JP3534023B2 - 耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents
耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法Info
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Description
気製品、建材などに用いられる高強度薄鋼板、特に、耐
二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板、高強度亜鉛系めっ
き薄鋼板およびそれらの製造方法に関する。
工される高強度亜鉛系めっき鋼板には、外板として使用
できる高いレベルの表面性状はもとより、深絞り性やス
トレッチャーストレインの発生を抑えるための非時効性
が要求されている。これまでに、深絞り性および非時効
性を高めるため、C、N量を極力低減すると同時に、Tiお
よびNbなどを添加して有害な固溶C、Nを炭窒化物として
固定したIF鋼をベースとした高強度薄鋼板が開発されて
きた。
あるため、深絞り加工時の縮みフランジ変形において大
きな圧縮加工を受けた部分がその後の加工において脆性
破壊を起こす、いわゆる二次加工脆性に対する感受性が
高いという問題がある。しかも、鋼板を高強度化するほ
ど相対的に粒界強度が低下するので、二次加工脆化し易
い傾向が見られる。
薄鋼板を開発するにあたっては、耐二次加工脆性を改善
することが非常に重要な課題であり、これまでIF鋼並の
特性を維持しつつ耐二次加工脆性を高めるために以下の
ようなさまざまな技術が提案されている。
比以下のTi、Cに対しても実質当量比以下のNbを添加す
ることによって、r値の低下、降伏強度の上昇、伸びの
低下を防止すると同時に、固溶Cの一部を粒界に残留さ
せて耐二次加工脆性を高める技術(以下、従来技術
1)。
限すると共に、Mn、Crを積極的に添加し、固溶C量を高
めて耐二次加工脆性を高める技術(以下、従来技術
2)。
固定するC量の下限を制限して結晶粒の成長を抑制する
炭化物の生成量を確保し、結晶粒の微細化により優れた
強度-延性バランスを得ると同時に、SiおよびP量の上限
規制とB添加によって耐二次加工脆性を高める技術(以
下、従来技術3)。
を低減してTiで固定することでr値を高め、Nb添加によ
って微細NbCを析出させて結晶粒界を鋸状にすることで
二次加工脆性を向上させる技術(以下、従来技術4)。
来技術1〜4には次のような問題がある。
させて耐二次加工脆性を高めるため、夏季などの気温が
比較的高い環境において長時間保持された場合に時効の
問題が懸念される。また、従来技術1では、100℃で1hr
の加速試験により耐時効性を評価しているが、常温にお
いて数ヵ月に渡る長期の時効試験で評価した場合、Tiあ
るいはNbの添加量がC、Nに対して当量比以下である場
合、上記加速試験で問題ないと判断されたものであって
も、ストレッチャーストレインの原因となる降伏点伸び
(YPEl)が観察される場合が多い。
を高めるているが、Bは粒界に偏析し、冷間加工時の結
晶回転を抑制し高r値を得る上で好ましい集合組織の発
達を阻害し、深絞り性を劣化させる。
り耐二次加工脆性を高めるが、鋸状の粒界により粒界の
拘束力が高まり、結晶粒内に変形が集中して延性が低下
する。さらに、r値を高めるために、C、N、Sに対し当量
比以上のTi添加を行っている(実施例では、0.03%を超え
て添加されている)ため、溶融亜鉛めっき後に縞状のTi
マークと呼ばれる表面ムラが発生し、自動車外板など表
面性状が要求される用途には使用できない。
なされたもので、自動車外板用途へ適用可能な表面性
状、非時効性、加工性を有し、かつ耐二次加工脆性に優
れた高強度薄鋼板、高強度亜鉛系めっき薄鋼板およびそ
れらの製造方法を提供することを目的とする。
0.0040〜0.02%、Si:0.05%以下、Mn:0.7〜3.0%、P:0.04
〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.004%以
下、Nb:0.2%以下、残部が実質的にFeおよび不可避的不
純物からなり、かつ下記の式(1)を満足する耐二次加工
脆性に優れた高強度薄鋼板により解決される。
板を製造するには、通常、多量の固溶強化元素を添加し
て強度が確保される。固溶強化元素として、Si、Pを多
量に添加した場合、表面性状を著しく劣化させ、自動車
外板用途に適用できない。また、Mnを多量に添加した場
合には、α/γ変態点が低下して焼鈍温度範囲が制限さ
れるとともに、加工性が劣化する。さらに、上述したよ
うに、耐二次加工脆性の観点からBなどの粒界強化元素
を添加した場合は、非時効性や深絞り性などの加工性に
とって不利となる。
は表面性状、非時効性、加工性、耐二次加工脆性を同時
に満足させるには基本的に限界があると判断し、従来技
術を用いることなく耐二次加工脆性を向上させる技術を
検討した結果、C、Nb量およびNb/Cを特定の範囲内に制
御すれば、上記特性を同時に満足した高強度薄鋼板が得
られることを見出した。
には、0.0040wt%以上添加する必要があるが、0.02wt%を
超えると延性の低下が著しい。そのため、0.0040〜0.02
wt%とする。析出物の形態および分散状態を適正に制御
し、より優れた成形性およびより好ましい総合特性を引
き出すには、C添加量を0.0050〜0.0080wt%、さらに望ま
しくは0.0050〜0.0074wt%の範囲に規定することが好ま
しい。
り、Nb/C(原子当量比)の比率によって上記特性が変化す
るので、後述するようなNb/Cの管理が必要となる。
0.05wt%を超えて添加すると亜鉛めっき密着性が劣化す
るため、0.05wt%以下とする。
ブの熱間割れを防止したり、亜鉛めっき密着性を劣化さ
せることなく強度を高めるために有効な元素である。所
定の引張強度を確保するためには、0.7wt%以上添加する
必要があるが、3.0wt%を超えるとスラブコストの著しい
上昇を招くだけでなく、α/γ変態温度が低下するため
焼鈍温度範囲が制限されて加工性も劣化する。そのた
め、0.7〜3.0wt%とする。
る必要があるが、0.15wt%を超えて添加すると亜鉛めっ
き密着性を劣化させるので、0.04〜0.15wt%とする。
れ感受性を高める。また、微細なMnSの析出により加工
性を劣化させるので、0.02wt%以下とする。
極力残さないために添加する。0.01wt%未満ではこうし
た効果が十分でなく、0.1wt%を超えると添加量に見合う
効果が得られないため、0.01〜0.1wt%とする。
記Alの下限量でも極力無害化されるように、0.004wt%以
下とする。
であり、次に説明するように、固溶Cを固定し、結晶粒
を微細化し、耐二次加工脆性、時効性および加工性の改
善に大きく寄与する。経済性の観点から、その含有量は
0.2wt%以下、望ましくはNb≦0.140wt%とする。また、析
出物の形態および分散状態を適正に制御し、耐二次加工
性をより向上させるには、Nb>0.035wt%とすることが望
ましく、さらに耐二次加工性を向上させ総合性能をより
改善するには、Nb≧0.080wt%とすることが望ましい。
後、酸洗、冷間圧延し、830℃で焼鈍を行い、圧下率0.5
%の調質圧延を行って、深絞り性の指標であるr値、非時
効性を評価するために100℃で1hrの加速試験後のYPElの
回復量、二次加工脆化遷移温度の測定を行った。ここ
で、二次加工脆化遷移温度とは、鋼板から直径105mmの
ブランクを打ち抜き、カップ状に深絞り加工し、加工後
のカップをエチルアルコールなどの冷媒中に種々の温度
で浸漬後、円錐ポンチでカップの端部を広げながら破壊
し、破面観察から求めた延性破壊から脆性破壊へ移行す
る温度のことである。
す。(12/93)×Nb*/C≧1.0にすれば、1.75以上の高いr値
が得られ、優れた加工性を示すことがわかる。
す。(12/93)×Nb*/C≧1.0にすればYPElの回復は認めら
れず、優れた非時効性を示すことがわかる。
度の関係を示す。同等のTSレベルで比較すれば明らかな
ように、本発明の成分系を満足する鋼では、従来鋼に比
べ、優れた耐二次加工脆性を示すことがわかる。
し、かつ上記式(1)を満足するようにすれば、自動車外
板用途へ適用可能な非時効性、加工性を有し、かつ耐二
次加工脆性に優れた高強度薄鋼板が得られる。析出物の
形態および分散状態を制御し、さらに優れた耐二次加工
脆性を確保するには、(12/93)×Nb*/Cを1.3〜2.2の範囲
に規制することが望ましい。
性が得られる理由としては、以下の3点が考えられる。 (1)NbC析出により、焼鈍板の結晶粒径が微細化すること
により靭性が改善される。 (2) 電子顕微鏡観察によれば、(12/93)×Nb*/C≧1.0と
することにより、析出NbCの寸法および分散形態が最適
化され、すなわち、粒内には微細なNbCが均一に分散析
出し、かつ粒界近傍には析出物の非常に少ない、いわゆ
る析出物枯渇帯(PFZ)と思われるミクロ組織が形成さ
れ、粒界近傍のPFZは容易に塑性変形できるため、脆性
破壊が抑制される。 (3)1%〜10%の低歪領域におけるn値の向上により、絞り
加工時のパンチ底接触部の歪量が増大し、深絞り加工で
の流入量が減少することで、縮みフランジ変形における
圧縮加工の程度が軽減される。
より達成されるが、さらに、品質改善および耐二次加工
脆性の向上のために、Ti、Bを、Ti≦0.019wt%、B:0.000
1〜0.002wt%の範囲内で添加することが可能である。
細化することにより、成形性を改善する。しかしなが
ら、0.05wt%を超えて添加した場合、析出物が粗大化
し、十分な効果が得られない。より望ましくは、特に溶
融亜鉛めっきの表面性状の観点から、上限を0.02wt%未
満とし、必要な細粒化効果を得るために、下限を0.005w
t%とするのが望ましい。
善するために添加するが、0.002wt%を超えて添加した場
合、成形性が大幅に低下するので、上限を0.002wt%とす
る。本発明鋼は、結晶粒が微細化されており、極めて優
れた耐二次加工脆性を示すので、望ましくは、成形性の
低下を極力抑えるために、B添加量を0.0001〜0.001wt%
の範囲に規制するのが好ましい。
(1)により固溶C、Nが完全に固定されるため、そのBH(焼
付け硬化性)が2kgf/mm2未満であり、夏季などの気温が
比較的高い環境において長時間保持された場合にも、時
効が問題となることはない。さらに、溶接部の加工性に
も優れており、テーラードブランクのような新技術にも
対応可能である。
る鋼スラブを、Ar3変態点以上の仕上温度で熱間圧延す
る工程と、熱間圧延後の鋼板を、500〜700℃で巻取る工
程と、巻取られた鋼板を、冷間圧延後焼鈍する工程とを
有する高強度薄鋼板の製造方法により製造できる。さら
に、焼鈍後の鋼板に亜鉛系めっき処理を施すと、耐二次
加工脆性に優れた高強度亜鉛系めっき薄鋼板が得られ
る。なお、亜鉛系めっきとしては、溶融亜鉛めっきや電
気亜鉛めっきなどを適用できる。
理由は、Ar3変態点より低い温度で圧延すると最終製品
の加工性を劣化させるためである。また、500〜700℃で
巻取る理由は、NbCを十分に析出させるために500℃以上
にし、鋼板表面のスケール剥がれによる押し込み疵を防
止するため700℃以下にする必要があるためである。
は、再加熱炉で加熱後、あるいは加熱することなく直接
行うことも可能である。また、冷間圧延、焼鈍および亜
鉛めっき処理の条件は特に限定しないが、通常行われて
いる条件により目的とする効果は得られる。
連続鋳造によりスラブを製造した。このスラブを1200℃
に加熱後、仕上温度890℃〜940℃、巻取温度600℃〜660
℃で熱間圧延を行い熱延鋼板とし、酸洗後50〜85%の冷
間圧延を施した後、連続焼鈍、連続焼鈍・溶融亜鉛めっ
き(焼鈍温度800℃〜840℃)を実施した。連続焼鈍・溶
融亜鉛めっきでは、焼鈍後460℃で溶融亜鉛めっき処理
を行い、直ちにインライン合金化処理炉で500℃でめっ
き層の合金化処理を行った。その後、圧下率0.7%の調
質圧延を行った。そして、これらの鋼板の機械特性、表
面性状を調査した。また、上述した方法で縦割れ試験を
実施し、二次加工脆化遷移温度Tcを評価した。
効で、優れた表面性状を有し、同等強度レベルの比較例
に比べて、極めて優れた二次加工脆化遷移温度および非
常に良好な機械試験値を示す。
自動車外板用途などへの適用可能な高表面性状、非時効
で優れた加工性を有し、かつ耐二次加工脆性に優れた高
強度亜鉛めっき鋼板となっており、総合特性が極めて優
れている。
値、非時効性、二次加工脆化遷移温度、表面性状のう
ち、少なくとも1つ以上の性能が、本発明の鋼板に比較
して劣る。例えば、No.14、15、17〜20については、強
度確保のため添加されたSi量やTi量が高いため、溶融亜
鉛めっきの表面性状が著しく劣る。No.12、16、19を除
く全ての比較の鋼板は、二次加工脆化遷移温度が高く、
同等強度レベルで比較した場合、比較の鋼板は、本発明
の鋼板に比べ、r値、伸びが低く、高いYPを示す。
いるので、自動車外板用途へ適用可能な表面性状、非時
効性、加工性を有し、かつ耐二次加工脆性に優れた高強
度薄鋼板およびその製造方法を提供できる。
気製品、建材などにも広く適用できる。
す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】wt%で、C:0.0040〜0.02%、Si:0.05%以下、M
n:0.7〜3.0%、P:0.04〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.01〜
0.1%、N:0.004%以下、Nb:0.2%以下、残部が実質的にFe
および不可避的不純物からなり、かつ下記の式(1)を満
足する耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板。 (12/93)×Nb*/C≧1.0 …(1) 但し、Nb*=Nb-(93/14)×N - 【請求項2】さらに、Tiを0.05wt%以下含有している請求
項1に記載の耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板。 - 【請求項3】さらに、Bを0.002wt%以下含有している請求
項1または請求項2に記載の耐二次加工脆性に優れた高強
度薄鋼板。 - 【請求項4】請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の
成分を有する鋼スラブを、Ar3変態点以上の仕上温度で
熱間圧延する工程と、 熱間圧延後の鋼板を、500〜700℃で巻取る工程と、 巻取られた鋼板を、冷間圧延後焼鈍する工程と、を有す
る耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。 - 【請求項5】請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の
成分を有する鋼スラブを、Ar3変態点以上の仕上温度で
熱間圧延する工程と、 熱間圧延後の鋼板を、500〜700℃で巻取る工程と、 巻取られた鋼板を、冷間圧延後焼鈍する工程と、焼鈍後
の鋼板を、亜鉛系めっき処理する工程と、を有する耐二
次加工脆性に優れた高強度亜鉛系めっき薄鋼板の製造方
法。
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