JP3543526B2 - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複素環式化合物およびその誘導体を用いて形成した導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器のデジタル化、高周波化に伴い、電子部品である電解コンデンサにおいても従来品よりも優れた抵抗特性を有するものが求められている。この要望に応えるべく数多くの固体電解質材料が開発されており、その1つに複素環式化合物およびその誘導体を化学酸化重合することにより形成される導電性高分子からなる固体電解質層を用いたものがある。
【0003】
陽極材料としてアルミニウムやタンタルを用い、かつ電解質として無機の固体電解質である二酸化マンガンや二酸化鉛を用いた固体電解コンデンサは、図4(a)(b)に示すように、そのほとんどは製造工法上の制約から、内部端子部1を備え、かつ微粉末を焼結してなる陽極体2、または内部端子部3を備え、かつ粗面化により実質の表面積を大きくした陽極箔あるいは陽極板4に、熱分解反応を利用して固体電解質5を焼き付け形成し、その後、カーボン、導電性接着剤などにより陰極層6を順次形成する構造を採用している。これらの固体電解コンデンサは、その電解質の特徴から電解液を用いるアルミ電解コンデンサに比べて温度依存性が小さく、高周波領域でのレジスタンスが低いという利点を有しているが、反面、耐電圧が低くかつ生産工法の制約から生産性の面でやや不利であるという面も抱えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
導電性高分子はその固有抵抗が著しく低いという特徴を有することから、とりわけ近年その製造方法に関し種々の提唱、改善が進められている固体電解質であるが、多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に形成した誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成する場合、細孔部からなる誘電体酸化皮膜層の表面は、浸漬する液体の表面張力と誘電体酸化皮膜層表面の濡れ性により大きな影響を受けるため、細孔内部まで均一かつ緻密で密着性に優れた導電性高分子からなる固体電解質層を形成することは極めて困難を有するものである。そのため、固体電解質層においては斑が生じたり、膜厚の薄い部分が存在し、これが耐ストレス性を弱くする原因となっていた。
【0005】
また、細孔内部まで均一かつ緻密で密着性に優れた導電性高分子からなる固体電解質層を形成するのに有利な方法としては、複素環式化合物およびその誘導体を液相化学酸化重合することにより導電性高分子からなる固体電解質層を形成する方法がある。この方法では複素環式化合物およびその誘導体を酸化重合するために酸化剤あるいは酸化を助長する酸化触媒を含む酸化液で処理するのが一般的となっている。しかしながら、この方法では目的は達せられるが、陽極体の形状や表面状態により固体電解質層の形成において斑が生じたり被覆効率が極めて悪くなるため、一定の厚みを得るために多大な時間を要し、かつ多量の廃液処理に係わる製造原価の高騰を招くという大きな課題を抱えていた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたもので、陽極体の形状や表面状態に関係なく、均一でかつ耐ストレス性にすぐれた一定厚みの固体電解質層を得ることができる固体電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の固体電解コンデンサは、多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に形成した誘電体酸化皮膜層と、この誘電体酸化皮膜層上に化学酸化重合により形成した導電性高分子からなる固体電解質層と、この固体電解質層上に形成した陰極層とを備え、前記誘電体酸化皮膜層上、または前記誘電体酸化皮膜層上ならびに固体電解質層の中間に導電性粉末を付着させて形成した導電性高分子からなる固体電解質層を設けたもので、この構成によれば、陽極体の形状や表面状態に関係なく、均一で、かつ耐ストレス性にすぐれた一定厚みの固体電解質層を得ることができるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に形成した誘電体酸化皮膜層と、この誘電体酸化皮膜層上に化学酸化重合により形成した導電性高分子からなる固体電解質層と、この固体電解質層上に形成した陰極層とを備え、前記誘電体酸化皮膜層上、または前記誘電体酸化皮膜層上ならびに固体電解質層の中間に導電性粉末を付着させて形成した導電性高分子からなる固体電解質層を設けたもので、この構成によれば、導電性粉末の付着により固体電解質層の厚みを確保しながら、化学酸化重合との組み合わせにより陽極体の細孔内部から外層部に至るまで均一で、かつ耐ストレス性にすぐれた一定厚みの導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサを得ることができるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に誘電体酸化皮膜層を形成する工程と、前記誘電体酸化皮膜層上に化学酸化重合により導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程と、前記固体電解質層上に陰極層を形成する工程と、前記誘電体酸化皮膜層上、または前記誘電体酸化皮膜層上ならびに固体電解質層の中間に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程とを備えたもので、この製造方法によれば、導電性粉末の付着により固体電解質層の厚みを確保しながら、化学酸化重合との組み合わせにより陽極体の細孔内部から外層部に至るまで均一で、かつ耐ストレス性にすぐれた一定厚みの導電性高分子からなる固体電解質層を短時間で形成することができるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、化学酸化重合により形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、陽極体を複素環式化合物を含む溶液に含浸させ、その後酸化剤を含む液体に浸漬して液相化学酸化重合を行わせるか、あるいは陽極体を酸化剤を含む液体に含浸させた後、複素環式化合物を含む溶液に浸漬して液相化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、陽極体に設けた導電性粉末の付着層の隙間および陽極体の細孔内部に液相化学酸化重合を用いて導電性高分子からなる固体電解質層を形成するようにしているため、導電性高分子からなる固体電解質層も均一かつ緻密で密着性にすぐれたものを得ることができ、かつ高周波領域でも低インピーダンス特性にすぐれたものを得ることができるものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、化学酸化重合により形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、陽極体を複素環式化合物を含む溶液に含浸させ、その後酸化剤を含む液体を噴霧して液相化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、陽極体に設けた導電性粉末の付着層の隙間および陽極体の細孔内部に液相化学酸化重合を用いて導電性高分子からなる固体電解質層を形成するが、この場合、陽極体に保持した複素環式化合物を含む溶液中で液相化学酸化重合を行わせるようにしているため、陽極体以外への導電性高分子の拡散は基本的に少なくなり、これにより導電性高分子からなる固体電解質層を極めて効率よく陽極体上で反応形成することができるものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、化学酸化重合により形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、陽極体を予め固体化した酸化剤で被覆し、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、酸化剤を固体で使用するため、重合工程の管理が平易になり、かつ容易に固体電解質層を形成することができるものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、導電性粉末を含む分散液に、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体を浸漬し、その後乾燥させることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、十分な厚みを持った導電性粉末の付着層を短時間に形成することができる。なお、分散液に対する導電性粉末の濃度を変化させれば、付着層の厚みを管理することができる。また、分散液の溶媒としてアルコールもしくはアルコールと水の混合溶液を用いても同様の効果が得られるものである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、導電性粉末を含む分散液を噴霧することにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、前記分散液の噴霧時間によって導電性高分子からなる固体電解質層の厚みを管理することができるものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、酸化剤と導電性粉末の両方を含む溶液を付着させた後、複素環式化合物を含む蒸気に晒すことにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、導電性粉末間の接着性を高めることができるため均一かつ密着性にすぐれた導電性高分子からなる固体電解質層を形成することができるものである。
【0019】
請求項9に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、酸化剤粉末と導電性粉末を混合した分散液に、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体を浸漬し、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、酸化剤粉末と導電性粉末の濃度管理によって誘電体酸化皮膜層上に一定厚みの導電性粉末の付着層を形成することができるものである。
【0020】
請求項10に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、酸化剤粉末と導電性粉末を混合した分散液を噴霧し、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、酸化剤を固体で使用しているため液体で使用するものに比べ管理が容易にして低インピーダンスの固体電解質層を形成することができるものである。
【0021】
請求項14に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に付着層を形成した後、この付着層に酸化剤粉末と導電性粉末の混合粉末を付着させ、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、この工程の繰り返し回数を規定することによって所望の厚みの固体電解質層を形成できるものである。
【0022】
請求項15に記載の発明は、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、表面に粘着性を付与した酸化剤粉末と導電性粉末を付着させ、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにしたもので、この製造方法によれば、導電性粉末間の接着がすぐれている導電性粉末の付着層を形成することができるものである。
【0023】
次に本発明の具体的な実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように多孔質の弁作用金属であるタンタル粉末を厚み1.4mm、幅3.0mm、長さ3.8mmに加圧成形し、真空焼結して得られた陽極体11の表面に、濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化を行って誘電体酸化皮膜層12を形成した。
【0024】
次に複素環式化合物およびその誘導体であるポリピロール粉末(導電性粉末)を水に対し200g/l配合して均質分散を行わせ、そして、この分散液に前記陽極体11を浸漬し、かつ105℃で10分間乾燥を行うことにより、前記誘電体酸化皮膜層12上に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層13を形成した。
【0025】
その後、この陽極体11を複素環式化合物およびその誘導体であるピロール1モル/lとドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1モル/lを含む水溶液に含浸させた後、引き続き、ドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウムと酸化剤である塩化鉄0.1モル/lを含む液体に浸漬して液相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして105℃で10分間乾燥を行うという単位操作を20回繰り返して導電性高分子からなる固体電解質層14を形成した。その後、この導電性高分子からなる固体電解質層14の上にコロイダルグラファイト15、銀塗料16よりなる陰極層17を塗布形成し、その後、所定の外装18を施して固体電解コンデンサを構成した。
【0026】
(実施の形態2)
図2に示すように実施の形態1における陽極体11と同様の陽極体21を形成し、そして、この陽極体21の表面に濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化を行って誘電体酸化皮膜層22を形成し、その後、この陽極体21を複素環式化合物およびその誘導体であるピロール1モル/lとドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1モル/lを含む水溶液に含浸させた後、引き続き、ドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウムと酸化剤である塩化鉄0.1モル/lを含む液体に浸漬して液相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして、105℃で10分間乾燥を行うという単位操作を10回繰り返して導電性高分子からなる固体電解質層23を形成した。次に複素環式化合物およびその誘導体であるポリピロール粉末(導電性粉末)を水に対し200g/l配合して均質分散を行わせ、そしてこの分散液に前記陽極体21を浸漬し、かつ105℃で10分間乾燥を行うことにより、前記固体電解質層23上に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層24を形成した。その後、前記した液相化学酸化重合の単位操作を10回繰り返して前記固体電解質層24の上に導電性高分子からなる固体電解質層23を形成した。その後、この導電性高分子からなる固体電解質層23の上にコロイダルグラファイト25、銀塗料26よりなる陰極層27を塗布形成し、その後、所定の外装28を施して固体電解コンデンサを構成した。
【0027】
(実施の形態3)
実施の形態1における陽極体11と同様の陽極体21を形成し、そしてこの陽極体21の表面に濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化によって誘電体酸化皮膜層22を形成し、その後、この誘電体酸化皮膜層22上に次に示す方法で導電性粉末よりなる固体電解質層24を形成した。すなわち、バインダーとポリピロール粉末(導電性粉末)を水に対し200g/l配合して均質分散を行わせ、そしてこの分散液に前記陽極体21を浸漬し、かつ105℃で10分間乾燥を行うことにより、前記誘電体酸化皮膜層22上に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層24を形成した。この固体電解質層24の形成工程後は、実施の形態2と同様の方法で固体電解質層23、固体電解質層24、固体電解質層23等を順次形成して固体電解コンデンサを構成した。
【0028】
(実施の形態4)
実施の形態1と同様の陽極体11を形成し、そしてこの陽極体11の表面に濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化を行って誘電体酸化皮膜層12を形成し、その後、この誘電体酸化皮膜層12上に実施の形態1と同様の方法により導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層13を形成した。
【0029】
次に、ドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウムと酸化剤である塩化鉄0.1モル/lを含む液体に前記陽極体11を浸漬した後、ピロールを含有する溶液を用いて気相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして105℃で10分間乾燥を行うという単位操作を20回繰り返して導電性高分子からなる固体電解質層14を形成した。その後、この導電性高分子からなる固体電解質層14の上にコロイダルグラファイト15、銀塗料16よりなる陰極層17を塗布形成し、その後、所定の外装18を施して固体電解コンデンサを構成した。
【0030】
(実施の形態5)
実施の形態1と同様の陽極体11を形成し、そしてこの陽極体11の表面に濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化を行って誘電体酸化皮膜層12を形成し、その後、この誘電体酸化皮膜層12上に次に示す方法で固体電解質層を形成した。
【0031】
すなわち、複素環式化合物およびその誘導体であるポリピロール粉末(導電性粉末)と酸化剤粉末をそれぞれ水に対し200g/l,50g/l配合して均質分散を行わせ、そしてこの分散液に前記陽極体11を浸漬し、かつ105℃で10分間乾燥を行うことにより、前記誘電体酸化皮膜層12上に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層13を形成し、その後、前記陽極体11を複素環式化合物およびその誘導体であるピロール1モル/lとドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1モル/lを含む水溶液に浸漬して液相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして105℃で10分間乾燥を行うという単位操作を20回繰り返して導電性高分子からなる固体電解質層14を形成した。その後、この導電性高分子からなる固体電解質層14の上にコロイダルグラファイト15、銀塗料16よりなる陰極層17を塗布形成し、その後、所定の外装18を施して固体電解コンデンサを構成した。
【0032】
(実施の形態6)
実施の形態1と同様の陽極体11を形成し、そしてこの陽極体11の表面に、濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化を行って誘電体酸化皮膜層12を形成した。
【0033】
次に、ドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウムと酸化剤である塩化鉄0.1モル/lを含む液体にポリピロール粉末(導電性粉末)200g/l配合して均質分散を行わせ、そしてこの分散液に前記陽極体11を浸漬した後、ピロールを含有する溶液を用いて気相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして105℃で10分間乾燥を行うことにより、前記誘電体酸化皮膜層12上に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層13を形成した。
【0034】
その後、この陽極体11を複素環式化合物およびその誘導体であるピロール1モル/lとドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1モル/lを含む水溶液に含浸させた後、引き続き、前記と同組成の液体、すなわちドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウムと酸化剤である塩化鉄0.1モル/lを含む液体に浸漬して液相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして105℃で10分間乾燥を行うという単位操作を20回繰り返して導電性高分子からなる固体電解質層14を形成した。その後、この導電性高分子からなる固体電解質層14の上にコロイダルグラファイト15、銀塗料16よりなる陰極層17を塗布形成し、その後、所定の外装18を施して固体電解コンデンサを構成した。
【0035】
(比較例)
図3に示すように多孔質の弁作用金属であるタンタル粉末を厚み1.4mm、幅3.0mm、長さ3.8mmに加圧成形し、真空焼結して得られた陽極体31の表面に、濃度が5重量%の燐酸水溶液中で30Vの陽極酸化を行って誘電体酸化皮膜層32を形成した。次にこの陽極体31を複素環式化合物およびその誘導体であるピロール1モル/lとドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1モル/lを含む水溶液に含浸させた後、引き続き、ドーパントであるナフタレンスルホン酸ナトリウムと酸化剤である塩化鉄0.1モル/lを含む液体に浸漬して液相化学酸化重合を行わせ、その後、酸化剤残渣をイオン交換水の流水中で10分間洗浄して除去し、そして105℃で10分間乾燥を行うという単位操作を30回繰り返して導電性高分子からなる固体電解質層33を形成した。その後、この導電性高分子からなる固体電解質層33の上にコロイダルグラファイト34、銀塗料35よりなる陰極層36を塗布形成し、その後、所定の外装を施して固体電解コンデンサを構成した。
【0036】
本発明の実施の形態1,2,3,4,5,6と比較例は、固体電解質の形成方法が異なるが、コンデンサ特性(静電容量、tanδ、漏れ電流、インピーダンス)についてはほとんど差が見られなかった。そのため、導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層を形成することによるコンデンサ特性への影響は本発明ではないことがわかった。
【0037】
本発明の実施の形態1においては、導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層13の形成を除いて比較例と同様に液相化学酸化重合を用いて固体電解質層14を形成しているが、導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層13の形成効果によって陽極体11の液保持力が高まることになり、これにより液相化学酸化重合の回数を大幅に低減することが可能となるものである。なお、この導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層13の形成は、導電性粉末を含む分散液を噴霧して固体電解質層13を形成する工法を用いても同様の効果が得られるものである。
【0038】
本発明の実施の形態2においては、液相化学酸化重合によって陽極体21の細孔内部および表面に形成された導電性高分子からなる固体電解質層23の中間に導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層24を形成するようにしているため、本発明の実施の形態1と同様に液相化学酸化重合の回数を大幅に低減することが可能となるものである。
【0039】
本発明の実施の形態3においては、導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層24、液相化学酸化重合により形成される固体電解質層23、固体電解質層24、固体電解質層23を順次形成して固体電解質層24の接着性を増加させるようにしているため、本発明の実施の形態1とほぼ同等のコンデンサ特性を有し、かつ液相化学酸化重合の回数の低減も可能となるものである。
【0040】
本発明の実施の形態4は、導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層13を形成した後、気相化学酸化重合を用いて導電性高分子からなる固体電解質層14を形成する工法を用いたもので、この工法を用いると固体電解質層14を極めて緻密に形成することが可能となった。なお、導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層13を形成した後、気相化学酸化重合と液相化学酸化重合を交互に用いて導電性高分子からなる固体電解質層14を形成すると、さらに固体電解質層14の形成時間を短縮することが可能となるものである。
【0041】
本発明の実施の形態5は、導電性粉末を付着させて固体電解質層13を形成する場合、導電性粉末であるポリピロール粉末以外に酸化剤粉末を均質に分散させるようにしているため、本発明の実施の形態1と比較して1工程少なくすることができるとともに、本発明の実施の形態1と同様の効果を得ることができるものである。なお、導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層13の形成は導電性粉末および酸化剤粉末を混合した分散液を陽極体に噴霧することにより固体電解質層13を形成する工法を用いても同様の効果を得ることができるものである。
【0042】
本発明の実施の形態6は、酸化剤を含有する液体に導電性粉末を分散させた分散液に陽極体11を浸漬した後、気相化学酸化重合を用いて導電性高分子からなる固体電解質層13を形成する工法を用いたもので、この工法を用いれば本発明の実施の形態4と比較して1工程少なくすることができるとともに、本発明の実施の形態4と同様の効果を得ることができるものである。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明の固体電解質コンデンサは、多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に形成した誘電体酸化皮膜層と、この誘電体酸化皮膜層上に化学酸化重合により形成した導電性高分子からなる固体電解質層と、この固体電解質層上に形成した陰極層とを備え、前記誘電体酸化皮膜層上、または前記誘電体酸化皮膜層上ならびに固体電解質層の中間に導電性粉末を付着させて形成した導電性高分子からなる固体電解質層を設けたもので、この構成によれば、導電性粉末の付着により固体電解質層の厚みを確保しながら、化学酸化重合との組み合わせにより陽極体の細孔内部から外層部に至るまで均一で、かつ耐ストレス性にすぐれた一定厚みの導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサを得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1,4,5,6における固体電解コンデンサを示す模式断面図
【図2】本発明の実施の形態2,3における固体電解コンデンサを示す模式断面図
【図3】比較例における固体電解コンデンサを示す破断斜視図
【図4】(a)従来の固体電解コンデンサにおける陽極体からなるコンデンサ素子の破断斜視図
(b)従来の固体電解コンデンサにおける陽極箔または陽極板からなるコンデンサ素子の破断斜視図
【符号の説明】
11,21 陽極体
12,22 誘電体酸化皮膜層
13 導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層
14 導電性高分子からなる固体電解質層
17,27 陰極層
23 導電性高分子からなる固体電解質層
24 導電性粉末を付着させて形成される固体電解質層
Claims (10)
- 多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に形成した誘電体酸化皮膜層と、この誘電体酸化皮膜層上に化学酸化重合により形成した導電性高分子からなる固体電解質層と、この固体電解質層上に形成した陰極層とを備え、前記誘電体酸化皮膜層上、または前記誘電体酸化皮膜層上ならびに固体電解質層の中間に導電性粉末を付着させて形成した導電性高分子からなる固体電解質層を設けた固体電解コンデンサ。
- 多孔質の弁作用金属よりなる陽極体の表面に誘電体酸化皮膜層を形成する工程と、前記誘電体酸化皮膜層上に化学酸化重合により導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程と、前記固体電解質層上に陰極層を形成する工程と、前記誘電体酸化皮膜層上、または前記誘電体酸化皮膜層上ならびに固体電解質層の中間に導電性粉末を付着させて導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程とを備えた固体電解コンデンサの製造方法。
- 化学酸化重合により形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、陽極体を複素環式化合物を含む溶液に含浸させた後酸化剤を含む液体に浸漬して液相化学酸化重合を行わせるか、あるいは陽極体を酸化剤を含む液体に含浸させた後複素環式化合物を含む溶液に浸漬して液相化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 化学酸化重合により形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、陽極体を複素環式化合物を含む溶液に含浸させ、その後酸化剤を含む液体を噴霧して液相化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 化学酸化重合により形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、陽極体を予め固体化した酸化剤で被覆し、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、導電性粉末を含む分散液に、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体を浸漬し、その後乾燥させることにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、導電性粉末を含む分散液を噴霧することにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、酸化剤と導電性粉末の両方を含む溶液を付着させた後、複素環式化合物を含む蒸気に晒すことにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、酸化剤粉末と導電性粉末を混合した分散液に、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体を浸漬し、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 導電性粉末を付着させて形成される導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極体もしくは誘電体酸化皮膜層上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した陽極体に、酸化剤粉末と導電性粉末を混合した分散液を噴霧し、その後酸化剤をイオン化して化学酸化重合を行わせることにより固体電解質層を形成するようにした請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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