JP3520446B2 - 磁気テープのクリーニング方法 - Google Patents

磁気テープのクリーニング方法

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JP3520446B2 JP2002345044A JP2002345044A JP3520446B2 JP 3520446 B2 JP3520446 B2 JP 3520446B2 JP 2002345044 A JP2002345044 A JP 2002345044A JP 2002345044 A JP2002345044 A JP 2002345044A JP 3520446 B2 JP3520446 B2 JP 3520446B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バックコート層に
光学サーボトラック用の凹部を設けた磁気テープのクリ
ーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】磁気
テープには、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピ
ユータのデータバックアップ用テープなど種々の用途が
ある。このうち例えばデータバックアップ用テープ(バ
ックアップテープ)の分野では、バックアップ対象とな
るハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数十G
B以上の記憶容量のものが商品化されているが、今後も
ハードディスクのさらなる大容量化に対応するため、そ
の高容量化が不可欠となっている。また、アクセス速度
や転送速度を大きくするため、テープの送り速度や、テ
ープとヘッド間の相対速度も高める必要がある。
【0003】バックアップテープ1巻当たりの高容量化
のためには、テープ全厚を薄くして1巻あたりのテー
プ長さを長くすること、磁性層の厚さを0.3μm以下
と極めて薄くすることで厚さ減磁を小さくして記録波長
を短くすることと共に、トラック幅を15μm以下と
狭くして幅方向の記録密度を高くすることが必要であ
る。
【0004】磁性層の厚さを0.3μm以下と極めて薄く
すると、耐久性が劣化するので、非磁性支持体と磁性層
との間に少なくとも一層の下塗層を設けることが好まし
い。また、記録波長を短くすると、磁性層と磁気ヘッド
とのスペーシングの影響が大きくなるので、磁性層に大
きな突起やへこみがあると、スペーシングロスによる出
力の低下により、エラーレートが高くなる。
【0005】磁性層の厚さを0.3μm以下と極めて薄く
すると共に記録波長を短くすると、磁気記録媒体からの
漏れ磁束が小さくなるため、再生ヘッドに微小磁束でも
高い出力が得られる磁気抵抗効果型素子を使用した再生
ヘッド(以下、MRヘッド)を使用することが好まし
い。
【0006】また、トラック幅(データトラックに記録
された信号のトラック幅)を1.5μm以下と狭くして、
幅方向の記録密度を高くすると、オフトラックによる再
生出力の低下が問題になるので、その対策としてトラッ
クサーボが必要になる。
【0007】このようなトラックサーボ方式の一つに光
学式トラックサーボ方式がある。これは、レーザー光の
照射やスタンパによる押圧等で光学サーボ用の凹部を形
成し、これを光学的に検出してサーボトラッキングを行
うものである。
【0008】さらに、この種の光学式トラックサーボ方
式には、フロプティカルディスク(光学サーボトラック
方式のフロッピー(登録商標)ディスク)の磁性層に光
学サーボ用の凹部を形成したもの(例えば特許文献1参
照)や、磁気テープのバックコート層に光学サーボ用の
凹部を形成したもの(例えば特許文献2、3参照)など
がある。
【0009】
【特許文献1】特開平3−141087号公報
【特許文献2】特開平11−339254号公報
【特許文献3】特開平11−213384号公報
【0010】バックコート層に光学サーボ用の凹部を形
成したものでは、当該バックコート層における凹部と平
坦部との光反射率の違いを検知してトラックサーボを行
なう。すなわち、このような凹部を有するバックコート
層に光を当てると、当該凹部では光が乱反射するために
光検知器に入る反射光強度が弱く、平坦部では光が正反
射するので反射光強度が強くなるが、上記の方式は、こ
のことを利用して、凹部により形成されるサーボトラッ
クをトラッキングするものである。具体的には、バック
コート層のサーボトラッキングに連動して、磁性層の記
録・再生を行う磁気ヘッドが動くことにより、磁気記録
トラックのサーボを行う。
【0011】この方式では、通常のレーザーで光学サー
ボ用の凹部を形成すれば、乱反射により凹部からの光反
射強度を充分小さくできるが、従来公知の磁気テープに
おけるバックコート層では平坦部の光反射強度が小さ
く、かつ平坦部の光反射率の場所による変動が大きかっ
たため、光学サーボのS/Nを充分高く取れないという
問題があった。原因は、従来の磁気テープのバックコー
ト層においては主にテープ走行性のみが重視され、光反
射率に関しては考慮されていなかったためである。
【0012】また、レーザー照射やスタンパ押圧等でバ
ックコート層に凹部を形成すると、当該凹部の周辺部分
(凹端部)に盛り上がりが生じることが避けられないた
め、例えば次のような問題が生じる。すなわち、テープ
全厚を6μm以下とする場合、テープ剛性(テープのヤ
ング率をE、テープの全厚をTとしたときのET3 )が
小さくなるので、テープ走行時の巻取テンションを小さ
くする必要があるが、その場合、磁気テープの特定の位
置が上記のように盛り上がっていると、テープリールを
巻き取った際にトラック形成部が極端に盛り上がり、い
わゆるテープの巻き乱れ現象が起こる。
【0013】加えて、上記のような盛り上がり部がある
と、これらが磁気テープの記録層(磁気記録面)に裏う
つりして、記録層に凹凸が形成され、その結果、再生出
力が低下するといった問題も生じる。なお、光学式サー
ボトラック方式を採用した磁気ディスクでは、磁気テー
プのような巻き取りは行わないので、光学サーボ用の凹
部の周辺部分が盛り上がっていても上記のようなテープ
の巻き乱れ現象や裏うつり現象は生じる余地がない。つ
まり、このような現象は、磁気テープではじめて問題と
なるものである。この問題を解決するためには、盛り上
がり部の高さを平坦部の最大突起高さ(P−O)以下に
することが好ましい。
【0014】さらに、レーザー照射によりバックコート
層に凹部を形成する方法では、バックコート層にレーザ
ー光を照射してそのエネルギーでコーティング面を焼き
飛ばし、凹状のパターンを形成するので、生産性は高い
ものの、パターンの形成時にレーザーにより焼き飛ばさ
れた焼きカス(燃焼カス)が紛体となって凹部およびそ
の周辺に多数付着する。この燃焼カスをそのまま放置し
ておくと、走行系の汚れが起こるばかりでなく、バック
コート層の光学的読み取りS/Nの低下や、燃焼カスの
磁性層への付着によるドロップアウトの発生の原因にな
る。また、バックコート層表面の平坦部の光反射率が小
さくなり、磁気テープ長手方向の反射率の変動が大きく
なる。これも光学的読み取りS/Nの低下の原因にな
る。このため、燃焼カスの除去は必須である。
【0015】レーザー照射により光学サーボ用の凹部を
形成した際に生じる燃焼カスを除去する方法としては、
光学サーボ用の凹部を形成したフロプティカルディスク
の燃焼カスの除去に固体CO2 を使用する方法が知られ
ている(例えば特許文献4参照)。ディスク形状である
フロプティカルディスクでは、クリーニングを行う面積
が限定され、多数回ディスクを高速回転させることによ
り、クリーニングに必要な固体CO2 を簡単に吹き付け
ることが可能である。
【0016】
【特許文献4】米国特許第5419733号明細書
【0017】しかしながら、これを磁気テープのクリー
ニング手段としてそのまま用いた場合、長尺物である磁
気テープでは、クリーニングを行う対象の延面積は莫大
となり、なおかつ多数回固体CO2 を吹き付けるにはデ
ィスク状のものに比べCO2使用量が大量になるなど、
効率面で問題がある。また、レーザー照射によりサーボ
パターンを生成する際に発生する燃焼カスが、磁気テー
プを再び巻くことで磁気テープに付着転移し、ドライブ
ガイドローラーや磁気ヘッドに燃焼カスが付着するとい
うフロプティカルディスクにはない問題点もある。
【0018】一方、テープ状の磁気テープ表面のクリー
ニング方法としては、テープ状のティッシュクリーニン
グテープを磁気テープ表裏面に接触させることによりク
リーニングするものがあるが、平坦部のクリーニング効
果は不十分で、レーザーにより凹状に生成されたサーボ
ドットの内部をクリーニングする効果も小さい。また、
上記のクリーニング処理にブレード処理を組み合わせる
方法も考えられるが、バックコート層は磁性層に比べて
強度が低いために強いブレード処理をするとバックコー
ト層が傷つき、逆にブレード処理を弱くすると燃焼カス
除去効果が無くなるので、条件設定が非常に難しく、大
量生産は困難である。さらに、凹状に生成されたサーボ
ドットの内部をクリーニングする効果はほとんど無い。
【0019】本発明は、上述した問題点を解消するため
になされたものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、磁気テー
プのバックコート層表面にレーザー照射により光学サー
ボ用の凹部を形成した際に生じる燃焼カス(粉体等)、
特に凹部の内部および周辺に付着した燃焼カスを効率よ
く除去できる手段を提供し、ひいてはエラーレートが低
い磁気テープが得られるようにするため、レーザー照射
により生じた燃焼カスを効率よく除去する方法について
検討した。その結果、CO2 によるクリーニング方法が
有効であることを見い出した。このCO2 によるクリー
ニング方法は、消耗品がCO2 のみで比較的ランニング
コストが小さいというメリットがある。
【0021】《本発明のクリーニング方法》本発明のク
リーニング方法は、磁気テープを長手方向に走行させな
がら、そのバックコート層にレーザー光を照射して当該
バックコート層に光学サーボ用の凹部を形成した後の工
程において、光学サーボ用の凹部が形成されているバッ
クコート層の表面に固体CO2 を吹き付ける、というも
のである。この方法によれば、磁気テープを一度走行さ
せるだけで光学サーボ用の凹部の内部およびその周辺に
付着した燃焼カスを除去できる。すなわち、図1ないし
図3に例示したように、クリーニング対象としての磁気
テープ1を高速(例えば、約10m/秒の速度)で走行
させた状態で、そのバックコート層2の表面に、固体C
2 (噴射時には液体で噴射直後に固体となるCO2
を吹き付けることにより、バックコート層2の表面に付
着している粉体を効率よく除去できる。なお、図1ない
し図3において、符号3は非磁性支持体、4は磁性層、
5は多数の光学サーボ用の凹部からなるサーボパター
ン、6は下塗層をそれぞれ示す。
【0022】このような固体CO2 の吹き付けにより燃
焼カスを効率良く除去できるのは、次のように考えられ
る。すなわち、バックコート層の表面に吹き付けられる
CO 2 は、一定の温度以下で、圧力が一定以上であれ
ば、液体であるが、噴射後に圧力が急激に低下するた
め、液体から固体へと変化して粒子状もしくは微粒子状
のドライアイスになる。このドライアイスは、CO2
き付け用の噴射ノズル15から噴射された後に磁気テー
プ1のバックコート層2の表面(後述の図7に示す被吹
き付け部B)に当たって周辺に飛散する(短時間に炭酸
ガスとなる)が、そのバックコート層表面への当接時に
そこに付着していた粉体(主に燃焼カス)を吸着する。
これにより、バックコート層表面における燃焼カスが分
離・除去されることとなる。このとき、図3に示したよ
うに、CO2 吹き付け領域(図7に示す被吹き付け部
B)の周辺を吸引ノズル16等の吸引手段で吸引するこ
とで燃焼カスの除去を一層効率よく行うことができる。
【0023】なお、図3には、吸引手段として、テープ
幅よりも大きな幅の吸引口16aを有する吸引ノズル1
6をバックコート層面の上方に配置したものを示した
が、吸引手段はこのようなものに限られない。例えば図
4に示すように、磁気テープ1の走行方向と対向する方
向から見て(図4では紙面の上方から見て)、磁気テー
プ1のバックコート層2側の面と両エッジ部(磁気テー
プ1の長手方向に沿った両端部)とを覆うような吸引口
16aを有する吸引手段16を用いてもよいし、あるい
は図5に示すように、磁気テープ1の走行方向と対向す
る方向から見て、テープ全体を取り囲むような吸引口1
6aをもつ吸引手段16を用いてもよい。また、図示し
ないが、磁気テープの走行を妨げないようにしたうえ
で、CO2 吹き付け用の噴射ノズル15を含めてCO2
吹き付け領域全体を覆うような吸引手段を用いてもよ
い。
【0024】図6に、レーザー照射により形成される光
学サーボ用の凹部の配列パターン(サーボパターン)の
一例を示す。図示したものは、テープ幅が12.64mm
(1/2インチ)である磁気テープ1におけるサーボパ
ターン5の一例であるが、この例では、そのテープ幅方
向に、それぞれテープ長手方向に延びる4列のバンド5
aが形成されている。1本のバンド5aの幅は約0.4mm
である。各バンド5aは、微視的には光学サーボ用の凹
部がテープ長手方向に並んだ状態のものを一列とし、こ
の凹部の列がテープ幅方向に間隔を開けて複数並んだ構
成とされている。レーザー照射により発生した粉体は、
サーボパターンの凹部の内面に最も多く付着しているこ
とから、例えば図3に示したように、1つのバンド5a
に対し1つのCO2 噴射孔15aを有する噴射ノズル1
5が最も効率がよい。図示例の噴射ノズル15は、4バ
ンドのパターンに対して4つの噴射孔15aを有する。
これらの噴射孔15aから均一に固体CO2 (先に述べ
たように噴射時には液体である)を噴射することによ
り、サーボパターン5を形成している凹部およびその周
辺を確実にクリーニングすることができる。
【0025】また、高速(例えば、10m/秒)で走行
する磁気テープに対向する方向に一定の角度を持たせた
CO2 吹き付け用の噴射ノズルから固体CO2 を吹き付
ける。具体的には、図2、図3および図7に示すよう
に、磁気テープ1の走行方向から見てバックコート層表
面における固体CO2 の被吹き付け部(固体CO2 が当
たる部分)Bよりも前方側に、バックコート層2の表面
に対して例えば30°〜90°(好ましくは30°〜6
0°)傾斜させた状態でCO2 吹き付け用の噴射ノズル
15を配置し、そこから磁気テープ1の走行方向Aと対
向する方向に固体CO2 を噴射して前記被吹き付け部B
に当てることにより、バックコート層表面における光学
サーボ用の凹部およびその周辺に付着した燃焼カスを吹
き飛ばす。このようにすれば、光学サーボ用の凹部への
CO2 の流れを保ちながら、CO2吹き付け相対速度を
増加させることができるので、クリーニング効果を高め
ることができる。
【0026】効率よくサーボパターンを生成するには、
長さ数千メートル以上に巻かれた磁気テープを走行させ
ながら、レーザー照射によりバックコート層の表面に光
学サーボ用の凹部を形成した後、クリーニング処理およ
び表面に対する拭き取り処理を行い、その後に再び整然
と巻き取りうるようなる装置が有効である。このような
装置として、図7に例示するように、巻かれた磁気テー
プ1を所定の方向に送り出す送り出し機構部11と、送
り出された磁気テープ1のバックコート層の表面にレー
ザー光を照射して光学サーボ用の凹部を形成する光学サ
ーボトラック形成部12と、この凹部形成後にバックコ
ート層の表面をクリーニングするクリーニング部13
と、このクリーニング後に磁気テープ1を巻き取る巻き
取り機構部14とを有し、前記クリーニング部13に、
前記レーザー光の照射により形成された光学サーボ用の
凹部およびその周辺に固体CO2 を吹き付ける噴射ノズ
ル15を備えたCO2 吹き付け部と、この固体CO2
吹き付けにより吹き飛ばされた前記光学サーボ用の凹部
およびその周辺の燃焼カスを吸引する吸引ノズル16を
備えた吸引部と、この燃焼カスの吸引後に例えばティッ
シュによりバックコート層と磁性層の表面を拭き取る拭
き取り部17とを備えた、磁気テープの光学サーボトラ
ック形成・クリーニング装置を用いることができる。た
だし、このような装置においては、光学サーボトラック
形成部12、クリーニング部13におけるCO2 吹き付
け部および拭き取り部のそれぞれにおいて張力ロスが存
在し、テープに対する最適な張力(例えば、70g〜2
00g)を超えることがある。そのため、各部別に磁気
テープの張力を制御する張力制御手段を備えるのが好ま
しい。具体的には、後述する実施例において説明するよ
うに、第1〜第3吸引ロール22〜24により張力を絶
縁し、各部に備えた張力検出器27・28の値を、各吸
引ロール22を回転させるサーボモータにフィードバッ
クして制御することで、磁気テープ1に対する最適な張
力を保ちながら走行させるようにした装置が有効であ
る。
【0027】本発明のクリーニング方法は、バックコー
ト層にレーザー照射によって形成された光学サーボ用の
凹部を有する磁気テープに使用されるが、中でも以下の
ような構成要素を有する磁気テープに好適に使用され
る。 〈非磁性支持体〉非磁性支持体の厚さは、7.0μm以下
が好ましく、2.0〜7.0μmがより好ましい。この範囲
の厚さの非磁性支持体がより好ましいのは、2μm未満
では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7.0
μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当り
の記憶容量が小さくなるためである。
【0028】非磁性支持体の長手方向のヤング率は、非
磁性支持体の厚さによって異なるが、通常5.07GPa
(500kg/mm2 )以上のものが使用される。また、非
磁性支持体の厚さが、5.0μm以下の場合は、10.13
GPa(1000kg/mm2 )以上のヤング率のものが好
ましく使用される。前記範囲のヤング率の非磁性支持体
が用いられるのは、5.07GPa(500kg/mm2 )未
満では、磁気テープの強度が弱くなったり、磁気テープ
の走行が不安定になるためである。
【0029】非磁性支持体の長手方向のヤング率をM
D、幅方向のヤング率をTDとした時の比(MD/T
D)は、1.0〜1.8が好ましく、1.1〜1.7がより好ま
しい。この範囲が好ましいのは、ヘッドタッチが良くな
るためである。このような非磁性支持体には、ポリエチ
レンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレー
トフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイ
ミドフィルム等がある。
【0030】〈下塗層〉非磁性支持体と磁性層との間に
下塗層を設けてもよい。下塗層の厚さは、0.3〜3.0μ
mが好ましく、0.3〜2.5μmがより好ましく、0.3〜
2.0μmがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、
0.3μm未満では磁気テープの耐久性が悪くなる場合が
あり、3.0μmを越えると磁気テープの耐久性向上効果
が飽和するばかりでなくテープ全厚が厚くなって、1巻
当りのテープ長さが短くなり、記憶容量が小さくなるた
めである。
【0031】下塗層には、導電性改良の目的でカーボン
ブラック(以下、CBともいう)、塗料粘度やテープ剛
性の制御を目的に非磁性粒子を添加することができる。
下塗層に使用する非磁性粒子としては、酸化チタン、酸
化鉄、アルミナ等があるが、酸化鉄単独または酸化鉄と
アルミナの混合系が好ましく使用される。下塗層に、下
塗層中の全無機粉体の重量を基準にして、粒径10〜1
00nmのカーボンブラックを15〜35重量%、長軸
長0.05〜0.20μm、短軸長5〜200nmの非磁性
の酸化鉄を35〜83重量%、必要に応じて粒径10〜
100nmのアルミナを0〜20重量%含有させると、
ウエットオンウエットで、その上に形成した磁性層の表
面粗さが小さくなるので好ましい。なお、非磁性酸化鉄
としては針状の他、粒状または無定形の非磁性酸化鉄を
使用してもよい。粒状または無定形の非磁性酸化鉄を使
用する場合には粒径5〜200nmの酸化鉄が好まし
い。なお、表面の平滑性を損なわない範囲で100nm
以上の大粒径CBを添加することを排除するものではな
い。その場合のCB量は、小粒径CBと大粒径CBの和
を上記範囲内にすることが好ましい。
【0032】下塗層に添加するカーボンブラック(C
B)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラッ
ク、サーマルブラック等を使用できる。通常、粒径が5
nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10〜1
00nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、
カーボンブラックがストラクチャーを持っているため、
粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、10
0nm以上では平滑性が悪くなるためである。CB添加
量は、CBの粒子径によって異なるが、15〜35重量
%が好ましい。この範囲が好ましいのは、15重量%未
満では導電性向上効果が乏しく、35重量%を越えると
効果が飽和するためである。粒径15nm〜80nmの
CBを15〜35重量%使用するのがより好ましく、粒
径20nm〜50nmのCBを20〜30重量%用いる
のがさらに好ましい。このような粒径・量のカーボンブ
ラックを添加することにより電気抵抗が低減され、かつ
走行むらが小さくなる。
【0033】下塗層に添加する非磁性の酸化鉄として
は、針状の場合、長軸長0.05〜0.20μm、短軸長
(粒径)5〜200nmのものが好ましく、粒状または
無定形のものでは、粒径5〜200nmが好ましい。粒
径5〜150nmがより好ましく、粒径5〜100nm
がさらに好ましい。なお、針状のものが磁性層の配向が
よくなるのでより好ましい。添加量は、35〜83重量
%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。この
範囲の粒径(針状の場合は短軸長)が好ましいのは、粒
径5nm未満では均一分散が難しく、200nmを越え
ると下塗層と磁性層の界面の凹凸が増加するためであ
る。この範囲の添加量が好ましいのは、35重量%未満
では塗膜強度向上効果が小さく、83重量%を越えると
かえって塗膜強度が低下するためである。
【0034】下塗層には酸化鉄に加えてアルミナを添加
してもよい。アルミナの粒径は、10〜100nmが好
ましく、20〜100nmがより好ましく、30〜10
0nmがさらに好ましい。この範囲の粒径が好ましいの
は、粒径10nm未満では均一分散が難しく、100n
mを越えると下塗層と磁性層の界面の凹凸が増加するた
めである。アルミナの添加量は、通常0〜20重量%で
あるが、2〜10重量%がより好ましい。
【0035】〈潤滑剤〉下塗層と磁性層からなる塗布層
に、役割の異なる潤滑剤を使用することができる。下塗
層には全粉体に対して0.5〜4.0重量%の高級脂肪酸を
含有させ、かつ0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステ
ルを含有させると、磁気テープと走行系のガイド等との
摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の高級脂
肪酸添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係
数低減効果が小さく、4.0重量%を越えると下塗層が可
塑化してしまい強靭性が失われるからである。また、こ
の範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.
5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重
量%を越えると磁性層への移入量が多すぎるため、磁気
テープと走行系のガイド等が貼り付く等の副作用がある
からである。なお、脂肪酸としては、例えばラウリン
酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘ
ン酸、オレイン酸、リノール酸などの高級脂肪酸が使用
される。脂肪酸エステルとしては、例えばステアリン酸
ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、
ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ス
テアリン酸ブトキシエチル、モノーステアリン酸無水ソ
ルビタン、ジーステアリン酸無水ソルビタン、トリース
テアリン酸無水ソルビタンなどが使用される。
【0036】磁性層において強磁性粉末(例えば強磁性
金属粉末)に対して0.2〜3.0重量%の脂肪酸アミドを
含有させ、かつ0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステ
ルを含有させると、磁気テープと走行系のガイドやMR
ヘッドのスライダ等との摩擦係数が小さくなるので好ま
しい。この範囲の脂肪酸アミドが好ましいのは、0.2重
量%未満ではヘッドスライダ/磁性層の摩擦係数(動摩
擦係数)が大きくなりやすく、3.0重量%を越えるとブ
リードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発
生するからである。脂肪酸アミドとしては、例えばパル
ミチン酸、ステアリン酸等、上記の高級脂肪酸のアミド
が使用可能である。また、上記範囲の高級脂肪酸のエス
テル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では摩擦係数
低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁気テープと
走行系のガイド等が貼り付く等の副作用があるためであ
る。なお、磁性層の潤滑剤と下塗層の潤滑剤の相互移動
を排除するものではない。MRヘッドのスライダとの摩
擦係数(μmsl )は0.30以下が好ましく、0.25以下
がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.30を越
えると、スライダ汚れによるスペーシングロスが起こり
やすいためである。なお、0.10未満は実現が困難であ
る。SUSとの摩擦係数(μmsus)は0.10〜0.25が
好ましく、0.12〜0.20がより好ましい。この範囲が
好ましいのは、0.10未満になるとガイド部分で滑りや
すく走行が不安定になり、0.25を越えるとガイドが汚
れやすくなるためである。また、[(μmsl )/(μ
msus)]は0.7〜1.3が好ましく、0.8〜1.2がより好
ましい。この範囲が好ましいのは、磁気テープの蛇行に
よるトラッキングずれ(オフトラック)が小さくなるた
めである。
【0037】〈磁性層〉磁性層の厚さは上述のように、
通常0.3μm以下で、0.01〜0.3μmが好ましく、0.
01〜0.25μmがより好ましく、0.01〜0.10μm
がさらに好ましい。この範囲がより好ましいのは、0.0
1μm未満では均一な磁性層が得にくく、0.3μmを越
えると厚さ損失により、再生出力が小さくなったり、残
留磁束密度と厚さの積が大きくなり過ぎて、MRヘッド
の飽和による再生出力の歪が起こりやすくなるためであ
る。また、磁性層の保磁力は、120〜320kA/m
が好ましく、140〜320kA/mがより好ましい。
この範囲が好ましいのは、120kA/m未満では記録
波長を短くすると反磁界減磁で出力低下が起こり、32
0kA/mを越えると磁気ヘッドによる記録が困難にな
るためである。磁性層のテープ長手方向における残留磁
束密度(Br)と磁性層厚さ(δ)との積(Brδ)は
0.0018μTm〜0.06μTmが好ましく、0.003
6〜0.050μTmがより好ましい。この範囲が好まし
いのは、0.0018μTm未満では、MRヘッドによる
再生出力が小さく、0.06μTmを越えるとMRヘッド
による再生出力が歪みやすいからである。磁性層の平均
面粗さRaが3.2nm以下1.0nm以上で、該磁性層の
凹凸の中心値をP0 、該磁性層の最大の凸量をP1 とし
た時の(P1 −P0 )が30nm以下10nm以上で、
第20番目の凸量をP20とした時の(P1 −P20)を5
nm以下にすれば、MRヘッドとのコンタクトがよくな
り、MRヘッドを使用した時の再生出力が高くなるので
好ましい。
【0038】磁性層に添加する磁性粉には、強磁性鉄系
金属粉末、六方晶バリウムフェライト粉末を使用するこ
とができる。強磁性鉄系金属粉末、六方晶バリウムフェ
ライト粉末の保磁力は、120〜320kA/mが好ま
しく、飽和磁化量は、強磁性鉄系金属粉末では、120
〜200A・m2 /kg(120〜200emu/g)が
好ましく、130〜180A・m2 /kg(130〜18
0emu/g)がより好ましい。六方晶バリウムフェラ
イト粉末では、50〜70A・m2 /kg(50〜70e
mu/g)が好ましい。なお、この磁性層の磁気特性
と、強磁性粉末の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束
計で外部磁場1.28MA/m(16kOe)での測定値
をいうものである。
【0039】強磁性鉄系金属粉末の平均長軸長として
は、0.03〜0.2μmが好ましく、0.03〜0.18μm
がより好ましく、0.03〜0.10μmがさらに好まし
い。この範囲が好ましいのは、平均長軸長が0.03μm
未満となると、磁性粉の凝集力が増大するため塗料中へ
の分散が困難になり、0.2μmより大きいと、保磁力が
低下し、また粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きく
なる。また、六方晶バリウムフェライト粉末では、同様
な理由により、板径5〜200nmが好ましく、10〜
100nmがより好ましく、10〜50nmがさらに好
ましい。なお、上記の平均長軸長、粒径は、走査型電子
顕微鏡(SEM)にて撮影した写真から粒子サイズを実
測し、100個の平均値により求めたものである。ま
た、この強磁性鉄系金属粉末のBET比表面積は、35
2 /g以上が好ましく、40m2 /g以上がより好ま
しく、50m2 /g以上が最も好ましい。六方晶バリウ
ムフェライト粉末のBET比表面積は、1〜100m2
/gが好ましく用いられる。
【0040】下塗層、磁性層に用いられる結合剤として
は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル
−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体、ニトロセ
ルロースなどの中から選ばれる少なくとも1種とポリウ
レタン樹脂との組み合わせがある。中でも、塩化ビニル
−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体とポリウレ
タン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂に
は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレ
タン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカ
ーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネー
トポリウレタンなどがある。
【0041】官能基としてCOOH,SO3 M、OSO
2 M,P=O(OM)3 、O−P=O(OM)2 [式
中、Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアミン塩を
表す。]、OH、NR' R'' 、N+R''' R''''
R''''' [式中、R' 、R''、R''' 、R''''、
R''''' は、それぞれ独立に水素または炭化水素基を表
す]、エポキシ基を有する高分子からなるウレタン樹脂
等の結合剤が使用される。このような結合剤を使用する
のは、上述のように磁性粉等の分散性が向上するためで
ある。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極
性を一致させるのが好ましく、中でも−SO3 M基同士
の組み合わせが好ましい。
【0042】これらの結合剤は、強磁性粉末100重量
部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重
量部の範囲で用いられる。特に、結合剤として、塩化ビ
ニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜2
0重量部とを、複合して用いるのが最も好ましい。
【0043】これらの結合剤とともに、結合剤中に含ま
れる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤
を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレ
ンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソ
シアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を
複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート
類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ま
しい。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対し
て、通常10〜50重量部の割合で用いられる。より好
ましくは10〜35重量部である。なお、磁性層に使用
する架橋剤の量を下塗層に使用する量の1/2程度(3
0%〜60%)にすれば、MRヘッドのスライダに対す
る摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲が好ま
しいのは、30%未満では、磁性層の塗膜強度が弱くな
りやすく、60%を越えるとスライダに対する摩擦係数
を小さくするために、ティッシュによる拭き取り処理条
件(LRT処理条件)を強くする必要があり、コストア
ップにつながるためである。
【0044】導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来
公知のCBを添加する。これらのCBとしては、アセチ
レンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック
等を使用できる。粒子径が5nm〜200nmのものが
使用されるが、粒径10nm〜100nmのものが好ま
しい。この範囲が好ましいのは、粒径が5nm以下にな
るとCBの分散が難しく、200nm以上では多量のC
Bを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗
くなり、出力低下の原因になるためである。添加量は強
磁性粉末に対して0.2〜5重量%が好ましく、0.5〜4
重量%がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2
重量%未満では効果が小さく、5重量%を越えるCBを
添加すると、磁性層表面が粗くなりやすいからである。
【0045】〈バックコート層〉バックコート層の厚さ
は、0.25〜0.8μmが好ましく、0.4〜0.8μmがよ
り好ましく、0.4〜0.6μmがさらに好ましい。この範
囲が良いのは、0.25μm未満では、光学サーボ用の凹
部の形成のための条件(レーザーパワー等)の制御が難
しく、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻
当たりの記憶容量が小さくなるためである。
【0046】バックコート層とSUSとの摩擦係数(μ
Bsus)は0.10〜0.30が好ましく、0.10〜0.25が
より好ましい。この範囲が好ましいのは、0.10未満に
なるとガイド部分で滑りやすく走行が不安定になり、0.
30を越えるとガイドが汚れやすくなるためである。ま
た、[(μmSL )/(μBsus)]は0.8〜1.5が好まし
く、0.9〜1.4がより好ましい。この範囲が好ましいの
は、磁気テ−プの蛇行によるトラッキングずれ(オフト
ラック)が小さくなるためである。
【0047】バックコート層の平坦部の光反射率の平均
値は8.5%以上が好ましく、9.0%以上がより好まし
く、10%以上がさらに好ましい。光反射率の平均値が
8.5%以上が好ましいのは、8.5%未満ではサーボ信号
(S)が小さくなりトラッキング不良の原因になるため
である。通常の実用的なバックコート層の光反射率の平
均値の上限値は15%である。バックコート層の光反射
率の平均値が15%を越えると、均一なバックコート層
では一般に耐久性が劣化する可能性がある。このため、
光反射率の平均値が15%を越えるバックコート層を使
用する場合には、光学サーボ用の凹部が形成されている
部分以外の平坦部の光反射率の平均値を15%以下にす
ることで耐久性が劣化しないようにする必要がある。
【0048】光反射率の平均値を8.5%以上にすると共
に、平坦部の光反射率の場所(磁気テープ位置)による
変動率[(光反射率の平均値からの光反射率変動の絶対
値の最大値)÷(光反射率の平均値)×100]を10
%以下にすることが好ましく、5%以下がより好まし
く、3%以下がさらに好ましく、最も好ましいのは0%
である。この範囲が好ましいのは、10%を越えるとサ
ーボ信号のS/Nが小さくなりトラッキングエラーの原
因になるためである。なお、光反射率の場所による変動
率を評価するに当たっては長さ40mm当りの光反射率変
動を調べれば足りる。これは、長さ40mm当りの光反射
率変動が、磁気テープ全長当りの光反射率変動とほぼ等
しいからである。
【0049】平坦部の光反射率の平均値を8.5%以上に
すると共に、平坦部の光反射率の場所による変動率を1
0%以下にするための好ましい方法には、バックコート
層の非磁性粉末の含有率[(非磁性粉末重量)÷(非磁
性粉末重量+結着剤重量)×100]を50重量%以上
とし、かつAFM法で測定したバックコート層の平坦部
の表面粗さRaを30nm以下、当該表面粗さRaの磁
気テープ位置による変動の半値幅を5nm以下に制御す
る方法がある。また、平坦部の表面粗さRaは通常10
nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。平
坦部の表面粗さRaを10nm以上とするのが好ましい
理由は、Raが10nm未満になると耐久性が劣化しや
すいためである。平坦部の表面粗さRaが10nm未満
のバックコート層を使用する場合には、光学サーボ用の
凹部が形成されている部分以外の平坦部の表面粗さRa
を10nm以上にする必要がある。なお、40μm×4
0μm当りの表面粗さRaを100個所AFMで測定す
れば、磁気テープ全長当りのRaおよびRa変動を測定
したのとほぼ同等の結果が得られるので、評価は前者の
測定値により行うことができる。このようにバックコー
ト層平坦部の光反射率は、非磁性粉末の含有率を50重
量%以上として、かつ表面を平滑にすれば高くなるが、
バックコート層の非磁性粉末の含有率を60重量%以上
にすると、平坦部の表面粗さRaを30nm以下にしに
くいばかりでなく、カレンダ条件等を強くして平坦部の
粗さRaを30nm以下にすると、バックコート層の耐
久性が悪くなりやすい。このような理由から、バックコ
ート層の非磁性粉末の含有率は実用上50〜60重量%
の範囲が好ましく、50〜58重量%がより好ましく、
50〜56重量%がさらに好ましく、53〜56重量%
がいっそう好ましい。
【0050】また、非磁性粉末の中に占めるカーボンブ
ラックの割合を80重量%以上にすると、レーザー光に
よって光学サーボ用の凹部を形成しやすくなるので好ま
しく、85重量%以上がより好ましい。さらに、カーボ
ンブラックと共に、合わせて20重量%以下の酸化鉄
(例えばベンガラ)等を添加すると、バックコート層の
強度が高くなるので好ましい。
【0051】バックコート層のカーボンブラック(C
B)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラッ
ク、サーマルブラック等を使用できる。通常、小粒径カ
ーボンと大粒径カーボンを使用する。小粒径カーボンに
は、粒子径が5nm〜200nmのものが使用される
が、粒径10nm〜100nmのものがより好ましい。
この範囲がより好ましいのは、粒径が10nm以下にな
るとCBの分散が難しく、粒径が100nm以上では多
量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表
面粗さRaが30nm以上になり、平坦部の光反射率が
小さくなるためである。大粒径カーボンとして、全カー
ボン(小粒径カーボンと大粒径カーボンの合計)の5〜
15重量%、粒径200〜400nmの大粒径カーボン
を使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大
きくなる。この範囲の量が好ましいのは、5重量%未満
では耐久性向上効果が小さく、15重量%を越えると平
坦部の光反射率の変動が大きくなるためである。小粒径
カーボンと大粒径カーボン合計の添加量は非磁性粉末重
量を基準にして80〜100重量%が好ましく、85〜
100重量%がより好ましい。AFMで測定した表面粗
さRaは上述のように30nm以下が好ましく、通常1
0nm以上である。
【0052】バックコート層には、強度向上を目的に、
無機粉体重量を基準にして合わせて20重量%以下の酸
化鉄など(例えば、酸化鉄、アルミナのような通常バッ
クコート層に添加されている添加剤)を添加する。添加
量は2〜20重量%がより好ましく、5〜15重量%が
さらに好ましい。この範囲がより好ましいのは、2重量
%未満では強度向上効果が小さく、20重量%を越える
とレーザーによる光学サーボ用の凹部の形成が難しくな
るためである。なお、酸化鉄を主成分とした酸化物が好
ましく使用されるが、酸化鉄、アルミナを同時添加する
場合のアルミナ添加量は、酸化鉄の20重量%以下とす
るのがよい。20重量%が好ましい理由は、アルミナ添
加量が酸化鉄の20重量%を超えると燃焼カスの除去の
ためのクリーニング条件を強くする必要があるためであ
る。酸化鉄(粒状)などの粒子径は0.05μm〜0.4μ
mが好ましく、0.07μm〜0.35μmがより好まし
い。この範囲が好ましいのは、0.05μm未満では強度
向上効果が小さく、0.4μmを超えると平坦部の反射率
の変動が大きくなるためである。
【0053】バックコート層には結合剤として、前述し
た磁性層や下塗層に用いるのと同じ樹脂を用いることが
できるが、これらの中でも摩擦係数を低減し走行性を向
上させるため、セルロース系樹脂とポリウレタン樹脂を
複合して併用することが好ましい。結合剤の含有量は通
常、カーボンブラックと前記無機非磁性粉末との合計量
100重量部に対して40〜150重量部で、50〜1
20重量部が好ましく、50〜110重量部がより好ま
しく、50〜100重量部がさらに好ましい。この範囲
が好ましいのは、50重量部未満では、バックコート層
の強度が不十分になりやすく、120重量部を越えると
摩擦係数が高くなりやすいためである。セルロース系樹
脂を30〜70重量部、ポリウレタン系樹脂を20〜5
0重量部使用することが好ましい。また、さらに結合剤
を硬化させるために、ポリイソシアネート化合物などの
架橋剤を用いることが好ましい。
【0054】バックコート層には架橋剤として、前述し
た磁性層や下塗層に用いる架橋剤を使用する。架橋剤の
量は、結合剤100重量部に対して、通常10〜50重
量部の割合で用いられる。好ましくは10〜35重量
部、より好ましくは10〜30重量部である。この範囲
が好ましいのは、10重量部未満では、バックコート層
の塗膜強度が弱くなりやすく、35重量部を越えるとS
USに対する動摩擦係数が大きくなるためである。
【0055】〈LRT処理(ラッピング/ロータリー/
ティッシュ処理)〉磁性層については、以下に述べるよ
うなLRT処理を施すことにより表面の平滑性、MRヘ
ッドのスライダ材料やシリンダ材料との摩擦係数や表面
粗さ、表面形状を最適化することができ、磁気テープの
走行性、スペーシングロスの低減、MR再生出力の向上
ができる。
【0056】(1)ラッピング処理:研磨テープ(ラッ
ピングテープ)を、回転ロールによってテープ送り(標
準:400m/分)と反対方向に一定の速さ(標準:1
4.4cm/分)で移動させ、上部からガイドブロックで押
さえることによってテープ磁性層表面と接触させる。こ
の時の磁気テープ巻き出しテンションおよびラッピング
テープのテンションを一定(標準:各100g、250
g)として研磨処理を行。この工程で使用する研磨テー
プ(ラッピングテープ)3は、例えば、M20000
番、WA10000番あるいはK10000番のような
研磨砥粒の細かい研磨テープ(ラッピングテープ)であ
る。なお、研磨ホイール(ラッピングホイール)を研磨
テープ(ラッピングテープ)の代りにまたは併用して使
用することを排除するものではないが、頻繁に交換を要
する場合は、研磨テープ(ラッピングテープ)のみを使
用する。
【0057】(2)ロータリー処理:空気抜き用溝付ホ
イール[標準:幅1インチ(25.4mm)、直径60mm、
空気抜き用溝2mm幅、溝の角度45度、協和精工株式会
社製]と磁性層とを一定の接触角度(標準:90度)で
テープと反対方向に一定の回転速度(通常:200〜3
000rpm、標準:1100rpm)で接触させて処
理を行う。
【0058】(3)ティッシュ処理:ティッシュ[例え
ば東レ株式会社製の織布トレシー]を回転棒で各々バッ
クコート層及び磁性層面をテープ送りと反対方向に一定
の速度(標準:14.0mm/分)で送り、クリーニング処
理を行う。
【0059】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、
本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施
例、比較例の部は重量部を示す。
【0060】 〔実施例1〕 《下塗層用塗料成分》 (1) 酸化鉄粉末(粒径:0.11×0.02μm) 68部 α−アルミナ(粒径:0.07μm) 8部 カーボンブラック(粒径:25nm、吸油量:55g/cc) 24部 ステアリン酸 2.0部 塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 8.8部 (含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g) ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部 (Tg:40℃、含有−SO3 Na基:1×10-4当量/g) シクロヘキサノン 25部 メチルエチルケトン 40部 トルエン 10部 (2) ステアリン酸ブチル 1部 シクロヘキサノン 70部 メチルエチルケトン 50部 トルエン 20部 (3) ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製コロネートL) 4.4部 シクロヘキサノン 10部 メチルエチルケトン 15部 トルエン 10部
【0061】 《磁性層用塗料成分》 (A) 強磁性鉄系金属粉 100部 (Co/Fe:30at%、Y/(Fe+Co):3at%、Al/(Fe+ Co):5wt%、Ca/Fe:0、σs:155A・m2 /kg、Hc:188. 2kA/m、pH:9.4、長軸長:0.10μm) 塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 12.3部 (含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g) ポリエステルポリウレタン樹脂 5.5部 (含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g) α−アルミナ(平均粒径:0.12μm) 8部 α−アルミナ(平均粒径:0.07μm) 2部 カーボンブラック 1.0部 (平均粒径:75nm、DBP吸油量:72cc/100g) メチルアシッドホスフェート 2部 パルミチン酸アミド 1.5部 ステアリン酸n−ブチル 1.0部 テトラヒドロフラン 65部 メチルエチルケトン 245部 トルエン 85部 (B) ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製コロネートL) 2.0部 シクロヘキサノン 167部
【0062】上記の下塗層用塗料成分において(1)の
成分をニーダで混練したのち、(2)の成分を加えて攪
拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を
行い、これに(3)の成分を加え攪拌・濾過した後、下
塗層用塗料とした。これとは別に、上記の磁性層用塗料
成分(A)をニーダで混練したのち、サンドミルで滞留
時間を45分として分散し、これに磁性層用塗料成分
(B)を加え攪拌・濾過後、磁性塗料とした。上記の下
塗層用塗料を、ポリエチレンナフタレートフイルム(厚
さ6.2μm、MD=6.08Pa、MD/TD=1.1、帝
人社製)からなる非磁性支持体上に、乾燥、カレンダ後
の厚さが1.8μmとなるように塗布し、この下塗層上
に、さらに上記の磁性塗料を磁場配向処理、乾燥、カレ
ンダー処理後の磁性層の厚さが0.15μmとなるように
ウエットオンウエットで塗布し、磁場配向処理後、ドラ
イヤを用いて乾燥し、磁気シ−トを得た。なお、磁場配
向処理は、ドライヤ前にN−N対抗磁石(5kG)を設
置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cm
からN−N対抗磁石(5kG)を2基50cm間隔で設置
して行った。塗布速度は100m/ 分とした。
【0063】 《バックコート層用塗料成分》 カーボンブラック(粒径:25nm) 78部(41.5重量%) カーボンブラック(粒径:350nm) 10部( 5.3重量%) [カーボンブラック計 88部(46.8重量部)] ベンガラA(粒状:0.1μm) 10部( 5.3重量%) ベンガラB(粒径:0.27μm) 2部( 1.1重量%) [非磁性粉末計 100部(53.2重量部)] ニトロセルロース(NC) 44部(23.4重量%) ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 31部(16.4重量%) シクロヘキサノン 260部 トルエン 260部 メチルエチルケトン 525部
【0064】上記バックコ−ト層用塗料成分をサンドミ
ルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネ
ート13部(6.9重量%)を加えてバックコート層用塗
料を調整し濾過後、上記で作製した磁気シ−トの磁性層
の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.5μmとなる
ように塗布し、乾燥した。このようにして得られた磁気
シートを金属ロールからなる7段カレンダで、温度10
0℃、線圧147kN/m(150kgf/cm)の条件で
鏡面化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃
で72時間エージングしたのち、1/2幅に裁断し、下
記の条件でLRT処理を行った後、図7に示す光学サー
ボトラック形成・クリーニング装置を用いてバックコー
ト層に光学サーボ用の凹部を形成し、固体CO2 の吹き
付け処理とクリーニング処理とを行った。このようにし
て得られた磁気テープを、カートリッジに組み込み、コ
ンピュータ用テープを作製した。なお、光学サーボトラ
ック形成・クリーニング装置およびこの装置を用いた処
理については後述する。
【0065】〈LRT(ラッピング/ロータリー/ティ
ッシュ)処理〉 (1)ラッピング処理:研磨テープ(ラッピングテー
プ)を、回転ロールによってテープ送り(400m/
分)と反対方向に14.4cm/分の速さで移動させ、上部
からガイドブロック4によって押さえることによってテ
ープ磁性層表面と接触させる。この時の磁気テープ巻き
出しテンションを100g及びラッピングテープのテン
ションを250gとして研磨処理を行った。 (2)ロータリーアルミホイール処理:幅1インチ(2
5.4mm)、直径60mmで2mm幅の空気抜き用溝付きのホ
イール(溝の角度45度、協和精工株式会社製)と磁性
層とを接触角度90度でテープと反対方向に回転速度1
100rpmで接触させて処理を行った。 (3)ティッシュ処理:東レ株式会社製の織布トレシー
を回転棒で各々バック層及び磁気層面をテープ送りと反
対方向に14.0mm/分の速度で送り、クリーニング処理
を行った。
【0066】ここで、先に述べた光学サーボトラック形
成・クリーニング装置およびこの装置を用いた処理につ
いて説明する。
【0067】この光学サーボトラック形成・クリーニン
グ装置は、図7に示すように、巻かれた磁気テープ1を
所定の方向に送り出す送り出し機構部11と、送り出さ
れた磁気テープ1のバックコート層の表面にレーザー光
を照射して光学サーボ用の凹部を形成する光学サーボト
ラック形成部12と、この凹部形成後にバックコート層
の表面をクリーニングするクリーニング部13と、この
クリーニング後に磁気テープ1を巻き取る巻き取り機構
部14とを有する。
【0068】クリーニング部13には、前記レーザー光
の照射により形成された光学サーボ用の凹部およびその
周辺に固体CO2 を吹き付ける噴射ノズル15を備えた
CO 2 吹き付け部と、この固体CO2 の吹き付けにより
吹き飛ばされた前記光学サーボ用の凹部およびその周辺
の燃焼カスを吸引する吸引ノズル(吸引手段)16を備
えた吸引部と、この燃焼カスの吸引後にバックコート層
の表面をティッシュクリーナーで拭き取る拭き取り部1
7とが配置されている。
【0069】このうちCO2 吹き付け部に備えられた噴
射ノズル15は、図3に示したように、磁気テープ1の
幅方向における光学サーボ用の凹部の配列パターンに合
致したCO2 噴射孔15aを有し、磁気テープ1のバッ
クコート層2の面に対して30°傾斜した状態にセット
されている(図3参照)。そして、磁気テープ1の走行
方向と対向する方向に向けてバックコート層2における
CO2 の被吹き付け部Bの前方上部斜め方向から当該被
吹き付け部Bに固体CO2 を噴射するようになってい
る。また、吸引部に備えられた吸引ノズル16は、前記
被吹き付け部Bの近傍に配置される吸引口16aを有
し、固体CO2 の吹き付けによりバックコート層表面か
ら分離された燃焼カスを吸引口16aから吸引して除去
するようになっている。
【0070】一方、拭き取り部17は、磁気テープ1の
磁性層とバックコート層の各表面にそれぞれ接触するよ
うに配置されたティッシュクリーナー18・19と、こ
のティッシュクリーナー18・19を所定の速さで巻き
取り可能に保持する各一対のローラ20・21とを有す
る。そして、各ティッシュクリーナー18・19を磁気
テープ1の磁性層とバックコート層の各表面に押し当て
ることにより、そこに付着している不要な粉体を拭き取
るようになっている。
【0071】加えて、張力制御手段を構成するものとし
て、図7に示した装置には、以下のような手段が備えら
れている。すなわち、光学サーボトラック形成部12と
吸引ノズル16との間には第1吸引ロール22が、噴射
ノズル15と拭き取り部17との間には第2吸引ロール
23が、拭き取り部17と巻き取り機構部14との間に
は第3吸引ロール24がそれぞれ配置されている。ま
た、送り出し機構部11と光学サーボトラック形成部1
2との間、および第3吸引ロール24と巻き取り機構部
14との間には、磁気テープ1の張力を調節する張力ア
ーム25・26がそれぞれ備えられ、さらに第2吸引ロ
ール23と噴射ノズル15および拭き取り部17との各
間には、磁気テープ1の張力を検出するとともに張力の
調節が可能な張力検出器27・28が設けられている。
そして、各吸引ロール22〜24によって磁気テープ1
の張力を絶縁するとともに、前記張力検出器27・28
の値を、各吸引ロール22〜24を回転させるサーボモ
ータにフィードバックすることで、光学サーボトラック
形成部12、クリーニング部13におけるCO2 吹き付
け部と拭き取り部17の各部別に、磁気テープに対する
最適な張力を得ることができるように構成されている。
【0072】本発明の実施例では、このような装置を用
いて、磁気テープの張力を150gに保ちながら、10
m/秒の速度で磁気テープを走行させ、以下に述べるよ
うな光学サーボ用の凹部パターンの形成、固体CO2
吹き付け処理、燃焼カスのクリーニング処理を行った。
【0073】〈光学サーボ用凹部パターンの形成〉図7
に示した光学サーボトラック形成・クリーニング装置の
光学サーボトラック形成部12において磁気テープ1の
バックコート層の表面にレーザー光を照射し、光学サー
ボ用の凹部を形成した。このとき、光学サーボ用の凹部
パターンとして、図6に示したように、12.64mmのテ
ープ幅方向に4バンドが並ぶように形成し、1バンドの
幅が約0.4mmとなるように光学サーボ用の凹部群を形成
した。
【0074】〈固体CO2 の吹き付け処理〉つぎに、固
体CO2 吹き付け用の噴射ノズル15と、吸引ノズル1
6とを用いて、上記レーザー光の照射により生成した燃
焼カスを大略除去した。なお、バックコート層面に対す
る噴射ノズル15の角度は先に述べたように30°に設
定した。
【0075】〈クリーニング処理〉最後に、拭き取り部
17に備えたティッシュクリーナー18を用いて、残存
している燃焼カスを完全に除去して、Brδ(磁性層に
おけるテープ長手方向の残留磁束密度と厚みとの積)が
0.045μTm、保磁力Hcが192kA/mである上
述の磁気テープを作製した。
【0076】〔実施例2〕カレンダ条件を、温度100
℃、線圧147kN/m(150kgf/cm)から、温度
90℃、線圧294kN/m(300kgf/cm)に変更
したことを除き実施例1と同様にして磁気テープを作製
した。
【0077】〔実施例3〕カレンダ条件を、温度100
℃、線圧147kN/m(150kgf/cm)から、温度
120℃、線圧294kN/m(300kgf/cm)に変
更したことを除き実施例1と同様にして磁気テープを作
製した。
【0078】〔実施例4〕バックコート層の厚さを0.5
μmから、0.4μmに変更したことを除き、実施例1と
同様にして磁気テープを作製した。
【0079】〔実施例5〕バックコート層の厚さを0.5
μmから、0.6μmに変更したことを除き、実施例1と
同様にして磁気テープを作製した。
【0080】〔実施例6〕4.0μmの非磁性支持体を使
用し、下塗層の厚さを1.0μm、磁性層の厚さを0.1μ
m、バックコート層の厚さを0.5μmから0.6μm に変
更したことを除き、実施例1と同様にして全厚が5.7μ
m、Brδが0.030μTm、保磁力Hcが192kA
/mの磁気テープを作製した。
【0081】〔実施例7〜実施例10〕表1に示した組
成のバックコート層を使用したことを除き、実施例1と
同様にして磁気テープを作製した。
【0082】〔比較例1〕固体CO2 吹き付け処理をし
なかったことを除き、実施例1と同様にして磁気テープ
を作製した。
【0083】〔参考例1〕表2に示した組成のバックコ
ート層を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁
気テープを作製した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】測定および評価は、以下のようにして行っ
た。 〈反射率〉ユニソフ社製分光計を用いて、磁気テープの
平坦部について、入射角20度、反射角20度での反射
率を評価した。入射光源には波長880nmのLEDを
使用した。スポット径は100μmとした。磁気テープ
について、上記の反射率測定を40mm当たり400点の
測定を行い、平均反射率と最大変動率の評価を行った。
平均反射率は反射率の単純平均値、最大変動率は平均反
射率からのズレの最大値を平均反射率で除した値の百分
率である。なお、磁気テープ走行後の平坦部の反射率と
最大変動率は、LTOドライブで磁気テープを2回走行
させ、走行後の磁気テープを一部切取り測定を行った。
【0087】〈AFMによるRaの評価〉Digital-Inst
rument社製DimensionTM3100 AFM測定装置を使用して
平均表面粗さRaを測定した。走査モードはタッピング
・モードAFMとした。タッピング・モードではピエゾ
加振器を用いて、先端に探針をつけたカンチレバーを共
振周波数近傍(約50〜500kHz)で加振させ、サ
ンプル表面上を断続的に軽く触れながら(タップしなが
ら)走査する。サンプル表面の凹凸によるカンチレバー
の振幅の変化量をレーザー光を使って評価する。測定視
野は40μm×40μmである。また、場所によるRa
の変動は、長さ40mm当り等間隔100点のRa測定を
行い、各測定点のRaを横軸、頻度(1nmピッチ)を
縦軸にプロットし、この図からRa変動の半値幅を求め
た。
【0088】〈サーボトラックのS/N〉Flopti
calドライブのサーボ信号測定部を利用して、中心波
長880nmの光をバックコート層に入射角20度で照
射して、その反射光よりサーボ信号S/Nを測定した。
実施例1〜10、比較例1のサーボ信号S/Nは、参考
例1を基準(0dB)として、相対値で表した。
【0089】〈エラーレートの測定〉エラーレート(E
RT)の測定は、薄手テープも測定できるように改善し
たLTOドライブを用いて記録(記録波長0.37μm)
・再生することによって行った。ERTはテストモード
での値である。
【0090】〈磁気特性の評価〉磁性層の磁気特性、強
磁性粉末の磁気特性は、いずれも東英工業社製試料振動
形磁束計で評価した。外部磁場は1.28MA/m(16
kOe)である。
【0091】実施例1〜10、比較例1および参考例1
の各磁気テープを評価した結果を表3〜表5に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】実施例1〜10および比較例1の結果から
明らかなように、固体CO2 吹き付け処理を施すことに
よって、エラーレートが高くなることから、この処理法
は凹部中の燃焼カスを除去する有効な処理法であること
がわかる。
【0096】
【発明の効果】以上のように、バックコート層に光学サ
ーボ用の凹部を設けた磁気テープに対して、固体CO2
吹き付け処理によるクリーニング処理を施すことによっ
て、エラーレートが高くなることから、この処理法は凹
部中の燃焼カスを除去する有効な処理法であることがわ
かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において磁気テープのバックコート層表
面への固体CO2 吹き付け処理を説明するために使用し
た模式図である。
【図2】本発明においてCO2 吹き付け用の噴射ノズル
をセットする角度を説明するために使用した模式図であ
る。
【図3】本発明実施例で使用した光学サーボトラック形
成・クリーニング装置におけるCO2 吹き付け部および
吸引部の周辺を示す斜視図である。
【図4】吸引手段(吸引ノズル)の一構成例を示す模式
図である。
【図5】同じく吸引手段(吸引ノズル)の他の一構成例
を示す模式図である。
【図6】磁気テープのバックコート層表面に形成される
サーボパターンの一例を示す斜視図である。
【図7】本発明実施例で使用した光学サーボトラック形
成・クリーニング装置の全体構成図である。
【符号の説明】
1 磁気テープ 2 バックコート層 3 非磁性支持体 4 磁性層 5 サーボパターン 6 下塗層 11 送り出し機構部 12 光学サーボトラック形成部 13 クリーニング部 14 巻き取り機構部 15 固体CO2 吹き付け用の噴射ノズル 15a CO2 噴射口 16 吸引ノズル(吸引手段) 16a 吸引口 17 拭き取り部 18・19 ティッシュクリーナー 20・21 ローラ 22・23・24 吸引ロール 25・26 張力アーム 27・28 張力検出器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吹上 悟 大阪府茨木市丑寅1丁目1番88号 日立 マクセル株式会社内 (72)発明者 佐野 健治 大阪府茨木市丑寅1丁目1番88号 日立 マクセル株式会社内 (72)発明者 藤谷 茂夫 大阪府茨木市丑寅1丁目1番88号 日立 マクセル株式会社内 (56)参考文献 特開2002−150550(JP,A) 特表2002−537623(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/62 - 5/858

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体と、非磁性支持体の一面上
    に形成された磁性層と、非磁性支持体の他面に形成され
    た、カーボンブラックを一成分とする非磁性粉末と結合
    剤とを含有したバックコート層とを含んでなり、当該バ
    ックコート層にレーザー照射によって形成された光学サ
    ーボ用の凹部を有する磁気テープをクリーニングする方
    法であって、前記磁気テープの走行方向と対向する方向に角度を持た
    せて噴射ノズルからバックコート層の表面に液化ガスを
    吹き付けることにより、前記レーザー照射によって生じ
    たバックコート層表面における光学サーボ用の凹部およ
    びその周辺に付着した燃焼カスを吹き飛ばすとともに、
    吹き飛ばされた燃焼カスを、バックコート層表面の被吹
    き付け部を挟んで前記噴射ノズルと反対に位置する側か
    ら吸引して 除去することを特徴とする磁気テープのクリ
    ーニング方法。
  2. 【請求項2】 液化ガスがCO2 である、請求項1記載
    の磁気テープのクリーニング方法。
  3. 【請求項3】 CO2 を、磁気テープの幅方向における
    光学サーボ用の凹部の配列パターンに合致したCO2
    射孔を有する噴射ノズルを用いて吹き付ける、請求項2
    記載の磁気テープのクリーニング方法。
  4. 【請求項4】 前記吹き飛ばされた燃焼カスを吸引して
    除去した後、バックコート層表面に対して拭き取り処理
    を行う、請求項3記載の磁気テープのクリーニング方
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