JP3544034B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、オフィス用コンピュータや、パーソナルコンピュータなどの出力印字に用いられるプリンタに関するものであり、特に、インクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録装置は、記録時の静粛性、高速記録が可能、カラー化が容易といった点から家庭用、オフィス用コンピュータの出力用プリンタとして広く利用されるようになってきた。このようなインクジェット記録装置はインクを小滴化して飛翔させ、記録紙に付着させて記録を行うもので、小滴の発生法や飛翔方向の制御法によってコンティニアス方式とオンデマンド方式に大別される。
【0003】
コンティニアス方式は、例えば米国特許第3,060,429号明細書に開示されている方式であって、インクの小滴化を静電吸引的に行い、発生した小滴を記録信号に応じて電界制御し、記録紙上に小滴を選択的に付着させて記録を行うものであり、小滴の発生に高電圧を必要とし、かつマルチノズル化が困難であるので高速記録には不適である。
【0004】
オンデマンド方式は、小滴を吐出するノズル孔を有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に、電気的な記録信号を付加し、この電気信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、機械的振動にしたがって前記ノズル孔より小滴を吐出させて記録紙に付着させることで記録を行うものである。すなわち、この方式はオンデマンドに応じてインクをノズル孔より吐出して記録を行うため、コンティニアス方式のように吐出飛翔する小滴の中、画像の記録に寄与しなかった小滴を回収することを必要とせず、ひいてはシンプルな構成にすることが可能である。しかし、その一方で記録ヘッドの加工が困難であり、特にピエゾ振動素子の小型化が極めて困難でマルチノズル化が難しく、さらにピエゾ素子の機械振動という機械的エネルギーで小滴の飛翔を行うので高速記録に向かない等の欠点を有する。
【0005】
また、特公昭61−59911号公報,特公昭62−11035号公報,特公昭61−59914号公報には発熱抵抗体により沸騰を生起させ液滴を飛翔させる方式の記録法が開示されている。
【0006】
オンデマンド方式の他の例としては米国特許第3,179,042号明細書に開示されている方式には、ピエゾ振動素子等の手段による機械的振動エネルギーを利用する代わりに熱エネルギーを利用する方式が開示されている。この方式には、機械的振動エネルギーを利用する方式と比較しエネルギー変換効率が高く、マルチノズル化が容易であるといった特徴がある。
【0007】
次に、その吐出原理について説明する。図11はそのインク記録装置の断面図であり、83は導電性インク、84は導電性インクで満たされたインク室、85は導電性インクを収容するインクタンク、86,87は導電性インク液面以下に配置された一対の電極、88は電源、89は電源88のスイッチ、90は導電性インクを吐出するノズル、91は記録紙、92はノズル90から吐出されるインク滴である。そこで、一対の電極86,87に電圧が印加されると、導電性インク83に電流が流れ、そのジュール熱で電極86,87の先端間の導電性インク83の一部が気化する。さらにその気化された導電性インク83の蒸気はノズル90から記録紙91にインク滴92を吐出させるのに十分な圧力を発生するまで膨張する。このようにスイッチ89により電圧を印加することで、導電性インク83を吐出するノズル孔を選び記録紙91に所望の文字を形成できるようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記従来のインクジェット方式では、ドット自体の濃度を多階調化できないために、写真等の自然画を印刷する場合には、n×nドットの正方格子中のドット数を原画の輝度によって増減するディザ法等の手法によって多階調印字を実現していた。しかし、この方式では、例えば16階調であれば4×4、64階調であれば8×8と、より多くの階調を得ようとすれば、大きな正方格子を用いる必要があるため、解像度と階調の両立が難しいという問題を有していた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明は、液体を吐出するノズルと、ノズルに連通する液路と、前記液路内に配置され、かつインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させる複数の圧力発生手段からなる複数の吐出部と、前記圧力発生手段に電圧を供給する供給手段と、前記供給手段の制御を行う制御手段とを有し、前記ノズルを前記面上に対して射影したとき、射影された前記ノズルが前記複数の圧力発生手段に囲まれるように前記ノズルを配置し、前記圧力発生手段に電圧を供給して液路内に圧力を発生させ、かつ同一液路内に関し前記電圧を供給する対象となる前記圧力発生手段の組み合わせにより、液路内に発生する圧力を制御して、任意の量のインク滴の量を吐出させて多階調印字を行う構成とする。
【0010】
以下、本発明で実施できる好ましい態様について詳細に説明する。
【0011】
(記録原理)
記録方式としては、記録液を抵抗加熱ヒータ等の熱発生源で加熱し、沸騰させてその沸騰気泡の膨張力により記録液をノズル等の方向制御機構から吐出させて紙面上に印字させる方式、記録液に高電圧をかけ、静電場により記録液をノズル等の方向制御機構から吐出させて紙面上に印字させる方式、圧電素子の機械的運動により記録液に圧力を加え、その記録液をノズル等の方向制御機構から吐出させ、紙面上に印字させる方式、記録液に磁性材料を加え、外部磁場により記録液に運動エネルギーを与え、その記録液をノズル等の方向制御機構から吐出させて紙面上に印字させる方式、導電材料を添加した記録液に電気エネルギーを与え、記録液の自己発熱により生じた沸騰気泡の膨張力により記録液をノズル等の方向制御機構から吐出させて紙面上に印字させる方式等のインクジェット記録ヘッドがある。また、これらの記録方式を実現させるための記録ヘッドの構造も種々あり、印字品質の向上に伴いより高解像度の印字パターンが要求されるため、ほとんどは薄膜技術により形成される。
【0012】
(ヘッド構成材料)
記録ヘッドの構成材料としては、特性,寿命,信頼性,製造コスト等を考慮して様々な材料が使用される。
【0013】
基板
基板の材料としては、ガラス、セラミック等の絶縁材料、半導体、表面を高抵抗材料で被覆した金属、金属合金、絶縁物等が使用できる。ガラス基板としては、カリ石灰ガラス、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、クラウンガラス、亜鉛クラウンガラス、ソーダカリガラス、バリウム硼珪酸ガラス、96%珪酸ガラス、99.5%珪酸ガラス、燐酸ガラス、低融点ガラス、リチウム珪酸ガラス、亜鉛アルミ珪酸ガラス、珪酸ジルコニウムガラス等が使用できる。セラミック基板としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、MgO・SiO2(ステアタイト)2MgO・SiO2(ホルステライト)、BeO(ベリリア)、MgO・Al2O3(スピネル)等が使用できる。半導体基板としては、シリコン、炭化シリコン、ダイアモンド、ゲルマニウム等が使用できる。
【0014】
電極
電極材料としては、Ti族金属(Ti,Zr,Hf)、白金族金属(Pt,Ru,Rh,Pd,Os,Ir)、高融点金属(W,Ta,Mo)、その他V,Cr,Fe,Co,Ni,Nb,Au,Ag,Al等の単金属またはこれらの合金(Ni−Fe,NiCr,TiCr等)が使用できる。またこれらの酸化物(酸化チタン,酸化ハフニウム,酸化錫,酸化インジウム等)、窒化物(窒化チタン,窒化クロム等)、炭化物(炭化チタン,炭化タングステン等)、硼化物も使用できる。
【0015】
絶縁層
絶縁層としては、絶縁性の有機物(耐熱性のポリイミド樹脂,アクリル樹脂等のフォトレジスト等)または絶縁層の無機物が使用できる。
【0016】
流路・ノズル
流路、ノズル材料としては、ポリイミド、アクリルポリエチレンテレフタレートシート等のポリマー、ガラス、セラミック等の絶縁材料、半導体、または表面を高抵抗材料で被覆した金属、金属合金、絶縁物等が使用できる。
【0017】
(フォトリソグラフィ等の構成)
上記の材料を用いてヘッドを作成する方法の例を述べる。ガラス、あるいはシリコン等のセラミックスからなる非導電性の基板上にTi,Au,Pt等の導電性金属膜を蒸着法やスパッタ法などの物理成膜法あるいは鍍金法等により積層する。この金属膜を積層した基板をフォトリソグラフィ法により電極パターンを形成し、電極以外の部分をイオントミリングまたはケミカルエッチングにより除去する。
【0018】
インク室に露出していない電極と基板上に有機高分子あるいはセラミックス等の絶縁膜を塗布または蒸着法やスパッタ法により形成する。この絶縁膜と電極を積層した基板上にエキシマレーザ加工機により形成されたノズル孔を有する樹脂シートとノズル孔の中心が2つの電極の中心と一致するように接着剤で接着する。絶縁膜に使用する有機高分子材料としてはポリイミド、ポリアミドイミド、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、およびシリコン樹脂等が挙げられるが、ポリイミド等の耐熱性高分子が特に好ましい。また、ゾルゲル法に用いられる金属アルコキシドを使用しても良い。
【0019】
さらにおよびまたは、SiO2、Al2O3、TiO2等の金属酸化物を蒸着法やスパッタ法にて形成する。樹脂シートの材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフド、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性プラスチックが使用できるが、特に耐インク性、レーザ加工性を考慮すると、ポリイミド、ポリエーテルスルホンが好ましい。接着剤としてはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、トリアジン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できる。可撓性を付与するためにニトリルゴム、シリコンゴム、ナイロン、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を添加することもできる。さらに、SiO2,Al2O3,TiO2等の金属酸化物の微粉を充填材として添加しても良く、また接着性を向上するためにカップリング剤を適量添加してもよい。耐インク性、耐熱性を考慮するとエポキシ樹脂、およびまたはポリイミド樹脂が好ましい。接着剤は所定の膜厚を得る濃度に有機溶剤で希釈し、あらかじめ樹脂シードに塗布した後、加熱により溶剤を揮発させて接着剤層を形成する。
【0020】
エキシマレーザを接着剤面側から入射させ、樹脂シートにノズル孔を形成する。エキシマレーザ加工時に接着剤表面にポリイミド等の耐熱性プラスチックフィルムを保護シートとして貼り付けて加工すると、高温の加工くずが接着剤に直接接触しないので接着性が低下しない。ノズル孔を有する樹脂シートと基板の接着はラバー加圧法等により行う。接着温度は接着剤の硬化温度に応じて適宜行う。加圧力は接着剤が浮いたり、しみだすことがないように最適荷重で行う。
【0021】
(インク)
本発明で使用できる記録液は、水溶性、油溶性のどちらでも良いが臭気や安全性を考慮すると、水溶性の方が好ましい。インクについては、染料、湿潤材としてのアルコール類、グリコール類等の水可溶性有機溶媒、界面活性剤、あるいはこれらの混合物を添加することは、乾燥速度、沸騰状態の調節、電極寿命、ノズル目詰り等にとって好ましい。さらに防腐剤も使用される。具体的にはトリケップス社「インクジェット記録技術」p177に記載のもの、および太田徳也,日経エレクトロニクス,No.303,1982.11.8、太田徳也,電子写真学会誌、vol24、354(1985)、大渡章夫,「第4回ノンインパクトプリンティング技術シンポジウム論文集」電子写真学会,93(1987)、平沢伸一,「第4回ノンインパクトプリンティング技術シンポジウム論文集」電子写真学会,89(1987)、沢木健二,繊維と工業,vol.47,212,(1991)、特開昭63−1579号公報等に記載のある素材を使用することができる。
【0022】
次に、本発明に使用できる記録液の構成の具体例を述べる。例えばそれは、色材(染料;アゾ染料、酸性染料、塩基性染料、直接染料、顔料;カーボンブラック、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ベリレン顔料、ベリノン顔料、アトラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジコ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ、ニトロ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料、酸化チタン、酸化鉄等)、溶媒(水等)、溶剤(エチルアルコール、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類等)、乾燥防止剤(グリセリン、尿素、ソルビタン、ソルビトール、イノシトール、キレート剤等)、粘度調整剤(グリセリン等)、表面張力調整剤(ジエアノールアミン、トリエタノールアミン、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)、pH調整剤(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジエタノールアミン等)、分散剤(蛋白質類、天然ゴム類、セルロース誘導体、天然高分子、非イオン性高分子、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等)、発泡剤(イソプロピルアルコール、多価アルコール)、酸化防止剤(ビタミンC、亜硫酸ナトリウム、ハイドロキノン、ピラゾリドン、ヒドラジン等)、防腐剤(アルコール、ホルマリン、オマシンナトリウム等)を含んでなる。
【0023】
本発明には、導電性のインクを使用することが特に好ましい。導電性インクについては米国特許第4,536,776号明細書(対応特許:特開昭59−129274号公報)に「染料の水性混合物からなる選択的なインクジェット印刷機のためのインクにおいて、この混合物が、1cmあたり15〜50Ωの比抵抗をインクに与えるような量の加水分解塩からなることを特徴とするインク」が開示されている。特開平5−179182号公報(DIC)も「水と着色剤を含有するインクジェット記録用水性インク組成物において、アルカノールアミンまたはエチレンオキシド付加物およびまたはプロピレンオキシド付加物と、ハロゲン化水素からなる塩を含有することを特徴とするインク」が開示されている。また特公平2−5785号公報には無機塩類について具体的な記載がある。本発明にて用いられる導電性付与剤としてはリチウム(Li)等からなるアルカリ金属化合物塩、硫酸アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類、および有機塩類のどちらでも良いが、4級有機アンモニウム塩の誘導体が好ましく使用できる。化合物の具体的な例としては、モノエタノールアミン硫酸塩、ジエタノールアミン硫酸塩、トリエタノールアミン硫酸塩、モノエタノールアミン硝酸塩、ジエタノールアミン硝酸塩、トリエタノールアミン硝酸塩、モノエタノールアミンリン酸塩、ジエタノールアミンリン酸塩、トリエタノールアミンリン酸塩、ジメタノールアミン硫酸塩、トリメタノールアミン硫酸塩、ジエチルアミン硫酸塩、トリエチルアミン硫酸塩、ジメチルアミン硫酸塩、トリメチルアミン硫酸塩、モノプロピルアミン硫酸塩、ジプロピルアミン硫酸塩、トリプロピルアミン硫酸塩、フェニルアミン硫酸塩、ジフェニルアミン硫酸塩、ジメチレンアミン硫酸塩、トリメチレンアミン硫酸塩、ジエチレンアミン硫酸塩、トリエチレンアミン硫酸塩、ジプロピレンアミン硫酸塩、トリプロピレンアミン硫酸塩、ピリジン硫酸塩、ピロール硫酸塩等を挙げることができる。
【0024】
湿潤剤は、水より沸点の高いものであり、ノズル先端の乾燥を防止するために用いられる。湿潤剤としては、具体的には、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール、例えばエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル等のジエチレングリコールの低級アルキルエーテル,グリセリン等が挙げられる。多価アルコールは0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%含有される。多価アルコールが0.5重量%未満になるにつれ、インク乾燥によるノズル先端が目詰まり傾向となるのが認められ、多価アルコールが3.0重量%を越えるにつれ、インク比抵抗が上昇する傾向となるのが認められ、それぞれ好ましくないことが判った。
【0025】
溶剤は、水、および水と混合し得る有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルキルアルコール、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、水溶性高分子化合物等が挙げられる。溶剤として用いられている水は、30〜80重量%、好ましくは50〜70重量%含有される。水が50重量%未満になるにつれ、紙への浸透性が向上する傾向が認められ、水が70重量%を越えるにつれ、紙への浸透性が低下する傾向が認められ、それぞれ好ましくないことが判った。
【0026】
インクジェット用インクには、さらに、液物性を調整するため、表面張力調整剤、pH調整剤、粘度調整剤等を添加する場合がある。
【0027】
表面張力調整剤はインクジェット用インクの速乾性を上げるために添加すると同時にインクジェット用インクの蒸発も防止し、調整剤としては、水溶性有機溶媒、界面活性剤を用いるのが好ましい。水溶性有機溶媒は、上記溶剤の中より選択されも良い。また、界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類、アルキルピリジウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類,ソルビタンアルキルエステル類,ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類を挙げることができる。
【0028】
pH調整剤としては、調合されるインクジェット用インクに悪影響を及ぼさずに、所望のpH値に調整できるものであれば良いが、具体的には、低級アルカノールアミン,アルカリ金属水酸化物の1価の水酸化物,水酸化アンモニウム等が挙げられる。
【0029】
粘度調整剤は、インクジェット用インクの粘度を調整するものであり、具体的には、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ等が挙げられる。
【0030】
さらに、印刷用紙に付着する場合のインクの被膜の強度を補強するために、アルキッド樹脂,アクリル樹脂,アクリルアミド樹脂,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン等の樹脂重合体が添加されても良い。また、カビ防止剤を添加するのが長期保存時の信頼性確保の点で有利である。
【0031】
(インク物性)
本発明において用いられるインクジェット用インクの比抵抗は25℃において、8〜50Ω・cm、好ましくは15〜25Ω・cmである。比抵抗が8Ω・cm未満では、この数値より小さくなるにつれてインクジェット用インクの導電性付与剤の含有量が多くなるので、染料の溶解安定性が低下し、ノズルの目詰り性が悪化する傾向が認められ、また比抵抗が50Ω・cm以上では、この数値を越えるにつれて導電性化合物の含有量が少なくなるので、電極に印加する電圧の交流周波数を低くすると、基板上の化学反応を防止することができなくなり、電極が溶解されたり吐出安定性が悪化する傾向が認められ、それぞれ好ましくないことが判った。粘度は10cp以下、好ましくは5cp以下である。粘度が5cpを越えるにつれてインク滴のノズル孔からの吐出に不都合が生じる傾向にあるのが認められ、好ましくないことがわかった。表面張力は28〜55dyne/cm、好ましくは30〜45dyne/cmである。表面張力が30dyne/cm未満になるにつれて印字の細線にじみが悪化し、印字濃度が低下する傾向があることが認められ、表面張力が、45dyne/cmを越えるにつれて色重ね印字の色にじみ性が低下する傾向にあることが認められ、それぞれ好ましくないことが判った。pHは6〜10、好ましくは7〜9である。pHが6未満になるにつれて染料の溶解安定性が低下する傾向にあるのが認められ、pHが10を越えるにつれて染料の退色が発生する傾向にあるのが認められ、それぞれ好ましくないことがわかった。
【0032】
(目詰り防止機構)
インクジェット記録装置におけるインクは、一般的に揮発性が高い水やアルコールを成分として構成されているため、記録ヘッドの吐出口(ノズル)内にインクが溜ったまま該吐出口が大気に曝されると、該吐出口から水分等が蒸発してインクが乾燥し、インクの固着が発生して吐出不能になることがある。また、吐出可能な場合でも、上記水分等の蒸発により増粘したインクが吐出口付近に付着することにより、インクの吐出方向が乱され、印字品質が劣化することがある。
【0033】
その対策として、非印字時にホームポジション等のある固定された位置に記録ヘッドを移動させ、ゴム等の弾性部材により吐出口を大気と遮断するキャッピング手段や、インク吐出素子を駆動させて所定のインク受容体に記録に直接関わらないインクの吐出を行わせる予備吐出、インク吐出口面と接触するゴム等の弾性部材を設け、両者を相対移動させてインク吐出口近傍に付着したインク、塵等の異物を拭きとるワイピング手段、インク供給系を加圧したり、あるいはインク吐出口から吸引するなどの方法でインクに所定の圧力を作用させてインクを強制的に排出するパージ手段を設けることが望ましい。
【0034】
(カートリッジ)
本発明に使用されるインクカートリッジは、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに供給するインクを貯留するインクタンクが一体に構成された一体型でも、前記記録ヘッドと前記インクタンクが着脱自在に構成された分離型でも良い。インクタンクから記録ヘッドまでのインク流路間には、吐出に悪影響を与えるインク内の異物や気泡をトラップするためにフィルターを設けることが望ましい。
【0035】
フィルターとしては、10ミクロン程度のろ過粒度を有するようにステンレス等の金属を立体的に編んだものが高信頼性を確保する上で有利である。
【0036】
印字品質を向上させるための条件として、インク吐出口に静的な負圧をかけておくことの重要性がかねてから知られている。負圧をかけることによってインク吐出口部分の液面が負メニスカスとなり、インクを内部に引き込むので、着弾精度を向上させるとともに、余分液滴(エキストラドット)の減少等を防ぐことが可能となる。インク吐出口の負圧を発生させるために、インクタンク内にポリウレタンフォームで構成されたスポンジを充填させたり、インクタンク内外にバネ部材を設ける等の負圧発生手段を配設することが望ましい。
【0037】
(装置)
本発明で使用される記録装置としては、1個または複数の記録ヘッドをキャリッジに搭載し、被記録材の前面を主走査方向に往復移動しながら記録ヘッドよりインクを吐出し、被記録材は副走査方向に所定の量だけ送られることで記録を行う所謂シリアル型記録装置、あるいは、記録ヘッドが被記録材の主走査方向全幅にわたって設けられ、被記録材が副走査方向に所定の量だけ送られることで記録を行う所謂ライン型記録装置のどちらでも良い。
【0038】
また、1個または複数の記録ヘッドをキャリッジに搭載し、被記録材の前面を主走査方向、および副走査方向に移動しながら記録ヘッドよりインクを吐出し、記録する所謂プロッタ型記録装置であっても良い。
【0039】
【作用】
本発明では、同一液路内に複数の圧力発生手段を設け、電圧を印加する圧力発生手段の数、または種類を選択することにより、ノズルから吐出するインクの体積の制御が可能となる。その結果、記録紙に記録されるドットの大きさの制御が可能となり、多階調印字が可能となる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例におけるインクジェット記録装置の構成図である。図1において、1は記録ヘッド、2は導電性のインク、3,4,5,6は電極、7はインクタンク、8はインク2の噴射口であるノズル孔であり、記録ヘッド1は、互いに対向した電極3と電極4および電極5と電極6と、これらの対向する電極間を通ってインク2のインク滴i1,i2を噴射させるノズル孔8を備えている。
【0041】
また、9はコントロールブロック、10は交流パルス発生回路、11は吐出制御回路、12,13,14,15はNOT回路、16,17,18,19,20,21,22,23はAND回路、24,25,26,27は電流ソース型ドライバ、28,29,30,31は電流シンク型ドライバである。
【0042】
次に、図1,図2を参照しながら制御について説明する。
【0043】
今、コンロトールブロック9に印字が指令されたとき、交流パルス発生回路10より信号a1〜a4が出力され、また吐出制御回路11より信号b1〜b4が出力される。ここで、交流パルス発生回路10の出力a1〜a4は数百kHz〜数MHz、デューティが50%以下の高周波で同位相または位相180°で出力される。これらの信号a1〜a4は電流ソース型ドライバ24〜27と電流シンク型ドライバ28〜31をスイッチングする基本パルスである。また吐出制御回路11の出力b1〜b4は電流ソース型ドライバ24〜27と電流シンク型ドライバ28〜31のイネーブル信号であり、対応する信号a1〜a4が出力されるときに同時に出力される。
【0044】
信号b1〜b4がハイレベルおよび信号a1〜a4がハイレベルのときは、NOT回路12〜15およびAND回路16〜23によって、それぞれ対応する電流ソース型ドライバ24〜27がオンとなり、信号b1〜b4がハイレベルおよび信号a1〜a4がローレベルのときは、NOT回路12〜15およびAND回路16〜23によって、それぞれ対応する電流シンク型ドライバ28〜31がオンとなる。その他のときは、電流ソース型ドライバ24〜27と電流シンク型ドライバ28〜31はオフとなり、出力c1〜c4はハイインピーダンス状態となる。
【0045】
以下、図2のタイミングチャートにしたがってノズル孔8からインク滴を噴射する動作について説明する。
【0046】
まず、図2に示すように、期間t1の間に信号a1,a2および信号b1,b2が出力されると、ドライバ24,28およびドライバ25,29の出力c1,c2が出力される。このとき、信号a1と信号a2は位相が180°であるので、出力c1と出力c2の位相も180°である。
【0047】
インク2の充満した記録ヘッド内において、電極3および電極4にドライバ24,28およびドライバ25,29より電圧(本実施例では10〜30V)が印加されると、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、信号電極3,4間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインク2が自己発熱して、5〜30μs後にはついに沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極3と電極4は電極間距離d1,対向幅l1で対向しており、発生する沸騰気泡Aの体積はV1である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド1内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D1のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、例えば、体積D1は60pl、ドット径は120μmである。
【0048】
ところで、記録紙に付着するドット径を40〜150μmとして、階調印字を行うには5〜120plのインク滴が8〜16m/sで噴射される必要がある。そのためノズル孔8の口径は20〜60μm、ノズル孔8の長さは30〜60μm、ノズル孔8のテーパーは0〜30°、発生するバブルの体積は20〜500plが適当である。
【0049】
ノズル孔8からのインク2の噴射によって消費されたインク2は、つぎの沸騰を開始する前にインクタンク7からインクが毛細管現象により補給される。
【0050】
このようにインクを吐出させるときの出力c1,c2の論理を一定期間t1において交互に繰り返し、電極3と電極4に交流電流を流すことにより、導電性インク2を沸騰させ、その圧力変化によってノズルよりインクを吐出させる。なお、交流電流を流すことの最大のメリットは電極の電気分解を防ぎ、電極の寿命を維持できることである。
【0051】
同様にして、期間t2の間に信号a3,a4および信号b3,b4が出力されると、ドライバ26,30およびドライバ27,31の出力c3,c4が出力される。このとき、信号a3と信号a4は位相差が180°であるので、出力c3と出力c4の位相差も180°である。
【0052】
インク2の充満した記録ヘッド1内において、電極5および電極6に、ドライバ26,30およびドライバ27,31より電圧(本実施例では10〜30V)が印加されると、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、電極5,6間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインク2が自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極5と電極6とは距離d2(<d1)、幅l2(>l1)で対向しており、発生する沸騰気泡Bの体積はV2である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D2のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、例えば、体積D2は30pl、ドット径は90μmである。
【0053】
図3は沸騰気泡とインクに印加される電力の関係を示すグラフである。図3において、横軸は加熱時間、縦軸は印加電力および沸騰気泡体積である。インクに0.4Wの電力を与えると沸騰開始までの加熱時間は7μsとなり、E1=2.8μJ(=0.4×7)のエネルギーが与えられる。そのときの気泡はB1のように成長し最大気泡体積は200plとなる。同様にインクに0.23Wの電力を与えると沸騰開始までの加熱時間は22μsとなり、E2=5.6μJ(=0.23×22)のエネルギーが与えられる。そのときの気泡はB2のように成長し最大気泡体積は400plとなる。このように印加電力により沸騰開始までの時間が決まり、それによりインクの加熱される体積が変化し、加熱される体積が大きいほど最大成長気泡体積が大きくなる。つまりゆっくり加熱すればより大きな気泡を形成することができる。沸騰が始まれば気泡により電極間の電流が遮断されるので電圧を直後に切るように制御しても最大成長気泡体積に影響はない。
【0054】
ところで、電極3,4および電極5,6はd2<d1、l2>l1であり、電極間に印加される電圧およびインク2の抵抗率が同じであるので、電極3,4間を流れる電流i1と電極5,6間を流れる電流i2との関係は、i2>i1である。よって、電極5,6間のインクの方が電極3,4間のインクより急速に加熱され、V2<V1となり、吐出インク体積もD2<D1となる。
【0055】
さらに、期間t1の間に信号a1,a2、信号b1,b2が出力され、同時に期間t2の間に信号a3,a4、信号b3,b4が出力されると、ドライバ24〜31の出力c1〜c4が出力される。このとき、信号a1,a2の位相差が180°であり、信号a3,a4は位相差が180°であるので、出力c1,c2の位相差および出力c3,c4の位相差は180°である。すると、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極3,電極4および電極5,6に、電圧(本実施例では10〜30V)が印加されるので、インク2が自己発熱して、沸騰が始まり、電極3,4間に沸騰気泡体積V1の沸騰気泡Aが発生し、電極5,6間に沸騰気泡体積V2の沸騰気泡Bが発生する。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド1内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積(D1+D2)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。ここで、体積D1は60pl、体積D2は30plであるので、(D1+D2)は90plとなり、このときのドット径は例えば140μmである。
【0056】
ここで、信号a3,a4および信号b3,b4は、信号a1,a2および信号b1,b2より、信号の出力開始時間を遅延させており、それによって、沸騰気泡Aと沸騰気泡Bの最大沸騰気泡体積の到達時間を同じにしており、それぞれの沸騰気泡の成長圧力を有効に吐出に使うことができる。
【0057】
このように、第1実施例では、例えば、30pl,60pl,90plの3種類の異なる体積のインク滴を吐出し、記録紙に付着するドット径は90μm,120μm,140μmとなり、階調印字を行うことが可能である。さらに電極対を増やすことによって、吐出するインク滴の体積の種類を増やすことが可能である。
【0058】
図4は第2実施例のインクジェット記録装置の構成図である。図4において、102は記録ヘッド、32,33,34は電極であり、これら電極32,33,34はお互いに電極間距離d3,対向幅l3で対向している。なお、図1に示した第1実施例における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。
【0059】
今、コントロールブロック9に印字が指令されたとき、図5に示すように交流パルス発生回路10より信号e1〜e3、および、吐出制御回路11より信号f1〜f3が出力される。
【0060】
ここで、交流パルス発生回路10の出力e1〜e3は数百kHz〜数MHz、デューティが50%以下の高周波で同位相または位相差180°で出力される。これらの信号e1〜e3は電流ソース型ドライバ24〜26と電流シンク型ドライバ28〜30をスイッチングする基本パルスである。吐出制御回路11の出力f1〜f3は電流ソース型ドライバ24〜36と電流シンク型ドライバ28〜30のイネーブル信号であり、対応する信号e1〜e3が出力されるときに同時に出力される。
【0061】
信号f1〜f3がハイレベル、信号e1〜e3ハイレベルのときは、NOT回路12〜14およびAND回路16〜21によって、それぞれ対応する電流ソース型ドライバ24〜26がオンとなり、信号f1〜f3がハイレベル、信号e1〜e3ローレベルのときは、NOT回路12〜14およびAND回路16〜21によって、それぞれ対応する電流シンク型ドライバ28〜30がオンとなる。その他のときは、電流ソース型ドライバと電流シンク型ドライバはオフとなり、出力g1〜g3はハイインピーダンス状態となる。
【0062】
図5のタイミングチャートにしたがってノズル孔8からインク滴を噴射する動作について説明する。
【0063】
まず、図5に示すように、期間t3の間に位相差180°の信号e1,e2および同相の信号f1,f2がそれぞれ出力されると、位相差180°の出力g1,g2が出力される。すると、インク2の充満した記録ヘッド102内において、電極32と電極33にドライバ24,28およびドライバ25,29より電圧(第2実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(第2実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して信号電極32,33間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極32,33は距離d3,幅l3で対向しており、発生する沸騰気泡Cの体積はV3である。そして、発生した気泡が膨張することによって記録ヘッド102内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D3のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、例えば、体積D3は60pl、ドット径は120μmである。
【0064】
次に、期間t3の間に位相差180°の信号e3,e2および同相の信号f3,f2が出力されると、位相差180°の出力g3,g2が出力される。すると、インク2の充満した記録ヘッド102内において、電極34,33に、ドライバ26,30およびドライバ25,29より電圧(第2実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(第2実施例では
20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して電極34,33間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流ジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極34と電極33は距離d3,幅l3で対向しており、発生する沸騰気泡Dの体積はV3である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D3のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドット形成する。このとき、例えば、体積D3は60pl、ドット径は120μmである。
【0065】
さらに次に、期間t3の間に、信号e1〜e3が位相180°で出力され、信号f1〜f3が出力されると、ドライバ24〜30の出力g1〜g3の出力により、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極32,33間および電極33,34間にドライバ24〜30より電圧(本実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、電極32,33間および電極33,34間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極32と電極33および電極33と電極34はそれぞれ距離d3,幅l3で対向しており、電極32,33間で発生する沸騰気泡Cと、電極33,34間で発生する沸騰気泡Dの体積はともにV3である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド102内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積(D3+D3)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、体積D3は60pl、ドット径は120μmであるので、(D3+D3)は120plとなり、このときのドット径は例えば150μmである。
【0066】
このように第2実施例では、例えば、60pl、120plの2種類の異なる体積のインク滴を吐出し、記録紙に付着するドット径は120μm、150μmとなり、階調印字を行うことが可能である。さらに対向する電極を増やすことによって、吐出するインク滴の体積の種類を増やすことが可能である。
【0067】
図6は第3実施例のインクジェット記録装置の構成図である。図6において、103は記録ヘッド、35,36,37は電極であり、電極35と電極36は距離d4,幅l4で、電極36と電極37は距離d5,幅l4で、電極35と電極37は距離d6,幅l4でそれぞれ対向している。なお、図1に示した第1実施例における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。
【0068】
今、コントロールブロック9に印字が指令されたとき、交流パルス発生回路10より信号h1〜h3、および、吐出制御回路11より信号j1〜j3が出力される。
【0069】
ここで、交流パルス発生回路10の出力h1〜h3は数百kHz〜数MHz、デューティが50%以下の高周波で同位相または位相180°で出力される。これらの信号h1〜
h3は電流ソース型ドライバ24〜26と電流シンク型ドライバ28〜30をスイッチングする基本パルスである。吐出制御回路11の出力j1〜j3は電流ソース型ドライバ24〜26と電流シンク型ドライバ28〜30のイネーブル信号であり、対応する信号h1〜h3が出力されるときに同時に出力される。
【0070】
信号j1〜j3がハイレベル、h1〜h3ハイレベルのときは、NOT回路12〜14およびAND回路16〜21によって、それぞれ対応する電流ソース型ドライバ24〜26がオンとなり、信号j1〜j3がハイレベル、信号h1〜h3がローレベルのときは、NOT回路12〜14およびAND回路16〜21によって、それぞれ対応する電流シンク型ドライバ28〜30がオンとなる。その他のときは、電流ソース型ドライバ24〜26と電流シンク型ドライバ28〜30はオフとなり、出力k1〜k3はハイインピーダンス状態となる。
【0071】
図7のタイミングチャートにしたがってノズル孔8からインク滴を噴射する動作について説明する。
【0072】
まず、図7に示すように、期間t4の間に位相差180°の信号h1,h2、信号j1,j2がそれぞれ出力されると、位相差180°の出力k1,k2が出力される。すると、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極35と電極36に、ドライバ24,28およびドライバ25,29より電圧(第3実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(第3実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して信号電極35,36間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れI2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表させる電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極35と電極36は距離d4,幅l4で対向しており、発生する沸騰気泡Eの体積はV4である。そして、発生した気泡が膨張することによって記録ヘッド103内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D4のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、例えば、体積D4は20pl、ドット径は80μmである。
【0073】
次に期間t5の間に位相180°の信号h3,h2および信号j3,j2が出力されると、位相180°の出力k3,k2が出力される。すると、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極37と電極36に、ドライバより電圧(第3実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(第3実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して電極37,36間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流ジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極37と電極36は距離d5,幅l4で対向しており、発生する沸騰気泡Fの体積はV5である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド103内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D5のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドット形成する。このとき、例えば、体積D5は40pl、ドット径は100μmである。
【0074】
さらに、期間t6の間に信号h1,h3および信号j1,j3が出力されると、位相差
180°の出力k1,k3が出力される。すると、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極35と電極37に、ドライバ24,28およびドライバ26,30より電圧(第3実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(第3実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、電極35,37間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極35と電極37は距離d6,幅l4で対向しており、発生する沸騰気泡Gの体積はV6である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド103内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積D6のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、体積D6は80pl、ドット径は130μmである。
【0075】
さらに、図8のタイミングチャートを説明する。
【0076】
まず、期間t5の間に位相差180°の信号h2,h3および同相の信号j2,j3がそれぞれ出力され、続いて期間t4の間に信号h2に対して位相差180°の信号h1と信号j1が出力されると、ドライバの出力k1〜k3の出力により、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極35,36間および電極36,37間に、ドライバ24〜30より電圧(第3実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(第3実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して信号電極35,36間と電極36,37間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れI2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極35と電極36は距離d4,幅l4で、電極36と電極37は距離d5,幅l4で対向しており、電極35,36間で発生する沸騰気泡Eの体積はV4であり、電極36,37間で発生する。沸騰気泡Fの体積はV5である。そして、発生した気泡が膨張することによって記録ヘッド103内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積(D4+D5)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、体積D4は20pl、体積D5は40plであるので、(D4+D5)は60plとなり、このときのドット径は例えば120μmである。
【0077】
ここで、信号h1,j1は、信号h2,h3および信号j2,j3よりも信号の出力開始時間を遅延させており、それによって、沸騰気泡Eと沸騰気泡Fの最大沸騰気泡体積の到達時間を同じにしており、それぞれの沸騰気泡の成長圧力を有効に吐出に使うことができる。
【0078】
次に期間t6の間に位相差180°の信号h1,h3および信号j1,j3が出力され続いて、期間t4の間に信号h1に対して位相差180°の信号h2および信号j2が出力されると、ドライバの出力k1〜出力k3の出力により、インク2の充満した記録ヘッド103内において、電極35,36間および電極35,37間に、ドライバ24〜30より電圧(本実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して電極35,36間および電極35,37間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流ジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインク2が自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極35と電極36は距離d4,幅l4で、電極35と電極37は距離d6、幅l4で対向しており、電極35,36間で発生する沸騰気泡Eの体積はV4で、電極35,37間で発生する沸騰気泡Gの体積はV6である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド103内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によって、インク2はノズル孔8から体積(D4+D6)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドット形成する。このとき、例えば、体積D4は20pl、体積D6は80plであるので、(D4+D6)のドット径は例えば140μmである。
【0079】
ここで、信号h2および信号j2は、信号h1,h3および信号j1,j3よりも信号の出力開始時間を遅延させており、それによって、沸騰気泡EとGの最大沸騰気泡体積の到達時間を同じにしており、それぞれの沸騰気泡の成長圧力を有効に吐出に使うことができる。
【0080】
さらに、期間t6の間に位相差180°の信号h1,h3、同相の信号j1,j3がそれぞれ出力され続いて、期間t6の間に信号h3に対して位相差180°の信号h2と信号j2がそれぞれ出力されると、ドライバ24〜30の出力k1〜出力k3の出力により、インク2の充満した記録ヘッド103内において、電極36,37間および電極37,35間に、ドライバ24〜30より電圧(第3実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、電極36,37間および電極37,35間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極36と電極37は距離d5,幅l4で、電極37と電極35は距離d6,幅l4で対向しており、電極36,37間で発生する沸騰気泡Fの体積はV5で、電極37,35間で発生する沸騰気泡Gの体積はV6である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド103内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔8から体積(D5+D6)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、体積D5は40pl、D5は40plであるので、(D5+D6)は120plとなり、このときのドット径は例えば150μmである。
【0081】
ここで、信号h2と信号j2は、信号h1,h3および信号j1,j3よりも信号の出力開始時間を遅延させており、それによって、沸騰気泡Eと沸騰気泡Gの最大沸騰気泡体積の到達時間を同じにしており、それぞれの沸騰気泡の成長圧力を有効に吐出に使うことができる。
【0082】
このように第3実施例では、例えば、20pl、40pl、60pl、80pl、100pl、120plの6種類の異なる体積のインク滴を吐出し、記録紙に付着するドット径は80μm、100μm、120μm、130μm、140μm、150μmとなり、階調印字を行うことが可能である。さらに対向する電極を増やすことによって、吐出するインク滴の体積の種類を増やすことが可能である。
【0083】
図9は第4実施例のインクジェット記録装置の構成図である。図9において、104は記録ヘッドであり、73〜79は電極、80〜82はインク2の噴射口であるノズル孔である。また、38〜44はNOT回路、45〜58はAND回路、59,61,63,65,67,69,71は電流ソース型ドライバ、60,62,64,66,68,70,72は電流シンク型ドライバである。ここで、電極73,74,77と電極74,75,78と電極75,76,79とは、電極間距離d7、対向幅l7でそれぞれ対向している。なお、図1に示した第1実施例における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。
【0084】
今、コントロールブロック9に印字が指令されたとき、交流パルス発生回路10より信号m1〜m7、および、吐出制御回路より信号n1〜n7が出力される。
【0085】
ここで、交流パルス発生回路10の出力m1〜m7は数百kHz〜数MHz,デューティが50%以下の高周波で同位相または位相差180°で出力される。これらの信号m1〜m7は電流ソース型ドライバ59,61,63,65,67,69,71と電流シンク型ドライバ60,62,64,66,68,70,72をスイッチングする基本パルスである。吐出制御回路11の出力n1〜n7は電流ソース型ドライバ59,61,63,65,67,69,71と電流シンク型ドライバ60,62,64,66,68,70,72のイネーブル信号であり、対応する信号m1〜m7が出力されるときに同時に出力される。
【0086】
信号n1〜n7がハイレベルでかつ対応する信号m1〜m7がハイレベルのときは、NOT回路38〜44およびAND回路45〜58によって、それぞれ対応する電流ソース型ドライバ59,61,63,65,67,69,71がオンとなり、信号n1〜n7がハイレベル、m1〜m7がローレベルのときは、NOT回路38〜44およびAND回路45〜58によって、それぞれ対応する電流シンク型ドライバ60,62,64,66,68,70,72がオンとなる。その他のときは、電流ソース型ドライバと電流シンク型ドライバはオフとなり、出力o1〜o7はハイインピーダンス状態となる。
【0087】
図10のタイミングチャートにしたがってノズル孔80〜82からインク滴を噴射する動作について説明する。
【0088】
まず、図10に示すように、信号m1,m3と信号m5,m7が位相差180°でそれぞれ出力され、信号n1,n3と信号n5,n7が同相でそれぞれ出力されると、ドライバ59,60、ドライバ63,64、ドライバ67,68、ドライバ71,72の出力o1,o3,o5,o7により、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極73,77間および電極75,79との間に、ドライバ59,60,63,64,67,68,71,72より電圧(本実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して電極73,77間および電極75,79間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れI2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極73,77は距離d7,幅l7で、電極75,79は距離d7,幅l7で対向しており、電極73,77で発生する沸騰気泡Hの体積はV7であり、電極75,79で発生する沸騰気泡Lの体積はV7である。そして、発生した気泡が膨張することによって記録ヘッド104内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔80とノズル孔82とからそれぞれ体積D7のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、例えば、体積D7は60pl、ドット径は120μmである。
【0089】
次に信号m2,m6が位相差180°で出力され、信号n2,n6が同相で出力されると、ドライバ61,62、ドライバ69,70の出力o2,o6により、インク2の充満した記録ヘッド104内において、電極74,78間に、ドライバ61,62,69,70より電圧(本実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して電極74,78間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流ジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインクが自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極74,78は距離d7,l7で対向しており、電極74,78間で発生する沸騰気泡Jの体積はV7である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド104内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔81から体積D7のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドット形成する。このとき、例えば、体積D7は60pl、ドット径は120μmである。
【0090】
次に、信号m1〜m4と信号m5,m7とが位相差180°の出力され、信号n1〜n5,n7が同相でそれぞれ出力されると、ドライバ59〜68、ドライバ71,72の出力o1〜o5,o7の出力により、インク2の充満した記録ヘッド104内において、電極73,77間、電極74,77間、電極75,79間および電極76,79間に、ドライバ59〜68、ドライバ71,72より電圧(本実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、電極73,77間と電極74,77間と電極75,79間と電極76,79間にそれぞれ電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインク2が自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極73,77、電極74,77、電極75,79、電極76,79は距離d7,幅l7で対向しており、電極73,77間で発生する沸騰気泡Hの体積はV7で、さらに電極74,77間で発生する沸騰気泡Iの体積はV7で、電極75,79間で発生する沸騰気泡Lの体積はV7で、電極76,79間で発生する沸騰気泡Mの体積はV7である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド104内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔80とノズル孔82からそれぞれ体積(D7+D7)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、体積D7は60plであるので、(D7+D7)は120plとなり、このときのドット径は例えば150μmである。
【0091】
さらに、信号m2,m3と信号m6が位相差180°でそれぞれ出力され、信号n2,n3,n6が出力されると、ドライバの出力o2,o3,o6の出力により、インク2の充満した記録ヘッド内において、電極74,78間および電極75,78と間に、ドライバ61〜64,69,70より電圧(本実施例では10〜30V)が印加され、ある抵抗率(本実施例では20〜50Ω・cm)を有するインク2を介して、電極74,78間と電極75,78間に電気力線が発生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R(I:電流値、R:インク2の抵抗値)で表される電流のジュール損失によって、電気力線の電流集中部におけるインク2が自己発熱して5〜30μs後についには沸騰が始まり、バブルが発生する。ここで、電極74と電極78および電極75と電極78は距離d7,幅l7で対向しており、電極74,78間で発生する沸騰気泡Jの体積はV7で、電極75,78間で発生する沸騰気泡Kの体積はV7である。そして、発生した気泡が膨張することによって、記録ヘッド104内のインク2の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようとする力によってインク2はノズル孔81から体積(D7+D7)のインク滴となって噴射され、不図示の記録紙に付着してドットを形成する。このとき、体積D7は60plであるので、(D7+D7)は120plとなり、このときのドット径は例えば150μmである。
【0092】
このように第4実施例では、対向している電極を他のノズルと共有することにより、電極の数、およびドライバの数を減らすことが可能である。さらに対向する電極を増やすことによって、吐出するインク滴の体積の種類を増やすことが可能である。
なお、上述した実施例は、圧力発生手段として導電性インクを加熱、沸騰させるための電極を適用したものであるが、これに限らず、前述の記録原理において説明したように、圧力発生手段として複数の圧電素子や複数の電気熱変換手段を適用しても良い。
【0093】
【発明の効果】
液体の吐出するノズルと、ノズルに連通する液路と、前記液路内に配置された複数の圧力発生手段からなる複数の吐出部と前記圧力発生手段に電圧を供給する供給手段と、前記供給手段の制御を行う制御手段を持ち、前記圧力発生手段に電圧を供給して、液路内に圧力を発生させ、かつ、同一液路内の複数の圧力発生手段に電圧を供給する組み合わせにより、液路内に発生する圧力を制御して、任意の量のインク滴の量を吐出させて多階調印字を行うことが可能である。
【0094】
また、本発明によれば、より多階調で印字を行うことが可能であり、さらには、少ない駆動回路より階調で印字を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例におけるインクジェット記録装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施例におけるタイミングチャートである。
【図3】沸騰気泡とインクに印加される電力の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施例におけるインクジェット記録装置の構成図である。
【図5】本発明の第2実施例におけるタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3実施例におけるインクジェット記録装置の構成図である。
【図7】本発明の第3実施例におけるタイミングチャートである。
【図8】本発明の第3実施例におけるタイミングチャートである。
【図9】本発明の第4実施例におけるインクジェット記録装置の構成図である。
【図10】本発明の第4実施例におけるタイミングチャートである。
【図11】従来例のインクジェット記録装置の断面図である。
【符号の説明】
1,102,103,104…記録ヘッド、 2,83…導電性インク、 3,4,5,6,32,33,34,35,36,37,73,74,75,76,77,78,79,86,87…電極、 7,85…インクタンク、 8,80,81,82,90…ノズル孔、 9…コントロールブロック、 10…交流パルス発生回路、 11…吐出制御回路、 12,13,14,15,38,39,40,41,42,43,44…NOT回路、 16,17,18,19,20,21,22,23,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58…AND回路、 24,25,26,27,59,61,63,65,67,69,71…電流ソース型ドライバ、 28,29,30,31,60,62,64,66,68,70,72…電流シンク型ドライバ、 84…インク室、 88…スイッチ、 91…記録紙、 92…インク滴。
Claims (10)
- インクを吐出するノズルと、このノズルに連通する液路と、この液路内の同一面上に配置され、かつインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させる複数の圧力発生手段からなる複数の吐出部と、前記圧力発生手段に電圧を供給する供給手段と、この供給手段の制御を行い、前記圧力発生手段に電圧を供給して液路内に圧力を発生させることで前記吐出部から前記ノズルにインクを送りこむ際に、同一液路に関し前記の電圧を供給する対象となる前記圧力発生手段の組み合わせにより液路内に発生する圧力を制御する制御手段とを有し、前記ノズルから任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うインクジェット記録装置であって、前記ノズルを前記面上に対して射影したとき、射影された前記ノズルが前記複数の圧力発生手段に囲まれるように前記ノズルを配置したことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 前記圧力発生手段が複数の電気熱変換手段からなり、これらの電気熱変換手段に電圧を供給してインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させ、かつ同一液路内に関し前記の電圧を供給する対象となる前記電気熱変換手段の組み合わせにより、液路内に発生する圧力、および沸騰気泡体積を制御して、前記ノズルから任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 前記圧力発生手段が複数の電極対からなり、これらの電極対に電圧を供給して、インクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させ、かつ同一液路内に関し前記の電圧を供給する対象となる前記電極対の組み合わせにより、液路内に発生する圧力、および沸騰気泡体積を制御して、任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 前記圧力発生手段が複数の電極対からなり、これらの電極対の中の少なくとも1個の電極を複数の電極に対応させた共有電極とし、前記電極対に電圧を供給してインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させ、かつ同一液路内に関し前記の電圧を供給する対象となる前記電極対の組み合わせにより、液路内に発生する圧力、および沸騰気泡体積を制御して、前記ノズルから任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 前記吐出部において、少なくとも1個の圧力発生手段が他の圧力発生手段と異なる圧力、および沸騰気泡体積を発生することを特徴とする請求項2,3または4記載のインクジェット記録装置。
- インクを吐出するノズルと、導電性インクで満たされ、かつ前記ノズルに連通する液路と、この液路内の同一面上において少なくとも1個は複数の電極と対向して配置して設けられた3個以上の電極からなる複数の吐出部と、前記複数の電極に電圧を供給する供給手段と、この供給手段の制御を行い、前記電極に電圧を供給してインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させることで前記吐出部から前記ノズルにインクを送りこむ際に、同一液路内に関し前記の電圧を供給する対象となる前記電極の組み合わせにより、液路内に発生する圧力、および沸騰気泡体積を制御する制御手段とを有し、前記ノズルから任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うインクジェット記録装置であって、前記ノズルを前記面上に対して射影したとき、射影された前記ノズルが前記複数の電極に囲まれるように前記ノズルを配置したことを特徴とするインクジェット記録装置。
- インクを吐出するノズルと、導電性インクで満たされ、かつ前記ノズルに連通する液路と、この液路内の同一面上において少なくとも1個は複数の電極と対向し、かつ互いに対向する電極対の少なくとも一対は他の電極対とは異なる電極の幅、または電極間距離で配置して設けられた3個以上の電極からなる複数の吐出部と、前記複数の電極に電圧を供給する供給手段と、この供給手段の制御を行い、前記電極に電圧を供給してインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させることで前記吐出部から前記ノズルにインクを送りこむ際に、同一液路内に関し前記の電圧を供給する対象となる前記電極の組み合わせにより、液路内に発生する圧力および沸騰気泡体積を制御する制御手段とを有し、前記ノズルから任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うインクジェット記録装 置であって、前記ノズルを前記面上に対して射影したとき、射影された前記ノズルが前記複数の電極に囲まれるように前記ノズルを配置したことを特徴とするインクジェット記録装置。
- インクを吐出するノズルと、導電性インクで満たされ、かつ前記ノズルに連通する液路と、少なくとも1個は他の液路と共有し、かつ液路内の同一面上において少なくとも1個は複数の電極と対向して配置して設けられた3個以上の電極からなる複数の吐出部と、前記複数の電極に電圧を供給する供給手段と、前記供給手段の制御を行い、前記電極に電圧を供給してインクを加熱、沸騰させて、液路内に圧力を発生させることで前記吐出部から前記ノズルにインクを送りこむ際に、同一液路内に関し前記の電圧を供給する対象となる前記電極の組み合わせにより、液路内に発生する圧力および沸騰気泡体積を制御する制御手段とを有し、前記ノズルから任意の量のインク滴を吐出させて印字を行うインクジェット記録装置であって、前記ノズルを前記面上に対して射影したとき、射影された前記ノズルが前記複数の電極に囲まれるように前記ノズルを配置したことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 対向する電極対の少なくとも一対は異なる電極の幅、または電極間距離になるように前記電極を配置したことを特徴とする請求項8記載のインクジェット記録装置。
- 前記吐出部において、異なる圧力を発生する圧力発生手段に電圧の供給を開始する時間を遅延させ、それぞれの圧力発生手段が発生する圧力、または沸騰気泡体積の最高点が同じになるように制御することを特徴とする請求項5,6,7または8記載のインクジェット記録装置。
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