JP3525196B2 - 孔版印刷用マスターの製版方法、孔版印刷方法及び孔版印刷マスター製版用溶液 - Google Patents

孔版印刷用マスターの製版方法、孔版印刷方法及び孔版印刷マスター製版用溶液

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、孔版印刷用マスタ
ーの製版方法及び印刷方法並びに孔版印刷マスター製版
用溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、孔版印刷用マスターの製版方法と
しては、(1)多孔質の紙にワックスなどを含浸させた
孔版印刷用マスターに鉄筆、ボールペンなどで文字及び
画像を書いて文字及び画像上のワックスを除去する方
法、(2)熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とから
なる感熱孔版マスターの熱可塑性樹脂フィルムを、フラ
ッシュランプ、赤外線ランプ、サーマルヘッドによる熱
の作用により文字及び画像の部分を熱溶融して穿孔する
方法、(3)溶剤可溶性樹脂層を有する孔版印刷用マス
ターを溶剤を用いて溶解して穿孔する方法(特開平7−
32569、特開平7−47654)などが知られてい
る。しかしながら、(1)の方法では、製版を手作業で
行うため、製版効率が悪く、多数枚の印刷用マスターを
作成することができなかった。又、(2)および(3)
の方法では、孔版マスターにより製版した後、試し刷り
を行うことによって初めて印刷の仕上がりの状態を知る
ことができ、その結果如何によっては、再度製版を行う
必要があり、最初の孔版マスターによる製版が無駄にな
っていた。そして、1枚〜5枚といった少量の印刷物を
得る場合でも製版を行い印刷する必要があり、コストが
高くつくことがあった。また、(2)の方法では、感熱
記録材料にサーマルヘッドで直接画像を記録する手段が
あるが、専用の記録材料が必要となるため、コストが高
くつくことが欠点であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、感熱
孔版印刷用マスターの製版時にあらかじめ原稿を用意す
る必要が無く、感熱孔版印刷用マスターを非接触状態で
穿孔することができ、印刷の仕上がりを知るために、孔
版マスターを製版しなくても試し刷りを行うことがで
き、1枚〜5枚といった少量の印刷物を得る場合でも製
版による印刷をする必要がない孔版印刷用マスターの製
版方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を重ねた結果、加熱した溶液を熱可塑性樹脂層を有する
孔版マスターに選択的に供給する熱穿孔による製版シス
テムを完成するにいたった。すなわち、本発明によれ
ば、熱可塑性樹脂層を有する孔版印刷用マスターを穿孔
することにより製版を行うに際し、前記熱可塑性樹脂層
の融点以上に加熱した熱可塑性樹脂層を溶融するための
溶液を溶液供給手段から前記熱可塑性樹脂層の表面に非
接触状態で選択的に供給し、供給された部分の熱可塑性
樹脂層を溶融して穿孔することを特徴とする孔版印刷用
マスターの製版方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の印刷用マスターは、熱可
塑性樹脂フィルム単体で構成されても良いが、印刷用マ
スターとしてのハンドリング性などを改善するために、
支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせた物を用
いても良い。この貼り合わせ手段は、接着剤を用いた
り、加熱手段と圧力を組み合わせた方法など公知の手段
を用いると良い。
【0006】本発明の印刷用マスターに用いられる熱可
塑性樹脂は、押出法、流伸法等により形成された一般に
用いられる熱可塑性樹脂フィルムであればよく、具体的
にはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、
ポリヘキサメチレンアジペート(ナイロン66)等のポ
リアミド系、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマ
ー系、ポリビニルアルコール等のビニールポリマー系お
よびそれらの共重合体や混合物からなる重合体等が挙げ
られる。熱可塑性樹脂フィルムとしては穿孔感度が高い
ものを得られるものが有効であり、フィルムの結晶化度
が重要な因子となる。フィルムの状態の熱可塑性樹脂の
結晶化度は実質的に非晶質から結晶化度15%までの範
囲のものが好ましく、より好ましくは該フィルムが実質
的に非晶質であることである。このような低結晶化度の
熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより、供給される
溶液の温度及び熱容量が大きくなくても、熱可塑性フィ
ルムの結晶融解のために必要なエネルギーロスが少なく
なり、熱穿孔性が良好になる。熱可塑性樹脂フィルムの
厚みは好ましくは0.1μm〜30μm、より好ましく
は0.3〜10μmである。これより厚すぎると良好な
穿孔が得にくくなる。また、熱可塑性樹脂フィルムの溶
融温度は、50℃〜300℃、好ましくは70℃〜29
0℃のものが好ましい。溶融開始温度がこれより低すぎ
るとフィルムの製造が困難になるばかりでなく、感熱孔
版マスターの保存性が劣ることになる。また逆に溶融開
始温度がこれより高すぎると、供給されるエネルギーが
熱穿孔のためのエネルギーより大きくなりすぎてしま
い、穿孔が得にくい。
【0007】本発明に用いられる熱可塑性樹脂層を溶融
するための溶液は、熱可塑性樹脂層と接触溶融させるた
めに、加熱された温度において液体の状態を保つもの、
すなわち、溶液の沸点および分解温度が加熱される温度
範囲より高いものであればよい。具体的には、モーター
オイル等に用いられる鉱油、合成油、パラフィン、市販
の固形インキ等をあげることができる。本発明の熱可塑
性樹脂層を溶融させるための溶液供給手段としては、文
字及び画像情報に応じて熱可塑性樹脂層の融点以上の温
度に溶液を加熱できる手段を有する溶液の選択的供給が
可能な装置であれば特に制約はない。例えば、ノズル、
スリット、注射器、多孔質材などの溶液供給手段に圧電
素子、発熱素子、液送ポンプなどの溶液吐出手段及び溶
液加熱手段を接続し、熱可塑性樹脂フィルムの融点以上
の温度に加熱された溶液を文字画像信号に応じて連続的
あるいは間欠的に吐出するようにした装置が挙げられ
る。所謂インキジェットプリンターのエンジンに、イン
キ加熱装置が付加された装置が該当する。上記の溶液供
給手段により感熱孔版マスターに熱可塑性樹脂の融点以
上の温度に加熱された溶液を選択的に供給すると、供給
された部分は溶液の熱エネルギーによって穿孔が行わ
れ、孔版印刷用マスターが製造されその結果孔版印刷が
可能となる。インキジェットプリンターエンジンにより
溶液を選択的に供給する場合には、加熱された溶液は通
常100℃〜350℃に加熱され、ノズルから噴射され
る。ノズルから噴出時の溶液の粘性率は1Pa/s〜5
mPa/s、表面張力は55mN/m〜20mN/mで
ある物性値のものが好ましい。この範囲を越えるもの
は、ノズルからインキが噴出しにくかったり、液滴の大
きさが大きくなりすぎたりするので、適当でなく、この
範囲未満のものはノズルよりインキが漏れたりするので
好ましくない。
【0008】供給される熱可塑性樹脂フィルムを溶融す
るための溶液が当初より着色されていれば、孔版印刷用
マスターから直接印刷を行うことができるから、試し刷
りを行うこともできるばかりでなく、印刷枚数が少量の
場合に、孔版マスターを製版しなくても製版部で直接印
刷を行うことができる。特に、供給される溶液が室温で
固体であると、印刷用シートが液体を吸収し難い物(O
HPフィルムなど)であっても、製版部で直接印刷を行
うことができる。この様な溶液の着色手段としては、染
料、顔料などを溶液の加熱前に予め均一になるように添
加されることが好ましい。このためには染料は沸点の高
い溶液が選択でき、炭化水素系溶剤に溶かすことができ
る油溶性染料が挙げられる。油溶性染料としては、アゾ
系、トリフェニルメタン系、アジン系、アントラキノン
系、キサンテ系などの染料が挙げられる。
【0009】
【実施例】
実施例1 KODAR PETG6763〔コダック社製〕 97重量部 球状シリカ(平均粒径1.1μm) 3重量部 よりなり、逐次延伸法により延伸した厚み1.8μmの
フィルムを製造した。マニラ麻繊維90部、及び太さ
0.8デニール、平均長さ5mmのポリエステル繊維1
0部からなる坪量11g/m2の薄葉紙に、ウレタン樹
脂のプレポリマーエマルジョン水溶液を固形分塗布量
1.0g/m2の割合で塗布した、厚さ35μmの薄葉
紙上に、接着剤としてポリエーテル系ウレタン接着剤を
リバースロールコーティング方法にて、塗布量0.3g
/m2(接着剤温度80℃、粘度920cps/80
℃)の割合で塗布し、フィルムに薄葉紙をラミネートし
た。その後、フィルム面にバーコーティング方法によ
り、熱融着防止層としてリン酸エステル系界面活性剤
(ガファック RL210、東邦化学工業(株)製:m
p.54℃)と帯電防止剤として第4級アンモニウム塩
であるドデシルトリメチルアンモニウムクロライド〔C
1225N(CH32CH3Cl〕を1:1の重量比から
なる固形分を塗布量0.05g/m2の割合になるよう
に塗布し、感熱孔版マスターを製造した。この感熱孔版
マスターを、12ドット/mmのノズルのオリフィス近
傍に発熱素子を設置したインキ温度調節部を持つノズル
と、圧電素子などからなる溶液吐出装置を用いて、モー
ビル社製ガーゴイルアークティック1100(モーター
オイルのベースオイル)を溶液温度を200℃に保ちな
がら画像上に吐出させると前記溶液の液滴によりフィル
ムは融解し、フィルム上に穿孔を得た。次いで、この穿
孔された孔版マスターをリコー製プリポートVT−38
20の印刷用版胴にセットし、印刷を行ったところ、穿
孔部分と対応する画像の印刷物が得られた。
【0010】実施例2 フィルムの厚みを3.5μmとし、8ドットのノズルを
使用した以外は、実施例1と同様に孔版印刷用マスター
を作成して製版を行い、孔版印刷を行った。液滴が供給
されたフィルム面には穿孔ができ、穿孔通りの印刷物が
得られた。
【0011】実施例3 日本精蝋製パラフィンワックスHNP−11に、油溶性
染料であるSumpiplast Black G(住
友化学製)を1.0重量%添加し、着色固形インキを得
た。実施例1と同様の溶液吐出装置に於いて溶液を80
℃以上に保った状態でノズルに供給した以外は、実施例
1と同じ条件で孔版印刷用マスターを作成し、製版を行
って、表面に付着した着色固形インキをブラシで取り除
いたところ、液滴が供給されたフィルム面には穿孔が得
られた。次いで孔版印刷を行ったが、穿孔通りの印刷物
が得られた。ここで、感熱孔版マスターの代わりに、普
通紙を用いて前記溶液吐出装置により製版と同様の動作
を行ったところ、普通紙の上に、前記着色固形インキに
よる画像ができた。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、製版時に、感熱孔版印
刷用マスターの製版時にあらかじめ原稿を用意する必要
が無く、感熱孔版印刷用マスターを非接触状態で穿孔す
ることにより感熱孔版印刷用マスターにシワの発生がな
いばかりでなく、又製版に際し印刷の仕上がりを知るこ
とができるので、孔版マスターを製版しなくても試し刷
りを行うことができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−266247(JP,A) 特開 昭49−79240(JP,A) 特開 平6−126922(JP,A) 特開 平7−81264(JP,A) 特開 平9−141998(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41C 1/055 511 B41C 1/14

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂層を有する孔版印刷用マス
    ターを穿孔することにより製版を行うに際し、前記熱可
    塑性樹脂層の融点以上に加熱した熱可塑性樹脂層を溶融
    するための溶液を溶液供給手段から前記熱可塑性樹脂層
    の表面に非接触状態で選択的に供給し、供給された部分
    の熱可塑性樹脂層を溶融して穿孔することを特徴とする
    孔版印刷用マスターの製版方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の熱可塑性樹脂層を溶融
    するための熱可塑性樹脂層の融点以上に加熱した溶液自
    体が着色されていることを特徴とする孔版印刷用マスタ
    ーの製版方法。
  3. 【請求項3】 請求項1及び2に記載の製版方法により
    製版された孔版印刷用マスターの熱可塑性樹脂層を溶融
    するための溶液の付着した面と反対の面に印刷用紙を接
    触させて孔版印刷用マスターにより孔版印刷をすること
    を特徴とする孔版印刷方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の熱可塑性樹脂層の融点
    以上に加熱した熱可塑性樹脂層を溶融するための溶液
    が、常温では固体で、かつ着色されているものでありこ
    の溶液を用いて製版することを特徴とする孔版印刷用マ
    スターの製版方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の方法に用いられる熱可
    塑性樹脂層の融点以上に加熱された熱可塑性樹脂層を溶
    融するための溶液が着色されていることを特徴とする孔
    版印刷マスター製版用溶液。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の方法に用いられる熱可
    塑性樹脂層の融点以上に加熱された熱可塑性樹脂層を溶
    融するための溶液が常温では固体で、かつ着色されてい
    ることを特徴とする孔版印刷マスター製版用溶液。
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