JP3541201B2 - 銀含有ゾノトライト - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なゾノトライト、更に詳しくはゾノトライトの層内に、銀イオンを担持させた耐熱性、耐水性、機械的強度に優れ、しかもエチレン吸着能および抗菌性を有する新規なゾノトライトに関する。
【0002】
【従来の技術】
無機イオン交換体の最も代表的なものとしてはゼオライトがよく知られている。ゼオライトは、結晶内部のNaイオンやCa2+イオンと、水溶液中の金属陽イオンとの陽イオン交換により、多くの種類の金属を担持することができる。またその比表面積、耐熱性、耐水性、および機械的強度など優れた特性を有することから、ガス吸着分離剤、重金属含有廃水処理剤、イオン固定化剤および金属触媒の担体などに広く利用されている。
【0003】
ゼオライトはSiOとAlを主成分とする結晶性物質であり、その結晶は三次元骨格構造を形成し、規則性のある細孔を有している。組成は一般に(M,M´)O・Al・mSiO・nHOで表される。ここでMおよびM´はそれぞれ1価および2価の金属イオンであり、mはシリカの係数、nは結晶水の係数である。ゼオライトは結晶構造によってフォージャサイト属(ソーダライト属)、チャバサイト属、モルデナイト属などがある。ゼオライトの空洞や孔路中に存在している陽イオンは、他の金属イオンとイオン交換することができることから硬水軟化、金属イオンの分離などに利用されている。またゼオライトのアルカリ金属を2〜3価の金属イオン、或は水素イオンとイオン交換すると強い固体酸を形成し、石油のクラッキングをはじめ、各種のカルボニウムイオン反応の優れた触媒として利用される。ゼオライトに銀、銅或は亜鉛などを担持させたものは、ポリマーに練り込んで抗菌性を有する変敗防止包装材として食料品の分野で利用されている。特に銀担持ゼオライトは、エチレン吸着能についても優秀であることから利用価値が高い。
【0004】
しかしながら銀、銅或は亜鉛などを担持させたゼオライトは、原材料費、製造工程の複雑さなどの点から、無機材料の特徴とも言える廉価であることの条件を満たせず、非常に高価な材料となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明が解決しようとする課題は、上記銀、銅或は亜鉛担持ゼオライトに代わり得て、しかもこのゼオライトと同等程度のエチレン吸着能及び抗菌性を有し、耐熱性に優れた新規な無機材料を開発することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題は、従来全く試みられていなかったゾノトライトの層内に存在するCa2+イオンを、銀イオンと陽イオン交換法により交換担持させることにより解決される。
【0007】
本発明者は、1000℃の高温に耐え、しかも断熱性が優れているため従来は軽量保温材、不燃性建材として広く利用されている繊維状の無機化合物であるゾノトライトに着目し、層内に存在するCa2+イオンを、銀イオンと陽イオン交換させ得るのではないかという全く新しい着想に至り、この着想に基づき、更に鋭意研究を続けた結果、初めてゾノトライトの層内に存在するCa2+を、銀イオンと陽イオン交換させることに成功し、しかもこの新しい物質がエチレン吸着能および抗菌性を有することを見出した。
【0008】
ゾノトライト(xonotlite)は、天然には希にしか産出しない鉱物であるが、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)の主要構成鉱物であり、50〜90m/gの比較的広い比表面積を有する代表的な繊維状の無機化合物である。ゾノトライトの組成式は6CaO・6SiO・HO、示性式はCaSi17(OH)で表され、斜方晶(a=17.03オングストローム、b=3.68オングストローム、c=7.01オングストローム)に属している。
【0009】
ゾノトライトの結晶はSiO四面体でつくられた8員環が連結した(Si17 10−の二重鎖の骨格構造を有し、その連鎖がb軸方向に伸長した繊維状構造をとる。Caはこの二重鎖と二重鎖の間にCaOx多面体層として充填されており、これがc軸方向に連続して積み重なった層状構造をとっている。このCa2+イオンが本発明においては銀イオンと陽イオン交換する。
【0010】
またゾノトライトは、やはり水熱法により合成される板状結晶の無機化合物であって、対イオンである層間Ca2+イオンを有するために高い陽イオン交換特性を有するトバモライト[CaSi18・4HO]とは異なり、結晶構造内に層間Ca2+イオンを持たないために、これまで金属イオンに対して陽イオン交換特性を示しにくいと考えられていた。実際にトバモライトと比較してPb2+、Cd2+、Mn2+、Zn2+などとの反応性は非常に低いことは公知であるが、ある種の金属イオン、例えばNi2+、Co2+とは結晶構造内のほとんどのCa2+イオンと陽イオン交換反応し、非晶質化するということも既に公知である。
【0011】
ゾノトライトは、オートクレーブ中で、CaO、と石英、或はシリコン製造の際副産する非晶質シリカのCaO/SiO比1.0の混合物を、180℃以上で水熱反応させることにより容易に得られる。反応過程は、通常初期にCaに富むC−S−H相(数多くのケイ酸カルシウム系化合物からなる)が形成され、その後トバモライトの結晶化を経て、しだいにゾノトライトに結晶化する。しかしながら、この反応はかなり遅いので、実際にはなるべく高い温度(200℃ぐらい)で反応させる必要がある。この場合、出発原料やその他の条件によりトバモライトの結晶化を経ないで、直接C−S−H相よりゾノトライト結晶を形成する場合もある。
【0012】
本発明においては、原料ゾノトライトとして、従来から知られているものがいずれも使用出来、上記従来の軽量保温材などに使用できるゾノトライトも使用できることはもちろんである。
【0013】
本発明の実施例で使用したゾノトライトとしては上記原料を用い、190℃のオートクレーブ内で7時間反応させたものを用いている。
【0014】
またゾノトライトはその示性式CaSi17(OH)からも知られるように、結晶水はすべてOH基ばかりであるので700℃付近で脱水し、800℃付近で長鎖状のウォルストナイト(β−CaSiO)に変化する。トバモライトと比べると1分子分の水しかもたないため、加熱による収縮は小さく、工業的には1000℃までの使用に耐える材料であることが知られており、建築物の耐火構造や耐熱性保温材として用いられている。
【0015】
本発明の銀含有ゾノトライトは、各種濃度の硝酸銀水溶液に、上記で示したゾノトライトの乾燥微粉末を常温で数時間浸漬させることにより得られる。この際のゾノトライトの粒度は0.1〜300μm程度である。周知の通りゾノトライトは繊維状物質であるが、これが多数絡合して小塊状となったものも知られており、本発明においてはゾノトライトとしてはいずれも使用することが出来る。そして通常これ等を上記範囲になるように必要に応じて粉砕して使用する。
【0016】
ゾノトライトと銀イオンの反応を考える場合、ゼオライトやトバモライトとは異なり対イオンが存在しないため、水溶液中の陽イオンに対するイオン交換容量は0meq/gである。しかしながら、陽イオンがNi2+、Co2+の場合、これらの陽イオンは結晶構造内のほとんどのCa2+イオンと陽イオン交換反応し、非晶質化するということも既に公知であるので、このCa2+イオン(層内Ca2+イオン)を元にイオン交換容量を計算すると、純粋なゾノトライト(分子量=714.99)1.0g中には8.39mmol/gのCa2+イオンが存在するので、一価の陽イオンに対しては16.78meqがゾノトライトの陽イオン交換容量とすることができる。この値はあくまで銀イオンが、Ni2+、Co2+のような陽イオン交換特性を有した場合であるので、今回我々が実施するまでゾノトライトの銀イオンに対する反応特性は明らかにされていなかった。
【0017】
このようにゼオライトやトバモライトのよう対イオンが存在しないにもかかわらず、結晶構造の言わば格子を形成するイオンが、陽イオン交換特性を示すものは、ゼオライトやトバモライトのような「対イオンイオン交換体」とは区別して、「格子イオンイオン交換体」と言われている。このような格子イオンイオン交換体としては脊椎動物の骨や歯の主成分であるハイドロキシアパタイトが有名であり、本発明で使用されたゾノトライトもこの格子イオンイオン交換体に分類される。
【0018】
一般に対イオンイオン交換体では、高濃度の陽イオン水溶液で反応させた場合、その陽イオン交換容量一杯にイオン交換可能であるのに対し、格子イオンイオン交換体では陽イオンの種類によって、ほとんど反応しなかったり、陽イオン交換容量の十数%が反応したり、或はすべての結晶格子内の陽イオンがイオン交換する場合がある。これは「イオン選択性」と呼ばれ、格子イオンイオン交換体の特徴の一つである。
【0019】
本発明の実施例で用いられたゾノトライトは、単一鉱物のゾノトライトではなく、純度としては85.5%の試料であること、更にその他の成分はトバモライトが11.5%、吸着水が3.0%であることが後述の実施例で明らかとされている。よってこのゾノトライト試料1.0gにより、水溶液から取り込み可能な銀イオン量は、ゾノトライトと銀イオンとの反応が全く起こらなかった場合と、Ni2+、Co2+の場合と同様にゾノトライト中の層内Ca2+イオンとすべて反応した場合では大きく異なり、前者ではトバモライト中の層間Ca2+イオン(0.31meq/g)がすべて陽イオン交換した場合を考えれば良く、後者ではゾノトライト中の層内Ca2+イオン(14.35meq/g)とトバモライト中の層間Ca2+イオン(0.31meq/g)がすべて陽イオン交換した場合を考えれば良い。即ち前者では0.31mmol、後者では14.66mmolの銀イオンを担持可能である。しかしながら、後述の実施例2で述べるように、このゾノトライト試料1.0gを高濃度の硝酸銀水溶液中で陽イオン交換反応させた場合、最高2.20mmolの銀イオンを担持することが示された。この値はゾノトライト試料中に含まれるトバモライトの層間に存在するCa2+イオンの100%が陽イオン交換反応した場合の値をはるかに上回る一方、ゾノトライト中の層内Ca2+イオンがすべて陽イオン交換反応した場合の値をかなり下回る。このことから、このゾノトライト試料による銀イオンの除去挙動は、トバモライトの層間Ca2+イオンのみによるものでも、ゾノトライト中の層内Ca2+イオンのすべてによるものでもなく、トバモライトのすべての層間Ca2+イオンとゾノトライト中の層内Ca2+イオンの一部がそれぞれ反応することによることが判明した。
【0020】
このことは後述の実施例のゾノトライト試料と銀イオンとの反応後の粉末X線回折図において、トバモライトおよびゾノトライトの回折ピークが十分残存しており、非晶質化していないことより裏付けられた。
【0021】
このことより、常温下でのゾノトライトと銀イオンとの反応では、Ni2+、Co2+の場合とは異なり、ゾノトライト中の層内Ca2+イオンすべてとは陽イオン交換せず、層内Ca2+イオンの一部である約13.2%が陽イオン交換反応することが判明した。この値はゾノトライトの結晶性や比表面積によって多少上下し、層内Ca2+イオンの最高16.7%が銀イオンと陽イオン交換反応してゾノトライト中に担持された。
【0022】
即ち、ゾノトライト1gの銀イオンに対する最大イオン交換量は2.80mmolであり、たとえ高温、高圧および高濃度の条件下で銀置換反応を行っても、ゾノトライトの結晶構造の破壊や副生物の生成につながるのみで、この値以上の銀イオンをゾノトライトに担持させることはできない。
【0023】
このことを逆に言えば、本発明の銀含有ゾノトライトは、常温での陽イオン交換法により、硝酸銀水溶液の濃度を変えるだけで、その特徴的な層状構造を破壊することなく、ゾノトライト中の銀イオン担持量を自由に制御できるということである。
【0024】
本発明に於いて陽イオン交換する方法は何等限定されないが、通常以下の条件が採用される。即ち
【0025】
1)硝酸銀水溶液のように銀イオンが完全に解離している水溶液を使用すること。この際完全に解離していないと、反応性が低くなるだけでなく生成物中に不純物が混入することになる。
【0026】
2)反応溶液のpH値は通常4〜10であること。この際4未満ではゾノトライトが溶解してしまい、また逆に10より高いと銀イオンが塩基性塩として沈殿してしまう。
【0027】
3)反応温度は通常0〜100℃であること。0℃未満では銀イオン水溶液とはならずに凍ってしまい、またたとえ銀イオンの濃度が高いなどの理由で水溶液となっても反応が非常に緩慢となり、陽イオン交換に適さない。また逆に100℃より高くなると反応容器が解放系の場合には、水分の激しい蒸発により銀イオン濃度が一定にならず、密封系ではゾノトライトの構造が破壊される可能性がある。
【0028】
その代表的な条件を示せば、ゾノトライトの量(重量)が約2.5g前後、pHが6.0、液温25℃、反応液の銀イオン濃度は1.0リットル中10.0mmol、反応時間は36時間のバッチ方式の如くである。
【0029】
また本発明の新規物質たる銀含有ゾノトライトは、実施例で述べるように0.056mmol/gしか銀イオンを含まない場合においても良好なエチレン吸着能および抗菌性を示す。一度ゾノトライト中のCa2+イオンと陽イオン交換した銀イオンは、蒸留水による繰り返し洗浄でも水相にほとんど溶出せず、溶出した場合でも銀担持量の非常に多いものに限られ、そのオーダーもppb程度の許容範囲内である。
【0030】
本発明の新規物質の素材であるゾノトライトは元来耐熱性、耐水性を有し、機械的強度も大であることから、銀含有ゾノトライトも同様の物理的性質を有する。例えばTG−DTA曲線で見る熱的性質は、ゾノトライトと銀含有ゾノトライトの間には、726〜822℃のOH基の脱水、840℃付近のウォルストナイト(β−CaSiO)への変化は全く同様であり、耐熱性の点でもゾノトライトの本来有する耐熱性をそのまま保持している。
【0031】
また電子顕微鏡で観察した銀含有ゾノトライトの結晶形態も銀担持以前のゾノトライトと同じ繊維状を保っていることから、銀含有ゾノトライトはゾノトライトが利用されている技術分野全てに応用が可能であるだけでなく、エチレン吸着能および抗菌性を有することから青果物の鮮度保持剤、また多くの食料品の変敗防止剤としての利用も可能である。なお銀イオンを全く担持していない、即ち従来公知のゾノトライトはその比表面積の大きさから、多少のエチレン吸着能を示すが、期待する十分なエチレン吸着能も抗菌性もほとんど示さない。
【0032】
更に銀含有ゾノトライトの素材であるゾノトライトの主原料は、土壌中に多量に含まれるCaO、石英(SiO)であることから、銀含有ゾノトライトが使用済となり、廃棄される場合でも土壌下で徐々に分解され土壌成分に返って行くので地球に対して優しく安全である。
【0033】
【実施例】
【0034】
【実施例1】
以下の実施例で使用された、本発明の新規物質の素材(原料)であるゾノトライトは、試薬一級の酸化カルシウムを1000℃で3時間か焼することによって得られたCaO、非晶質シリカ(SiOゲル)を出発原料とし、それぞれCa:Si=1:1の反応モル比となるように蒸留水とともにオートクレーブに充填し、190℃で7時間反応させて、製造した。
【0035】
次に反応後のスラリーを、蒸留水で洗浄し、上澄液がpH8.5以下になってから固形分を取り出した後、105℃で乾燥した。出発原料のCaOを1.0kg使用した場合、得られたゾノトライトは約2120gであった。次にこの試料を100メッシュの篩を通過するように粉砕し、実施例で使用した。表1に本発明の新規物質の素材であるゾノトライト試料の組成、平均粒子径および比表面積を示した(以後これをXとする)。
【0036】
【表1】
Figure 0003541201
【0037】
本実施例は上記で製造したゾノトライト試料(X)および10.0mMの濃度の硝酸銀水溶液を用いて、主にゾノトライトの層内Ca2+イオンと水溶液中の銀イオンとの陽イオン交換特性について検討したものである。この実施例によって本発明で述べるところの新規物質が初めて得られた。
【0038】
本発明の新規物質の素材であるゾノトライト試料の乾燥微粉末2.5g(この中にゾノトライトは2.13g、層内Ca2+イオンは約17.9mmol存在し、トバモライトは0.29g、層間Ca2+イオンは約0.4mmol存在する。理論的には7.00mmolの銀イオンとイオン交換することが可能である。)を10.0mMの硝酸銀水溶液1.0リットルに混合し、25℃の恒温水槽内で撹拌しながら反応させた。このときの溶液は炭酸塩および酸化物などの副生物生成を防止するために脱気し、空気と接触する部分は窒素で置換したものを用いた。反応後の混合液はブフナー漏斗にて吸引ろ過し、固体と液体を分離した。
【0039】
所定時間ごとの液体中の銀イオン、Ca2+イオンの濃度を原子吸光法で分析した。その結果を図1及び表2に示した。但し図1中の(イ)は銀イオン濃度を、(ロ)はCa2+イオン濃度を表す。
【0040】
固体は蒸留水2.0リットルで洗浄後、常温で真空乾燥させたのち副生物の存否を粉末X線回折法により解析した。結果を図2及び図3に示した。図2はXの、図3はX〜Xの結果を示す。但しX〜Xは後述の実施例3で合成される新規物質たる銀含有ゾノトライトの略称である。
【0041】
【表2】
Figure 0003541201
【0042】
表2及び図1より、水溶液中の銀イオンの濃度は時間の経過と共に徐々に減少し、36時間で定常状態となった。このときの水溶液中の銀イオン、Ca2+イオンの濃度は、それぞれ5.63mM、2.13mMであり、水溶液より減少した銀イオン量4.37mmolに対して水溶液中に遊離したCa2+イオン量は約50%の2.13mmolであった。
【0043】
銀イオンと陽イオン交換後のゾノトライト試料の粉末X線回折図形は、反応前と全く変化はなく、炭酸塩、酸化物等の副生物も検出されなかった。
【0044】
これにより本実施例により得られた物質は、ゾノトライトの層内イオンとして銀イオンを有する新規物質であることが判明した。
【0045】
また図4にゾノトライト試料(X)の、図5に新規物質(X〜X)のIR図形、図6にXの、図7に新規物質(X〜X)の電子顕微鏡写真を示した。また図8にXの、図9に新規物質(X〜X)のTG−DTA曲線を示した。
【0046】
粉末X線回折図形、IR図形および電子顕微鏡写真では、反応以前のゾノトライト試料(X)と新規物質(X〜X)との差異は見出せなかった。一方TG−DTAにおいても両者の脱水挙動に差異は認められず、反応以前のゾノトライト試料(X)と同様に優れた耐熱性を有することが判明した。
【0047】
また100〜726℃の重量減少と726〜822℃の重量減少より、ゾノトライト試料(X)中のトバモライトおよびゾノトライトの含有量が、それぞれ11.5%、85.5%と決定した。25〜100℃までの重量減少は3.0%であり、これは吸着水とみなされる。
【0048】
【実施例2】
実施例1の結果に基づいて本発明の新規物質の素材であるゾノトライト試料(X)中のCa2+イオンと水溶液中の銀イオンとのイオン交換等温線を作成するために、ゾノトライト試料の乾燥微粉末1.0gを2.0〜60.0mMの濃度の異なる硝酸銀溶液400mlに混合し、25℃の恒温水槽内で撹拌しながら36時間反応させた。このときの溶液は炭酸塩および酸化物などの副生物生成を防止するために脱気し、空気と接触する部分は窒素で置換したものを用いた。36時間後の水溶液中の各陽イオンの濃度の分析は実施例1中で用いられた方法に従った。結果を表3及び図10に示した。
【0049】
【表3】
Figure 0003541201
【0050】
表3及び図10より、硝酸銀溶液の濃度が希薄の時は、水溶液中の銀イオンの除去率は、高い値を示したが、濃度が上昇するにつれその比率が徐々に減少するというラングミュアー型の陽イオン交換特性を示すことが判明した。
【0051】
またゾノトライトの結晶構造内への銀の取り込み量は、硝酸銀溶液の濃度が上昇するにつれて増加するが、約20.0mM以上の濃度の硝酸銀溶液を反応に用いた場合では、ある一定の取り込み量を越えなかった。即ちその値はこのゾノトライト試料では2.20mmolであり、1.0gのゾノトライト試料中に存在するトバモライトの層間Ca2+がすべて銀置換した場合においても、ゾノトライト結晶の層内存在するCa2+イオンの13.2%が銀イオンと陽イオン交換したことを示す値である。この値はゾノトライトの結晶性により多少上下し、他のゾノトライト試料を用いたときは層内Ca2+イオンの最高16.7%が銀イオンと陽イオン交換した。このことから25℃における水溶液中の銀イオンと、ゾノトライト結晶の層内Ca2+イオンは、最大で16.7%程度陽イオン交換可能であり、2.80mmolの銀イオンを担持できることが判明した。
【0052】
【実施例3】
実施例2の結果を基に銀担持量の異なる新規物質を製造した。即ちX25gを0.25mM、0.50mM、1.0mM、10.0mMおよび20.0mMの濃度の硝酸銀溶液10.0リットルにそれぞれ添加、混合し、常温で撹拌しながら陽イオン交換反応させた。このときの溶液は炭酸塩および酸化物などの副生物生成を防止するために脱気し、空気と接触する部分は窒素で置換したものを用いた。36時間後にこれらを吸引ろ過により固液分離し、固体部を蒸留水で洗浄してから常温で真空乾燥し、新規物質を製造した。これらの組成、分子量、銀含有量および比表面積を表4に示した。ただし組成式ではX中に含まれているトバモライトは無視し、すべてゾノトライトと陽イオン交換しているものとして計算した。以下ではこれら新規物質を銀担持量の少ないものからX、X、X、XおよびXとする。なお、Xは実施例2で述べた銀イオン除去量が2.80mmol/gの試料である。
【0053】
【表4】
Figure 0003541201
【0054】
【実験例1】
表4に示した本発明の新規物質X、X、X、X、Xおよび銀を担持していないゾノトライト(X)のエチレンガス吸着能を調べるために、これらを60℃で5時間真空乾燥し、不織布(内側ポリエチレンラミネート)製の袋にそれぞれ1.0g秤量して入れた後、ヒートシールしてエチレンガス吸着用の試材とした。
【0055】
エチレンガス吸着実験は、これらエチレンガス吸着用の試材をガスバリアー性の高い樹脂容器に入れ、内部の空気を203ppmの濃度(Nガス中)のエチレンガスで置換した後、直ちに時間計測を始め、所定時間ごとのエチレンガス濃度をガスクロマトグラフィーで測定することによって行った。結果を図11に示した。図中の市販品AおよびBは前述の銀担持ゼオライトである。
【0056】
図11より明らかなように、市販品A、Bに比較してX、X、X、X、およびXは良好なエチレンガス吸着能を示した。ただし銀担持量の少ない順、すなわちX、X、X、X、およびXの順に吸着速度は遅くなるが、結果的にエチレン吸着能はそれぞれ十分満足のいくものであり、エチレン吸着型鮮度保持剤としての効果が期待できる。一方銀を全く含まないゾノトライト(X)は、X、X、X、X、Xおよび市販品A、Bと比較して30%のエチレン吸着能しか示さず、エチレン吸着型鮮度保持剤として殆ど効果がないことが判明した。
【0057】
【実験例2】
表4に示した本発明の新規物質X、X、X、X、Xおよび銀を担持していないゾノトライト(X)の抗菌性を調べるために、これらの物質100mgを1.0mlの蒸留水に分散し、直径30mmの紙製のディスクに含浸させて乾燥させたものを被験ディスクとした。このディスク1枚で数〜数十mgの新規物質が担持できた。被験菌として大腸菌(Esherichia coli)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細菌類を用いた。培地はMuller Hinton培地を使用した。抗菌性の試験はディスク法に基づいて行った。すなわち培地を直径90mmのシャーレー内に用意し、被験菌を10個/ml浮遊させた生理食塩水0.1mlを接種した後、コンラージ棒で分散させ被験ディスクをその上に貼り付けた。その後37℃で18時間保持して培養し、阻止帯形成の有無を観察した。試験の結果を表5に示した。
【0058】
【表5】
Figure 0003541201
【0059】
表5より新規物質X、X、X、X、およびXを含有する被験ディスクを貼り付けた培地では、ディスクを貼り付けない培地およびXを含有する被験ディスクを貼り付けた培地より、菌の発育が明らかに阻害されており、新規物質X、X、X、X、およびXは良好な抗菌性を有することが判明した。
【0060】
【実験例3】
表4に示した本発明の新規物質X、X、X、X、Xおよび銀を担持していないゾノトライト(X)の細菌に対する死滅率の測定はシェイクフラスコ法に基づいて行った。すなわちEscherichia coliおよびStaphylococcus aureusを0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)60mlにそれぞれ1.55および1.08×10個/ml浮遊させ、これらに本発明の新規物質X、X、X、X、およびXの乾燥微粉末10mgを混入して30℃で1時間、130rpmで振盪した。1時間後、液をサンプリングして希釈しMuller Hinton培地にそれぞれ接種した後、30℃で1週間培養しコロニー数を測定して死滅率を算出した。また1時間振盪後のそれぞれの溶液への銀溶出量を原子吸光法により調べた。結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
Figure 0003541201
【0062】
表6より明らかなように菌体だけの溶液およびXを添加した溶液では、細菌は殆ど死滅していないのに対し、新規物質X、X、X、X、およびXを添加した溶液では、液中の細菌はほとんど死滅し検出することができなかった。
【0063】
実施例2および3より本発明の新規物質X、X、X、X、およびXは優れた抗菌性を示し、銀の溶出量も非常に微量であることから人体にとって安全な抗菌剤としての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Xと銀イオンとの陽イオン交換特性を示す。
【図2】図2は、XのX線回折図形を示す。
【図3】図3は、X〜XのX線回折図形を示す。
【図4】図4は、XのIR図形を示す。
【図5】図5は、X〜XのIR図形を示す。
【図6】図6は、Xの電子顕微鏡写真を示す。
【図7】図7、X〜Xの電子顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、XのTG−DTA曲線を示す。
【図9】図9は、X〜XのTG−DTA曲線を示す。
【図10】図10は、Xと銀イオンとの陽イオン交換等温線を示す。
【図11】図11は、XとX〜Xのエチレン吸着能を示すグラフである。

Claims (3)

  1. ゾノトライト[CaSi17(OH)]の層内イオンであるCa2+イオンを、銀イオンで陽イオン交換して得られる[Ca6−(X/2)AgSi17(OH),O<X≦2]の組成で表される銀含有ゾノトライト。
  2. 請求項1に記載の銀含有ゾノトライトを主成分として成るエチレン除去剤。
  3. 請求項1に記載の銀含有ゾノトライトを主成分として成る抗菌剤。
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