JP3540532B2 - 抗菌性難燃樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性と高度な抗菌性能を併せ有する抗菌性難燃樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは、着火し易い、燃え易いという性質を有している。このため、燃えては都合が悪い用途にはポリプロピレンはそのまま使用できない。従って、このような用途に使用するため、種々の難燃化が施されている。
【0003】
ポリプロピレンの難燃化は、種々の難燃剤を配合することによって達成されている。難燃剤には、デカブロモジフェニルオキシド、臭素化ビスフェノールA誘導体や臭素化ビスフェノールS誘導体などに代表される臭素系難燃剤が一般的に用いられている。
【0004】
ところで、ポリオレフィン等のプラスチックは一般にカビや細菌のような微生物に対し、優れた抵抗性を有する材料と考えられてきたが、最近プラスチックのカビによる各種の被害例が報告されている。特に、台所用品や風呂道具等の水回り用品として使用されるプラスチック成形体は、水が付着することが多いために、カビにより黒ずむ傾向がみられ、これを防止するために抗菌性を付与することが望まれている。
【0005】
従来多くの抗菌剤は有機物質であったが、有機系抗菌剤には、特に、難燃剤を配合した材料においては抗菌性や耐久性、耐熱性、さらには安全性が十分ではないという問題があった。そこで、プラスチックへの配合に好適な抗菌剤として、無機系抗菌剤の転換が計られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
抗菌性を付与する無機系抗菌剤の代表例として、銀成分を坦持させたゼオライトが汎用されている。しかし、かかるゼオライト粒子を練り込んだ樹脂等の素材は抗菌性能が小さいこと、溶出速度をコントロールし難いこと、ゼオライト粒子自体の吸湿性が大きく、加工性や保管性が悪いこと等の欠点があった。そしてさらに、難燃剤を配合した材料においては、上記無機系抗菌成分を坦持させたゼオライトを配合させても、無機系抗菌成分に対しハロゲン原子が何らかの影響を及ぼして、抗菌効果が減少するものが多かった。
【0007】
従って、難燃性と高度な抗菌性能を併せ有する抗菌性難燃樹脂組成物の開発が大きな課題となっている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題に鑑み鋭意研究した結果、ポリオレフィンに特定の難燃剤と抗菌成分を有する粒子を配合した樹脂組成物が、上記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、ポリオレフィン100重量部、有機ハロゲン系難燃剤2〜40重量部、及び無機系抗菌成分を含有するリン塩系硝子粒子またはリン酸ジルコニウム粒子0.01〜5重量部からなることを特徴とする抗菌性難燃樹脂組成物である。
【0010】
本発明に用いられるポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1等のα−オレフィンの単独重合体、上記のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、または、これらの単独重合体または共重合体の混合物等をあげることができる。上記の共重合体には、共重合体の性質を損なわない範囲で、例えば、20モル%以下でα−オレフィン以外のモノマー、例えば、エチレン−酢酸ビニルなどが共重合成分として含まれていても良い。また上記混合物の物性を損なわない範囲で、例えば、20重量%以下でポリオレフィン以外の重合体、例えば、ポリアミドなどが混合されていてもよい。
【0011】
特に、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂が好適に使用できる。ここで、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体において、α−オレフィンの含有量は、20重量%以下であるのが好ましい。また、α−オレフィンとしては、エチレンが良好である。
【0012】
また、本発明で使用される有機ハロゲン系難燃剤は、ヘキサブロムベンゼン、ペンタブロムベンゼン、ペンタブロムトルエン、テトラブロムトルエン、テトラブロムキシレン、トリブロムキシレン、テトラブロムフェノール、テトラブロムレゾルシン、トリブロムピロガロール、臭素化ビフェニル、臭素化ジフェニルエーテル、臭素化ジフェニチオエーテル、臭素化ナフタリン誘導体等の臭素化芳香族化合物;ヘキサクロルベンゼン、ペンタクロルベンゼン、ペンタクロルトルエン、テトラクロルトルエン、テトラクロルキシレン、トリクロルキシレン、ペンタクロルフェノール、テトラクロルレゾルシン、トリクロルピロガール、塩素化ジフェニルエーテル、塩素化ジフェニルチオエーテル、塩素化ナフタリン誘導体等の塩素化芳香族化合物;テトラクロルロブロムブタン、ペンタクロルペンタン、ヘキサクロルヘキサン、ペンタクロルヘプタン、塩素化パラフィン等の塩素化脂肪酸化合物;臭素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールA(臭素化脂肪酸エーテル)、塩素化ビスフェノールA(塩素化脂肪酸)エーテル等のハロゲン化ビスフェノールA誘導体、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールS、臭素化ビスフェノールS(臭素化脂肪酸エーテル)、塩素化ビスフェノールS(塩素化脂肪酸エーテル)等のハロゲン化ビスフェノールS誘導体;トリス(ジブロムプロピル)シアヌレート、ビス(ジブロムペンチル)シアヌレート等の臭素化アルキルシアヌレート;トリス(ジブロムプロピル)イソシアヌレート、ビス(ジブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(テトラブロムペンチル)イソシアヌレート等の臭素化アルキルイソシアヌレート;トリス(ジクロルプロピル)シアヌレート、ビス(ジクロルプロピル)シアヌレート、トリス(テトラクロルペンチル)シアヌレート等の塩素化アルキルシアヌレート;トリス(ジクロルプロピル)イソシアヌレート、ビス(ジクロルプロピル)イソシアヌレート、トリス(テトラクロルペンチル)イソシアヌレート等の塩素化アルキルイソシアヌレート;トリス〔3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロピル〕ホスフェート、トリス〔2,2−ビス(ブロモメチル)プロピル〕ホスフェート、トリス(2−ブロモメチル−2−メチルプロピル)ホスフェート等のトリス(臭素化ネオペンチル)ホスフェート;等々が挙げられる。特に、テトラブロモビスフェノールS系難燃剤及び/またはテトラブロモビスフェノールA系難燃剤を用いた場合、特に、本発明の効果が顕著であり好ましい。この、テトラブロモビスフェノールS系難燃剤及び/またはテトラブロモビスフェノールA系難燃剤は、通常、下記の一般式であらわされる。
【0013】
【化1】
Figure 0003540532
【0014】
式中のRが同種または異種の少なくとも2個以上の臭素原子と結合するアルキル基であれば特に限定されず、その炭素数は2〜20、好ましくは2〜5で、それに結合される臭素原子数は多いほど難燃効果が良好である。
【0015】
具体的には、特に、ビス(ジブロモプロピルエーテル)−テトラブロモビスフェノールA、ビス(ジブロモエチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールA、ビス(ジブロモブチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールA、ビス(トリブロモブチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールA、ビス(テトラブロモブチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールA、等のテトラブロモビスフェノールA誘導体、ビス(ジブロモプロピルエーテル)−テトラブロモビスフェノールS、ビス(ジブロモエチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールS、ビス(ジブロモブチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールS、ビス(トリブロモブチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールS、ビス(テトラブロモブチルエーテル)−テトラブロモビスフェノールS等のテトラブロモビスフェノールS誘導体などが挙げられ、本発明においては、これらを単独または混合して使用することができる。
【0016】
有機ハロゲン系難燃剤の配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し、2〜40重量部である必要があり、好ましくは3〜30重量部である。特に高い難燃性区分のV−0を求める場合は8〜30重量部が好ましい。当該難燃剤の配合量が下限値より少ない場合は充分な難燃性が得られず、また上限値よりも多い場合は成形性、耐衝撃性の低下、比重の増加等があるだけでなく、安定的混練作業が困難となり好ましくない。
【0017】
また、三酸化アンチモンの添加は、難燃性の向上に有益であり、0.2〜20重量部の添加で難燃性が向上し好ましい。この場合、市販品が何等問題なく使用できる。
【0018】
また、本発明において無機系抗菌成分は、公知のものが特に制限なく使用できる。具体的には、銀、銅、亜鉛より選ばれた金属系の無機成分が好ましい。特に、抗菌性能の良い銀系無機抗菌成分が好ましい。また、これらの無機系抗菌成分は2種以上を併用しても良い。
【0019】
本発明において、上記無機系抗菌成分は、リン塩系硝子粒子またはリン酸ジルコニウム粒子に含有されている。かかる粒子に含有されていることにより、本発明の抗菌性難燃樹脂組成物は、高度な抗菌性能を有するものとなる。ゼオライトやシリカゲル等のその他の粒子に無機系抗菌成分を含有させても、有機ハロゲン系難燃剤の影響により十分な抗菌性能を有する組成物は得られない。
【0020】
ここで、リン塩系硝子粒子は、P25を主成分とする溶解性硝子が制限なく使用できる。一般には、P25:45〜75mol%、CaO+MgO:35〜55%、Na2O+K2O:0〜5%、SiO2+Al23:5〜20%からなる組成のものが使用される。このリン塩系硝子粒子において無機系抗菌成分は、粒子中に前記金属の酸化物等として配合されることにより含有されている。このリン塩系硝子粒子に無機系抗菌成分を含有させて用いた場合、得られる抗菌性難燃樹脂組成物は、特に、抗菌性能が高く、また成型時の耐変色性にも極めて優れたものとなり特に好ましい。
【0021】
一方、リン酸ジルコニウム粒子は、ZrO(H2PO4)、ZrP27、(ZrO)227等で示される化合物の結晶からなる粒子が制限なく使用される。このリン酸ジルコニウム粒子は、イオン交換能を有しており、無機系抗菌成分として前記金属がイオン交換反応により該粒子に坦持されている。
【0022】
上記リン塩系硝子粒子またはリン酸ジルコニウム粒子において含有される無機系抗菌成分の含有量は、特に制限されるものではないが、あまり小さくても抗菌性能が十分でなくなり、多いと変色を引き起こす恐れもあるため、通常は、抗菌性を有する金属元素として0.1〜5重量%が好ましい。
【0023】
これらの無機系抗菌成分を含有するリン塩系硝子粒子およびリン酸ジルコニウム粒子は、前述した成分のものであれば、市販品をそのまま使用できる。その各粒子の平均粒径は、0.3〜20μmが好適である。
【0024】
本発明において、これら無機系抗菌成分を含有するリン塩系硝子粒子またはリン酸ジルコニウム粒子は、ポリオレフィン100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜3重量部配合される。配合量が下限値より少ない場合は、充分な抗菌性能が発揮できない。また、上限値より多い場合は、難燃性能の低下を引き起こすため、好ましくない。
【0025】
本発明の抗菌性難燃樹脂組成物は、前記した成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の酸化防止剤(フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物など)、耐候剤(ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系など)、金属不活性化剤、無機・有機の各種顔料、帯電防止剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系)、核剤(金属塩系、ソルビトール系など)、充填材(タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、マイカ、ハイドロタルサイトなど)、中和剤、分散剤、滑剤等を添加してもよい。
【0026】
本発明において、抗菌性難燃樹脂組成物を調製する場合の各成分の配合順番、混合方法などは特に制限されない。一般的にタンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等を用いて常法により行われる。これを直接、射出成形機や押出成形機にて成形する場合もあるが、一般的には、単軸押出機、二軸押出機又はタンデム押出機等の一般的押出機を用いて一度ペレタイズした後成形される。
【0027】
本発明の抗菌性難燃樹脂組成物の成形方法は従来公知の方法が何等制限なく使用できる。例えば、押出成形によりシートを作成し、これを真空成形、プレス成形等の二次加工により得ることも挙げられる。また、一般的には射出成形にて得る方法が挙げられる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の抗菌性難燃樹脂組成物は、難燃性と高度な抗菌性能を併せ有する。従って、こうした性状を有する樹脂組成物として、洗濯機、冷蔵庫、食器乾燥機、炊飯器、換気扇、鉛筆削り、空気洗浄機、エアコン、テレビ、電話、電子レンジ、浄水器等の家庭・家電用品、便器(便座、便蓋、ケーシング)、洗面器具、風呂場用器具等のサニタリー用品などの用途に有用に用いることができる。
【0029】
【実施例】
本発明を更に具体的に説明するために以下に実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお実施例および比較例で示した記号は以下の通りである。
【0030】
1.樹脂
A:プロピレンホモポリマー(株)トクヤマ製(MFR:40 g/10min)
B:エチレン−プロピレンブロックコポリマー(株)トクヤマ製(MFR:10g/10min、エチレン含有量3.1wt%)
2.難燃剤
C:テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル
D:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル
3.難燃助剤
E:三酸化アンチモン
4.抗菌成分を有する物質
F:リン塩系硝子担持銀系無機抗菌剤
(石塚硝子製 イオンヒ゜ュアP 平均粒子径 10μm
抗菌成分を銀元素として1.6重量%含有)
G:リン酸ジルコニウム担持銀系無機抗菌剤
(東亜合成化学製 ノハ゛ロンAGE330 平均粒子径 1.3μm
比重 4.2 嵩比重 0.32
抗菌成分を銀元素として3.7重量%含有)
H:ゼオライト担持銀系無機抗菌剤
(シナネン製 ゼオミック XAW10D
抗菌成分を銀元素として2.6重量%含有)
I:ゼオライト担持銀系無機抗菌剤
(カネボウ製 バクテキラー BM102GA
抗菌成分を銀元素として2.5重量%含有)
実施例1〜32 比較例1〜11
抗菌性難燃樹脂組成物の調製及び試験方法は以下のようにして行った。
【0031】
(1)予備混合
表1に示すようにポリオレフィン100重量部に対して、難燃剤、難燃助剤、抗菌剤、及び酸化防止剤(テトラキス−〔メチレン−3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕メタン):0.1重量部、酸化防止剤(ジラウリルチオプロピオネート):0.2重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで予備混合した。
【0032】
(2)ペレット化
上記混合物をベント付き50mmφ押出機を用いてペレット化した。
【0033】
(3)効果試験
実施例および比較例は下記(ア)、(イ)の試験を行い、結果を表1に示した。 (ア)燃焼試験
ペレット化した材料を使用して、射出成形機によりUL94規格に準拠した垂直燃焼試験片を成形した後、UL94規格に準拠して垂直燃焼試験を行い、燃焼性区分を判定した。
【0034】
(イ)抗菌力試験
銀系無機抗菌剤研究会「抗菌加工製品の抗菌力試験法I フィルム密着法」に準拠して、5cm×5cmの試験片に大腸菌及び黄色ブドウ球菌を含む1/500濃度の普通ブイヨンを接種後、その上にポリエチレンフィルムをかぶせ密着させた。35℃−90RH%の条件下で24時間保存して生菌数を測定し、抗菌性能を評価した。
【0035】
【表1】
Figure 0003540532
【0036】
【表2】
Figure 0003540532
【0037】
【表3】
Figure 0003540532

Claims (1)

  1. ポリオレフィン100重量部、有機ハロゲン系難燃剤2〜40重量部、及び無機系抗菌成分を含有するリン塩系硝子粒子またはリン酸ジルコニウム粒子0.01〜5重量部からなることを特徴とする抗菌性難燃樹脂組成物。
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