JP3541583B2 - 連続鋳造鋳片の幅変更方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造中に鋳型短辺及びサポートロールを移動させ、鋳片幅を拡大又は縮小する鋳片幅変更方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造法においては、稼働率の向上及び鋳片歩留りの向上等の要請から、鋳型への鋳込を停止することなく鋳片幅の拡大及び縮小を行う方法が提案され積極的に実施されている。特に、最近の小ロット多品種への製品構成の移行と、異鋼種連々鋳技術の確立等の連続鋳造操業技術の進歩とにより、異なった成分、異なった鋳片幅の鋳片が同一連続鋳造中に含まれる頻度が増大し、連続鋳造中に鋳片幅を変更する技術は益々重要さを増している。
【0003】
ところで一般的に連続鋳造用鋳型は、相対する鋳型長辺と、この鋳型長辺内を摺動自在に内装された相対する鋳型短辺とにより構成され、そして鋳型短辺直下には鋳片短辺のバルジングを防止するため短辺支持装置が設置されており、鋳片幅の変更は鋳型短辺と短辺支持装置とを鋳造中移動させ実施している。尚、短辺支持装置は、クーリングプレートと呼ばれる支持板にて支持する型式と、複数本のサポートロールと呼ばれるロールにて支持する型式とに分別される。
【0004】
鋳片表面疵やブレークアウト等の操業異常を防止し、幅変更を安定して行うためには、鋳片凝固シェルと鋳型短辺面及び短辺支持装置の当接面との間に間隙(以下、「エアーギャップ」と記す)を発生させないことと、鋳型短辺又は短辺支持装置の移動により鋳片に過大な圧縮変形を発生させないことの2点が必要である。そのため鋳片幅変更時におけるエアーギャップや過大な圧縮変形の発生を防止するための技術が数多く提案されている。
【0005】
特公昭63−40622号公報(以下、「先行技術1」と記す)では、図6に示すように、鋳型短辺に上部押圧シリンダーと下部押圧シリンダーを設け、鋳型短辺の移動期間を区間1、区間2、及び区間3の3つの区間に分け、図7に示すように各区間で、2つの押圧シリンダーを独立に作動させて鋳片幅を変更することを開示している。尚、図7は上部押圧シリンダーと下部押圧シリンダーの移動速度の例を模式的に示すもので、縦軸は移動速度、横軸は時間で、実線は上部押圧シリンダー、破線は下部押圧シリンダーの移動速度を示している。
【0006】
図6及び図7にて先行技術1による鋳片幅縮小方法を以下に説明する。
区間1では上部押圧シリンダーを移動速度V11として移動を開始し、同時に下部押圧シリンダーを初期移動速度V20にて移動を開始し加速度α2 にて増速して、鋳型短辺テーパーが定常傾斜姿勢の傾斜角度θ0 から、幅変更時傾斜姿勢の傾斜角度θになるまでテーパー変更を行う。そして、テーパー変更終了後、上部押圧シリンダー及び下部押圧シリンダー共に移動速度Vm とし、鋳型短辺が平行移動する区間2に移行する。所定位置まで移動した後、区間3に移行し、下部押圧シリンダーをやや減速して移動速度V22にて移動させ、上部押圧シリンダーは移動速度V12から漸次減速度α1 にて減速し、鋳型短辺テーパーが定常傾斜姿勢の傾斜角度θ0 になるまで鋳型テーパーを復帰し、停止して幅変更を終了する。
【0007】
尚、鋳型短辺テーパーは鉛直線からの傾斜角度で示し、定常傾斜姿勢での鋳型短辺テーパーは傾斜角度θ0 だけ鋳型短辺上部側が開いた状態で、幅変更時傾斜姿勢での鋳型短辺テーパーは逆に傾斜角度θだけ鋳型短辺下部側が開いた状態である。
【0008】
そして幅変更時傾斜姿勢での傾斜角度θを(2)式で定めている。但し(2)式においてKは押し込み係数(0≦K≦1)、Vm は区間2における上部及び下部押圧シリンダーの移動速度、Vc は区間2における鋳片引抜き速度であり、θの単位はラジアン(以下ラジアンを「rad」と記す)である。尚、本願では(2)式右辺第2項の〔K×(Vm /Vc )〕の項をテーパー変更量ΔHと定義する。このように、幅変更時傾斜姿勢での傾斜角度θを定常傾斜姿勢の傾斜角度θ 0 からテーパー変更量ΔHを減じた値として定めている。
【0009】
【0010】
先行技術1によれば、押し込み係数Kを1とすると区間2における凝固シェルにかかる圧縮変形力は零となるが、区間3において鋳片短辺凝固シェルと鋳型短辺面との間にエアーギャップが発生して好ましくなく、従って、鋳片引抜き速度が1.6m/min付近では押し込み係数Kを0.7〜0.8とすると、エアーギャップの発生が防止でき、安定した幅変更が可能であるとしている。
【0011】
又、幅変更中の短辺支持装置の移動方法として、特開昭57−106450号公報(以下、「先行技術2」と記す)には、支持板型式の短辺支持装置を用い、短辺支持装置の鋳片との当接面テーパーを常時鋳片短辺と同じとし、且つ鋳型短辺に追従して当接面を移動させることにより、短辺支持装置を鋳片に密に当接させるか或いは適宜間隔を形成して保持する方法が開示されている。
【0012】
特開昭59−178160号公報(以下、「先行技術3」と記す)には、実質的に鉛直な当接面を有し、鋳造方向で複数のブロックに分割され、且つ各ブロックは1つの駆動装置で移動する支持板型式及びサポートロール型式の短辺支持装置を用い、幅変更によるテーパー状鋳片の各ブロックに対する鋳片幅を検出し、しかる後短辺支持装置の各ブロックを鋳片短辺側との間に一定の間隔を維持するように鋳片の幅方向に移動させ、鋳片がバルジングにより幅方向に張り出した場合に初めて当接面にて支持する方法が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
先行技術1に示したテーパー変更量ΔHは、鋳型短辺移動速度Vmと鋳片引抜き速度Vcとの関数としているのみで、鋳片の単位時間当たりの凝固収縮量が考慮されていない。そのため、押し込み係数Kを例えば0.8とした一定の条件で、鋳片引抜き速度が0.5m/minから3.0m/min、及び鋳片幅が700mm〜1650mmである広範囲の鋳造条件で幅変更を実施した場合、鋳片引抜き速度が2.0m/min以上の高速域での幅縮小時には、鋳型短辺下部の鋳片への押し付け力が大きくなり、鋳片に作用する圧縮変形が大きくなり過ぎ、又、逆に鋳片引抜き速度が1.0m/min以下の低速域での幅拡大時には、鋳片短辺凝固シェルと鋳型短辺面との間に大きなエアーギャップが発生し、どちらの場合も鋳片表面の割れ疵やブレークアウト等の操業トラブルの懸念があった。
【0014】
又、前述の短辺支持装置の制御方法には以下の問題がある。
先行技術2では幅変更中に短辺支持装置の当接面テーパーを鋳片テーパーと同一としているが、このためには短辺支持装置には鋳型短辺と同様上下2つの駆動装置が必要となり、従って、設備費が高く又設備保全上にも問題がある。
【0015】
先行技術3では、鋳片短辺をバルジングさせ幅方向に張り出させて支持するものであり、鋳片引抜き速度が2.0m/min以上の高速域では、凝固シェル厚みが薄く僅かなバルジングでも鋳片に割れが生じるので好ましくない。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは幅変更時傾斜姿勢での傾斜角度を鋳片収縮量に依存して変化するようにし、又、1つの駆動装置で移動する短辺支持装置の幅変更方法を改善し、エアーギャップを最小とし且つ短辺支持装置による過度の押し込みを防止した鋳片幅変更方法を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明による連続鋳造鋳片の幅変更方法は、相対する鋳型長辺と鋳型長辺内を摺動自在に内装された相対する鋳型短辺とにより構成された鋳型と、鋳型短辺直下に設けられ且つ1つの駆動装置にて鋳片幅方向に移動する複数(n)本のサポートロールとを用い、鋳型短辺及びサポートロールを移動させ連続鋳造中に鋳片幅を拡大又は縮小する幅変更方法において、サポートロールは幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達後移動を開始し、サポートロールの移動速度を、幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、開始点が最後のサポートロール通過後は鋳型短辺下部の移動速度に追従することとし、幅変更の終了点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、幅変更の終了点が最後のサポートロールを通過後サポートロールは停止することを特徴とするものである。
【0020】
又、本願第2の発明による連続鋳造鋳片の幅変更方法は、相対する鋳型長辺と鋳型長辺内を摺動自在に内装された相対する鋳型短辺とにより構成された鋳型と、鋳型短辺直下に設けられ且つ1つの駆動装置にて鋳片幅方向に移動する複数(n)本のサポートロールとを用い、鋳型短辺テーパーを定常傾斜姿勢から幅変更時傾斜姿勢に変更させる区間1と、変更した鋳型短辺テーパーにて鋳型短辺を平行移動させる区間2と、鋳型短辺テーパーを定常傾斜姿勢に復帰させる区間3との3つの区間に分けて鋳型短辺を移動させると共に、サポートロールを移動させ連続鋳造中に鋳片幅を拡大又は縮小する幅変更方法において、幅変更時傾斜姿勢での鋳型短辺テーパーを(1)式で示すテーパー変更量ΔHから求めると共に、サポートロールは幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達後移動を開始し、サポートロールの移動速度を、幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、開始点が最後のサポートロール通過後は鋳型短辺下部の移動速度に追従することとし、幅変更の終了点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、幅変更の終了点が最後のサポートロールを通過後サポートロールは停止することを特徴とするものである。但し、(1)式において、ΔH;テーパー変更量、k 1 ,K;定数、W;鋳片幅、Vm;区間2での鋳型短辺移動速度、Vc;区間2での鋳片引抜き速度である。
【0021】
ΔH=k1×(W/Vc)+K×(Vm/Vc)…(1)
【0022】
幅縮小時を例として、幅変更時の区間2における鋳型短辺と短辺凝固シェルとの位置関係を模式的に図5に示す。図5において、従来の(2)式によるテーパー変更方法では、メニスカス部(P点)にあった短辺凝固シュルが引抜き速度Vcでdt時間後、鋳型下端部まで引抜かれてB点に達し、そして、このdt時間内に移動速度Vmで平行移動する鋳型短辺の下端がA点からB点に移動するように、幅変更時傾斜姿勢での傾斜角度θが決定される。
【0023】
しかし実際には、凝固シュル自身が鋳型内で冷却されて凝固シュル温度の降下と共に収縮するため、図5に示すδ分だけのエアーギャップが発生する。このδ分だけのエアーギャップを防止するためには、幅変更時傾斜姿勢での傾斜角度θをδ分だけ傾斜を強める必要がある。
【0024】
このように幅変更時において、鋳片引抜き速度Vcと鋳型短辺移動速度Vmの他に、鋳片幅収縮量に見合うテーパー変更を考慮しなければならない。
【0025】
この収縮量δは、鋳片幅Wが大きい程大きく、又、鋳片引抜き速度Vc が速い程小さく(鋳片引抜き速度Vc が速い程鋳型内を通過する時間が短く、且つ単位時間当たりの凝固収縮量は一定とみなされるので)、従って、δは(3)式で示すことができる。但し(3)式においてk1 は定数(0≦k1 ≦1)である。
【0026】
δ=k1 ×(W/Vc ) ………(3)
このように幅変更傾斜姿勢での傾斜角度θは、(2)式の鋳型短辺移動速度Vmと鋳片引抜き速度Vcとの比に、更に(3)式で示す収縮量δを加味する必要があり、故に、テーパー変更量ΔHは(1)式で表すことができる。
【0027】
次にサポートロールの移動方法について説明する。
実質的に鉛直な当接面を有した複数(n)本のサポートロールを1つの駆動装置で動作させる場合、幅変更開始点又は終了点が、サポートロールを通過する際にサポートロールの移動速度を鋳型短辺下部の移動速度と同一とすると、サポートロールは鋳造方向に長さを有しているため、幅を縮小された又は幅を拡大された鋳片が各サポートロールに到達する前に一括してサポートロールが移動するため、鋳造方向下方のサポートロールにおいて、幅縮小の場合は鋳片への過剰な押し込みが、又、幅拡大の場合は大きなエアーギャップが発生する。そのため、この期間のサポートロールの移動速度は、鋳型短辺下部の移動速度に比較し遅くする必要がある。
【0028】
幅変更により鋳片形状がテーパー状となった場合に、実質的に鉛直な当接面を有した複数(n)本のサポートロール全てを鋳片と当接させると押し込み量が大きくなり過ぎる。又、複数のサポートロールの内、最大の鋳片幅に該当するサポートロールのみを当接させると、他のサポートロールではエアーギャップが大きくなり過ぎる。
【0029】
本願では、幅変更開始点又は終了点がサポートロールを通過する期間のサポートロールの移動速度を、鋳型短辺下部の移動速度(この鋳型短辺下部の移動速度をVとする)に1/(n−1)を乗算した値、即ちV/(n−1)の移動速度とするので、少なくとも1つのサポートロールは鋳片を押し込み状態にあり、従って、当接しないサポートロールと鋳片短辺面とのエアーギャップを小さく抑えることができ、且つ、幅変更終了点が最後のサポートロールを通過直後に、全てのサポートロールが鋳片に等しく当接した状態が得られる。
【0030】
又、幅変更開始点が最後のサポートロールを通過してから幅変更の終了点が最初のサポートロールに到達する迄の幅変更期間は、サポートロールの移動速度を鋳型短辺下部の移動速度に追従させるので、少なくとも1つのサポートロールは常に鋳片と当接又は押し込み状態であり、当接しないサポートロールと鋳片短辺面とのエアーギャップを小さく抑えることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0032】
図1は連続鋳造機の鋳型部の概略縦断面図で、鋳型は一対の相対する鋳型長辺2と、鋳型長辺2内に内装された相対する一対の鋳型短辺1とで構成される。鋳型短辺1は、その背面側で鋳型短辺移動装置3に連結され、鋳型長辺2内を自在に摺動される。鋳型短辺移動装置3は上部移動装置4と下部移動装置5とからなり、上部移動装置4と下部移動装置5とは独立に作動し、鋳型短辺1のテーパー変更及び移動を可能としている。鋳型短辺1の直下には複数本のサポートロール6が配置され、複数本のサポートロール6は1つのサポートロール駆動装置7に連結され、サポートロール駆動装置7にて鋳片幅方向自在に移動される。鋳型短辺移動装置3とサポートロール駆動装置7とは独立に作動可能となっており、鋳型左右の鋳型短辺移動装置3、3どうし、又びサポートロール駆動装置7、7どうしとも独立に作動可能となっている。
【0033】
図示せぬタンディッシュから浸漬ノズル8を介して鋳型内に注入された溶鋼9は、鋳型内で冷却され凝固シェル10を形成して鋳型下方に引抜き速度Vcにて引き抜かれる。サポートロール6は鋳片凝固シェル10の短辺面に当接して支持している。
【0034】
本発明による幅変更における鋳型短辺1の移動は、鋳型短辺テーパーを定常傾斜姿勢から幅変更時傾斜姿勢に変更させる区間1と、変更した鋳型短辺テーパーにて鋳型短辺1を平行移動させる区間2と、鋳型短辺テーパーを定常傾斜姿勢に復帰させる区間3とに分けて順次実施する。この時、区間2における幅変更時傾斜姿勢での鋳型短辺1のテーパーは以下の手順にて決定される。
▲1▼区間2における鋳片引抜き速度Vcを決める。
▲2▼区間2における鋳型短辺1の移動速度Vmを決める。
▲3▼(1)式に鋳片引抜き速度Vc、移動速度Vm及び鋳片幅Wを代入し、テーパー変更量ΔHを算出し、定常傾斜姿勢θ0 から算出したテーパー変更量ΔHを減じて幅変更時傾斜姿勢の傾斜角度θを決める。その際、鋳型短辺1の移動速度Vmは、鋳型短辺1が浸漬ノズル側に移動する場合(幅縮小の場合)を正、逆方向(幅拡大の場合)を負とし、又、鋳片幅Wは、幅縮小の場合を正、幅拡大の場合を負として算出する。算出された傾斜角度θが正の場合は、鋳型短辺上部側が開いた状態で、負の場合は逆に鋳型短辺下部側が開いた状態である。
【0035】
尚、鋳造速度0.5m/minから3.0m/min、鋳片幅700mmから2100mmまでの広範囲の鋳造条件おいて、凝固シュル10と鋳型短辺面との間で、過剰な押し付け力も又過大なエアーギャップも発生させず、鋳片表面疵やブレークアウトのない安定操業を行うためには、k1 は0.5×10-2〜5×10-2、又、Kは0.6〜0.9の範囲が好ましい。k1 、Kが上記範囲で実施した1000回の幅変更に対して、ブレークアウトの発生は皆無であった。しかし、Kが上記範囲でもk1 が0.5×10-2未満では1000回の幅変更に対してブレークアウトが3回発生し、k1 が5×10-2を超えると1000回の幅変更に対してブレークアウトが2回発生した。従って、Kのみではなく、本発明の特徴であるk1 を正当に評価することがブレークアウトのない安定操業のために必要である。
【0036】
区間1にて、このようにして決定した幅変更時傾斜姿勢の傾斜角度θまで鋳型短辺テーパーを変更し、順次、区間2、区間3に移行して幅変更を実施する。
【0037】
図2は幅収縮時、3本のサポートロール6からなる短辺支持装置において、(a)は幅変更開始点がサポートロール6を通過する時、又、(b)は幅変更終了点がサポートロール6を通過する時の3本のサポートロール6と凝固シェル10の短辺面との位置関係を模式的に示したもので、以下にサポートロール6の動きについて説明する。尚、図2において破線で示すサポートロールは、幅変更の開始点又は終了点が最初のサポートロール(#1)に到達した時のサポートロールの位置を示したものである。
【0038】
図2に示すように、最初のサポートロール(#1)に幅変更の開始点が到達した後、3本のサポートロール6は1つのサポートロール駆動装置7にて移動を開始する。そして幅変更開始点が最後のサポートロール(#3)を通過する迄の期間のサポートロール6の移動速度を鋳型短辺下部の移動速度(この鋳型短辺下部の移動速度をVaとする)に1/(n−1)を乗算した値とする。すると図2からも明らかなように、幅変更の開始点がサポートロール6を通過する期間(dt時間)内に、最初のサポートロール(#1)位置では鋳片幅がVadtだけ減少するのに対し、サポートロール6はVadt/2だけ移動するので、幅変更開始点が#3サポートロールを通過した時点で、#2サポートロールが当接し、#3サポートロールはVadt/2だけ押し込み状態、#1サポートロールはVadt/2だけ凝固シェル10の短辺面と離れた非接触の状態となる。
【0039】
尚、鋳型短辺下部の移動速度とは厳密には鋳型短辺1の下端の移動速度を示すものであるが、現実的には、鋳型短辺移動装置3の下部移動装置5の移動速度として問題ない。
【0040】
幅変更開始点が最後のサポートロール(#3)を通過した後は、鋳型短辺下部の移動速度に追従してサポートロールを移動させる。鋳型短辺下部の移動速度に追従して移動させるには、鋳型短辺1の下端から複数のサポートロール6の鋳造方向の中心位置までの距離を引抜き速度Vcで除算した時間だけ遅らせて、鋳型短辺下部の移動速度と同一速度でサポートロール6を移動させる。この状態のサポートロール6と凝固シェル10の短辺との接触状態は、幅変更開始点が最後のサポートロール(#3)を通過した直後と同様に、#2サポートロールが当接し、#3サポートロールは押し込み状態、#1サポートロールは非接触の状態で幅変更を継続する。
【0041】
幅変更終了点が最初のサポートロール(#1)に到達した後は、サポートロール6の移動速度を鋳型短辺下部の移動速度(この鋳型短辺下部の移動速度をVbとする)に1/(n−1)を乗算した値とする。終了点がサポートロールを通過する期間(dt時間)内に、最後のサポートロール(#3)位置では鋳片幅がVbdtだけ減少するに対し、サポートロール6はVbdt/2だけ移動するので、幅変更終了点が#3サポートロールを通過した時点で、#1、#2、#3サポートロールとも均等に凝固シェル10の短辺面に当接した状態となる。
【0042】
上記のように鋳型短辺下部の移動速度に連動してサポートロール6を移動させ、幅変更を実施する。
【0043】
【実施例】
スラブ連続鋳造機における本発明による幅変更方法の実施例を説明する。使用した連続鋳造機の鋳型長さは950mmで、鋳型直下の左右には鋳型短辺下端から430mm〜910mmの範囲と、1150mm〜1630mmの範囲にそれぞれ3本のサポートロールからなる2組の短辺支持装置が設けてある。
【0044】
鋳片引抜き速度を2600mm/minとし、区間2における鋳型短辺移動速度を9.12mm/minと決め、初期スラブ幅1650mmから片側25mmずつ幅縮小し1600mmの幅に変更した。又、1650mmの鋳片幅における定常傾斜角度θ0 は8.7×10-3rad(0.50度)、1600mmの鋳片幅における定常傾斜角度θ0 は8.5×10-3rad(0.49度)である。算出にあたりk1 は1.7×10-2、Kは0.8とした。
【0045】
幅変更時傾斜姿勢の傾斜角度θを(4)式にて算出し、傾斜角度θ=−4.9×10-3rad(−0.28度)とした。
θ=θ0 −ΔH
= 8.7×10-3−(1.7×10-2×1650/2600 + 0.8×9.12/2600) …(4)
このようにして決めた鋳型短辺の上部及び下部の移動速度を図3に示す。区間1で上部移動速度は6.24mm/min、下部移動速度は1.35mm/minで、区間2は上下部移動速度共9.12mm/min、区間3は上部移動速度5.12mm/min、下部移動速度9.48mm/minとなった。
【0046】
本実施例では鋳型短辺が3区間に分割されて移動するので、2組のサポートロールは、幅変更開始点及び終了点がサポートロール内を通過する期間は鋳型短辺下部移動速度の1/2の速度で移動し、そのため合計5つの区間に分割されて移動することになる。
【0047】
図3は2組のサポートロールのうち上側の上部サポートロールの移動速度を示したもので、幅変更開始点がサポートロール内を通過する期間を区間0.5、幅変更終了点がサポートロール内を通過する期間を区間3.5として示している。この区間はサポートロールの移動速度は、鋳型短辺下部の移動速度の1/2の速度で移動する。図3は上部サポートロールの移動速度のみ示しているが、区間1、2、3における下部サポートロールは、上部サポートロールの中心位置と下部サポートロールの中心位置との距離720mmを鋳片引抜き速度2600mm/minで除算した時間だけ遅れて、上部サポートロールと同一の速度で移動している。
【0048】
図4は区間0.5及び区間3.5における2組のサポートロールの移動を模式的に示したもので、上部サポートロールに対し下部サポートロールは、上部サポートロールと下部サポートロールとの間の距離240mmを鋳片引抜き速度2600mm/minで除算した時間だけ遅れて移動する。尚、図4において上SR及び下SRは、各々上部サポートロール、下部サポートロールを表している。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、幅変更時における鋳型短辺テーパーを鋳片引抜き速度と鋳型短辺移動速度に加え、鋳片幅の収縮量に応じて変更するので、広範囲の鋳造幅及び鋳片引抜き速度において、エアーギャップ及び圧縮変形の発生のない安定した幅変更ができ、更に、幅変更の開始点及び終了点がサポートロールを通過中はサポートロールの移動速度を鋳型短辺下部の移動速度に対しサポートロールの本数に応じて減少させているので、過度のエアーギャップ及び圧縮変形が防止され、サポートロールを有する高速鋳造型連続鋳造機においても安定した幅変更が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した連続鋳造機鋳型部の概略縦断面図である。
【図2】本発明による幅縮小時において、3本のサポートロールを1組とした短辺支持装置における各サポートロールと凝固シェル短辺面との位置関係を模式的に示した図で、(a)は幅変更開始点がサポートロールを通過する時、(b)は幅変更終了点がサポートロールを通過する時を示した図である。
【図3】本発明の実施例における鋳型短辺上部移動速度及び鋳型短辺下部移動速度と上部サポートロールの移動速度との関係を示した図である。
【図4】本発明の実施例における幅変更開始点又は終了点がサポートロール内に滞在した時の、上部サポートロールと下部サポートロールとの動作を模式的に示した図である。
【図5】幅縮小時を例として、区間2における鋳型短辺と短辺凝固シェルとの位置関係を模式的に示した図である。
【図6】鋳型短辺を3つの区間に分割し移動させ幅変更を実施した従来の方法を示した図である。
【図7】従来の幅変更時の鋳型短辺移動速度を各区間で模式的に示した図である。
【符号の説明】
1;鋳型短辺
2;鋳型長辺
3;鋳型短辺移動装置
4;上部移動装置
5;下部移動装置
6;サポートロール
7;サポートロール駆動装置
8;浸漬ノズル
9;溶鋼
10;凝固シェル
Claims (2)
- 相対する鋳型長辺と鋳型長辺内を摺動自在に内装された相対する鋳型短辺とにより構成された鋳型と、鋳型短辺直下に設けられ且つ1つの駆動装置にて鋳片幅方向に移動する複数(n)本のサポートロールとを用い、鋳型短辺及びサポートロールを移動させ連続鋳造中に鋳片幅を拡大又は縮小する幅変更方法において、サポートロールは幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達後移動を開始し、サポートロールの移動速度を、幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、開始点が最後のサポートロール通過後は鋳型短辺下部の移動速度に追従することとし、幅変更の終了点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、幅変更の終了点が最後のサポートロールを通過後サポートロールは停止することを特徴とする連続鋳造鋳片の幅変更方法。
- 相対する鋳型長辺と鋳型長辺内を摺動自在に内装された相対する鋳型短辺とにより構成された鋳型と、鋳型短辺直下に設けられ且つ1つの駆動装置にて鋳片幅方向に移動する複数(n)本のサポートロールとを用い、鋳型短辺テーパーを定常傾斜姿勢から幅変更時傾斜姿勢に変更させる区間1と、変更した鋳型短辺テーパーにて鋳型短辺を平行移動させる区間2と、鋳型短辺テーパーを定常傾斜姿勢に復帰させる区間3との3つの区間に分けて鋳型短辺を移動させると共に、サポートロールを移動させ連続鋳造中に鋳片幅を拡大又は縮小する幅変更方法において、幅変更時傾斜姿勢での鋳型短辺テーパーを(1)式で示すテーパー変更量ΔHから求めると共に、サポートロールは幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達後移動を開始し、サポートロールの移動速度を、幅変更の開始点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、開始点が最後のサポートロール通過後は鋳型短辺下部の移動速度に追従することとし、幅変更の終了点が最初のサポートロールに到達し最後のサポートロールを通過する迄の期間は鋳型短辺下部の移動速度に1/(n−1)を乗算した値とし、幅変更の終了点が最後のサポートロールを通過後サポートロールは停止することを特徴とする連続鋳造鋳片の幅変更方法。
ΔH=k1×(W/Vc)+K×(Vm/Vc)…(1)
但し、(1)式における記号は以下を表すものである。
ΔH;テーパー変更量
k1 ,K;定数
W;鋳片幅
Vm ;区間2での鋳型短辺移動速度
Vc ;区間2での鋳片引抜き速度
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