JP3539514B2 - 自動車用モール成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は自動車用モール成形体に関する。さらに詳しくは、ガスインジェクション成形法により得られ、しかも従来用いられてきた塩化ビニル系樹脂を使用せず、加熱収縮がほとんどなく、かつ線膨張係数が小さく、寸法安定性に優れるとともに、自動車外装材料として良好な外観を有する自動車用モール成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のサイドプロテクターモールには、主として塩化ビニル系樹脂が用いられてきた。しかしながら、この塩化ビニル系樹脂は、廃棄物焼却の際に有毒ガスを発生する問題がある。また、材料統合による樹脂リサイクルの推進などのために、近年ポリプロピレン樹脂による代替が進んでいる。しかしながら、このポリプロピレン樹脂は、結晶性樹脂であって線膨張係数が大きく、これを用いてモールのように長尺の成形体を成形した場合、寸法変化が大きくなるという問題があった。 ところで、最近、成形体の強度を維持するとともに、軽量化することを目的として、ガスインジェクションモールド(GIM)法が、種々の成形体の成形に使用されている〔例えば、「ニッケイ・マテリアルズ&テクノロジー(NIKKEI・ MATERIALS & TECHNOLOGY) 」第135巻,第44ページ(1993年)参照〕。このGIM法は、射出成形時にガスを注入することによって、成形体内部に中空部を形成する成形法であって、偏肉設計と中空設計という従来の射出成形では不可能であった設計を可能にするもので、軽量化と低コスト化を同時に図ることができるという長所を有している。
しかしながら、このようなGIM法を用い、自動車用モールのような長尺の成形体の寸法精度を向上させる試みは、これまでなされていないのが実状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、GIM法により得られ、しかも塩化ビニル系樹脂を使用せず、加熱収縮がほとんどなく、かつ線膨張係数が小さくて寸法安定性に優れるとともに、、自動車外装材料として良好な外観を有する自動車用モール成形体を開発すべく鋭意研究を重ねた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
その結果、ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合ゴム及びタルクをそれぞれ所定の割合で含有し、ポリプロピレンのメルトインデックスとエチレン−プロピレン共重合ゴムのメルトインデックスとの比(MI)PP/(MI)EPR が特定の値以下であり、かつ(A),(B)及び(C)成分のみからなる組成物について得られたポリディスパーシティインデックス(PDI)が特定の範囲にある樹脂組成物を、ガスインジェクション成形することにより、上記目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(A)ポリプロピレン55〜75重量%、(B)エチレン−プロピレン共重合ゴム18〜30重量%及び(C)タルク10〜20重量%を含有し、
(A)成分のポリプロピレンのメルトインデックスと(B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムのメルトインデックスとの比(MI)PP/(MI)EPR が10以下であり、かつ
温度230℃の条件で(A),(B)及び(C)成分のみからなる組成物について求めた周波数−貯蔵弾性率曲線から算出したポリディスパーシティインデックス(PDI)が20〜100である、
樹脂組成物をガスインジェクション成形してなる自動車用モール成形体を提供するものである。
【0005】
本発明の成形体に用いられる樹脂組成物において、(A)成分として使用されるポリプロピレン(PP)については、特に制限はないが、好ましい例として、結晶性を有するアイソタクチックプロピレン単独重合体,エチレン単位の含有量の少ないエチレン−プロピレンランダム共重合体,プロピレン単独重合体からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる共重合部とから構成されたプロピレンブロック共重合体,前記プロピレンブロック共重合体における各ホモ部又は共重合部がさらにブテン−1などのα−オレフィンを共重合したものからなる結晶性のプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。これらポリプロピレンのメルトインデックス(MI)〔230℃,2.16kgf〕は特に限定されないが、好ましくは0.5〜100g/10分、特に1〜60g/10分のものが最適である。MIが0.5〜100g/10分の範囲であれば、成形加工の点で特に優れ、また1〜60g/10分の範囲内であれば、射出成形の点で一層すぐれたものとなる。
【0006】
この(A)成分のポリプロピレンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよく、またその樹脂組成物中の配合量は55〜75重量%、好ましくは60〜75重量%、更に好ましくは60〜70重量%の範囲で選ばれる。この配合量が55重量%未満では、得られる成形体の剛性などの物性が低下する。一方、75重量%を超えると充分な寸法安定性が得られない。さらに、60〜75重量%あるいは60〜70重量%の範囲であれば、寸法安定性の点で一層すぐれたものとなる。
【0007】
また、該樹脂組成物において、(B)成分として用いられるエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPR)は、エチレンとプロピレンとの共重合体であってもよく、エチレンとプロピレンと非共役ジエン類との共重合体であってもよく、その製造方法や第3成分として用いられる非共役ジエン類については、所望の構造特性を有するものが得られるならば、任意に選定することができる。
該共重合ゴムは、JIS−K6301に準拠して測定した初期弾性率が400kg/cm2 以下であることが好ましく、より好ましくは200kg/cm2 以下、特に好ましくは100kg/cm2 以下の無定形ないし低結晶性の共重合体である。ここで、エチレン単位の含有量は、40〜80重量%が低温での耐衝撃性の点で好ましく、特に60〜80重量%が同様の点で一層好ましい。
【0008】
なお、上記非共役ジエン類の具体例としては、ジシクロペンタジエン;1,4−ヘキサジエン;シクロオクタジエン;ジシクロオクタジエン;メチレンノルボルネン;5−エチリデン−2−ノルボルネン;5−ビニル−2−ノルボルネン;5−メチレン−2−ノルボルネン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン;7−メチル−1,6−オクタジエンなどを挙げることができる。
これらのエチレン−プロピレン共重合ゴムは、メルトインデックス(MI)〔230℃,2.16kgf〕が通常0.2〜10g/10分、好ましくは1.0〜8.0g/10分の範囲のものである。0.2〜10g/10分の範囲外のものでは、ポリプロピレンと混合しにくいという問題が生ずる場合がある。また1.0〜8.0g/10分の範囲であれば、混練成形性などの点で好都合である。
この(B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムは一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよく、さらにその樹脂組成物中の配合量は18〜30重量%、好ましくは18〜25重量%、更に好ましくは20〜25重量%の範囲で選ばれる。この配合量が18重量%未満では、充分な寸法安定性が得られない。一方、30重量%を超えると、剛性などの物性が低下する。また、18〜25重量%あるいは20〜25重量%の範囲であれば、寸法安定性と外観の点で一層すぐれたものとなる。
【0009】
次に、該樹脂組成物において、(C)成分として用いられるタルクについては、特に制限はないが、平均粒径5μm以下で、アスペクト比が10以上であるものが、寸法安定性の理由で好適である。その樹脂組成物中の配合量は10〜20重量%、好ましくは10〜17重量%、更に好ましくは10〜15重量%の範囲で選ばれる。この配合量が10重量%未満では、充分な寸法安定性が得られず、20重量%を超えると、成形体の外観が悪くなる。また、10〜17重量%あるいは10〜15重量%の範囲であれば、外観の点で一層すぐれたものとなる。
また、前記樹脂組成物においては、(A)成分のポリプロピレンのメルトインデックスと(B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムのメルトインデックスとの比(MI)PP/(MI)EPR が10以下、好ましくは7以下であることが必要である。この値が10を超えると、充分な寸法安定性が得られない。なお、7以下であれば、線膨張係数などの点で更に好都合である。
【0010】
さらに前記樹脂組成物は、温度230℃の条件で(A),(B)及び(C)成分のみからなる組成物について求めた周波数−貯蔵弾性率曲線から算出したポリディスパーシティインデックス(Polydispersity Index: PDI)が20〜100であることが必要である。PDIが上記範囲を逸脱すると得られる成形体の表面外観が悪化する。具体的には、フローマークやデフォームなどの成形不良が発生する。また上記PDIの下限値は好ましくは40、更に好ましくは45、特に好ましくは50であり、その上限値は好ましくは90、更に好ましくは70、特に好ましくは60である。本発明においては、PDIの範囲は好ましくは40〜90、より好ましくは45〜70、特に好ましくは50〜60の範囲である。なお、40〜90あるいは45〜70の範囲であれば、成形品外観という点でより一層すぐれたものとなる。
なお、上記PDIは、次のようにして算出される。
まず、円錘円板型レオメーターを用い、温度230℃の条件で図1に示す周波数−貯蔵弾性率曲線G'(ω)を求め、この曲線から、弾性率のレベルG1 (3×104 dyne/cm2 ),G2 (1×106 dyne/cm2 )を設定し、それぞれに対応する周波数をω1 ,ω2 とする。PDIはω2 /10×ω1 で算出され、分布の広さを表しており、この値が大きいほど、分子量分布が広いと考えられる。
【0011】
該樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望に応じ各種添加剤,強化材,充填材,例えば耐熱安定剤,耐候安定剤,帯電防止剤,滑剤,スリップ剤,核剤,難燃剤,着色剤,ガラス繊維,炭酸カルシウム,炭素繊維などを添加することができる。
本発明の成形体に用いられる上記樹脂組成物の調製方法については、特に制限はなく、従来ポリプロピレン樹脂組成物の調製に慣用されている方法を用いることができ、また各成分を混合する順序は任意に選択することができる。例えば、所要量の前記(A)成分,(B)成分,(C)成分及び必要に応じて用いられる各種添加成分を、ニーダー,ロール,バンバリーミキサーなどの混練機や一軸又は二軸押出機などを用いて混練することにより、調製することができる。
【0012】
本発明の自動車モール成形体は、このようにして得られた樹脂組成物をガスインジェクション成形して得られるが、このガスインジェクション成形法(GIM)としては、金型キャビティー内に溶融樹脂組成物を充填したのち、さらに加圧ガスを注入し、上記の溶融樹脂組成物内部に中空部分を形成しうる方法であればよく、特に制限はない。好ましい成形方法としては、金型のガス注入口から末端に向かって連続して肉圧を厚くしたガスチャネル案内部を設けておき、ガス注入後の中空部分がこのガスチャネルに限定されることが望ましい。注入口から末端部まで、肉圧部が連続して存在しない場合、加圧ガスによる樹脂組成物の流動が不充分となるし、また成形体の剛性が低下する。加圧ガスが肉圧部分以外に入ると、その部分の成形体の強度が低下する。
このようにして成形された本発明の自動車用モール成形体は、自動車側面部に車体の傷付き防止として使用される部品を示し、その形状については、特に限定されない。好ましい成形体としては、自動車側面のドアに、車体前部から後部にかけて取り付ける幅100mm以下で、長さが1,000mm程度の帯状のものを挙げることができる。さらに、車体との組み付けにおいて、接着剤による張り付けや、クリップによる機械的な組み付けができる構造を有する成形体が好適である。
【0013】
【実施例】
更に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各物性は、次に示す要領で求めた。
(1)成形体の加熱収縮率
80℃にて1時間加熱した成形体の寸法変化から求めた。
(2)成形体の線膨張係数
成形体の−30℃と80℃の寸法を測定し、その変化から平均の線膨張係数を求めた。
(3)成形体外観
成形体のフローマーク外観を目視観察し、次の基準で評価した。
○ : 良好
△ : やや目立つ
× : 目立つ
××: 悪い
(4)ポリプロピレン及び樹脂組成物のPDI値
レオメトリックス社製システム4を用い、温度230℃,トルク20%の条件で周波数−貯蔵弾性率曲線G'(ω) を求め、この曲線からPDI値を算出した。
また、樹脂組成物の成分として、次に示すものを用いた。
(A)ポリプロピレン
ポリプロピレンとして、以下に示す種類のプロピレン単独重合部とエチレン−プロピレン共重合部とからなる、いわゆるブロックポリプロピレンを用いた。
PP−1: MI30g/10分,PDI30,エチレン単位含有量6wt%
PP−2: MI20g/10分,PDI15,エチレン単位含有量6wt%
PP−3: MI30g/10分,PDI15,エチレン単位含有量4wt%
PP−4: MI20g/10分,PDI40,エチレン単位含有量7wt%
(B)エチレン−プロピレンランダム共重合ゴム
EPR−1:MI6g/10分,プロピレン単位含有量20wt%
EPR−2:MI3g/10分,プロピレン単位含有量26wt%
EPR−3:MI0.1g/10分,プロピレン単位含有量22wt%
(C)タルク:富士タルク(株)製,商品名LMS300
【0014】
実施例1
ポリプロピレンとしてPP−1 65重量部、エチレン−プロピレン共重合ゴムとしてEPR−1 25重量部及びタルク10重量部を、神戸製鋼所製の2FCM混練押出機にて混練し、樹脂組成物をペレット化した。(MI)PP/(MI)EPR は5、樹脂組成物のPDI値は60であった。
次に、三菱重工業(株)製850ton成形機を用いて、型締力を350tonに調整し、また金型として、モール形状が長さ1,000mm,幅50mmの帯状で、ガスチャネルが加圧ガス注入口から、流動末端部まで連続しているものを用い、ガス注入圧力10〜20MPa,ガス注入時間2秒,ガス保持時間15秒の条件で、上記樹脂組成物(ペレット)をガスインジェクション成形した。なお、樹脂組成物を3秒間充填し、その後ガスを2秒間注入することを基本として、光沢ムラが発生する場合には、0.1〜1秒間程度、樹脂組成物とガスとを同時に注入した。
得られた成形体の物性を第1表に示す。
【0015】
実施例2〜5
第1表に示す種類と量の各成分を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製したのち、ガスインジェクション成形した。樹脂組成物及び成形体の物性を第1表に示す。
【0016】
【表1】
Figure 0003539514
【0017】
比較例1
第2表に示す種類と量の各成分を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製したのち、通常の射出成形を行った。樹脂組成物及び成形体の物性を第2表に示す。
【0018】
比較例2及び3
第2表に示す種類と量の各成分を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製したのち、ガスインジェクション成形した。樹脂組成物及び成形体の物性を第2表に示す。
【0019】
【表2】
Figure 0003539514
【0020】
【発明の効果】
本発明の自動車用モール成形体は、ガスインジェクション成形法により得られたものであって、従来用いられてきた塩化ビニル系樹脂を使用せず、加熱収縮がほとんどない。しかも、本発明の自動車用モール成形体は、線膨張係数が小さくて寸法安定性に優れるとともに、自動車外装材料として良好な外観を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用モール成形体に用いる樹脂組成物のPDI値を算出する方法を説明するための該樹脂組成物の周波数−貯蔵弾性率曲線である。

Claims (8)

  1. (A)ポリプロピレン55〜75重量%、(B)エチレン−プロピレン共重合ゴム18〜30重量%及び(C)タルク10〜20重量%を含有し、
    (A)成分のポリプロピレンのメルトインデックス〔(MI)PP〕と(B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムのメルトインデックス〔(MI)EPR 〕との比(MI)PP/(MI)EPR が10以下であり、かつ
    温度230℃の条件で(A),(B)及び(C)成分のみからなる組成物について求めた周波数−貯蔵弾性率曲線から算出したポリディスパーシティインデックス(PDI)が20〜100である、
    樹脂組成物をガスインジェクション成形してなる自動車用モール成形体。
  2. (MI)PP/(MI)EPR が7以下である請求項1記載の自動車用モール成形体。
  3. PDIが40〜90である請求項1又は2記載の自動車用モール成形体。
  4. PDIが45〜70である請求項1又は2記載の自動車用モール成形体。
  5. (A)成分のポリプロピレンのメルトインデックス(MI)が0.5〜100g/10分である請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用モール成形体。
  6. (B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムが、エチレンとプロピレンとの共重合体あるいはエチレンとプロピレンと非共役ジエン類との共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用モール成形体。
  7. (B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムの初期弾性率が400kg/cm2 以下である請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用モール成形体。
  8. (B)成分のエチレン−プロピレン共重合ゴムのメルトインデックス(MI)が0.2〜10g/10分である請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用モール成形体。
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