2 - 溶接熱影響部靱性に優れる鋼材 - Google Patents

溶接熱影響部靱性に優れる鋼材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築、土木、海洋構造物、パイプ、造船、貯槽等の各分野で使用される鋼材に係わり、特に溶接熱影響部靱性に優れた鋼材に関する。なお、本発明でいう鋼材は、厚鋼板、形鋼、棒鋼、鋼管を含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
建築、土木、海洋構造物等の各分野で使用される鋼材は、一般に、溶接接合により所望の形状の構造物に仕上げられている。構造物の安全性の観点から、使用する鋼材の母材靱性はもちろん溶接部靱性に優れることが要求される。その際、最も問題となるのは、溶接部、特にボンド部の靱性である。ボンド部は、溶融点直下の高温に晒され、オーステナイトの結晶粒が最も粗大化する。そして、引き続いての冷却により、マルテンサイトや上部ベイナイトに変態しやすくなる。マルテンサイト組織や上部ベイナイト組織は脆弱な組織であり、マルテンサイト組織や上部ベイナイト組織が生成することにより、ボンド部靱性が劣化する。
【0003】
このような溶接部の靱性劣化を防止する方法として大きく分けて、
(1)介在物、析出物を利用し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する、
(2)変態後の組織を高靱化組織とする、
の2つの方法が考えられている。
介在物、析出物を利用し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する方法(上記した(1))の例としては、例えば、特開昭60−184663号公報には、C:0.03〜0.1 %、Mn:0.4 〜2.0 %、Si:0.1 %以下とし、Ti:0.002 〜0.02%、希土類元素(REM ):0.003 〜0.05%、Al:0.04〜0.10%を含有させることにより、入熱100kJ/cm以上の大入熱溶接においても十分な溶接部の低温靱性を有する大入熱溶接用低温用高張力鋼板が開示されている。
【0004】
また、変態後の組織を高靱化組織とする方法(上記(2))の例としては、例えば、特公昭59−11658 号公報には、Cを0.03%以下、Siを0.05〜0.40%、Mn:0.70〜2.50%にして、大入熱溶接継手靱性に特に有効なNiを2.0 〜12.0%添加し、sol Alを0.005 〜0.090 %、(P+S)を0.015 %以下、(N+O)を0.009 %以下にすることにより、優れた低温靱性を有し、高能率溶接が可能な鋼を製造し得るとした高能率溶接低温用鋼が開示されている。特公昭59−11658 号公報に記載された技術は、有害な不純物であるP,S,NおよびOを一定量以下に厳しく低減し、低温靱性に有効なNi量を一定範囲で含有させるとともに、大入熱溶接時の溶接熱影響部(HAZ)の島状マルテンサイト量を一定量以下にするため、C,Nを低減するというものである。
【0005】
また、特公昭61−39392 号公報には、低C化(0.005 〜0.03%)、Nb添加(0.005 〜0.05%)および低P化(<0.005 %)し、Niを0.5 〜4.0 %含み、さらにTiを0.002 〜0.02%、Caを0.0005〜0.005 %含有する低温用鋼が開示されている。この低温用鋼は、溶接部とくにボンド部での低温靱性に優れ、かつCOD値にばらつきが非常に少なく、しかも安価でより低温靱性に安定して優れる性能を有するとされる。
【0006】
また、特開昭61−143517号公報では、低C化(0.005 〜0.05%)するとともに少量のTiを添加し、さらにNbもしくはVを添加した鋼を、仕上げ圧延終了温度を900 〜600 ℃の範囲内となるように熱間圧延し、仕上げ圧延終了後直ちに急冷し、その後焼戻す、いわゆる直接焼入れ−焼戻し処理を適用する、低温用高強度鋼板の製造方法が開示されている。この低温用高強度鋼板は、降伏強さ46kgf/mm以上、引張強さ53kgf/mm以上の高強度を有し、とくに板厚50mm以上の厚肉材として溶接部を含めた低温靱性が優れるとしている。
【0007】
また、特開昭61−143517号公報に記載された技術では、溶接部靱性を最も良好にするNi量は1.0 〜4.0 %であるとしている。
また、特公平6−49898 号公報には、低C化(0.005 〜0.05%)、低Ceq化(0.36%以下)するとともに、Ti、Nbを含有(Ti:0.005 〜0.020 %、Nb:0.020 %超0.10%以下)する鋼を、制御圧延し、Ar−40℃〜Ar+40℃の温度で圧延を終了し、2 ℃/s以上の冷却速度で400 〜600 ℃の温度まで加速冷却して、島状マルテンサイトの生成を抑制する溶接熱影響部の靱性に優れた低温用高降伏点鋼の製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭59−11658 号公報に記載された技術では、溶接部靱性を向上させるために、高価なNiを多量に添加し、かつ不純物元素を低減する必要があり、製造コストが増加し、経済的に不利になるという問題があった。
また、特開昭60−184663号公報に記載された技術では、Tiの窒化物や希土類元素(REM )の硫酸化物などを有効に微細分散させて、大入熱溶接時においても十分な溶接部の低温靱性を得ようとするものであるが、TiN の一部が高温で再溶解し、固溶Nが増加するため、熱影響部の靱性が低下するという問題に加えて、REM の硫酸化物等のREM 系介在物が凝集粗大化を起こしやすく、粗大な介在物が破壊の起点となり靱性を劣化させるという問題があった。
【0009】
また、特開昭61−143517号公報に記載された技術では、B無添加であり、TiN の一部が高温で再溶解し、フリーNが増加するため、溶接金属近傍の靱性向上が図れないという問題があった。
また、特公昭61−39392 号公報に記載された技術では、B無添加であり、TiN の一部が高温で再溶解し、フリーNが増加するため、溶接金属近傍の靱性向上が図れないという問題に加えて、Pを0.005 %未満に低減するために非常にコストのかかる特殊な方法で精錬する必要があり、経済的に不利となるという問題があった。
【0010】
また、特公平6−49898 号公報に記載された技術では、母材の島状マルテンサイトの生成を抑制しようとするものであるが、大入熱溶接による溶接熱影響部で島状マルテンサイトの新たな生成が避けられず、溶接熱影響部靱性が劣化するという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、安価で、100kJ/cm以上という大入熱溶接の溶接熱影響部靱性に優れる鋼材を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、介在物、析出物を利用したオーステナイト粒の細粒化による手段以外の溶接部靱性の向上方法について、鋭意考究した。その結果、Cが濃化した硬質の島状マルテンサイトの生成を制御することにより、極低炭素鋼材の溶接部靱性を顕著に向上できることに想到した。本発明者らの検討によれば、C:0.03質量%未満の極低炭素系鋼材における島状マルテンサイト量は、鋼材に含有されるMn、Ni含有量に著しく影響され、Mn、Ni含有量をある範囲に調整してはじめて優れた溶接部靱性を示すことがわかった。
【0012】
まず、本発明の基礎になった実験結果について説明する。
熱力学計算ソフトであるThermo−Calc を用いて得られた、フェライト中の最大C固溶量に及ぼすMn、Ni量の影響を図1に示す。横軸は、Fe−C−1.5 %Ni系におけるMn量、Fe−C−1.4 %Mn系におけるNi量である。
図1から、Mn、Ni含有量により、フェライト中の最大C固溶量が大きく変化し、Mn、Ni含有量の増加とともにフェライト中の最大C固溶量が低下することがわかる。このことから、本発明者らは、溶接熱影響部において溶接熱サイクルの冷却中に変態したフェライトから未変態のオーステナイトへ排出されるカーボン量がMn、Ni含有量とともに増加し、島状マルテンサイトの生成量が増加するものと考え、Mn、Ni含有量を調整することにより、島状マルテンサイトの生成を制御できるという知見を得た。
【0013】
つぎに、本発明者らは、これらの知見を基に、島状マルテンサイトの生成に及ぼすMn、Ni含有量の影響について確認した。
質量%で、C:0.02%、Si:0.20%、Mn:1.4 %、Al:0.03%、Ti:0.01%、B:0.001 %を基本成分とし、Ni含有量を0〜3%の範囲で変化させた鋼素材、およびC:0.02%、Si:0.20%、Mn:0.9 %、Al:0.03%、Ti:0.01%、B:0.001 %を基本成分とし、Ni:1.5 %を含有する鋼素材を用い、これら鋼素材を、1150℃に加熱した後、未再結晶域で累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:850 ℃とする熱間圧延を施し、16mm厚の厚鋼板とした。
【0014】
これら厚鋼板から、再現熱サイクル試験片を採取し、最高加熱温度:1400℃、800 から500 ℃の冷却時間:110sの溶接再現熱サイクルを付与した。溶接再現熱サイクル付与後の試験片について、生成した島状マルテンサイトの面積率を求めた。これらの結果を、島状マルテンサイト面積率とNi含有量の関係として図2に示す。
【0015】
図2から、島状マルテンサイト面積率は、Ni含有量とともに増加しており、フェライト中のC固溶量の変化と対応していることが推察できる。
ついで、上記した溶接再現熱サイクルを付与した試験片から、JIS 4号衝撃試験片を採取し、延性脆性破面遷移温度( vTrs)を求めた。その結果を、図3に示す。
【0016】
図3から、Ni含有量、さらにはMn含有量を所定値以下とすることにより、溶接部靱性の向上が可能であることが推察できる。なお、これらのことから、本発明者らは、Mn、Niの過度の添加はともにフェライト中のCの固溶限を低下させて島状マルテンサイトを増加させるため、Mn+Ni含有量の総量を規制する必要があるとの知見を得た。
【0017】
本発明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明は、mass%で、C:0.03%未満、Si:0.50%以下、Mn:0.6 〜1.2 %、Ni:1.0 〜2.3 %、Al:0.005 〜0.10%、Ti:0.005 〜0.02%、B:0.0005〜0.0030%を含み、かつMn、Niを次(1)式
Ni≦−2Mn+4.0 ………(1)
(ここで、Ni、Mn:各元素の含有量(mass%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、入熱 100kJ/cm のサブマージアーク溶接継手ボンド部のシャルピー衝撃試験における試験温度− 50 ℃での吸収エネルギーvE-50 100 J以上であることを特徴とする入熱 100kJ/cm 以上の大入熱溶接熱影響部靱性に優れる鋼材であり、また、本発明は、前記組成に加えさらに、mass%で、Nb:0.005 〜0.04%、V:0.005 〜0.04%のうちから選ばれた1種または2種を含有するのが好ましく、また、本発明では、前記各組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.005 %を含有することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
まず、本発明鋼材の組成限定理由について説明する。なお、質量%は単に%と記す。
C:0.03%未満
Cは、鋼材の母材および溶接部の組織を支配する重要な元素であり、本発明では、平衡状態でパーライト相の生成をなくし、かつ溶接熱影響部においても靭性を劣化させる島状マルテンサイトの生成を抑制するために、Cは0.03%未満とした。なお、靱性の観点からは0.01%以上含有するのが好ましい。
【0019】
Si:0.50%以下
Siは、精錬時の脱酸剤として必要であるが、0.50%を超えて含有すると母材靭性が著しく劣化する。このため、Siは0.50%以下に限定した。
Mn:0.6 〜1.2 %
Mnは、鋼材の強度を増加させる元素であり、所望の鋼材の強度を確保するためには、少なくとも0.6 %の含有を必要とする。また、Mnは、フェライト中の固溶C量を低下させ、島状マルテンサイトを増加させる作用を有する元素であり、1.2 %を超える過度の含有は島状マルテンサイトの生成を促進し、溶接部靭性を劣化させる。このため、Mnは0.6 %を下限とし、1.2 %を上限とした。
【0020】
Ni:1.0 〜2.3 %
Niは、鋼材の強度および靱性を向上させるとともに、フェライト中の固溶C量を低下させ、島状マルテンサイトを増加させる作用を有する元素であり、所望の鋼材の強度、靱性を確保するためには、少なくとも1.0 %の含有を必要とするが、2.3 %を超える過度の含有は島状マルテンサイトの生成を促進し、溶接部靭性を劣化させる。このため、Niは1.0 %を下限とし、2.3 %を上限とした。
【0021】
Ni≦−2Mn+4.0 ………(1)
ここに、Ni、Mn:各元素の含有量(%)
本発明では、Ni、Mnは、上記した範囲内で、かつ島状マルテンサイトの生成を抑制するために、(1)式を満足するように調整する。Ni、Mn含有量が(1)式を満足しないと、溶接部靱性が顕著に劣化する。なお、極低炭素域では、島状マルテンサイトの生成には、Mnの方が大きな効果を及ぼす。このため、島状マルテンサイトの生成抑制のためには、低Mn、高Niとするのが好ましい。
【0022】
Ni、Mn含有量と、溶接ボンド部靱性との関係を図5に示す。図5は、Ni、Mn含有量が変化した極低炭素系鋼材の試験片を用いて、図4に示す形状の開先加工を施し、入熱100kJ/cmのサブマージアーク溶接により溶接継手を作成し、その溶接継手ボンド部からシャルピー衝撃試験片(JIS 4号試験片)を採取し、試験温度−50℃でのシャルピー吸収エネルギー vE−50 を求め、溶接ボンド部の靭性をNi含有量とMn含有量の関係で評価したものである。図中の数字が溶接ボンド部のシャルピー吸収エネルギー vE−50 (J)である。
【0023】
Ni、Mnが、上記したMn:0.6 〜1.2 %、Ni:1.0 〜2.3 %の範囲内で、かつ(1)式を満足する範囲内ではじめて、高い vE−50 値を示す。この範囲を外れると低い vE−50 値しか示さず溶接部靱性が劣化する。このようなことから、(1)式を満足するMn、Ni含有量に限定した。
Al:0.005 〜0.10%
Alは、脱酸剤として作用し、本発明では0.005 %以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超えて含有すると、鋼中にAl酸化物系介在物が増加し、母材靭性を低下させる。このため、Alは0.005 〜0.10%の範囲に限定した。
【0024】
Ti:0.005 〜0.02%
Tiは、Nと結合し鋼中の固溶Nを低減し、固溶B量の増加に寄与しBの強度上昇効果を確保する作用を有している。このような効果は0.005 %以上の含有で認められる。一方、0.02%を超える含有は、粗大な析出物を形成し、母材の靭性を損なう。このため、Tiは0.005 〜0.02%の範囲に限定した。
【0025】
B:0.0005〜0.0030%
Bは、極低炭素鋼において組織をベイニティック・フェライト組織とし、強度を上昇させる重要な元素であり、本発明では、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0030%を超えて含有しても、顕著な効果が得られない。このため、Bは0.0005〜0.0030%の範囲に限定した。
【0026】
Nb:0.005 〜0.04%、V:0.005 〜0.04%のうちから選ばれた1種または2種Nb、Vはいずれも、鋼材を強化する強化元素として有効な元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果を発揮するためには、Nb、Vいずれも0.005 %以上の含有を必要とする。一方、Nb、Vとも、0.04%を超える含有は溶接熱影響部靭性を劣化させる。このため、Nb:0.005 〜0.04%、V:0.005 〜0.04%に限定するのが好ましい。
【0027】
Ca:0.0005〜0.005 %
Caは、Sの固定による靭性改善効果がある元素であり、必要に応じ含有できる。このような効果を発揮させるためにはなくとも0.0005%以上含有するのが好ましいが、0.005 %を超えて含有しても効果が飽和する。このため、本発明では、Caは0.0005〜0.005 %の範囲に限定するのが好ましい。
【0028】
上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等通常の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法などの通常公知の鋳造方法でスラブ等の圧延用素材とするのが好ましい。
ついで、圧延用素材は、1000〜1300℃の温度に再加熱されるか、あるいは再加熱されることなく、 700℃以上の温度で圧延を終了する熱間圧延を施され、圧延後、空冷あるいは加速冷却を施され、製品(鋼材)とされる。なお、熱間圧延条件は、とくに限定されるものではないが、未再結晶領域で累積圧下率50%以上の圧延を施す制御圧延を行うのが好ましい。
【0029】
【実施例】
次に、本発明の効果を実施例に基づいて説明する。
表1に示す組成の鋼塊を1150℃に加熱したのち、未再結晶域で累積圧下率50%以上の圧下を加え、 800℃以上で圧延を終了して、20mmの鋼板とした。
得られた鋼板について、引張試験、シャルピー衝撃試験を実施した。
【0030】
引張試験は、各鋼板の板厚中央部から、JIS 4 号引張試験片を採取し、降伏強さYS、引張強さTS、伸びElを求めた。
シャルピー衝撃試験は、各鋼板の板厚中央部から、JIS 4 号衝撃試験片を採取し、エネルギー遷移温度( vTr)を求めた。
また、各鋼板から採取した継手用試験片に、図4に示す形状の開先加工を施し、入熱100kJ/cmのサブマージアーク溶接により、溶接継手を作成した。これら溶接継手から切欠き位置をボンド部とするJIS 4号衝撃試験片を採取し、試験温度−50℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギー vE−50 を求めた。なお、溶接継手のボンド部近傍について、2段エッチング法を用い、走査型電子顕微鏡により組織を観察し、島状マルテンサイト量を測定した。
【0031】
これらの結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003546820
【0033】
【表2】
Figure 0003546820
【0034】
本発明例は、引張強さTS 490MPa 級の強度と−78℃以下のエネルギー遷移温度vTrを有し、母材の低温靱性に優れるうえ、さらに溶接熱影響部での島状マルテンサイト量が少なく、入熱100kJ/cmのサブマージアーク溶接継手ボンド部の vE−50 が100 J以上と、大入熱溶接を施しても優れた溶接熱影響部靭性を有する鋼材となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、 vTrが−56℃以上と母材靱性が劣化しているか、あるいは溶接ボンド部の vE−50 が27J以下と、溶接熱影響部靱性が劣化している。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、溶接熱影響部での島状マルテンサイトの生成が抑制され、大入熱溶接を施されても優れた溶接熱影響部靱性を有する鋼材を安価に製造でき、溶接能率を顕著に向上できるという、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライト中の最大C固溶量とNi、Mn量の関係を示すグラフである。
【図2】再現溶接ボンド部の島状マルテンサイトの面積率とNi、Mn量の関係を示すグラフである。
【図3】再現溶接ボンド部の延性脆性破面遷移温度( vTrs)とNi、Mn量の関係を示すグラフである。
【図4】溶接継手の製作に使用した開先形状を示す断面図である。
【図5】入熱 100kJ/cm のサブマージアーク溶接継手の溶接ボンド部の vE−50 に及ぼすNi、Mn量の関係を示す図である。

Claims (3)

  1. mass%で、
    C:0.03%未満、 Si:0.50%以下、
    Mn:0.6 〜1.2 %、 Ni:1.0 〜2.3 %、
    Al:0.005 〜0.10%、 Ti:0.005 〜0.02%、
    B:0.0005〜0.0030%
    を含み、かつMn、Niを下記(1)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、入熱 100kJ/cm のサブマージアーク溶接継手ボンド部のシャルピー衝撃試験における試験温度− 50 ℃における吸収エネルギー vE -50 が100 J 以上であることを特徴とする入熱 100kJ/cm 以上の大入熱溶接熱影響部靱性に優れる鋼材。

    Ni≦−2Mn+4.0 ………(1)
    ここで、Ni、Mn:各元素の含有量(mass%)
  2. 前記組成に加えさらに、mass%で、Nb:0.005 〜0.04%、V:0.005 〜0.04%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記組成に加えさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.005 %を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材。
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