JP3541795B2 - 自動車用白熱電球 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、自動車のヘッドランプに利用される自動車用白熱電球に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のヘッドランプは、走行中、前方領域を単に照明するだけではなく、視認性を良くする必要があり、高い色温度の光で前方領域を照明することが望まれている。
【0003】
このような要求に応えるために、従来、自動車用白熱電球は、内部にフィラメントを有する透明な発光管の外表面に、SiO2よりなる低屈折率層と、TiO2よりなる高屈折率層を、交互に複数層積層することにより、多層膜を形成し、色温度を高めるために寄与する青色光(波長400〜500nm)を透過し、色温度が低くなる原因である赤色光(波長550〜750nm)を反射するようになっていた。
このような自動車用白熱電球によれば、3600K以上の高色温度の放射光を得ることができるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような自動車用白熱電球では、低屈折率層と高屈折率層を交互に複数層積層しなければならず、低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの膜厚を制御することは、非常に難しく、各膜が設計上の膜厚よりわずかに厚かったり薄かったりしただけでも、複数層積層することにより、出来上がった多層膜の性能が大幅に変わり、透過あるいは反射する波長範囲が大きくずれてしまい、高色温度の放射光を得ることができなくなる、という問題があった。
【0005】
また、このような問題を解消するために、各膜の膜厚を正確に制御しなければならず、多層膜の製造が極めて複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、簡単な製造方法でありながらも、確実に高色温度の光が放射される自動車用白熱電球を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の自動車用白熱電球は、赤色光を吸収する手段を有するガラス製の発光管内にフィラメントが配置され、当該発光管の外面に屈折率(n)が1.8以上であって、光学膜厚(nd)が200〜250nmである高屈折率単層膜が形成されていることを特徴とする自動車用白熱電球。
【0008】
請求項2に記載の自動車用白熱電球は、請求項1に記載の自動車用白熱電球であって、特に、前記赤色光を吸収する手段は、発光管の外面および/または内面に形成された赤色光吸収膜であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の自動車用白熱電球は、請求項1に記載の白熱電球であって、特に、前記赤色光を吸収する手段は、発光管が赤色光を吸収するガラスよりなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の自動車用白熱電球と断面図である。
自動車用白熱電球1A(以下、単に、白熱電球とも呼ぶ)は、発光管1が透光性の硬質ガラス或いは石英ガラスよりなり、その一端には封止部11が形成され、他端には排気管残部12が形成されている。この発光管1の内部には、その管軸方向と直交する方向に沿ってコイル状のフィラメント2が配置されている。このフィラメント2の両端にはリード棒3が接続されている。
【0011】
そして、発光管1の外表面には、赤色光を吸収する手段である赤色光吸収膜4が形成されている。
この赤色光吸収膜4は、鉄、コバルト、銅等を含むSiO2ガラス膜、或いは、CoO―Al23系結晶質膜であり、その厚みは約1〜20μmである。なお、赤色光吸収膜4は発光管1の内面に形成しても良い。
このように赤色光吸収膜4を設けることにより、白熱電球1Aから放射される光のうち波長約550〜700nmの赤色成分の大部分をこの赤色光吸収膜4で吸収するものである。
【0012】
図2は、本発明の他の実施例を示す断面図であり、発光管1’は、発光管自体に赤色光を吸収するための手段であるコバルト、ネオジウム、2価の鉄等など遷移金属をドープしたものであり、つまり、発光管1’自体が赤色光を吸収するガラスからなるものである。
なお、図1と同一符号は、同一部分を示すため説明は省略する。
また、赤色光を吸収する手段を設ける理由は、後段で詳細に説明する。
【0013】
そして、図1、図2に示すように、発光管1の外面に、高屈折率単層膜5が形成されている。
この高屈折率単層膜5は、例えば、TiO2、Ta25、Nb25、ZrO2よりなる単層膜である。
【0014】
次に、この高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)と、光との関係を理論的に説明する。
図3は、高屈折率単層膜として、TiO2の単層膜と反射率を示すデータ図であり、縦軸に完全反射率を100%としたときの相対反射率、横軸に光の波長を示すものである。
図3には、高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)を185nm、200nm、225nm、250nm、265nmと変えた場合の反射率を示すものであり、185nmの場合のデータをグラフa、200nmの場合のデータをグラフb、225nmの場合のデータをグラフc、250nmの場合のデータをグラフd、265nmの場合のデータをグラフeで示す。
【0015】
図3からわかるように、高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)が大きくなるにつれて、反射率が最も低く谷になり逆に透過率が最も高くなるピーク値(反射率最低ピーク値)が、長波長側にシフトしていくことがわかる。
つまり、光学膜厚(nd)が200nmより小さい場合、反射率最低ピーク値が青色光の波長領域である400〜500nmの範囲に入らず、400nm以下の所に位置することになり、色温度を高めるために寄与する400〜500nmの青色光の一部が、発光管内に反射して戻され発光管外に放射されないので、白熱電球から放射される光の色温度を高くすることができない。
【0016】
一方、光学膜厚(nd)が250nmより大きい場合、反射率最低ピーク値が青色光の波長領域である400〜500nmの範囲に入らず、500nm以上の所に位置することになり、色温度を高めるために寄与する400〜500nmの青色光の多くが、発光管内に反射して戻され発光管外に放射されず、加えて、色温度を低くする原因である550〜750nmの赤色光の多くが反射されずに逆に発光管を透過するので、白熱電球から放射される光の色温度が低くなる。
【0017】
この結果から、高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)が、200〜250nmであれば、色温度を高めるために寄与する400〜500nmの青色光の反射率を低くすることができ、青色光が良好に発光管を透過することになり、加えて、色温度を低くする要因である550〜750nmの赤色光の反射率が高く赤色光を良好に発光管内に反射して戻すことができるので、白熱電球から放射される光の色温度を高くすることができる。
【0018】
なお、Ta25、Nb25、ZrO2等他の高屈折率単層膜の場合でも、高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)が、200〜250nmの範囲であれば、同様の作用効果を奏するものである。
【0019】
次に、高屈折率単層膜の屈折率(n)と、光との関係を理論的に説明する。
図4は、高屈折率単層膜の屈折率(n)と反射率を示すデータ図であり、縦軸に完全反射率を100%としたときの相対反射率、横軸に光の波長を示すものである。
図4には、高屈折率単層膜の屈折率(n)を「1.7」、「1.8」、「2.0」、「2.2」、「2.4」と変えた場合の反射率を示すものであり、屈折率(n)が「1.7」の場合のデータをグラフa、屈折率(n)が「1.8」の場合のデータをグラフb、屈折率(n)が「2.0」の場合のデータをグラフc、屈折率(n)が「2.2」の場合のデータをグラフd、屈折率(n)が「2.4」の場合のデータをグラフeで示す。
なお、それぞれの高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)は、全て225nmのものを使用した。
【0020】
図4からわかるように、高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)が全て225nmと一定であるため反射率最低ピーク値は、450nmの位置に存在するものであり、屈折率(n)が小さくなるにつれて、色温度を低くする原因となる550〜750nmの赤色光の反射率が小さくなっていることがわかる。
つまり、屈折率(n)が小さくなると、550〜750nmの赤色光の反射率が小さくなり、フィラメントから放射された赤色光を発光管内に反射して戻す割合が小さくなり、言い換えれば、フィラメントから放射された赤色光が発光管を透過して発光管外に放射される割合が大きくなり、白熱電球から放射される光の色温度が低くなってしまう。
【0021】
このような現象のもと、屈折率(n)が1.8以上であれば、色温度を低くする要因である550〜750nmの赤色光の反射率が高く赤色光を良好に発光管内に反射して戻すことができるので、白熱電球から放射される光の色温度を高くすることができる。
【0022】
なお、Ta25、Nb25、ZrO2等他の高屈折率単層膜の場合でも、高屈折率単層膜の屈折率(d)が、1.8以上であれば、同様の作用効果を奏するものである。
【0023】
このように、高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)と屈折率(n)の最適条件を理論的に導き出すことができたが、前述した光学膜厚(nd)と屈折率(n)の最適条件を満たす高屈折率単層膜を、実際の白熱ランプに被覆した場合に、赤色光を吸収する手段を有していない透明な発光管に被覆しただけでは、発光管から放射される光の色温度を極めて高い色温度にまで上げることができない。
【0024】
この理由は、フィラメントから放射された光のうち赤色光は、高屈折率単層膜で反射され発光管内に戻されるが、戻された赤色光はフィラメントをすり抜け反対側の高屈折率単層膜に入射するが、その一部は高屈折率単層膜を透過し、その残りが反射されて再びフィラメントの方向に反射される。このような現象が何回も繰り返されるうちに赤色光のほとんどが発光管を透過してしまうからである。
【0025】
そのため、発光管の外面および/または内面に鉄等を含むSiO2ガラス膜を形成したり、発光管自体にコバルト等の遷移金属をドープしたりして、発光管に赤色光を吸収する手段を設ける必要がある。
【0026】
これは、図3に示すように、高屈折率単層膜は、膜厚を変えたとしても、どの波長領域においても100%光を反射するものではなく、図3のグラフに示すように、特に、550〜750nmの波長領域の光は、約8〜34%程度しか反射しないものである。
つまり、高屈折率単層膜だけでは、550〜750nmの赤色光を非常に高い割合で発光管内に反射して戻すことができない。この結果、550〜750nmの赤色光の一部が発光管を透過して、発光管外に放射されることになる。
また、高屈折率単層膜で反射して発光管内に戻された550〜750nmの赤色光においても、反対側の発光管に入射すると、そのうちの約8〜34%程度しか反射されず、残りの赤色光が発光管を透過して、発光管外に放射されることになる。
つまり、高屈折率単層膜だけでは、色温度を低くする要因である550〜750nmの赤色光が発光管外に放射されることになる。
【0027】
この現象を解決するために、色温度を低くする原因である550〜750nmの赤色光が発光管外に放射されることを高い割合で防止するために、高屈折率単層膜に光が入射する前に、発光管に形成された赤色光を吸収する手段によって、予め550〜750nmの赤色光を高い割合で吸収しておくものである。そして、赤色光を吸収する手段を透過した一部の550〜750nmの赤色光においては、高屈折率単層膜で反射して発光管内に反射して戻すものである。
さらに、高屈折率単層膜で反射して発光管内に戻る550〜750nmの赤色光は、高屈折率単層膜の下方に形成された赤色光を吸収する手段で、再び吸収されるので、色温度を低くする要因である550〜750nmの赤色光が効率よく赤色光を吸収する手段によって吸収され、結果的に、赤色光が発光管外に放射されることを高い割合で防止することができる。
【0028】
このようなことから、発光管に赤色光を吸収する手段を設け、この発光管の外面に光学膜厚(nd)が200〜250nmの範囲であって屈折率(n)が1.8以上の高屈折率単層膜を形成することにより、発光管に設けられた赤色光を吸収する手段によって、フィラメントから放射される光のうち、550〜750nmの赤色光を効率よく吸収し、この赤色光を吸収する手段の上に形成された高屈折率単層膜によって、色温度を高めるために寄与する400〜500nmの青色光の反射率を低く抑え、よって、青色光が良好に発光管を透過することになり、加えて、この高屈折率単層膜によって、赤色光を吸収する手段で吸収されず透過した色温度を低くする要因である550〜750nmの赤色光を高い割合で発光管内に反射し、赤色光吸収する手段によって反射して戻された赤色光を再び吸収することができるので、白熱電球から放射される光の色温度を極めて高くすることができる。
【0029】
次に、図1、図2に示す構造の白熱電球であって、高屈折率単層膜の屈折率(n)と光学膜厚(nd)および膜の材質を変え、さらに発光管に設けられた赤色光を吸収する手段を変えた場合の色温度を測定した実験結果を図5に示す。
なお、それぞれの白熱電球の点灯条件は、13.2V、55Wである。
【0030】
図5の結果からわかるわかるように、実施例1〜6は、発光管に赤色光を吸収する手段が設けられており、さらに、高屈折率単層膜の屈折率(n)が1.8以上であり、光学膜厚(nd)が200〜250nmの範囲にあるので、白熱電球から放射される光の色温度が3600K以上となり極めて高い色温度になっている。
一方、比較例2、3、4、7、8、9、12、13、14は、高屈折率単層膜の屈折率(n)が1.8以上であり、光学膜厚(nd)が200〜250nmの範囲に入っているが、発光管に赤色光を吸収する手段が設けられていないので、高屈折率多層膜が同じ物質である他の比較例と比べ、色温度は高くなっているものの、極めて高い色温度までは、達していないことがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の自動車用白熱電球によれば、発光管に赤色光を吸収する手段を設け、この発光管の外面に光学膜厚(nd)が200〜250nmの範囲であって屈折率(n)が1.8以上の高屈折率単層膜を形成することにより、発光管に設けられた赤色光を吸収する手段によって、フィラメントから放射される光のうち、550〜750nmの赤色光を効率よく吸収し、この赤色光を吸収する手段の上に形成された高屈折率単層膜によって、色温度を高めるために寄与する400〜500nmの青色光の反射率を低く抑え、よって、青色光が良好に発光管を透過することになり、加えて、この高屈折率単層膜によって、赤色光を吸収する手段で吸収されず透過した色温度を低くする要因である550〜750nmの赤色光を高い割合で発光管内に反射し、赤色光吸収する手段によって反射して戻された赤色光を再び吸収することができるので、白熱電球から放射される光の色温度を極めて高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用白熱電球の断面説明図である。
【図2】本発明の他の実施例の自動車用白熱電球の断面説明図である。
【図3】高屈折率単層膜の光学膜厚(nd)と、フィラメントから放射される光の関係を説明する実験データ説明図である。
【図4】高屈折率単層膜の屈折率(n)と、フィラメントから放射される光の関係を説明する実験データ説明図である。
【図5】高屈折率単層膜の屈折率(n)と光学膜厚(nd)および膜の材質を変え、さらに発光管に設けられて赤色光を吸収する手段を変えた場合の色温度を測定した実験データ説明図である。
【符号の説明】
1A 白熱電球
1B 白熱電球
1 発光管
1’ 赤色光を吸収する発光管
11 封止部
12 排気管残部
2 フィラメント
3 リード棒
4 赤色光吸収膜

Claims (3)

  1. 赤色光を吸収する手段を有するガラス製の発光管内にフィラメントが配置され、当該発光管の外面に屈折率(n)が1.8以上であって光学膜厚(nd)が200〜250nmである高屈折率単層膜が形成されていることを特徴とする自動車用白熱電球。
  2. 前記赤色光を吸収する手段は、発光管の外面および/または内面に形成された赤色光吸収膜であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用白熱電球。
  3. 前記赤色光を吸収する手段は、発光管が赤色光を吸収するガラスよりなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用白熱電球。
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