JP3521415B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

光ファイバ母材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバ母材の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ母材であるガラス微粒子堆積
体の製造方法として、外付け法が知られている。この製
造方法は、特開平2−243530号公報に記載されて
いるように、SiCl4 、GeCl4 などのガラス原料
を、H2 などの燃料ガス及びO2 などの助燃性ガスと共
にバーナから噴出させ、火炎中で酸化、加水分解反応等
によりガラス微粒子とし、棒状のターゲット部材へ向け
て噴き付けて行うものであって、ターゲット部材を軸回
転させると共に、バーナをターゲット部材の軸方向へ繰
り返し往復移動、即ちトラバースさせることにより、タ
ーゲット部材の周囲にガラス微粒子を一層ごと付着堆積
させて光ファイバ母材である堆積体を形成していくもの
である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
光ファイバ母材の製造技術にあっては、次のような問題
点がある。すなわち、ガラス微粒子の堆積体の端部でも
原料を供給し続けるため、その端部において、原料投入
量に対する堆積するガラス微粒子の量が少なく、その堆
積作業が非効率的なものとなる。
【0004】また、ガラス微粒子の堆積体の外径が太く
なるに連れて、堆積体の中央部における外径に比べ端部
の方の外径が細い状態となり単位面積あたりのガラス微
粒子の噴き付け量が実質的に多くなる。このため、図5
のように、堆積体Aは、その端部で軸方向へ成長してい
き、その結果、堆積体Aの端部において出発棒Bの近傍
に火炎Cが届かなくなるため、その部分の温度が下がり
クラックDを生じてしまう。このような堆積体Aをもと
に光ファイバを製造するとその品質が低下することとな
る。
【0005】そこで本発明は、以上のような問題点を解
決するためになされたものであって、光ファイバ母材を
効率良く製造でき、また欠陥のない良好な光ファイバ母
材を確実に製造できる光ファイバ母材の製造方法を提供
することを目的とする。
【0006】すなわち本発明は、バーナへガラス原料ガ
ス、燃料ガス及び助燃性ガスを供給しそのバーナから火
炎と共にガラス微粒子を噴出させて、回転する棒状の出
発部材の外周へ噴き付けさせると共に、その出発部材と
バーナとを出発部材の軸方向に沿って相対的に往復移動
させることにより、出発部材の周りにガラス微粒子を付
着堆積させて行う光ファイバ母材の製造方法において、
ガラス微粒子の噴き付けの際、出発部材とバーナの相対
往復移動における折返し位置の近傍の区間で、ガラス微
粒子の噴付量をその近傍以外の区間に比べて減らし、折
返し位置に向けて噴付量を徐々に減らすことを特徴とす
る。
【0007】また本発明は、前述の出発部材とバーナの
相対位置が前述の折返し位置に近いほど、バーナへのガ
ラス原料ガスの供給量を減らすことにより、折返し位置
の近傍の区間でその近傍以外の区間に比べてガラス微粒
子の噴付量を減らし、折返し位置に向けて噴付量を徐々
に減らすことを特徴とする。
【0008】また本発明は、前述の出発部材とバーナの
相対位置が前述の折返し位置に近いほど、出発部材とバ
ーナとの相対移動速度を速くすることにより、折返し位
置の近傍の区間でその近傍以外の区間に比べてガラス微
粒子の噴付量を減らすことを特徴とする。
【0009】これらの発明によれば、ガラス微粒子の噴
付量に対し堆積効率の悪い堆積体の端部において、単位
時間あたりのガラス微粒子の噴付量を低減しているの
で、ガラス原料の無駄が少なく、効率良く堆積体が形成
される。また、堆積体の端部において、端部以外の部分
に比べてガラス微粒子の噴付量が少ないので、堆積体が
その最端部へ向けて先細り状となり、その軸方向へ成長
することがない。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき、本発明
に係る実施形態の種々の例について説明する。尚、各図
において同一要素には同一符号を付して説明を省略す
る。
【0014】図1は光ファイバ母材の製造工程の説明図
である。まず、光ファイバ母材の製造方法の説明に先立
って、光ファイバ母材の製造装置1について説明する。
図1において、垂直に立設された二本のフレーム2、2
の対向面には、それぞれ把持部3が形成され、棒状の出
発部材4の両端を把持しフレーム2、2間で固定するこ
とができる構造となっている。この把持部3は、図1で
は、チャック式であるが、出発部材4を固定できれば、
その他の構造のものであってもよい。この把持部3は、
公知の手段により回転可能とされており、把持部3に固
定した出発部材4が把持部3の回転に伴って、その軸方
向を中心に回転する構造となっている。
【0015】図1に示すように、フレーム2、2間に
は、そのフレーム2、2間に取り付けた出発部材4と平
行となるようにレール5が架設され、そのレール5に沿
ってバーナ6が往復移動可能に配設されている。このバ
ーナ6は、ノズル61がフレーム2に固定した出発部材
4へ向けて配置されており、ガス供給装置7によりSi
Cl4 、GeCl4 などのガラス原料ガス、H2 などの
燃料ガス及びO2 などの助燃性ガスがそれぞれ任意の量
だけ供給され、火炎と共にガラス微粒子を出発部材4へ
噴き付け可能となっている。前述のバーナ6の往復移動
手段は、バーナ6に移動力を付与するものであって、例
えば、前述のレール5と平行して配されバーナ6と螺合
し、かつ、軸回転自在としたスクリューシャフト7が採
用される。このスクリューシャフト7が回転駆動するこ
とにより、バーナ6がレール5、即ち出発部材4に沿っ
て移動することとなる。尚、この往復移動手段は、バー
ナ6を出発部材4に沿って往復移動自在とするものであ
れば、ピニオン・ラック式などその他の機構のものであ
ってもよい。更に、バーナ6と出発部材4とは、相対的
に往復移動すればよく、例えば、バーナ6を固定とし、
そのバーナ6に対して出発部材4が軸方向へ往復移動す
るものであってもよい。
【0016】次に、光ファイバ母材の製造方法について
説明する。図1において、まず、コア及びクラッドを有
する出発部材4の両端をそれぞれ把持部3により固定し
て、出発部材4を製造装置1のフレーム2、2間に架設
させる。そして、把持部3を回転駆動させ、出発部材4
を軸回転させる。それと共に、ガス供給装置7からバー
ナ6へSiCl4 などのガラス原料ガス、H2 などの燃
料ガス及びO2 などの助燃性ガスをそれぞれ供給して、
そのバーナ6から出発部材4へ向けて火炎を噴出させ、
ガラス原料ガスを酸化、加水分解させてガラス微粒子と
して出発部材4へ噴き付けさせる。尚、前述の出発部材
4は、光ファイバとなる際にコアとなる部材のみからな
るものを使用する場合もある。
【0017】その噴付を行いながら、バーナ6を出発部
材4に沿って所定区間で繰り返し往復移動させる。その
際、バーナ6の移動速度は一定とし、またバーナ6への
燃料ガス及び助燃性ガスの供給量も一定とするが、バー
ナ6へのガラス原料ガスの供給量はバーナ6の位置に応
じて制御する。すなわち、図1のように、バーナ6の往
復の折返し位置の近傍の区間X(以下、折返し区間Xと
いう。)におけるガラス原料ガスの供給量が、バーナ6
の往復移動の中間区間Yにおけるガラス原料ガスの供給
量に比べて減り、またその供給量がバーナ6の折返し位
置に近いほど減るように制御しておく。このようにガラ
ス原料ガスの供給量を制御して、折返し区間Xにおける
単位時間あたりのガラス微粒子の噴付量を中間区間Yに
対して減らすことにより、出発部材4の周りに端部分を
先細り状としたガラス微粒子の堆積体8が形成されてい
く。
【0018】堆積体8の端部を先細り状とすることで、
その端部に確実にバーナ6からの火炎を噴き付けること
ができ、その端部の温度が下がってクラックを生じるこ
とはない。また、その先細り状となった堆積体8の端部
には、ガラス微粒子が噴き付けられる量は少ないので、
ガラス原料ガスの無駄も低減できる。尚、この製造方法
において、バーナ6を固定とし、そのバーナ6に対して
出発部材4を移動させて、出発部材4の周りに堆積体8
を形成してもよい。
【0019】上述の製造方法により堆積体8を製造した
場合の具体的な実施例について説明する。まず、出発部
材4を30rpmの速度で回転させ、バーナ6の往復移
動速度を±100mm/minの一定の速度とする。バ
ーナ6へ供給するガラス原料ガスとしてSiCl4 、燃
料ガスとしてH2 、助燃性ガスとしてO2 を用いる。そ
れらのガスの供給量、即ちその流量は、中間区間Yにお
いてSiCl4 :3l/min、H2 :60l/mi
n、O2 :35l/minとし、折返し区間Xにおいて
は、SiCl4 のみ折返し位置でゼロとなるように、図
2のごとくバーナ6が折返し位置に近づくほどSiCl
4 の流量が徐々に減少し、折返し位置が遠ざかるほど徐
々に増加するように供給を制御する。
【0020】このようにガラス原料ガスの流量を制御し
ながら、堆積体8を製造したところ、その堆積体8の端
部にクラックを生じることがなく、またその端部の形状
も良好な堆積体8、即ち光ファイバ母材が得ることがで
きた。この光ファイバ母材を高温に保った炉で透明化し
てプリフォームとした後、線引して欠陥のない良好な光
ファイバを得ることができた。
【0021】次に、光ファイバ母材の製造方法における
他の実施形態について説明する。すなわち、前述の光フ
ァイバ母材の製造方法にあっては、ガラス原料ガスの流
量を制御することにより、バーナ6の位置に対しガラス
微粒子の噴付量を制御するものであったが、バーナ6と
出発部材4との相対移動速度を制御することによりガラ
ス微粒子の噴付量を制御するものであってもよい。
【0022】すなわち、図1において、バーナ6へのガ
ラス原料、燃料ガス及び助燃性ガスの供給量を一定と
し、出発部材4とバーナ6との相対移動速度、例えば、
出発部材4に対するバーナ6の移動速度を中間区間Yで
は一定速度とし、折返し区間Xでは折返し位置に近付く
ほど速く、また遠ざかるほど遅くなるように速度を制御
しておく。このようにバーナ6の移動速度を制御するこ
とにより、出発部材4の周りに端部が先細り状としたガ
ラス微粒子の堆積体8が形成されていく。堆積体8の端
部を先細り状とすることで、その端部にも確実にバーナ
6からの火炎を噴き付けることができ、その端部の温度
が下がることによりクラックが生じることはない。
【0023】続いて、上述の製造方法により堆積体8を
製造した具体的な実施例について説明する。まず、出発
部材4を30rmpの速度で回転させ、各ガスの流量を
中間区間Y及び折返し区間XにおいてSiCl4:3l
/min、H2:60l/min、O2:35l/min
としておく。そして、図3に示すように、バーナ6の往
復移動速度を中間区間Yにおいて±100mm/min
の一定速度とし、折返し区間Xにおいては、折返し位置
に向けて徐々に加速しその位置で約+150mm/mi
nとした後、折り返して−150mm/minとして徐
々に減速して中間区間Yで−100mm/minとなる
ように制御する。
【0024】このように出発部材4とバーナ6との相対
移動速度を制御しながら、堆積体8を製造したところ、
その堆積体8の端部にクラックを生じることがなく、ま
たその端部の形状も良好な堆積体8、即ち光ファイバ母
材が得ることができた。この光ファイバ母材を高温に保
った炉で透明化してプリフォームとした後、線引して欠
陥のない良好な光ファイバを得ることができた。
【0025】次に、光ファイバ母材の製造方法における
他の実施形態について説明する。すなわち、前述の光フ
ァイバ母材の製造方法にあっては、バーナ6の位置に対
しガラス微粒子の噴付量を制御することにより、良好な
ガラス微粒子の堆積体4を形成可能とするものであった
が、堆積体4の温度を制御することにより良好なガラス
微粒子の堆積体4を形成するものであってもよい。
【0026】すなわち、図1において、バーナ6へのガ
ラス原料ガスの供給量を一定(SiCl4 :3l/mi
n)とし、出発部材4とバーナ6との相対移動速度も一
定とする。そして、バーナ6への燃料ガス及び助燃性ガ
スを中間区間Yにおいてそれぞれ一定とし(H2 :60
l/min、O2 :35l/min)、折返し区間Xに
おいては、図4のごとく、中間区間Yより供給量を増加
して折返し位置で最大となるように、折返し位置に近付
くに連れて供給量が増加し、また折返し位置が遠ざかる
ほど減少するように制御する。このように燃料ガス及び
助燃性ガスの供給量を制御することにより、折返し区間
Xでバーナ6からの噴出する火炎が強くなるため、出発
部材4に形成される堆積体4の温度が高くなり、堆積体
4の嵩密度が高いものとなる。
【0027】このように燃料ガス及び助燃性ガスの流量
を制御しながら、堆積体8を製造したところ、折返し区
間Xにおける堆積体8の表面温度を中間区間Yにおける
ものに比べ約50℃高くすることができた(中間区間Y
で950℃に対し、折返し区間Xで1000℃)。その
結果、その堆積体8の端部にクラックを生じることがな
く、またその端部の形状も良好な堆積体8、即ち光ファ
イバ母材が得ることができた。この光ファイバ母材を高
温に保った炉で透明化してプリフォームとした後、線引
して欠陥のない良好な光ファイバを得ることができた。
【0028】次に、前述の種々の実施形態における光フ
ァイバ母材の製造方法と比較するために、従来の手法に
よる光ファイバ母材の製造方法により具体的な比較例に
ついて説明する。図1において、出発部材4を所定の回
転速度で回転させ、バーナ6の往復移動速度を±100
mm/minとして方向が異なるが一定速度とし、バー
ナ6へ供給する各ガスの供給量を中間区間Y及び折返し
区間X共に、ガラス原料ガスSiCl4 :3l/mi
n、燃料ガスH2 :60l/min、助燃性ガスO2
35l/minの一定として、光ファイバ母材、即ち堆
積体8の製造を行った。すると、図5のように、堆積体
の端部にクラックを生じた。製造終了後、この堆積体を
高温で透明化したところ、透明化はできたものの、クラ
ックの部分が割れてしまい、光ファイバとすることはで
きなかった。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、次
のような効果を得ることができる。すなわち、ガラス微
粒子の噴き付けの際、出発部材とバーナの相対往復移動
における折返し位置の近傍の区間で、バーナへのガラス
原料ガスの供給量を減らし、また、出発部材とバーナの
相対移動速度を速くすることで、ガラス微粒子の噴付量
をその近傍以外の区間に比べて減らすことにより、ガラ
ス微粒子の噴付量に対し堆積効率の悪い堆積体の端部に
おいて、ガラス原料の無駄が少なく、効率良く堆積体を
形成できる。
【0030】また、堆積体の端部において、その端部以
外の部分に比べてガラス微粒子の噴付量が少ないので、
堆積体がその最端部へ向けて先細り状となり、その軸方
向へ成長することがない。このため、堆積体の端部にで
もバーナの火炎が確実に噴き付けられ、表面温度の低下
によりクラックが生じることはなく、良好な光ファイバ
母材が形成できる。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【図1】光ファイバ母材の製造工程の説明図である。
【図2】光ファイバ母材の製造時におけるガラス原料ガ
スの流量を示す図表である。
【図3】光ファイバ母材の製造時におけるバーナの移動
速度を示す図表である。
【図4】光ファイバ母材の製造時における燃料ガス及び
助燃性ガスの流量を示す図表である。
【図5】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
1…製造装置、4…出発部材、6…バーナ、7…ガス供
給装置、8…堆積体(光ファイバ母材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−170224(JP,A) 特開 平3−126633(JP,A) 特開 平5−70167(JP,A) 特開 平3−295827(JP,A) 特開 平2−243530(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03B 37/00 - 37/16 C03B 8/04 C03B 20/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バーナへガラス原料ガス、燃料ガス及び
    助燃性ガスを供給しそのバーナから火炎と共にガラス微
    粒子を噴出させて、回転する棒状の出発部材の外周へ噴
    き付けさせると共に、その出発部材とバーナとを出発部
    材の軸方向に沿って相対的に往復移動させることによ
    り、出発部材の周りにガラス微粒子を付着堆積させて行
    う光ファイバ母材の製造方法において、 前記ガラス微粒子の噴き付けの際、前記出発部材とバー
    ナの相対往復移動における折返し位置の近傍の区間で、
    ガラス微粒子の噴付量をその近傍以外の区間に比べて減
    し、前記折返し位置に向けて前記噴付量を徐々に減ら
    すことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記出発部材とバーナの相対位置が前記
    折返し位置に近いほど前記バーナへのガラス原料ガスの
    供給量を減らすことにより、前記折返し位置の近傍の区
    間でその近傍以外の区間に比べて前記ガラス微粒子の噴
    付量を減らし、前記折返し位置に向けて前記噴付量を徐
    々に減らすことを特徴とする請求項1に記載の光ファイ
    バ母材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記出発部材とバーナの相対位置が前記
    折返し位置に近いほど前記出発部材と前記バーナとの相
    対移動速度を速くすることにより、前記前記折返し位置
    の近傍の区間でその近傍以外の区間に比べて前記ガラス
    微粒子の噴付量を減らすことを特徴とする請求項1に記
    載の光ファイバ母材の製造方法。
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