JP3518005B2 - 内燃機関の可変動弁装置 - Google Patents

内燃機関の可変動弁装置

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JP3518005B2
JP3518005B2 JP32185294A JP32185294A JP3518005B2 JP 3518005 B2 JP3518005 B2 JP 3518005B2 JP 32185294 A JP32185294 A JP 32185294A JP 32185294 A JP32185294 A JP 32185294A JP 3518005 B2 JP3518005 B2 JP 3518005B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関の吸気弁あ
るいは排気弁(両者を総称して吸排気弁と記す)のバル
ブリフト特性を機関運転条件に応じて可変制御する可変
動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の動弁装置は、一般にカムリフ
トをロッカアームやスイングアームを介して吸排気弁に
伝達し、バルブスプリングにて閉方向に付勢されている
吸排気弁を押し開く構成となっているが、例えば機関の
低速域と高速域とではそれぞれ好ましいバルブリフト特
性が異なるので、運転条件によりバルブリフト特性を切
り換え得るようにした可変動弁装置が種々提案されてい
る。その一例として、例えば特開昭63−167016
号公報等において、カムシャフトにプロフィルの異なる
低速型カムと高速型カムとを並設しておき、それぞれに
従動する主ロッカアームおよび副ロッカアームを必要に
応じて連結状態もしくは離脱状態に切り換えるようにし
た構成のものが知られている。なお、一般に、高速型カ
ムは低速型カムに比して、カムリフト量および開弁期間
の双方が大きく設定されている。
【0003】また、クランクシャフトに対するカムシャ
フトの位相を変化させることで、吸排気弁が開閉するバ
ルブタイミングを遅進させるようにしたバルブタイミン
グ調整機構を用いた可変動弁装置も従来から一部で実用
化されている。つまり、このものでは、バルブリフト特
性の形状は変化せずに、その作動中心角(開時期〜閉時
期の中心となるクランク角)が変化することになる。
【0004】そして、さらに、前者のカム切換によるバ
ルブリフト調整機構と後者のバルブタイミング調整機構
とを組み合わせた可変動弁装置も提案されている。両者
を組み合わせることにより、バルブリフトを大小変化さ
せることができると同時に、開時期および閉時期を可変
制御でき、各運転条件下での要求に一層適合させること
ができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のバルブリフト調
整機構やバルブタイミング調整機構のような可変動弁機
構は、一般に、油圧駆動式の構成となっており、リター
ンスプリングを具備したアクチュエータ部へ内燃機関の
潤滑油圧を供給あるいは停止することにより切り換えら
れる。つまり、油圧を供給するとリターンスプリングに
抗してプランジャ等が移動して一方への切換がなされ、
また油圧供給を停止すると、リターンスプリングのばね
力によりプランジャ等が戻り、初期状態に復帰するよう
になっている。
【0006】ところで、潤滑油の温度が過度に高温とな
ると、潤滑油の粘度が低下し、アクチュエータ部へ供給
される油圧が低下してくることがあり、油圧供給中のア
クチュエータ部が制御信号に反して初期状態に切り換わ
ってしまうことがある。
【0007】このような場合に、上記のバルブリフト調
整機構やバルブタイミング調整機構のような可変動弁機
構を複数備えている内燃機関においては、油圧低下に伴
って各可変動弁機構が一斉に切り換わってしまうと、全
体として非常に大きなトルク変化が発生し、運転者に違
和感を与える虞れがあった。
【0008】特に、高速型カムと低速型カムの切換等に
よりバルブリフト特性を段階的に変化させる機構が不意
に切り換わると、トルクに段差感が発生してしまう。
【0009】また、可変動弁機構を複数備えている場合
に、運転条件によっては、同時に油圧供給が開始される
ことがあるが、このときに全く同時にアクチュエータ部
が切換作動すると、過渡的に油圧低下が発生し、切換の
応答性が悪化する不具合がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、この発明は、リ
ターンスプリングを具備したアクチュエータ部への油圧
の供給,停止に応じて吸気弁あるいは排気弁のバルブリ
フト特性を連続的もしくは段階的に変化させる複数の可
変動弁機構と、各可変動弁機構のアクチュエータ部への
油圧供給をそれぞれ制御する複数の油圧制御弁と、機関
運転条件に応じて各油圧制御弁へ制御信号を出力する制
御手段と、を備えてなる内燃機関の可変動弁装置におい
て、複数の可変動弁機構の中で、同一の機関運転条件下
で油圧供給されることがある複数の可変動弁機構につい
ては、上記リターンスプリングのばね力に対応する設定
油圧をそれぞれ異ならせたことを特徴としている。
【0011】特に、バルブリフト特性が連続的に変化す
る可変動弁機構の設定油圧を、バルブリフト特性が段階
的に変化する可変動弁機構の設定油圧よりも高く設定し
た。
【0012】また請求項の発明では、バルブリフト特
性が連続的に変化する可変動弁機構の切換作動開始油圧
を、バルブリフト特性が段階的に変化する可変動弁機構
の切換作動完了油圧よりも高く設定した。
【0013】請求項のように、上記のバルブリフト特
性が連続的に変化する可変動弁機構は、例えばカムシャ
フトのクランクシャフトに対する位相を変化させるバル
ブタイミング調整機構であり、上記バルブリフト特性が
段階的に変化する可変動弁機構は、例えば低速型カムと
高速型カムのいずれか一方のリフトを吸排気弁に伝達す
るバルブリフト調整機構である。
【0014】
【作用】請求項1の構成では、各可変動弁機構のアクチ
ュエータ部へ油圧が供給されているときに、潤滑油圧が
何らかの原因で過度に低下すると、リターンスプリング
のばね力によってアクチュエータ部が初期状態に切り換
わり、制御信号に反してバルブリフト特性が変化するこ
とになるが、複数のアクチュエータ部でリターンスプリ
ングのばね力に対応する設定油圧が互いに異なるので、
油圧低下時に初期状態への切換が各可変動弁機構で順次
発生する。換言すれば、複数の可変動弁機構が油圧低下
に伴って一斉に切り換わることがなく、順次切り換わる
ため、トルク変化が緩和される。
【0015】また逆に運転条件変化に伴って油圧供給を
行う際にも、複数の油圧制御弁が同時にONとなって
も、各アクチュエータ部のリターンスプリングのばね力
に対応する設定油圧が互いに異なるので、実際のアクチ
ュエータ部の切換には多少の時間差が生じ、過渡的な油
圧低下が回避される。
【0016】特に発明では、油圧低下時に、まず始め
に、バルブリフト特性が連続的に変化する可変動弁機構
が切り換わり、次に、バルブリフト特性が段階的に変化
する可変動弁機構が切り換わる。バルブリフト特性が変
化すると、内燃機関の出力は低下するので、油圧低下が
油温の上昇に起因するものであれば、最初の可変動弁機
構の切換により油温が低下し、油圧が回復する可能性が
ある。このように油圧が回復すれば、バルブリフト特性
が段階的に変化する可変動弁機構の切換は回避される。
【0017】また請求項の発明では、前者のバルブリ
フト特性が連続的に変化する可変動弁機構の切換が完了
した後に、後者のバルブリフト特性が段階的に変化する
可変動弁機構の切換が開始するので、それぞれが明確に
隔てられる。
【0018】請求項のバルブタイミング調整機構は、
カムシャフトのクランクシャフトに対する位相を変化さ
せることにより、バルブリフト特性を連続的に変化させ
る。そして、バルブリフト調整機構は、低速型カムと高
速型カムのいずれか一方のリフトを選択的に吸排気弁に
伝達することにより、バルブリフト特性を段階的に変化
させる。
【0019】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。
【0020】図1は、吸気弁9側に可変動弁機構として
バルブリフト調整機構40とバルブタイミング調整機構
70とを設けた可変動弁装置の一実施例を示している。
【0021】まず、バルブリフト調整機構40について
説明する。図2,図3にも示すように、各気筒には一対
の吸気弁9に対応して一つのメインロッカアーム1が設
けられている。メインロッカアーム1の基端は各気筒に
共通なメインロッカシャフト3を介してシリンダヘッド
69に揺動自在に支持されている。メインロッカアーム
1の先端には各吸気弁9のステム頂部に当接するアジャ
ストスクリュ10がナット11を介して締結されてい
る。
【0022】メインロッカアーム1には、シャフト13
にニードルベアリングを介してローラ14が回転自在に
支持されており、このローラ14に低速型カム21が当
接するようになっている。
【0023】メインロッカアーム1は平面図上ほぼ矩形
に形成されており、ローラ14と並んで形成された開口
部にサブロッカアーム2が設けられている。このサブロ
ッカアーム2の基端はサブロッカシャフト16を介して
メインロッカアーム1に相対回転可能に連結されてい
る。サブロッカシャフト16はサブロッカアーム2に形
成された穴17に摺動可能に嵌合する一方、メインロッ
カアーム1に形成された穴18に圧入されている。
【0024】サブロッカアーム2は吸気弁9に当接する
部位を持たず、図3に示すように、その先端には高速型
カム22に摺接するカムフォロア部23が円弧状に突出
して形成され、その下側にはこのカムフォロア部23を
高速型カム22に押し付けるロストモーションスプリン
グ25が介装されている。
【0025】メインロッカアーム1にはサブロッカアー
ム2の直下に位置してロストモーションスプリング25
を支持する円柱状の凹部26が一体形成される。コイル
状のロストモーションスプリング25の下端は凹部26
の底面26aに着座し、その上端は凹部26に摺動自在
に嵌合するリテーナ27を介してサブロッカアーム2に
一体形成された凸部28に当接する。
【0026】低速型カム21と高速型カム22はそれぞ
れ共通のカムシャフト72に一体形成され、エンジンの
低回転時と高回転時において要求されるバルブリフト特
性を満足するように異なる形状(大きさが異なる相似形
も含む)に形成されている。この実施例では、図5に示
すように、高速型カム22は低速型カム21と比べ、バ
ルブリフト量と作動角(開弁期間)を共に大きくしたプ
ロフィールを有している。
【0027】両ロッカアーム1,2を適宜に連結させる
ために、メインロッカアーム1とサブロッカアーム2に
渡ってプランジャ33,31,34が摺動自在に嵌合さ
れている。アクチュエータ部となるプランジャ33の背
後には油圧通路43が接続されており、プランジャ34
の背後には、油圧に対抗して各プランジャ33,31,
34を初期位置へ向けて付勢するようにリターンスプリ
ング38が配設されている。
【0028】油圧通路43から導かれる作動油圧が低い
と、リターンスプリング38の付勢力によりプランジャ
33,31がサブロッカアーム2とメインロッカアーム
1にそれぞれ収まって両者の揺動を拘束しない。つま
り、両者が離脱状態となる。一方、油圧通路43から導
かれる作動油圧が上昇すると、プランジャ33,31が
リターンスプリング38を圧縮しながら摺動して、メイ
ンロッカアーム1とサブロッカアーム2に渡って嵌合す
ることにより両者が一体となって揺動する。
【0029】油圧通路43はメインロッカアーム1およ
びメインロッカシャフト3の内部を通して設けられてお
り、電磁切換弁45を介してオイルポンプ57の吐出油
圧が所定の高回転時にのみ導かれるようになっている。
【0030】次に、バルブタイミング調整機構70につ
いて説明する。バルブタイミング調整機構70は、カム
シャフト72とカムプーリ71の間に設けられ、運転条
件に応じて両者の位相を変化させ、吸気弁9の開閉時期
を変えるようになっている。カムプーリ71はタイミン
グベルト66を介してクランクシャフト(図示せず)か
らの回転力が伝達される。
【0031】図4にも示すように、カムシャフト72の
端部には筒形のインナハウジング65がボルト64を介
して固定されている。インナハウジング65の外周に回
転可能に嵌合する筒形のアウタハウジング63が設けら
れており、該アウタハウジング63にカムプーリ71が
一体形成されている。
【0032】インナハウジング65とアウタハウジング
63の間にはリング状のヘリカルギア73が介装されて
いる。ヘリカルギア73は、内外周にヘリカルスプライ
ンがそれぞれ形成されており、各ヘリカルスプラインが
インナハウジング65の外周とアウタハウジング63の
内周と噛合い、ヘリカルギア73が軸方向に移動する
と、アウタハウジング63に対してインナハウジング6
5が相対回転し、カムプーリ71に対するカムシャフト
72の位相が変化するようになっている。
【0033】アクチュエータ部となるインナハウジング
65とアウタハウジング63とヘリカルギア73の間に
は油圧室75が画成されている。また、この油圧室75
の油圧に対抗してヘリカルギア73を初期位置へ向けて
付勢するようにリターンスプリング74が配設されてい
る。そして、油圧室75に導かれる油圧力が所定値を越
えて上昇すると、ヘリカルギア73が初期位置からリタ
ーンスプリング74に抗して軸方向に移動することによ
り、カムシャフト72は吸気弁9の開閉時期を進角させ
る方向に回転するようになっている。
【0034】すなわち、ヘリカルギア73が初期位置に
あるときは、図5の上段および下段に示すように、吸気
弁9の開閉時期が相対的に遅く、またヘリカルギア73
が最大に変位したときは、図5の中段に示すように、吸
気弁9の開閉時期が相対的に早まる。
【0035】ここで、前述したバルブリフト調整機構4
0におけるアクチュエータ部のリターンスプリング38
のばね力に対応する設定油圧と、上記バルブタイミング
調整機構70におけるアクチュエータ部のリターンスプ
リング74のばね力に対応する設定油圧とは、互いに異
なっている。具体的には、図6に示すように、後者のバ
ルブタイミング調整機構70の設定油圧が、前者のバル
ブリフト調整機構40の設定油圧よりも高く設定されて
いる。
【0036】油圧室75には、カムシャフト72の内部
に形成された軸孔78と、シリンダヘッド69に形成さ
れたオイルギャラリ59と、オリフィス77と、シリン
ダブロック68に形成されたメインギャラリ58を介し
て、オイルポンプ57からの吐出油圧が導入される。
【0037】そして、この油圧を適宜に開放するため
に、カムシャフト72の他端に、エンジン運転条件に応
じて開閉制御される電磁切換弁79が設けられている。
電磁切換弁79は非通電時に図のように軸孔78を開い
て油圧室75に導かれる油圧を低下させ、通電時には軸
孔78を閉塞して油圧室75に導かれる油圧を高めるよ
うになっている。
【0038】バルブリフト調整機構40とバルブタイミ
ング調整機構70の制御手段として、電磁切換弁45と
電磁切換弁79の通電を制御するコントロールユニット
51が設けられている。
【0039】コントロールユニット51は、エンジン回
転信号、エンジン負荷信号をはじめ、冷却水温信号、過
給機による吸気の過給圧力信号、潤滑油温等が入力さ
れ、これらの検出値に基づいてエンジントルクの急激な
変動を抑えつつ、バルブリフト特性の切り換えを円滑に
行うようになっている。
【0040】次に、上記実施例の作用について説明す
る。
【0041】図5は、機関運転条件に対するバルブリフ
ト調整機構40とバルブタイミング調整機構70の制御
状態を示す説明図であり、図示するように、機関高速域
では、バルブリフト調整機構40が高速型カム22を選
択し、バルブタイミング調整機構70が開閉時期を遅れ
側に制御する。これによりバルブオーバラップが大とな
る。なお、バルブリフト調整機構40の電磁切換弁45
のONが高速型カム22に、OFFが低速型カム21に
それぞれ対応する。またバルブタイミング調整機構70
の電磁切換弁79のONが開閉時期の進み側に、OFF
が遅れ側に、それぞれ対応する。つまり、機関高速域で
は、電磁切換弁45がON、電磁切換弁79がOFFと
なる。
【0042】また機関低速域で、かつ高負荷側の領域で
は、電磁切換弁45がOFF、電磁切換弁79がONと
なり、低速型カム21で、かつ開閉時期が進み側とな
る。
【0043】さらに機関低速域で、かつ低負荷側の領域
では、両電磁切換弁45,79がOFFとなり、低速型
カム21で、かつ開閉時期が遅れ側となる。
【0044】このような電磁切換弁45,79のON,
OFF制御は、上記コントロールユニット51に予め与
えられた制御マップを参照して、機関運転条件つまり機
関の負荷と回転数とに基づいて行われる。なお、電磁切
換弁45と電磁切換弁79とは、それぞれ個別の制御マ
ップに基づいて制御されるので、図5の大まかな分類で
は、両者が同時にONとなることがないように示されて
いるが、実際には、そのON領域が一部で重複してお
り、両者が同時にONとなり得る。
【0045】電磁切換弁45と電磁切換弁79の双方が
ONとなっているとき、つまりバルブリフト調整機構4
0とバルブタイミング調整機構70の双方に油圧供給が
なされているときに、潤滑油温の上昇等により油圧が過
度に低下すると、各機構のアクチュエータ部となるプラ
ンジャ33,31,34およびヘリカルギア73は、そ
れぞれリターンスプリング38,74のばね力によって
初期位置に復帰するため、それぞれ初期状態である低速
型カム21側および遅角側に切り換わる。
【0046】ここで、この実施例においては、上述した
ように、バルブリフト調整機構40のリターンスプリン
グ38のばね力に対応する設定油圧と、バルブタイミン
グ調整機構70のリターンスプリング74のばね力に対
応する設定油圧とが、互いに異なり、後者の方が前者よ
りも高く設定されているので、潤滑油温の上昇等により
油圧が徐々に低下していくと、まず始めにバルブタイミ
ング調整機構70が初期状態に切り換わり、次にバルブ
リフト調整機構40が初期状態に切り換わる。すなわ
ち、2つの可変動弁機構つまりバルブタイミング調整機
構70とバルブリフト調整機構40とが同時に切り換わ
らずに、若干の時間差が与えられるので、トルク変動が
緩和される。
【0047】また前者のバルブタイミング調整機構70
が初期状態に戻ってバルブリフト特性が変化することに
伴って内燃機関の出力が抑制され、潤滑油のそれ以上の
油温上昇が防止される。さらには、潤滑油温の低下が促
進される。従って、油圧低下が油温上昇に起因している
場合には、バルブタイミング調整機構70が切り換わっ
た段階で油圧が回復する可能性があり、バルブリフト調
整機構40の初期状態への切換を回避できる可能性があ
る。特に、バルブリフト特性が連続的に変化するバルブ
タイミング調整機構70の方が先に切り換わるので、急
激なトルク変化を一層緩和でき、トルク変化が相対的に
大きいバルブリフト調整機構40の切換を極力回避する
ことができるのである。
【0048】また上記のようにリターンスプリング3
8,74のばね力に対応する設定油圧を異なる値に設定
すれば、運転条件の変化に伴って各電磁切換弁45,7
9が同時にOFFからONへ切り換わった際に、実際の
アクチュエータ部の切換が僅かに異なるタイミングで実
行されるようになり、両者に同時に油圧供給が開始され
ることによる過渡的な油圧低下を回避できる。
【0049】また図7は、各アクチュエータ部のリター
ンスプリング38,74のばね力の異なる設定例を示し
ている。すなわち、各アクチュエータ部は、実際にはそ
の設定油圧でもって瞬間的に切換が完了する訳ではな
く、例えば、リターンスプリング38の付勢力を受ける
プランジャ33,31,34は、油圧を上昇させていく
と、ある油圧(切換作動開始油圧)でもって移動を開始
し、かつある油圧(切換作動完了油圧)でもって完全に
切換が完了した位置まで動く。同様に、リターンスプリ
ング74の付勢力を受けるヘリカルギア73も、所定の
切換作動開始油圧で動き始め、かつ所定の切換作動完了
油圧でもって切換が完了する。この実施例では、上述し
たバルブリフト調整機構40とバルブタイミング調整機
構70の油圧変化に伴う切換時期を一層明確に異ならせ
るために、図7のように、バルブタイミング調整機構7
0の切換作動開始油圧を、バルブリフト調整切換40の
切換作動完了油圧よりも高く設定してある。従って、油
圧低下時には、バルブタイミング調整機構70が完全に
初期状態に切り換わった後に、バルブリフト調整機構4
0の切換が始まるようになり、急激なトルク変化を一層
確実に防止できる。
【0050】以上、この発明を、吸気側に2つの可変動
弁機構を備えた内燃機関に適用した場合の実施例につい
て説明したが、この発明は、さらに多数の可変動弁機構
を備えた内燃機関にも適用できる。なお、3つ以上の可
変動弁機構を備えている場合には、その中で、同一の運
転条件下で同時にON作動する可能性のあるものについ
てのみ、設定油圧を異ならせればよい。
【0051】また、この発明は、吸気側と排気側のそれ
ぞれに可変動弁機構を設けた場合にも同様に適用でき
る。この場合には、排気側可変動弁機構の設定油圧を吸
気側可変動弁機構の設定油圧よりも高く設定すれば、何
らかの原因による油圧低下時に、トルクへの影響が小さ
い排気弁側が先にOFF状態に切り換わるので、運転者
に与える違和感が小さくなる。
【0052】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
によれば、油温上昇等により潤滑油圧が過度に低下した
際に、複数の可変動弁機構が初期状態に一斉に切り換わ
ることがなく、順次切り換わるので、運転中の予期せぬ
トルク変化を緩和することができる。
【0053】また、運転条件の変化に伴って複数の可変
動弁機構が同時にON状態に切り換えられる場合に、実
際の油圧供給時期が僅かに異なるようになり、過渡的な
油圧低下を回避できる。
【0054】特に、発明によれば、油圧低下時に、バ
ルブリフト特性が連続的に変化する可変動弁機構が優先
的に切り換わり、バルブリフト特性が段階的に変化する
可変動弁機構が後から切り換わるので、トルク変化を一
層緩やかにできる。また出力の低下により、油圧が回復
する可能性があり、バルブリフト特性が段階的に変化す
る可変動弁機構の切換を極力回避できる。
【0055】また請求項の発明によれば、各可変動弁
機構の切換時期が一層明確に異なるようになり、大幅な
トルク変化を一層確実に防止できる。
【0056】特に、請求項3のように低速型カムと高速
型カムとの切換によりバルブリフト特性を変化させる機
構を具備するものでは、該機構の油圧低下に伴う切換を
極力回避することにより、急激なトルク変動を防止でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る可変動弁装置の一実施例を示す
構成説明図。
【図2】そのロッカアーム部分の拡大平面図。
【図3】同じくロッカアーム部分の断面図。
【図4】バルブタイミング調整機構の断面図。
【図5】この実施例のバルブリフト特性図。
【図6】機関回転数に対する油圧の特性と、リターンス
プリングのばね力に対応する設定油圧を示す特性図。
【図7】設定油圧の異なる例を示す特性図。
【符号の説明】
38…リターンスプリング 40…バルブリフト調整機構 45…電磁切換弁 51…コントロールユニット 70…バルブタイミング調整機構 74…リターンスプリング 79…電磁切換弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 信 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−43610(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F01L 13/00 301 F01L 1/34

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リターンスプリングを具備したアクチュ
    エータ部への油圧の供給,停止に応じて吸気弁あるいは
    排気弁のバルブリフト特性を連続的もしくは段階的に変
    化させる複数の可変動弁機構と、各可変動弁機構のアク
    チュエータ部への油圧供給をそれぞれ制御する複数の油
    圧制御弁と、機関運転条件に応じて各油圧制御弁へ制御
    信号を出力する制御手段と、を備えてなる内燃機関の可
    変動弁装置において、 複数の可変動弁機構の中で、同一の機関運転条件下で油
    圧供給されることがある複数の可変動弁機構について
    は、上記リターンスプリングのばね力に対応する設定油
    圧をそれぞれ異ならせ バルブリフト特性が連続的に変化する可変動弁機構の設
    定油圧を、バルブリフト特性が段階的に変化する可変動
    弁機構の設定油圧よりも高く設定した ことを特徴とする
    内燃機関の可変動弁装置。
  2. 【請求項2】 バルブリフト特性が連続的に変化する可
    変動弁機構の切換作動開始油圧を、バルブリフト特性が
    段階的に変化する可変動弁機構の切換作動完了油圧より
    も高く設定したことを特徴とする請求項記載の内燃機
    関の可変動弁装置。
  3. 【請求項3】 上記のバルブリフト特性が連続的に変化
    する可変動弁機構は、カムシャフトのクランクシャフト
    に対する位相を変化させるバルブタイミング調整機構で
    あり、上記バルブリフト特性が段階的に変化する可変動
    弁機構は、低速型カムと高速型カムのいずれか一方のリ
    フトを選択的に吸排気弁に伝達するバルブリフト調整機
    構であることを特徴とする請求項またはに記載の内
    燃機関の可変動弁装置。
  4. 【請求項4】 リターンスプリングを具備したアクチュ
    エータ部を備え、カムシャフトのクランクシャフトに対
    する位相を変化させることにより吸排気弁のバルブリフ
    ト特性が連続的に変化するバルブタイミング調整機構
    と、 同じくリターンスプリングを具備したアクチュエータ部
    を備え、低速型カムと高速型カムのいずれか一方のリフ
    トを選択的に吸排気弁に伝達することでバルブリフト特
    性が段階的に変化するバルブリフト調整機構と、 上記バルブタイミング調整機構のアクチュエータ部への
    油圧の供給,停止を制御するバルブタイミング調整機構
    用油圧制御弁と、 上記バルブリフト調整機構のアクチュエータ部への油圧
    の供給,停止を制御するバルブリフト調整機構用油圧制
    御弁と、 機関運転条件に応じて各油圧制御弁へ制御信号を出力す
    る制御手段と、 を備え、上記バルブタイミング調整機構と上記バルブタ
    イミング調整機構の双方へ同一の機関運転条件下で油圧
    供給されることがある内燃機関の可変動弁装置におい
    て、 上記バルブタイミング調整機構と上記バルブリフト調整
    機構とで、それぞれのアクチュエータ部におけるリター
    ンスプリングのばね力に対応する設定油圧を互いに異な
    らせたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
  5. 【請求項5】 リターンスプリングを具備したアクチュ
    エータ部を備え、該アクチュエータ部への油圧の供給,
    停止に応じて吸気弁のバルブリフト特性を連続的もしく
    は段階的に変化させる吸気弁側可変動弁機構と、 同じくリターンスプリングを具備したアクチュエータ部
    を備え、該アクチュエータ部への油圧の供給,停止に応
    じて排気弁のバルブリフト特性を連続的もしくは段階的
    に変化させる排気弁側可変動弁機構と、 各可変動弁機構のアクチュエータ部への油圧供給をそれ
    ぞれ制御する吸気弁側および排気弁側の油圧制御弁と、 機関運転条件に応じて各油圧制御弁へ制御信号を出力す
    る制御手段と、 を備え、上記吸気弁側可変動弁機構と上記排気弁側可変
    動弁機構の双方へ同一の機関運転条件下で油圧供給され
    ることがある内燃機関の可変動弁装置において、 上記吸気弁側可変動弁機構と上記排気弁側可変動弁機構
    とで、それぞれのアクチュエータ部におけるリターンス
    プリングのばね力に対応する設定油圧を互いに異なら
    せ、上記排気弁側可変動弁機構の設定油圧を、上記吸気
    弁側可変動弁機構の設定油圧よりも高く設定したことを
    特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
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