JP3535277B2 - 酸化物陰極の製造方法 - Google Patents
酸化物陰極の製造方法Info
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Description
間動作する酸化物陰極の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、酸化物陰極構体は、陰極基体金
属としてニッケルを主体として、微量のマグネシウムや
けい素などの還元剤を含む合金が使用される。また、こ
の合金により構成された陰極基体金属は、所要の形状、
厚さにプレス成形された上で陰極スリーブの先端に接合
固定されている。そして、この陰極基体の金属面上に、
電子放射物層となるバリウム、ストロンチウムおよびカ
ルシウムなどからなるアルカリ土類金属炭酸塩粉末を吹
き付け法などで塗布する。 【0003】この陰極構体を電子管内に組み込み、真空
中でアルカリ土類金属炭酸塩を1300K程度で加熱分
解し、アルカリ土類金属酸化物に形成させる。このアル
カリ土類金属炭酸塩は、バリウムを主成分とするアルカ
リ土類金属の複塩または混合塩であるが、一般的にはバ
リウムが重量57%、ストロンチウムが39重量%およ
びカルシウムが4重量%の複塩である三元炭酸塩が広く
用いられている。 【0004】また、アルカリ土類金属酸化物のうち酸化
バリウムが電子放射に寄与し、この酸化バリウムは、酸
化物陰極の動作中に基体金属を拡散してくる還元剤のマ
グネシウム、けい素などにより、基体金属と酸化物の境
界で還元され、たとえばマグネシウムを還元剤として用
いた場合、次式の反応により電子放射に寄与する遊離バ
リウムが形成される。 【0005】BaO+Mg→Ba+MgOしたがって、
酸化物陰極においては、還元剤と電子放射物層である酸
化物との反応が基体金属と酸化物との界面近傍で進行す
るため、両者の中間には中間層と呼ばれる反応物が形成
される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、酸化物
陰極の電子放射特性を大きく左右する製造プロセスは、
排気後に行なわれる活性化プロセスと考えられ、その条
件は電子管の種類に応じて最適化が実施されている。こ
のため、排気中に行なうアルカリ土類金属炭酸塩をアル
カリ土類金属酸化物に加熱分解する製造プロセス条件の
最適化は未解決が多いのが実状である。 【0007】最近、物理解析技術が進歩し、酸化物陰極
において電子放射物の炭酸塩から酸化物への分解反応の
ための加熱分解を行なう際、電子放射物にBaO rich
(Ba,Sr)Oのα相と、SrO rich(Sr,B
a,Ca)Oのβ相とが存在することが、真空高温X線
回折装置の解析により知られている。 【0008】そして、酸化物陰極の電子放射特性、特に
寿命特性はβ相/α相の生成比に依存することが確認さ
れ、β相/α相の生成比が0.2以下では十分な寿命特
性が得られず、0.3〜0.4の範囲で最も良好な寿命
特性を示すことが判明している。 【0009】また、β相/α相の生成比は、排気中に行
なうアルカリ土類金属炭酸塩をアルカリ土類金属酸化物
に加熱分解するときのピーク温度に依存することも判明
している。 【0010】一方、従来のアルカリ土類金属炭酸塩をア
ルカリ土類金属酸化物に加熱分解するときのピーク温度
は1300Kであるため、β相/α相の生成比が小さく
要望を満たすための長時間の動作が不十分である問題を
有している。 【0011】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
で、長時間高電流密度で動作しても電子放射特性の劣化
が少ない酸化物陰極の製造方法を提供することを目的と
する。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明は、ニッケルを主
体として還元剤を添加した陰極基体を形成し、この陰極
基体上にバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムか
らなるアルカリ土類金属炭酸塩の電子放射物層を付着さ
せ、真空中でアルカリ土類金属炭酸塩を加熱分解してア
ルカリ土類金属酸化物に形成させる酸化物陰極の製造方
法であって、真空中における加熱分解工程の加熱分解ピ
ーク温度を1400〜1500Kの範囲とすることによ
り、前記アルカリ土類金属酸化物中のBaO rich (B
a,Sr)Oのα相と、SrO rich (Sr,Ba,C
a)Oのβ相との生成比 ( β相/α相 ) を、0.2を超え
たものとするもので、β相/α相の生成比を増大でき、
初期の加熱で生成されたβ相は、酸化バリウム単結晶の
高温型に相当する結晶構造に固定されるため、その後エ
ージングで温度を上昇させても結晶構造は変化せず、安
定した高電流密度を長時間得られる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態の酸
化物陰極の製造方法を図面を参照して説明する。 【0014】図1に示すように、1は円板状に形成され
た陰極基体で、この陰極基体1は微量のマグネシウムあ
るいはけい素などの還元剤を含有し、圧延により得られ
たニッケル合金を、上下面から挟んでプレス加工により
圧縮して形成される。また、円筒状の陰極スリーブ2の
内径寸法に陰極基体1の外径寸法が一致する。そして、
陰極基体1は陰極スリーブ2の内側に圧入され、レーザ
溶接により陰極スリーブ2の先端に接合固定される。 【0015】また、陰極スリーブ2を加湿水素中で熱処
理して選択酸化させ、表面を黒化させる。 【0016】そして、陰極スリーブ2の下端部外周にほ
ぼ等間隔に3つの短冊状の支持体4の下端部を溶接し、
この支持体4の上端には外方に向けて折り曲げられた接
続部5が形成される。 【0017】さらに、6は円筒状のカソードホルダで、
このカソードホルダ6の上端には内側に向けてフランジ
部7が形成され、このフランジ部7の対向する内周には
円型の挿通孔8が形成され、この挿通孔8に陰極スリー
ブ2が挿通された状態で、支持体4の接続部5がカソー
ドホルダ6のフランジ部に溶接されて陰極構体9が形成
される。 【0018】また、陰極基体1の表面上にたとえばバリ
ウム、ストロンチウム、カルシウムなどからなるアルカ
リ土類金属炭酸塩の電子放射物10を吹き付け法により塗
布付着させ、陰極構体9を図示しない電子管内に組み込
む。なお、このアルカリ土類金属炭酸塩は、バリウムを
主成分とするアルカリ土類金属の複塩または混合塩であ
るが、一般的にはバリウムが重量57%、ストロンチウ
ムが39重量%およびカルシウムが4重量%の複塩また
は混合塩である三元炭酸塩が広く用いられる。 【0019】そして、真空中でアルカリ土類金属炭酸塩
を加熱分解し、アルカリ土類金属酸化物に形成させ、図
示しない電子管の排気管をチップオフした後にエージン
グ工程で活性化処理し、酸化物陰極構体を完成させ、た
とえばブラウン管に装着する。 【0020】なお、BaO rich(Ba,Sr)Oであ
るα相と、SrO rich(Sr,Ba,Ca)Oである
β相との、β相/α相の生成比が増大するように、加熱
分解時のピーク温度を1400〜1500Kの範囲の温
度で、たとえば1425Kで2分間とする。 【0021】ここで、上述のようにピーク温度を142
5Kで加熱分解した酸化物陰極構体を含むブラウン管
と、従来と同様にピーク温度を1300Kとしたブラウ
ン管との、電流2.0A/cm2での長時間動作に伴う
電子放射特性の測定の寿命に関する実験結果を図2を参
照して説明する。 【0022】そして、曲線Iは上記実施の形態の方法に
より製造された陰極基体を用いたブラウン管で、曲線II
は従来の方法により製造された陰極基体を用いたブラウ
ン管で、曲線Iではエミッションの低下が少ないのに対
し、曲線IIでは長時間経過するに従い曲線Iとのエミッ
ションの減少が大きくなっており、曲線Iと曲線IIとの
差が顕著となり、上記実施の形態のブラウン管によれ
ば、長時間高電流密度で動作しても電子放射特性の劣化
が少ないことがわかる。 【0023】すなわち、上記実施の形態により製造され
た陰極基体を用いたブラウン管の場合には、加熱分解の
ピーク温度を高くすることにより、β相/α相の生成比
が寿命特性が最も好ましい0.3〜0.4程度に増大
し、初期の段階の加熱で生成されたβ相は、酸化カルシ
ウムがくさびとなって酸化バリウム単結晶の高温型に相
当する結晶構造に固定されるので、その後のエージング
で温度を上昇させても結晶構造は変化せず、結果として
高電流密度を長時間取り出すことが可能になるものであ
る。 【0024】なお、上記実施の形態では1400〜15
00Kの範囲内としてたとえば1425Kで加熱分解し
たが、酸化バリウム単結晶中のバリウムの拡散機構は、
1350Kを境として高温型と低温型とで異なる。つま
り、ピーク温度が1350Kより低いと低温型の拡散機
構となりβ相/α相の生成比が0.2以下に小さくな
り、反対に、ピーク温度が1500Kを越えるとβ相は
十分に生成してライフ特性は従来より良好になるが、パ
ウダー同士の溶融が進行して電子放射物層の収縮が生じ
て初期不良を起こし、陰極構体9を構成する材料にも変
質が起こる。したがって、陰極基体1を加熱分解するピ
ーク温度としては、1400〜1500Kの温度が好ま
しい。 【0025】上記実施の形態では、陰極構体9をブラウ
ン管に装着した場合について説明したが、ブラウン管以
外の他の熱電子管に用いても同様の効果を得ることがで
きる。 【0026】 【発明の効果】本発明によれば、真空中のアルカリ土類
金属酸化物を形成する加熱分解工程の加熱分解ピーク温
度を1400〜1500Kの範囲とすることにより、ア
ルカリ土類金属酸化物中のBaO rich (Ba,Sr)
Oのα相と、SrO rich (Sr,Ba,Ca)Oのβ
相との生成比 ( β相/α相 ) を、0.2を超えたものとし
たため、β相/α相の生成比を増大でき、初期の加熱で
生成されたβ相は、単結晶の高温型に相当する結晶構造
に固定できるので、その後エージングで温度を上昇させ
ても結晶構造は変化せず、安定した高電流密度を長時間
得られる。
切り欠いた側面図である。 【図2】同上寿命時間およびエミッションの関係を示す
グラフである。 【符号の説明】 1 陰極基体 10 電子放射物
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ニッケルを主体として還元剤を添加した
陰極基体を形成し、 この陰極基体上にバリウム、ストロンチウムおよびカル
シウムからなるアルカリ土類金属炭酸塩の電子放射物層
を付着させ、 真空中でアルカリ土類金属炭酸塩を加熱分解してアルカ
リ土類金属酸化物に形成させる酸化物陰極の製造方法で
あって、 真空中における加熱分解工程の加熱分解ピーク温度を1
400〜1500Kの範囲とすることにより、前記アル
カリ土類金属酸化物中のBaO rich (Ba,Sr)O
のα相と、SrO rich (Sr,Ba,Ca)Oのβ相
との生成比 ( β相/α相 ) を、0.2を超えたものとする
ことを特徴とする酸化物陰極の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21625195A JP3535277B2 (ja) | 1995-08-24 | 1995-08-24 | 酸化物陰極の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21625195A JP3535277B2 (ja) | 1995-08-24 | 1995-08-24 | 酸化物陰極の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH0963471A JPH0963471A (ja) | 1997-03-07 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP21625195A Expired - Fee Related JP3535277B2 (ja) | 1995-08-24 | 1995-08-24 | 酸化物陰極の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3535277B2 (ja) |
-
1995
- 1995-08-24 JP JP21625195A patent/JP3535277B2/ja not_active Expired - Fee Related
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