JP3542063B2 - 液封マウント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用エンジンマウント等に使用される液封マウントに関する。
【0002】
【従来の技術】
特公昭62−23178号には、振動源側へ取付けられる第1の支持部材と、車体側へ取付けられる筒型の第2の支持部材と、これら両支持部材間に設けられる円錐形のゴム体とにより内部に緩衝液を収容する液室を形成し、このゴム体の一部に薄肉部を設け、さらに第1の支持部材から第2の支持部材内へ突出する円板状部材を設け、その外周部と第2の支持部材内壁との間に環状の通路を形成しながら第2の支持部材内を2室に区画し、かつ第2の支持部材底部にダイヤフラムを設けた液封マウントが示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構造によれば、流動抵抗による振動の減衰を目的とするため、せいぜい数10Hz程度の振動に対応できるだけであり、100〜500Hz程度の中周波領域及び高周波領域(500〜1000Hz)においては逆に高動バネになってしまう。
【0004】
一方、液室のゴム壁にこのような薄肉部を設けず、周方向へ一様な肉厚に形成し、かつ振動入力側に接続して液室内へ突出する円板状の部材を設けることにより、中周波領域における低動バネ化を実現するものも知られている。図3で従来例として示すものはこのような構造における動バネ特性の周波数に対する変化を示している。このような液封マウントにおいては、円板状の部材が中周波デバイスとして作用し、周囲のゴム壁との間隙における液体の流動によって、中周波領域の特定周波数で液柱共振し、これによって極小値aを生じる。
【0005】
しかし、この液柱共振により中周波領域では低動バネになるが、その後の反動によるピークbに見られるように高周波領域側では高動バネになってしまう。一方、近年は中周波領域のみならず高周波領域においても、動バネ特性を低くして幅広い周波数域で低動バネを実現することが望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の液封マウントに係る第1の発明は、振動源側へ取付けられる第1の支持部材と、車体側へ取付けられる第2の支持部材と、これらの間に設けられる略円錘状の弾性部材とにより、弾性部材を壁の一部とする液室を形成し、この液室内を仕切壁により主室と副室に区画するとともに、これら主室と副室を常時連通するオリフィス通路とを仕切壁に形成した液封マウントにおいて、第1の支持部材へ取付けられて主液室内へ突出し、弾性部材の円錐部内壁との間に流動空間を形成することにより中高周波成分を吸収するための中高周波デバイスを備えるとともに、
弾性部材における円錐部の一部に中周波領域(100〜500Hz)の振動入力で膜共振を発生して中周波領域の動バネ特性に極小値を与える薄肉部を設け、
さらにこの薄肉部により前記中高周波デバイスとの間隙に液柱共振を発生させて高周波領域(500〜1000Hz)の動バネ特性に極小値を与えることにより中高周波領域を低動バネ化することを特徴とする。
【0007】
ここで、膜共振とは、弾性部材の薄肉部が液室内の液体流動によってばね性をもって弾性変形する際に生じる弾性膜としての共振現象をいう。また、本願発明における中周波領域とは、一般的な中周波領域(40〜500Hz)のうち特に100〜500Hzの範囲をいうものとする。
【0008】
このとき、前記薄肉部を複数設けるとともにそれぞれを対称位置に同一形状で設けることもできる。
【0009】
また、前記薄肉部を複数設けるとともにそれぞれを対称位置に異なる形状で設けることもできる。
【0010】
第2の発明は上記第1の発明において、前記仕切壁を液室の内圧変化に応じて動バネ特性が変化する弾性仕切壁とすることもできる。
【0011】
【発明の効果】
第1の発明によれば、図3の特性曲線▲1▼に示すように、中高周波領域の振動入力に対し、まず中周波領域で弾性部材の薄肉部が膜共振を生じ、動バネ特性の極小値Aを与える。また、高周波領域で中高周波デバイスと薄肉部との間隙における液体流動に伴う液柱共振により動バネ特性の極小値Bを与える。
【0012】
したがって、中周波領域及び高周波領域のそれぞれで動バネ特性を低下させることができ、中高周波領域の広範囲で低動バネを実現できる。
【0013】
このとき、薄肉部を複数設けるとともにそれぞれを対称位置に同一形状で設けると、特性曲線▲1▼で示すように、極小値Aを単一に与えることができる。
【0014】
また、薄肉部を複数設けるとともにそれぞれを対称位置に異なる形状で設けると、特性曲線▲2▼で示すように、膜共振の極小値を複数のC,Dとして与えることもできる。
【0015】
第2の発明によれば、仕切壁を液室の内圧変化に応じて動バネ特性が変化する弾性仕切壁で構成することにより、弾性仕切壁の弾性変形による内圧吸収に加えて、弾性仕切壁自体も周波数に対して動バネ特性を変化させかつ固有の共振周波数で膜共振するので、これを第1の発明における弾性部材の薄肉部と中高周波デバイスを有する構造に組合せることにより、弾性仕切壁及び薄肉部における各膜共振と中高周波デバイスによる液柱共振が複合され、図3の特性曲線▲3▼に示すように、各極小値及びピークがならされ、かつ全体の低動バネ化がより一層顕著になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明の第1実施例に係るエンジンマウントの全断面図(図2の1−1線方向に沿う断面図)、図2は弾性部材の概略平面図、図3はその動バネ特性を示すため縦軸に動バネ、横軸に周波数にしたグラフである。
【0017】
図1において、このエンジンマウントは、振動源であるエンジン側へ取付けられる第1の支持部材1と、車体側へ取付けられる第2の支持部材2と、これらの間に設けられる弾性部材3を備えている。
【0018】
第1の支持部材1は、主たる振動の入力方向Xと平行に第2の支持部材2の内部へ向って延出する軸状をなしている。弾性部材3は、ゴムやエラストマーなど適宜の弾性材料から形成され、略円錐状をなす円錐部4と筒状部5が一体に形成されている。
【0019】
円錐部4の内壁には軸対称位置に一対の同一形状をなす凹部6が形成され、この凹部6部分の円錐部4が薄肉部7になっている。なお凹部6は筒状部5の内面まで連続して形成されている。
【0020】
筒状部5は、第2の支持部材2の筒状部8内面へ一体化され、かつ筒状部8内に固定されたダイアフラム9と弾性部材3により内部に液室を形成している。
【0021】
この液室はダイアフラム9より内側に設けられた仕切部材10により、第1の支持部材1側の主液室11とダイアフラム9側の副液室12に区画され、仕切部材10とダイアフラム9の周縁部13との間に形成されたオリフィス通路14により連通されている。
【0022】
オリフィス通路14は仕切部材10に形成された入り口15で主液室11と連通し、弾性部材3に形成された出口16で副液室12と連通している。
【0023】
第1の支持部材1は弾性部材3の中心に沿って長く延び、その一端は主液室11内へ突出し、ここに略カップ状の中高周波デバイス17がカシメ固定されている。中高周波デバイス17は第1の支持部材1の軸線方向から見た形状が円形になっている。
【0024】
中高周波デバイス17と円錐部4内面との間には、所定のオリフィス間隙18が形成され、高周波領域の振動入力に対して液柱共振により吸収するようになっている。
【0025】
また、薄肉部7は、凹部6の大きさや深さを調整して、膜厚並びに面積を変化させることにより、特定の中周波領域の振動入力に対して膜共振により振動を吸収するようになっている。
【0026】
次に、本実施例態の作用を説明する。図3において、特性曲線▲1▼として示すように、中周波領域の振動入力があると、薄肉部7が膜共振を生じ、予め設定された特定周波数にて極小値Aとなる。
【0027】
さらに、高周波領域の振動入力があると、薄肉部7と円錐部4の内面間のオリフィス間隙18における液柱共振により特定周波数にて極小値Bとなる。
【0028】
その結果、中高周波領域において、2つの極小値A、Bが形成され、このような配慮を欠く従来例(仮想線)に対して動バネ特性を低くして著しく低動バネを実現させる。なお、両極小値ABの間に膜共振Aの反動による動バネ共振ピークP1が形成される。
【0029】
図中の特性曲線▲2▼は第2実施例に係り、この実施例では図2の薄肉部7の一方のみに破線で示したように、深い凹部19を形成することにより、さらに肉厚を薄くした薄肉強調部19aを設け、凹部6による薄肉部7と、深い凹部19による薄肉強調部19aとを形状が互いに異なる非対称の薄肉部とした例である。このようにすると、薄肉部7と薄肉強調部19aの膜共振周波数が異なるため、中周領域にCDなる2つの極小値が生じ、より低動バネ化を実現できる。
【0030】
図4は第3実施例を示し、第1実施例におけるエンジンマウントの下部に弾性仕切壁を設けたものである。なお、本実施例は、第1実施例の一部を変更しただけのものであるから、共通部には共通符号を用いかつできるだけ重複部分の説明は省略し、説明省略部分は前実施例の相当部に関する説明を援用するものとする。 リング状をなす仕切部材10の中央部に形成された穴30にゴム等の弾性膜からなる弾性仕切壁31を臨ませてある。弾性仕切壁31の底部側周囲は一体の厚肉部32をなし、その底部には弾性仕切壁31の変形に応じて変形する脚部33が一体に形成されている。
【0031】
穴30に臨む弾性仕切壁31の部分は厚肉部32に対して薄肉部となっており、かつばね性を有することにより一種のゴムバネとして機能し、主液室11の内圧変化に応じて弾性変形するとともに、膜共振するようになっている。
【0032】
この脚部33は、下部支持部材34と一体に形成された壁部35へ当接し、弾性仕切壁31の変形に非線形のばね特性を与えている。下部支持部材34は厚肉部32の外周側底部を支持する樹脂製部材であり、その内周側から略直角に上方へ屈曲して壁部35が形成されている。壁部35は厚肉部32の底部に形成されたリング溝36内へ嵌合しており、このリング溝36により脚部33の壁部35へ当接する側が他の厚肉部32から分離されて自由に可動になっている。
【0033】
図中の符号9はダイアフラム、14は厚肉部32の肉厚部内を周方向に形成され、主液室11と副液室12を連通している。1aは鍛造品である第1の支持部材1の周囲へ一体化された樹脂ブラケットである。
【0034】
本実施例によれば、図3の特性曲線3(丸付数字の3で示す)に示すように、弾性仕切壁31はそれ自体の弾性変形により主液室11の内圧吸収を行うので、中周波領域において動バネ定数が特性曲線1(丸付数字の1で示す)と比べてK分だけ下がる。そのうえ、弾性仕切壁31は主液室11内の液体流動により膜共振を行う。
【0035】
この弾性仕切壁31による膜共振が、円錐部4における薄肉部7の膜共振及び中高周波デバイス17による液柱共振と複合されるため、特性曲線▲1▼に見られた極小値AB及びその間の動バネピークがならされてなだらかになり、ほぼ全体をさらに著しく低動バネ化する。
【0036】
なお、図中の動バネピークP2は、本実施例の弾性仕切壁31が本来複数の周波数で膜共振するものであるため、そのうちの一つによって生じ、かつ中高周波デバイス17による液柱共振でなめらかにされずに残った部分であり、特性曲線▲1▼等よりも中周波領域で若干高動バネになるが、この程度は全体の低動バネ化において十分に許容される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1及び第2実施例に係るエンジンマウントの全断面図
【図2】弾性部材の概略平面図
【図3】その動バネ特性を示すグラフ
【図4】第3実施例に係る図1に相当する図
【符号の説明】
1:第1の支持部材、2:第2の支持部材、3:弾性部材、4:円錐部、7:薄肉部、10:仕切部材、14:オリフィス通路、17:中高周波デバイス、21:切り欠き部、31:弾性仕切壁
Claims (4)
- 振動源側へ取付けられる第1の支持部材と、車体側へ取付けられる第2の支持部材と、これらの間に設けられる略円錘状の弾性部材とにより、弾性部材を壁の一部とする液室を形成し、この液室内を仕切壁により主室と副室に区画するとともに、これら主室と副室を常時連通するオリフィス通路とを仕切壁に形成した液封マウントにおいて、
主液室内へ突出する第1の支持部材へ取付けられて弾性部材の円錐部内壁との間に流動空間を形成することにより中高周波成分を吸収するための中高周波デバイスを備えるとともに、
弾性部材における円錐部の一部に中周波領域(100〜500Hz)の振動入力で膜共振を発生して中周波領域の動バネ特性に極小値を与える薄肉部を設け、
さらにこの薄肉部により前記中高周波デバイスとの間隙に液柱共振を発生させて高周波領域(500〜1000Hz)の動バネ特性に極小値を与えることにより中高周波領域を低動バネ化することを特徴とする液封マウント。 - 前記薄肉部を複数設けるとともにそれぞれを対称位置に同一形状で設けたことを特徴とする請求項1記載の液封マウント。
- 前記薄肉部を複数設けるとともにそれぞれを対称位置に異なる形状で設けたことを特徴とする請求項1記載の液封マウント。
求項1記載の液封マウント。 - 前記仕切壁を前記主液室の内圧変化に応じて動バネ特性が変化する弾性仕切壁としたことを特徴とする請求項1記載の液封マウント。
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