JP3539612B2 - 鋼管シーム部の平滑化装置および方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管シーム部の平滑化装置および方法に関し、詳しくは、造管ラインに沿って連続通材されるオープン管の両エッジ部を固相圧接適正温度域で衝合接合して成管した鋼管のシーム部に生じた増肉をオンラインで平滑化する鋼管シーム部の平滑化装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶接鋼管は、鋼板または鋼帯(帯鋼)を管状に成形しその継目を溶接したもので、小径から大径まで各種の製造法によりつくられているが、主な製造法として、電気抵抗溶接(電縫)、鍛接、電弧溶接によるものが挙げられる。
小径〜中径鋼管用としては、高周波誘導加熱を利用した電気抵抗溶接法(電気抵抗溶接鋼管、電縫管)が主として利用されている。この方法は、連続的に帯鋼を供給し、成形ロールで管状に成形してオープン管とし、続いて高周波誘導加熱によりオープン管の両エッジ部端面を鋼の融点以上に加熱した後、スクイズロールで両エッジ部端面を衝合溶接して鋼管を製造する方法である(例えば、第3版鉄鋼便覧第III 巻(2)1056〜1092頁)。
【0003】
上記した高周波誘導加熱を利用した電縫管の製造方法では、オープン管の両エッジ部端面を鋼の融点以上に加熱するため、電磁力の影響により溶鋼が流動し、生成された酸化物が衝合溶接部に噛み込まれペネトレータ等の溶接欠陥あるいは、溶鋼飛散(フラッシュ)が発生しやすいという問題があった。 この問題に対し、例えば、特開平2-299782号公報には、2つの加熱装置を有する電縫鋼管の製造法が提案されている。すなわち、第1の加熱装置でオープン管の両エッジ部の温度をキュリー点以上に加熱し、第2の加熱装置で更に融点以上に加熱し、すぐ下流に設けたスクイズロールで両エッジ部を衝合溶接して鋼管を製造する。また、特開平2-299783号公報には、第1の加熱装置で周波数45〜250kHzの電流を流し、両側エッジ部を予熱し、第2の加熱装置で更に融点以上に加熱し、スクイズロールで両エッジ部を衝合溶接して鋼管を製造する電縫管製造装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの電縫管製造技術では、エッジ部を均一に加熱することは示唆しているものの、両エッジ部を鋼の融点以上に加熱するため、衝合溶接時に、溶融した鋼が管の内外面に排出されビード(余盛)が形成される。そのため、衝合溶接後に管内外面の溶接ビードの除去が必要であり、ほとんどがビード切削用バイトにより切削されて除去されている。
【0005】
このようなことから、この方法では、
▲1▼ビード切削用バイトの切削量の調整で、材料と時間のロスが発生する。
▲2▼ビード切削用バイトは消耗品であるため、造管速度によって異なるが、3000〜4000mのビード切削長毎にバイトを交換する必要があり、そのため、1時間程度ごとに3〜5分間のバイト交換のためのラインの停止を余儀なくされる。
【0006】
▲3▼特に造管速度が100m/min を超える高速造管では、ビード切削用バイトの寿命が短く、交換頻度が高い。
など、ビード切削がネックとなり、高速造管ができないため生産性が低いという問題があった。
一方、比較的小径鋼管用として極めて高い生産性を有する鍛接鋼管製造方法がある。この方法は、連続的に供給した帯鋼を加熱炉で1300℃程度に加熱した後、成形ロールで管状に成形してオープン管とし、続いてオープン管の両エッジ部に高圧空気を吹き付けて端面のスケールオフを行った後、ウェルディングホーンにより端面に酸素を吹き付け、その酸化熱で端面を1400℃程度に昇温させてから、鍛接ロールで両エッジ部端面を衝合させ固相接合して鋼管を製造する方法である(例えば、第3版鉄鋼便覧第III 巻(2)1056〜1092頁)。
【0007】
しかし、この鍛接鋼管製造方法では、
▲1▼端面のスケールオフが完全ではないので、鍛接衝合部へのスケール噛込みが発生し、シーム部の強度が母材部に比べてかなり劣る。このため、偏平試験で、電縫鋼管なら偏平高さ比h/D=2t/D(t:板厚)を達成できるのに対し、鍛接鋼管では偏平高さ比h/Dが0.5 程度に劣るものとなる。
【0008】
▲2▼帯鋼を高温に加熱するため、管表面にスケールが生成し表面肌が悪い。
など、造管速度が300m/min 以上と速く生産性は高いが、シーム品質及び表面肌が悪く、JISのSTK等の強度信頼性や表面品質を要求されるものは製造できないという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を有利に解決するには、本発明者らの創案になる固相圧接造管法によるのが好適である。これは、オープン管のエッジ部を、キュリー点(770 ℃程度)以上融点未満の温度域(予熱温度域という)に誘導加熱(エッジ予熱という)し、次いで空冷により予熱温度域内でエッジ部の温度均一化を行った後、固相圧接適正温度域(1300℃〜1500℃)に誘導加熱(本加熱という)して衝合・圧接するという従来にない造管法である。この固相圧接造管法で製造される鋼管(固相圧接鋼管と称する)は、従来の溶接管のようにビード切削の必要がないので高速造管が可能で生産性が高く、しかも従来の鍛接管の欠点である酸化起因のシーム品質および表面肌の劣化もない。
【0010】
しかしながら図5に示すように、固相圧接された鋼管4には、エッジ部の到達温度あるいはスクイズロールによる絞り込みの程度(アップセット量)によりシーム部10の管内外側(a)または管内側(b)に管体肉厚の5%以上の増肉を生じることがある。このようなシーム増肉部10Xは、鋼管のネジ切り等の加工性を阻害し、また、鋼管を絞り圧延する際には内面角張り等の偏肉を助長するので好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、固相圧接造管法で製造される鋼管のシーム部増肉を有効に抑制できる鋼管シーム部の平滑化装置および方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オープン管両エッジ部を誘導加熱後スクイズロールで衝合・圧接して製管された鋼管のシーム増肉部を平滑化する鋼管シーム部の平滑化装置であって、管外、管内からシーム増肉部を挟圧して圧延する外ロール、内ロールと、該内ロールを回転自在に保持し冷却水の通水路を内蔵する内ロール台車と、該内ロール台車を管内で管軸方向に移動させてシーム増肉部の温度が 900 ℃〜 1000 ℃に収まる位置範囲内の定位置に固定しかつ前記通水路に冷却水を供給する連結ロッドとを備えたことを特徴とする鋼管シーム部の平滑化装置(本発明装置)である。
【0013】
前記本発明装置は、管壁を介して前記内ロール台車を支承するガイドローラが配置されたものであること、また、スクイズロールがシーム部に当接するように配置されてなることがそれぞれに好ましく、また、シーム部に当接するロールが曲げ強度15kg/mm2以上、耐熱衝撃温度差 150℃以上の特性を有する素材からなること、さらには、かかる素材が窒化ケイ素系、炭化ケイ素系、ジルコニア系、またはアルミナ系のセラミックスであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記平滑化装置を用いる鋼管シーム部の平滑化方法であって、前記通水路に冷却水を通水しながら前記外ロールを鋼管半径方向に移動して該外ロールと前記内ロールとの間隔を調整することにより圧延力を発生させてシーム増肉部を圧延することを特徴とする鋼管シーム部の平滑化方法(本発明方法)である。
【0015】
前記本発明方法においては、鋼管の肉厚変更時に管軸方向(=造管ライン方向)の前記定位置を変更し、前記外ロールと前記内ロール台車とを管軸方向に移動させて変更後の定位置に固定するようにするのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の平滑化装置(本発明装置)の一例を示す(a)は模式的側断面図、(b)は(a)のAA矢視図であり、オープン管1が両エッジ部をワークコイル2で誘導加熱された後スクイズロール3で衝合・圧接されて鋼管4に製管される過程で、シーム増肉部10Xが平滑化装置により平滑化される状態を示している。
【0017】
図示のように、本発明装置は、管外、管内からシーム増肉部10Xを挟圧して圧延する外ロール5、内ロール6と、該内ロール6を回転自在に保持し冷却水の通水路11を内蔵する内ロール台車7と、該内ロール台車7を管内で管軸方向に移動させて定位置に固定しかつ前記通水路11に冷却水を供給する連結ロッド9とを備えている。
【0018】
内ロール台車7は鋼管4内面に転動可能に当接する車輪8を有する。連結ロッド9は、先端(通管方向の下流側の端)に内ロール台車7を連結する連結器12を有し、後端(通管方向の上流側の端)をオープン管1外部に固定された連結ロッド移動機構14によって管軸方向に移動可能に支持され、内部には連結器12を介して内ロール台車7に内蔵された通水路11に接続する冷却水の供給経路を有する。なお、11aは行き通水路、11bは戻り通水路である。また、連結ロッド移動機構14としては、例えば図6に示すように、連結ロッド9外面に造管ライン方向に延長する案内歯16を設け、この案内歯16に駆動ギヤ15を噛み合わせて構成することができる。
【0019】
シーム増肉部10Xをより高温で圧延するほうが平滑化しやすいので、外ロール5と内ロール6とはスクイズロール3にできるだけ近づけて配置するほうがよく、好ましくはスクイズロール3出側でシーム部10の温度が約900 ℃を下回らない位置に配置する。ただし、シーム増肉部10Xが1000℃以下に温度降下しないうちにこれを圧延すると、場合によってはその中央部のみに変形が集中し両端部が厚いままで残ることがあるから、外ロールと内ロール台車が固定配置されるライン方向の定位置(すなわち圧延位置)は、シーム増肉部10Xの温度が900 ℃〜1000℃の範囲に収まる位置であることとする。
【0020】
そうすると、内ロール台車7はシーム部10からの輻射熱を受けて600 ℃程度に昇温し、剛性が低下してシーム増肉部10Xを圧延することが困難になる。そこで、内ロール台車7には冷却水を流すための通水路11を内蔵させる。本発明者らの実験によれば、内ロール台車7の内部に通水路11を設けて適量の冷却水を流すことにより、内ロール台車7の昇温を、剛性の落ちない温度域に含まれる230 ℃程度に抑えることが可能である。
【0021】
なお、シーム増肉部10Xが圧延されるときの容易変形範囲は、約 800℃以上の温度域にある範囲である。そのため、シーム増肉部10Xが過度に押し込まれないように、外ロール5、内ロール6の胴長(幅)を管周方向の容易変形範囲より大きくとることが肝要である。例えば、オープン管を固相圧接して得られる外径62mmφ×内径56mmφの鋼管の容易変形範囲(管周方向)は約12mmであり、これに応じて内ロール5の幅を例えば16mmとする。なお径についても剛性確保の観点から大きいほうが望ましいが管内径と睨み合わせて例えば40mmとする。外ロール5については管外に配置されるので寸法が管内径に制限されないから、内ロール6よりも幅、径ともに大きいものを適用できる。
【0022】
このように、管内という限られた空間内でできるだけ寸法の大きい内ロール6を内ロール台車7に保持させることから、内ロール台車7のサイズは逆に小さくせざるを得ず、しかも圧延を容易にするには通水路11を内蔵させる必要があるから、とくに小径管の場合に、内ロール台車7に圧延力発生のための内ロール6移動(昇降)機構の設置スペースを確保することは困難である。
【0023】
そこで、本発明装置を用いて鋼管シーム部を平滑化する方法(本発明方法)として、通水路11に冷却水を通水しながら外ロール5を鋼管半径方向に移動(昇降)して該外ロール5と内ロール6との間隔を調整することにより圧延力を発生させてシーム増肉部10Xを圧延する方法を採用する。通水せずに外ロール5を押し下げると、内ロール台車7の温度上昇による剛性低下のため内ロール6が沈み込み、鋼管4の寸法精度を維持することが難しくなる。
【0024】
これは外径が一定で肉厚の異なる鋼管に対して適用される方法であり、肉厚が薄くなると外ロール5を内ロール6に近づけるように移動させてロールギャップを調整するものである。このとき、鋼管4は外ロール5で押し込まれてやや偏平化することがあるが、次工程の絞り圧延により自然に矯正されて再び真円化するので、特に問題とはならない。
【0025】
ただし、先行材と次材間で肉厚が変更されると、シーム増肉部10Xの冷却速度が変わり、変更前後の肉厚差によっては先行材に対応する造管ライン方向の定位置(圧延位置)を通過する次材のシーム増肉部温度が好適圧延温度範囲(前記したように900 〜1000℃)を外れることがある。この外れ量が大きくなると、図7に示すように、低温側では被圧延部が硬化し過ぎて目標肉厚の20%程度の増肉残りとなり(a)、高温側では被圧延部が軟らか過ぎてサイドに増肉部がはみ出す所謂過圧延となって(b)、シーム部の平滑化が困難になる。
【0026】
しかし、本発明方法によれば、鋼管の肉厚変更時に管軸方向の前記定位置を、次材のシーム増肉部温度が前記好適圧延温度範囲に収まる造管ライン区間内に変更し、前記外ロールと前記内ロール台車とを造管ライン方向に移動させて変更後の定位置に固定することができるので、このような困難を容易に克服することができる。内ロール台車を移動させるには、例えば図6に示したような連結ロッド移動機構14によって連結ロッド9を進退させればよく、一方、外ロールを移動させるには、例えば造管ライン方向に平行にレールを設け、該レールに外ロールのハウジングを摺動可能に係合させる等の外ロールハウジング移動機構を設ければよい。
【0027】
定位置(圧延位置)は、例えば図8に示すように、接合後のシーム増肉部の冷却曲線を肉厚毎に計算あるいは実測によって求めておき、肉厚変更時に、対象肉厚の冷却曲線上で900 〜1000℃の温度範囲に対応づけられる時間範囲(衝合圧接に係る接合点(=V点)からの時間範囲)を求め、この時間範囲にそのときの通管速度vを掛けて得られる好適位置範囲内(好ましくは該範囲の中央位置)に設定し直せばよい。
【0028】
なお鋼管4の外径の変更に際しては、本発明装置の連結器12より下流側を変更後の外径に対応するサイズのものと交換する。
ところで、図1に示した内ロール台車7は圧延反力を受けて車輪8で管壁を外向きに押すことになるが、鋼管4の剛性が弱くて管体の変形が懸念されるような場合には、図2に示すように、管壁を介して内ロール台車7を支承するガイドローラ13を配置するのが好ましい。なお、図2のAA矢視図は図1(b)と同じである。
【0029】
また、シーム増肉部10Xにおける管外側の盛り上がりは、スクイズロール3をこの部分に当接させることによってその形成を抑制できるので、外ロール5の負担を軽くする観点から、例えば図3に示すように、スクイズロール3は片方でシーム部10に当接する(シーム部10を踏む)ように配置されるのが好ましい。なお、図3のAA矢視図は図1(b)と同じである。
【0030】
また、シーム部10に当接するロール(外ロール5、内ロール6、および場合によってはスクイズロール3の少なくとも片方)は、増肉平滑化の際に、管体からの反力によって15kg/mm2以上の曲げ応力が生じ、かつ当該ロールの管体への当接面の圧接点(シーム部の始点)近傍とそれ以外の領域との温度差は150 ℃以上にまで達していることが多い。
【0031】
そのため、これらのロールの寿命延長のために、当該ロールの素材は、曲げ強度15kg/mm2以上、耐熱衝撃温度差150 ℃以上の特性を有するもののうちから選択することが好ましい。なお、ここで評価に用いた耐熱衝撃温度差とは、材料試験片として3mm×4mm×40mmの角棒(JIS 4点曲げ試験用の仕様)を使用して、試験片を所定温度まで加熱した後に、水中に投下した際に試験片にクラックが発生しない温度差(加熱温度と水温との差)のことである。
【0032】
現状の技術水準に照らせば、かかる素材としては、窒化ケイ素(Si3N4 )系または炭化ケイ素(SiC )系またはジルコニア(ZrO2)系またはアルミナ(Al2O3 )系のセラミックスが最適である。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
本発明装置を図3に示した形態で鋼管製造ラインに設置し、シーム増肉部10Xを平滑化しながら、固相圧接造管法により外径62mm×肉厚1.6 〜3mmの配管用、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G3452のSGP、G3444のSTK相当品)の素管を製造し、次いでこれらの素管を14スタンドの3ロール式絞り圧延機(ストレッチレデューサ)に通して外径21.7mm×肉厚1.6 〜3mmの製品管とした例を本発明方法の実施例1とした。
【0034】
実施例1では、シーム増肉部10Xに当接するスクイズロール3、外ロール5、内ロール6の素材を、曲げ強度85kg/mm2、耐熱衝撃温度差 800℃なる特性を有する窒化ケイ素系のセラミックスとした。また、本発明装置運転時には通水路11(図1(b))に冷却水を流して内ロール台車7中央部の温度を200 ±15℃に維持し、内ロール6の位置は固定とし、肉厚変更時には、外ロール5を鋼管半径方向に移動させて内ロール6とのロール間隔を調整することにより圧延力を付与した。
【0035】
一方、スクイズロール3をシーム増肉部10Xの両脇に配置し且つシーム部10の平滑化をビード切削で行う従来型の鋼管製造ラインで上記と同規格同寸法の素管を固相圧接造管法によって製造後、実施例1と同じ工程で製品管とした例を比較例1とした。
この結果、実施例1では、固相圧接時の最大造管速度が比較例の100m/minから150m/minへ、製品管のシーム品質(図4に試験要領を示す偏平試験での偏平高さ比h/Dの平均値で評価)が比較例1の0.5 から 0.2へ、シーム部長手方向厚み変動が比較例1の−0.2 〜+0.3mm から±0.15mmへと、いずれも顕著に向上し、表面肌についても問題のない製品管が得られた。
(実施例2)
本発明装置を図3に示した形態で鋼管製造ラインに設置し、シーム増肉部10Xを平滑化しながら、固相圧接造管法により外径62mm×肉厚1.6 および3.0mm の一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G3444のSTK相当品)の素管を、成形前に薄肉材を先行材として板継ぎ溶接して連続的に製造し、次いでこの素管を14スタンドの3ロール式絞り圧延機(ストレッチレデューサ)に通管速度105m/minで通して外径21.7mm×肉厚1.6 (先行材)および3.0mm (次材)の製品管とした例を本発明方法の実施例2とした。
【0036】
実施例2では、シーム増肉部10Xに当接するスクイズロール3、外ロール5、内ロール6の素材を、曲げ強度85kg/mm2、耐熱衝撃温度差 800℃なる特性を有する窒化ケイ素系のセラミックスとした。また、本発明装置運転時には通水路11(図1(b))に冷却水を流して内ロール台車7中央部の温度を200 ±15℃に維持し、先行材圧延時の造管ライン方向の圧延位置(内ロール6と外ロール5の配設位置)は先行材シーム増肉部温度が950 ℃に降下する位置(V点から1800mm下流の位置)に設定し、次材(厚肉材)に切り換わる肉厚変更時には、造管ライン方向の圧延位置を次材シーム増肉部温度が950 ℃に達する位置(V点から3300mm下流の位置)に変更し、外ロール5を鋼管半径方向の外向きに移動させて内ロール6とのロール間隔を調整することにより圧延力を付与した。
【0037】
一方、肉厚変更時に造管ライン方向の圧延位置を変更しなかったことを除き実施例2と同一工程で製品管を得た例を比較例2(本発明の次善例に該当)とした。
この結果、比較例2では、次材のシーム増肉部がやや過圧延気味となり、次材製品管の長手方向中央部断面の観察結果によれば、図7(b)に示したような、シーム増肉部の中央部が凹み両端部が隆起する断面形状を呈した(中央部凹み量は母管部肉厚の20%程度、両端部隆起量は母管部肉厚の20%程度)。これに対し、実施例2の次材ではそのような凹みや隆起は認められず、シーム部が良好に平滑化されており、シーム部周辺(シーム部を中心として円周方向に±15mmの範囲)の母管部に対する肉厚偏差は± 0.2mmの範囲に収まっていた。なお、比較例2、実施例2の先行材については、実施例2の次材と同程度にシーム部が良好に平滑化されていた。
【0038】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、ビード切削の必要がなく高い生産性が確保できしかもシーム品質および表面肌に優れ且つシーム部肉厚偏差の格段に小さい固相圧接鋼管が得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平滑化装置(本発明装置)の一例を示す(a)は模式的側断面図、(b)は(a)のAA矢視図である。
【図2】本発明装置の他の例を示す模式的側断面図である。
【図3】本発明装置の他の例を示す模式的側断面図である。
【図4】偏平試験要領の説明図である。
【図5】シーム部に生じる増肉の説明図である。
【図6】連結ロッド移動機構の1例を模式的に示す(a)は一部切欠側面図、(b)は(a)のAA矢視図である。
【図7】シーム増肉部圧延における(a)は増肉残り、(b)は過圧延の説明図である。
【図8】定位置(圧延位置)範囲設定要領の説明図である。
【符号の説明】
1 オープン管
2 ワークコイル
3 スクイズロール
4 鋼管
5 外ロール
6 内ロール
7 内ロール台車
8 車輪
9 連結ロッド
10 シーム部
10X シーム増肉部
11 通水路
12 連結器
13 ガイドローラ
14 連結ロッド移動機構
15 駆動ギヤ
16 案内歯
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管シーム部の平滑化装置および方法に関し、詳しくは、造管ラインに沿って連続通材されるオープン管の両エッジ部を固相圧接適正温度域で衝合接合して成管した鋼管のシーム部に生じた増肉をオンラインで平滑化する鋼管シーム部の平滑化装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶接鋼管は、鋼板または鋼帯(帯鋼)を管状に成形しその継目を溶接したもので、小径から大径まで各種の製造法によりつくられているが、主な製造法として、電気抵抗溶接(電縫)、鍛接、電弧溶接によるものが挙げられる。
小径〜中径鋼管用としては、高周波誘導加熱を利用した電気抵抗溶接法(電気抵抗溶接鋼管、電縫管)が主として利用されている。この方法は、連続的に帯鋼を供給し、成形ロールで管状に成形してオープン管とし、続いて高周波誘導加熱によりオープン管の両エッジ部端面を鋼の融点以上に加熱した後、スクイズロールで両エッジ部端面を衝合溶接して鋼管を製造する方法である(例えば、第3版鉄鋼便覧第III 巻(2)1056〜1092頁)。
【0003】
上記した高周波誘導加熱を利用した電縫管の製造方法では、オープン管の両エッジ部端面を鋼の融点以上に加熱するため、電磁力の影響により溶鋼が流動し、生成された酸化物が衝合溶接部に噛み込まれペネトレータ等の溶接欠陥あるいは、溶鋼飛散(フラッシュ)が発生しやすいという問題があった。 この問題に対し、例えば、特開平2-299782号公報には、2つの加熱装置を有する電縫鋼管の製造法が提案されている。すなわち、第1の加熱装置でオープン管の両エッジ部の温度をキュリー点以上に加熱し、第2の加熱装置で更に融点以上に加熱し、すぐ下流に設けたスクイズロールで両エッジ部を衝合溶接して鋼管を製造する。また、特開平2-299783号公報には、第1の加熱装置で周波数45〜250kHzの電流を流し、両側エッジ部を予熱し、第2の加熱装置で更に融点以上に加熱し、スクイズロールで両エッジ部を衝合溶接して鋼管を製造する電縫管製造装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの電縫管製造技術では、エッジ部を均一に加熱することは示唆しているものの、両エッジ部を鋼の融点以上に加熱するため、衝合溶接時に、溶融した鋼が管の内外面に排出されビード(余盛)が形成される。そのため、衝合溶接後に管内外面の溶接ビードの除去が必要であり、ほとんどがビード切削用バイトにより切削されて除去されている。
【0005】
このようなことから、この方法では、
▲1▼ビード切削用バイトの切削量の調整で、材料と時間のロスが発生する。
▲2▼ビード切削用バイトは消耗品であるため、造管速度によって異なるが、3000〜4000mのビード切削長毎にバイトを交換する必要があり、そのため、1時間程度ごとに3〜5分間のバイト交換のためのラインの停止を余儀なくされる。
【0006】
▲3▼特に造管速度が100m/min を超える高速造管では、ビード切削用バイトの寿命が短く、交換頻度が高い。
など、ビード切削がネックとなり、高速造管ができないため生産性が低いという問題があった。
一方、比較的小径鋼管用として極めて高い生産性を有する鍛接鋼管製造方法がある。この方法は、連続的に供給した帯鋼を加熱炉で1300℃程度に加熱した後、成形ロールで管状に成形してオープン管とし、続いてオープン管の両エッジ部に高圧空気を吹き付けて端面のスケールオフを行った後、ウェルディングホーンにより端面に酸素を吹き付け、その酸化熱で端面を1400℃程度に昇温させてから、鍛接ロールで両エッジ部端面を衝合させ固相接合して鋼管を製造する方法である(例えば、第3版鉄鋼便覧第III 巻(2)1056〜1092頁)。
【0007】
しかし、この鍛接鋼管製造方法では、
▲1▼端面のスケールオフが完全ではないので、鍛接衝合部へのスケール噛込みが発生し、シーム部の強度が母材部に比べてかなり劣る。このため、偏平試験で、電縫鋼管なら偏平高さ比h/D=2t/D(t:板厚)を達成できるのに対し、鍛接鋼管では偏平高さ比h/Dが0.5 程度に劣るものとなる。
【0008】
▲2▼帯鋼を高温に加熱するため、管表面にスケールが生成し表面肌が悪い。
など、造管速度が300m/min 以上と速く生産性は高いが、シーム品質及び表面肌が悪く、JISのSTK等の強度信頼性や表面品質を要求されるものは製造できないという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を有利に解決するには、本発明者らの創案になる固相圧接造管法によるのが好適である。これは、オープン管のエッジ部を、キュリー点(770 ℃程度)以上融点未満の温度域(予熱温度域という)に誘導加熱(エッジ予熱という)し、次いで空冷により予熱温度域内でエッジ部の温度均一化を行った後、固相圧接適正温度域(1300℃〜1500℃)に誘導加熱(本加熱という)して衝合・圧接するという従来にない造管法である。この固相圧接造管法で製造される鋼管(固相圧接鋼管と称する)は、従来の溶接管のようにビード切削の必要がないので高速造管が可能で生産性が高く、しかも従来の鍛接管の欠点である酸化起因のシーム品質および表面肌の劣化もない。
【0010】
しかしながら図5に示すように、固相圧接された鋼管4には、エッジ部の到達温度あるいはスクイズロールによる絞り込みの程度(アップセット量)によりシーム部10の管内外側(a)または管内側(b)に管体肉厚の5%以上の増肉を生じることがある。このようなシーム増肉部10Xは、鋼管のネジ切り等の加工性を阻害し、また、鋼管を絞り圧延する際には内面角張り等の偏肉を助長するので好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、固相圧接造管法で製造される鋼管のシーム部増肉を有効に抑制できる鋼管シーム部の平滑化装置および方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オープン管両エッジ部を誘導加熱後スクイズロールで衝合・圧接して製管された鋼管のシーム増肉部を平滑化する鋼管シーム部の平滑化装置であって、管外、管内からシーム増肉部を挟圧して圧延する外ロール、内ロールと、該内ロールを回転自在に保持し冷却水の通水路を内蔵する内ロール台車と、該内ロール台車を管内で管軸方向に移動させてシーム増肉部の温度が 900 ℃〜 1000 ℃に収まる位置範囲内の定位置に固定しかつ前記通水路に冷却水を供給する連結ロッドとを備えたことを特徴とする鋼管シーム部の平滑化装置(本発明装置)である。
【0013】
前記本発明装置は、管壁を介して前記内ロール台車を支承するガイドローラが配置されたものであること、また、スクイズロールがシーム部に当接するように配置されてなることがそれぞれに好ましく、また、シーム部に当接するロールが曲げ強度15kg/mm2以上、耐熱衝撃温度差 150℃以上の特性を有する素材からなること、さらには、かかる素材が窒化ケイ素系、炭化ケイ素系、ジルコニア系、またはアルミナ系のセラミックスであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記平滑化装置を用いる鋼管シーム部の平滑化方法であって、前記通水路に冷却水を通水しながら前記外ロールを鋼管半径方向に移動して該外ロールと前記内ロールとの間隔を調整することにより圧延力を発生させてシーム増肉部を圧延することを特徴とする鋼管シーム部の平滑化方法(本発明方法)である。
【0015】
前記本発明方法においては、鋼管の肉厚変更時に管軸方向(=造管ライン方向)の前記定位置を変更し、前記外ロールと前記内ロール台車とを管軸方向に移動させて変更後の定位置に固定するようにするのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の平滑化装置(本発明装置)の一例を示す(a)は模式的側断面図、(b)は(a)のAA矢視図であり、オープン管1が両エッジ部をワークコイル2で誘導加熱された後スクイズロール3で衝合・圧接されて鋼管4に製管される過程で、シーム増肉部10Xが平滑化装置により平滑化される状態を示している。
【0017】
図示のように、本発明装置は、管外、管内からシーム増肉部10Xを挟圧して圧延する外ロール5、内ロール6と、該内ロール6を回転自在に保持し冷却水の通水路11を内蔵する内ロール台車7と、該内ロール台車7を管内で管軸方向に移動させて定位置に固定しかつ前記通水路11に冷却水を供給する連結ロッド9とを備えている。
【0018】
内ロール台車7は鋼管4内面に転動可能に当接する車輪8を有する。連結ロッド9は、先端(通管方向の下流側の端)に内ロール台車7を連結する連結器12を有し、後端(通管方向の上流側の端)をオープン管1外部に固定された連結ロッド移動機構14によって管軸方向に移動可能に支持され、内部には連結器12を介して内ロール台車7に内蔵された通水路11に接続する冷却水の供給経路を有する。なお、11aは行き通水路、11bは戻り通水路である。また、連結ロッド移動機構14としては、例えば図6に示すように、連結ロッド9外面に造管ライン方向に延長する案内歯16を設け、この案内歯16に駆動ギヤ15を噛み合わせて構成することができる。
【0019】
シーム増肉部10Xをより高温で圧延するほうが平滑化しやすいので、外ロール5と内ロール6とはスクイズロール3にできるだけ近づけて配置するほうがよく、好ましくはスクイズロール3出側でシーム部10の温度が約900 ℃を下回らない位置に配置する。ただし、シーム増肉部10Xが1000℃以下に温度降下しないうちにこれを圧延すると、場合によってはその中央部のみに変形が集中し両端部が厚いままで残ることがあるから、外ロールと内ロール台車が固定配置されるライン方向の定位置(すなわち圧延位置)は、シーム増肉部10Xの温度が900 ℃〜1000℃の範囲に収まる位置であることとする。
【0020】
そうすると、内ロール台車7はシーム部10からの輻射熱を受けて600 ℃程度に昇温し、剛性が低下してシーム増肉部10Xを圧延することが困難になる。そこで、内ロール台車7には冷却水を流すための通水路11を内蔵させる。本発明者らの実験によれば、内ロール台車7の内部に通水路11を設けて適量の冷却水を流すことにより、内ロール台車7の昇温を、剛性の落ちない温度域に含まれる230 ℃程度に抑えることが可能である。
【0021】
なお、シーム増肉部10Xが圧延されるときの容易変形範囲は、約 800℃以上の温度域にある範囲である。そのため、シーム増肉部10Xが過度に押し込まれないように、外ロール5、内ロール6の胴長(幅)を管周方向の容易変形範囲より大きくとることが肝要である。例えば、オープン管を固相圧接して得られる外径62mmφ×内径56mmφの鋼管の容易変形範囲(管周方向)は約12mmであり、これに応じて内ロール5の幅を例えば16mmとする。なお径についても剛性確保の観点から大きいほうが望ましいが管内径と睨み合わせて例えば40mmとする。外ロール5については管外に配置されるので寸法が管内径に制限されないから、内ロール6よりも幅、径ともに大きいものを適用できる。
【0022】
このように、管内という限られた空間内でできるだけ寸法の大きい内ロール6を内ロール台車7に保持させることから、内ロール台車7のサイズは逆に小さくせざるを得ず、しかも圧延を容易にするには通水路11を内蔵させる必要があるから、とくに小径管の場合に、内ロール台車7に圧延力発生のための内ロール6移動(昇降)機構の設置スペースを確保することは困難である。
【0023】
そこで、本発明装置を用いて鋼管シーム部を平滑化する方法(本発明方法)として、通水路11に冷却水を通水しながら外ロール5を鋼管半径方向に移動(昇降)して該外ロール5と内ロール6との間隔を調整することにより圧延力を発生させてシーム増肉部10Xを圧延する方法を採用する。通水せずに外ロール5を押し下げると、内ロール台車7の温度上昇による剛性低下のため内ロール6が沈み込み、鋼管4の寸法精度を維持することが難しくなる。
【0024】
これは外径が一定で肉厚の異なる鋼管に対して適用される方法であり、肉厚が薄くなると外ロール5を内ロール6に近づけるように移動させてロールギャップを調整するものである。このとき、鋼管4は外ロール5で押し込まれてやや偏平化することがあるが、次工程の絞り圧延により自然に矯正されて再び真円化するので、特に問題とはならない。
【0025】
ただし、先行材と次材間で肉厚が変更されると、シーム増肉部10Xの冷却速度が変わり、変更前後の肉厚差によっては先行材に対応する造管ライン方向の定位置(圧延位置)を通過する次材のシーム増肉部温度が好適圧延温度範囲(前記したように900 〜1000℃)を外れることがある。この外れ量が大きくなると、図7に示すように、低温側では被圧延部が硬化し過ぎて目標肉厚の20%程度の増肉残りとなり(a)、高温側では被圧延部が軟らか過ぎてサイドに増肉部がはみ出す所謂過圧延となって(b)、シーム部の平滑化が困難になる。
【0026】
しかし、本発明方法によれば、鋼管の肉厚変更時に管軸方向の前記定位置を、次材のシーム増肉部温度が前記好適圧延温度範囲に収まる造管ライン区間内に変更し、前記外ロールと前記内ロール台車とを造管ライン方向に移動させて変更後の定位置に固定することができるので、このような困難を容易に克服することができる。内ロール台車を移動させるには、例えば図6に示したような連結ロッド移動機構14によって連結ロッド9を進退させればよく、一方、外ロールを移動させるには、例えば造管ライン方向に平行にレールを設け、該レールに外ロールのハウジングを摺動可能に係合させる等の外ロールハウジング移動機構を設ければよい。
【0027】
定位置(圧延位置)は、例えば図8に示すように、接合後のシーム増肉部の冷却曲線を肉厚毎に計算あるいは実測によって求めておき、肉厚変更時に、対象肉厚の冷却曲線上で900 〜1000℃の温度範囲に対応づけられる時間範囲(衝合圧接に係る接合点(=V点)からの時間範囲)を求め、この時間範囲にそのときの通管速度vを掛けて得られる好適位置範囲内(好ましくは該範囲の中央位置)に設定し直せばよい。
【0028】
なお鋼管4の外径の変更に際しては、本発明装置の連結器12より下流側を変更後の外径に対応するサイズのものと交換する。
ところで、図1に示した内ロール台車7は圧延反力を受けて車輪8で管壁を外向きに押すことになるが、鋼管4の剛性が弱くて管体の変形が懸念されるような場合には、図2に示すように、管壁を介して内ロール台車7を支承するガイドローラ13を配置するのが好ましい。なお、図2のAA矢視図は図1(b)と同じである。
【0029】
また、シーム増肉部10Xにおける管外側の盛り上がりは、スクイズロール3をこの部分に当接させることによってその形成を抑制できるので、外ロール5の負担を軽くする観点から、例えば図3に示すように、スクイズロール3は片方でシーム部10に当接する(シーム部10を踏む)ように配置されるのが好ましい。なお、図3のAA矢視図は図1(b)と同じである。
【0030】
また、シーム部10に当接するロール(外ロール5、内ロール6、および場合によってはスクイズロール3の少なくとも片方)は、増肉平滑化の際に、管体からの反力によって15kg/mm2以上の曲げ応力が生じ、かつ当該ロールの管体への当接面の圧接点(シーム部の始点)近傍とそれ以外の領域との温度差は150 ℃以上にまで達していることが多い。
【0031】
そのため、これらのロールの寿命延長のために、当該ロールの素材は、曲げ強度15kg/mm2以上、耐熱衝撃温度差150 ℃以上の特性を有するもののうちから選択することが好ましい。なお、ここで評価に用いた耐熱衝撃温度差とは、材料試験片として3mm×4mm×40mmの角棒(JIS 4点曲げ試験用の仕様)を使用して、試験片を所定温度まで加熱した後に、水中に投下した際に試験片にクラックが発生しない温度差(加熱温度と水温との差)のことである。
【0032】
現状の技術水準に照らせば、かかる素材としては、窒化ケイ素(Si3N4 )系または炭化ケイ素(SiC )系またはジルコニア(ZrO2)系またはアルミナ(Al2O3 )系のセラミックスが最適である。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
本発明装置を図3に示した形態で鋼管製造ラインに設置し、シーム増肉部10Xを平滑化しながら、固相圧接造管法により外径62mm×肉厚1.6 〜3mmの配管用、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G3452のSGP、G3444のSTK相当品)の素管を製造し、次いでこれらの素管を14スタンドの3ロール式絞り圧延機(ストレッチレデューサ)に通して外径21.7mm×肉厚1.6 〜3mmの製品管とした例を本発明方法の実施例1とした。
【0034】
実施例1では、シーム増肉部10Xに当接するスクイズロール3、外ロール5、内ロール6の素材を、曲げ強度85kg/mm2、耐熱衝撃温度差 800℃なる特性を有する窒化ケイ素系のセラミックスとした。また、本発明装置運転時には通水路11(図1(b))に冷却水を流して内ロール台車7中央部の温度を200 ±15℃に維持し、内ロール6の位置は固定とし、肉厚変更時には、外ロール5を鋼管半径方向に移動させて内ロール6とのロール間隔を調整することにより圧延力を付与した。
【0035】
一方、スクイズロール3をシーム増肉部10Xの両脇に配置し且つシーム部10の平滑化をビード切削で行う従来型の鋼管製造ラインで上記と同規格同寸法の素管を固相圧接造管法によって製造後、実施例1と同じ工程で製品管とした例を比較例1とした。
この結果、実施例1では、固相圧接時の最大造管速度が比較例の100m/minから150m/minへ、製品管のシーム品質(図4に試験要領を示す偏平試験での偏平高さ比h/Dの平均値で評価)が比較例1の0.5 から 0.2へ、シーム部長手方向厚み変動が比較例1の−0.2 〜+0.3mm から±0.15mmへと、いずれも顕著に向上し、表面肌についても問題のない製品管が得られた。
(実施例2)
本発明装置を図3に示した形態で鋼管製造ラインに設置し、シーム増肉部10Xを平滑化しながら、固相圧接造管法により外径62mm×肉厚1.6 および3.0mm の一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G3444のSTK相当品)の素管を、成形前に薄肉材を先行材として板継ぎ溶接して連続的に製造し、次いでこの素管を14スタンドの3ロール式絞り圧延機(ストレッチレデューサ)に通管速度105m/minで通して外径21.7mm×肉厚1.6 (先行材)および3.0mm (次材)の製品管とした例を本発明方法の実施例2とした。
【0036】
実施例2では、シーム増肉部10Xに当接するスクイズロール3、外ロール5、内ロール6の素材を、曲げ強度85kg/mm2、耐熱衝撃温度差 800℃なる特性を有する窒化ケイ素系のセラミックスとした。また、本発明装置運転時には通水路11(図1(b))に冷却水を流して内ロール台車7中央部の温度を200 ±15℃に維持し、先行材圧延時の造管ライン方向の圧延位置(内ロール6と外ロール5の配設位置)は先行材シーム増肉部温度が950 ℃に降下する位置(V点から1800mm下流の位置)に設定し、次材(厚肉材)に切り換わる肉厚変更時には、造管ライン方向の圧延位置を次材シーム増肉部温度が950 ℃に達する位置(V点から3300mm下流の位置)に変更し、外ロール5を鋼管半径方向の外向きに移動させて内ロール6とのロール間隔を調整することにより圧延力を付与した。
【0037】
一方、肉厚変更時に造管ライン方向の圧延位置を変更しなかったことを除き実施例2と同一工程で製品管を得た例を比較例2(本発明の次善例に該当)とした。
この結果、比較例2では、次材のシーム増肉部がやや過圧延気味となり、次材製品管の長手方向中央部断面の観察結果によれば、図7(b)に示したような、シーム増肉部の中央部が凹み両端部が隆起する断面形状を呈した(中央部凹み量は母管部肉厚の20%程度、両端部隆起量は母管部肉厚の20%程度)。これに対し、実施例2の次材ではそのような凹みや隆起は認められず、シーム部が良好に平滑化されており、シーム部周辺(シーム部を中心として円周方向に±15mmの範囲)の母管部に対する肉厚偏差は± 0.2mmの範囲に収まっていた。なお、比較例2、実施例2の先行材については、実施例2の次材と同程度にシーム部が良好に平滑化されていた。
【0038】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、ビード切削の必要がなく高い生産性が確保できしかもシーム品質および表面肌に優れ且つシーム部肉厚偏差の格段に小さい固相圧接鋼管が得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平滑化装置(本発明装置)の一例を示す(a)は模式的側断面図、(b)は(a)のAA矢視図である。
【図2】本発明装置の他の例を示す模式的側断面図である。
【図3】本発明装置の他の例を示す模式的側断面図である。
【図4】偏平試験要領の説明図である。
【図5】シーム部に生じる増肉の説明図である。
【図6】連結ロッド移動機構の1例を模式的に示す(a)は一部切欠側面図、(b)は(a)のAA矢視図である。
【図7】シーム増肉部圧延における(a)は増肉残り、(b)は過圧延の説明図である。
【図8】定位置(圧延位置)範囲設定要領の説明図である。
【符号の説明】
1 オープン管
2 ワークコイル
3 スクイズロール
4 鋼管
5 外ロール
6 内ロール
7 内ロール台車
8 車輪
9 連結ロッド
10 シーム部
10X シーム増肉部
11 通水路
12 連結器
13 ガイドローラ
14 連結ロッド移動機構
15 駆動ギヤ
16 案内歯
Claims (7)
- オープン管両エッジ部を誘導加熱後スクイズロールで衝合・圧接して製管された鋼管のシーム増肉部を平滑化する鋼管シーム部の平滑化装置であって、管外、管内からシーム増肉部を挟圧して圧延する外ロール、内ロールと、該内ロールを回転自在に保持し冷却水の通水路を内蔵する内ロール台車と、該内ロール台車を管内で管軸方向に移動させてシーム増肉部の温度が 900 ℃〜 1000 ℃に収まる位置範囲内の定位置に固定しかつ前記通水路に冷却水を供給する連結ロッドとを備えたことを特徴とする鋼管シーム部の平滑化装置。
- 管壁を介して前記内ロール台車を支承するガイドローラが配置された請求項1記載の装置。
- スクイズロールがシーム部に当接するように配置された請求項1〜2のいずれかに記載の装置。
- シーム部に当接するロールが曲げ強度15kg/mm2以上、耐熱衝撃温度差 150℃以上の特性を有する素材からなる請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
- 前記素材が窒化ケイ素系、炭化ケイ素系、ジルコニア系、またはアルミナ系のセラミックスである請求項4記載の装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の装置を用いる鋼管シーム部の平滑化方法であって、前記通水路に通水しながら前記外ロールを鋼管半径方向に移動して該外ロールと前記内ロールとの間隔を調整することにより圧延力を発生させることを特徴とする鋼管シーム部の平滑化方法。
- 鋼管の肉厚変更時に管軸方向の前記定位置を変更し、前記外ロールと前記内ロール台車とを管軸方向に移動させて変更後の定位置に固定することを特徴とする請求項6記載の方法。
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