JP3545248B2 - 抄紙用型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプモールド成形体の成形に好適に用いられる抄紙用型に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
パルプモールド成形体の製造に用いられる抄紙用型には、通常抄紙部の内面にネット等の網目状部材が配されている。ネットは一般に溶接や針金等を用いて型に固定されている。この理由は、ネットが固定されていないと、抄紙時にパルプスラリーの注入圧力や流れ等によってネットが所定の位置から移動してしまい、所望の形状の成形体が得られなかったり、成形体の肉厚が不均一になる不都合があるためである。
【0003】
しかし、ネットが配された型を用いて成形体を製造する場合、成形を重ねるとネットにパルプ繊維が付着蓄積して、成形体の肉厚が不均一になったり、成形体の外観が損なわれる。ネットを型から取り外して洗浄すれば斯かる不都合を回避できるが、溶接によりネットが固定されている場合にはこれを取り外すことは容易でなく、また針金等により固定されている場合には、取り外しは可能なものの手間がかかる。
【0004】
従って、本発明は、型からの網目状部材の着脱が容易で且つ網目状部材にパルプ繊維が付着蓄積しにくい抄紙用型を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、凹状部を有する抄紙部の内面に、網目状部材の固定部材が所定間隔を置いて複数設けられており、該固定部材は、該網目状部材を該抄紙部の内面と離間させて着脱可能に固定するようになしてある抄紙用型を提供することにより上記目的を達成したものである。

【0006】
また、本発明は、上記抄紙用型を用いたパルプモールド成形体の好ましい製造方法として、上記抄紙用型を一組用い、該型における上記抄紙部を互いに突き合わせて成形すべき成形体の外形に対応した形状のキャビティを形成し、該キャビティ内にパルプスラリーを注入し、上記型をその外側から吸引して該キャビティ内面にパルプモールド成形体を形成するパルプモールド成形体の製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)には本発明の一実施形態の斜視図が示されており、図1(b)には図1(a)のI−I線断面図が示されている。本実施形態の型は、分割面を互いに突き合わせて成形すべき成形体の外形に対応する形状のキャビティが形成されるようになされている二つの該分割型の一方にあたるものである。図示していないが他方の分割型も同様の構成となっている。
【0008】
型1は、抄紙部2とマニホールド部3とを備えている。抄紙部2は、凹状部4を有しており、この凹状部4は、成形すべき成形体の外形の縦半分の形状に対応する形状となっているパルプ層形成部5と、二つの型を突き合わせた場合に型外部から上記キャビティに連通する口部を形成するスラリー流入部6とから構成されている。凹状部4の周縁部には、水平方向に延出した平面状の分割面部5が形成されている。
【0009】
図1(b)に示すように、凹状部4には、その内面から外面に亘って貫通した複数の連通孔8が穿設されている。また、凹状部の内面には、金属製又は合成樹脂製等の線状材から形成された網目状部材9が配設されている。網目状部材9における目開きは一般に20〜100メッシュ程度である。網目状部材9は単層のものでもよく、二層以上積層して一体化したものでもよい。尚、図1(a)における網目状部材9は模式的に示されており、その網目の大きさは実際のものと異なる。
【0010】
マニホールド部3は一面が開口した箱形の形状をしている。そして、この開口部を通じて抄紙部2を嵌挿することによって、抄紙部2の外面とマニホールド部3の内面とで所定形状のマニホールド10が形成される。
【0011】
マニホールド部3における対向する一対の側壁11,11には、複数の貫通孔12,12,・・が設けられている。これによって型1には、貫通孔12、マニホールド10及び連通孔8が連通して、型1の外部から抄紙部2の内面に至る連通路が形成される。
【0012】
而して、本実施形態の型1においては、抄紙部2における凹状部4の内面に網目状部材9の固定部材13,13,・・が所定間隔を置いて複数設けられている。固定部材13は、網目状部材9を抄紙部2の内面と離間させて着脱可能に固定するようになしてある。
【0013】
図2には、固定部材13による網目状部材9の固定の様子が模式的に示されている。固定部材13は円柱状であり、その上面から所定の深さ迄の部分に、網目状部材9を構成する線状材9’を着脱可能に保持固定する十文字状のスリット部14が形成されている。
【0014】
スリット部14は、その幅が線状材9’の太さよりもやや小さくなっている。但し、スリット部14の最下部における幅は線状材9’の太さと同程度か又はやや太くなっている。このような構成によって網目状部材9は、固定部材13に確実に固定されると共にその取り外しが容易となる。スリット部14の上端部における幅は、網目状部材9を構成する線状材9’の太さにもよるが、0.05〜2mm程度であることが好適である。
【0015】
また、図2に示すように、網目状部材9が固定部材13に固定された状態においては、固定部材13の上面と、網目状部材9の上面とが同一面上に位置している。網目状部材9をこのように固定することによって、固定部材13の上面は平坦に近い状態となり、スリット部14の形状が、成形体の表面に転写することを効果的に防止でき、外観の良好な成形体を得ることができる。
【0016】
上述の通り、スリット部14は、固定部材13の上面から所定の深さ迄の部分に形成されている。従って、網目状部材9が固定部材13によって抄紙部2の凹状部4の内面に固定された状態では、網目状部材9は該内面から離間している。網目状部材9が斯かる状態で固定されることによって、抄紙時にパルプスラリー中の水を吸引する場合に、網目状部材9と上記内面との間を水が流通するようになる。従って、抄紙部2に設けられた連通孔8近傍における局所的な吸引が起こりにくくなり、これに伴いパルプ繊維の網目状部材9上への局所的な堆積も起こりにくくなる。その結果、網目状部材9上へのパルプ繊維の付着蓄積が防止されると共に肉厚の均一な成形体が得られる。
【0017】
網目状部材9と抄紙部2の凹状部4の内面との間隔が、0.3mm以上、特に1.0mm以上であると、網目状部材9上へのパルプ繊維の付着蓄積を一層効果的に防止でき、また一層肉厚の均一な成形体が得られる。
【0018】
図2に示す固定部材13においては、網目状部材9の目開きや線状材9’の太さにもよるが、その直径が0.5〜10mm程度であることが、網目状部材9が確実に固定され、且つパルプ繊維が均一に堆積される点から好ましい。また、固定部材が円柱状ではなく、例えば横断面が正方形の角柱状である場合には、該正方形の大きさを1×1mm〜10×10mm程度とすることが同様の理由から好ましい。
【0019】
固定部材13は、網目状部材9の着脱を容易に行い得ると共に網目状部材9を確実に固定し得る点から弾性ないし柔軟性を有する材料から構成されていることが好ましい。そのような材料として例えば天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等の各種プラスチック、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。
【0020】
固定部材13は、抄紙部2における凹状部4の内面に規則的又は不規則に所定間隔を置いて設けられている。固定部材13を設ける個数は、凹状部4の表面積に対して、平均で1〜100個/1000cm、特に10〜100個/1000cmとすることが、網目状部材9が確実に固定され、且つ所望の肉厚の成形体が形成される点から好ましい。この場合、凹状部4の形状が複雑である場合には固定部材13を設ける個数を多めにすることが好ましい。
【0021】
固定部材13を凹状部4の内面に固定する手段に特に制限は無い。例えば、接着剤による接着、螺合、嵌合等の手段によって固定部材13を凹状部4の内面に固定することができる。
【0022】
次に、本発明の抄紙用型における固定部材の別の実施形態について図3を参照しながら説明する。図3(a)に示す固定部材13は、その上端部から所定の深さ迄の部分にスリット部14が形成されている。更にスリット部14の端縁部に一対のニップ部材15,15が配設されており、このニップ部材15によってスリット部14の入り口が閉じられている。ニップ部材15はスリット部14の幅方向に亘って配設されていてもよく、或いは幅方向の一部分に配設されていてもよい。ニップ部材15は弾性材等から構成されている。網目状部材を固定する場合には、網目状部材を構成する線状材をニップ部材15,15間に押し入れる。これによってニップ部材15が変形し、該線状材がスリット部14内に入り、固定される。このように、本実施形態の固定部材においてはニップ部材15によって網目状部材を固定していると共にその着脱を容易にしている。従って、スリット部14の幅は、図2に示す固定部材と異なり、網目状部材を構成する線状材の太さより大きくてもよい。
【0023】
図3(b)に示す固定部材13は、その高さ方向と直交する方向にスリット部14が形成されている。スリット部14の端縁部には、互いに係合可能な一対の係合部材16,16が配設されている。更に、固定部材13におけるスリット部14の最奥部と対向する部分にはヒンジ部17が形成されている。これにより、固定部材13におけるスリット部14より上方の部分が開閉可能な開閉部18となっている。そして開閉部18を開閉することにより網目状部材をスリット部14に取り付け固定し又取り外すことができる。
【0024】
図3(c)に示す固定部材13は、機械的ファスナのフック部材19及びループ部材20並びに抄紙部2における凹状部4の内面に固定された基部21を備えている。フック部材19は基部21の上端面にフック部を上方に向けて固定されている。ループ部20は、網目状部材9の下面にループ部を下方に向けて固定されている。そして、フック部材19のフック部をループ部材20のループ部に係合させることで網目状部材9が基部21に固定される。
【0025】
フック部材19の基材19a及びループ部材20の基材20aは通水性の材料から構成されているか、又は通水性を有する構造体とされている。また、基部21におけるフック部材19の固定面から所定深さ迄の部分には複数の縦穴22,22,・・が穿設されている。更に、基部21には該縦穴22と連通し且つ基部21の側面に通ずる横穴23が穿設されている。斯かる構成によって、網目状部材9におけるループ部20が固定された領域においても水の流通路が形成され、該領域にパルプ繊維が通常通りに堆積される。
【0026】
尚、図3(c)に示す固定部材13においては、フック部材19を網目状部材9に固定し、ループ部材20を基部21に固定してもよい。
【0027】
上記実施形態の抄紙用型を用いたパルプモールド成形体の製造方法は図4に示す通りである。先ず図4(a)に示すように、2つの型1,1で一組が構成される抄紙用型を、その抄紙部2同士が対向するように突き合わせて、成形すべき成形体の外形に対応した形状のキャビティ30を形成し、このキャビティ30に通ずる口部31からキャビティ30内にパルプスラリーを注入する。次に、型1,1をその外側から吸引してキャビティ30内を減圧し、パルプスラリー中の水分を吸引すると共にパルプ繊維をキャビティ30の内面に堆積させて、パルプ層32を形成する。
【0028】
所定量のパルプスラリーを注入したら、パルプスラリーの注入を停止し、キャビティ30内を完全に吸引・脱水する。引き続き、図4(b)に示すように、キャビティ30内を吸引・減圧すると共に、弾性を有し膨張収縮自在で且つ中空状をなす中子33をキャビティ30内に挿入する。中子33は、キャビティ30内において風船のように膨らませてパルプ層32をキャビティ30の内面に押圧することにより、パルプ層32を加圧脱水すると共にキャビティ30の内面形状を付与するのに使用される。中子33は引張強度、反発弾性及び伸縮性等に優れたウレタン、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム又はエラストマー等によって形成されている。
【0029】
次に、図4(c)に示すように、中子33内に加圧流体を供給して中子33を膨張させ、膨張した中子33によりパルプ層32をキャビティ30の内面に押圧する。これによりパルプ層32が中子33によってキャビティ30の内面に押し付けられパルプ層32の加圧脱水が進行すると共にパルプ層32にキャビティ30の内面形状が転写される。中子33を膨張させるために用いられる加圧流体としては、例えば圧縮空気(加熱空気)、水(過熱水蒸気)、油(加熱油)、その他各種の液が使用される。また、加圧流体を供給する圧力は、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaとすることが好ましい。
【0030】
パルプ層32が所定の含水率まで加圧脱水され且つパルプ層32にキャビティ30の内面の形状が十分に転写されたら、図4(d)に示すように、中子33内の加圧流体を抜く。中子33は収縮して元の大きさに戻る。次いで、収縮した中子33をキャビティ30内より取出し、更に型を開いて所定の含水率を有する湿潤した状態の成形体34を取り出す。取り出された成形体34は所定の加熱・乾燥工程に付され完全に乾燥されて、パルプモールド成形体となる。このパルプモールド成形体は、本発明の抄紙用型を用いて製造されているので、製造中に網目状部材にパルプ繊維が付着堆積することが防止され、肉厚が均一ものとなる。
【0031】
本発明は上記実施形態に制限されず、例えば本発明の抄紙用型を雄型及び雌型からなるプレス方式の抄紙用型に適用してもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、網目状部材の着脱が容易な抄紙用型が提供される。また本発明によれば、網目状部材にパルプ繊維が付着蓄積しにくい抄紙用型が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の抄紙用型の一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)におけるI−I線断面図である。
【図2】固定部材による網目状部材の固定の様子を示す模式的である。
【図3】固定部材の別の実施形態を示す模式図である。
【図4】図1に示す抄紙用型を用いてパルプモールド成形体を製造する方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 抄紙用型
2 抄紙部
3 マニホールド部
4 凹状部4
9 網目状部材
13 固定部材
14 スリット部
19 フック部材
20 ループ部材
21 基部

Claims (4)

  1. 凹状部を有する抄紙部の内面に、網目状部材の固定部材が所定間隔を置いて複数設けられており、該固定部材は、該網目状部材を該抄紙部の内面と離間させて着脱可能に固定するようになしてある抄紙用型。
  2. 上記固定部材に、上記網目状部材を構成する線状材を着脱可能に保持固定するスリット部が形成されている請求項1記載の抄紙用型。
  3. 上記固定部材が、機械的ファスナのフック部材及びループ部材並びに上記抄紙部の内面に固定された基部を備え、該フック部材及びループ部材の何れか一方が上記網目状部材に固定されていると共に他方が該基部に固定されている請求項1記載の抄紙用型。
  4. 請求項1記載の抄紙用型を一組用い、該型における上記抄紙部を互いに突き合わせて成形すべき成形体の外形に対応した形状のキャビティを形成し、該キャビティ内にパルプスラリーを注入し、上記型をその外側から吸引して該キャビティ内面にパルプモールド成形体を形成するパルプモールド成形体の製造方法。
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