JP3532302B2 - 多孔性シート及びそれを用いた吸収性物品 - Google Patents

多孔性シート及びそれを用いた吸収性物品

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JP3532302B2
JP3532302B2 JP15191495A JP15191495A JP3532302B2 JP 3532302 B2 JP3532302 B2 JP 3532302B2 JP 15191495 A JP15191495 A JP 15191495A JP 15191495 A JP15191495 A JP 15191495A JP 3532302 B2 JP3532302 B2 JP 3532302B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔性シート及びそれ
を用いた吸収性物品に関するものであり、詳しくは引張
強度及び成形生産性に優れ、且つ透湿性、防水性等にも
優れる多孔性シート及びそれを用いた吸収性物品に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
多孔性シートの製造方法としては、ポリエチレンやポリ
プロピレン等のオレフィン系樹脂中に40重量部以上の
無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸ま
たは二軸方向に延伸する方法が知られている。このよう
にして得られた多孔性シートは、通気性及び透湿性に優
れ結露現象を生じないため壁紙や包装紙等に好適に用い
られている。また、このような多孔性シートの優れた性
質に更に柔軟性を付与することにより、使い捨ておむつ
等の吸収性物品の裏面材等に使用することができ、この
ような多孔性シートに柔軟性を付与するためには、オレ
フィン系樹脂として線状低密度ポリエチレンを用いるこ
と等が提案されている。
【0003】一般に多用されている使い捨ておむつは、
尿等の排泄物を吸収する吸収体と、該吸収体の表面を覆
い肌に当てられる表面材と、上記吸収体を覆い液漏れを
防ぐ裏面材とからなり、これらは接着して一体化されて
いる。また、胴周部、脚周部からの漏れを防ぐ為に設け
られた伸縮機能及びおむつを装着した時に背側胴周部と
腹側胴周部とを止着するテープ等からなる止着機能を備
えている。そして、この止着テープは利便性から約25
mm幅のものが好ましく多用されているが、おむつの装
着ミスまたは着用中の排尿点検等の為に止着テープを剥
がそうとすると、柔軟性を付与した上記の多孔性シート
を用いて形成した裏面材は強度不足で破れてしまい、新
しいおむつと交換せざるを得ないという問題がある。そ
こで、これを防止するために、使い捨ておむつの腹側胴
周囲部の裏面材に、前もって幅広い保持用テープ(通称
ランディングテープ)を貼り付けておき、装着時は止着
テープ(通称ファスニングテープ)をその上に貼ること
により止着テープを繰り返し付け剥がし出来るようにな
っている。
【0004】しかしながら、ランディングテープを用い
ることは、おむつ構成部材や製造工程が多くなるとい
う欠点、ランディングテープはおむつ素材の中で最も
高価であるので、そのテープを幅広く(多量に)用いる
ことはコストアップになるという欠点、ランディング
テープを幅広で用いても着用者の体型によってはファス
ニングテープがランディングテープ以外の裏面材に貼り
付くことがあり、ファスニングテープの付け剥がしが出
来なくなる場合があるという欠点がある。
【0005】そこで、高強度の多孔性シートとして、特
開平5−98057号公報において、特定のポリオレフ
ィンに充填材と特定の可塑剤とラジカル発生剤とを配合
してインフレーション成形し、さらに引き取り方向に一
軸延伸する製法により得られる多孔性シートが提案され
ている。しかし、該多孔性シートは、通常のオレフィン
系樹脂に無機充填材を溶融混練して成形したシートを延
伸した多孔性シートの強度に比べ2倍弱は強度が向上す
るものの、この程度の強度では使い捨ておむつ等のラン
ディングテープを省くことは出来ない。更に、ラジカル
発生剤を使用しているので、成形品の溶融流動特性が成
形前組成物のそれと異なるので、通常の実生産工程で生
じる端部等の不要部分のリサイクル加工が困難となり、
生産性が劣るという問題がある。
【0006】また、特公平5−38011号公報におい
ては、特定の結晶性ポリマーと特定の(該ポリマーに混
和性のある)化合物とを溶融ブレンドし、シート成形
し、冷却過程で相分離を起こさせ、そのシートを延伸す
ることにより製造される微孔質シートが開示されてい
る。該微孔質シートは通常のオレフィン系樹脂に無機充
填材を溶融混練した成形シートを延伸した多孔性シート
に比べて強度を2〜3倍のものとすることが出来る。し
かし、これでも未だランディングテープを省ける程度の
強度には至っていない。本発明者等の検討では、ランデ
ィングテープを省くためには、通常の製法による多孔性
シートの少なくとも4倍、好ましくは5倍の強度が必要
であるという結果がでている。
【0007】更にまた、上記裏面材には、肌に接触する
吸収性物品の素材としてのソフトな感触/風合いが要求
されているが、上記微孔質シートは、要求される強度、
透湿性を保持しているが、良好な風合いを有するもので
はない。また、該公報では、上記特定の結晶性ポリマー
として、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プ
ロピレン共重合樹脂等を開示しているが、これらは利用
できる樹脂を開示しているのみでエチレンとプロピレン
の重量比、共重合形態(ランダム、ブロック)等は全く
開示されていない。更に、上記微孔質シートの最も重要
な欠点は防水性に劣る点にある。即ち、使い捨ておむつ
等の吸収性物品に必要な防水性は、少なくとも1時間で
あるが、かかる微孔質シートは、耐水圧が0であっても
30分以内に水が漏れてくる。
【0008】更に、上記微孔質シートは、従来のポリエ
チレン樹脂と充填材(主にCaCO 3 )とをブレンドし
た組成物から成形したシートを延伸することにより得ら
れる多孔性シートに比べ、より疎水性であるが、上述し
たように防水性に劣っており、ブレンド化合物として液
状の化合物を用いたときに、特に、防水性に劣るようで
ある。使い捨ておむつ等の吸収性物品に必要な感触(柔
軟性)を得るためには液状化合物の方が好ましいが、か
かるシートは防水性に劣るので、使い捨ておむつ等の吸
収性物品には使用出来ない。更に、かかる微孔質シート
の処方では、使用される化合物の揮発温度が低いので、
シート成形時に発煙による環境汚染や引火等の危険性が
あるのみでなく、揮発物がダイリップに付着して通称
「目ヤニ」と呼ばれている焼けが発生することが多く、
成形を中断しての分解掃除を頻発に行う必要があり、工
業的な生産性に著しく劣るという問題があった。
【0009】また、特表平7−500623号公報にお
いては、特定の結晶性ポリマーと特定の(該ポリマーに
混和性である)化合物と特定のフルオロケミカルオキサ
ゾリジノン化合物とを溶融ブレンドし、シート成形し、
冷却過程で相分離を起こさせ、そのシートを延伸するこ
とにより製造される微孔質シートが提案されている。か
かる微孔質シートは前記特公平5−38011号公報で
開示されている微孔質シートに比べて撥水性、撥油性は
改善されている。しかし、フッ素化合物特有の撥油性の
ため樹脂との混和性及び溶融流動性に劣っているので、
溶融成形性及び実生産性に劣るという欠点がある。更
に、この撥油性がテープ接着性を著しく低下させるとい
う問題もあり、止着テープにより装着する使い捨ておむ
つ等の吸収性物品の裏面材には不十分である。
【0010】また、特公平5−83099号公報におい
ては、特定のポリプロピレンにシラン系分散剤又はフッ
素系界面活性剤を均一に分散させ、多量の充填材と可塑
剤とを混合した組成物を成形して得られたシートを延伸
することにより分子配向させた微多孔フィルム及びその
製造方法が提案されている。該微多孔フィルムの耐水圧
は10〜50mであるが、ここではシラン化合物、フッ
素系界面活性剤は充填材の分散を助け、より微細孔
(0.005〜0.6μm)で高い空隙率(30〜90
%)を得るために用いられているもので、電池のセパレ
ータのように強度をあまり要しない用途には適するが、
柔軟な感触及び引っ張り強度に優れることを要する使い
捨ておむつ等の吸収性物品には使用し難い。
【0011】従って、本発明の目的は、通気性、透湿
性、及び防水性を有し、しかも良好な風合い及び高強度
(引き裂き強度及び引張降伏点強度が高い)を有してお
り、工業的に安全に且つ高速で連続生産することが出来
る多孔性シート及びそれを用いた吸収性物品を提供する
ことにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題を解決するために、鋭意検討した結果、特定の結晶性
ポリオレフィン樹脂と特定の二種の化合物とを特定量溶
融混練して得られた多孔性シートが上記目的を達成し得
ることを知見した。
【0013】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
ので、結晶性ポリオレフィン樹脂(a)55〜90重量
部、常圧での揮発温度が240℃以上で且つ融点が45
℃以下である化合物(b)45〜10重量部、及び化合
物(c)0.01〜15重量部からなる樹脂組成物の溶
融混練物から成形したシートを、少なくとも1つの方向
に延伸してなる多孔性シートであって、上記化合物
(c)は、上記化合物(b)と適度に相溶し、常圧での
揮発温度が220℃以上で、25℃での表面張力が25
dyne/cm以下である化合物であり、且つ上記化合
物(b)と上記化合物(c)との合計量が、上記結晶性
ポリオレフィン樹脂(a)55〜90重量部に対し、4
5〜10重量部であることを特徴とする多孔性シートを
提供するものである。
【0014】また、本発明は、液透過性の表面材と、防
漏性の裏面材と、これら両面材の間に配置された吸収体
とからなる吸収性物品において、上記裏面材として、上
記の多孔性シートを用いることを特徴とする吸収性物品
を提供するものである。
【0015】以下、先ず、本発明の多孔性シートについ
て詳述する。本発明の多孔性シートは、樹脂組成物の溶
融混練物から成形したシートを延伸処理してなる多孔性
シートであり、該樹脂組成物は、特定の結晶性ポリオレ
フィン樹脂(a)と特定の二種の化合物((b)及び
(c))とを特定の配合割合で含み、必要に応じて充填
材、安定剤、着色剤等を含む組成物である。
【0016】本発明において上記樹脂組成物に用いられ
る上記特定の結晶性ポリオレフィン樹脂(a)は、結晶
性ポリプロピレン樹脂、結晶性のエチレンとプロピレン
とのブロック共重合樹脂、該ブロック共重合樹脂と結晶
性ポリエチレン樹脂及び/又は結晶性ポリプロピレン樹
脂との混合物である。即ち、本発明において用いること
ができる上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)は、下記
の〜の樹脂である。 結晶性ポリプロピレン樹脂。 上記ブロック共重合樹脂。 上記ブロック共重合樹脂と結晶性ポリエチレン樹脂と
の混合物。 上記ブロック共重合樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂
との混合物。 上記ブロック共重合樹脂と結晶性ポリエチレン樹脂と
結晶性ポリプロピレン樹脂との混合物。 上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)としては、上記
〜のブロック共重合樹脂又は樹脂混合物を用いるのが
好ましい。
【0017】また、上記結晶性ポリオレフィン樹脂
(a)が、上記ブロック共重合樹脂又は上記混合物の場
合(上記〜の場合)には、エチレンとプロピレンの
モノマー換算重量比(エチレンの重量%/プロピレンの
重量%)が4/96〜40/60であることが好まし
く、8/92〜30/70であることが更に好ましい。
上記モノマー換算重量比が上記範囲内であることによ
り、本発明の多孔性シートは、特に風合いと強度(引き
裂き強度及び引張降伏点強度)との観点から使い捨てお
むつ等の吸収性物品の裏面材として用いるのに好適なシ
ートとなる。また、上記結晶性ポリオレフィン樹脂
(a)が上記ブロック共重合樹脂又は上記混合物の場合
(上記〜の場合)には、モノマー換算重量比が上記
の範囲内であれば、上記の樹脂又は共重合樹脂(上記
〜の樹脂)を2種以上混合して用いてもよい。上記結
晶性ポリオレフィン樹脂(a)が、上記ブロック共重合
樹脂又は上記混合物の場合(上記〜の場合)にエチ
レン重量比が4(重量%)未満であると、延伸して得ら
れる多孔性シートの引き裂き強度が小さくなると共に風
合いが悪くなり、また、エチレン重量比が40(重量
%)を超えると、高い延伸倍率で延伸しなければ所望の
透湿度が得られず、このような所望の透湿度が得られる
延伸倍率で延伸してしまうと引き裂き強度が低下する場
合があるので、上記範囲内とするのが好ましい。
【0018】また、上記結晶性ポリオレフィン樹脂
(a)が、上記ブロック共重合樹脂又は上記混合物の場
合(上記〜の場合)に、上記モノマー換算重量比が
上記範囲内であっても、ランダム共重合体の場合には、
多孔性シートにおいて、所望の透湿度が発現し難く、且
つ、引き裂き強度及び引張強度が低いので、ブロック共
重合体である必要がある。
【0019】上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)とし
て用いる上記プロピレン樹脂、上記ブロック共重合樹
脂、上記ポリエチレン樹脂は、それぞれのメルトインデ
ックスが3g/10分以下であるのが好ましく、0.2
〜3g/10分であることが更に好ましい。上記メルト
インデックスが3g/10分を超えると、得られる多孔
性シートの引き裂き強度や、引っ張り強度が低下し、例
えば、使い捨ておむつ等の吸収性物品の裏面材としての
必要な強度を得ることが難しくなるので、上記範囲内と
するのが好ましい。また、この場合に所望の強度を得る
ために多孔性シートの厚みを厚くしてもよいが、多孔性
シートの厚みを厚くすると透湿度が低下すると共にその
製品のコストアップを招く。また、上記メルトインデッ
クスが0.2g/10分未満であると、シート成形時の
押出成形で大きな動力を必要とする不都合が生じて生産
性が低下するので、上記範囲内とするのが好ましい。
【0020】尚、本発明において、上記メルトインデッ
クスとはASTM D−1238に準拠して、上記結晶
性ポリプロピレン樹脂及び上記ブロック共重合樹脂にお
いては230℃、2.16Kgfで、また、上記結晶性
ポリエチレン樹脂においては190℃、2.16Kgf
で測定した値である。
【0021】本発明において、上記樹脂組成物に用いら
れる上記の特定の化合物(b)は、常圧での揮発温度が
240℃以上、好ましくは250℃以上であり、且つ融
点が45℃以下、好ましくは35℃以下の化合物であ
る。本発明において、上記樹脂組成物の溶融混練物を成
形する際におけるシート成形温度は、好ましくは180
〜250℃、更に好ましくは190〜240℃であるた
め、上記化合物(b)の常圧での揮発温度が240℃未
満である場合には、シート成形時に揮発物の発煙が生じ
易くなる。そして、このような成形時の揮発物の発煙
は、環境汚染や引火の危険性があるのみでなく、揮発物
がダイリップに付着して通称「目ヤニ」と呼ばれている
焼け発生の原因となる。従って、上記発煙が生じると、
シート成形を一旦中断してダイリップの分解掃除をたび
たび行わねばならず、工業的な生産性が著しく劣るとい
う問題が生じる。また、上記化合物(b)の融点が45
℃以下に制限されるのは、上記化合物の融点が45℃以
下であると、製造されたシートが柔軟性に富むからであ
る。
【0022】尚、本発明における「揮発温度」とは、熱
天秤を用い、窒素気流中(30ml/min)、昇温速
度10℃/min、サンプル10mgで揮発原料を測定
し、加熱原料曲線を描いた際の減量が1%である温度を
意味する。
【0023】上記化合物(b)としては、例えば、鉱物
油又は分子内にエステル結合を有する化合物等が挙げら
れる。上記鉱物油としては、天然から採取され、低揮発
分が除去された芳香族/脂環族/脂肪族からなる炭化水
素、及びこれらに水素添加等をして芳香族を除去した脂
環族/脂肪族からなる炭化水素等が挙げられ、合成鉱油
と呼ばれるエチレン/α−オレフィンオリゴマー等も挙
げられる。
【0024】上記の分子内にエステル結合を有する化合
物としては、脂肪族もしくは芳香族の一塩基もしくは
多塩基カルボン酸と、脂肪族、脂環族若しくは芳香族の
一価もしくは多価アルコールとを脱水縮合して得られる
エステル化合物;又は分子内にヒドロキシル基とカル
ボキシル基との両方を有する化合物を脱水縮合反応して
得られるエステル化合物(即ち、モノ又はポリエステル
化合物)等が挙げられる。
【0025】上記脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン
酸としては、多塩基カルボン酸が好ましい。芳香族多塩
基カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族ト
リカルボン酸及び芳香族テトラカルボン酸が好ましく、
例えばフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等
が挙げられる。脂肪族多塩基カルボン酸としては、脂肪
族ジカルボン酸及び脂肪族トリカルボン酸が好ましく、
例えば、アジピン酸、セバチン酸及びクエン酸等が挙げ
られる。また、アルコールとしては、一価のアルキルア
ルコール等が好ましく、例えば、オクチルアルコール、
ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイル
アルコール等が挙げられる。
【0026】また、特に上記の分子内にエステル結合を
有する化合物としては、芳香族多塩基カルボン酸と一価
のアルキルアルコールとのエステル化合物(つまり、モ
ノ又はポリエステル化合物)、脂肪族多塩基カルボン酸
と一価のアルキルアルコールとのエステル化合物(つま
り、モノ又はポリエステル化合物)、又は多価アルコー
ル(特に好ましくは多価のアルキルアルコール)とモノ
カルボン酸(特に好ましくは脂肪族モノカルボン酸)と
のエステル化合物(つまり、モノ又はポリエステル化合
物)が好ましく用いられる。具体的には、例えば、グリ
セリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペン
タエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はソルビ
タン等の多価アルコールと、カプリン酸、ラウリン酸、
パルミチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸等の脂肪族
モノカルボン酸とのエステル化合物等が好ましく挙げら
れる。
【0027】また、得られるエステル化合物がゲル化し
ない程度に少量のアジピン酸等のポリカルボン酸をエス
テルの成分として加えてもよい。更に、環境汚染防止、
安全性の観点からは脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコー
ルから得られるポリエステル化合物が最も好ましい。
【0028】また、上記の分子内にエステル結合を有す
る化合物は、上記カルボン酸の1種以上と上記アルコー
ルの1種以上とから調製することが出来る。また、該分
子内にエステル結合を有する化合物の製造方法に特に制
限はなく、従来公知の如何なるエステル化方法も用いる
ことが出来る。また、上記の分子内にエステル結合を有
する化合物はカルボン酸中のカルボキシル基及びアルコ
ール中のヒドロキシル基のすべてが完全に反応した化合
物のみでなく、カルボン酸中のカルボキシル基及び/又
はアルコール中のヒドロキシル基の一部が未反応のまま
である部分エステル化化合物であってもよい。
【0029】また、上記の分子内にエステル結合を有す
る化合物としては、合成品に限らず、天然物、例えば、
椰子の実、大豆等から採取され精製されたエステル化化
合物であってもよい。
【0030】上記化合物(b)の具体例としては、鉱物
油としては石油各社から販売されている機械潤滑油、ゴ
ム用プロセスオイル、繊維用流動パラフィン等が挙げら
れ、分子内にエステル結合を有する化合物としては、ジ
ステアリルフタレート、トリオクチルトリメリテート、
テトラオクチルピロメリテート、ジステアリルアジペー
ト、ジステアリルセバテート、トリメチロールプロパン
トリラウレート、ペンタエリスリトールテトラカプレー
ト等を挙げることが出来る。また、これらは結晶性ポリ
オレフィン樹脂(a)の溶解度パラメーターと数単位
(上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)の溶解度パラメ
ーターと上記化合物の溶解度パラメーターとの差が好ま
しくは2〜3)以内の組み合わせから選ぶことができ
る。本発明においては、上記鉱物油又は分子内にエステ
ル結合を有する化合物を単独で用いることもでき、又は
二種以上を混合して用いることもできる。
【0031】本発明においては、上記樹脂組成物は、上
記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)及び上記化合物
(b)と共に上記の特定の化合物(c)を含む。上記化
合物(c)を添加することにより、該化合物(c)を添
加しない場合に比して、高い防水性を有し、感触/風合
いに優れる多孔性シートが得られることが、本発明者等
の研究で判明した。これは、上記化合物(b)と上記化
合物(c)との相乗効果で、肌に接触する使い捨ておむ
つ等の吸収性物品の裏面材シートとして用いるのに好適
な多孔性シートが得られるものである。また、上記化合
物(c)は耐熱安定性及び樹脂との混和性に優れ且つ適
度の滑性を有するので、樹脂組成物に添加すると溶融成
形し易くなり、実生産性に優れる多孔性シートを得るこ
とができるものである。
【0032】上記化合物(c)は、上記化合物(b)と
適度に相溶し、常圧での揮発温度が220℃以上、好ま
しくは240℃以上、更に好ましくは250℃以上であ
り、且つ25℃での表面張力が25dyne/cm以
下、好ましくは23dyne/cm以下である化合物で
ある。本発明において、「適度に相溶する」とは、二種
の化合物を室温で激しく攪拌混合した後静置し、二種の
化合物が相分離するまでの時間を測定し、該時間が5分
以上2日以内である場合をいう。化合物(c)が化合物
(b)と適度に相溶しないと、樹脂組成物のシート成形
性が劣り、且つ延伸して得られる多孔性シートの防水性
が向上しない。また、化合物(c)が化合物(b)と完
全に相溶すると、延伸して得られる多孔性シートの防水
性の向上がごく僅かとなる。また、上記化合物(c)の
常圧での揮発温度が220℃未満であると、溶融混練シ
ート成形時に揮発して化合物(c)のシート内の残有量
が減少し、延伸して得られる多孔性シートの防水性が向
上し難く、また、成形時のダイ汚れから長時間成形性
(生産性)が劣る。また、上記化合物(c)の25℃で
表面張力が25dyne/cmを超えると延伸して得
られる多孔性シートの防水性が向上しない。
【0033】上記化合物(c)としては、シリコーン化
物が好ましく用いられ、該シリコーン化合物として
は、シリコーン系オリゴマーを挙げることができる。上
記シリコーン系オリゴマーとしては、例えば、「オリゴ
マーハンドブック、1977年3月31日、(株)化学
工業日報社発行」に記載されているものを用いることが
でき、鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリジメチルフ
ェニルシロキサン等を挙げることができる。本発明にお
いては、相溶性と耐熱安定性、安全性の点からポリジメ
チルシロキサンを用いることが好ましい。また、上記ポ
リジメチルシロキサンのメチル基の1つを長鎖アルキル
基、フェニル基等に置換したシリコーン系オリゴマー、
メチル基の1つが水素基であるシリコーン系オリゴマー
を好適に用いることもできる。上記化合物(c)の具体
例としては、シリコーンメーカー各社から販売されてい
るシリコーンオイルを挙げることができ、例えば、トー
レ・シリコーン(株)から販売されているトーレシリコ
ーンSH200オイル、トーレシリコーンSH510オ
イル等を用いることができる。
【0034】本発明に用いる上記樹脂組成物における上
記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)と上記化合物(b)
との上記特定の配合割合は、上記結晶性ポリオレフィン
樹脂(a)55〜90重量部に対し、上記化合物(b)
45〜10重量部であり、好ましくは上記結晶性ポリオ
レフィン樹脂(a)65〜85重量部に対し、上記化合
物(b)35〜15重量部である。上記化合物(b)の
配合割合が45重量部を超えると、樹脂組成物のシート
成形性が劣り、且つ延伸処理して得られる多孔性シート
が強度不足となり、しかも長時間保存中に該シートから
該化合物(b)がブリードアウトするため実用性に欠け
る。また、10重量部未満であると延伸処理で所望の透
湿度を満たす多孔性シートを得ることが出来ない。
【0035】本発明に用いる上記樹脂組成物における上
記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)と上記化合物(c)
との上記特定の配合割合は、上記結晶性ポリオレフィン
樹脂(a)55〜90重量部に対し、上記化合物(c)
0.01〜15重量部であり、好ましくは0.1〜10
重量部である。上記化合物(c)の配合割合が15重量
部を超えると、樹脂組成物のシート成形性が劣り、ま
た、0.01重量部未満であると、延伸して得られる多
孔性シートの防水性が向上しない。
【0036】また、本発明に用いる上記樹脂組成物にお
ける上記化合物(b)と上記化合物(c)との合計量
は、上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)55〜90重
量部に対し、45〜10重量部であり、好ましくは35
〜15重量部である。上記化合物(b)と上記化合物
(c)との合計量が45重量部を超えると、上述のシー
ト成形性が劣り、且つ延伸処理して得られる多孔性シー
トの強度が不足となり、また、テープ接着性の経時安定
性が低下する。また、10重量部未満であると延伸処理
で所望の透湿度を満たす多孔性シートを得ることができ
ない。
【0037】また、上記樹脂組成物には必要に応じて充
填材を添加することができる。この際用いることができ
る充填材はシート成形温度において溶融しない粒状物が
好ましく、通常ゴムやプラスチック等に用いられる充填
材、例えば、炭酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、タ
ルク、クレー、シリカ、酸化チタン、金属粉その他無機
物または無機質を主体とする有機物金属塩等が挙げられ
る。また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂又はポリアク
リル酸ソーダ等の熱硬化性樹脂の粒状物や粉状物も使用
できる。これらの充填材は、好ましくは5nm〜20μ
m、更に好ましくは5nm〜5μmの平均粒径を有する
粉粒体として用いることが望ましい。上記充填材の平均
粒径が20μmを超えるとシートの引き裂き強度が低下
し、5nm未満であると実質的に延伸開孔性に寄与しな
いので、上記範囲内の平均粒径を有する充填材を使用す
るのが好ましい。また、成形温度で溶融する充填材は成
形シート中での必要とされる粒径に制御し難いので、上
記充填材としては、シート成形温度において溶融しない
粒状物を用いるのが好ましい。
【0038】上記充填材を添加することにより、添加し
ない場合に比して低延伸倍率でシートを開孔させること
ができ、所望の透湿度が得られるため、シート強度、特
に引き裂き強度をより向上させることができ、上記結晶
性ポリオレフィン樹脂(a)がブロック共重合体又は混
合物の場合、エチレン含量を多くした場合に透湿度が低
下するのを抑制するのに効果的である。また、上記充填
材は、上記化合物(b)と上記化合物(c)の合計量に
対して、好ましくは1〜30重量部用いることができ
る。
【0039】また、上記樹脂組成物には必要により安定
剤、着色剤等を添加剤として添加することができる。安
定剤、着色剤としては、公知のものが特に制限されず用
いられる。更に、必要に応じて本発明の多孔性シートの
基本物性に悪影響しない程度に少量の帯電防止剤等の通
常の樹脂物性改良剤を添加剤として用いることも出来
る。これらの添加剤は、樹脂組成物の全量に対して、好
ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.1
〜5重量%添加することができる。
【0040】更にまた、上記樹脂組成物には、核剤(結
晶造核剤)を添加することもできる。既に市販されてい
る結晶性ポリオレフィン樹脂には、高剛性、ハイサイク
ルグレードとして核剤が配合されたものや、核剤として
配合されていなくても実質的に核剤機能を有するものが
配合されているものもあり、充填材や顔料の一部もこの
機能を有する。これらの核剤や核剤機能を有するものが
添加されていないグレード及び添加されてはいるが核剤
の効果の劣るグレードには必要に応じて核剤を添加する
ことが好ましい。この際、用いられる核剤には特に制限
はなく、当業界で周知の核剤を用いることができ、例え
ば、プラスチックス(工業調査会発行)Vol.43 No.1
1、113〜116頁の「プラスチック配合剤の機能と
効果=核剤」欄に記載されている核剤を用いることがで
き、具体的には、芳香族カルボン酸の金属塩〔アルミニ
ウムヒドロキシジパラ−t−ブチルベンゾエート(Al
−PTBBA)等〕、ソルビトール系誘導体、有機リン
酸塩〔リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−
ブチルフェニル)ナトリウム(PTBNa)〕等の高融
点ポリマー核剤や、無機系核剤としてのタルク等が挙げ
られる。
【0041】しかし、上記樹脂組成物に用いられる樹脂
の種類によって必ずしも上記核剤を必要としない。例え
ば、上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)がエチレンと
プロピレンとのブロック共重合樹脂と結晶性ポリエチレ
ン樹脂及び/又は結晶性プロピレン樹脂との混合物であ
る場合にエチレン含量が増してくると結晶化速度が異な
るため、核剤を添加しなくても、得られる多孔性シート
において所望の強度及び透湿度を得ることができる。
【0042】而して、本発明の多孔性シートは、上記樹
脂組成物の溶融混練物から成形したシートを、少なくと
も1つの方向に延伸してなる多孔性シートである。上記
の「成形」及び「延伸」については、後述する「製造方
法」の説明において詳述する。
【0043】そして、本発明の多孔性シートは、その透
湿度が好ましくは0.5〜4.0g/100cm2 ・H
rであり、更に好ましくは1.0〜2.5g/100c
2・Hrである。透湿度が0.5g/100cm2
Hr未満であると、吸収性物品の裏面材として用いた場
合にムレ防止等の効果が劣り、また、4.0g/100
cm2 ・Hrを超えると、防水時間が短くなり、防漏性
が低下するので上記範囲内とするのが好ましい。また、
該多孔性シートを使い捨ておむつ等の吸収性物品の裏面
材に使用する場合には、該多孔性シートの防水時間は好
ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上、最も
好ましくは3時間以上である。尚、本発明において、上
記防水時間とは、多孔性シートを水平に置き、その上に
人工尿を1cc乗せ、該多孔性シートを径10cm、高
さ1cmのシャーレで伏せることにより人工尿の揮散を
防ぎながら、シート下面への人工尿のにじみ出しが指触
で感じられるまでの時間を言う。
【0044】また、本発明の多孔性シートは、その引き
裂き強度が、好ましくは180gf/mm以上、更に好
ましくは250gf/mm以上、最も好ましくは330
gf/mm以上である。また、引張降伏点強度が、好ま
しくは110kgf/cm2以上、更に好ましくは12
0kgf/cm2 以上、最も好ましくは130kgf/
cm2 以上である。
【0045】本発明の多孔性シートは、使い捨ておむつ
等の吸収性物品の裏面材として好適である他、織布、不
織布、紙等と貼り合わせて、防水、防寒、防菌、テン
ト、寝具用、包袋、ハップ材の基材等衣料用及び医療
用、鮮度保持、小動物、種子等の生命保持、腐敗防止用
包装材、果実等の熟成材、遮光材、濾過、拡散防止の分
離膜等の材料として用いることができる。
【0046】次に、本発明の多孔性シートの好ましい製
造方法について説明する。本発明の多孔性シートを製造
するには、先ず上記樹脂組成物の溶融混練物を成形して
シートとする。ここで、上記溶融混練物は、通常用いら
れる二軸混練押出機による混練方法により、上記樹脂組
成物を混練することにより好ましく得られる。実生産に
際してはホッパー部より上記結晶性ポリオレフィン樹脂
(a)及び必要に応じて用いられる上記充填材や上記添
加剤を定量フィーダーを用いて供給し、樹脂が可塑化し
ている押出機の混練部(中腹部)より、予備混合してお
いた上記化合物(b)及び上記化合物(c)を、又は上
記化合物(b)及び上記化合物(c)それぞれを定量ポ
ンプで圧入する方法が好ましい。上記化合物(b)及び
/又は上記化合物(c)の融点が常温より高いときは、
該化合物を融点以上に加熱して液状にして注入するのが
好ましい。また、充填材や添加剤を添加する場合には、
上記のように樹脂と一緒にホッパーから投入してもよ
く、又は上記化合物(b)及び/又は上記化合物(c)
と予備混合しておいたものを上記化合物(b)及び/又
は上記化合物(c)とともに圧入してもよい。
【0047】上記成形を行いシートを得るには、上記溶
融混練物を二軸混練押出機の吐出部(先端)に取り付け
たギヤポンプを経てダイに供給するか、又は二軸混練押
出機と単軸押出機とをタンデムに組み合わせ、該単軸押
出機を経てダイに供給する方法により得ることができ
る。
【0048】また、二軸混練押出機により、一旦、溶融
混練物(コンパウンド)をフィラメント状に押出した
後、これをカッティングして、ペレットを得、得られた
ペレットを、ダイを取り付けた単軸押出機にてシート成
形することもできる。このように溶融混練物をペレット
状とする場合、通常のフィラメント状に押し出した溶融
樹脂組成物をそのまま冷却してカッティングするより
も、冷却したフィラメントを約1.2〜1.5倍に延伸
してからカッティングすることが望ましい。この処理を
行うことにより、フィラメントの表面に化合物の一部が
ブリードすることがなく、次の単軸押出機への食い込み
を良好にでき、シート成形性を向上させることができ
る。また、上記成形は、フラットダイ、サーキュラーダ
イのいずれを用いて行っても良いが、シートの歩留りの
観点からサーキュラーダイを用いて成形するのが好まし
い。
【0049】更に、本発明の多孔性シートを歩留り良く
得る為には、溶融混練物の上記成形における冷却条件が
重要である。即ち、溶融樹脂組成物の冷却による結晶性
ポリオレフィン樹脂の結晶生成(結晶の大きさ、好まし
くは2〜8μm)を制御する必要があり、例えば、著し
い徐冷による極大結晶の生成、及び著しい急冷による微
細結晶の生成は、次の延伸処理における均一な延伸を妨
げ、得られる多孔性シートの強度が弱かったり、透湿度
が低くなってしまう場合があり好ましくない。好ましい
冷却条件は、樹脂組成物の溶融混練物の温度がダイ吐出
時の温度から結晶性ポリオレフィン樹脂(a)の融解温
度に迄冷却される時間が0.1〜3secであり、融解
温度から更に100℃下がる時間が2〜20secであ
るのが望ましい。例えば、上記結晶性ポリオレフィン樹
脂(a)が融点168℃のエチレンとポリプロピレンと
のブロック共重合樹脂である場合は溶融混練温度は22
0〜240℃であり、融解温度は158〜160℃であ
り、融解温度にまで冷却される時間は0.8〜2.0s
ec、更に100℃下がる時間は5〜20secとする
のが好ましい。
【0050】次いで、上記シートの延伸を行う。該延伸
には、縦方向(MD)に延伸する一軸延伸法、縦方向へ
の一軸延伸後引き続きテンター延伸機、エアーインフレ
ッション延伸機又はマンドレル延伸機等により横方向
(TD)に延伸する逐次二軸延伸法、又は縦方向及び横
方向に同時に延伸する同時二軸延伸法がある。これらの
場合の延伸温度は、一般に常温以上で樹脂組成物の融点
より10℃以上、更には30℃以上低い温度であること
が好ましい。また、延伸倍率は一軸方向に少なくとも
1.1倍(元の長さ1.0に対し延伸後の長さ1.1)
以上、好ましくは1.2〜4倍、更に好ましくは1.3
〜3倍、即ち一軸延伸の場合は縦方向に、また二軸延伸
の場合は縦方向及び横方向にそれぞれ1.1〜4倍とす
ることが力学的バランスや強度の保持、優れた透湿性及
び防水性を発現させるために好ましい。
【0051】次に、本発明の吸収性物品について、図1
を参照して詳細に説明する。尚、ここでは、本発明の多
孔性シートを裏面材として用いた本発明の使い捨ておむ
つを例示して説明するが、この他に、失禁ブリーフや生
理用ナプキン等にも適用することができる。本発明の吸
収性物品としての図1に示す使い捨ておむつ1は、液透
過性の表面材2と、防漏性の裏面材3と、これら両面材
の間に配置される吸収体(図示せず)とからなり、上記
裏面材3として、上記の本発明の多孔性シートを用いて
いる。
【0052】更に詳細には、上記使い捨ておむつ1は、
尿等の排泄物を吸収する吸収体と、該吸収体の表面を覆
い肌に当てられる表面材2と、上記吸収体を覆い液漏れ
を防ぐ裏面材3とからなり、これらは接着して一体化さ
れている。また、胴周部5、5’、脚周部6からの漏れ
を防ぐために設けられた弾性部材7及びおむつを装着し
た時に背側胴周部5’と腹側胴周部5とを止着する止着
テープ11を備えている。この止着テープとしては、利
便性から約25mm幅のものが好ましく多用されてい
る。
【0053】而して、上記裏面材3には上述の本発明の
多孔性シートが用いられる。上記裏面材の厚さは、通
常、使い捨ておむつに必要な柔軟性、使い捨ておむつの
組立加工時に必要なシートの腰及び裏面材があることの
安心感を付与する点、並びに使い捨ておむつに必要な柔
軟性及びコスト面から、好ましくは25〜55μm、更
に好ましくは35〜45μmである。
【0054】上述の如く構成された本発明の吸収性物品
としての上記使い捨ておむつ1においては、いわゆるラ
ンディングテープを省いてファスニングテープを直接裏
面材に付け剥がしをするために必要な裏面材の強度は、
引き裂き強度で使用されるシート厚さにおいて10gf
以上、好ましくは14gf以上、最も好ましくは18g
f以上である。従って、例えば、厚さ55μmの裏面材
で10gfの引き裂き強度を得るためには182gf/
mmの引き裂き強度が必要となる。また、引張降伏点強
度ではシート幅1cm当たり600gf以上、好ましく
は700gf以上、最も好ましくは800gf以上であ
る。従って、例えば、厚さ55μmで1cm当たり60
0gfの引張降伏点強度を得るには109kgf/cm
2 以上の強度が裏面材に必要となる。
【0055】そして、本発明の吸収性物品としての上記
使い捨ておむつは、その裏面材として本発明の多孔性シ
ートを用いており、該多孔性シートの引き裂き強度は1
80gf/mm以上、引張降伏点強度が110kgf/
cm2 以上であるので、十分な強度を有することにな
る。従って、本発明の吸収性物品においては、ランディ
ングテープを使用する必要がなくなるのでおむつの装着
ミスが生じることがなく、また着用中に排尿点検のため
に上記止着テープを剥がしても、裏面材が破れることは
ない。また、裏面材の透湿度が上記範囲にあればムレ等
が生じず、快適な着用感が維持できる。尚、上記多孔性
シートは、その樹脂組成によって引張降伏点がはっきり
現れない場合もあるが、この場合は、100%伸長時の
引張応力が降伏点強度として採用される。
【0056】
【実施例】本発明を以下の実施例を用いて更に具体的に
説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるもの
ではない。尚、2つの下記化合物(c)の表面張力は、
25℃で測定した。
【0057】〔実施例1〜5及び比較例1〜3(多孔性
シートの実施例)〕結晶性ポリオレフィン樹脂(a)と
して下記結晶性ポリオレフィン樹脂及び、化合物
(b)として下記化合物(b)−〜(b)−、化合
物(c)として下記化合物(c)−及び(c)−を
それぞれ〔表1〕に示す組成とした樹脂組成物を用い、
後述の成形方法に従って成形して、シートを得た。尚、
化合物(b)−〜(b)−並びに化合物(c)−
及び(c)−の揮発温度及び融点を〔表2〕に示す。
揮発温度は、セイコー電子工業(株)製 SSC500
のGT/DTA200で測定した。
【0058】結晶性ポリオレフィン樹脂;密度0.9
1g/cm3 、メルトインデックス0.4g/10分、
融点169℃のホモポリプロピレン樹脂(チッソ石油化
学(株)製)。 結晶性ポリオレフィン樹脂;密度0.91g/c
3 、メルトインデックス0.5g/10分、融点16
8℃で、エチレン含有量が8重量%である、エチレンと
プロピレンとのブロック共重合樹脂(チッソ石油化学
(株)製)。 化合物(b)−;トリメチロールプロパンとラウリン
酸とのエステル化物(酸価=0.24、OH価=3.
8、;略称TTL) 化合物(b)−;鉱物油(出光興産(株)製、商品名
「ダイアナプロセスオイルPW−90、引火点=272
℃、アニリン点=127.7℃、アロマ系/ナフテン系
/パラフィン系=0/29/71;略称PW−90) 化合物(b)−;鉱物油(中央化成(株)製、商品名
「流パラ350S」、引火点=220℃、アニリン点=
112℃、アロマ系/ナフテン系/パラフィン系=0/
34/66;略称350S) 化合物(c)−;ポリジメチルシリコーン(トーレ・
シリコーン(株)製、商品名「SH−200オイル10
00cs」、表面張力21.2dyne/cm、引火点
=350℃以上、略称SH200−1000) 化合物(c)−;ポリジメチルフェニールシリコーン
(トーレ・シリコーン(株)製、商品名「SH510オ
イル100cs」、表面張力24.1dyne/cm、
引火点=275℃以上、略称SH510−100) 尚、上記化合物(c)−〜(c)−は、何れも上記
化合物(b)−及び(b)−と適度に相溶するもの
である。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】・成形方法 二軸混練押出機(φ45mm、L/D=33.5)の先
端(吐出口)にギヤポンプを挟んでサーキュラーダイ
(φ220mm)を接続した。そして、ダイからニップ
ロールまでの間が4mの空冷インフレーション成形設備
を用い、ホッパーから結晶性ポリオレフィン樹脂(a)
を供給し、そして二軸混練押出機の中腹(混練)部に加
熱液状化した化合物(b)及び化合物(c)をギヤポン
プで注入した。また、この際の、樹脂組成物の供給速度
は270cm3 /minとした。設定温度は押出機のシ
リンダーC1部(ホッパー側)を190℃、C2部を2
10℃、C3〜C8部を240℃、ギヤポンプ部を23
0℃、ダイを230℃とした。そして、エアーリングか
ら20℃の空気をバブルに吹き付け強制空冷しながら、
シート折り幅60cm引き取り速度8m/minで、厚
さ38〜40μmのシートを得た。
【0062】次いで、得られたシートを、下記延伸処理
方法に従って延伸し、多孔性シートを得た。 ・延伸処理方法:幅1mのロール延伸機を用い、上記シ
ートを成形方向に50℃で1.5倍に延伸し、続いてア
ニーリングで1.4倍(延伸前の1.4倍)とした。得
られたシートの厚さは全て35〜37μmであった。但
し、実施例5は1.8倍延伸し、アニーリングで1.7
倍とした。
【0063】得られた多孔性シートについて、下記評価
基準に従って、それぞれ評価を行った。その結果を〔表
3〕に示す。
【0064】・多孔性シートの評価基準 (1)成形時の発煙;上記シート成形時の揮発物の発煙
状態を目視により次の基準で判定した。 ◎;発煙は全くなし。 ○;発煙少し。 △;発煙多い。 ×;発煙非常に多い。 (2)目ヤニ発生(蓄積)時間;上記シート成形でシー
ト表面に肉眼で観察出来るダイライン発生迄の時間を測
定した。
【0065】(3)シート成形性;目視により次の基準
により判定した。 ◎;バルブ安定、ダイライン無し。 ○;バルブ安定、ダイライン有り。 △;バルブ変動。 ×;成形不可。 (4)延伸性;上記延伸処理工程でシートを目視により
下記基準で評価した。 ◎;切断なし、均一白化。(尚、白化と延伸とは相関す
ることを本発明者らは、確認済みである)。 ○;切断なし、僅かに白化ムラあり。 △;切断なし、白化ムラ多い。 ×;切断。
【0066】(5)引き裂き強度;延伸方向(MD方
向)に30mm幅×60mm長さの試料片の長手方向の
一端における短片の中央から長片に平衡に内部へ向けて
30mmの切込みをいれる。次いで、試験片の切込みを
入れた片の両側が裏表になるように引っ張り試験機に取
り付け引っ張り速度300mm/分で引き裂き、平均応
力を求める。 (6)引張降伏点強度;10mm幅の試験用シートを作
成し、延伸方向と直角方向にテンシロン引張試験機で3
00mm/分にて引張り、応力/歪曲線から降伏点を測
定した。 (7)透湿度;JIS Z0208に準拠して測定。 (8)防水性;多孔性シートを水平に置き、その上(表
面)に人工尿を1cc乗せた。用いた人工尿は、尿素
1.94%、塩化ナトリウム0.795%、硫酸マグネ
シウム0.110%、塩化カルシウム0.062%、硫
酸カリウム0.197%、赤色2号(染料)0.010
%、水96.88%、ポリオキシエチレンノニルフェニ
ルエーテル(約0.00035%)で、表面張力を50
±1dyne/cmに調製した。次いで、該多孔性シー
トを径10cm、高さ1cmのシャーレで伏せることに
より人工尿の揮散を防ぎながら、シート下面への人工尿
のにじみ出しが指触で感じられるまでの時間を測定し
た。ただし、3時間以上は測定しなかった。
【0067】(9)風合い;延伸処理工程で得たシート
を指触感触により下記基準に従って評価した。 ◎;柔軟で風合いが非常に良好。 ○;柔軟で風合いが良好。 △;やや硬く風合いがやや悪い。 ×;硬く風合いが悪い。
【0068】
【表3】
【0069】〔比較例4〕樹脂組成物として、線状低密
度ポリエチレン(三井石油化学工業(株)製、商品名
「ウルトゼックス2520F」)100重量部と、表面
処理炭酸カルシウム(平均粒径1.1μm)150重量
部、及びポリエステル(トリメチロールプロパン/アジ
ピン酸/ステアリン酸=2モル/1モル/4モルからな
るSV=241、AV=0.8、OHV=7)5重量部
からなる組成物を用い、二軸押出機のC1部を180
℃、C2及びC3部を190℃、ダイを190℃とした
以外は実施例1と全く同様にしてシートを成形し、厚さ
48〜50μmのシートを得た。次いで、実施例1と同
様のロール延伸機を用い、延伸ロール温度;50℃で
2.2倍延伸し、アニール温度70℃で2.0倍に延伸
した。得られたシートの厚さは35〜37μmであっ
た。得られた多孔性シートの評価結果を〔表3〕に示
す。
【0070】〔実施例6〜7及び比較例5〜6(吸収性
物品の実施例)〕実施例1、実施例2、比較例1及び比
較例4で得られた多孔性シートを裏面材に用い、表面
材、吸収体、裏面材及び止着テープからなる図1に示す
吸収性物品としての使い捨ておむつ(ランディングテー
プを使用せず)をそれぞれ製造した(順に実施例6、実
施例7、比較例5及び比較例6とする)。
【0071】実施例6、実施例7、比較例5及び比較例
6の使い捨ておむつを赤ちゃん10人に5時間装着した
ところ、実施例6及び7の使い捨ておむつは漏れ0で且
つファスニングテープの付け剥がしが良好であった。こ
れに対し、比較例6の使い捨ておむつはファスニングテ
ープが全く剥がれることなく、全て裏面材が破れた。ま
た、風合いにおいては実施例6の使い捨ておむつは柔軟
で最も優れた感触を呈したが、比較例5及び比較例6の
使い捨ておむつは風合いにおいて劣っていた。実施例6
及び実施例7の使い捨ておむつは5時間装着しても尿が
漏れなかったが、比較例5の使い捨ておむつでは装着1
時間目に80%から尿が漏れた。また、比較例6の使い
捨ておむつでは装着1時間では漏れなかったが5時間目
には40%から尿が漏れた。更に、比較例6の使い捨て
おむつはファスニングテープ付け剥がしが出来ず無理に
剥がすと破れた。
【発明の効果】本発明の多孔性シートは、通気性、透湿
性、及び防水性を有するもので、しかも良好な風合い及
び高い強度(引き裂き強度及び引張降伏点強度)とを有
しており、工業的に安全且つ高速で連続生産することの
出来る生産性に優れたものである。また本発明の吸収性
物品は、ランディングテープを使用しなくてもファスニ
ングテープの付け剥がしが可能なので、利便性に優れる
と共に経済的にも有利なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品としての使い捨て
おむつの1例を示す斜視図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 53:00 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 9/00 C08L 23/00 - 23/26

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性ポリオレフィン樹脂(a)55〜
    90重量部、常圧での揮発温度が240℃以上で且つ融
    点が45℃以下である化合物(b)45〜10重量部、
    及び化合物(c)0.01〜15重量部からなる樹脂組
    成物の溶融混練物から成形したシートを、少なくとも1
    つの方向に延伸してなる多孔性シートであって、 上記化合物(c)は、上記化合物(b)と適度に相溶
    し、常圧での揮発温度が220℃以上で、25℃での
    面張力が25dyne/cm以下である化合物であり、
    且つ上記化合物(b)と上記化合物(c)との合計量
    が、上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)55〜90重
    量部に対し、45〜10重量部であることを特徴とする
    多孔性シート。
  2. 【請求項2】 上記結晶性ポリオレフィン樹脂(a)
    が、結晶性ポリプロピレン樹脂、結晶性のエチレンとプ
    ロピレンとのブロック共重合樹脂、該ブロック共重合樹
    脂と結晶性ポリエチレン樹脂及び/又は結晶性ポリプロ
    ピレン樹脂との混合物であり、該結晶性ポリオレフィン
    樹脂(a)が上記ブロック共重合樹脂又は上記混合物の
    場合には、エチレンとプロピレンのモノマー換算重量比
    (エチレンの重量%/プロピレンの重量%)が4/96
    〜40/60である請求項1記載の多孔性シート。
  3. 【請求項3】 上記化合物(b)が、鉱物油及び/又は
    分子内にエステル結合を有する化合物である請求項1又
    は2記載の多孔性シート。
  4. 【請求項4】 上記化合物(c)が、ポリジメチルシロ
    キサンである請求項1〜3の何れかに記載の多孔性シー
    ト。
  5. 【請求項5】 透湿度が0.5〜4.0g/100cm
    2・Hrで且つ防水時間が1時間以上である請求項1〜
    4の何れかに記載の多孔性シート。
  6. 【請求項6】 液透過性の表面材と、防漏性の裏面材
    と、これら両面材の間に配置される吸収体とからなる吸
    収性物品において、上記裏面材として、請求項1〜5の
    何れかに記載の多孔性シートを用いることを特徴とする
    吸収性物品。
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