JP3544076B2 - プラズマcvd装置およびプラズマcvdによる堆積膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイス、電子写真用感光体デバイス、画像入力用ラインセンサー、フラットパネルディスプレイ、撮像デバイス、光起電力デバイス等の製造に用いられるプラズマCVD装置およびプラズマCVDによる堆積膜形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体デバイス等の製造プロセスにおいては、プラズマCVD装置が工業的に実用化されている。特に13.56MHzの高周波や2.45GHzのマイクロ波を用いたプラズマCVD装置は基板材料、堆積膜材料等が導電体、絶縁体に関わらず処理できるので広く用いられている。
【0003】
従来のプラズマCVD装置の一例として、高周波エネルギーを用いた平行平板型の装置について図7を参照しながら説明する。
反応容器1に絶縁性のカソード電極支持台2を介してカソード電極3が配置されている。
カソード電極3の回りには、カソード電極3の側部と反応容器1との間で放電が発生しないようにアースシールド4が配置されている。カソード電極3には整合回路9と高周波電力供給線を介して高周波電源10が接続されている。
カソード電極と平行に配された対向電極5にはプラズマCVDを行うための平板状の被成膜基体6が配置され、被処理基体6は、基体温度制御手段(図示せず)により所望する温度に保たれる。
【0004】
この装置を使用した場合のプラズマCVDは以下のように行われる。
反応容器1を真空排気手段7によって高真空まで排気した後、ガス供給手段8によって反応ガスを反応容器1内に導入し、所定の圧力に維持する。高周波電源10より高周波電力をカソード電極3に供給してカソード電極と対向電極との間にプラズマを発生させる。
こうすることにより、反応ガスがプラズマにより分解、励起され被成膜基体6上に堆積膜を形成する。
高周波エネルギーとしては、13.56MHzのRFエネルギーを用いるのが一般的であるが、放電周波数が13.56MHzの場合、放電条件の制御が比較的容易であり、得られる膜の膜質が優れているといった利点を有するが、ガスの利用効率が低く、堆積膜の形成速度が比較的小さいといった問題がある。
【0005】
こうした問題に鑑みて、周波数が25〜150MHz程度の高周波を用いたプラズマCVD法についての検討がなされている。
例えばPlasma Chemistry and Plasma Processing, Vol 7,No3,(1987)p267−273(以下、「文献1」という。)には、平行平板型のグロー放電分解装置を使用して原料ガス(シランガス)を周波数25〜150MHzの高周波エネルギーで分解してアモルファスシリコン(a−Si)膜を形成することが記載されている。具体的には、文献1には、周波数を25MHz〜150MHzの範囲で変化させてa−Si膜の形成を行い、70MHzを使用した場合、膜堆積速度が、2.1nm/secと最も大きくなり、これは上述の13.56MHzを用いたプラズマCVD法の場合の5〜8倍程度の形成速度であること、及び得られるa−Si膜の欠陥密度、光バンドギャップ及び導電率は、励起周波数によってはあまり影響を受けないことが記載されている。しかし文献1に記載の成膜は実験室規模のものであり、大面積の膜の形成においてこうした効果が期待できるか否かについて全く触れるところはない。さらに文献1には、複数の基体上に同時に成膜を行い、実用に供し得る大面積の半導体デバイスを効率よく形成することに関しては何等の示唆もなされていない。因に文献1には、高周波(13.56MHz〜200MHz)の使用は、数μmの厚さの要求される低コストの大面積a−Si:H薄膜デバイスの高速プロセシングに興味ある展望を開くとして、単に可能性を示唆するにとどまっている。
【0006】
上記従来例は平板状の基体を処理するのに適したプラズマCVD装置の例であるが、複数の円筒状基体上に堆積膜を形成するのに適したプラズマCVD装置の一例が、特開昭60−186849号公報(以下、「文献2」という。)に記載されている。文献2には、周波数2.45GHzのマイクロ波エネルギー源を用いたプラズマCVD装置及び無線周波エネルギー(RFエネルギー)源を用いたプラズマCVD装置が開示されている。文献2のマイクロ波を用いたプラズマCVD装置においては、マイクロ波エネルギーを使用することから成膜時のプラズマ密度が極めて高く、それが故に原料ガスの分解が急激になされて膜堆積が高速で行われる。こうしたことから、緻密な堆積膜の形成を安定して行うのは極めて難しいという問題がある。
【0007】
次に、文献2のRFエネルギー源を用いたRFプラズマCVD装置を図面を参照しながら説明する。図8(A)及び図8(B)に示すプラズマCVD装置は、文献2に記載されているRFプラズマCVD装置に基づいたプラズマCVD装置である。尚、図8(B)は図8(A)のX−X断面図である。
図8(A)及び図8(B)において、100は反応容器を示す。反応容器100内には、6個の基体ホルダー105Aが同心円状に所定の間隔で配されている。106はそれぞれの基体ホルダー105A上に配された成膜用の円筒状基体である。
それぞれの基体ホルダー105Aの内部にはヒーター140が設けられていて円筒状基体106を内側より加熱できるようにされている。
また、それぞれの基体ホルダー105Aは、モーター132に連結したシャフト131に接続しており、回転できるようにされている。
105Bは円筒状基体106の補助保持部材である。103はプラズマ生起領城の中心に位置した高周波電力投入用のカソード電極である。
カソード電極103は、整合回路109を介して高周波電源111に接続されている。
130はカソード電極支持部材である。107は排気バルブを備えた排気パイプであり、該排気パイプは、真空ポンプを備えた排気機構135に連通している。108は、ガスボンベ、マスフローコントローラ、バルブ等で構成された原料ガス供給系である。
原料ガス供給系108は、ガス供給パイプ117を介して複数のガス放出孔を備えたガス放出パイプ116に接続される。133はシール部材である。
【0008】
この装置を使用した場合のプラズマCVDは以下のように行われる。
反応容器100を排気機構135によって高真空まで排気した後、ガス供給手段108からガス供給パイプ117及びガス放出パイプ116を介して原料ガスを反応容器100内に導入し、所定の圧力に維持する。
こうしたところで、高周波電源111より高周波電力を整合回路109を介してカソード電極103に供給してカソード電極と円筒状基体106との間にプラズマを発生させる。
こうすることにより、原料ガスがプラズマにより分解、励起され円筒状基体106上に堆積膜が形成される。
図8(A)及び図8(B)に示したプラズマCVD装置を使用すれば、放電空間が円筒状基体106で取り囲まれているので高い利用効率で原料ガスを使用できるという利点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、円筒状基体の表面全面に堆積膜を形成する場合には、円筒状基体を回転させる必要があり、回転させることによって実質的な堆積速度が上述した平行平板型のプラズマCVD装置を使用した場合の約1/3〜1/5に低下するという問題がある。
即ち、放電空間が円筒状基体で取り囲まれているため、円筒状基体がカソード電極と正対する位置では平行平板型のプラズマCVD装置と同程度の堆積速度で堆積膜が形成されるが、放電空間に接していない位置ではほとんど堆積膜は形成されないためである。
文献2においては、RFエネルギーの具体的な周波数については言及がなされていない。
本発明者らが図8(A)及び図8(B)に示したプラズマCVD装置を使用して、RFエネルギーとして一般的な13.56MHz、原料ガスとしてSiH4を用い、堆積速度は高くなるがポリシランなどの粉体が発生し易い数100mTorrの圧力条件において円筒状基体を回転させて基体の全周全面にアモルファスシリコン膜を堆積したところ実質的な堆積速度は高々0.5nm/sであった。図8(A)及び図8(B)に示したプラズマCVD装置を用いてアモルファスシリコン膜を感光層とする電子写真感光体を作製する場合、アモルファスシリコン感光層の膜厚は30μm程度必要であるため、前述した0.5nm/s程度の堆積速度では膜堆積に16時間以上要し、生産性が非常に悪いという難点がある。また、図8(A)及び図8(B)の装置においては、RFエネルギーの周波数を30MHz以上にすると円筒状基体の軸方向に関して不均一なプラズマが形成されやすく、円筒状基体上に均質な堆積膜を形成するのは極めて難しいといった問題がある。この点は、後述の本発明者らが行った文献2に記載の方法を実施した実験1の結果からして容易に理解される。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来のものにおける課題を解決し、複数の円筒状基体の表面上に該円筒状基体の軸方向、及び周方向のいずれの方向に関しても、膜厚が極めて均一で且つ均質膜質である高品質な堆積膜を高速度で形成し、効率良く半導体デバイスを形成し得るプラズマCVD装置及びプラズマCVDによる堆積膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、プラズマCVD装置及びプラズマCVDによる堆積膜形成方法をつぎのように構成したものである。
すなわち、本発明のプラズマCVD装置は、減圧可能な反応容器と、該反応容器内にプラズマCVDの原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、前記反応容器内に配された基体保持手段及びカソード電極と、高周波電源とを有し、前記高周波電源で発生させた高周波電力を前記カソード電極に供給して前記基体保持手段により保持される基体と前記カソード電極との間にプラズマを発生させ基体に堆積膜を形成するプラズマCVD装置において、前記カソード電極が同一軸上にある複数の棒状導電体部材を誘電体部材により容量結合して構成されていることを特徴とするものであり、以下の構成を含むものである。
(1)前記カソード電極が、誘電体部材によってカバーされている構成。
(2)前記基体が円筒状基体であり、該円筒状基体の複数を前記反応容器内のカソード電極の周囲に該円筒状基体の中心軸が実質的に同一円周上に立設するように回転自在に配列し、カソード電極と該複数の円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(3)前記基体が円筒状基体であり、円筒状基体の周囲に複数のカソード電極を配列し、カソード電極と円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(4)前記円筒状基体が回転自在に設けられ、該円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(5)前記基体が平板状基体であり、該平板状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極と平板状基体との間にプラズマを発生させて平板状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(6)前記基体が成膜時に保持ロールより送り出され、巻き取りロールにより巻き取られるシート状基体であり、シート状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極とシート状基体との間にプラズマを発生させてシート状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(7)前記高周波電源は、その発振周波数が30〜600MHzの範囲のものであること。
(8)前記高周波電源は、その発振周波数が60〜300MHzの範囲のものであること。
【0012】
また、本発明の堆積膜形成方法は、実質的に減圧可能な反応容器内に、減圧下で原料ガスを導入し該反応容器内のカソード電極に高周波電力を印加してプラズマを生成し、基体保持手段により保持された基体上に堆積膜を形成するプラズマCVDによる堆積膜形成方法において、前記カソード電極として、実質的に同一軸上にある複数の棒状導電体部材を誘電体部材により容量結合して構成したカソード電極を用いて堆積膜を形成することを特徴としており、以下の構成を含むものである。
(1)前記カソード電極が、誘電体部材によってカバーされている構成。
(2)前記基体が円筒状基体であり、該円筒状基体の複数を前記反応容器内のカソード電極の周囲に該円筒状基体の中心軸が実質的に同一円周上に立設するように回転自在に配列し、カソード電極と該複数の円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(3)前記基体が円筒状基体であり、円筒状基体の周囲に複数のカソード電極を配列し、カソード電極と円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(4)円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(5)前記基体が平板状基体であり、平板状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極と平板状基体との間にプラズマを発生させて平板状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(6)前記基体が成膜時に保持ロールより送り出され、巻き取りロールにより巻き取られるシート状基体であり、シート状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極とシート状基体との間にプラズマを発生させてシート状基体の表面上に堆積膜を形成する構成。
(7)前記高周波電源の発振周波数を、30〜600MHzの範囲としたこと。
(8)前記高周波電源の発振周波数は、60〜300MHzの範囲としたこと。
(9)前記堆積膜は、少なくとも1種類のIV族元素を含むアモルファス物質の堆積膜であること。
(10)前記IV族元素がシリコンであること。
(11)前記堆積膜は、電子写真感光体用のものであること。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、大面積の基体上に膜厚が極めて均一で且つ均質膜質である高品質な堆積膜を高速度で形成することができるものであるが、それは、本発明者らの、以下に述べる実験1の結果により得られた知見に基づくものである。
【0014】
(実験1)
すなわち、実験1として、上述した文献2(特開昭60−186849号公報)に記載されたRFエネルギー源を用いたRFプラズマCVD技術に基づいて実験を行った。
図8(A)及び図8(B)のプラズマCVD装置において種々の周波数の高周波電源を用いて円筒状基体の全周全面にアモルファスシリコン膜を作製した。
それぞれのアモルファスシリコン膜の作製において、高周波電源の周波数が堆積膜の膜質及び膜質分布、堆積速度及び堆積速度分布に及ぼす影響について観察した。
当初文献1に示すような0.2Torr程度の圧力条件での実験を行ったがポリシランなどの粉体の発生が顕著な為、50mTorr以下の圧力において以下の手順で実験を行った。
【0015】
本実験では、直径108mm、長さ358mm、厚さ5mmのAl製円筒状基体をそれぞれの成膜ごとに6本ずつ反応容器100内に設置して基体は回転させながら成膜実験を行った。
カソード電極103には、Al製の直径30mm、長さ450mm、の円柱状のものを用いた。
膜質の評価用として、電気特性を評価するためのCr製の250μmギャップの櫛形電極を蒸着したコーニング#7059ガラス基板を電気特性評価基板として6本のうちの1本の円筒状基体表面上の軸方向の長さ358mmに亘って設置し、以下の手順で実験を行った。
【0016】
まず反応容器100内を排気機構135を作動して排気し、反応容器100内を1×10−6Torrの圧力に調整した。
ついで、ヒーター140に通電してそれぞれの円筒状基体106を250℃の温度に加熱保持した。
ついで以下の手順で成膜を行った。
即ち、原料ガス供給手段108からガス供給パイプ117及びガス放出パイプ116を介して、SiH4ガスを500sccmの流量で反応容器100内に導入し、該反応容器内を50mTorr、25mTorr、5mTorrの3条件の圧力に調整した。
こうしたところで、各圧力条件において高周波電源111により周波数13.56MHz乃至650MHzの高周波を1KW発生させ、該高周波を整合回路109を介してカソード電極103に供給した。
ここで高周波電源111としては上述した範囲の周波数が与えられるよう、所定の高周波電源を用いた。
整合回路109は、当該高周波電源の周波数に応じて適宜調整した。かくして円筒状基体106上及び前記の電気特性評価基板上にアモルファスシリコン膜が形成された。
【0017】
膜質及び膜質分布は電気特性評価基板の上端から下端までに亘って約20mmおきの18箇所の位置で光感度((光導電率σp)/(暗導電率σd))を測定することにより評価した。ここでは、光導電率σpは、1mW/cm2の強度のHe−Neレーザー(波長632.8nm)の照射時の導電率により評価している。本発明者らのこれまでの電子写真感光体作製からの知見によると、上記の方法による光感度が103以上の品質の堆積膜を得られる条件を基に最適化して作製した電子写真感光体において実用に値する画像が得られる。
しかし、近年の画像の高コントラスト化により、上述の光感度が104以上のものが必須になってきており、更に近い将来105以上の光感度が求められることが予想される。
このような観点から、今回の実験では光感度の値を下記の基準で評価した。
◎:光感度が105以上であり、非常に優れた膜特性である。
〇:光感度が104以上であり、良好な膜特性である。
△:光感度が103以上であり、実用上問題なし。
×:光感度が103未満であり、実用に適さない。
堆積速度及び堆積速度分布の評価は、a−Si膜を形成した円筒状基体5本の内1本の軸方向に亘って上述した光感度の測定位置と同様に約20mmおきの18箇所について渦電流式膜厚計(Kett科学研究所製)を使用して膜厚を測定することにより評価した。堆積速度は18箇所における膜厚に基づいて算出し、得られた値の平均値を平均堆積速度とした。堆積速度分布の評価は次のようにして行った。即ち、軸方向の堆積速度分布については、軸方向18箇所における堆積速度の最大値と最小値との差を求め、該差を18箇所の平均堆積速度で割り、堆積速度分布{(最大値−最小値)/平均値}を求め、これを軸方向の堆積速度分布として百分率で表した。
【0018】
50mTorr、25mTorr、5mTorrの圧力条件で成膜した試料の光感度のそれぞれの評価結果を表1(A)、表1(B)、表1(C)に、堆積速度の評価結果を表2(A)、表2(B)、表2(C)に示す。
【0019】
【表1(A)】
【0020】
【表1(B)】
【0021】
【表1(C)】
【0022】
【表2(A)】
【0023】
【表2(B)】
【0024】
【表2(C)】
13.56MHzの周波数を持つ高周波エネルギーによる試料においては、50mTorrの圧力条件で成膜したものは膜質及び堆積速度とも比較的均一であるが平均堆積速度が0.15nm/sと非常に遅いものであり、25mTorr以下の圧力条件では放電を生起させることができなかった。
【0025】
30MHzの周波数を持つ高周波エネルギーによる試料においては、50mTorr、25mTorrの圧力条件で成膜したものは円筒状基体の上部位置で光感度の低下が見られ、平均堆積速度は13.56MHzの3倍程度に増加したが、堆積速度分布に悪化が見られた。また、5mTorrの圧力条件では放電を生起させることができなかった。
【0026】
60MHz〜300MHzの周波数を持つ高周波エネルギーによる試料においては、円筒状基体の中央上部位置から中央下部位置において光感度の低下が見られ、光感度が低下しない位置では、圧力の低下に伴い光感度が向上する傾向がみられた。平均堆積速度は13.56MHzの7〜12倍程度に増加したが、堆積速度分布に悪化がみられた。
【0027】
400〜600MHzの周波数をもつ高周波エネルギーによる試料においては、 円筒状基体の複数の位置において光感度の低下が見られ、光感度が低下しない位置では、圧力の低下に伴い光感度が向上する傾向が見られた。平均堆積速度は13.56MHzの4〜6倍程度に増加したが、堆積速度分布に悪化がみられた。
【0028】
650MHzの放電条件においては、全ての圧力条件で放電が断続的になり、評価用の成膜試料を作製できなかった。
以上の実験結果から、RFエネルギーの周波数を30MHz以上にすると、気相反応が起こりにくい高真空領域での放電が可能となり非常に優れた膜特性を得ることができ、堆積速度も13.56MHzに比べて向上するが、膜質分布及び、堆積速度分布は悪化することが判った。
【0029】
本発明者らは、RFエネルギーの周波数を30MHz以上にすると偏在的に膜質が悪化する原因を解明すべく鋭意検討を行った。その結果、プラズマ電位分布と偏在的な膜質悪化に強い相関があることが判明した。即ち、円筒状基体の軸方向に亘ってラングミュアプローブ法によりプラズマ電位を測定したところ、偏在的に膜質が悪化する位置に対応する箇所においてプラズマ電位の低下が見られた。
【0030】
これらの検討結果から膜質分布及び堆積速度分布の悪化は、カソード電極上に発生する定在波に起因するものと推察された。一般にカソード電極と対向電極間に高周波電力を印加することによってプラズマを生成する場合、電極に印加した高周波電力の周波数と電極の大きさとの関係から電極上に無視できない定在波が発生する場合がある。即ち、高周波電力の周波数が高くなる場合やカソード電極の面積が大きくなる場合に定在波が発生し易くなり、この定在波が大きいと、カソード電極内での電界分布が悪くなり、電極間のプラズマ密度、プラズマ電位、電子温度などのプラズマ分布が乱れ、プラズマCVDの成膜品質に悪影響を及ぼす。上述した実験においては、カソード電極の先端でカソード電極上に反射波が発生し、入射波との干渉により30MHz以上の周波数において膜質、堆積速度に影響を与える定在波が発生したものと考えられる。特に、定在波の節の位置では電界が弱くなり、偏在的なプラズマ電位の低下を引き起こして偏在的に膜質が悪化したものと考えられる。また、400MHz〜600MHzの周波数においては、複数の位置に定在波の節が発生したものと考えられる。
【0031】
本発明者らは、これらの実験結果及び考察に基づいて、RFエネルギーの周波数が高くなると発生し易い膜質分布及び膜厚分布の悪化を防止すべくカソード電極の形状及び構成を検討した。その結果、定在波の節と考えられる位置付近に、入射波と電界を強め合う反射波を発生させる高周波の反射面を設置すれば良いことを見いだした。例えば、図2(A)において円柱状のカソード電極103のA−Aの位置に定在波の節が発生していると考えられる場合、図2(B)に示すようにカソード電極103aとカソード電極103bの間のA−Aの位置にアルミナセラミックスのような誘電体板102を設置すればよい。
即ち、このようにすれば、A−Aの位置で2つの高周波線路が容量結合されるが、不整合箇所となるため、入射波の一部分はA−Aの位置で反射される。反射波の位相は開放端の場合とほぼ同様に入射波と強め合う位相になる為この場所での電界は強められる。
また、図2(C)に示すように、カソード電極の高周波の伝送線路はカソード電極103a及びカソード電極103bを内部導体、プラズマを外部導体、プラズマのシースを伝送媒体とする同軸線路と見なすことができ、同軸線路の内部導体の外径をr、外部導体の内径をRとした場合、特性インピーダンスはlog(R/r)に比例し、誘電体板102でのインピーダンスは1/jωC(ここで、jは虚数単位、ωは高周波の角周波数、Cは静電容量)で表され、CはεS/d(ここでεは誘電体板の誘電率、Sは誘電体板面の面積、dは誘電体板の厚さ)に比例することから、誘電体板102の厚みを調整したり適当な誘電率を持つ材料を使用することにより、カソード電極103aからプラズマに供給される高周波電力と、カソード電極103aから誘電体板102を通してカソード電極103bに伝送してプラズマに供給される高周波電力との比を制御することも可能である。さらに、カソード電極にアルミナセラミックスのような誘電体カバー104を取り付ければプラズマとの距離も任意に制御できる為、更に広い範囲でインピーダンスを可変でき、制御性が向上する。
本発明は以上の検討結果を基礎として完成するに至ったものである。
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
図1(A)及び図1(B)に示したプラズマCVD装置は本発明のプラズマCVD装置の一例を示すものである。
尚、図1(A)は図1(B)のX−X断面図である。図1(A)及び図1(B)において、100は反応容器を示す。反応容器100内には、6個の基体ホルダー105Aが同心円状に所定の間隔で配されている。
106はそれぞれの基体ホルダー105A上に配された成膜用の円筒状基体である。それぞれの基体ホルダー105Aの内部にはヒーター140が設けられていて円筒状基体106を内側より加熱できるようにされている。
また、それぞれの基体ホルダー105Aは、モーター132に連結したシャフト131に接続しており、回転できるようにされている。105Bは円筒状基体106の補助保持部材である。103はプラズマ生起領域の中心に位置した高周波電力投入用のカソード電極である。
カソード電極103は、整合回路109を介して高周波電源111に接続されている。
カソード電極103は誘電体板102で分割され誘電体カバー104で被覆されている。
130はカソード電極支持部材である。107は排気バルブを備えた排気パイプであり、該排気パイプは、真空ポンプを備えた排気機構135に連通している。108は、ガスボンベ、マスフローコントローラ、バルブ等で構成された原料ガス供給系である。
原料ガス供給系108は、ガス供給パイプ117を介して複数のガス放出孔を備えたガス放出パイプ116に接続される。
133はシール部材である。
【0033】
この装置を使用した場合のプラズマCVDは以下のように行われる。反応容器100を排気機構135によって高真空まで排気した後、ガス供給手段108からガス供給パイプ117及びガス放出パイプ116を介して原料ガスを反応容器100内に導入し、所定の圧力に維持する。こうしたところで、高周波電源111より高周波電力を整合回路109を介してカソード電極103に供給してカソード電極と円筒状基体106との間にプラズマを発生させる。こうすることにより、原料ガスがプラズマにより分解、励起され円筒状基体106上に堆積膜が形成される。
【0034】
本発明において、カソード電極部の構成は、図2(B)に一例を示したが、図2(B)に示したものでは、誘電体板102が中央部に付いたものであるが、誘電体板の数と位置は使用する高周波電源の周波数とカソード電極103の軸方向の長さを考慮して任意に選択することができる。
例えば、図3に示すように誘電体板が2つのものでもよい。
【0035】
本発明において、誘電体板102に使用する誘電体材料は任意の公知のものを選択できるが、誘電損の小さい材料が好ましく、誘電正接が0.01以下であるものが好ましく、より好ましくは0.001以下がよい。
高分子誘電体材料ではポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリイミドなどが好ましく、ガラス材料では、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどが好ましく、磁器材料では窒化ホウ素、窒化シリコン、窒化アルミニウム、などや酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素などの元素酸化物の中の単数または複数の元素酸化物を主成分とする磁器が好ましい。
【0036】
本発明において、カソード電極の形状は円柱状、円筒状、多角柱状などの棒状のものが好ましい。
本発明において、高周波電源の周波数は好ましくは30〜600MHz、更に好適には60〜300MHzの範囲とするのが好ましい。
本発明において、装置構成は図4に示すように円筒状基体106の周囲に複数のカソード電極103を配置したものでもよい。
こうすることにより、成膜時には常時、円筒状基体の全周表面をプラズマに曝すことができるので堆積速度を大幅に向上することが可能となり生産性を大幅に向上できる。
更に、カソード電極の本数や配置箇所を最適化すれば円筒状基体を回転させなくても均一な堆積膜を基体全周表面に形成することが可能となり、回転機構が不要となるので装置構成を簡略化できる。
また、円筒状基体を回転させることにより更に極めて均一な堆積膜を形成できることは言うまでもない。
【0037】
本発明において、装置構成は図5に示すように平板状基体206に対して平行に複数のカソード電極103を配置したものでもよい。こうすることにより、大面積の平板状基体上に膜厚が極めて均一で且つ均質膜質である高品質な堆積膜を高速度で形成することができる。
本発明において、装置構成は図6に示すように成膜時に保持ロール150より送り出され、巻き取りロール151に巻き取られるシート状基体306に対して平行に単数または複数のカソード電極103を配置したものでもよい。こうすることにより、大面積のシート状基体上に膜厚が極めて均一で且つ均質膜質である高品質な堆積膜を高速度で形成することができる。
【0038】
本発明のプラズマCVD装置を使用するに際して、使用するガスについては、形成する堆積膜の種類に応じて公知の成膜に寄与する原料ガスを適宜選択使用される。
例えば、a−Si系の堆積膜を形成する場合であれば、シラン、ジシラン、高次シラン等あるいはそれらの混合ガスが好ましい原料ガスとして挙げらる。他の堆積膜を形成する場合であれば、例えば、ゲルマン、メタン、エチレン等の原料ガスまたはそれらの混合ガスが挙げられる。
いずれの場合にあっても、成膜用の原料ガスはキャリアーガスと共に反応容器内に導入することができる。キャリアーガスとしては、水素ガス、及びアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを挙げることができる。
【0039】
堆積膜のバンドギャップを調整する等の特性改善用ガスを使用することもできる。
そうしたガスとしては、例えば、窒素、アンモニア等の窒素原子を含むガス、酸素、酸化窒素、酸化二窒素等の酸素原子を含むガス、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン等の炭化水素ガス、四フッ化珪素、六フッ化二珪素、四フッ化ゲルマニウム等のガス状フッ素化合物またはこれらの混合ガス等が挙げられる。
【0040】
形成される堆積膜をドーピングするについてドーパントガスを使用することもできる。そうしたドーピングガスとしては、例えば、ガス状のジボラン、フッ化ホウ素、ホスフィン、フッ化リン等が挙げられる。
堆積膜形成時の基体温度は、適宜設定できるが、アモルファスシリコン系の堆積膜を形成する場合には、好ましくは60℃〜400℃、より好ましくは100℃〜350℃とするのが望ましい。
【0041】
【実施例】
以下に具体的に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
図1(A)に示した装置の高周波電源111として周波数30MHz〜600MHzの電源を接続した装置を使用し、カソード電極の構成は図2(D)に示したように円柱状カソード電極103をアルミナセラミックス製の誘電体板102で分割し、アルミナセラミックス製の誘電体カバー104を覆ったものとし、他の成膜条件は表3に示すように上述した実験1と同様にし、成膜手順も実験1と同様にして、円筒状基体106上及び電気特性評価基板上にアモルファスシリコン膜を形成した。尚、表1(A)、表1(B)、表1(C)に示した実験結果を参考にして、誘電体板が設置されていない従来の装置形態で成膜した場合に膜質が偏在的に悪化する箇所の中心付近にそれぞれ厚さが約1mmの誘電体板102を設けた。このようにして形成したアモルファスシリコン膜の膜質及び膜質分布、堆積速度及び堆積速度分布を実験1と同様の評価方法で評価をした。50mTorr、25mTorr、5mTorrの圧力条件で成膜した試料の光感度のそれぞれの評価結果を表4(A)、表4(B)、表4(C)に、堆積速度の評価結果を表5(A)、表5(B)、表5(C)に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4(A)】
【0044】
【表4(B)】
【0045】
【表4(C)】
【0046】
【表5(A)】
【0047】
【表5(B)】
【0048】
【表5(C)】
30MHzの周波数を持つ高周波エネルギーによる試料においては、50mTorrの圧力条件で成膜したものは全ての試料において光感度が8×103〜2×104の範囲にあり実用上問題なしであった。平均堆積速度は0.5nm/sであり、堆積速度分布は6%であった。25mTorrの圧力条件で成膜したものは全ての試料において光感度が1×104〜3×104の範囲にあり良好な膜特性であった。平均堆積速度は0.5nm/sであり堆積速度分布は6%であった。また、5mTorrの圧力条件では放電を生起させることができなかった。
【0049】
60MHz〜300MHzの周波数を持つ高周波エネルギーによる試料においては、50mTorrの圧力条件で成膜したものは全ての試料において光感度が1×104〜3×104の範囲にあり良好な膜特性であった。平均堆積速度は1〜1.8nm/sであり堆積速度分布は4〜6%であった。25mTorrの圧力条件で成膜したものは全ての試料において光感度が4×104〜8×104であり良好な膜特性であった。平均堆積速度は0.9〜2.0nm/sであり堆積速度分布は4〜5%であった。5mTorrの圧力条件で成膜したものはすべての試料において光感度が1×105〜5×105であり非常に優れた膜特性であった。平均堆積速度は1.0〜1.7nm/sであり、堆積速度分布は4%であった。
【0050】
400MHz〜600MHzの周波数を持つ高周波エネルギーによる試料においては、50mTorrの圧力条件で成膜したものは全ての試料において光感度が7×103〜1×104の範囲にあり実用上問題なしの膜特性であった。平均堆積速度は0.6〜0.7nm/sであり堆積速度分布は6〜8%であった。25mTorrの圧力条件で成膜したものは全ての試料において光感度が1×104〜3×104であり良好な膜特性であった。平均堆積速度は0.6〜0.7nm/sであり堆積速度分布は6〜8%であった。5mTorrの圧力条件で成膜したものはすべての試料において光感度が5×104〜8×104であり良好な膜特性であった。平均堆積速度は0.5〜0.7nm/sであり、堆積速度分布は6〜7%であった。
【0051】
[実施例2]
図1(A)の装置を用い、実施例1で光感度105以上の値が得られた条件、即ち、圧力条件5mTorr、電源周波数60MHz、100MHz、200MHz、300MHzの各々の条件で電子写真感光体を作製した。尚、誘電体板102は各々の電源周波数にたいして実施例1の5mTorrの圧力条件で用いたものと同様の形状のアルミナセラミックス製のものを用いた。
【0052】
電子写真感光体は、表6に示す成膜条件で6本のAl製の円筒状基体上に、電荷注入阻止層、光導電層及び表面保護層をこの順序で形成した。各々の電源周波数の条件で得られた試料について、帯電能、画像濃度、画像欠陥について評価した。その結果、いずれの電子写真感光体もこれらの評価項目について電子写真感光体全面に亘って非常に優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものてあることが判った。
【0053】
【表6】
[実施例3]
図4に示した装置を用い、直径108mm、長さ358mm、厚さ5mmの6本のAl製円筒状基体106を反応容器100内に配置して基体は回転させずに成膜を行った。カソード電極の構成は図2(D)に示したものを用いた。即ち、軸方向中央部に厚さ1mmのアルミナセラミックス製誘電体板102を挟んだAl製の全長450mmの円柱状のカソード電極103に外側面にアルミナセラミックス製の誘電体カバー104を覆ったものを用い、図4に示すように7本のカソード電極を反応容器に配置した。高周波電源の周波数は100MHzのものを用い、表7に示す成膜条件で6本の円筒状基体上にアモルファスシリコン膜を形成し、以下の手順で堆積速度及び堆積速度分布の評価を行った。アモルファスシリコン膜を形成した円筒状基体6本の内1本の軸方向に約20mmおきに線を引き、周方向に約32mmおきに線を引いた場合の交点180箇所について実験1で用いた渦電流式膜厚計を使用して膜厚を測定し各測定箇所における堆積速度を算出し、得られた値の平均値を平均堆積速度とした。得られた平均堆積速度は7.2nm/sであった。軸方向の堆積速度分布は、軸方向1列の測定点18箇所における堆積速度の最大値と最小値との差を求め、該差を18箇所の平均堆積速度で割り、1列あたりの堆積速度分布を求めた。ついで他の9列についても同様に1列あたりの堆積速度分布を求め、得られた10列の堆積速度分布の平均値を算出し、これを、軸方向の堆積速度分布として百分率で表した。軸方向の堆積速度分布は5%であった。周方向の堆積速度分布は、周方向1列の測定点10箇所における堆積速度の最大値と最小値との差を求め、該差を10箇所の平均堆積速度で割り、1列あたりの堆積速度分布を求めた。ついで他の17列についても同様に1列あたりの堆積速度分布を求め、得られた18列の堆積速度分布の平均値を算出し、これを、周方向の堆積速度分布として百分率で表した。周方向の堆積速度分布は9%であった。
【0054】
【表7】
[実施例4]
実施例3で用いた同一の装置構成で、電子写真感光体を作製した。
【0055】
電子写真感光体は、表11に示す成膜条件で6本のAl製の円筒状基体上に、電荷注入阻止層、光導電層及び表面保護層をこの順序で形成した。得られた試料について、帯電能、画像濃度、画像欠陥について評価した。その結果、いずれの電子写真感光体もこれらの評価項目について電子写真感光体全面に亘って非常に優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0056】
[実施例5]
成膜時に基体を回転させること以外、実施例3と同様にして6本の円筒状基体上にアモルファスシリコン膜を形成した。実施例3と同様にして、堆積速度及び堆積速度分布を評価したところ、平均堆積速度は7.2nm/sであり、軸方向の堆積速度分布は5%であり、周方向の堆積速度分布は3%であった。
【0057】
[実施例6]
実施例5で用いた同一の装置構成で、電子写真感光体を作製した。
【0058】
電子写真感光体は、表11に示す成膜条件で6本のAl製の円筒状基体上に、電荷注入阻止層、光導電層及び表面保護層をこの順序で形成した。得られた試料について、帯電能、画像濃度、画像欠陥について評価した。その結果、いずれの電子写真感光体もこれらの評価項目について電子写真感光体全面に亘って非常に優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0059】
【表11】
[実施例7]
図5に示した装置を用い、縦500mm、横500mm、厚さ1mmのガラス製の平板状基体を反応容器に配置して成膜を行った。カソード電極の構成は図3に示したものを用いた。即ち、Al製の長さ200mm、直径25mmの3本の円柱状のカソード電極103の間に直径25mm、厚さ1mmのアルミナセラミックス製の誘電体板102を2枚挟んで全長602mmとして、長さ605mm、内径26mm,外径38mmのアルミナセラミックス製の誘電体カバー104を覆ったものを用い、図5に示すように5本のカソード電極を反応容器に配置した。高周波電源の周波数は250MHzのものを用い、表8に示す成膜条件で平板状基体上にアモルファスシリコン膜を形成し、以下の手順で堆積速度及び堆積速度分布を評価した。アモルファスシリコン膜を形成した平板状基体縦方向に約30mmおきに線を引き、横方向にも約30mmおきに線を引いた場合の交点256箇所について実験1で用いた渦電流式膜厚計を使用して膜厚を測定し各測定箇所における堆積速度を算出し、得られた値の平均値を平均堆積速度とした。得られた平均堆積速度は6.5nm/sであった。堆積速度分布は、測定点256箇所における堆積速度の最大値と最小値との差を求め、該差を平均堆積速度で割り堆積速度分布として100分率で表した。得られた堆積速度分布は8%であった。
【0060】
【表8】
〈比較例1〉
カソード電極の構成として誘電体カバーを覆わない以外、実施例6と同様にして平板状基体上にアモルファスシリコン膜を形成した。堆積速度及び堆積速度分布を評価したところ、平均堆積速度は6.3nm/sであり、堆積速度分布は35%であった。
【0061】
〈比較例2〉
図7に示した従来の平行平板型の装置を用い、縦500mm、横500mm、厚さ1mmのガラス製の平板状基体を対向電極5に配置して、表9に示す成膜条件で平板状基体上にアモルファスシリコン膜を形成し、実施例6と同様の手順で堆積速度及び堆積速度分布を評価したところ、平均堆積速度は3.5nm/sであり、堆積速度分布は85%であった。
【0062】
【表9】
[実施例8]
図6に示した装置を用い、幅500mm、厚さ0.1mmのステンレス製のシート状基体306を反応容器に配置して巻き取りロール151に巻き取りながら成膜を行った。カソード電極の構成は図3に示したものを用いた。即ち、Al製の長さ200mm、直径25mmの3本の円柱状カソード電極103の間に直径25mm、厚さ1mmのアルミナセラミックス製の誘電体板102を2枚はさんで全長602mmとして、長さ605mm、内径26mm、外径38mmのアルミナセラミックス製の誘電体カバー104を覆ったものを用い、1本のカソード電極を反応容器に配置した。高周波電源の周波数は550MHzのものを用い、表10に示す成膜条件でシート状基体上にアモルファスシリコン膜を形成し、長さ500mmのシート状基体を切り出して実施例6と同様の手順で堆積速度及び堆速度分布を評価した。得れれた平均堆積速度は1.5nm/sであり、堆積速度分布は5%であった。
【0063】
【表10】
【0064】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、種々の形状の大面積基体、即ち、円筒状基体、平板状基体、シート状基体などに膜厚が極めて均一で且つ均質膜質である高品質な堆積膜を高速度で形成でき、大面積で高品質の半導体デバイスを効率的に作製することができる。
また、本発明によれば、特に電子写真特性に優れた大面積堆積膜を安定して量産可能なプラズマCVD装置およびプラズマCVDによる堆積膜形成方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。(B)は(A)図中X−Xに沿った平面断面図である。
【図2】本発明のプラズマCVD装置に用いるカソード電極の構成を説明するための模式構成図である。
【図3】本発明のプラズマCVD装置に好適なカソード電極部の構成例を示す模式図である。
【図4】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図5】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図6】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図7】従来のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図8】従来のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。(B)は(A)図中X−Xに沿った平面断面図である。
【符号の説明】
100:反応容器
102:誘電体板
103:カソード電極
104:誘電体カバー
105A:基体ホルダー
105B:補助保持部材
106:円筒状基体
107:排気パイプ
108:原料ガス供給系
l09:高周波整合回路
111:高周波電源
116:ガス放出パイプ
117:ガス供給パイプ
131:基体回転用シャフト
132:モーター
133:シール部材
135:排気機構
140:基体加熱用ヒーター
Claims (21)
- 減圧可能な反応容器と、該反応容器内にプラズマCVDの原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、前記反応容器内に配された基体保持手段及びカソード電極と、高周波電源とを有し、前記高周波電源で発生させた高周波電力を前記カソード電極に供給して前記基体保持手段により保持される基体と前記カソード電極との間にプラズマを発生させ基体に堆積膜を形成するプラズマCVD装置において、
前記カソード電極が同一軸上にある複数の棒状導電体部材を誘電体部材により容量結合して構成されていることを特徴とするプラズマCVD装置。 - 前記カソード電極は、誘電体部材によってカバーされていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマCVD装置。
- 前記基体が円筒状基体であり、該円筒状基体の複数を前記反応容器内のカソード電極の周囲に該円筒状基体の中心軸が実質的に同一円周上に立設するように回転自在に配列し、カソード電極と該複数の円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマCVD装置。
- 前記基体が円筒状基体であり、該円筒状基体の周囲に複数のカソード電極を配列し、該カソード電極と該円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマCVD装置。
- 前記円筒状基体が回転自在に設けられ、該円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項4に記載のプラズマCVD装置。
- 前記基体が平板状基体であり、該平板状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、該カソード電極と平板状基体との間にプラズマを発生させて平板状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマCVD装置。
- 前記基体が成膜時に保持ロールより送り出され、巻き取りロールにより巻き取られるシート状基体であり、シート状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極とシート状基体との間にプラズマを発生させてシート状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマCVD装置。
- 前記高周波電源は、その発振周波数が30〜600MHzの範囲のものであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のプラズマCVD装置。
- 前記高周波電源は、その発振周波数が60〜300MHzの範囲のものであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のプラズマCVD装置。
- 実質的に減圧可能な反応容器内に、減圧下で原料ガスを導入し該反応容器内のカソード電極に高周波電力を印加してプラズマを生成し、基体保持手段により保持された基体上に堆積膜を形成するプラズマCVDによる堆積膜形成方法において、
前記カソード電極として、実質的に同一軸上にある複数の棒状導電体部材を誘電体部材により容量結合して構成したカソード電極を用いて堆積膜を形成することを特徴とするプラズマCVDによる堆積膜形成方法。 - 前記カソード電極は、誘電体部材によってカバーされていることを特徴とする請求項10に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
- 前記基体が円筒状基体であり、該円筒状基体の複数を前記反応容器内のカソード電極の周囲に該円筒状基体の中心軸が実質的に同一円周上に立設するように回転自在に配列し、カソード電極と該複数の円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のプラズマCVD方法。
- 前記基体が円筒状基体であり、円筒状基体の周囲に複数のカソード電極を配列し、カソード電極と円筒状基体との間にプラズマを発生させて円筒状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のプラズマCVD方法。
- 円筒状基体を回転させながら円筒状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項13に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
- 前記基体が平板状基体であり、平板状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極と平板状基体との間にプラズマを発生させて平板状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のプラズマCVD方法。
- 前記基体が成膜時に保持ロールより送り出され、巻き取りロールにより巻き取られるシート状基体であり、シート状基体に対して平行に単数または複数のカソード電極を配列し、カソード電極とシート状基体との間にプラズマを発生させてシート状基体の表面上に堆積膜を形成することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のプラズマCVD方法。
- 前記高周波電源の発振周波数を、30〜600MHzの範囲としたことを特徴とする請求項10〜請求項16のいずれか1項に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
- 前記高周波電源の発振周波数は、60〜300MHzの範囲としたことを特徴とする請求項10〜請求項16のいずれか1項に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
- 前記堆積膜は、少なくとも1種類のIV族元素を含むアモルファス物質の堆積膜であることを特徴とする請求項10〜請求項18のいずれか1項に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
- 前記IV族元素がシリコンであることを特徴とする請求項19に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
- 前記堆積膜は、電子写真感光体用のものであることを特徴とする請求項19または請求項20に記載のプラズマCVDによる堆積膜形成方法。
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