JP3543105B2 - 易加工性高温用複合材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易加工性で、摩擦特性においても優れた高温用セラミックス基複合材料およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくいえば、緻密で、かつ、高い耐酸化性を有し、高温でも強度が高いものでありながら、同時に、組織中の炭素相のため、加工性や摩擦特性にも優れ、高い耐熱性や機械的強度などを要求される部位や摺動部位など、多方面での利用に適する高温用セラミックス基複合材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
元来、セラミックス系複合材料は、耐熱性が高く、かつ硬度が高いものであるから、高温下での利用や耐摩耗性が要求される部位への利用を目指して研究が進められている。しかし、その本来の優れた特性のため、逆に加工が困難であるという点が大きな問題であることは良く知られている。そのため、通常、粉末冶金的方法である焼結によって製品形状に近いものを製造し、若干の仕上げ加工により最終製品にするという方法が採られている。
【0003】
しかし、焼結緻密化は本質的に10%以上の大幅な収縮変形を伴うので、精密な制御により製品形状に近いものを得ることは極めて困難である。つまり、通常はかなりの後加工が不可避であり、しかも、その困難さが製造コストを大幅に引き上げ、それがこのような材料の広範な利用が成されない原因の一つとなっていることは周知である。
【0004】
この問題を解決する一つの方法として、本発明者らは、収縮変形を伴わない緻密化法である溶浸法をセラミックス系複合材料の製造に適用し、緻密で耐酸化性も優れ、製造も容易なSiC−Mo(Al,Si)2 系溶浸材料[特許第2535768号]、およびMo3 Si2 C溶浸材料[特願平第9−309917号]を開発した。これらの溶浸複合材料はほとんど製品形状に製造できるので、極少量の後加工を施すだけでよいものであるが、しかし、被加工性が優れているものではない。工業的にはやはり、製造後、所望の形状に加工できる、加工性に優れたセラミックス系材料が望ましい。
なお、この加工性を大幅に向上させた、いわゆるマシナブルセラミックスは非常に加工性に富んだものであるが、マイカを含んだシリカガラス系の材料であるため、高温部材、あるいは高強度材として利用できるものではない。
【0005】
一方、セラミックス材は耐摩耗性に優れるので、摺動部位への利用も大きな可能性を有しているが、一般に摩擦係数が低くないため摺動抵抗が大きいことが問題である。このような用途への材料として、炭素相を含んだ炭化ケイ素系の材料が考えられるが、緻密な高強度材を製造する手段は未だ見いだされていない。このような特性は、常温、高温での十分な機械的強度のみならず、耐酸化性、耐食性等を同時に具備することが求められているものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のセラミックス系材料の難加工性の問題点、および摩擦摺動特性上の問題点を克服し、易加工性で摩擦特性においても優れた高温用セラミックス基複合材料と、それを容易に製造可能にした製造方法を得ることを目的とするものである。
本発明の更に具体的な目的は、緻密で、かつ高い耐酸化性を有し、高温でも強度の高いものでありながら、同時に、組織中の炭素相のため、加工性や摩擦特性にも優れ、高い耐熱性や機械的強度等を要求される部位や摺動部位など、多方面での利用に適する高温用セラミックス基複合材料およびその製造方法を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは、セラミックス系複合材料について鋭意研究を重ねた結果、炭素と化学的に共存することができ、かつ、高い耐酸化性を有するMoの炭ケイ化物を用いることにより、組織中に炭素相を含む緻密な複合材料が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、炭素とMoの炭ケイ化物、および炭化ケイ素よりなる易加工性高温用セラミックス基複合材料、並びにその製造方法を提供するものであり、更に具体的には、体積割合で5〜40%の炭素相と、体積割合で10%以上の、Mo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物を含み、残部が主として炭化ケイ素よりなり、それによって緻密で高い強度と耐酸化性を有し、かつ加工性と摩擦摺動性に優れたセラミックス系複合材料およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
上記セラミックス系複合材料は、通常の燒結法によっても製造することができるが、より効果的な製造法は溶浸法によるものである。この場合には、まず、炭化ケイ素と炭素粉を所定の割合に混合した混合粉末によりプリフォームを成型し、ついで、このプリフォーム成型体に、融点以上の温度に加熱溶融したMoの炭ケイ化物を溶浸させ、それを冷却固化して緻密な高温用複合材料を得る。この溶浸法では、製造時の形状変化が無く、ニアネットシェイプ製造が可能であり、燒結助剤も必要でないので、優れた高温特性を有する複合材料が短時間で得られるという特徴がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る易加工性高温用セラミックス基複合材料は、基本的には、体積割合で5〜40%、より望ましくは10〜30%の炭素相と、体積割合で10%以上、より望ましくは、20%以上のMo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物と、残部が炭化ケイ素よりなるものである。
上記炭素相の量は、5〜40%の範囲内で任意に設定できるが、これが少ない方が、機械的特性、耐酸化性が向上する。しかし、それが5%に満たない場合には、炭素相による加工性や摩擦特性への効果が大きく減少することは明らかである。また、40%を越えると耐酸化性や機械的特性が悪化する上、一般に緻密な複合材の製造が困難となる。
【0011】
この緻密な複合材を得る上で必要な炭素添加量は、炭素原料粉の性状に大きく依存する。例えば、粒径については、サブミクロンの微粉の場合には10%以上の炭素添加では溶浸が困難であるが、数十ミクロン以上の炭素粉を用いれば40%までも添加することが出来る。ちなみに、炭素粉としては2200℃程度以上で熱処理したものを使用する方が良く、これにより炭素粉からの揮発分を除き、良好に溶浸させることが出来る。
このように、炭素量は、上記5〜40%の範囲内で、製造性と、加工性、摩擦特性、機械的特性、耐酸化性などとの兼ね合いで決定される。
【0012】
Mo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物としては、この組成の化合物粉末を用いても良いし、また、反応後、この組成になるような割合に各元素粉、あるいは化合物粉を混合した粉末を用いても良い。これらは製造温度への昇温過程中に反応し、所望のMo炭ケイ化物となる。このMoの炭ケイ化物は、炭素相を含んだ緻密で耐酸化性の複合材を容易に得るために必須のものであり、その割合が10%以上でなければ、緻密なものを製造するのが極めて困難で実用的でない。
【0013】
炭素相およびMoの炭ケイ化物以外には、炭化ケイ素を含むことができ、望ましくは体積割合で40%以上を含む方がよいが、必ずしも混合の必要はない。ただ、この炭化ケイ素の添加は、溶浸を容易にするためにも、また、高温での機械的特性や耐酸化性を向上させるためにも有効なものである。なお、この炭化ケイ素としては化合物粉末を用いても良いし、また、ケイ素と炭素の混合粉末を用いて、高温焼成時に生成させても良い。
【0014】
また、上記高温用セラミックス基複合材料は、他の元素、あるいは化合物を副成分として含んでいても良い。特に、B、Alの添加は中温酸化の防止に効果的であり、また、Moの炭ケイ化物中のSiを一部Alで置換し、Mo3 (Si,Al)2 Cとすれば、若干の製造温度の低下を図ることができる。その他、例えば、Mo、W、Ta、Nb、Zr、Hf、V、Ti、Crの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、ホウ化物、あるいはそれらの複化合物の添加は、組織制御に効果的であり、機械特性の向上を図ることができる。
【0015】
上記セラミックス基複合材料は、焼結法あるいは溶浸法により製造することができる。燒結法による場合は、Mo3 Si2 Cと近似的に表現される化合物の粉末を炭化ケイ素粉、炭素粉を所定の割合に混合成型し、ついで、高温でのホットプレス法や無加圧燒成法などで燒結緻密化する。なお、各元素粉を、反応後、所望の組成になるような割合に混合した原料粉を用いても良いが、その場合は反応により空隙割合が大きくなるので、緻密化のためにはホットプレス法やHIP法を用いる必要がある。必要な燒結温度、あるいは時間については、組成および原料粉の性状、あるいは燒結助剤に依存することは通常のセラミックス系材料の燒結と同様である。例えば、サブミクロンの微細な原料粉を用いる場合は1700℃以下での燒結緻密化も可能であるが、炭化ケイ素の含有量や粒径が大きい場合は2000℃以上の高温加圧燒結が必要となる。燒結助剤としては炭化ケイ素の燒結に用いられるホウ素、アルミニウムなどが効果的である。
【0016】
より望ましい製造法は溶浸法によるものである。この場合、まず炭化ケイ素と炭素粉を所定の割合に混合した混合粉末を成型し、プリフォームを製造する。この成型は、例えばメチルセルロース等のバインダーを少量添加した水にSiCと炭素を分散し、乾燥して得られた粉末を金型にて一軸成型し、ついでラバープレスにて等方圧縮することにより得ることができる。次に、このようにして得られたプリフォーム成型体を黒鉛ルツボ中に設置し、反応後にMo3 Si2 Cの組成になるような割合に混合したMo−Si−Cの混合粉末の上に乗せ、アルゴンガス中で、Mo3 Si2 Cの融点以上の温度にて加熱し、溶浸させる。その後、これを冷却固化して高温用複合材料を得る。上記Mo−Si−C混合粉末は、昇温過程中に反応し、Mo3 Si2 Cとなる。なお、Mo3 Si2 Cの組成の融液が得られるのであれば、元素粉や化合物粉の混合物を用いても良いことはもちろんである。
【0017】
上述した高温用セラミクス基複合材料の製造において、各原料粉末の粒径には特に制限はない。しかし、一般的に、粒径が大きい方が得られる複合材料の組織も大きく、従って、高温機械特性が優れる。逆に粒径を小さくし、組織を細かくすると、中低温強度が優れたものが得られる。さらに、炭素量は少ない方が機械的特性や耐酸化性が向上するが、この量は加工性や摩擦摩耗特性との兼ね合いで決めるべきものである。
【0018】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
[実施例1]
平均粒径7ミクロンのSi粉末と平均粒径6ミクロンの黒鉛粉末を、反応後に体積割合で15%程度の炭素相が残留するような割合に混合し、金型成型した。ついで、これをラバープレスにより加圧し、プリフォーム圧粉体を得た。そのプリフォームを、MoSi2 、Mo、SiCの粉末を反応後Mo3 Si2 Cの組成となる割合に混合した粉末の上に乗せ、Ar中、2050℃で10分間加熱した。プリフォームは、昇温過程中に反応し、炭素相を含んだSiCになった。また、混合粉は同様に昇温過程中に反応し、単相のMo3 Si2 Cとなり、かつ、溶浸温度で融解し、前述のプリフォームへ溶浸した。得られたSiC−C−Mo3 Si2 C複合体は溶浸後、残留炭素相を体積割合で15%程度を含み、相対密度90%以上の緻密なもので、2050℃において十分良好な溶浸が起こることが観察された。得られた複合材をダイヤモンド切断機で切断したところ、短時間で容易に切断できた。
【0020】
[実施例2]
平均粒径2ミクロンのSiC粉末に平均粒径100ミクロンの黒鉛粉末を体積割合で50%混合し、金型成型して、プリフォーム圧粉体を得た。得られたプリフォームの相対密度は60%程度であった。そのプリフォームを、MoSi2 、Mo、SiCの粉末を反応後Mo3 Si2 Cの組成となる割合に混合した粉末の上に乗せ、Ar中、2050℃で10分間加熱した。混合粉は昇温過程中に反応し、単相のMo3 Si2 Cとなり、かつ溶浸温度で融解し、プリフォームへ溶浸した。得られたSiC−C−Mo3 Si2 C複合体は、溶浸後、炭素相を体積割合で30%程度含み、相対密度90%以上の緻密なものであった。得られた複合材は容易に切断でき、また、鏡面研磨も非常に容易であったが、これは摩擦摺動特性が優れていることを示している。
【0021】
[比較例1]
実施例2と同様にして炭素を含まないSiCのプリフォームを用意し、同様な方法で溶浸法によりSiC−Mo3 Si2 C複合体を得た。得られた複合材をダイヤモンド切断機で切断したところ、実施例1と比べ、かなりの長時間が必要であり、通常のセラミックス燒結体と同様に加工が非常に困難であることを示した。
【0022】
[比較例2]
平均粒径6ミクロンの炭素粉を用いた他は、実施例2と全く同様にして複合材の溶浸法による製造を試みた。この場合は計算上、溶浸後の炭素相の体積割合は40%以上となるものであったが、溶浸が起きなかった。このように、可能な炭素添加量は、原料粉の粒径などの性状による。実施例2のように粗粒の炭素粉を用いれば、炭素量は40%以上でも製造可能であるが、しかし、その場合は得られる複合材の機械特性や耐酸化性に問題がある。
【0023】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明の易加工性高温用複合材料およびその製造方法によれば、組織中に炭素相を含んだ緻密なセラミックス基複合材料を得ることが出来る。本発明による材料は、優れた耐酸化性と高温機械特性を合せ持ち、かつ、複雑形状のものをニアネットシェイプに製造できるものである。しかも、加工性や摩擦摩耗特性にも優れるものであるので、高い耐熱性や機械的強度などを要求される部位や摺動部位など、多方面に利用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、易加工性で、摩擦特性においても優れた高温用セラミックス基複合材料およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくいえば、緻密で、かつ、高い耐酸化性を有し、高温でも強度が高いものでありながら、同時に、組織中の炭素相のため、加工性や摩擦特性にも優れ、高い耐熱性や機械的強度などを要求される部位や摺動部位など、多方面での利用に適する高温用セラミックス基複合材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
元来、セラミックス系複合材料は、耐熱性が高く、かつ硬度が高いものであるから、高温下での利用や耐摩耗性が要求される部位への利用を目指して研究が進められている。しかし、その本来の優れた特性のため、逆に加工が困難であるという点が大きな問題であることは良く知られている。そのため、通常、粉末冶金的方法である焼結によって製品形状に近いものを製造し、若干の仕上げ加工により最終製品にするという方法が採られている。
【0003】
しかし、焼結緻密化は本質的に10%以上の大幅な収縮変形を伴うので、精密な制御により製品形状に近いものを得ることは極めて困難である。つまり、通常はかなりの後加工が不可避であり、しかも、その困難さが製造コストを大幅に引き上げ、それがこのような材料の広範な利用が成されない原因の一つとなっていることは周知である。
【0004】
この問題を解決する一つの方法として、本発明者らは、収縮変形を伴わない緻密化法である溶浸法をセラミックス系複合材料の製造に適用し、緻密で耐酸化性も優れ、製造も容易なSiC−Mo(Al,Si)2 系溶浸材料[特許第2535768号]、およびMo3 Si2 C溶浸材料[特願平第9−309917号]を開発した。これらの溶浸複合材料はほとんど製品形状に製造できるので、極少量の後加工を施すだけでよいものであるが、しかし、被加工性が優れているものではない。工業的にはやはり、製造後、所望の形状に加工できる、加工性に優れたセラミックス系材料が望ましい。
なお、この加工性を大幅に向上させた、いわゆるマシナブルセラミックスは非常に加工性に富んだものであるが、マイカを含んだシリカガラス系の材料であるため、高温部材、あるいは高強度材として利用できるものではない。
【0005】
一方、セラミックス材は耐摩耗性に優れるので、摺動部位への利用も大きな可能性を有しているが、一般に摩擦係数が低くないため摺動抵抗が大きいことが問題である。このような用途への材料として、炭素相を含んだ炭化ケイ素系の材料が考えられるが、緻密な高強度材を製造する手段は未だ見いだされていない。このような特性は、常温、高温での十分な機械的強度のみならず、耐酸化性、耐食性等を同時に具備することが求められているものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のセラミックス系材料の難加工性の問題点、および摩擦摺動特性上の問題点を克服し、易加工性で摩擦特性においても優れた高温用セラミックス基複合材料と、それを容易に製造可能にした製造方法を得ることを目的とするものである。
本発明の更に具体的な目的は、緻密で、かつ高い耐酸化性を有し、高温でも強度の高いものでありながら、同時に、組織中の炭素相のため、加工性や摩擦特性にも優れ、高い耐熱性や機械的強度等を要求される部位や摺動部位など、多方面での利用に適する高温用セラミックス基複合材料およびその製造方法を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは、セラミックス系複合材料について鋭意研究を重ねた結果、炭素と化学的に共存することができ、かつ、高い耐酸化性を有するMoの炭ケイ化物を用いることにより、組織中に炭素相を含む緻密な複合材料が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、炭素とMoの炭ケイ化物、および炭化ケイ素よりなる易加工性高温用セラミックス基複合材料、並びにその製造方法を提供するものであり、更に具体的には、体積割合で5〜40%の炭素相と、体積割合で10%以上の、Mo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物を含み、残部が主として炭化ケイ素よりなり、それによって緻密で高い強度と耐酸化性を有し、かつ加工性と摩擦摺動性に優れたセラミックス系複合材料およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
上記セラミックス系複合材料は、通常の燒結法によっても製造することができるが、より効果的な製造法は溶浸法によるものである。この場合には、まず、炭化ケイ素と炭素粉を所定の割合に混合した混合粉末によりプリフォームを成型し、ついで、このプリフォーム成型体に、融点以上の温度に加熱溶融したMoの炭ケイ化物を溶浸させ、それを冷却固化して緻密な高温用複合材料を得る。この溶浸法では、製造時の形状変化が無く、ニアネットシェイプ製造が可能であり、燒結助剤も必要でないので、優れた高温特性を有する複合材料が短時間で得られるという特徴がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る易加工性高温用セラミックス基複合材料は、基本的には、体積割合で5〜40%、より望ましくは10〜30%の炭素相と、体積割合で10%以上、より望ましくは、20%以上のMo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物と、残部が炭化ケイ素よりなるものである。
上記炭素相の量は、5〜40%の範囲内で任意に設定できるが、これが少ない方が、機械的特性、耐酸化性が向上する。しかし、それが5%に満たない場合には、炭素相による加工性や摩擦特性への効果が大きく減少することは明らかである。また、40%を越えると耐酸化性や機械的特性が悪化する上、一般に緻密な複合材の製造が困難となる。
【0011】
この緻密な複合材を得る上で必要な炭素添加量は、炭素原料粉の性状に大きく依存する。例えば、粒径については、サブミクロンの微粉の場合には10%以上の炭素添加では溶浸が困難であるが、数十ミクロン以上の炭素粉を用いれば40%までも添加することが出来る。ちなみに、炭素粉としては2200℃程度以上で熱処理したものを使用する方が良く、これにより炭素粉からの揮発分を除き、良好に溶浸させることが出来る。
このように、炭素量は、上記5〜40%の範囲内で、製造性と、加工性、摩擦特性、機械的特性、耐酸化性などとの兼ね合いで決定される。
【0012】
Mo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物としては、この組成の化合物粉末を用いても良いし、また、反応後、この組成になるような割合に各元素粉、あるいは化合物粉を混合した粉末を用いても良い。これらは製造温度への昇温過程中に反応し、所望のMo炭ケイ化物となる。このMoの炭ケイ化物は、炭素相を含んだ緻密で耐酸化性の複合材を容易に得るために必須のものであり、その割合が10%以上でなければ、緻密なものを製造するのが極めて困難で実用的でない。
【0013】
炭素相およびMoの炭ケイ化物以外には、炭化ケイ素を含むことができ、望ましくは体積割合で40%以上を含む方がよいが、必ずしも混合の必要はない。ただ、この炭化ケイ素の添加は、溶浸を容易にするためにも、また、高温での機械的特性や耐酸化性を向上させるためにも有効なものである。なお、この炭化ケイ素としては化合物粉末を用いても良いし、また、ケイ素と炭素の混合粉末を用いて、高温焼成時に生成させても良い。
【0014】
また、上記高温用セラミックス基複合材料は、他の元素、あるいは化合物を副成分として含んでいても良い。特に、B、Alの添加は中温酸化の防止に効果的であり、また、Moの炭ケイ化物中のSiを一部Alで置換し、Mo3 (Si,Al)2 Cとすれば、若干の製造温度の低下を図ることができる。その他、例えば、Mo、W、Ta、Nb、Zr、Hf、V、Ti、Crの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、ホウ化物、あるいはそれらの複化合物の添加は、組織制御に効果的であり、機械特性の向上を図ることができる。
【0015】
上記セラミックス基複合材料は、焼結法あるいは溶浸法により製造することができる。燒結法による場合は、Mo3 Si2 Cと近似的に表現される化合物の粉末を炭化ケイ素粉、炭素粉を所定の割合に混合成型し、ついで、高温でのホットプレス法や無加圧燒成法などで燒結緻密化する。なお、各元素粉を、反応後、所望の組成になるような割合に混合した原料粉を用いても良いが、その場合は反応により空隙割合が大きくなるので、緻密化のためにはホットプレス法やHIP法を用いる必要がある。必要な燒結温度、あるいは時間については、組成および原料粉の性状、あるいは燒結助剤に依存することは通常のセラミックス系材料の燒結と同様である。例えば、サブミクロンの微細な原料粉を用いる場合は1700℃以下での燒結緻密化も可能であるが、炭化ケイ素の含有量や粒径が大きい場合は2000℃以上の高温加圧燒結が必要となる。燒結助剤としては炭化ケイ素の燒結に用いられるホウ素、アルミニウムなどが効果的である。
【0016】
より望ましい製造法は溶浸法によるものである。この場合、まず炭化ケイ素と炭素粉を所定の割合に混合した混合粉末を成型し、プリフォームを製造する。この成型は、例えばメチルセルロース等のバインダーを少量添加した水にSiCと炭素を分散し、乾燥して得られた粉末を金型にて一軸成型し、ついでラバープレスにて等方圧縮することにより得ることができる。次に、このようにして得られたプリフォーム成型体を黒鉛ルツボ中に設置し、反応後にMo3 Si2 Cの組成になるような割合に混合したMo−Si−Cの混合粉末の上に乗せ、アルゴンガス中で、Mo3 Si2 Cの融点以上の温度にて加熱し、溶浸させる。その後、これを冷却固化して高温用複合材料を得る。上記Mo−Si−C混合粉末は、昇温過程中に反応し、Mo3 Si2 Cとなる。なお、Mo3 Si2 Cの組成の融液が得られるのであれば、元素粉や化合物粉の混合物を用いても良いことはもちろんである。
【0017】
上述した高温用セラミクス基複合材料の製造において、各原料粉末の粒径には特に制限はない。しかし、一般的に、粒径が大きい方が得られる複合材料の組織も大きく、従って、高温機械特性が優れる。逆に粒径を小さくし、組織を細かくすると、中低温強度が優れたものが得られる。さらに、炭素量は少ない方が機械的特性や耐酸化性が向上するが、この量は加工性や摩擦摩耗特性との兼ね合いで決めるべきものである。
【0018】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
[実施例1]
平均粒径7ミクロンのSi粉末と平均粒径6ミクロンの黒鉛粉末を、反応後に体積割合で15%程度の炭素相が残留するような割合に混合し、金型成型した。ついで、これをラバープレスにより加圧し、プリフォーム圧粉体を得た。そのプリフォームを、MoSi2 、Mo、SiCの粉末を反応後Mo3 Si2 Cの組成となる割合に混合した粉末の上に乗せ、Ar中、2050℃で10分間加熱した。プリフォームは、昇温過程中に反応し、炭素相を含んだSiCになった。また、混合粉は同様に昇温過程中に反応し、単相のMo3 Si2 Cとなり、かつ、溶浸温度で融解し、前述のプリフォームへ溶浸した。得られたSiC−C−Mo3 Si2 C複合体は溶浸後、残留炭素相を体積割合で15%程度を含み、相対密度90%以上の緻密なもので、2050℃において十分良好な溶浸が起こることが観察された。得られた複合材をダイヤモンド切断機で切断したところ、短時間で容易に切断できた。
【0020】
[実施例2]
平均粒径2ミクロンのSiC粉末に平均粒径100ミクロンの黒鉛粉末を体積割合で50%混合し、金型成型して、プリフォーム圧粉体を得た。得られたプリフォームの相対密度は60%程度であった。そのプリフォームを、MoSi2 、Mo、SiCの粉末を反応後Mo3 Si2 Cの組成となる割合に混合した粉末の上に乗せ、Ar中、2050℃で10分間加熱した。混合粉は昇温過程中に反応し、単相のMo3 Si2 Cとなり、かつ溶浸温度で融解し、プリフォームへ溶浸した。得られたSiC−C−Mo3 Si2 C複合体は、溶浸後、炭素相を体積割合で30%程度含み、相対密度90%以上の緻密なものであった。得られた複合材は容易に切断でき、また、鏡面研磨も非常に容易であったが、これは摩擦摺動特性が優れていることを示している。
【0021】
[比較例1]
実施例2と同様にして炭素を含まないSiCのプリフォームを用意し、同様な方法で溶浸法によりSiC−Mo3 Si2 C複合体を得た。得られた複合材をダイヤモンド切断機で切断したところ、実施例1と比べ、かなりの長時間が必要であり、通常のセラミックス燒結体と同様に加工が非常に困難であることを示した。
【0022】
[比較例2]
平均粒径6ミクロンの炭素粉を用いた他は、実施例2と全く同様にして複合材の溶浸法による製造を試みた。この場合は計算上、溶浸後の炭素相の体積割合は40%以上となるものであったが、溶浸が起きなかった。このように、可能な炭素添加量は、原料粉の粒径などの性状による。実施例2のように粗粒の炭素粉を用いれば、炭素量は40%以上でも製造可能であるが、しかし、その場合は得られる複合材の機械特性や耐酸化性に問題がある。
【0023】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明の易加工性高温用複合材料およびその製造方法によれば、組織中に炭素相を含んだ緻密なセラミックス基複合材料を得ることが出来る。本発明による材料は、優れた耐酸化性と高温機械特性を合せ持ち、かつ、複雑形状のものをニアネットシェイプに製造できるものである。しかも、加工性や摩擦摩耗特性にも優れるものであるので、高い耐熱性や機械的強度などを要求される部位や摺動部位など、多方面に利用することができる。
Claims (2)
- 体積割合で5〜40%の炭素相と、体積割合で10%以上の、Mo3 Si2 Cと近似的に表現されるMoの炭ケイ化物とを含み、残部が主として炭化ケイ素よりなる易加工性高温用複合材料。
- 請求項1に記載の複合材料を製造する方法であって、炭化ケイ素と炭素粉を所定の割合に混合した混合粉末によりプリフォームを成型し、このプリフォーム成型体に、融点以上の温度に加熱溶融したMoの炭ケイ化物を溶浸させ、それを冷却固化して高温用複合材料を得ることを特徴とする易加工性高温用複合材料の製造方法。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06412898A JP3543105B2 (ja) | 1998-02-26 | 1998-02-26 | 易加工性高温用複合材料およびその製造方法 |
US09/164,367 US6107225A (en) | 1997-10-23 | 1998-10-01 | High-temperature ceramics-based composite material and its manufacturing process |
Applications Claiming Priority (1)
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