JP3527998B2 - 超音波成膜装置 - Google Patents

超音波成膜装置

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JP3527998B2 JP28773593A JP28773593A JP3527998B2 JP 3527998 B2 JP3527998 B2 JP 3527998B2 JP 28773593 A JP28773593 A JP 28773593A JP 28773593 A JP28773593 A JP 28773593A JP 3527998 B2 JP3527998 B2 JP 3527998B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波励振器により発
生させた弾性振動により溶液を霧化し、その霧を基板の
一方の板面に噴霧し、前記霧に含まれる物質から成る薄
膜を前記板面上に形成する超音波成膜装置に関する。
【従来の技術】物質を薄膜化する方法には湿式法と乾式
法がある。湿式法の代表的なものとしてラングミュア・
ブロジェット法(LB法)が挙げられ、LB法は有機非
線形光学材料などを得るための有力な方法として用いら
れている。乾式法の代表的なものとしては真空蒸着法な
どが挙げられ、真空蒸着法は無機半導体や有機半導体の
分野に幅広く応用されている。LB法は親水基および疎
水基の両方を有する分子から配向性を有する単分子層を
気水界面において作成し、その単分子層を非対称に積層
することにより非対称配向構造を有する薄膜を基板上に
形成するというものである。LB法によれば分子鎖が基
板に対し垂直に配列した構造が得られ、有機低分子薄
膜、高分子薄膜あるいはそれらが交互に累積した有機超
格子薄膜の形成などが可能である。しかしながら、大き
な膜面積を有する薄膜が得られにくく、高度の非対称性
を有する薄膜を数μmの膜厚にまで積層することが難し
いという欠点を有する。また、概して装置も大型であ
る。真空蒸着法は真空中で物質を蒸発させ、基板上に付
着させて薄膜を形成するというものである。たとえば有
機化合物を蒸着する場合、基板の温度や蒸着速度などの
蒸着条件を満たせば分子鎖が基板に対し垂直または水平
に配列した構造が得られ、単分子層が順次形成されLB
膜と同様な薄膜の形成が可能である。また、LB法以上
に分子鎖の基板に対する配向制御が可能である。しか
し、蒸着条件の設定が難しく、高度の非対称性を有する
薄膜を数μmの膜厚にまで積層することが難しく、その
うえ長時間を要するという欠点を有し、概して装置も大
型である。
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、物質
を薄膜化する新たな装置を提供することにあり、超音波
励振器により発生させた弾性振動により溶液を霧化し、
その霧を基板の一方の板面に噴霧し、前記霧に含まれる
物質から成る薄膜を前記板面上に短時間で形成すること
ができ、構造が簡単な超音波成膜装置を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の超音波
成膜装置は、圧電振動子に多数の微小な貫通孔を有する
振動板を固着してなる超音波励振器を少なくとも1つ備
え、該超音波励振器により発生させた弾性振動により溶
液を霧化し、その霧を基板の一方の板面に噴霧し、前記
霧に含まれる物質から成る薄膜を前記板面上に形成する
超音波成膜装置において、前記圧電振動子は圧電磁器、
電極PおよびQから成り、前記電極PおよびQは前記圧
電磁器の厚さ方向に垂直な両端面のそれぞれに形成され
ており、前記電極Pは1組のすだれ状電極で成り、該す
だれ状電極の2つの端子T P1 およびT P2 のうちの一
方の端子T P1 と電極Qにおける端子T との間に前記
圧電振動子の共振周波数とほぼ等しい周波数の電圧を印
加することにより、前記超音波励振器を駆動する回路が
備えてあり、前記駆動回路は、直流電源と前記端子T
P1 との間に接続されている昇圧用のコイルと、出力電
圧端子が前記端子T P1 に接続され入力電圧端子が前記
端子T P2 に接続されることにより前記端子T P2 に現
われる圧電気を帰還電圧として受けるトランジスタとを
備え、前記駆動回路は、前記トランジスタを増幅素子と
し前記超音波励振器を共振回路とする発振回路を構成
し、前記圧電振動子の共振周波数は、該圧電振動子と前
記振動板との複合体における共振周波数にほぼ等しく、
前記薄膜を前記板面上に形成する手段は前記薄膜の膜厚
を制御する手段および前記薄膜の配向性を制御する手段
を含み、前記膜厚制御手段および前記配向性制御手段
は、前記霧の温度、前記霧の粒径および前記霧の量を制
御する手段と、前記霧が付着した前記基板を所定の温度
および圧力のもとにおく手段を含むことを特徴とする。
請求項2に記載の超音波成膜装置は、前記基板が石英ガ
ラスその他のガラス類、塩化カリウム、塩化ナトリウム
などの無機塩類、グラファイトなどの高分子化合物、圧
電セラミック、金属その他の物質で成ることを特徴とす
る。請求項3に記載の超音波成膜装置は、前記圧電振動
子が長さと幅の寸法比が1に近くしかも1に等しくない
矩形状の板または3辺のうちの2辺の寸法比が1に 近く
しかも1に等しくない矩形状の角柱であって、前記振動
板は前記圧電振動子の前記電極PまたはQを有する少な
くとも一つの端面上に一体的に連なって固着されている
ことを特徴とする。
【作用】本発明の超音波成膜装置は圧電振動子に振動板
を固着してなる超音波励振器を有する。圧電振動子と振
動板との複合体の共振周波数にほぼ等しい周波数を有す
る交流信号を圧電振動子に印加すると圧電振動子が振動
し、この圧電振動子の振動は振動板を振動させる。この
振動板に目的物質を含む溶液を供給すると、溶液は振動
板の振動により振動板の垂直上方に霧化される。その霧
を基板の一方の板面に付着させることにより、目的物質
から成る薄膜をその板面に容易に形成することができ
る。本発明の超音波成膜装置では薄膜の膜厚を制御する
手段および薄膜の配向性を制御する手段が備えられてい
る。膜厚制御手段および配向性制御手段は、霧化する溶
液の温度および霧の粒径並びに霧の量を制御する手段を
含むとともに、霧化された霧が付着した基板を所定の温
度および圧力のもとにおく手段を含む。従って、薄膜を
板面に形成する際、これらの手段を駆使することにより
目的の膜厚と配向性を有する薄膜を得ることができる。
なお、圧電振動子に引加する電圧を制御することによ
り、霧化量や霧の粒径を制御することも可能である。ま
た、同一の溶液に2種類あるいはそれ以上の種類の物質
を溶解させておくことにより、基板の板面上に2成分あ
るいはそれ以上の成分から成る混合物、またはそれらの
成分が反応することにより生成される化合物の薄膜を形
成することができる。さらに、超音波励振器を2つある
いはそれ以上設け、それぞれの超音波励振器によって別
々の物質を含む溶液を順次に霧化させる構造を採用する
ことにより、それぞれの溶液に含まれる成分によって形
成される積層状の薄膜を基板の板面上に形成することも
可能となる。このようにして、適当な条件のもとでの霧
化あるいは霧化後の処理により、基板の板面上における
重合反応などによる高分子薄膜の形成も可能となる。基
板が石英ガラスその他のガラス類、塩化カリウム、塩化
ナトリウムなどの無機塩類、グラファイトなどの高分子
化合物、圧電セラミック、金属その他の物質で成ること
により、基板に高機能性を有する薄膜を形成することが
可能となる。圧電振動子は圧電磁器並びにその圧電磁器
の厚さ方向に垂直な両端面にそれぞれ形成されている電
極PおよびQから成り、この2つの電極のうちの一方が
1組のすだれ状電極で成る。このような簡単な構造の圧
電振動子の採用により超音波励振器を小型化できるばか
りでなく、高い効率で溶液を霧化することができる。ま
た、電極Pが1組のすだれ状電極で成り、そのすだれ状
電極における2つの端子のうちの一方と電極Qとの間に
圧電振動子を駆動する回路を設けることができる。この
駆動回路として2端子方式または3端子方式の自励式回
路などを採用することができる。このような自励式回路
を用いた場合、圧電振動子の共振周波数に周波数を自動
的に追尾させることが可能となる。また、回路構成が簡
単で小型であり、電源効率も良く、温度などの環境の変
化に対応しうる形での低消費電力駆動が可能となる。超
音波励振器を駆動するための回路には、直流電源と端子
P1との間に昇圧用のコイルが接続されている。ま
た、出力電圧端子が端子TP1に接続され入力電圧端子
が端子TP2に接続されたトランジスタを備えている。
このトランジスタは端子TP2に現われる圧電気を帰還
電圧として受けるためのものである。このようにして、
超音波励振器の駆動回路は、トランジスタを増幅素子と
し超音波励振器を共振回路とする発振回路を構成してお
り、圧電振動子の共振周波数に周波数を自動的に追尾で
きるようにしている。そのうえ、コイルの逆起電圧を利
用した回路を備えることにより、電源電圧より高い電圧
で圧電振動子を駆動できるようにしている。この逆起電
圧回路はコイルの特性を利用することで高電圧を発生さ
せるもので、トランスの使用と比較して価格、重量およ
び容積の点で有利である。また、回路構成が簡単で小型
であり、電源効率及び周波数特性が良い等の特徴をもた
らすことができる。図10は3端子方式の自励回路のブ
ロック図を示している。3端子方式とは、圧電振動子と
の接続のために3つの端子を有し、各端子を互いに独立
した目的に利用する方式である。圧電振動子の片側の電
極は電圧を印加するドライブ電極Dと、増幅器に電力の
一部をフィードバックするためのフィードバック電極F
に分割されており、もう一方の電極はグランド電極Gと
して接地されている。本発明の超音波成膜装置では圧電
振動子における電極Pが1組のすだれ状電極で成り、こ
のすだれ状電極がD電極およびF電極に相当し、端子T
P1およびTP2がそれぞれD電極およびF電極に設け
られた端子に相当する。また、電極Qがグランド電極G
に相当する。圧電振動子の厚さが薄い場合にも、本発明
が示すようにすだれ状電極を用いれば自励発振駆動が可
能である。図10におけるこの方式は、パワーアンプで
180°だけ位相のシフトをするから、圧電振動子のD
電極とF電極間で位相が180°シフトする周波数で自
励発振する。圧電振動子として、長さと幅の寸法比が1
に近くしかも1に等しくない矩形板状構造または3辺の
うちの2辺の寸法比が1に近くしかも1に等しくない矩
形角柱状構造を採用することができる。このような構造
の圧電振動子を用いることにより、圧電振動子と振動板
との複合体の結合振動を増強することができる。従っ
て、圧電振動子の振動エネルギーが効率良く振動板に伝
搬し、霧化効率が促進される。また、このような圧電振
動子に対し振動板は圧電振動子の電極を有する少なくと
も一方の端面上に一体的に連なって固着されている。こ
のようにして、振動板は圧電振動子と振動板との固着部
分を固定端とする片持ち梁の形で振動する。従って、振
動板に供給された溶液はその弾性振動により振動板に垂
直な上方に向けて微小かつ均一な粒子で成る霧として効
率よく放散される。振動板には微細な多数の孔が設けら
れていることから、振動板に供給された溶液はその孔を
通して霧化される。孔を通しての霧化は粒子の微小性、
均一性を促し、しかも霧化効率を増大させることができ
る。その上、孔の一方の開口面積が他方の開口面積より
大きい構造を採用すれば、その大きい方の開口を入口側
とし小さい方を出口側とすることにより、孔の溶液通過
面積が入口側から出口側に向けて減少する。従って、溶
液が孔を通過するときに絞り作用を受ける。その結果、
粒子の径がさらに微小、均一になり、溶液の霧化作用が
促進され、霧の発生量が増加する。本発明の超音波成膜
装置では基板の一方の板面に溶液中の成分で成る薄膜を
形成する際、溶液は振動板に接触しさらに振動板に設け
られたの孔を通過する。このとき、超音波によって溶液
中には微小な大きさの空泡が生じる。この空泡の中は極
めて高温度に達することから、溶液が振動板の上部から
霧として放出される際には大きなエネルギーを保有す
る。このエネルギーは溶液中に含まれる物質のイオン化
を促進するので、基板の板面において形成される薄膜の
配向性に重要な役割を演ずることとなる。従って、高画
質でしかも超薄型の壁掛けテレビなどの実現を可能にす
る有機系エレクトロ・ルミネッセンス素子の基板への積
層方法として、本発明の超音波成膜装置を用いれば溶液
を霧状にして基板に噴霧することができるので最適の方
法といえる。
【実施例】図1は本発明の超音波成膜装置の一実施例を
示す断面図である。本実施例は圧電振動子1、振動板
2、支持具3、保液材4、自励式の駆動回路5、電源室
6、貯液室7、支持具8およびドーム9から成る。但し
図1では、駆動回路5は省いて描かれている。圧電振動
子1および振動板2から成る超音波励振器により貯液室
7中の溶液が霧化され、その霧は支持具8によって支持
された基板の一方の板面に噴霧され、その溶液中の成分
で成る薄膜がその基板の前記板面に形成される。貯液室
7には温度調節機能が取り付けられており、貯液室7中
の溶液の温度を上昇または下降させることが可能であ
る。従って、霧の温度を調整できる。また、電源室6に
はドーム9内の温度および圧力を調節する機能が取り付
けられている。支持具8は支持具3の上部に取り付けら
れており、振動板2と基板との距離が自由に調整できる
ようになっており、しかも基板自身の温度を上昇または
下降させる機能を備えている。図2は圧電振動子1およ
び振動板2から成る超音波励振器とその周辺の断面図で
ある。振動板2は圧電振動子1の一方の端面に圧電振動
子1と一体的に連なって固着されている。振動板2の下
端面には保液材4の上端部が接触していて、保液材4に
よって吸い上げられた溶液は振動板2に供給され、振動
板2の上方へ霧化される。図3は圧電振動子1および振
動板2の平面図である。圧電振動子1は圧電磁器10、
電極Q(図3では描かれていない)およびすだれ状電極
Pから成る。圧電磁器10は矩形板状のTDK72A材
(製品名)で成り、その長さは17mm、幅は20m
m、厚さは1mmである。圧電磁器10の分極軸の方向
は厚さ方向に一致しており、この厚さ方向に垂直な両端
面のそれぞれに電極Qおよびすだれ状電極Pが形成され
ている。電極Qはアルミニウム薄膜で成り、圧電磁器1
0の一方の端面のほぼ全域を覆っている。すだれ状電極
Pはアルミニウム薄膜で成り、6対の電極指を有するも
ので、電極周期長は2mm、電極交叉幅は4.8mmで
ある。電極Qには端子Tが取り付けられ、すだれ状電
極Pには端子TP1およびTP2が取り付けられてい
る。振動板2はニッケル製で、長さ23mm、幅20m
m、厚さ0.05mmである。振動板2は一方の板面の
長さ方向の端部において長さ2mm、幅20mmの接合
領域を有し、該接合領域は電極Qを介して圧電振動子1
に固着されている。図4は振動板2を板面に垂直な平面
で切断したときの部分拡大断面図である。振動板2には
その厚さ方向に貫通する微細な多数の孔11が設けられ
ている。図4では孔11の縦断面形状および寸法が示さ
れている。孔11の形状はすり鉢状で、等しいピッチで
配列されており、一方の開口面積は他方の開口面積より
大きい。開口面積が大きい方を入口側としその直径は
0.1mmで、開口面積が小さい方を出口側としその直
径は0.01mmである。図5は振動板2の部分拡大平
面図である。但し、振動板2を孔11の出口側から見た
ときのもので、孔11の形状、配列および寸法が示され
ている。図2の超音波励振器の駆動時、圧電振動子1と
振動板2との複合体の共振周波数にほぼ等しい周波数を
有する電気信号を端子TP1を介して圧電振動子1に入
力すると、圧電振動子1に圧電的に振動が励振される。
振動板2を圧電振動子1の一方の端面上に一体的に連な
って固着させる構造を採用していることから、圧電振動
子1の振動に伴って振動板2は圧電振動子1との接合領
域を固定端とする片持ち梁の形で振動される。この振動
は屈曲振動であり液体の霧化に有効に機能する。支持具
3の圧電振動子1との接触部は圧電振動子1に比べて音
響インピーダンスが低い発泡スチロール等で成り、圧電
振動子1からの超音波が支持具3自身に伝搬し散失され
るのを防いでいる。保液材4は圧電振動子1に比べて音
響インピーダンスが低くしかも吸液能力が大きいスポン
ジ等で成り、圧電振動子1からの超音波が保液材4を介
して溶液中に伝搬し散失するのを防いでいる。このよう
にして、振動板2は効率良く振動される。振動板2の振
動に伴い、保液材4によって吸い上げられた溶液は毛細
管現象により孔11に導かれる。溶液が孔11を通過す
るとき、孔11における溶液の通過面積はその入口側か
ら出口側に向けて減少するから、溶液は孔11によって
絞り作用を受け、微小でかつ均一な粒子となって振動板
2の上部に流出し、効率良く霧化される。図1の超音波
成膜装置の駆動時、振動板2から霧化された霧は基板の
一方の板面に付着し、溶液中の成分で成る薄膜を形成す
る。溶液が振動板2に接触しさらに振動板2の孔11を
通過するとき、超音波によって溶液中には微小な大きさ
の空泡が生じる。この空泡の中は極めて高温度に達する
ことから、溶液が振動板の上部から霧として放出される
際には大きなエネルギーを保有する。このエネルギーは
溶液中に含まれる物質のイオン化を促進するので、基板
の板面において形成される薄膜の配向性に重要な役割を
演ずることとなる。また、基板自身の温度や溶液の温度
を制御したり、ドーム9内の温度や圧力を制御したり、
振動板2と基板との距離を調整することによっても薄膜
の配向性や膜厚を制御することが可能となる。図6は駆
動回路5の一実施例を示す構成図である。図6において
M、FおよびGはそれぞれ主電極M、帰還電極Fおよび
グランド電極Gを示し、主電極Mおよび帰還電極Fが1
組のすだれ状電極Pに対応し、グランド電極Gが電極Q
に対応している。端子TP1およびTP2はそれぞれ主
電極Mおよび帰還電極Fに設けられ、端子Tはグラン
ド電極Gに設けられている。端子TP1を介して圧電振
動子1に電圧を引加することにより圧電振動子1に励振
された振動は、その大部分が振動板2に伝搬され、残部
がその振動に応じて圧電振動子1に引加された電圧とは
逆相の電圧として端子TP2から出力される。この動作
の繰り返しによって正帰還の自励発振が生じる。つま
り、複合体の共振周波数にほぼ等しい周波数を有する電
気信号が雰囲気温度の変化に追随して安定して圧電振動
子1に供給される。このようにして、常に自らの最適の
発振状態を維持することを可能にしている。従って、他
励駆動の際に問題となる発熱等により複合体の共振周波
数が偏移して発振条件が悪くなるという問題点が解決さ
れる。また、1つのコイルL、1つのトランジスタT
、2つの抵抗R1およびR2、および1つのダイオード
Dという極く少ない部品で回路を構成することが可能で
ある。しかも、部品点数が少ないにもかかわらず、直流
電源を利用することができ電力効率もよいことから、電
源の小型化対応を可能にしている。図6の駆動回路5に
直流電源からたとえば0〜10Vの直流電圧を印加する
と、コイルL の値を調整することにより、主電極M
に最大で約60Vp−p の交流電圧を印加させること
ができる。このとき帰還電極Fから約1Vp−p の電
気信号が取り出される。このようにして、駆動回路5で
は直流電源電圧の約6倍の交流電圧を圧電振動子1に印
加することが可能である。図2の超音波励振器において
は6V以上の直流電圧を主電極Mに印加することにより
霧化動作が確認できた。霧の粒子は極微小でしかも均一
であった。図2の超音波励振器によれば、長時間にわた
り極微小の霧を安定に霧化できる。図7は圧電振動子1
と振動板2との複合体における主電極Mとグランド電極
Gとの間のアドミタンスの振幅と周波数との関係を示す
特性図である。アドミタンスは周波数がほぼ94.1k
Hzのときにピークを示し、このピークの近傍で最大霧
化量が得られた。図8は図7におけるアドミタンスの位
相と周波数との関係を示す特性図である。位相が零のと
きの周波数が共振周波数を示すことから、共振周波数の
うちの1つがほぼ94.1kHzであることがわかる。
また、この94.1kHzの共振周波数は圧電振動子1
単体の共振周波数とほぼ一致していることが確認され
た。図9は圧電振動子1と振動板2との複合体における
共振周波数付近でのサセプタンスとコンダクタンスとの
関係を示す特性図、すなわち共振周波数付近でのアドミ
タンスサークルを示す図である。サセプタンスが零のと
きのコンダクタンスの最大値は94.2kHzで起こ
り、この値は圧電振動子1と振動板2との複合体におけ
る共振周波数とほぼ一致している。
【発明の効果】本発明の超音波成膜装置によれば、圧電
振動子と振動板との複合体の共振周波数にほぼ等しい周
波数を有する交流信号を圧電振動子に印加することによ
り圧電振動子が振動する。この圧電振動子の振動は振動
板を振動させるので、振動板に目的物質を含む溶液を供
給することにより溶液を霧化することができる。この
際、振動板には微細な多数の孔が設けられていることか
ら、振動板に供給された溶液はその孔を通して霧化され
る。孔を通しての霧化は粒子の微小性、均一性を促し、
しかも霧化効率を増大させることができる。その上、孔
の一方の開口面積が他方の開口面積より大きい構造を採
用すれば、その大きい方の開口を入口側とし小さい方を
出口側とすることにより、孔の溶液通過面積が入口側か
ら出口側に向けて減少する。従って、溶液が孔を通過す
るときに絞り作用を受ける。その結果、粒子の径がさら
に微小、均一になる。従って、振動板の上方に基板を配
置する構造を採用することにより、その基板の板面にそ
の霧に含まれる物質で成る薄膜を形成することができ
る。基板に薄膜を形成する際、溶液は振動板に接触しさ
らに振動板に設けられたの孔を通過する。このとき、超
音波によって溶液中には微小な大きさの空泡が生じる。
この空泡の中は極めて高温度に達することから、溶液が
霧として放出される際には大きなエネルギーを保有す
る。このエネルギーは溶液中に含まれる物質のイオン化
を促進するので、基板の板面において形成される薄膜の
配向性に重要な役割を演ずることとなる。従って、高画
質でしかも超薄型の壁掛けテレビなどの実現を可能にす
る有機系エレクトロ・ルミネッセンス素子の基板への積
層などにも利用が可能である。本発明の超音波成膜装置
では薄膜の膜厚制御手段および配向性制御手段が備えら
れており、膜厚制御手段および配向性制御手段は溶液の
温度および霧の粒径並びに霧の量を制御する手段を含む
とともに、霧化された霧が付着した基板を所定の温度お
よび圧力のもとにおく手段を含む。従って、薄膜を板面
に形成する際、これらの手段を駆使することにより目的
の膜厚と配向性を有する薄膜を得ることができる。な
お、圧電振動子に引加する電圧を制御することにより、
霧化量や霧の粒径を制御することも可能である。また、
同一の溶液に2種類あるいはそれ以上の種類の物質を溶
解させておくことにより、基板の板面上に2成分あるい
はそれ以上の成分から成る混合物、またはそれらの成分
が反応することにより生成される化合物の薄膜を形成す
ることができる。これは、溶液が霧化される際に大きな
エネルギーを保有し、このエネルギーが溶液中に含まれ
る物質のイオン化を促進し基板の板面において形成され
る薄膜の配向性を左右することに起因する。さらに、超
音波励振器を2つあるいはそれ以上設け、それぞれの超
音波励振器によって別々の物質を含む溶液を順次に霧化
させる構造を採用することにより、それぞれの溶液に含
まれる成分によって形成される積層状の薄膜を基板の板
面上に形成することも可能となる。このようにして、適
当な条件のもとでの霧化あるいは霧化後の処理を施すこ
とにより、基板の板面上における重合反応などによる高
分子薄膜の形成も可能となる。基板として石英ガラスそ
の他のガラス類、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの
無機塩類、グラファイトなどの高分子化合物、圧電セラ
ミック、金属その他の物質で成るものを採用することに
より、基板に高機能性を有する薄膜を形成することが可
能となる。圧電振動子として圧電磁器と、その圧電磁器
の厚さ方向に垂直な両端面にそれぞれ形成されている電
極P並びにQから成る簡単な構造を採用することによ
り、装置を小型化できしかも高い効率で液体を霧化する
ことができ低消費電力での駆動が可能となる。また、電
極Pとしてすだれ状電極を使用することにより、圧電振
動子の厚さが薄い場合にも自励式駆動が可能となる。従
って、温度などの環境変化に対応しうる形での低消費電
力、低電圧での駆動が可能となる。圧電振動子として長
さと幅の寸法比が1に近くしかも1に等しくない矩形状
の板または3辺のうちの2辺の寸法比が1に近くしかも
1に等しくない矩形状の角柱を採用することにより、圧
電振動子と振動板との複合体の結合振動が増強され、霧
化効率が促進される。また、振動板を圧電振動子の少な
くとも一方の端面上に一体的に連なって固着させる構造
を採用することにより、振動板は圧電振動子との接合部
を固定端とする形で振動するから、振動板に供給された
液体はその弾性振動により霧化され振動板の上方に向け
て霧として放散される。圧電振動子と振動板との複合体
における共振周波数が圧電振動子単体の共振周波数とほ
ぼ等しくなるような構造を採用することにより、圧電振
動子と振動板との複合体の結合振動が増強するから霧の
発生量はさらに増加する。超音波励振器の駆動回路に
は、直流電源と端子TP1との間に接続された昇圧用の
コイルと、出力電圧端子が端子TP1に接続され入力電
圧端子が端子TP2に接続されたトランジスタが含まれ
ており、このトランジスタを増幅素子とし超音波励振器
を共振回路とする発振回路が構成されている。このよう
にして、圧電振動子の共振周波数に周波数を自動的に追
尾できるようにしている。そのうえ、コイルの逆起電圧
を利用した回路が備えられていることにより、電源電圧
より高い電圧で圧電振動子を駆動することができる。こ
の逆起電圧回路は回路構成が簡単で小型であり、電源効
率及び周波数特性が良い。振動板に液体を供給する手段
が、超音波励振器を支持する支持具と、液体を収容する
貯液室と、多数の貫通孔を有する吸液能力の大きい物質
から成る保液材とを備えることにより、長時間にわたり
安定な霧化を実現することができる。また、液体を供給
する手段が、貯液室から振動板に液体を供給するための
チューブを備えることにより、保液材を用いなくても液
体を振動板に供給することが可能となる。支持具や保液
材などの超音波励振器に直接接触するものの表面は、圧
電振動子の振動がその表面や液体中に伝搬しにくいよう
な材質が採用されている。このようにして、効率良く振
動板が振動されるので効率よく液体を霧化することが可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波成膜装置の一実施例を示す断面
図。
【図2】圧電振動子1および振動板2から成る超音波励
振器とその周辺の断面図。
【図3】圧電振動子1および振動板2の平面図。
【図4】振動板2を板面に垂直な平面で切断したときの
部分拡大断面図。
【図5】振動板2の部分拡大平面図。
【図6】駆動回路5の一実施例を示す構成図。
【図7】圧電振動子1と振動板2との複合体における主
電極Mとグランド電極Gとの間のアドミタンスの振幅と
周波数との関係を示す特性図。
【図8】図7におけるアドミタンスの位相と周波数との
関係を示す特性図。
【図9】圧電振動子1と振動板2との複合体における共
振周波数付近でのサセプタンスとコンダクタンスとの関
係を示す特性図。
【図10】3端子方式の自励回路のブロック図。
【符号の説明】
1 圧電振動子 2 振動板 3 支持具 4 保液材 5 駆動回路 6 電源室 7 貯液室 8 支持具 9 ドーム 10 圧電磁器 11 孔 P すだれ状電極 Q 電極 TP1,TP2,T 端子 L1 昇圧用コイル T トランジスタ R1,R2 抵抗 D ダイオード

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電振動子に多数の微小な貫通孔を有す
    る振動板を固着してなる超音波励振器を少なくとも1つ
    備え、該超音波励振器により発生させた弾性振動により
    溶液を霧化し、その霧を基板の一方の板面に噴霧し、前
    記霧に含まれる物質から成る薄膜を前記板面上に形成す
    る超音波成膜装置において、前記圧電振動子は圧電磁
    器、電極PおよびQから成り、前記電極PおよびQは前
    記圧電磁器の厚さ方向に垂直な両端面のそれぞれに形成
    されており、前記電極Pは1組のすだれ状電極で成り、
    該すだれ状電極の2つの端子T P1 およびT P2 のうち
    の一方の端子T P1 と電極Qにおける端子T との間に
    前記圧電振動子の共振周波数とほぼ等しい周波数の電圧
    を印加することにより、前記超音波励振器を駆動する回
    路が備えてあり、前記駆動回路は、直流電源と前記端子
    P1 との間に接続されている昇圧用のコイルと、出力
    電圧端子が前記端子T P1 に接続され入力電圧端子が前
    記端子T P2 に接続されることにより前記端子T P2
    現われる圧電気を帰還電圧として受けるトランジスタと
    を備え、前記駆動回路は、前記トランジスタを増幅素子
    とし前記超音波励振器を共振回路とする発振回路を構成
    し、前記圧電振動子の共振周波数は、該圧電振動子と前
    記振動板との複合体における共振周波数にほぼ等しく、
    前記薄膜を前記板面上に形成する手段は前記薄膜の膜厚
    を制御する手段および前記薄膜の配向性を制御する手段
    を含み、前記膜厚制御手段および前記配向性制御手段
    は、前記霧の温度、前記霧の粒径および前記霧の量を制
    御する手段と、前記霧が付着した前記基板を所定の温度
    および圧力のもとにおく手段を含むことを特徴とする超
    音波成膜装置。
  2. 【請求項2】 前記基板が石英ガラスその他のガラス
    類、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの無機塩類、グ
    ラファイトなどの高分子化合物、圧電セラミック、金属
    その他の物質で成ることを特徴とする請求項1に記載の
    超音波成膜装置。
  3. 【請求項3】 前記圧電振動子は長さと幅の寸法比が1
    に近くしかも1に等しくない矩形状の板または3辺のう
    ちの2辺の寸法比が1に近くしかも1に等しくない矩形
    状の角柱であって、前記振動板は前記圧電振動子の前記
    電極PまたはQを 有する少なくとも一つの端面上に一体
    的に連なって固着されていることを特徴とする請求項1
    に記載の超音波成膜装置。
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