JP3543882B2 - 法枠形成用筒状織布型枠 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は切土などの法面保護のために法面に構築する法枠を形成するための筒状織布型枠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の切土法面の安定工法としては、地山にロックボルトを打ち込み、法面にネットを敷設した後、法面に型枠を設置し鉄筋を配置してモルタルまたはコンクリートを吹き付け施工して格子状の鉄筋モルタル(またはコンクリート)構造体を構築する工法、所謂「吹き付け法枠工法」がおもに採用されている。この際の型枠としては金網が最もよく使用されるが鋼板や段ボールが使用されることもある。これを改良する工法として、本願出願人は先に、型枠として筒状袋を使用しこの筒状袋にモルタルを注入・硬化させて法枠を形成する工法を提案した。(特開平7−119154号公報、特願平6−150800)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
先に提案した工法で型枠として使用される筒状袋は内部の硬化モルタルと一体となって法枠となって半永久的に法面上に設置されたまま法面を保護するものであり、長期間にわたる耐候性が要求されるが通常の構造の筒状袋では耐候性は必ずしも十分ではない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は法枠形成のための筒状織布型枠の耐候性の改善を目的としてなされたものであって、筒状織布型枠を密な織組織の外側筒状織布と粗な織組織の内側筒状織布との二重構造とすることを要旨とするものである。
【0005】
即ち、本発明は、(A)実質的に太陽光を透過させず、かつ、モルタル中の水分は透過させるが固形分は透過させないように密に織られた外側の筒状織布、(B)モルタル中の固形分も透過するように粗に織られた内側の筒状織布、との二重構造からなる法枠形成用筒状織布型枠である。
【0006】
本発明の第1の特徴は、外側の筒状織布を実質的に太陽光を透過させない程度に密に織成する点である。外側の筒状織布が太陽光を遮光することにより内側の筒状織布は紫外線による劣化よりまのがれることとなり、その耐候性は半永久的となる。構成単繊維間の間隙が数μ〜数10μ程度の糸条を使用して各糸条間の間隙が10μ〜数10μ程度となるように外側の筒状織布を密に織成すると、外側の筒状織布は注入するモルタル中の水分は透過させるが固形分は透過させなくなると共に太陽光を実質的に遮光することになる。
【0007】
本発明の第2の特徴は、粗に織成された筒状織布を外側の筒状織布の内側に設け二重構造とする点である。内側の筒状織布は注入されるモルタル中の水分および固形分を透過させる必要があるので各糸条間の間隙が全体的もしくは部分的に数mm以上となるよう粗に織成される。
【0008】
本発明の二重構造の筒状織布型枠は外側と内側をそれぞれ別個に織成して、内側筒状織布を外側筒状織布に挿入して一体としてもよいし、内側筒状織布または外側筒状織布の緯糸の一部または全部が内側筒状織布の経糸および外側筒状織布の経糸に織込まれる形で二重織として一度に織成してもよい。
【0009】
本発明の筒状織布型枠では特に長手方向の強度が要求されるので、外側、内側ともに高強度の経糸が使用される。緯糸は経糸程は強度は要求されないが通常は経糸と同種の繊維が使用される。
【0010】
かかる観点および経済性の面から、繊維としては高強度繊維として入手が容易なポリエステル、ポリアミド、アラミドなどの合成繊維、不銹鋼線などが使用される。但し、経糸、緯糸ともに不銹鋼線を使用すると織成が容易ではないので、不銹鋼線は経糸にのみ使用される。各糸条間の間隙を出来るだけ塞ぎ、構成単繊維間の間隙も適切であり、かつ、高強度で操作性もよいことから合成繊維、就中ポリエステル繊維の嵩高捲縮加工糸が好ましく使用される。
【0011】
太陽光に曝される外側筒状織布は特に耐光処理を施さなくてもよいが、耐光処理を施しておくことが好ましい。最も簡単な耐光処理は、経糸、緯糸の原糸として黒色糸(原液着色糸、後染糸何れでもよい)を使用することであるが、この他紫外線吸収剤を配合もしくは被覆した原糸の使用や筒状織布の紫外線吸収剤への浸漬処理によってもよい。但し、紫外線吸収剤への浸漬処理に際しては筒状織布の繊維間の微細な間隙を塞ぐことのないように注意する必要がある。
【0012】
また、外側および内側の筒状織布の経糸には、モルタルによる強度低下を防止するため、熱可塑性樹脂やゴムで被覆して耐モルタル劣化性を付与しておくことが好ましい。
【0013】
本発明の筒状織布型枠は先に提案した工法におけるモルタル型枠として使用され、法面に縦横に敷設して固定した後、内部にモルタルを注入する。余剰水は筒状織布型枠より滲み出し筒状織布型枠は硬化したモルタルと一体となって法枠を形成する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本発明の筒状織布型枠1の中、外側筒状織布2と内側筒状織布3を別個に織成し、内側筒状織布3を外側筒状織布2に挿入して二重構造としたものの例を示し、(a)は横断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【0016】
図2は本発明の筒状織布型枠1の中、二重織により二重構造の筒状織布型枠1を一度に織成したものの例を示し、(a)は横断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【0017】
〔実施例1〕
直径約200mm の外側筒状織布2と直径約195mm の内側筒状織布3とを通常の袋織機で織成し内側筒状織布3を外側筒状織布2内の挿入し一体として二重構造の筒状織布型枠1を形成した。外側筒状織布2の直径は通常150mm 〜300mm 程度に織成され、内側筒状織布3の直径は外側筒状織布2の直径より5mm 〜40mm程度小さく織成される。
【0018】
下記の原糸組成および糸密度で筒状織布型枠1(何れも外径約200mm )を形成し、モルタルを注入・硬化して法枠を形成した。何れの場合も法枠の形成状況は良好で筒状織布型枠1の経時劣化は小さかった。
【0019】
Figure 0003543882
【0020】
Figure 0003543882
【0021】
Figure 0003543882
〔実施例2〕
下記(4)の原糸組成および糸密度で、図2に示される二重織による筒状織布型枠1(外径約200mm )を織成した。この二重織組織は内側筒状織布の緯糸11のが内側筒状織布の経糸10および外側筒状織布の経糸8に織込まれた組織となっている。この筒状織布型枠1にモルタルを注入・硬化して法枠を形成した。法枠の形成状況は良好で筒状織布型枠1の経時劣化は小さかった。
【0022】
Figure 0003543882
【0023】
【発明の効果】
(1)筒状織布型枠を密織組織の外側筒状織布と粗織組織の内側筒状織布との二重構造とすることにより、内側筒状織布は太陽光による強度低下を生ずることなく、半永久的に強度を保持する。外側筒状織布は太陽光による強度低下を生ずるが、着色糸の使用や紫外線吸収剤の使用などによって耐候性を大幅に向上させることができ、半永久的に所定性能を発揮する法枠を形成することが可能である。
【0024】
(2)内側筒状織布は粗に織成されているので、モルタル中の水分および固形分を透過し、外側筒状織布は密に織成されているので、モルタル中の余分な水分のみを透過する。この結果、筒状織布型枠はモルタルにより内外が一体化し、強固な法枠を形成することができる。
【0025】
(3)内側筒状織布または外側筒状織布の緯糸が内側筒状織布の経糸および外側筒状織布の経糸に織込むことにより、筒状織布型枠を一度に織成できると共に、モルタルの注入前から内側筒状織布と外側筒状織布とが一体化しており、ずれや弛みが生じないので法面に容易かつ確実に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の筒状織布型枠1の中、外側筒状織布2と内側筒状織布3を別個に織成し、内側筒状織布3を外側筒状織布2に挿入して二重構造としたものの例を示し、(a)は横断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図2】本発明の筒状織布型枠1の中、二重織により二重構造の筒状織布型枠1を一度に織成したものの例を示し、(a)は横断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【符号の説明】
1・・筒状織布型枠、2・・外側筒状織布、3・・内側筒状織布、4・・外側筒状織布の経糸、5・・外側筒状織布の緯糸、6・・内側筒状織布の経糸、7・・内側筒状織布の緯糸、8・・外側筒状織布の経糸、9・・外側筒状織布の緯糸、10・・内側筒状織布の経糸、11・・内側筒状織布の緯糸。

Claims (4)

  1. (A)実質的に太陽光を透過させず、かつ、モルタル中の水分は透過させるが固形分は透過させないように密に織られた外側の筒状織布、(B)モルタル中の固形分も透過するように粗に織られた内側の筒状織布、との二重構造からなる法枠形成用筒状織布型枠。
  2. 二重構造が、内側筒状織布または外側筒状織布の緯糸が内側筒状織布の経糸および外側筒状織布の経糸に織込まれた形の二重織である請求項1記載の法枠形成用筒状織布型枠。
  3. 内側筒状織布の経糸および/または外側筒状織布の経糸が不銹鋼線である請求項1または請求項2記載の法枠形成用筒状織布型枠。
  4. 外側筒状織布の経糸および緯糸が黒色糸である請求項1または請求項2記載の法枠形成用筒状織布型枠。
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