JP3536490B2 - プレス加工性および一次防錆性に優れた脱膜型潤滑鋼板 - Google Patents

プレス加工性および一次防錆性に優れた脱膜型潤滑鋼板

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JP3536490B2 JP31520195A JP31520195A JP3536490B2 JP 3536490 B2 JP3536490 B2 JP 3536490B2 JP 31520195 A JP31520195 A JP 31520195A JP 31520195 A JP31520195 A JP 31520195A JP 3536490 B2 JP3536490 B2 JP 3536490B2
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、脱膜型潤滑鋼板に
関し、特に、プレス加工性および一次防錆性に優れるた
め、プレス加工される鋼板、例えば熱延酸洗鋼板、冷延
鋼板、各種表面処理鋼板として、好適な脱膜型潤滑鋼板
に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、鋼板をプレス加工する際には需要
家が加工の直前に高粘度のプレス油を塗油するのが通例
であった。しかし、塗油作業は作業性を低下させ、ま
た、作業者、作業床の油汚れ等の作業環境を悪化させる
等の問題があり、さらに、高度なプレス加工を行う場合
には、塗油しても加工時にワレやカジリが生じる問題等
があった。このような問題を解消するために、現在では
需要家が塗油せずに、鋼板の供給メーカーにおいて、潤
滑被膜層を形成させた鋼板が市販に供されている。この
鋼板上に形成される潤滑被膜層には、(1)1g/m2
程度の薄膜でも良好な潤滑性を示し、(2)耐ブロッキ
ング性(塗布後に被膜同士が粘着しない)、(3)脱膜
性(アルカリ液による脱膜が容易である)、(5)一時
防錆性(プレス加工後の脱膜工程までの防錆性が維持さ
れる。)に優れていることが要求される。これらの要件
特性を満たす技術として、特公昭51−3702号公
報、特公昭52−34704号公報、特公昭53−27
698号公報、特開昭50−18502号公報等に数多
くの技術が提案されている。しかし、これらの技術は、
プレス加工性、脱膜性および耐ブロッキング性に重点を
おいたものであり、防錆性の改善について有効なもので
はなかった。そこで、防錆性を改善する技術として、潤
滑塗料に気化性防錆剤を添加する技術(特公昭53−3
7817号公報)、無機性塩と有機性塩の防錆潤滑剤を
塗布する技術(特開昭51−87461号公報)、潤滑
塗料に防錆剤および撥水剤を添加する技術(特開昭63
−223093号公報)等が提案されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来提案
されている技術によっては、プレス加工性および一次防
錆性に優れた潤滑鋼板を得ることができなかった。例え
ば、特公昭53−37817号公報に記載の技術では、
湿潤条件下での防錆性は、十分な性能を示すが、塩水噴
霧試験(SST)等のより厳しい条件下での防錆性試験
では、十分な性能を示さない。また、特開昭51−87
461号公報に記載の技術では、SSTにおいても十分
な防錆性を示す潤滑鋼板を得ることができるが、未だ十
分な要求水準にまで達していない。また、防錆潤滑剤が
単独で塗布されているため、耐カジリ性、深絞り性に劣
る。さらに、特開昭63−223093号公報に記載の
技術では、スタック条件および湿潤条件の下では、十分
な防錆性を示すが、SST等の厳しい条件下において
も、十分な防錆性を示すことができる鋼板が得られな
い。また、潤滑剤成分が添加されていないため、耐カジ
リ性、深絞り性に劣る。 【0004】そこで、本発明の目的は、深絞り性および
耐カジリ性に代表されるプレス加工性、ならびに一次防
錆性に優れた潤滑鋼板を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、鋭意検討したところ、本発明者らは、プレス加工後
にアルカリ水溶液等で脱膜する潤滑鋼板においては、ア
ルカリで容易に脱膜できる半面、潤滑被膜を水分が容易
に透過するため、保管時に発錆する問題が多発している
ことを知見した。そこで、脱膜に寄与する半面、防錆性
を低下させる原因となるカルボキシル基に着目し、両性
能を両立させる方法について鋭意検討した結果、本発明
に至った。 【0006】すなわち、本発明は、(a)Tgが0〜1
20℃、かつ酸価が30〜200mg−KOH/gであ
るアクリル系樹脂、(b)高級脂肪酸、高級脂肪酸エス
テルおよび金属せっけんから選ばれる少なくとも1種の
潤滑剤を(a)の固形分に対して3〜30wt%、なら
びに(c)リン酸およびモリブデン酸のZn、Caもし
くはアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の防錆
剤を(a)の固形分に対して5〜30wt%を含む防錆
潤滑被膜を有するプレス加工性および一次防錆性に優れ
た脱膜型潤滑鋼板を提供するものである。 【0007】以下、本発明の脱膜型潤滑鋼板(以下、
「本発明の鋼板」という)について詳細に説明する。 【0008】本発明の鋼板が有する潤滑性被膜は、
(a)アクリル系樹脂を主成分とするものである。この
アクリル系樹脂は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレ
イン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボ
ン酸と、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタア
クリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、スチレン等か
ら選ばれるモノマーと通常の方法、例えば、乳化重合ま
たは溶液重合法により、重合または共重合したものであ
る。これらの重合体または共重合体は、1種単独で使用
してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。 【0009】本発明において、この(a)アクリル系樹
脂は、Tg(ガラス転移温度)が0〜120℃、好まし
くは40〜90℃のものである。Tgが0℃未満のアク
リル系樹脂を用いると、潤滑性被膜が柔らかくなり、耐
カジリ性および耐ブロッキング性に劣り、Tgが120
℃を超えるアクリル系樹脂を用いると、深絞り性が低下
する。 【0010】また、この(a)アクリル系樹脂は、化成
処理の前工程でアルカリ脱膜させる際にカルボキシル基
とアルカリとの反応を利用するために、酸価が30〜2
00mg−KOH/g、好ましくは50〜100mg−
KOH/gのものである。酸価が30mg−KOH/g
未満であると、潤滑性被膜の脱膜性が劣り、200mg
−KOH/gを超えると防錆性が著しく低下する。 【0011】潤滑性被膜の(b)成分は、高級脂肪酸、
高級脂肪酸エステルおよび金属せっけんから選ばれる少
なくとも1種の潤滑剤であり、これらは1種単独でも2
種以上を組み合わせても用いられる。高級脂肪酸として
は、例えば、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、オレイン酸等が挙げられ、高級脂肪酸エステルとし
ては、前記例示の高級脂肪酸のエステルが挙げられ、ま
た、金属せっけんとしては、例えば、これらの高級脂肪
酸と、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属との
塩が挙げられる。 【0012】本発明において、潤滑性被膜における
(b)成分の含有量は、(a)の固形分に対して、3〜
30wt%、好ましくは5〜20wt%である。(b)
成分の含有量が3%未満では、深絞り性および耐カジリ
性の改善効果がなく、30wt%を超えると、深絞り性
および耐カジリ性の改善効果が飽和して、(a)アクリ
ル樹脂の含有割合が減少するために、塗膜を形成せず、
塗膜が脱離しやすくなる。 【0013】また、潤滑性被膜の(c)成分は、リン酸
およびモリブデン酸のZn、Caもしくはアンモニウム
塩から選ばれる少なくとも1種の防錆剤であり、これら
は1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。
この(c)防錆剤の潤滑性被膜中の含有量は、(a)ア
クリル系樹脂の固形分に対して、5〜30wt%であ
り、好ましくは10〜20wt%である。(c)防錆剤
の含有量が5wt%未満では、添加による効果が認めら
れず、30wt%を超えると塗料の安定性が低下すると
ともに、防錆性の改善効果が飽和する。 【0014】本発明において、前記(b)潤滑剤および
(c)防錆剤はそのままでも使用できるが、鋼板に塗布
して潤滑性被膜を形成するに際して、分散性、塗料安定
性の観点から水分散液の形状で使用することが望まし
い。水分散液として使用する場合には、界面活性剤等を
添加してもよい。 【0015】また、本発明において、潤滑性被膜は、前
記の(a)、(b)および(c)成分以外に、必要に応
じて、pH調整剤、顔料等を、本発明の効果を損なわな
い範囲で添加することもできる。 【0016】本発明の鋼板において、潤滑性被膜を形成
する鋼板素地は、特に制限されず、例えば、熱延酸洗鋼
板、冷延鋼板、各種亜鉛めっき鋼板等の表面処理鋼板等
を挙げることができる。 【0017】本発明の鋼板は、前記の(a)アクリル系
樹脂、(b)潤滑剤および(c)防錆剤、ならびに必要
に応じて配合される各種成分とを、特定の配合比で調製
した樹脂混合物を、ロール塗布、スプレー塗布、浸漬塗
布、バーコーター塗布等による方法で、鋼板に塗布し、
通常、5〜20秒後の到達板温が50〜150℃になる
条件で乾燥させる方法によって製造することができる。 【0018】 【作用】一般に、(a)アクリル系樹脂単独でも、潤滑
性を示すが、本発明の鋼板のごとく、加工時に高面圧が
かかる角筒絞りやビード付き円筒絞り等のプレス加工を
行う場合には、さらにレベルを向上させる必要がある。
そこで、本発明においては、(b)潤滑剤が潤滑性被膜
の必須成分として使用される。また、本発明において、
(c)防錆剤は、腐食が進行する過程で溶解してくる鉄
イオンや樹脂中のカルボキシル基と反応し、防錆性に寄
与する錯塩を形成することにより防錆性を維持すること
ができる。これに対して、カルボキシル基との反応がな
い従来の技術においては、例えば、金属表面への吸着に
より効果を発揮する防錆剤は、はっ水のみでは、カルボ
キシル基が残存しているため塗膜中での水分の透過は防
ぐことはできず、充分な防錆性を変えることはできない
と考えられる。 【0019】 【実施例】以下、本発明の実施例および比較例により本
発明を具体的に説明する。 【0020】(実施例1〜18、比較例1〜17)各例
において、表面を脱脂した鋼板の表面に、表1に示す塗
料を乾燥被膜重量で1.5g/m2 になるように塗装
し、10秒後の到達板温が80℃になるように熱風乾燥
機を用いて加熱して焼き付け処理して試験片を作製し
た。得られた試験片について、深絞り性、耐カジリ性、
防錆性、脱膜性および耐ブロッキング性を、下記の方法
にしたがって評価または測定した。なお、塗料、防錆油
は両面に塗布した。結果を表2に示す。 【0021】(1)深絞り性、耐カジリ性 試験片を、エリクセンカップ絞り試験機を用いて絞り圧
を変えて絞り加工し、限界絞り圧を求めた。このときの
プレス条件は下記の通りである。 (プレス条件) ポンチ径 33mmφ ブランク径 70mmφ 絞り速度 60mm/sec 絞り圧 1〜9t (耐カジリ性評価基準) ◎:カジリなし ○:カジリ若干あり △:カジリやや多い ×:カジリ多い 【0022】(2)防錆性 温度50℃、湿度98%の条件下で湿潤試験を行い、赤
錆が5%発生するまでの時間で評価した。JIS Z2
371に規定された条件でSSTを行い、赤錆が5%発
生するまでの時間を測定した。これらの2つの試験の結
果で防錆性を評価した。 【0023】(3)脱膜性 試験片に、濃度3%、液温40℃に調整した脱脂液(フ
ァインクリーナー4460(日本パーカーライジング
(株)製)を、10秒間スプレーして脱脂した。次に、
試験片を、3%硫酸銅水溶液に40秒浸漬し、Cuの置
換析出状態を観察し、下記の基準で脱膜性を評価した。 (脱膜性評価基準) ○:Cuが全面に析出 △:Cuが部分的に析出 ×:Cuが全く析出せず 【0024】(4)耐ブロッキング性 塗膜面同士を内側にして重ね合せた2枚の試験片を30
0kg・cmのトルクで締め付けた状態で、60℃の恒
温槽に6時間放置した。その後、重ねた試験片を引き剥
がし、引き剥がした時の粘着状況により、下記の基準で
耐ブロッキング性を評価した。 (耐ブロッキング性) ◎:粘着なし ○:若干粘着あり △:粘着あり ×:粘着大 【0025】 表1 使用した樹脂、添加剤 ──────────────────────────────────── 種 類 メーカー(商品名) ──────────────────────────────────── 樹脂 A アクリル樹脂 三菱レイヨン(株)製(ダイヤナール) B 無水マレイン酸 三井東圧(株)製 C スチレン 三菱油化(株)製 ──────────────────────────────────── 潤滑剤 a パルミチン酸 和光純薬(株)製 b ステアリン酸 c ステアリン酸カルシウム d ステアリン酸バリウム 防錆剤 e りん酸亜鉛 f りん酸カルシウム g モリブデン酸亜鉛 h モリブデン酸アンモニウム ──────────────────────────────────── 【0026】 【表1】 【0027】 【表2】【0028】 【表3】 【0029】 【表4】【0030】 【発明の効果】本発明の脱膜型潤滑鋼板は、深絞り性お
よび耐カジリ性に代表されるプレス加工性、ならびに一
次防錆性に優れるものである。そのため、本発明は、例
えば、熱延酸洗鋼板、冷延鋼板、各種表面処理鋼板に適
用して、実用上の価値が高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B05D 7/24 303 B05D 7/24 303B 303E // B21D 22/20 B21D 22/20 E (72)発明者 成 瀬 義 弘 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭53−75159(JP,A) 特開 昭63−83172(JP,A) 特開 平7−62268(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 B05D 1/00 - 7/26 C09D 1/00 - 10/00 C09D 101/00 - 201/10

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(a)Tgが0〜120℃、かつ酸価が3
    0〜200mg−KOH/gであるアクリル系樹脂、
    (b)高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルおよび金属せっ
    けんから選ばれる少なくとも1種の潤滑剤を(a)の固
    形分に対して3〜30wt%、ならびに(c)リン酸お
    よびモリブデン酸のZn、Caもしくはアンモニウム塩
    から選ばれる少なくとも1種の防錆剤を(a)の固形分
    に対して5〜30wt%を含む防錆潤滑被膜を有するプ
    レス加工性および一次防錆性に優れた脱膜型潤滑鋼板。
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DE60322199D1 (de) * 2002-04-01 2008-08-28 Jfe Steel Corp Beschichtungsmaterial und oberflächenbehandelte metallplatte

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