JP3545826B2 - スクロ−ル圧縮機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は冷凍,空調用の冷媒圧縮機、あるいは空気やその他のガス圧縮機として好適なスクロール圧縮機に関し、特にその給油構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固定スクロールと旋回スクロールを備え、旋回スクロールの背面側のシール部材により中央部の軸受部を吐出圧力に保持したスクロール圧縮機の給油構造が特開昭60−224988号公報に記載されている。これは密閉容器内を吐出圧力とし、クランク軸および各軸受部を吐出圧力の雰囲気内に設置し、クランク軸に設けた偏心孔の遠心ポンプ作用にて各軸受部を給油するもので、各軸受部を給油した後の潤滑油は密閉容器内の吐出圧力内で循環される構成となっている。
【0003】
クランク軸に設けた偏心孔により軸受部に給油する従来のものにおいては、クランク軸に設けた偏心孔を潤滑油中に入れて遠心ポンプ作用を得るため、クランクジクの回転中心を垂直とした縦型構造としてのみ使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
スクロール圧縮機の場合、圧縮機構部を上方に、電動機部を下方に位置させる縦型構造とすることが一般的である。クランク軸の上方側に位置する軸受部を給油するために必要な遠心ポンプのポンプ能力を得るためには、クランク軸内に形成した給油路を所定の偏心量を設けて形成する必要がり、このためクランク軸の外径を遠心ポンプの能力を得るため太くする必要があった。特にスクロール圧縮機を可変速仕様に使用する場合には、クランク軸の外径寸法の制約から低速時の遠心ポンプ能力を確保できる偏心量を確保できず、低速側の運転領域が制限される課題があった。
【0005】
本発明の目的は、各摺動部に必要十分な潤滑油を給油できるようにして、給油不足による摺動面の過熱や、給油過多による圧縮機の性能低下を防止することのできるスクロール圧縮機を得ることにある。
本発明の他の目的は、圧縮機の低速回転時においても軸受部への給油を確実に行なうことができるスクロ−ル圧縮機を得ることにある。
【0006】
本発明の他の目的は、クランク軸を太くすることなく給油能力の向上を図ることができるスクロ−ル圧縮機を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、該圧縮機構部を駆動する電動機部、前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器を備えたスクロール圧縮機において、旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク部端部の空間に通じる第1の給油路と、前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ−ル端板内を通りその後前低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることにある。
【0012】
なお、前記絞り部は、例えば前記第2の給油路の旋回スクロ−ル端板内に形成された給油路が開口する旋回スクロ−ル端板と固定スクロ−ル端板との摺動面により構成される。
【0013】
さらに、前記第2の給油路の旋回スクロ−ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ−ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ−ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成とすれば、前記両端板の摺動面を確実に潤滑できる。
【0014】
クランク軸内に形成された前記第1の給油路は、その上流側でクランク軸心側とし、その上方でクランク軸心から偏心した位置となるようにクランク軸に対し斜めに形成してより大きな遠心ポンプ作用をもたせると良い。
【0015】
さらに、前記クランク軸の前記主軸受より反クランク部側にクランク軸の一端側を支承する副軸受部を設けたものでは、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記副軸受部に潤滑油を供給する第4の給油路を設ける。
【0016】
また、この好ましくは前記旋回軸受部と主軸受部との間の空間と、前記密閉容器内の空間とを連通し、前記空間に供給された潤滑油を密閉容器内空間に排出する排油孔を前記主フレ−ムに形成する。
【0017】
【作用】
スクロール圧縮機構を密閉容器内に納め、密閉容器内を吐出圧力に維持する一方、旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材を設けたことにより、軸受部分はほぼ吐出圧力に等しい圧力となり、シール部材外周側の低圧部側は吐出圧力より低い圧力に維持される。
【0018】
密閉容器内の吐出圧力下にある潤滑油部とこれより低い圧力の低圧部(例えば背圧室)とは前記第1及び第2の給油路により連通され差圧給油路が形成される。さらに、このクランク軸の給油路から径方向に分岐する第3の給油路を設けることにより主軸受部を潤滑する。
【0019】
第2の給油路に設けられた絞り部はクランク軸に形成された第1の給油路の通路面積より十分小さくされ、クランク軸内の給油路における潤滑油の油圧はほぼ吐出圧力に維持される。
【0020】
第2の給油路から差圧供給された潤滑油は、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路、或いは絞り部を有する第2の給油路を介して、オルダムリングが設けられた低圧部側に必要最小量流入し、給油過多によるスクロール圧縮機の性能低下を防止しつつオルダムリング摺動面を潤滑する。
【0021】
クランク軸内の給油路をクランク軸の回転中心に対して例えばクランク部方向に偏心させたものでは、クランク軸の径を大きくしないで偏心した給油路を形成するができる。このように構成することによりクランク軸内の給油路を流れる際、潤滑油は遠心ポンプ作用により油圧が上昇する。さらに、径方向に分岐する第3の給油路を設けたものではその給油路内でも遠心ポンプ作用により潤滑油の油圧をさらに上昇させることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明のスクロール圧縮機の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1及び図2は本発明の第1実施例に係る縦型構造のスクロール圧縮機を示すものである。図において、1は固定スクロールで、この固定スクロールは端板1aと該端板1aに直立する渦巻状のラップ1bを有し、かつラップ外周側には吸入ポート1cを、ラップ中央部には吐出ポート1dを有している。2は旋回スクロールで、旋回スクロール端板2aと該端板2aに直立する渦巻状のラップ2bを有し、ラップの背面中央には旋回軸受部30を有している。固定スクロール1と旋回スクロール2は互いにラップを内側として噛み合い圧縮室を形成し、旋回スクロ−ルのラップ2bの側面に近い位置の端板2aには細径の中間孔2eが設けられ、前記圧縮室と旋回スクロ−ル背面側に設けられた背圧室9とを連通している。3は主フレームで、その側面(外周面)にはガス通路3dが設けられ、またこの主フレ−ムには固定スクロール1を複数のボルトで固定し、旋回スクロール端板2aを固定スクロール1と主フレーム台座部3aで挟持している。主フレーム3の中央部にはクランク軸6を支承する主軸受部31を有している。前記背圧室9は旋回スクロール2の背面と、この主フレ−ム3により形成され、この背圧室9は円筒形状に形成された主フレーム台座部3aによって、内側空間9aと外側空間9bの二つの空間に仕切られ、両空間9a,9bは旋回スクロール2の背面と台座面3a間の隙間で連通している。背圧室9の内側空間9aは前記中間孔2eにより圧縮室に連通している。4は背圧室9と主軸受部31との間の位置で主フレーム3に設けたリング状の溝3bに保持されたシール部材で、滑らかに加工された旋回スクロール2の鍔部2dと密着して摺動するように設けられている。シール部材4と主軸受部31との間の位置で主フレーム3にその下方空間に連通する排油孔19が設けられ、さらにこの排油孔19には排油パイプ20が取付けられている。
【0025】
前記シ−ル部材4は、例えば、4弗化エチレン樹脂などのフッソ樹脂、あるいはポリイミド系樹脂からなるシ−ルリングなどであり、運転中の圧縮機内部の条件かで必要なシ−ル性得られるものであればよい。また、シ−ル部材は1個の例が示されているが、シ−ル性を高めるためには複数個使用してもよい。
【0026】
5はオルダムリングで、背圧室9の外側の空間9b内に設けられており、固定スクロール1に対し旋回スクロール2の自転を防止している。オルダムリング5は直交する二対のキーを有し、旋回スクロールの端板2aに設けた一対のキー溝(図示せず)および主フレーム台座部3aの外側部位置に設けられた一対のキー溝3cに係合している。クランク軸6は電動機7を挟んで上下に配置された主軸受部31と副軸受部32により支持され、副軸受部32は密閉容器14の胴部14aに副フレーム8を介して取り付けられている。
【0027】
クランク軸6にはその内部に軸心(回転中心)に対してクランク部6aの偏芯方向へ斜めに設けた給油路22を有し、該給油路22の上端はクランク部の上端面に開口している。また給油路22の下端部は給油パイプ21をかいして密閉容器下部の潤滑油部に開口している。これら給油路22及び給油パイプ21により第1の給油路が構成される。また、給油路22から主軸受部31の下方端側に向けてクランク軸径方向に分岐する給油孔(第3の給油路)22bが設けられており、主軸受部31には前記第1及び第3の給油路を介して密閉容器下部の潤滑油が供給される。旋回スクロ−ルはクランク軸のクランク部6aに旋回軸受部30を介して支承され、この旋回軸受部30には第1の給油路21,22を介しクランク軸上端面の空間2hを利用して給油される。クランク部端部空間に供給された潤滑油は旋回軸受部30の内周面に形成されたスパイラル溝30aを介して軸受部30の全体に供給され、軸受部30の下部空間にクランク軸6と一体に形成されたスラスト受け部6bを潤滑後、排油孔19及び排油パイプ20を介して密閉容器下部の潤滑油部に還流される。
【0028】
電動機7は電動機ステーター7aとクランクジク6に固定された電動機ローター7bより構成される。密閉容器14の胴部14aに取り付けられた副フレーム支え10には副フレ−ム8が径方向の位置合わせ自在に数本のボルトで固定され、副フレーム8に固定した副軸受部32の軸心が主軸受部31の軸心に一致するようにしている。副軸受部32の内面はすべり軸受面とされ、その外面は球面形状として副フレーム8の球面形状のハウジング内に嵌合された構造で、調心機能を有している。この副軸受部32には第1の給油路22から径方向に分岐された第4の給油路22aにより給油される。
【0029】
11は電動機7の上方の位置でクランク軸6に圧入固定された主バランスウエイト、12は電動機ローター7bに固定された副バランスウエイトである。13は密閉容器14の下部に溜められた潤滑油の潤滑油部で、密閉容器14内は吐出圧力に保持されている。密閉容器胴部14aには主フレーム3と電動機ステーター7aおよび副フレーム支え10が固定支持されている。
【0030】
16は圧縮機の吸入口、17は吐出口で、これらはそれぞれ密閉容器14を貫通している。18はガスガイドで密閉容器14に取付けられるている。給油パイプ21は、クランク軸6の下端中心部に圧入されており、給油路22に連通し、給油パイプ21の下端は潤滑油部13中に開口している。
【0031】
図2に示すように、第1の給油路22はクランク軸上端部空間2hを介して旋回スクロール端板内に設けた給油路2fに通じ、給油路2fは固定スクロール1と旋回スクロール2の端板摺動面に開口している。この開口部は旋回運動にともない間欠的に固定スクロール端板面に設けたリング状の溝通路1eと連通する。この溝通路1eは固定スクロール1と旋回スクロールの端板面により閉じられた空間を形成している。
【0032】
前記クランク部端部空間2hから前記旋回スクロ−ル端板内を通り旋回スクロ−ル端板と固定スクロ−ル端板との摺動部に開口しさらにその後前記背圧室9に通じるようにして第2の給油路が形成されている。
【0033】
旋回軸受部30の内面に形成されたスパイラル状の給油溝30aはクランク軸6の回転に伴い給油を促進する方向に粘性ポンプ作用が働くように構成されている。◆
主軸受部31は内面をスベリ軸受面とし、この軸受面に下部には第3の給油路22bに対向する位置に円周溝31bが設けられ、該円周溝31bと軸受上端面とはスパイラル状の給油溝31aで連通されている。このスパイラル溝31aもクランク軸6の回転に伴い給油を促進する方向に粘性ポンプ作用が働くよう設けられている。
【0034】
また、クランク軸6はスラスト受け部6bを介して主軸受部31の上端側に設けられたスラスト軸受34により支持される。スラスト軸受34の軸受面には主軸受部の給油溝31aに連通する径方向の給油路34aが設けられている。旋回軸受の給油溝30a、主軸受部の給油溝31aはシール部材4の内側の空間に連通している。
【0035】
次に、上述した実施例の動作を説明する。◆
電動機部7の電動機ローター7bの回転によりクランク軸6が回転し、旋回スクロール2は、オルダムリング5の介在により旋回運動して、冷媒ガスが吸入口16から吸入ポート1cを通り流入し、圧縮室に吸い込まれる。旋回スクロール2の旋回運動に伴い冷媒ガスは圧縮され、吐出ポート1dから固定スクロール1の上部空間に吐出される。この圧縮動作中、適当に昇圧された中間圧の冷媒ガスの一部は中間孔2eを介して背圧室9の内側の空間9aに流入し、背圧室9を中間圧に保つ。起動時、旋回スクロール2は主フレーム台座部3aに支持された状態のため、内側空間9aは閉じられた状態にあり、内側空間9aの圧力は速やかに所定の圧力まで上昇し、旋回スクロール2を押上げ。旋回スクロール端板2aは主フレーム3の台座部3aと固定スクロール1に挟持されているため、旋回スクロール2は起動時に傾くことなく固定スクロール1に押付けられ、背圧室外側空間9bも所定の圧力まで上昇する。
【0036】
運転の経過により密閉容器14内の圧力(吐出圧力)は上昇し、シール部材4の内側の空間はこの吐出圧力に保持される。このシール部材14の内側の吐出圧力と背圧室9内圧力の合力が旋回スクロール2を固定スクロール1に押付ける力として作用する。この旋回スクロール2に対するスラスト力が、圧縮室内のガス力によって生じる全スラスト力の大きさよりも上回るため、旋回スクロール2は固定スクロール1側に押付けられ安定した圧縮動作が行われる。なお、必要なスラスト力を得るため、背圧室圧力は低めとし、シール部材4の内径を大きくすることも可能である。
【0037】
また、吐出ポート1dから固定スクロール1の上部空間に吐出された高圧ガスは、主フレーム3の側面のガス通路3dを通り、電動機7の上部空間に流入し、その一部はガスガイド18に導かれ、電動機7側面に設けた通路から電動機7下部空間に導かれ、その後再び電動機7上部空間に流入し、ここで冷媒ガスは電動機7を冷却すると共に冷媒ガス中の潤滑油は分離され、冷媒ガスは吐出口17から圧縮機外へ流出する。一部の潤滑油はいわゆる油上がりとなって冷媒ガスと共に機外に流出するが、再び冷媒ガスとともにスクロール圧縮機の吸入口16にもどる。一方、分離された潤滑油は重力によって下方に流れ落ち密閉容器下部の潤滑油部13に到達する。
【0038】
潤滑油は吐出圧力と背圧室圧力の差圧により潤滑油部13からクランク軸6に固定した給油パイプ21を介しクランク軸6内の給油路22を通り、クランク軸上端面空間2hを介して旋回スクロール端板内に設けた給油路2fに通じ、旋回運動に伴って間欠的に固定スクロール端板面に設けたリング溝1eと連通し、固定スクロール1と旋回スクロール2の端板面を潤滑する。その後、端板面を給油した潤滑油は背圧室9の外側空間9bに排出され、この空間に設けたれたオルダムリング5を潤滑し、旋回スクロール2と主フレーム台座3aの隙間を通り内側の空間9aに移動した後中間孔2eを通って圧縮室に流入し、冷媒ガスとともに吐出ポート1dから吐出される。
【0039】
前記固定スクロール端板面の溝通路1eは固定スクロール1と旋回スクロール2の端板面で閉じられた空間を形成している。旋回スクロール端板の給油路2fの開口部は差圧給油路(第2の給油路)の絞り部として機能し、この絞り部の通路面積はクランク軸6内の給油路(第1の給油路)22に対して十分通路面積を絞られているので、クランク軸6内の給油路22内では潤滑油の油圧は低下せず、また給油路22はクランク軸6の回転中心に対してクランクピン部6aの偏心方向に斜めに設けられているので、潤滑油が差圧により給油路22内を上昇する際に潤滑油は給油路22内で遠心ポンプ作用を受け、潤滑油の油圧は吐出圧力よりも上昇する。
【0040】
主軸受部31には前記第1の給油路22、第3の給油路22bを介し円周溝31bに供給され、この円周溝31bからスパイラル状の給油溝31aを介して潤滑される。このスパイラル溝31aはクランク軸6の回転に伴い給油を促進する方向に粘性ポンプ作用が働くように設けられているため、給油能力を軸受面内で補うことができる。
【0041】
また、クランク軸6を支持するスラスト軸受34は主軸受部の給油溝31aに連通する径方向の給油路34aにより主軸受部31を給油した潤滑油で給油される。主軸受部を給油した潤滑油はシール部材4の内側の空間に到達する。副軸受部32は第4の給油路22aから給油され、潤滑油は潤滑油部13に還流する。
【0042】
旋回軸受部30には、前記第1の給油路及びクランク軸上端の空間2hを介しスパイラル状の給油溝30aを通って潤滑される。このスパイラル溝31aはクランク軸6の回転に伴い給油を促進する方向に粘性ポンプ作用が働くように設けられているため給油能力を軸受面内で補うことができる。旋回軸受部30を給油した潤滑油はシール部材4の内側の空間に到達する。
【0043】
旋回軸受30、主軸受部31を給油した潤滑油は、シール部材4の内側の空間に到達した主フレーム3に設けた排油孔19から排油パイプ20に導かれ密閉容器14の内壁面にそって重力により落下する。
【0044】
このように主軸受部31、旋回軸受部30を給油した潤滑油は冷媒ガス通路と別の経路にて密閉容器14下部へ落下するため、冷媒ガスに混合し機外に流出することなく、密閉容器14下部の潤滑油部13に循環する。
【0045】
本発明の他の実施例を図3,図4により説明する。◆
図において第1実施例と異なる点はクランク軸内の給油路(第1の給油路)22をクランク軸6の回転中心に垂直に設けた点であり、他の構成は第1実施例と同じである。この実施例の場合、クランク軸内の給油路22をクランク軸6の回転中心に設けたため、クランク軸6の生産性が改善される。
【0046】
差圧により潤滑油はクランク軸の給油路22内に導くことができ、第1実施例と同様に、クランク軸の給油路22内の潤滑油の油圧を吐出圧力に保てるため、この給油路から径方向に分岐する第3の給油路22b、第4の給油路22aに潤滑油を導くことができる。この径方向に設けられた給油路22a,22b内でクランク軸6の回転による遠心ポンプ作用を働かせて潤滑油の油圧を上げ軸受に給油できる。他の動作は第1実施例と同じである。
【0047】
本発明の第3実施例を図5、図6により説明する。◆
図は本発明を横型構造のスクロール圧縮機に採用した場合の実施例である。なお、図6は図5の副軸受部詳細図である。
【0048】
図に示すように、クランク軸6は水平方向に配置され、以下に説明する部分以外は図1に示すような縦型のスクロール圧縮機と同じである。
【0049】
横型のスクロール圧縮機においては、電動機ローター7bは電動機ステーター7aに対して主軸受部31側に多少ずらして組付けられている。また、クランク軸6が水平方向に移動した場合に、クランク軸6のクランク部6a側の端面が旋回軸受内の旋回スクロール端板面と接触し、クランク軸のスラスト受け部6b上端面と旋回スクロールの鍔部2dとは接触しないよう両隙間を設定している。
【0050】
クランク軸6は縦型の構造と同じく、電動機7を挟んで位置する主フレーム3に設けた主軸受部31と副フレーム8に設けた副軸受部32で支持される。副軸受部32は内面をスベリ軸受面とし、スベリ軸受面にスパイラル状の給油溝32aを有している。副軸受部32は外面を球面形状とし、副フレーム8の球面形状のハウジング内に微小隙間を持って嵌合された構造で、調心機能を有している。副フレーム8は、縦型の構造と同じく副軸受部32の軸心を主軸受部31の軸心に位置合わせした上、副フレーム支え10に数本のボルトで固定されている。給油パイプ21は副フレーム8に圧入されており、クランク軸6の副軸受部32側の端面を介して給油路22に連通している。給油パイプ21の下端部は潤滑油13中に開口している。
【0051】
次に、本実施例の動作を説明する。冷媒ガスの圧縮機構は縦型のスクロール圧縮機と同じであり説明を省略する。但し、クランク軸6は水平に支持されており、その自重などは主軸受部31と副軸受部32で支持される。電動機ローター7bは電動機ステーター7aに対して主軸受部側に多少ずらして組付けられているため、クランク軸6は副軸受部32側に方向に磁気推力を受ける。この磁気推力により運転中クランク軸6は主軸受部31の端側に設けられたスラスト軸受34に密着し摺動する。起動時などの過渡期に、クランク軸6が水平方向に移動場合にも、クランク軸6のクランク部6a側の端面が先に旋回スクロール端板面2gが接触するため、旋回スクロール2のシール部材4との摺動面である鍔部2dは傷付かない。
【0052】
吐出圧力と背圧室圧力の差圧により、潤滑油は副フレーム8に取付けられた給油パイプ21を介して密閉容器下部の潤滑油部13からクランク軸6の副軸受部32の端面空間を経て、クランク軸の給油路22に導かれる。副軸受部32は副軸受部の端面空間よりスパイラル状の給油溝32aを介して給油される。スパイラル溝32aはクランク軸6の回転にともない給油を促進する方向に粘性ポンプ作用が働くように設けられており給油能力を軸受面内で補うことができる。
【0053】
主軸受部31、旋回軸受部30などへの給油は第1実施例に示した縦型のスクロール圧縮機と同じであり説明を省略する。
【0054】
以上説明した第1乃至第3の実施例のように給油通路を構成することで、縦型のスクロール圧縮機と横型のスクロール圧縮機ともに、差圧により吐出圧力に保たれた潤滑油をクランク軸の給油路内に導くことができ、このクランク軸内の第1の給油路から径方向に分岐する第3の給油路に潤滑油を導き、クランク軸の回転による遠心ポンプ作用により潤滑油の油圧を上げて主軸受部31へ給油できる。
【0055】
また、旋回スクロール端板内に形成した給油路を旋回スクロールと固定スクロールの端板面に開口する構成としたことにより、端板摺動面は差圧給油され、更に給油後の潤滑油をオルダムリングを組込んだ背圧室に排出する構造としたことにより、潤滑油はオルダムリングの摺動面を潤滑し、中間孔2eを通って圧縮室に入り、冷媒ガスと共に吐出され、密閉容器下部の潤滑油部に還流する。以上によりスクロール圧縮機の全摺動面に給油できる。
【0056】
本実施例によれば差圧給油と遠心ポンプ作用による給油を組み合わせているので、遠心ポンプ作用のみによる給油方法ではポンプ能力が低下する低速運転時においても各摺動面への給油が可能となり、可変速仕様のスクロール圧縮機における給油を常に確実に行なうことができる。
【0057】
また、各軸受部への給油は遠心ポンプ作用をプラスした給油とし、スクロ−ル端板面などの給油は差圧給油のみとして給油系を分けたことにより、軸受部と端板部の給油量を独立に設定することができ、各摺動部に必要十分な潤滑油を給油できる。
【0058】
横型のスクロール圧縮機の場合、従来はクランク軸の給油路に潤滑油を導くことができず、遠心ポンプ作用を単独に利用した給油方法をとることはできなかったが、本発明では差圧により潤滑油をクランク軸の給油路内に導くことができるので縦型のスクロール圧縮機と同様に差圧と遠心ポンプ作用を合わせた給油が可能となる。
【0059】
また、クランク軸内の給油路をクランク軸回転中心に対してクランクピン方向に偏心させた構造とすることにより、クランク軸の径寸法を大きくすることなく、給油路を流れる際に遠心ポンプ作用を得て潤滑油の油圧を上昇させることができ、さらに径方向に分岐する給油孔内でも遠心ポンプ作用により潤滑油の油圧が上昇し、各軸受部への給油が可能となる。
【0060】
さらに本発明では、クランク軸内の給油路の径を径方向に分岐する給油孔に対して比較的太い径に設定することが可能であり、この太い部分で遠心ポンプ作用を得ることができ給油性能をより向上できる。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果が得られる。
(1)シール部材によりほぼ吐出圧力とされた各軸受部側の空間から旋回スクロ−ル端板内を通りその後低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されるように構成しているので、各摺動部に必要十分な潤滑油を給油できると共に、旋回スクロール背面の低圧部に設けたオルダムリングへの給油過多によるスクロール圧縮機の性能低下を防止することのできるスクロール圧縮機を得ることができる。
(2)シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ−ル端板内を通りその後背圧室側に通じると共に、その途中に通路面積を絞る絞り部を設けた第2の給油路とを備え、前記背圧室に設けられたオルダムリングの摺動面を、前記第2の給油路の絞り部を介して給油された潤滑油で潤滑すると共に、前記第2の給油路の絞り部をクランク軸に形成された第1の給油路の通路面積より十分小さくし、前記オルダムリング部への給油過多による性能低下を防止すると共にクランク軸内の給油路における潤滑油の油圧をほぼ吐出圧力に維持するようにしたものでも上記(1)と同様の効果を得ることができる。
(3)吐出圧力下にある潤滑油をこれより低圧部(例えば中間圧力の背圧室)に連通した第1、第2の給油路を設けているから、圧縮機の低速回転時においても軸受部への給油を確実に行なうことができ、可変速スクロール圧縮機としても常に安定した給油を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示すスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明の第3の実施例を示すスクロール圧縮機を示すの縦断面図である。
【図6】図4の副軸受部の拡大図である。
【符号の説明】
1:固定スクロール、1a:端板、1b:ラップ、1c:吸入ポート、1d:吐出ポート、1e:溝通路、2:旋回スクロール、2a:端板、2b:ラップ、2d:鍔部、2e:中間孔、2f:給油路、2g:端板面、2h:クランクジク上端の空間、3:主フレーム、3a:台座、3b:リング溝、3c:キー溝、3d:ガス通路、4:シール部材、5:オルダムリング、6:クランク軸、6a:クランク部、6b:スラスト受け部、7:電動機部、7a:ステーター、7b:ローター、8:副フレーム、9:背圧室、10:副フレーム支え、11:主バランスウエイト、12:副バランスウエイト、13:潤滑油部、14:密閉容器、14a:胴部、16:吸入口、17:吐出口、18:ガスガイド、19:排油孔、20:排油パイプ、21,22:第1の給油路(21…給油パイプ、22…給油路)、22a:第4の給油路、22b:第3の給油路、22c:給油路、30:旋回軸受部、30a,31a,32a:スパイラル溝、31:主軸受部、31b:円周溝、32:副軸受部、34:スラスト軸受、34a:給油路。
Claims (9)
- 密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク部端部の空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ−ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、
前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1において、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記主軸受部に潤滑油を供給する第3の給油路を備えることを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項1において、前記スクロール圧縮機は可変速仕様としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項1において、前記第2の給油路の旋回スクロ−ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ−ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ−ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項1において、クランク軸内に形成された前記第1の給油路は、その上流側でクランク軸心側とし、その上方でクランク軸心から偏心した位置となるようにクランク軸に対し斜めに形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項1において、前記クランク軸の前記主軸受より反クランク部側にクランク軸の一端側を支承する副軸受部を設け、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記副軸受部に潤滑油を供給する第4の給油路を設けたことを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項1において、前記旋回軸受部と主軸受部との間の空間と、前記密閉容器内の空間とを連通し、前記空間に供給された潤滑油を密閉容器内空間に排出する排油孔を前記主フレ−ムに形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項1において、前記第1の給油路は、クランク軸内に形成された給油路の一端部と前記潤滑油部とを接続する給油パイプを備えることを特徴とするスクロール圧縮機。
- 請求項5において、クランク軸内に形成した給油路をクランク軸心に対してクランク部方向に偏心させたことを特徴とするスクロ−ル圧縮機。
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