JP3540266B2 - 熱伝導材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等の発熱体からの放熱を促すため、その発熱体に接触するように配置して使用される熱伝導材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば電気,電子装置の内部において、電子部品から発生する熱を効率よく放出し、電子部品の過熱を防止するために、発熱源である電子部品と放熱板や筐体パネル等のヒートシンクとなる部品(以下単にヒートシンクという)との間に、シート状に成形された熱伝導材を配置することが行われてきた。
【0003】
特に近年は、CPUの高速化に伴う発熱量の増加に対応するために、高い熱伝導率を持つ熱伝導材が必要とされている。この熱伝導材としては、固形のゴム、樹脂等の母材中に、セラミックス等からなる充填材を分散させたものが使用されてきた。そのような熱伝導材として、例えば、加硫EPDM樹脂とセラミックス粉体を混練・成形してなる熱伝導材、或いは、パラフィンとセラミックス粉体を混練・成形してなる熱伝導材がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の、常時固体の熱伝導材(例えば、加硫EPDM樹脂とセラミックス粉体を混練・成形してなる熱伝導材)は、電子部品やヒートシンクの形状に追随して変形することがないため、熱伝導材と電子部品、或いは熱伝導材とヒートシンクが充分に密着せず、接触面に空隙が生じ、充分な熱伝導効果が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、本願出願人は、熱伝導材の常時使用温度帯域である30〜65℃において可塑化し、接触する相手の表面形状に追従して柔軟に変形する熱伝導材を提案した(例えば、特願2000−166173号)。ところが、この種の熱伝導材は、上記変形によって良好な熱伝導効果を呈するものの、その変形状態によっては使用後に電子部品等から容易に剥がすことができなくなり、電気,電子装置の補修時等に熱伝導材を交換する際に作業性が低下することがあった。
【0006】
また、このように可塑化する材料については、ガラスクロス等を埋め込んで強度を向上させることが考えられるが、ガラスクロスを埋め込む場合、次のような課題が発生する。すなわち、ガラスクロスを入れても熱伝導材の剥がれにくい性質はあまり変化せず、充分な強度も得られない。薄い熱伝導材を作製する場合はガラスクロスと熱伝導材との厚さがほぼ同一になる場合があり、熱伝導材から電子部品等にかかる荷重が高くなると共に熱伝導性が阻害される。また、ガラスクロスと熱伝導材との厚さがほぼ同一になるため熱伝導材の薄膜化も困難である(130μm程度が限界)。更に、ガラスクロス等を埋め込むために工程が複雑化し、製造コストも高くなる。といった課題が発生する。
【0007】
また、液状シリコーンの母材に充填材を分散させた熱伝導材も同様に可塑化するが、この種の熱伝導材はガラスクロスなしでは0.5mm以下のシートの成形が不可能で、ガラスクロスを使用した場合、上記と同様に高荷重、熱伝導性の低下、製造コストが高いといった課題が発生する。
【0008】
そこで、本発明は、前述のように使用時に可塑化して接触する相手の表面形状に追従して変形する熱伝導材であって、補修性(いわゆるリペア性)に優れ熱伝導性もよく、薄いものも容易に製造可能な熱伝導材を提供することを目的としてなされた。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、オレフィン系樹脂中に該オレフィン系樹脂より融点の高いワックスを分散して含む有機材料と、該有機材料より高い熱伝導性を有する充填剤とを含有し、少なくとも常時使用温度帯域の30〜65℃において可塑化して、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形する熱伝導シートと、
該熱伝導シートの表面に積層された1〜10μmの厚さを有するPETまたはポリイミド製の樹脂フィルムと、
を備えた熱伝導材であって、
発熱体に接触するように配置して使用される際も、上記樹脂フィルムが上記熱伝導シートに積層されたままであることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明では、熱伝導シートは、少なくとも常時使用温度帯域の30〜65℃において可塑化して(軟化して)、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形する。また、樹脂フィルムも1〜10μmの厚さを有するPETまたはポリイミド製のフィルムであり、熱伝導シートと同様に変形する。従って、例えば常温で使用する場合には、例えば適度な堅さを有するゴム状の物質であり、手等にくっつくことがないので、熱伝導材を電子部品の近傍に配置する作業が容易である。
【0011】
また、例えば電子部品の温度が上昇し、熱伝導材が30〜60℃になった場合には、熱伝導材は可塑化し、接触する相手の電子部品の形状に追随して柔軟に変形して、電子部品の表面に密着する。この熱伝導材は、高い熱伝導性を有しているので、電子部品から効率よく熱を奪って放熱し、電子部品の温度の上昇を抑制することができる。
【0012】
更に、電子部品のOFFにより、電子部品の温度が例えば常温に低下した場合には、熱伝導シートは軟化した状態から変化して、例えばゴム状の状態にまで固化する。しかも、その表面には樹脂フィルムが積層されているので、本発明の熱伝導材は電子部品やヒートシンクから極めて容易に剥がすことができる。また、樹脂フィルムは薄膜化して熱抵抗を低減するのが容易で(10μm以下の厚さを有している)、しかも充分な補強効果が得られる。従って、本発明の熱伝導材は、優れたリペア性を呈すると共に、電子部品等に加わる負荷を抑制しつつ、極めて良好な強度及び熱伝導性を呈することができる。
特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはポリイミド製のフィルムは、引裂強度、耐熱性、及び熱伝導シートとの密着性において優れ、薄膜化が極めて容易で(例えばPETは1〜10μmまで、ポリイミドは7.5μm程度まで可能)、低コストであるといった種々の利点を備えている。本発明では、このようなPETまたはポリイミド製のフィルムを樹脂フィルムとして使用し、厚さを1〜10μmと薄くしたので、極めて良好な熱伝導性が得られる。しかも、PETまたはポリイミドは、このように薄膜化しても充分な強度が得られ、製造コストも低く押さえられる。従って、本発明では、強度や低コスト性を確保しつつ熱伝導性を一層良好に向上させることができ、耐熱性も一層向上させることができる。
【0013】
しかも、上記有機材料は、オレフィン系樹脂中に該オレフィン系樹脂より融点の高いワックスを分散して含むものである。このため、本発明の有機材料は、30〜60℃で極めて良好に可塑化し、接触する相手の電子部品の形状に追随して柔軟に変形して、電子部品の表面に密着する。従って、本発明では、電子部品から一層効率よく熱を奪って放熱し、電子部品の温度の上昇を一層良好に抑制することができる。
また、本発明の熱伝導材は、熱伝導シートをプレス成形する際にその片面に樹脂フィルム配設しておくだけで薄いもの(例えば100μm以下)も容易に製造でき、その製造コストも良好に低減することができる。なお、ここで、可塑化するとは、熱により(接触する相手の表面形状に追随できる程度に)柔軟化することをいう。また、上記常温としては、例えば、20〜25℃の範囲の温度が挙げられる(例えば23℃を常温として規定してもよい)。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、上記熱伝導シートが、60℃において6.0g/cm2 以上の圧力が加わった場合に可塑化して、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形することを特徴とする。
本発明で使用した熱伝導シートは、60℃において6.0g/cm2 以上の圧力が加わった場合に可塑化して、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形する。このため、請求項1記載の発明の効果に加えて、一層良好に接触する相手の表面形状に追随して変形し、電子部品等から一層効率よく熱を奪って放熱することができるといった効果が生じる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成に加え、上記熱伝導シートが、次のa〜cの条件を満たすことを特徴とする。
a.上記有機材料の融点が30〜70℃の範囲にあること
b.100℃における上記有機材料の粘度が70000cP以上であること
c.上記充填剤の全体に対する割合が30〜90重量%の範囲にあること
本発明で使用した熱伝導シートは、その構成成分である有機材料の融点が30〜70℃の温度範囲にあるため、例えば、電子部品からの熱を受けた時には、有機材料の融点以上の温度に達し、有機材料が液化する。その場合、熱伝導シートは、液化した有機材料の中に高い熱伝導性を有する充填剤が分散した状態となり、接触する物体の形状に追随して変形し、以後その変形後の形状を維持する性質(可塑化する性質)を持つ。
【0016】
熱伝導シートが熱によって上記のように可塑化するという特徴によって、本発明の熱伝導材は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、以下▲1▼▲2▼の優れた効果を発揮する。
▲1▼例えば、接触する電子部品からの熱により昇温して熱伝導シートが可塑化すると、電子部品及びヒートシンクの形状に追随して変形し、電子部品及びヒートシンクに対する密着性が良くなる。この密着性が良いと、熱伝導材と電子部品及びヒートシンクとの間において、充分な接触が得られるため、結果として熱伝導性が一層向上する。
【0017】
▲2▼例えば、接触する電子部品からの熱により昇温して可塑化すると、電子部品の形に追随して変形するため、熱伝導材から電子部品にかかる荷重が分散され、電子部品の一部に偏った荷重がかることがない。
また、本発明で使用した熱伝導シートにおいては、構成成分である有機材料の、100℃における粘度が70000cP以上であり、充填剤の全体に占める割合が30〜90重量%である。従って、上記熱伝導シートは、100℃においても充分に粘度が高いので、例えばCPU等の電子部品とヒートシンクとの間に挟んで使用しても、その隙間から流れ出ること(液だれ)の心配はない。つまり、本発明の熱伝導材は、少なくとも100℃以下の温度範囲では、液だれの心配がなく、熱伝導材として好適である。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、上記熱伝導シートは、常温ではゴム状であることを特徴とする。
本発明で使用した熱伝導シートは、常温ではゴム状で取り扱いが容易である。従って、本発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、電子部品の近傍に簡単な作業で熱伝導材を配置し、または剥がすことができるといった効果が生じる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、上記樹脂フィルムが、一面に微細な穴が穿設された気孔性フィルムであることを特徴とする。
本発明では、樹脂フィルムとして一面に微細な穴が穿設された気孔性フィルムを使用しているので、樹脂フィルム側でも上記穴を介して熱伝導シートと電子部品またはヒートシンクとが接触する。従って、本発明では、請求項1〜4の何れかに記載の発明の効果に加えて、熱伝導性を一層向上させることができるといった効果が生じる。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導材を製造する方法であって、
上記充填剤と上記有機材料とを混練する工程と、
該混練物の片面に上記樹脂フィルムを配設してシート状にプレス成形する工程と、
を有することを特徴とする。
【0025】
本発明では、上記充填剤と上記有機材料とを混練し、その混練物の片面に上記樹脂フィルムを配設してシート状にプレス成形している。このプレス成形によって、上記混練物は熱伝導シートとして成形され、その表面に樹脂フィルムが積層される。従って、本発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導材を極めて容易に製造することができ、その製造コストを一層低減することができる。また、本発明では、熱伝導シートの成形と同時に樹脂フィルムをその熱伝導シートに積層しているので、熱伝導シートと樹脂フィルムとの密着性が一層向上する。このため、熱伝導材の機械的強度及び熱伝導性を一層向上させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の熱伝導材及びその製造法の実施の形態を図面と共に説明する。
a)本実施の形態では、以下の製造方法により熱伝導材を製造した。
充填材と有機材料の混練工程
充填剤 :40〜900重量部
有機材料 :100重量部
上記充填剤と有機材料とを混合することにより、有機材料に充填剤を充填した。上記混合の方法としては、2本ロール等の機械を用いて混練する方法の他、ニーダ、バンバリーミキサ等の種々の方法を適用することができる。
【0027】
有機材料としては、融点30〜70℃、100℃での粘度70000cP以上のものを使用する。具体的には、未加硫EPDM、パラフィン、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ポリエチレン、ポリイソブチレン、エチレンビニルアルコール、エチレン−エチルアルコール等のオレフィン系樹脂であって、上記融点、粘度の条件を満たすものが使用できる。特に、常温で柔軟性を持つ有機材料が望ましい。この条件を満たす有機材料としては、例えば、分子量7000〜50000の未加硫EPDMがある。この分子量7000〜50000の未加硫EPDMは潤滑性に優れているため、有機材料に対する充填剤の構成比率が高くても混練が可能であり、充填剤の構成比率を高くすることができる。また、上記樹脂にはパラフィン等のワックスを混練する。
【0028】
充填剤としては、セラミックス、金属粉、金属磁性体、または炭素繊維を使用できる。
▲1▼.上記セラミックスの充填剤としては、例えば、炭化珪素、窒化硼素、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、マグネシア、水酸化マグネシウム、窒化珪素、窒化アルミニウムがある。上記セラミックスは、熱伝導率が高いため、これらを充填剤とすることによって、熱伝導効果に優れた熱伝導材を実現できる。
【0029】
▲2▼.上記以外のセラミックスの充填剤としては、例えば、ソフトフェライトがある。このソフトフェライトとしては、例えば、Ni−Zn系フェライト、Mn−Znフェライトがある。これらのソフトフェライトは、磁性シールド効果が高いため、これらを充填剤とすることによって、磁性シールド効果の高い熱伝導材を得ることができる。
【0030】
▲3▼.金属粉の充填剤としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウムがある。上記金属粉は、熱伝導率が高いと同時に電界シールド効果に優れるため、これらを充填剤とすることによって、熱伝導性と電界シールド効果の双方に優れた熱伝導材を得ることができる。
【0031】
▲4▼.金属磁性体としては、例えば、ケイ素鋼(Fe−Si)、パーマロイ(Fe−Ni)、センダスト(Fe−Al−Si)、パーメンジュール(Fe−Co)、SuS(Fe−Cr)がある。上記金属磁性体は、磁性シールド効果が高いため、これらを充填剤とすることによって、磁性シールド効果に優れる熱伝導材を得ることができる。
【0032】
▲5▼.炭素繊維としては、例えば、PAN系、ピッチ系、VGCF、グラファイト、カール状がある。上記炭素繊維は、熱伝導率が高いと同時に電界シールド効果が高いため、これらを熱伝導材とすることによって、熱伝導効果と電界シールド効果の双方に優れた熱伝導材を得ることができる。
【0033】
この場合、上記セラミックス、金属粉、金属磁性体、または炭素繊維のいずれか一種を単独で使用することが可能であるが、それらのうちの2種以上の組み合わせの混合物を使用することも可能である。
また、充填剤の構成単位の形状としては、粒状のもの、フレーク状のもの、或いは繊維状のもの等が使用可能である。
【0034】
プレス成形工程
このようにして製造された混練物の片面に樹脂フィルムを配設して、シート状にプレス成形した。樹脂フィルムとしては、PET,ポリイミド等によって構成した1〜10μm程度のもの(例えばコンデンサ用の市販フィルム)を使用することができる。また、この樹脂フィルムとしては、図2に示すようにφ10〜20μm程度の微細な穴3aが一面に穿設されたいわゆる気孔性の樹脂フィルム3を使用することもできる。
【0035】
b)このようにして製造された熱伝導材10は、図1に示すように、有機材料5中に充填剤7が分散した構造を有する熱伝導シート9の表面に、前述の樹脂フィルム3が積層された構造となっている。
熱伝導シート9は、電子部品等からの熱を受け、熱伝導シート9の構成成分である有機材料5の融点以上の温度になると、有機材料5の部分が液化する。この状態の熱伝導シート9は、可塑化して、容易に形状が変化する柔軟性を有する。
【0036】
c)このように熱伝導シート9が熱により可塑化する性質によって、本実施の形態の熱伝導材10は、加温された時には、電子部品及びヒートシンクの形に追随して変形し、密着性が向上する。密着性が向上すると、熱伝導材10と電子部品及びヒートシンクとの接触面積が大きくなり、電子部品等から効率よく熱を奪って放熱することができる。
【0037】
また、電子部品の形に追随して変形すると、熱伝導材10から電子部品にかかる荷重が分散し、電子部品の一部に偏った荷重がかかることがない。
その上、本実施の形態の熱伝導材10を、電子部品とヒートシンクとの間に挟んで使用した場合、100℃以下では、有機材料5が流れ出ることはない。従って、少なくとも100℃以下の温度での使用が可能である。つまり、熱伝導材10の実用上の温度範囲は0〜100℃の範囲内にあるので、熱伝導材10には充分な耐熱性がある。
【0038】
更に、有機材料5として、常温でもゴム状で柔軟性を有する物質(例えば未加硫EPDM)を使用した場合は、その柔軟性によって、常温下でも上記の効果がある程度得られる。また、この場合、電子部品の近傍に簡単な作業で熱伝導材10を配置し、または剥がすことができる。しかも、熱伝導シート9の表面には樹脂フィルム3が積層されているので、熱伝導材10は電子部品やヒートシンクから一層容易に剥がすことができる。
【0039】
ここで、本実施の形態ではPET,ポリイミド等によって樹脂フィルム3を構成しているので、例えば10μm以下に薄膜化して熱抵抗を低減することも極めて容易でその製造コストも低い。しかも、これらの樹脂フィルム3を積層したことにより、熱伝導材10では充分な補強効果が得られる。従って、本実施の形態の熱伝導材10は、優れたリペア性を呈すると共に、電子部品等に加わる負荷を抑制しつつ、極めて良好な強度及び熱伝導性を呈することができる。また、本実施の形態では、樹脂フィルム3として前述のように気孔性フィルムを使用しているので、樹脂フィルム3側でも穴3aを介して熱伝導シート9と電子部品またはヒートシンクとが接触し、熱伝導性を一層向上させることができる。
【0040】
更に、PETやポリイミドはこのような気孔性フィルム化が容易であるので、熱伝導材10の製造コストを一層良好に低減することができる。一方、樹脂フィルム3を穴3aを有さないPETまたはポリイミド製のフィルムとした場合、熱伝導シート9が導電性を有する場合であっても電子部品等との間で絶縁を行うことができる。
【0041】
また、本実施の形態では、熱伝導シート9のプレス成形と同時に樹脂フィルム3をその熱伝導シート9に積層しているので、熱伝導材10の製造が一層容易になると共に熱伝導シート9と樹脂フィルム3との密着性が一層向上する。このため、本実施の形態では、熱伝導材10の製造コストを一層低減すると共にその機械的強度及び熱伝導性を一層向上させることができる。
【0042】
【実施例】
次に、本発明の範囲の熱伝導材の効果を確認するために行った実施例について説明する。
〈参考例1〉
充填剤と樹脂の混練及び成形
未加硫EPDM :100重量部
充填剤(SiC) :230重量部
上記材料を混練した後、その混練物の片面に厚さ5μmのPETフィルムを配設してプレス成形し、シート型とした。
〈参考例2〉
充填剤と樹脂の混練及び成形
未加硫EPDM :100重量部
充填剤(BN) :120重量部
上記材料を混練した後、その混練物の片面に厚さ5μmのPETフィルムを配設してプレス成形し、シート型とした。
〈実施例〉
未加硫EPDM(オレフィン系樹脂):3.8〜96.2重量部
パラフィン(ワックス) :3.8〜96.2重量部
充填材(SiC):38.5〜61.5重量部
上記材料を混練した後、その混練物の片面に厚さ5μmのPETフィルムを配設してプレス成形し、シート型とした。
〈比較例1〉
参考例1における未加硫EPDMの代わりに加硫EPDMを用いた。
〈比較例2〉
参考例1における未加硫EPDMの代わりに液状シリコーンを用いた。
〈比較例3〉
参考例1においてPETフィルムを省略した。
〈比較例4〉
参考例2においてPETフィルムを省略した。
〈比較例5〉
比較例1におけるPETフィルムの代わりにガラスクロスを用いた。
〈比較例6〉
比較例2におけるPETフィルムの代わりにガラスクロスを用いた。
各実施例及び比較例に対してリペア性,可塑性,強度,熱伝導性,及び製造コストを評価した結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
表1に示すように、参考例1,2及び実施例は、いずれも、リペア性,可塑性,強度,熱伝導性,及び製造コストの全てにおいて優れた特性を呈した。未加硫EPDMの代わりに加硫EPDMまたは液状シリコーンを使用した比較例1,2は、可塑性において劣り電子部品やヒートシンクとの密着性が充分に得られない可能性がある。特に、液状シリコーンを使用した比較例2では、製造コストも高くなった。
【0044】
参考例1,2においてPETフィルムを省略した比較例3,4はリペア性及び強度において劣った。これによって、前述の樹脂フィルム3の効果が裏付けられた。また、PETフィルムの代わりにガラスクロスを使用した比較例5,6は、ある程度の強度は得られるものの可塑性,熱伝導性,及び製造コストにおいて劣った。特に、液状シリコーンとガラスクロスとの組み合わせである比較例6では、充分なリペア性も得られなかった。
【0045】
更に、各実施例の熱伝導材10に対し軟化の状態を確認する実験を行った。
図3に示すように、ヒータ50の上に熱伝導材10を配置し、その上にブロック(ブロック51またはブロック52)を配置した状態で、ヒータ50をオンにし、熱伝導材10の温度を60℃となるように設定した。
【0046】
▲1▼ブロック51としては、3×3×6cm2 の比重1のブロックを用いた。このブロック51の重量は54g、その底面積は9cm2 であるので、熱伝導材10に加える圧力は、54÷9=6g/cm2 である。
▲2▼ブロック52としては、3×3×6cm2 の比重9のブロックを用いた。このブロック52の重量は486g、その底面積は9cm2 であるので、熱伝導材10に加える圧力は、486÷9=54g/cm2 である。
【0047】
この実験の結果、熱伝導材10の温度が60℃の場合に、加えた圧力が6g/cm2 及び54g/cm2 のとき、従って、加えた圧力が6g/cm2 以上となると、熱伝導材10が可塑化し、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形することが確認された。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、有機材料、充填剤、樹脂フィルムの種類は種々に変更することができる。また、混練方法、成形方法においても本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の方法で混練または成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された熱伝導材の概略構成を示す断面図である。
【図2】その熱伝導材に使用された樹脂シートの構成を表す平面図である。
【図3】その熱伝導材の軟化状態の実験方法を示す説明図である。
【符号の説明】
3…樹脂フィルム 3a…穴 5…有機材料
7…充填剤 9…熱伝導シート 10…熱伝導材
Claims (6)
- オレフィン系樹脂中に該オレフィン系樹脂より融点の高いワックスを分散して含む有機材料と、該有機材料より高い熱伝導性を有する充填剤とを含有し、少なくとも常時使用温度帯域の30〜65℃において可塑化して、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形する熱伝導シートと、
該熱伝導シートの表面に積層された1〜10μmの厚さを有するPETまたはポリイミド製の樹脂フィルムと、
を備えた熱伝導材であって、
発熱体に接触するように配置して使用される際も、上記樹脂フィルムが上記熱伝導シートに積層されたままであることを特徴とする熱伝導材。 - 上記熱伝導シートが、60℃において6.0g/cm2 以上の圧力が加わった場合に可塑化して、接触する相手の表面形状に追随して柔軟に変形することを特徴とする請求項1記載の熱伝導材。
- 上記熱伝導シートが、次のa〜cの条件を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の熱伝導材。
a.上記有機材料の融点が30〜70℃の範囲にあること
b.100℃における上記有機材料の粘度が70000cP以上であること
c.上記充填剤の全体に対する割合が30〜90重量%の範囲にあること - 上記熱伝導シートは、常温ではゴム状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導材。
- 上記樹脂フィルムが、一面に微細な穴が穿設された気孔性フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導材。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導材を製造する方法であって、
上記充填剤と上記有機材料とを混練する工程と、
該混練物の片面に上記樹脂フィルムを配設してシート状にプレス成形する工程と、
を有することを特徴とする熱伝導材の製造方法。
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