JP3545359B2 - 反射防止膜を有する光学部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック基板に反射防止膜を有する光学部材に関し、特に、良好な耐熱性を有する、プラスチック基板に反射防止膜を有する光学部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プラスチック基板に、反射防止膜を形成した光学部材は良く知られている。その例として、特開平2−291501号公報には、二酸化チタンを主成分とするλ/2の高屈折率層を有する反射防止膜を形成した光学部材が開示されている。
しかしながら、一般的に、プラスチック基板に反射防止膜を設けた光学部材は、蒸着時に加熱することができない等の理由で、ガラス基板に反射防止膜を設けた光学部材と比較して耐熱性が良好でない。そこで、更なる耐熱性を向上させたプラスチック基板に反射防止膜を形成した光学部材が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、耐熱性が良好なプラスチック基板に反射防止膜を有する光学部材を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、高屈折率層に、低屈折率物質である二酸化ケイ素からなる層を利用して三層以上の等価膜にするという斬新的な手段により、光学部材の耐熱性が顕著に向上することを見出した。
従来、λ/2の高屈折率層は、反射防止特性及び生産効率性を考慮して、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタルなどの高屈折率蒸着物質を用いて一層構成とし、λ/2の高屈折率層に、低屈折率物質である二酸化ケイ素からなる層を設けることは、高屈折率層の屈折率を低下させ、反射防止膜の反射防止特性を低下させる可能性が高いことから、このような構成は提案されていなかった。
【0005】
すなわち、本発明は、プラスチック基板と、該プラスチック基板上に、基板側からλ/4−λ/2−λ/4型(λ=500nm) の反射防止膜と、該プラスチック基板と該反射防止膜との間に設けられた金属ニオブからなる下地層とを有する光学部材であって、該λ/2は、屈折率が1.80〜2.40である3層以上の等価膜であり、該等価膜の偶数層が二酸化ケイ素層である光学部材を提供するものである。
また、本発明は、プラスチック基板と、該プラスチック基板上に、基板側からλ /4 −λ /2 −λ /4 型(λ=500 nm) の反射防止膜と、該プラスチック基板と該反射防止膜との間に設けられた金属酸化物コロイド粒子と有機ケイ素化合物よりなるコ−ティング組成物を硬化させてなる硬化被膜と、該硬化被膜上に直接施される下地層とを有する光学部材であって、該λ /2 の層は、屈折率が 1.80 2.40 である3層または5層の等価膜であり、該等価膜の偶数層が二酸化ケイ素層である反射防止膜を有する光学部材を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、λ/2の高屈折率層を3層の等価膜にすれば、良好な耐熱性及び反射防止特性を有する光学部材が得られる。さらに、良好な耐熱性及び反射防止特性を得る場合には、3層を超える等価膜にすればよい。
【0007】
また、前記λ/2の等価膜における奇数層は、良好な耐熱性、反射率特性を得る観点から、高屈折率蒸着物質として知られている酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル及び酸化ニオブ等の蒸着物質を含有する層が好ましく、特に、TiO2 、Ta2 O5 及びNb2 O5 の中から選ばれた少なくとも1種類の蒸着物質からなる層が好ましく、最も好ましくはNb2 O5 の蒸着物質からなる層である。生産効率性の観点で、奇数層は、全て同一膜組成にすることが好ましい。
前記λ/2の高屈折率層の合成屈折率は、1.80〜2.40の範囲であり、良好な物性を得るために、1.85〜2.25の範囲が特に好ましく、この屈折率の範囲を満たすようλ/2の高屈折率層の膜構成がなされる。
【0008】
本発明において、λ/2の高屈折率層上に形成されるλ/4層は、二酸化ケイ素層が形成される。λ/2の高屈折率層の下に形成されるλ/4層は、良好な反射防止特性及び耐熱性を得るために2層以上の等価膜にすることが好ましい。その膜構成は、二酸化ケイ素層と、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル及び酸化ニオブ等の高屈折率蒸着物質よりなる層からなる2層等価膜、二酸化ケイ素層と、酸化ニオブよりなる層との2層等価膜が好ましい。
また、生産効率の点から、前記λ/4の等価膜を作製する蒸着原料と、前記λ/2の等価膜を作製する蒸着原料とは同じ蒸着原料を用いると好ましい。
【0009】
この酸化ニオブ層を形成するには、100%の酸化ニオブを蒸着物質として使用してイオンアシスト法により形成する方法又は酸化ニオブ、酸化ジルコニウム及び酸化イットリウムの粉末、又は更に酸化アルミニウムを加えた粉末を焼結し、得られた焼結体から混合酸化物の蒸気を発生させ、発生した蒸発物を基板上に析出させる方法で行うと好ましい。
また、蒸発物を基板上に析出させる方法では、焼結体の混合割合は、良好な膜物性を得るために、蒸着組成物全量を基準にして、酸化ニオブが60〜90重量%、酸化ジルコニウムが5〜20重量%、酸化イットリウムが5〜35重量%であることが好ましい。さらに、酸化アルミニウムを加える場合には、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム及び酸化イットリウム合計に対して0.3〜7.5重量%を添加することが好ましい。
【0010】
本発明の光学部材は、プラスチック基板と反射防止膜との間に下地層が設けられており、下地層の材質としては、二酸化ケイ素または金属ニオブが好ましく、金属ニオブが特に好ましい。また、膜厚としては、二酸化ケイ素層の場合は、膜強度等の点から0.1λ〜5λで、金属ニオブの場合は、膜の透明性確保等の点から0.005 λ〜0.015 λが好ましい。
下地層の材質を金属ニオブとすると、プラスチック基板と反射防止膜の密着性、耐熱性、耐衝撃性及び耐摩耗性に優れ、金属特有の吸収率が少ない等の利点を有している。この金属ニオブ(Nb層)の形成は、イオンアシスト法で行なうことが好ましい。
前記イオンアシスト法を実施する際によるイオン化ガスは、成膜中の酸化防止の点からアルゴン(Ar)を用いるのが好ましい。これにより膜質の安定と、光学式膜厚計での制御が可能となる。
【0011】
さらに、プラスチック基板と下地層との密着性確保及び蒸着物質の初期膜形成状態の均一化を図るために、下地層を形成する前にイオン銃前処理を行なってもよい。イオン銃前処理におけるイオン化ガスは 酸素、アルゴンなどを用いることができ、出力で好ましい範囲は、加速電圧が50V〜200V、加速電流が50mA〜150mAである。
【0012】
本発明の光学部材において、反射防止膜の形成方法は、通常の真空蒸着法、イオンアシスト法等を用いることができる。
本発明の光学部材に用いるプラスチック基板としては、特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0013】
本発明の光学部材は、前記プラスチック基板と前記下地層との間に、硬化被膜を有してもよい。
硬化被膜としては、通常、金属酸化物コロイド粒子と有機ケイ素化合物よりなるコ−ティング組成物を硬化たものが一般的に用いられる。
前記金属酸化物コロイド粒子としては、例えば、酸化タングステン(WO3 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタニウム(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ベリリウム(BeO)又は酸化アンチモン(Sb2 O5)等が挙げられ、単独又は2種以上を併用することができる。
【0014】
本発明の光学部材において、好ましい態様としては、例えば以下に示す構成(c)が挙げられる。
【表1】
Figure 0003545359
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1〜6における光学部材は、以下に示す試験方法により、諸物性を測定した。
(1)視感透過率
プラスチックレンズの視感透過率Yは、両面に反射防止膜を有するプラスチックレンズをサンプルとして、日立分光光度計U−3410を用い測定した。
(2)視感反射率
プラスチックレンズの視感反射率Zは、両面に反射防止膜を有するプラスチックレンズをサンプルとして、日立分光光度計U−3410を用い測定した。
(3)密着性
プラスチックレンズの表面に剃刀にて1mm×1mmの升目を100個作成し、升目上にセロハンテープを貼り、一気にテープをはがし、残った升目の数で評価した。表中、残った升目の数/100で記載した。
(4)耐摩耗性
プラスチックレンズの表面にスチールウールにて1kgf/cmの荷重をかけ、20ストローク擦り、表面状態により以下の基準で評価した。
UA:殆ど傷なし
A:細い傷数本あり
B:細い傷多数、太い傷数本あり
C:細い傷多数、太い傷多数あり
D:殆ど膜はげ状態
【0018】
(5)耐熱性
プラスチックレンズをドライオーブンで1時間加熱し、クラックの発生温度を測定した。加熱温度は、50℃より始め、5℃づつ上げて、クラックを発生する温度を調べた。
(6)耐アルカリ性
プラスチックレンズをNaOH水溶液10%に1時間浸漬し、表面状態により以下の基準で評価した。
UA:殆ど変化なし
A:点状の膜はげ数個あり
B:点状の膜はげが全面にあり
C:点状のはげが全面、面状のはげ数個あり
D:殆ど全面膜はげ
(7)耐衝撃性
中心厚2.0mmで、レンズ度数0.00のレンズを作製してFDAで定められているドロップボールテストを行い、○:合格、×:不合格とした。
【0019】
実施例1〜6
基板A及びハ−ドコ−ト層A層の作製
ガラス製容器に、コロイダルシリカ(スノ−テックス−40、日産化学)90重量部、有機ケイ素化合物のメチルトリメトキシシラン81.6重量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン176重量部、0.5N塩酸2.0重量部、酢酸20重量部、水90重量を加えた液を、室温にて8時間攪拌後、室温にて16時間放置して加水分解溶液を得た。この溶液に、イソプロピルアルコ−ル120重量部、n−ブチルアルコ−ル120重量部、アルミニウムアセチルアセトン16重量部、シリコ−ン系界面活性剤0.2重量部、紫外線吸収剤0.1重量部を加え、室温にて8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させコ−ティング液を得た。
アルカリ水溶液で前処理したプラスチックレンズ基板(素材:ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト、屈折率1.50、中心厚2.0mm、レンズ度数0.00、これを以下、「基板A」という場合がある。)を、前記コーティング液の中に浸漬させ、浸漬終了後、引き上げ速度20cm/分で引き上げたプラスチックレンズを120℃で2時間加熱して硬化膜を形成した。その後、表1〜6に記載したイオン加速電圧、照射時間の条件でArガスを用いて、イオン銃処理を行いイオンアシスト法にて硬化被膜としてハードコート層(以下、「A層」と記載する場合がある)を形成した。
【0020】
下地層及び反射防止膜の作製
次に、ハードコートA層の上に、表1〜3に示した条件のイオンアシスト法にて、表1〜3に示した第1層〜第8層からなる機能膜を形成し、プラスチックレンズを得た。
得られたプラスチックレンズについて上記(1)〜(7)を評価し、それらの結果を表1〜6に示した。尚、表中、λは照射光の波長で、λ=500nmを示す。なお、実施例1〜6におけるλ/4及びλ/2の合成屈折率は、表8に記載した。
【0021】
【表4】
Figure 0003545359
【0022】
【表5】
Figure 0003545359
【0023】
【表6】
Figure 0003545359
【0036】
【表11】
Figure 0003545359
【0038】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の反射防止膜を有する光学部材は、良好な視感反射率、視感透過率、密着性、耐摩耗性、耐アルカリ性及び耐衝撃性を維持しつつ、さらに耐熱性が向上している。

Claims (7)

  1. プラスチック基板と、該プラスチック基板上に、基板側からλ/4−λ/2−λ/4型(λ=500nm) の反射防止膜と、該プラスチック基板と該反射防止膜との間に設けられた金属ニオブからなる下地層とを有する光学部材であって、該λ/2の層は、屈折率が1.80〜2.40である3層以上の等価膜であり、該等価膜の偶数層が二酸化ケイ素層である反射防止膜を有する光学部材。
  2. 前記λ/2の等価膜の奇数層は、酸化チタン、酸化ニオブ及び酸化タンタルの中から選ばれた少なくとも1種類の金属酸化物からなる層である請求項1記載の反射防止膜を有する光学部材。
  3. 前記λ/2の等価膜の奇数層は、酸化ニオブからなる層である請求項1記載の反射防止膜を有する光学部材。
  4. 前記λ/2の層の下に形成されるλ/4層が、2層以上の等価膜である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の反射防止膜を有する光学部材。
  5. 前記λ/4の層は、前記λ/2の層の奇数層及び偶数層で用いる金属酸化物層より構成される請求項4記載の反射防止膜を有する光学部材。
  6. 前記λ/4の等価膜が、酸化ニオブからなる層と、二酸化ケイ素層とから構成される請求項4記載の反射防止膜を有する光学部材。
  7. プラスチック基板上に、下地層と、λ/4−λ/2−λ/4型の反射防止膜とが設けられ、下地層(第1層)及びλ/4(第2〜4層)−λ/2(第5〜7層)−λ/4(第8層)の第1〜8層からなる構成で、
    第1層が、膜厚0.005λ〜0.015λ、屈折率1.40〜1.47の金属ニオブ層、
    第2層が、屈折率1.43〜1.47の二酸化ケイ素層、
    第3層が、屈折率2.04〜2.37の高屈折率層、
    第4層が、屈折率1.43〜1.47の二酸化ケイ素層、
    第5層が、屈折率2.04〜2.37の高屈折率層、
    第6層が、屈折率1.43〜1.47の二酸化ケイ素層、
    第7層が、屈折率2.04〜2.37の高屈折率層、
    第8層が、屈折率1.43〜1.47の二酸化ケイ素層であり、
    λ/4(第2〜4層)の合成屈折率が1.65〜1.80、
    λ/2(第5〜7層)の合成屈折率が1.85〜2.25であり、
    前記高屈折率層が、酸化チタン、酸化ニオブ及び酸化タンタルの中から選ばれた少なくとも1種類の金属酸化物より構成される反射防止膜を有する光学部材。
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