JP3543980B2 - ガラス状カーボン材の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、均質緻密な組織構造を備えるガラス状カーボン材の製造方法、とくに厚さが6mmを越える厚肉形状を有する高品位のガラス状カーボン材を製品歩留よく製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス状カーボン材はガラス質の緻密な組成構造を有する異質な炭素材料で、通常のカーボン材に比べて化学的安定性、気体不透過性、耐摩耗性、自己潤滑性、表面の平滑性および堅牢性などに優れることから、その特性を生かして電池用電極、電解用電極、半導体製造用坩堝ほか、多様な分野で各種工業材料に有用されている。また、近年では組織から微小なパーティクルが離脱することがない非汚染性の材質性状に着目して、シリコンウエハーのプラズマエッチング用電極やイオン注入装置用部材など汚染を嫌う半導体分野での実用化が図られている。
【0003】
一般に、ガラス状カーボン材はフェノール系またはフラン系などの炭化残炭率の高い熱硬化性樹脂液を成形、硬化した前駆体を焼成炭化する方法によって製造される。このプロセスによる焼成炭化の機構は、固相で進行するため、前駆体樹脂の熱分解によって多量に発生する揮発分を固相外に排出し、体積収縮しながら炭化物に転化する過程を辿る。ところが、前駆体が大型で厚肉形状であると、熱分解ガスや縮合水が成形体内から円滑に排出されずに組織内部に残留し、これが原因でポアやボイドの発生、ひいては材質の膨れ、割れ等の材質欠陥を招くことになる。このため、大型や厚肉形状のガラス状カーボン材を工業的に製造することは炭素業界の大きな課題とされており、その研究も盛んにおこなわれている。
【0004】
従来、大型または厚肉形状のガラス状カーボン材を製造するための技術としては、大別して原料となる熱硬化性樹脂の種類や性状を選択するものと、熱硬化性樹脂に他の添加成分を複合化して原料系とする方法が知られている。このうち前者の技術には、例えば分子量100以上、粘度1〜100ポイズ、ゲル化時間5〜60分のフェノール樹脂を特定の条件により加熱処理し、ついで成形硬化したのち焼成炭化して厚肉板状ガラス状カーボン材を製造する方法(特開平4−362062号公報) が本出願人によって提案されているが、この方法により製造される最高肉厚は4mm程度が限度である。
【0005】
後者の方法としては、例えば熱硬化性樹脂液とカーボン粉末を混練して押出および圧延成形したのち焼成炭化する方法(特公平1−27967 号公報) 、セルロース質シートに熱硬化性樹脂液を含浸したのち積層成形し、これを焼成炭化する方法(特開昭60−145952号公報) などが知られている。これら複合原料系を用いる方法によれば、成形性が改善されて厚肉や大型材の製造が容易となる。特にカーボン粉末を添加する方法は、同時に炭化残炭率を向上させる効果がもたらせるため厚肉製品を得るために一層有利となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複合原料系を用いる製造方法では固体物質を液状の熱硬化性樹脂に分散、混合または浸透する過程で空気の巻き込み現象に基づく微小ポアの発生が避けられず、また異質成分添加の影響により得られるガラス状カーボン材の組織が不均一となる等の欠点がある。
【0007】
本発明者は、複合原料系の添加成分として好適な物質について多角的に検討をおこなった結果、分子状カーボンにより構成されたカーボンクラスターを用いると従来技術で製造が困難とされていた厚さ6mmを越える厚肉形状を有する均質緻密性状のガラス状カーボン材が製品歩留よく製造し得ることを知見して本発明に至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、均質緻密組織を備え、かつ厚さ6mmを越える厚肉材を製品歩留よく生産することができるガラス状カーボン材の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるガラス状カーボン材の製造方法は、炭素化によりガラス状カーボンに転化する熱硬化性樹脂液にカーボンクラスターをそのままもしくは有機溶媒に溶解した状態で混合し、混合物を成形硬化したのち、非酸化性雰囲気中で800℃以上の温度に加熱して焼成炭化処理することを構成上の特徴とする。
【0010】
本発明の主原料となる熱硬化性樹脂液は、炭素化によりガラス状カーボンに転化する樹脂材料であれば種類や化学性状に制約はないが、最も好ましい樹脂原料はフェノール系およびフラン系に属する熱硬化性樹脂の初期縮合物である。
【0011】
複合原料系の添加成分となるカーボンクラスターとは、炭素原子が数十個集合した性状の分子状カーボン(「フラーレン」と呼ばれることがある)、あるいはこの炭素分子に官能基を付加させた分子状カーボンを意味する。現在、カーボンクラスターとしては、C60、C70、C76、C78等の物性が知られているが、物性の種類は問われない。
【0012】
カーボンクラスターは、熱硬化性樹脂液にそのままもしくは有機溶媒に溶解した状態で混合し、複合原料系を形成する。溶解して混合する際に用いられる有機溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼン、二硫化炭素などを挙げることができる。また、カーボンクラスターを空気あるいは硝酸等によって酸化させてカルボニル基や水酸基のような官能基を表面の形成し、これをアルコール、アセトン等の極性有機溶媒に溶解して混合するすることも可能である。熱硬化性樹脂液に対するカーボンクラスターの配合量は、用いる熱硬化性樹脂の種類や成形肉厚等を考慮して適宜に設定されるが、概ね5〜50重量%の範囲が適切である。配合量が5重量%未満では添加効果が得られず、50重量%を越えると均一混合ができなくなる。混合は撹拌処理によっておこなわれるが、カーボンクラスターは撹拌操作により樹脂液に円滑に溶解する。
【0013】
ついで、複合原料系の混合物は最終的に得られるガラス状カーボン材の肉厚が6mm以上になるように成形および炭化時の収縮率を見込んで所望形状に成形し、加熱硬化する。混合物の性状は液状であるため、成形操作は注型成形法または多重成形(重ね塗り)法を適用しておこなわれる。注型成形を採用する場合には、真空系内に置いて減圧脱気処理を施すことが好ましい。成形後の硬化処理は、100〜300℃の温度範囲で加熱する。
【0014】
硬化処理された前駆体は、非酸化性雰囲気に保持された加熱炉に入れ、800℃以上、好ましくは1000〜2500℃の温度範囲で焼成炭化処理して厚肉のガラス状カーボン材を得る。
【0015】
【作用】
厚肉形状を有するガラス状カーボン材の製造が困難な理由は、原料となる熱硬化性樹脂液を成形する段階で組織内部に内在するポア残留率が高くなることに主因がある。すなわち、熱硬化性樹脂の硬化反応は分解縮合反応による前駆体ガスや縮合水の発生を伴いながら進行するが、成形材料が厚肉状になるに従って組織中心部のガスあるいは縮合水は外部に拡散し難くなり、内部にポアーとなって残留する。残留するポアが多いと焼成炭化工程においてポアに吸蔵されている気体が熱膨張を起こしたり、炭化収縮でポア自体に物理的応力が集中する結果、組織の密度低下、材質の膨れ、亀裂または破損を招く。
【0016】
したがって、このような現象を避けるためには、前駆体ガスや縮合水の発生源となる原料成分を可及的に少なくし、焼成時の炭素収率を高める必要がある。この意味で熱硬化性樹脂液にカーボン粉末を添加混合する複合原料系は有利となるが、この種の固体原料は樹脂液中に均一分散させることは困難となるうえ、混合分散させる際に空気の巻き込みを避けることができず、ポア発生の原因となる。また、ガラス状カーボンとは異質のカーボン組織が介在することにより組織性状が不均質となる。
【0017】
本発明で熱硬化性樹脂液に添加するカーボンクラスターは、分子状カーボンにより構成された極めて微細な粒子であり、かつ樹脂液や有機溶媒に溶解するため撹拌混合により容易に均一相の複合原料系が形成される。したがって、添加混合に際して空気を巻き込む等の現象を伴うことなしに原料系の炭化収率を効果的に増大させることができる。このような作用により、焼成炭化時に材質欠陥を招くことなしに、均質緻密な組織構造を有する厚肉形状のガラス状カーボン材の効率的な製造が可能となる。具体的には、材質の嵩密度1.50g/cc 以上、内在ポア径10μm 以下、ポアー含有率5%以下、曲げ強度1200kgf/cm2 以上の特性を備える厚さ7mm程度の厚肉状ガラス状カーボン材を得ることができる。
【0018】
【実施例】
実施例1〜3、比較例1〜2
減圧蒸留により精製したフェノールおよびホルマリンを常法に従って付加縮合反応させ、フェノール樹脂初期縮合物(液状樹脂)を調製した。ついで、該フェノール樹脂初期縮合物に所定量のカーボンクラスターを添加し、撹拌操作によって溶解混合させた。この混合物をポリプロピレン製のバットに流し込んで真空デシケータに入れ、10torr以下の減圧下で脱気処理をおこなったのち、所定酸素濃度に調節された清浄系内の電気オーブンに移して100℃の温度により硬化処理した。成形された樹脂前駆体は、縦横100mm、厚さ8mmの板状体であった。
【0019】
ついで、前駆体の両面を不純物5ppm 未満の高純度黒鉛板〔東海カーボン(株)製、G347SS〕で挟み付け、同じく高純度黒鉛ヒーター〔東海カーボン(株)製、G151ASS 〕を設置したパッキングレスの加熱炉〔東海高熱工業(株)製、TP150〕にセットし、炉内雰囲気を不純物10ppm 未満の高純度アルゴンガスで保持しながら2000℃まで加熱して焼成炭化処理を施し、縦横80mm、厚さ7mmのガラス状カーボン材を得た。このようにして製造されたガラス状カーボン材の肉厚、各種特性および炭化焼成時の歩留をフェノール樹脂初期縮合物に対するカーボンクラスターの添加量(表1には「Cクラスター量」と表示)と対比させて表1に示した。なお、比較のためにカーボンクラスターを添加せず(比較例1)、またカーボンクラスターに代えて粒度100メッシュの黒鉛粉末を添加(比較例2)し、その他の条件は実施例と同様して製造したガラス状カーボン材の特性および焼成炭化歩留率についても表1に併載した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の結果から、実施例1〜3ではいずれも厚さ7mmの厚肉形状でありながら実質的にポアや組織欠陥のない均質緻密で高強度のガラス状カーボン材が製品歩留よく製造されている。これに対し、カーボンクラスターを添加していない比較例1では材質特性および製品歩留ともに大幅に低下し、また黒鉛粉末を添加した比較例2では製品歩留は良好であったが、組織内部のポアが多くなって均質緻密性が減退することが認められた。
【0022】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば熱硬化性樹脂液に分子カーボンで構成されたカーボンクラスターを添加した複合原料系を用いることにより、均質緻密組織を備える厚さ6mmを越える厚肉形状のガラス状カーボン材を優れた製品歩留で製造することが可能となる。したがって、厚肉で高材質特性が要求される用途向け部材を対象とするガラス状カーボン材の製造技術として極めて有用性である。
【産業上の利用分野】
本発明は、均質緻密な組織構造を備えるガラス状カーボン材の製造方法、とくに厚さが6mmを越える厚肉形状を有する高品位のガラス状カーボン材を製品歩留よく製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス状カーボン材はガラス質の緻密な組成構造を有する異質な炭素材料で、通常のカーボン材に比べて化学的安定性、気体不透過性、耐摩耗性、自己潤滑性、表面の平滑性および堅牢性などに優れることから、その特性を生かして電池用電極、電解用電極、半導体製造用坩堝ほか、多様な分野で各種工業材料に有用されている。また、近年では組織から微小なパーティクルが離脱することがない非汚染性の材質性状に着目して、シリコンウエハーのプラズマエッチング用電極やイオン注入装置用部材など汚染を嫌う半導体分野での実用化が図られている。
【0003】
一般に、ガラス状カーボン材はフェノール系またはフラン系などの炭化残炭率の高い熱硬化性樹脂液を成形、硬化した前駆体を焼成炭化する方法によって製造される。このプロセスによる焼成炭化の機構は、固相で進行するため、前駆体樹脂の熱分解によって多量に発生する揮発分を固相外に排出し、体積収縮しながら炭化物に転化する過程を辿る。ところが、前駆体が大型で厚肉形状であると、熱分解ガスや縮合水が成形体内から円滑に排出されずに組織内部に残留し、これが原因でポアやボイドの発生、ひいては材質の膨れ、割れ等の材質欠陥を招くことになる。このため、大型や厚肉形状のガラス状カーボン材を工業的に製造することは炭素業界の大きな課題とされており、その研究も盛んにおこなわれている。
【0004】
従来、大型または厚肉形状のガラス状カーボン材を製造するための技術としては、大別して原料となる熱硬化性樹脂の種類や性状を選択するものと、熱硬化性樹脂に他の添加成分を複合化して原料系とする方法が知られている。このうち前者の技術には、例えば分子量100以上、粘度1〜100ポイズ、ゲル化時間5〜60分のフェノール樹脂を特定の条件により加熱処理し、ついで成形硬化したのち焼成炭化して厚肉板状ガラス状カーボン材を製造する方法(特開平4−362062号公報) が本出願人によって提案されているが、この方法により製造される最高肉厚は4mm程度が限度である。
【0005】
後者の方法としては、例えば熱硬化性樹脂液とカーボン粉末を混練して押出および圧延成形したのち焼成炭化する方法(特公平1−27967 号公報) 、セルロース質シートに熱硬化性樹脂液を含浸したのち積層成形し、これを焼成炭化する方法(特開昭60−145952号公報) などが知られている。これら複合原料系を用いる方法によれば、成形性が改善されて厚肉や大型材の製造が容易となる。特にカーボン粉末を添加する方法は、同時に炭化残炭率を向上させる効果がもたらせるため厚肉製品を得るために一層有利となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複合原料系を用いる製造方法では固体物質を液状の熱硬化性樹脂に分散、混合または浸透する過程で空気の巻き込み現象に基づく微小ポアの発生が避けられず、また異質成分添加の影響により得られるガラス状カーボン材の組織が不均一となる等の欠点がある。
【0007】
本発明者は、複合原料系の添加成分として好適な物質について多角的に検討をおこなった結果、分子状カーボンにより構成されたカーボンクラスターを用いると従来技術で製造が困難とされていた厚さ6mmを越える厚肉形状を有する均質緻密性状のガラス状カーボン材が製品歩留よく製造し得ることを知見して本発明に至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、均質緻密組織を備え、かつ厚さ6mmを越える厚肉材を製品歩留よく生産することができるガラス状カーボン材の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるガラス状カーボン材の製造方法は、炭素化によりガラス状カーボンに転化する熱硬化性樹脂液にカーボンクラスターをそのままもしくは有機溶媒に溶解した状態で混合し、混合物を成形硬化したのち、非酸化性雰囲気中で800℃以上の温度に加熱して焼成炭化処理することを構成上の特徴とする。
【0010】
本発明の主原料となる熱硬化性樹脂液は、炭素化によりガラス状カーボンに転化する樹脂材料であれば種類や化学性状に制約はないが、最も好ましい樹脂原料はフェノール系およびフラン系に属する熱硬化性樹脂の初期縮合物である。
【0011】
複合原料系の添加成分となるカーボンクラスターとは、炭素原子が数十個集合した性状の分子状カーボン(「フラーレン」と呼ばれることがある)、あるいはこの炭素分子に官能基を付加させた分子状カーボンを意味する。現在、カーボンクラスターとしては、C60、C70、C76、C78等の物性が知られているが、物性の種類は問われない。
【0012】
カーボンクラスターは、熱硬化性樹脂液にそのままもしくは有機溶媒に溶解した状態で混合し、複合原料系を形成する。溶解して混合する際に用いられる有機溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼン、二硫化炭素などを挙げることができる。また、カーボンクラスターを空気あるいは硝酸等によって酸化させてカルボニル基や水酸基のような官能基を表面の形成し、これをアルコール、アセトン等の極性有機溶媒に溶解して混合するすることも可能である。熱硬化性樹脂液に対するカーボンクラスターの配合量は、用いる熱硬化性樹脂の種類や成形肉厚等を考慮して適宜に設定されるが、概ね5〜50重量%の範囲が適切である。配合量が5重量%未満では添加効果が得られず、50重量%を越えると均一混合ができなくなる。混合は撹拌処理によっておこなわれるが、カーボンクラスターは撹拌操作により樹脂液に円滑に溶解する。
【0013】
ついで、複合原料系の混合物は最終的に得られるガラス状カーボン材の肉厚が6mm以上になるように成形および炭化時の収縮率を見込んで所望形状に成形し、加熱硬化する。混合物の性状は液状であるため、成形操作は注型成形法または多重成形(重ね塗り)法を適用しておこなわれる。注型成形を採用する場合には、真空系内に置いて減圧脱気処理を施すことが好ましい。成形後の硬化処理は、100〜300℃の温度範囲で加熱する。
【0014】
硬化処理された前駆体は、非酸化性雰囲気に保持された加熱炉に入れ、800℃以上、好ましくは1000〜2500℃の温度範囲で焼成炭化処理して厚肉のガラス状カーボン材を得る。
【0015】
【作用】
厚肉形状を有するガラス状カーボン材の製造が困難な理由は、原料となる熱硬化性樹脂液を成形する段階で組織内部に内在するポア残留率が高くなることに主因がある。すなわち、熱硬化性樹脂の硬化反応は分解縮合反応による前駆体ガスや縮合水の発生を伴いながら進行するが、成形材料が厚肉状になるに従って組織中心部のガスあるいは縮合水は外部に拡散し難くなり、内部にポアーとなって残留する。残留するポアが多いと焼成炭化工程においてポアに吸蔵されている気体が熱膨張を起こしたり、炭化収縮でポア自体に物理的応力が集中する結果、組織の密度低下、材質の膨れ、亀裂または破損を招く。
【0016】
したがって、このような現象を避けるためには、前駆体ガスや縮合水の発生源となる原料成分を可及的に少なくし、焼成時の炭素収率を高める必要がある。この意味で熱硬化性樹脂液にカーボン粉末を添加混合する複合原料系は有利となるが、この種の固体原料は樹脂液中に均一分散させることは困難となるうえ、混合分散させる際に空気の巻き込みを避けることができず、ポア発生の原因となる。また、ガラス状カーボンとは異質のカーボン組織が介在することにより組織性状が不均質となる。
【0017】
本発明で熱硬化性樹脂液に添加するカーボンクラスターは、分子状カーボンにより構成された極めて微細な粒子であり、かつ樹脂液や有機溶媒に溶解するため撹拌混合により容易に均一相の複合原料系が形成される。したがって、添加混合に際して空気を巻き込む等の現象を伴うことなしに原料系の炭化収率を効果的に増大させることができる。このような作用により、焼成炭化時に材質欠陥を招くことなしに、均質緻密な組織構造を有する厚肉形状のガラス状カーボン材の効率的な製造が可能となる。具体的には、材質の嵩密度1.50g/cc 以上、内在ポア径10μm 以下、ポアー含有率5%以下、曲げ強度1200kgf/cm2 以上の特性を備える厚さ7mm程度の厚肉状ガラス状カーボン材を得ることができる。
【0018】
【実施例】
実施例1〜3、比較例1〜2
減圧蒸留により精製したフェノールおよびホルマリンを常法に従って付加縮合反応させ、フェノール樹脂初期縮合物(液状樹脂)を調製した。ついで、該フェノール樹脂初期縮合物に所定量のカーボンクラスターを添加し、撹拌操作によって溶解混合させた。この混合物をポリプロピレン製のバットに流し込んで真空デシケータに入れ、10torr以下の減圧下で脱気処理をおこなったのち、所定酸素濃度に調節された清浄系内の電気オーブンに移して100℃の温度により硬化処理した。成形された樹脂前駆体は、縦横100mm、厚さ8mmの板状体であった。
【0019】
ついで、前駆体の両面を不純物5ppm 未満の高純度黒鉛板〔東海カーボン(株)製、G347SS〕で挟み付け、同じく高純度黒鉛ヒーター〔東海カーボン(株)製、G151ASS 〕を設置したパッキングレスの加熱炉〔東海高熱工業(株)製、TP150〕にセットし、炉内雰囲気を不純物10ppm 未満の高純度アルゴンガスで保持しながら2000℃まで加熱して焼成炭化処理を施し、縦横80mm、厚さ7mmのガラス状カーボン材を得た。このようにして製造されたガラス状カーボン材の肉厚、各種特性および炭化焼成時の歩留をフェノール樹脂初期縮合物に対するカーボンクラスターの添加量(表1には「Cクラスター量」と表示)と対比させて表1に示した。なお、比較のためにカーボンクラスターを添加せず(比較例1)、またカーボンクラスターに代えて粒度100メッシュの黒鉛粉末を添加(比較例2)し、その他の条件は実施例と同様して製造したガラス状カーボン材の特性および焼成炭化歩留率についても表1に併載した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の結果から、実施例1〜3ではいずれも厚さ7mmの厚肉形状でありながら実質的にポアや組織欠陥のない均質緻密で高強度のガラス状カーボン材が製品歩留よく製造されている。これに対し、カーボンクラスターを添加していない比較例1では材質特性および製品歩留ともに大幅に低下し、また黒鉛粉末を添加した比較例2では製品歩留は良好であったが、組織内部のポアが多くなって均質緻密性が減退することが認められた。
【0022】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば熱硬化性樹脂液に分子カーボンで構成されたカーボンクラスターを添加した複合原料系を用いることにより、均質緻密組織を備える厚さ6mmを越える厚肉形状のガラス状カーボン材を優れた製品歩留で製造することが可能となる。したがって、厚肉で高材質特性が要求される用途向け部材を対象とするガラス状カーボン材の製造技術として極めて有用性である。
Claims (1)
- 炭素化によりガラス状カーボンに転化する熱硬化性樹脂液にカーボンクラスターをそのままもしくは有機溶媒に溶解した状態で混合し、混合物を成形硬化したのち、非酸化性雰囲気中で800℃以上の温度に加熱して焼成炭化処理することを特徴とするガラス状カーボン材の製造方法。
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JP24628593A JP3543980B2 (ja) | 1993-09-06 | 1993-09-06 | ガラス状カーボン材の製造方法 |
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JP24628593A JP3543980B2 (ja) | 1993-09-06 | 1993-09-06 | ガラス状カーボン材の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH0769729A JPH0769729A (ja) | 1995-03-14 |
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- 1993-09-06 JP JP24628593A patent/JP3543980B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0769729A (ja) | 1995-03-14 |
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