JP3539651B2 - 成育材料と一体化した種子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の種子を肥料成分と土壌改良材成分と一体に形成し、粒状に構成した成育材料と一体化した種子に関し、特に、畑等に種子を容易に散布できるとともに、有用な微生物を種子を保持する粒状体の周囲に増殖させて、種子の成育環境を整えることができるような成育材料と一体化した種子に関する。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】
畑等に野菜や穀物の種子を撒く場合には、畑を耕して肥料の散布と畝作りを行い、畝に設けた孔やくぼみ等に種子を蒔いて土をかけるような手法が用いられている。また、畑に直接種子を散布しないで、苗を植える場合には、温室等に配置するプランターのような栽培容器に種子を蒔いて、植物の苗が一定の大きさに成長してから、畑や温室内の栽培土壌に苗を植える方法を用いている。
【0003】
さらに、法面等のような斜面に芝生やその他の植物を栽培する場合には、植物の種子を肥料成分と混合して散布する手法が用いられている。ところが、植物の種子が比較的大きいのものでは、手で1粒ずつ散布することは比較的容易であるものの、けし粒のように非常に小さい種子では、一定の数ずつ手で散布することは非常に面倒である。特に、芝生の種子のような粒が小さいものを、種蒔き機のような機械を用いて種子を散布する場合には、均一に散布することが困難であり、畑等に生える苗がバラツキを生じる等の問題もある。また、温室や畑等においても、種子が発芽してから苗の成長に必要な肥料を散布する必要があり、比較的少量の肥料を散布する手間が農家に大きな負担となっている。
【0004】
そこで、前述したような問題を解消するために、種子を肥料成分に分散させる状態で混合し、小さな粒状に形成したものを畑等に散布することにより、肥料を後で追肥する手間を省き得るようにすることが考えられている。しかし、種子を肥料成分中に混合した場合に、肥料成分により種子が影響を受ける等の問題が発生して、発芽率が良くない等の問題が生じやすい。また、法面等のような傾斜地では、散布した種子と肥料成分とが雨により流されたりすることがあり、傾斜地に付着したままで残る種子と肥料成分とが非常に少なくなり、散布の効率が良くない場合がある。これに対して、法面を植物により保護するためには、余分な種子と肥料とを散布することが必要とされ、法面の緑化による保護のためのコストにも影響が生じることや、余分な肥料成分が河川等に流れ出すことにより、他の植物や自然環境に対する影響等も懸念されている。
【0005】
本発明は、前述したような植物の種子の栽培の問題を解消するもので、種子を土壌改良材成分と肥料成分に一体化して粒状のものとして形成し、容易に扱いやすい大きさのものとして作成することにより、種蒔きの作業を容易に行い得て、追肥の散布の手間を省き得る成育材料と一体化した種子を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、成育材料と一体化した種子の製造方法に関する。
請求項1の発明は、混合機に、種子と、無機質の多孔質の微粉末、接着剤作用を発揮する多糖類の水溶液を投入し、
前記混合機により攪拌して、種子の表面に被膜を形成する工程と、
前記混合機で被膜を形成した種子を、乾燥機に入れて乾燥させる工程と、
前述したようにして製造した種子と、土壌改良剤成分、肥料成分、水分とを任意の順序で混合機に入れて、前記混合機により混練して、硬い粘土状の混練物を作成する工程と、 前記混練物を押出機により棒状または板状に成型し、その成形物を造粒機により任意のサイズの粒として成型し、粒状体を乾燥機に入れて乾燥させ、中に含まれる水分を種子が発芽しない程度に減少させる処理を行う工程とを経て、製造することを特徴とする。
請求項2の発明は、前記無機質の多孔質の微粉末として、活性炭の微粉末、パーライトやゼオライトのような無機質成分を高温処理したセラミック材料の微粉末から1種または複数種類を選択して用い、
前記無機質の多孔質の微粉末で表面を覆った種子と、石灰質材料と磁性体を混合した土壌改良剤成分と、有機肥料成分のような肥料成分とを水分を添加して混合したものを、粒状に形成して乾燥させる工程を経て、製造することを特徴とする。
請求項3の発明は、種子と、無機質の多孔質の微粉末、接着剤作用を発揮する多糖類の水溶液を、混合機により攪拌して種子の表面に被膜を形成し、
前記混合機で被膜を形成した種子を、乾燥機に入れて乾燥させる工程と、
前述したようにして製造した種子と、土壌改良剤成分、肥料成分、水分とを任意の順序で混合機に入れて、前記混合機により混練して、硬い粘土状の混練物を作成する工程とを経て、
前記混練物を押出機により棒状に成型する工程においては、
前記押出機のシリンダの径に対して、押し出しガイドの孔の合計面積を小さい値となるように設定して、大きな圧力で混合物を押し出して製造することを特徴とする。
【0007】
前述したようにして、成育材料と一体化した種子を作成することにより、土壌改良材成分が植物の成長に役立つ微生物の増殖環境を良好に維持し、肥料成分を植物が吸収しやすい状態で供給することが可能になり、植物の成育環境を成育材料と一体化した種子自体で提供することが可能になる。また、肥料成分と土壌改良材成分とを粒状に形成する際に、その混合物の水分の調整を行うことにより、肥料成分が放出される時間等を調整することが可能である。そして、任意の種類の種子に対して、本発明の成育材料と一体化した種子は、機械装置を使用して種蒔きを行うことができるので、種蒔きの手間を簡素化することができ、追肥の手間を省き、農家の負担を軽減することが可能になる。
【0008】
さらに、成育材料と一体化した種子に含まれる種子の種類に応じて、任意の肥料成分と土壌改良材成分とを混合することができるので、植物の成育に必要とされる成分を多く含ませることにより、その対象とする植物に適した成育環境を提供できる。そして、前記成育材料と一体化した種子を蒔く際に、表面に多糖類やアミノ酸成分のような微生物の栄養成分を付着させることができるので、前記微生物の栄養成分により粒状体の周囲に有用微生物を大量に増殖させて、種子の発芽・成育環境を良好に維持でき、成育材料と一体化した種子の内外で微生物の増殖を活発に行わせることができる。また、土壌改良剤成分に含まれる磁性体から与えられる磁界により、種子の発芽の作用を促進させとともに、種子の発芽率を向上させることもできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の成育材料と一体化した種子を詳細に説明する。本発明の成育材料と一体化した種子に含まれる土壌改良剤成分は、例えば、特公平4−26359号公報等に記載されているようなものを使用することができる。前記土壌改良剤成分に用いる有機質材料としては、活性炭、ピートモス、木炭のような多孔質の材料、または、前記材料と同様な性質を発揮可能な任意の材料を用いることかできる。また、無機質材料としては、パーライト、ゼオライト、バーミキュライト等のような多孔質の材料を用いることができるもので、従来より一般に土壌改良剤として利用されている他の無機質の材料を利用することが可能である。さらに、本発明の土壌改良剤成分としては、パーライトやゼオライトのような無機質成分を高温処理したセラミック材料を混入して用いることも可能であり、前記セラミック化した成分を混入することにより、遠赤外線を有効に利用することによって、地温を上昇させる等の効果が生じ、植物の成育と微生物の増殖環境を整えることが可能になる。前記例示したような有機質、無機質材料のいずれもが、従来より土壌改良剤として一般的に用いられているものであり、土の性質を植物の育成に適したものに改良する作用等を発揮させるようにする。
【0010】
また、前述したような多孔質の成分を土に混入させることにより、土の中に含まれている有害金属成分や過剰な化学肥料成分を多孔質材料中に吸着でき、有害金属成分を植物の成育に障害が生じないように固定保持するする性質と、過剰な肥料成分を多孔質材料中に一時吸着して保持し、時間をかけて少しずつ放出させるような作用を発揮させることができる。さらに、前記多孔質の材料に加えて、本発明に用いる土壌改良剤成分には、サンゴや貝殻のような石灰質成分と、粉末状の磁石や磁性体とを混合している。そして、前述したような材料のそれぞれを、任意の割合で混合して土壌改良剤を作成することによって、植物の成育に適した環境を提供することが可能である。
【0011】
前記土壌改良材成分とともに使用する肥料成分としては、畜産廃棄物や養鶏の廃棄物、農業廃棄物を原料として製造する完熟堆肥、骨粉、乾燥鶏糞、その他の任意の有機・無機質肥料成分を対象とする植物に対応させて、任意の割合で混合して粉末状にしたものを用いることが可能である。前述したような自然の肥料成分に加えて、微生物や植物の成育に必要とされる微量ミネラル等を追加してを混合すると、植物が前記肥料成分をより効果的に利用できる。また、前記自然の肥料成分に不足する肥料成分は、化学肥料により補うことも可能であるが、畑等に成育する微生物の増殖を阻害しない程度に止めることが要求される。本発明の成育材料と一体化した種子を乾燥することによって、内部に含まれる水分が種子を発芽させない程度に調節されるものであり、畑等に種蒔きを行ってから、自然に与えられる水分によって、種子が発芽するとともに肥料成分等が時間をかけて放出されるようになる。したがって、その肥料成分の混合割合や固結の程度等の条件により、肥料成分が放出される期間を適宜調整することができ、植物が芽を出してから収穫するまでの期間全体を、成育材料と一体化した種子に含まれる肥料成分により補給することも可能になる。
【0012】
前述したような肥料成分と土壌改良剤成分とを混合して粒状に構成したものでは、その粒に含まれる磁性体により成育材料と一体化した種子の周囲に磁場が形成される。そして、種子の発芽に磁界が役立つといわれるように、種子の発芽の作用を補助するとともに、成育材料と一体化した種子の周囲に生息する微生物の増殖を活発にさせる環境を形成する。また、本発明の成育材料と一体化した種子を用いて種蒔きする際に、その表面に多糖類、アミノ酸等を付着させることにより、成育材料と一体化した種子の表面部分で、それ等の栄養成分により微生物が大量に増殖するので、その微生物の活動により地温が上昇するという効果を発揮する。そして、磁界の作用と、微生物の増殖の作用とにより種子の発芽環境を良好に形成し、種子の発芽率を向上させることが可能になる。
【0013】
前記成育材料と一体化した種子を種蒔きする際に、その粒の表面に付着させる多糖類としては、例えば、オリゴ糖、キトサンオリゴ糖や、その他の任意の糖類を用いることができるもので、キチン質を含有させる場合には、キチン質を好む菌類の増殖を助けて、カビ等のような糸状菌の増殖を阻止することができる。また、アミノ酸類としては、任意のアミノ酸や核酸等を用いることが可能であり、それ等の多糖類とアミノ酸等を水溶液の状態にしたものを、成育材料と一体化した種子の表面に付着させて種蒔きすることにより、成育材料と一体化した種子の表面部分で微生物や植物の成育に有効に作用する微生物の増殖を促進させることができる。
【0014】
【実施例】
本発明の種子を肥料成分や土壌改良材成分とに混合して製造する成育材料と一体化した種子は、図1のフローチャートに示すようにして製造することができるが、本実施例の場合には、種子を保護するための表面処理を最初に行う必要がある。そこで、最初に種子の表面を断熱性を有する材料により保護するために、混合機1に対して種子aと、無機質の多孔質の微粉末b、接着剤作用を発揮する多糖類の水溶液cを投入し、前記混合機1により攪拌して、種子の表面に所定の厚さの被膜を形成し、種子の保存期間中に肥料成分による影響が生じないようにする。前記多孔質の微粉末としては、例えば、活性炭や無機質の多孔質材料を微粉末状に粉砕したものを用いることが可能であり、前記微粉末で種子の表面に被膜を形成する処理を行って、表面保護層により覆うことにより、以後の押し出し工程や乾燥工程等で加熱作用が付与された場合でも、それ等の外部から加えられる熱が、種子に悪影響を与えないように保護することができる。
【0015】
そして、前記混合機1で種子の表面に多孔質微粉末を接着剤成分により付着させてから、乾燥機2に入れて乾燥させることにより、表面処理した種子3を製造する。前記粒状の成育材料と一体化した種子を乾燥させる際には、種子が内部に収容されている状態にあることから、種子に悪影響を与えるような高温での乾燥手段を適用することは困難であり、20〜40℃程度の温風を当てる状態で、低温乾燥手段を用いるようにする。また、粒の乾燥に際しては、長い時間をかけると種子が水を吸収して性質が変化する等の問題が発生する虞があることから、できるだけ小さい粒を対象にして、短時間で乾燥処理できるようにすることが要求される場合もある。
【0016】
前述したようにして製造した種子3と、土壌改良剤成分d、肥料成分e、水分fとを任意の順序で混合機4に入れて、前記混合機4により混練して、硬い粘土状の混練物を作成する。次いで、前記混練物を押出機5により棒状または板状に成型し、その成形物を造粒機6により任意のサイズの粒として成型し、粒状体を乾燥機7に入れて乾燥させ、中に含まれる水分を種子が発芽しない程度に減少させる処理を行って、成育材料と一体化した種子の製品を得る。前記押出機5としては、図2に示されるような装置を使用することができるもので、前記図2に示される装置5では、シリンダ10の内部に、モータと減速機とを組み合わせた駆動装置12により駆動されるスクリュー11を設けておき、前記スクリュー11により混合物を攪拌しながら、排出口14から押し出すようにする。また、前記排出口には多数の小さな孔を設けた円板15を取り付けておき、前記円板15の孔から細い棒状の混合物を排出させるようにすることができる。そして、前述したようにして作成した細い棒状の混合物を、造粒工程では任意の長さに切断する等の処理を行って乾燥機に案内し、乾燥させた製品を得るようにする。
【0017】
前記押出機としては、例えば(株)林田鉄工において製作販売しているKM400、KM1000型の土練機等を使用することができるもので、前記土練機は陶芸用の土練機として使用されている装置である。また、前記土練機では、シリンダの内部に配置するスクリューにより土の混練と攪拌とを行い、シリンダ先端部から押し出すことができる装置として構成されるものであるが、本発明においては、肥料成分と土壌改良成分、および種子を混合したものを、前記土練機を用いてシリンダの先端から押し出して、板状または棒状の任意の形状のものとして成型させるようにする。前記押し出し物の形状を細い棒状のものとするためには、土練機のシリンダの先端部に、多数の円形断面の孔を設けた板部材を配置して、ひき肉押出機から排出されるひき肉のような混合物を排出させるようにする。なお、前記土練機のような押出装置を用いる場合に、押し出される棒状体が、棒状の形状を維持できるようにするために、混合物に対する水分の比率の調整を行ったり、各構成材料の混合比率を調整したりすることが必要とされる。
【0018】
また、板状のものを成型する際には、図3に示されるように、前記土練機のシリンダの排出口に大きな孔を設けた排出ガイド16を配置して、太い棒状のものを排出させ、前記排出口に近接させて設けたロール装置8を用いて、棒状のものを板状に成型することができる。そして、前記板状のものを造粒機に案内して、切断や打ち抜き等を行って粒状のものを作成し、乾燥工程を経て成育材料と一体化した種子の製品を得るようにする。したがって、前述したようにして、種子の表面に対する保護被膜を形成した後で、肥料成分や土壌改良材成分に種子を混合して、乾燥させた粒を作成することにより、図4、5に示すような製品9を作成することが可能である。そして、造粒機で略丸形に製造した製品9では、肥料成分eと土壌改良剤成分dとの混合物の中に、表面を断熱材料で覆った状態の種子3を分散させる状態で一体化した成育材料と一体化した種子を製造することができる。また、棒状体や板状体を分割して作成する製品では、図5に示すように、不定形の粒の内部に表面を断熱材で覆った状態の種子3を分散させた製品9aを作成することができる。そして、前述したようにして作成した成育材料と一体化した種子は、種子の発芽を防止できる程度の水分に乾燥させることにより、製造してから種蒔きを行う間での種子を含む粒状体の保管を容易に行い得るとともに、種蒔きの作業を容易に行い得るようにすることができる。
【0019】
【実施例2】
前述したように、成育材料と一体化した種子を粒状に構成することの他に、本発明においては、前記押出機を用いて肥料成分と土壌改良材成分とを混合した棒状のものを作成し、乾燥させた後で、その棒状の部材に種子を装着して成育材料と一体化した種子を作成するような手段を用いることができる。前記棒状体に対して後から種子を挿入するためには、まず、前記図2に示されたような押出機5の排出口に取り付ける孔開き円板15に対して、突起18を設けた孔17を多数配置し、その円板の孔17を介して細い棒状体を押し出し成型する。前述したような孔を介して押し出された棒状体は、図7に示すように、棒状体20に溝21が所定の深さに形成された状態となる。前述したようにして棒状体を作成してから、棒状のままで乾燥機に入れて、混合物の成分が変質しない程度の高温で乾燥させ、次の種子を収容する工程に移行させる。
【0020】
次いで、前記棒状体20の溝21に対して、図8に示すようにして種子aを入れて、棒状体本体の構成材料と同じ成分のペースト22を充填し、種子を埋めて保持させるようにする。また、前記肥料成分と土壌改良材成分とを混合したペーストに代えて、土壌改良材成分と多糖類とを混合したペーストを使用することもできる。そして、それ等のペーストを用いて棒状体の溝に種子を保持させた状態で、乾燥機に入れてペースト中の水分の量を調整し、成育材料と一体化した種子に種子を担持させた状態で保管できるようにする。なお、本実施例に示すように、土壌改良材成分と肥料成分とを混合して作成する棒状体を、乾燥機に入れて乾燥させる際には、前記図4、5に示されたもののように、種子を一体に設けていないことから、比較的高温で乾燥させる手段を適用することが可能である。そこで、肥料成分等に悪影響を与えないような高温の熱風をあてるようにして乾燥処理を行って、棒状体を作成することができる。さらに、棒状体の溝に種子を収容させてから、ペーストを乾燥させる場合には、種子に悪影響が与えないような低温での乾燥処理を行う必要があり、同じ乾燥機を使用して2回の乾燥処理を行う場合にも、異なる温度での処理を行うようにする。
【0021】
前述したように、溝を一体に形成した棒状体に対して、後で種子を保持させるような手段を用いることの他に、本発明においては、肥料成分と土壌改良材成分とを混合したものを、棒状に押し出してから、所定の間隔で孔を設けて、その孔に種子を挿入する手段を用いることも可能である。また、粒状の部材を作成してから、太い針状のもので所定の深さの孔を設けて、その孔に種子を挿入して、表面にペーストを付着させる手段を用いることもできる。前記棒状体や粒状体に孔を設ける場合には、押出機から棒状体を押し出してから、乾燥させる前の段階に孔あけの作業を行うと、その作業が非常に容易に行われることになる。そして、孔を設けた棒状体等を乾燥させてから、孔に種子を挿入して、再び乾燥させることにより、成育材料と一体化した種子を作成することが可能になる。
【0022】
前述したようにして作成する棒状の成育材料と一体化した種子は、粒状に短く切断したり、任意の長さに切断することにより、1個の成育材料と一体化した種子に収容する種子の数を規定することが可能になる。また、棒状体の太さ等を選択することにり、1個の種子に対応する肥料成分等の量を規定でき、種子が発芽してから所定の期間に必要とされる栄養成分をその成育材料と一体化した種子により十分に補給できるようにすることが可能になる。
【0023】
【実施例3】
前記押出機を使用して、棒状の部材を作成する際に、シリンダの径に対する押し出しガイドの孔の合計が非常に小さい値となるように設定すると、混合材料に対する押し出し圧力が大きくなる。そして、大きな圧力で混合物を押し出した場合には、孔から排出された混合物が、図9の側面図、および、図10の断面図に示されるように、大径の突起部25と、溝部26とを有する形成する棒状体20aとして形成される。前記棒状体20aに形成される突起25と凹み部分26の形状は、混合する材料の性質や、柔らかさの程度等により変化するものであるが、押し出された棒状体では、土練り機の内部で大きな圧力が加えられていたものが、押し出しガイドの孔から排出されると、外気の圧力が低いことから、表面部分がはじけるようにして突起部が形成され、その突起の基部に凹部が形成される状態となる。また、前記混合する材料の配合比率、水分の含有比率等の条件により、突部の間に所定の深さの凹部を自然に生じる状態で、表面に凹凸が形成された押し出し物を作成することができる。
【0024】
そこで、前記実施例2に示したように、肥料成分と土壌改良材成分とを混合したものを高い圧力で押し出すことにより、棒状体20aの表面には多数の凹凸が自動的に形成される状態となることを利用して、その棒状体を乾燥させてから、表面の凹部に対して種子を接着材料を用いて付着させる状態で一体に保持させ、その後に再び乾燥させて成育材料と一体化した種子単位体を作成することも可能である。なお、前記図9に示されるようにして、種子単位体を作成する場合には、前記種子単位体がその表面に多数の凹凸を有するために、その表面積が大きくなり、土の中に生息する微生物等が成育するための環境を整えることができる。さらに、種子の単位体の突起部の肥料成分が最初に放出され、その後に棒状体の本体から栄養成分が放出される状態となるために、種子が発芽した直後の栄養の要求度合いが少ない時と、大きく成長した時の多量の栄養を要求する時期とに対応させて、肥料成分の供給量を自動的に調整することが可能になる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の成育材料と一体化した種子は、前述したようにして製造するものであるから、土壌改良材成分が植物の成長に役立つ微生物の増殖環境を良好に維持し、肥料成分を植物が吸収しやすい状態で供給することが可能になり、植物の成育環境を成育材料と一体化した種子自体で提供することが可能になる。また、肥料成分と土壌改良材成分とを粒状に形成する際に、その混合物の水分の調整を行うことにより、肥料成分が放出される時間等を調整することが可能である。そして、任意の種類の種子に対して、本発明の成育材料と一体化した種子は、機械装置を使用して種蒔きを行うことができるので、種蒔きの手間を簡素化することができ、追肥の手間を省き、農家の負担を軽減することが可能になる。
【0026】
本発明においては、成育材料と一体化した種子に含まれる種子の種類に応じて、任意の肥料成分と土壌改良材成分とを混合することができるので、植物の成育に必要とされる成分を多く含ませることにより、その対象とする植物に適した成育環境を提供できる。そして、前記成育材料と一体化した種子を蒔く際に、表面に多糖類やアミノ酸成分のような微生物の栄養成分を付着させることができるので、前記微生物の栄養成分により粒状体の周囲に有用微生物を大量に増殖させて、種子の発芽・成育環境を良好に維持でき、成育材料と一体化した種子の内外で微生物の増殖を活発に行わせることができる。また、土壌改良剤成分に含まれる磁性体から与えられる磁界により、種子の発芽の作用を促進させとともに、種子の発芽率を向上させることもできる。さらに、本発明の種子の単位体または粒状体からは、植物の成育状態に対応させて、必要とされる栄養成分を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成育材料と一体化した種子を作成する工程を示す工程図である。
【図2】本発明に使用する押出機の説明図である。
【図3】押出機に圧延装置を組み合わせる場合の説明図である。
【図4】本発明の成育材料と一体化した種子の断面図である。
【図5】形状の異なる成育材料と一体化した種子の断面図である。
【図6】棒状体に溝を設ける押し出しガイドの構成を示す説明図である。
【図7】図6の孔から押し出される棒状体の説明図である。
【図8】棒状体の溝に種子を挿入したものの説明図である。
【図9】高い圧力で押し出した場合の棒状体の形状を示す説明図である。
【図10】図9の棒状体の断面図である。
【符号の説明】
1 混合機、 2 乾燥機、 3 表面処理した種子、
4 混合機、 5 押出機、 6 造粒機、 7 乾燥機、
9 成育材料と一体化した種子、
a 種子、 b 多孔質微粉末、 d 土壌改良剤、
e 肥料成分、 10 シリンダ、 11 スクリュー、
15 排出ガイド板、 20 棒状体、 21 溝。
Claims (3)
- 混合機に、種子と、無機質の多孔質の微粉末、接着剤作用を発揮する多糖類の水溶液を投入し、
前記混合機により攪拌して、種子の表面に被膜を形成する工程と、
前記混合機で被膜を形成した種子を、乾燥機に入れて乾燥させる工程と、
前述したようにして製造した種子と、土壌改良剤成分、肥料成分、水分とを任意の順序で混合機に入れて、前記混合機により混練して、硬い粘土状の混練物を作成する工程と、 前記混練物を押出機により棒状または板状に成型し、その成形物を造粒機により任意のサイズの粒として成型し、粒状体を乾燥機に入れて乾燥させ、中に含まれる水分を種子が発芽しない程度に減少させる処理を行う工程とを経て、製造することを特徴とする成育材料と一体化した種子の製造方法。 - 前記無機質の多孔質の微粉末として、活性炭の微粉末、パーライトやゼオライトのような無機質成分を高温処理したセラミック材料の微粉末から1種または複数種類を選択して用い、
前記無機質の多孔質の微粉末で表面を覆った種子と、石灰質材料と磁性体を混合した土壌改良剤成分と、有機肥料成分のような肥料成分とを水分を添加して混合したものを、粒状に形成して乾燥させる工程を経て、製造することを特徴とする請求項1に記載の成育材料と一体化した種子の製造方法。 - 種子と、無機質の多孔質の微粉末、接着剤作用を発揮する多糖類の水溶液を、混合機により攪拌して種子の表面に被膜を形成し、
前記混合機で被膜を形成した種子を、乾燥機に入れて乾燥させる工程と、
前述したようにして製造した種子と、土壌改良剤成分、肥料成分、水分とを任意の順序で混合機に入れて、前記混合機により混練して、硬い粘土状の混練物を作成する工程とを経て、
前記混練物を押出機により棒状に成型する工程においては、
前記押出機のシリンダの径に対して、押し出しガイドの孔の合計面積を小さい値となるように設定して、大きな圧力で混合物を押し出して製造することを特徴とする請求項1または2に記載の成育材料と一体化した種子の製造方法。
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