JP3517892B2 - 車両の振動低減装置 - Google Patents

車両の振動低減装置

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JP3517892B2 JP06449993A JP6449993A JP3517892B2 JP 3517892 B2 JP3517892 B2 JP 3517892B2 JP 06449993 A JP06449993 A JP 06449993A JP 6449993 A JP6449993 A JP 6449993A JP 3517892 B2 JP3517892 B2 JP 3517892B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両において生じる振
動を制御対象とするシステムを構成する車両の振動低減
装置に関し、特に、車両の特定の振動要素を別途備えた
アクチュエータにより車両振動とは逆位相で同振幅に加
振して車両振動を低減するようにしたものの改良に関す
る。なお、この発明では、振動とは車体の純然たる振動
のみならず騒音をも含むものとする。
【0002】
【従来の技術】従来、この種能動型の車両の振動低減装
置として、例えば特表平1-501344号公報に開示されてい
るように、車載エンジンで発生する振動に対応したリフ
ァレンス信号を発生させるリファレンス信号発生器と、
このリファレンス信号発生器で発生したリファレンス信
号に対し逆位相でかつ同振幅の制御信号(加振信号)を
生成する適応型フィルタと、この適応型フィルタで生成
された制御信号を受けた車体を加振するスピーカ等の振
動発生手段と、車体や車室内空気の振動を検出するマイ
クロフォン等の振動検出手段と、この振動検出手段によ
り検出される振動が低減されるよう上記適応型フィルタ
のフィルタ係数を逐次更新するLMS(Least Mean Squ
are Method(=最小二乗法))アルゴリズム演算手段と
を備えたものが知られている。
【0003】すなわち、上記リファレンス信号発生器に
おいて、エンジン振動に対応するイグニッションパルス
信号を検出し、このイグニッションパルス信号からデジ
タル信号としてのリファレンス信号を発生させる。この
リファレンス信号は適応型フィルタに入力され、この適
応型フィルタにおいてリファレンス信号のゲインや位相
等が調整されて、振動検出手段の配置位置でエンジン振
動と振動発生手段で発生した振動とが互いに打ち消し合
うような制御信号が生成され、この制御信号は振動発生
手段に出力されて該振動発生手段から上記振動が出力さ
れる。また、上記リファレンス信号はLMSアルゴリズ
ム演算手段にも入力され、この演算手段において、振動
検出手段から出力される信号のレベルが低くなるように
上記適応型フィルタのフィルタ係数を逐次更新して最適
化するようになっている。
【0004】このように従来の車両の振動低減装置で
は、振動検出手段の出力信号は適応型フィルタの係数を
最適化するために用いられるのであり、振動源(エンジ
ン)から生じる振動を低減させるための制御信号は、基
本的には、振動源の周期情報に基づき生成され適応型フ
ィルタに逐次入力されるリファレンス信号のみから生成
される。この点から従来の車両の振動低減装置は、いわ
ゆるフィードフォワード的な制御を行っているといえ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来の
車両の振動低減装置では、適応型フィルタの係数を逐次
更新するために、短時間に膨大な計算量をこなす必要が
ある。特に、振動源から生じる振動の全ての成分を制御
対象とするときには、フィルタ係数の更新のための演算
量が著しく増加するので、従来の車両の振動低減装置に
一般的に搭載されるようなプロセッサ等の演算処理能力
では、そのような多大な演算量を短時間でこなすことは
不可能となる。このため、従来の車両の振動低減装置に
おいては、振動源から生じる周期性振動の特定の振動成
分のみを制御対象とするのが一般的である。
【0006】このように従来の車両の振動低減装置で
は、振動源から生じる周期性振動の特定の振動成分のみ
を制御対象とすることが多いが、一般に車両において生
じる振動はエンジンを振動源として発生する周期性振動
が支配的であり、その中でも特定の振動成分(例えばエ
ンジン回転数の2倍の周期をもつ2次成分)が他の振動
成分に比較して大きなレベルを有することが知られてお
り、このような振動成分を制御対象とすれば振動低減を
良好に行うことが可能となる。また、フィードフォワー
ド的な制御を行う従来の車両の振動低減装置は、対象と
する振動の周波数の変化等に対する追従性に優れ、制御
の応答性がよいという特長を備えている。
【0007】しかし、上記従来の車両の振動低減装置に
より常に良好な振動低減効果が得られるとは限らない。
車両において生じる振動は、車両の運転状況、外乱の性
質、システムを構成するパラメータの状態などのシステ
ムがおかれている環境に大きく影響を受けることが多
い。例えば、車室内において生じる騒音(空気の振動)
の状態をみると、車両がある運転状態にあるときには、
エンジン振動の特定の振動成分が存在する特定の周波数
帯域の騒音レベルが他の周波数帯域の騒音レベルに比べ
て特に大きくなるが、車両の運転状態が変わると、外乱
の性質が変化するなどして、騒音レベルが略全周波数帯
域で一様に大きくなることがある。
【0008】このような騒音を低減の対象とする場合、
上記従来の車両の振動低減装置では、エンジン振動の特
定の振動成分が存在する特定の周波数帯域の騒音レベル
が他の周波数帯域の騒音レベルよりも大きいときには、
前述のようにこの特定の振動成分を制御対象とすること
により良好な騒音低減効果を奏することが可能なもの
の、騒音レベルが略全周波数帯域で一様に大きくなると
きには、良好な騒音低減効果を奏することができなかっ
た。
【0009】このような従来の車両の振動低減装置にお
ける問題点は、従来の車両の振動低減装置では、適応型
フィルタの係数更新のための演算量が膨大となるため、
車両において振動源から生じる周期性振動の特定の振動
成分しか制御対象とすることができないことに起因して
いる。そこで、演算量を低減でき、車両において生じる
振動の全体を制御対象とすることの可能な車両の振動低
減装置の実現が要望されていた。
【0010】本出願人は先に、上記従来の車両振動低減
装置のように逐次生成されるリファレンス信号に基づい
て制御信号を生成するというフィードフォワード的な制
御方式とは異なり、振動検出手段が検出した信号に基づ
いて制御信号を直接的に生成するというフィードバック
的な制御方式による車両の振動低減装置を提案している
(特願平4-32217号等)。
【0011】この車両の振動低減装置は、エンジン振動
の周期を検出し、エンジン振動の振動エネルギーを低減
させるスピーカ等の振動発生手段と、車体や車室内空気
の振動を検出するマイクロフォン等の振動検出手段と、
振動発生手段での振動エネルギーを設定する設定手段と
を備え、この設定手段の出力を振動検出手段の出力信
号、および振動検出手段と振動発生手段との間の伝達特
性に基づいて補正して振動発生手段に出力するようにす
ることにより、振動発生手段に出力される出力信号(制
御信号)を直接、逐次的に最適化して振動の低減を図る
ものである。この制御方式によれば、振動検出手段が検
出した信号に基づき直接的に制御信号を生成するので、
車両において生じる振動の全体を制御対象としても演算
量が膨大とならず、振動検出手段が検出した振動を全体
的に低減することができる。
【0012】また、最適制御理論による最適フィードバ
ック系の設計手法を、車両の振動低減装置に適用するこ
とも考えられる。従来、最適制御理論として一般的であ
ったLQG(Linear Quadratic Gaussian)制御理論
は、ある理想化された条件下のみでしか最適性を保証し
ないため、このLQG理論により最適フィードバック制
御方式の車両の振動低減装置を設計することは実用的で
はなかった。近年、LQG理論にかわる新しい制御理論
としてH∞ 制御理論が注目されている(木村英紀:L
QGからH∞へ、計測と制御、Vol.29,No.2,PP.111/1
19,1990年2月等)。このH∞制御理論に基づき設計さ
れた最適フィードバック制御系はロバスト安定性が高く
実用的なため、H∞制御理論により最適フィードバック
方式の車両の振動低減装置を設計し、これを用いること
により、上述した本出願人提案によるフィードバック方
式の車両の振動低減装置と同様、車両において生じる振
動の全体を制御対象としても演算量が膨大とならず、振
動検出した振動を全体的に低減することが可能となる。
【0013】しかし、これらのフィードバック的な制御
方式は、制御対象とする振動が定常状態にあるときには
良好な振動低減効果を奏するものの、車両の運転状態等
の変化に伴い制御対象とする振動が過渡的に変化するよ
うな状態では、追従性が悪く応答性が低下するため、良
好な振動低減効果を奏することができないという問題が
ある。
【0014】上述のようにこれまでの車両の振動低減装
置は、車両において生じる振動が特定の状態にあるとき
には良好な振動低減効果を奏するものの、システムの環
境が変化して振動状態が変わると良好な振動低減効果を
奏することができなかった。そこで、システムの環境の
状態が様々に変化する場合においても、そのときの環境
の状態に応じた良好な振動低減効果を奏することの可能
な車両の振動低減装置の実現が要請される。
【0015】本発明は上記事情に鑑みなされたものであ
り、その目的は、システムの環境の状態に応じて常に良
好に振動低減を行うことの可能な車両の振動低減装置を
提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明では、上記した2つの方式、つまりリファレ
ンス信号に基づいて制御信号を生成するフィードフォワ
ード的な制御方式と、マイクロフォン等で検出した振動
に基づいてそれが低減されるようにスピーカ等から振動
を発生させるフィードバック的な制御方式とを、それぞ
れの特長を生かして併用するようにした。
【0017】具体的には、請求項1の発明では、図1に
示すように、車両において周期性振動を生じる振動源の
周期情報に基づくリファレンス信号rを発生するリファ
レンス信号発生手段18と、車体の所定位置での振動を検
出するマイクロフォン等の振動検出手段10と、振動を発
生するスピーカやアクチュエータ等の振動発生手段11
と、前記リファレンス信号発生手段18および振動検出手
段10の各出力信号を受け、振動検出手段10により検出さ
れる振動が低減されるようにリファレンス信号発生手段
18からのリファレンス信号rを加工して第1制御信号s
1を生成し上記振動発生手段11に出力する第1演算手段
28とを設ける。
【0018】また、上記振動検出手段10の出力信号を受
け、この出力信号に基づき第2制御信号s2を振動発生
手段11に出力する第2演算手段29を設ける。
【0019】そして、上記第1演算手段28を、前記振動
検出手段10により検出された振動のうち前記振動源から
生じる周期性振動の特定の振動成分のみを制御対象とす
るように構成すると共に、前記第2演算手段29を前記振
動検出手段10により検出された振動の全体を制御対象と
するように構成する。
【0020】また、請求項2の発明では、請求項1の発
明と同じく図1に示すように、リファレンス信号発生手
段18、振動検出手段10、振動発生手段11、第1演算手段
28、および第2演算手段29を設ける。
【0021】そして、前記第1演算手段28を、前記振動
検出手段10により検出された振動のうち特定の周波数帯
域にあるものを制御対象とするように構成すると共に、
前記第2演算手段29を、前記振動検出手段10により検出
された振動のうち前記特定の周波数帯域外にあるものを
制御対象とするように構成する。
【0022】また、請求項1及び2の発明では、図2に
示すように、前記の発明の構成に加えて、構成するシス
テムの所定の環境がどのような状態であるかを検出する
環境状態検出手段45と、この環境状態検出手段45の出力
を受け、検出された前記所定の環境の状態に応じて前記
第2演算手段のゲインを変更する調整手段46とを設け
る。
【0023】上記「システム」とは、制御対象(車両に
おいて生じる振動)、制御装置(振動低減装置)などの
要素を系統的に組合わせてなる制御系をいう。上記制御
対象および制御装置以外に上記システムを構成する要素
には、振動源、振動の伝達系路となる車体などが含まれ
る。
【0024】上記「環境」とは、制御目標値、外乱の性
質や状況、システムを構成するパラメータの状況などシ
ステムの特性になんらかの影響を与えるシステム内部お
よびシステム周囲の状況をいう。所定の環境として具体
的には、車両において生じる所定の振動の状況、車両の
運転状況、演算手段の作動状況や演算状況、路面状況お
よび気象状況等を挙げることができる
【0025】さらに、請求項1及び2の発明では、前
環境状態検出手段45を、前記所定の環境が、前記車両に
おいて生じる振動が略全周波数帯域で増大するという振
動全域悪化環境状態であるか否かを検出するように構成
し、前記選択手段46を、前記環境状態検出手段45により
前記所定の環境条件が前記振動全域悪化環境状態である
ことが検出されたときには前記第2演算手段29のゲイン
を大きくするように構成する
【0026】請求項の発明では、請求項2の発明にお
ける前記特定の周波数帯域を、低周波数帯域とする。
【0027】請求項の発明では、請求項2の発明にお
ける前記特定の周波数帯域を、前記振動検出手段10によ
り検出された振動のうち前記振動源から生じる周期性振
動の特定の振動成分が存在する、該特定の振動成分の周
波数の変化に伴って変動する周波数帯域とする。
【0028】
【作用】以上の構成により、請求項1の発明では、車両
の振動源により振動が生じると、その周期情報に基づく
リファレンス信号rがリファレンス信号発生手段18によ
り発生するとともに、車体の所定位置での振動が振動検
出手段10により検出される。上記リファレンス信号発生
手段18および振動検出手段10の各出力信号を受けた第1
演算手段28により、振動検出手段10で検出される振動の
うち特定の振動成分が低減されるように上記リファレン
ス信号rが加工されて第1制御信号s1が生成される。
この第1演算手段28の第1制御信号s1は振動発生手段
11に出力されて該振動発生手段11により振動が発生し、
この振動と車両の振動源の振動のうち特定の振動成分の
振動とが互いに打ち消し合い、このことで振動検出手段
10により検出される車体所定位置での振動のうち特定の
振動成分が低減され、車両振動の低減効果が得られる。
【0029】一方、上記振動検出手段10の出力信号は、
第2演算手段29にも入力され、この出力信号を受けた第
2演算手段29により、振動検出手段10で検出された振動
の全体が低減されるように第2制御信号s2が生成され
る。この第2演算手段29の2制御信号s2は振動発生手
段11に出力されて該振動発生手段11により振動が発生
し、この振動と車両の所定位置での振動とが互いに打ち
消し合い、このことで振動検出手段10により検出される
振動の全体が低減され、車両振動の低減効果が得られ
る。
【0030】このように制御対象振動の変化に対する応
答性には優れるが、演算量が膨大となるので多くの振動
成分を対象とすることが困難な第1演算手段28の制御対
象を、振動源からの周期性振動のうち特定の振動成分に
限定する一方、演算量が少なく多くの振動成分を制御対
象とできる第2演算手段29の制御対象を、振動検出手段
11の検出した振動全体とすることにより、第1および第
2演算手段28,29のそれぞれの特長を生かしながら両者
を併用しているので、システムの様々な環境の変化に対
応して常に良好な振動低減を行うことが可能となる。
【0031】また、請求項2の発明では、車両の振動源
により振動が生じると、その周期情報に基づくリファレ
ンス信号rがリファレンス信号発生手段18により発生す
るとともに、車体の所定位置での振動が振動検出手段10
により検出される。上記リファレンス信号発生手段18お
よび振動検出手段10の各出力信号を受けた第1演算手段
28により、振動検出手段10で検出される振動のうち特定
の周波数帯域にあるものが低減されるように上記リファ
レンス信号rが加工されて第1制御信号s1が生成され
る。この第1演算手段28の第1制御信号s1は振動発生
手段11に出力されて該振動発生手段11により振動が発生
し、この振動と車両の振動源の振動のうち特定の周波数
帯域内の振動とが互いに打ち消し合い、このことで振動
検出手段10により検出される車体所定位置での振動のう
ち特定の周波数帯域内の振動が低減され、車両振動の低
減効果が得られる。
【0032】一方、上記振動検出手段10の出力信号は、
第2演算手段29にも入力され、この出力信号を受けた第
2演算手段29により、振動検出手段10で検出された振動
の全体が低減されるように第2制御信号s2が生成され
る。この第2演算手段29の2制御信号s2は振動発生手
段11に出力されて該振動発生手段11により上記特定の周
波数帯域外の振動を低減する振動が発生し、この振動と
車両の所定位置での振動とが互いに打ち消し合い、この
ことで振動検出手段10により検出される振動のうち上記
特定の周波数帯域外の振動が低減し、車両振動の低減効
果が得られる。
【0033】このように制御対象振動の変化に対する応
答性には優れるが、演算量が膨大となるので多くの振動
成分を対象とすることが困難な第1演算手段28の制御対
象を、振動検出手段11の検出した振動のうち特定の周波
数帯域に限定する一方、演算量が少なく多くの振動成分
を制御対象とできる第2演算手段29の制御対象を、振動
検出手段11の検出した振動のうち上記特定の周波数帯域
外にあるものとすることにより、第1および第2演算手
段28,29のそれぞれの特長を生かしながら両者を併用し
ているので、システムの様々な環境の変化に対応して常
に良好な振動低減を行うことが可能となる。
【0034】さらに、請求項1及び2の発明では、環境
状態検出手段45によりシステムの所定の環境がどのよう
な状態であるかが検出され、この環境状態検出手段45の
出力信号を受けた調整手段46により、上記所定の環境の
状態に応じて第2演算手段29のゲインが変更される。
【0035】システムの環境の変化により、第1演算手
段28による振動低減の方が効果的な場合と、第2演算手
段29による振動低減の方が効果的な場合とがある。第2
演算手段29による振動低減があまり効果的でない場合に
は、第2演算手段29のゲインを小さくしてもトータル的
な振動低減効果はさほど影響を受けず、またゲインを小
さくした分エネルギ消費量を低減することができるので
効率的といえる。一方、第2演算手段29による振動低減
が効果的な場合には、第2演算手段29のゲインを大きく
することにより、効率よく振動低減を図れることにな
る。したがって、このようにシステムの所定の環境の状
態に応じて第2演算手段29のゲインを変更するようにす
ることにより、より効率よく車両の振動低減を行うこと
が可能となる
【0036】また、請求項1及び2の発明では、環境状
態検出手段45が、車両において生じる振動が略全周波数
帯域で増大するという振動全域悪化環境状態を検出した
ときには、調整手段46により、第2演算手段29のゲイン
が大きくされる。車両において生じる振動が略全周波数
帯域で増大するときには、第1演算手段28で特定の振動
成分あるいは特定の周波数帯域内の振動のみを低減する
よりも、第2演算手段29でより全体的に振動を低減した
方が効率よく振動低減効果が得られる。したがって、そ
のような環境の状態下では、第2演算手段29のゲインを
通常よりも大きくして、第2演算手段29による振動低減
の割合を高めることにより、効率的で良好な振動低減が
図れることとなる
【0037】請求項の発明では、振動検出手段11によ
り検出された振動のうち低周波数帯域にあるものが第1
演算手段28の制御対象とされ、低周波数帯域外(高周波
数帯域)にあるものが第2演算手段29の制御対象とされ
る。低周波数帯域の振動は特定の振動成分が特に大きい
振動レベルを有することが多く、また高周波数帯域の振
動は全体的に振動レベルが大きいことが多い。したがっ
て、特定の振動成分を制御対象としやすい第1演算手段
28の制御対象を低周波数帯域の振動に、振動全体を制御
対象としやすい第2演算手段29の制御対象を低周波数帯
域外の振動とすることにより、効率よく振動低減を図れ
ることとなる。
【0038】請求項の発明では、振動検出手段11によ
り検出された振動のうち振動源から生じる周期性振動の
特定の振動成分が存在する、この特定の振動成分の周波
数の変化に伴って変動する周波数帯域内の振動が、第1
演算手段28の制御対象とされ、それ以外の周波数帯域内
の振動が第2演算手段29の制御対象とされる。周波数帯
域を変動させることにより、第1演算手段28により特定
の振動成分をその周波数の変化に追従して低減すること
が可能となるので、振動レベルの大きい特定の振動成分
を第1演算手段28の制御対象とすることにより、応答性
を確保しつつ効率よく振動低減を行うことが可能とな
る。
【0039】
【実施例】以下、本発明の参考例及び実施例を図3以下
の各図に基づいて説明する。図3は本発明の第1参考
に係る車両の振動低減装置の全体構成を示す概略図であ
る。図3において、1は車両の車体で、その前部にはエ
ンジンルーム2が、また前後中央部には車室3がそれぞ
れ設けられている。4は上記エンジンルーム2内に配置
された振動源たるエンジンであって、該エンジン4はそ
の下部を弾性支持するマウント(図示せず)を介して車
体1に弾性支持されている。図2中、5は車室3内前部
に位置するステアリングホイール、6は前席、7は後席
である。
【0040】上記車室3前端のインストルメントパネル
8内にはエンジン4の運転を制御するためのエンジンコ
ントロールユニット9が配置されている。また、車室3
内の所定位置には、複数のマイクロフォン10,10,……
および複数のスピーカ11,11,……がそれぞれ配置され
ている(なお、以下の説明では、簡単のためにマイクロ
フォン10およびスピーカ11をそれぞれ1つとした場合に
ついて説明する)。上記各マイクロフォン10は車室3内
の所定位置での振動を検出する振動検出手段を構成する
もので、例えば前席6のヘッドレスト部や後席7側方
等、乗員の体感上や聴感上重要な位置に配置される。一
方、各スピーカ11は車室3内に振動を発生する振動発生
手段を構成するもので、車室3内の空気を加振する。
【0041】上記各マイクロフォン10の出力信号はコン
トローラ16に入力されており、コントローラ16により、
基本的に、後述するリファレンス信号rおよび上記マイ
クロフォン10で検出される振動信号mに基づき上記各ス
ピーカ11を制御して車両の振動を低減するように構成さ
れている。
【0042】上記コントローラ16の構成を図4に示す。
同図において、17はエンジン4での混合気の点火信号に
基づいてエンジン回転の周期を測定して周期信号tを出
力するエンジン回転周期測定回路、18は該周期測定回路
17にて測定されたエンジン回転の周期に基づいてエンジ
ン4の振動に関連するリファレンス信号rを発生するリ
ファレンス信号発生器である。また、19は上記各マイク
ロフォン10からの振動信号を設定ゲインで増幅する増幅
器、20は該増幅器19で増幅された振動信号の低周波成分
を濾波するローパスフィルタ、21は該ローパスフィルタ
20で濾波されたアナログ値の振動信号をデジタル値の信
号mに変換するA/D変換器である。22は上記エンジン
回転周期測定回路17からの周期信号t、リファレンス信
号発生器18からのリファレンス信号rおよびA/D変換
器21からの振動信号mが入力される制御演算部で、この
制御演算部22は、各マイクロフォン10により検出される
振動を低減させるように上記スピーカ11を駆動制御する
制御信号s(スピーカ信号)を生成する。
【0043】また、23は上記制御演算部22にて生成され
る制御信号sをデジタル値からアナログ値に変換するD
/A変換器、24は該D/A変換器23からの制御信号の低
周波成分を濾波するローパスフィルタ、25は該ローパス
フィルタ24で濾波された制御信号を設定ゲインで増幅す
る増幅器であって、該増幅器25で増幅された制御信号は
スピーカ11に出力される。
【0044】さらに、26は上記エンジンコントロールユ
ニット9での所定信号に基づいてアクセル開度aを測定
するアクセル開度測定回路、27は同様に車速bを測定す
る車速測定回路であり、これら測定回路26,27の各々の
出力信号は制御演算部22に入力されている。
【0045】上記制御演算部22の内部構成を図5に示
す。図5において、28は第1演算部、29は第2演算部
で、55は上記マイクロフォン10からの振動信号mを低周
波成分m1と高周波成分m2とに分離する濾波部であ
る。この濾波部55は、マイクロフォン10からの振動信号
mの低周波成分m1を濾波するローパスフィルタ56と、
高周波成分m2を濾波するハイパスフィルタ57とから構
成されている。上記第1演算部28には上記リファレンス
信号発生器18からのリファレンス信号rおよびマイクロ
フォン10からの振動信号mの低周波成分m1が入力され
ており、ここで、マイクロフォン10により検出される振
動のうち低周波数帯域にあるものが低減されるようにリ
ファレンス信号rを加工して第1制御信号s1を生成
し、その第1制御信号s1を上記スピーカ11に出力する
ようになっている。そして、第1演算部28は、その第1
制御信号s1の生成のアルゴリズムとしてLMSの適応
アルゴリズムが用いられる。
【0046】具体的には、図6に示すように、第1演算
部28はデジタルフィルタ31を有するる。このフィルタ31
は、制御演算部22から第1制御信号s1を出力した後に
該第1制御信号s1によりスピーカ11が駆動制御されて
車両振動に変化があり、この車両振動の変化がマイクロ
フォン10で検出されてその検出信号が制御演算部22に入
力されるまでの伝達関数Hをモデル化したものである。
32は収束係数乗算回路で、該乗算回路32は所定の収束係
数αに基づいて各マイクロフォン10からの信号m1に収
束係数を掛算する。33は上記デジタルフィルタ31の伝達
関数Hの出力と収束係数乗算回路32の出力とを乗算する
乗算器、34は適応フィルタで、上記乗算器33の出力毎に
その出力値に基づいてフィルタ係数を逐次更新し、その
更新後のフィルタ係数に基づいてリファレンス信号rを
加工し、エンジン振動とは逆位相で同振幅の第1制御信
号s1を各スピーカ11に出力する。
【0047】一方、上記第2演算部29には、上記マイク
ロフォン10からの振動信号mの高周波成分m2およびエ
ンジン回転周期測定回路17からの周期信号tが入力され
ており、ここでスピーカ11の振動エネルギーを設定する
とともに、この振動エネルギーを上記マイクロフォン10
の出力信号m2、および該マイクロフォン10とスピーカ
11との間の伝達特性に基づいて補正し、第2制御信号s
2としてスピーカ11に出力するようになっている。
【0048】具体的には、第2演算部29は、図7に示す
ように、エンジン回転周期測定回路17からの周期信号t
に基づいてスピーカ11への出力信号のベクトル周期を調
整する回路36と、マイクロフォン10とスピーカ11との間
の伝達特性であるインパルス応答の行列を時系列に変換
する回路37と、この回路37からのインパルス反応の時系
列とマイクロフォン10から出力される振動信号mの高周
波成分m2とで上記ベクトルを逐次最適化する回路38
と、この回路38からのベクトル信号を時系列に変換して
第2制御信号s2(スピーカ信号)を作る回路39とを有
している。
【0049】再び、図4において、41は上記エンジン回
転周期測定回路17からの周期信号t、アクセル開度測定
回路26からのアクセル開度信号aおよび車速測定回路27
からの車速信号bに基づいて車両(エンジン4)の運転
状態を判定する加減速/定速判定器、42は該判定器41か
らの出力信号を共に上記第2演算部29のゲインを変更す
るゲイン調整器である。
【0050】この第1参考例では、上記エンジン回転周
期測定回路17、アクセル開度測定回路26、車速測定回路
27および加減速/定速判定器41により環境状態検出手段
45(図2参照)が構成され、この環境状態検出手段45
は、車両の運転状況がどのような状態であるかを、詳し
くは車両が加減速状態にあるか定速走行状態にあるかを
検出するように構成されている。また、上記ゲイン調整
器42により、調整手段46が構成されている。
【0051】ここで、上記コントローラ16において行わ
れる信号処理動作のうち第2演算部28のフィードバック
ゲインGの変更調整のための動作について図8のフロー
チャートに基づいて説明する。まず、スタート後のステ
ップS1において、エンジン回転周期測定回路17からの
周期信号tにより時刻nでのエンジン回転周期t(n)
を入力し、ステップS2では、加減速/定速判定器41に
おいて今回の時刻nでのエンジン回転周期t(n)と前
回の時刻(n−1)でのエンジン回転周期t(n−1)
との差の絶対値によりエンシン回転周期の変化値Δt=
|t(n)−t(n−1)|を算出する。次のステップ
S3で上記変化値Δtのその閾値Ltとの大小を比較
し、この判定がLt≦ΔtのNOのときには、エンジン
4の回転変化が大きくて車両は加速状態または減速状態
にあると判定し、ステップS4カウンタkを初期値Kに
設定し、ステップS5で第2演算部29のフィードバック
ゲインGを基準値G0に設定した後、終了する。
【0052】一方、上記ステップS3でLt>ΔtのY
ESと判定されると、ステップS6で上記カウンタkが
k=0になったかどうかを判定し、この判定がk>0の
YESのときには、ステップS7でカウンタkから
「1」を引いてk=k−1とした後、上記ステップS5
に進む。
【0053】以上の繰返しにより、上記ステップS6の
判定がk=0のNOになると、ステップS8で第2演算
部29のフィードバックゲインGを基準値G0よりも大き
い値G0×α(α>1)に変更した後、終了する。
【0054】よって、この第1参考例では、上記制御動
作のステップS1〜S3により、エンジン回転周期の変
化値Δtに基づいて車両の運転状態としての加減速の有
無を検出するようにした環境状態検出手段45の動作が示
されている。
【0055】また、ステップS4〜S8により、上記環
境状態検出手段45の出力を受け、検出された車両の運転
状態に応じてすなわち車両の加速時または減速時が検出
されたときには第2演算部29のフィードバックゲインG
を基準値G0に設定し、車両の定常走行状態が検出され
たときには、検出時からカウンタkがk=K(初期値)
からk=0になるまでの所定時間Tが経過した後に、第
2演算部29のフィードバックゲインGを基準値G0より
も大きい値G0×αに変更するようにした調整手段46の
動作が示されている。
【0056】次に、この第1参考例の作用について説明
する。車両の運転中は基本的に、エンジン4の点火信号
がコントローラ16に入力されると、そのエンジン回転周
期測定回路17でエンジン回転周期が測定される。また、
リファレンス信号発生器18でエンジン振動に対応するリ
ファレンス信号rが発生し、上記エンジン回転周期の信
号tおよびリファレンス信号rは制御演算部22に出力さ
れる。さらに、車室3内の各マイクロフォン10により車
室3の所定位置での振動が検出され、この各マイクロフ
ォン10の出力信号mも制御演算部22に入力される。制御
演算部22では、各マイクロフォン10により検出される振
動を低減させるための制御信号sが生成され、この制御
信号sは各スピーカ11に出力されて該スピーカ11により
振動が発生され、このスピーカ11からの振動と上記エン
ジン振動とが互いに打ち消し合い、このことで車室3内
の所定位置で各マイクロフォン10により検出される振動
が低減される。詳しくは、各マイクロフォン10の出力信
号mは低周波成分m1と高周波成分m2とに分けられ、
低周波成分m1は第1演算部28に、高周波成分m2は第
2演算部29にそれぞれ入力され、第1演算部28はマイク
ロフォン10が検出した振動のうち低周波数帯域にあるも
のが低減するように第1制御信号s1を生成して出力
し、第2演算部29はマイクロフォン10が検出した振動の
うち高周波数帯域にあるものが低減するように第2制御
信号s2を生成して出力する。
【0057】そして、上記コントローラ16では、図9に
示す如く、加減速/定速判定器41においてエンジン回転
周期測定回路17にて測定されたエンジン回転周期の変化
値Δtが閾値Ltと比較されて車両の運転状態が検出さ
れ、この車両の運転状態に応じて制御演算部22の第2演
算部29のフィードバックゲインGの大きさが調整され
る。すなわち、エンジン回転周期の変化値Δtが閾値L
t以上で車両が加速状態または減速状態にあると判定さ
れると、第2演算部29のフィードバックゲインGが基準
値G0に設定される。この状態では、上記リファレンス
信号発生器18およびマイクロフォン10の各出力信号を受
けた第1演算部28により、マイクロフォン10で検出され
る振動のうち低周波数帯域にあるものが低減されるよう
にリファレンス信号rが加工されて第1制御信号s1が
生成され、第2演算部29により、マイクロフォン10で検
出される振動のうち高周波数帯域にあるものが低減され
るように、各スピーカ11への振動エネルギーが設定さ
れ、このスピーカ11への出力信号s2は各マイクロフォ
ン10の出力信号m1、該マイクロフォン10と各スピーカ
11との伝達特性、および基準値G0に設定されたフィー
ドバックゲインGに基づいて補正されて第2制御信号s
2が生成される。この第1および第2演算部28,29から
の制御信号s1,s2はスピーカ11に出力されて該スピ
ーカ11により振動が発生し、この振動とエンジン振動と
が互いに打ち消し合い、このことでマイクロフォン10に
より検出される車室3内の所定位置での振動が低減さ
れ、車両振動の低減効果が得られる。
【0058】このように車両が加減速状態にあって車室
3内の振動が非定常状態にあると判断され、制御の応答
性が重視されるときには制御の応答性の低い第2演算部
29のフィードバックゲインGが基準値G0すなわち低め
に設定され、マイクロフォン10が検出した振動のうち低
周波数帯域にあるものを制御対象として、制御の応答性
の高い第1演算部28が主として作動するので、車室3内
の低周波数帯域にある振動の状態の変化に伴う制御の応
答性を確保しつつ、良好に振動低減を図ることができ
る。
【0059】これに対し、エンジン回転周期の変化値Δ
tが閾値Ltよりも小さく、車両が定速走行状態にある
と検出されると、その検出時からカウンタkが初期値K
から「0」になって所定時間Tが経過するまでは、第2
演算部29のフィードバックゲインGがそのまま基準値G
0に設定されるが、所定時間Tの経過後、第2演算部29
のフィードバックゲインGが基準値G0よりも大きい値
0×αに変更される。
【0060】このように車両が定常走行状態にあって車
室3内の振動が定常状態にあると判断され、制御の応答
性が重視されないときは、第2演算部29のフィードバッ
クゲインGが大きい値に変更されるため、演算量の増加
を招くことなく車室3内の振動の全体を良好に低減する
ことができる。
【0061】したがって、この第1参考例では、システ
ムの所定の環境の状態としての車両の運転状態に応じて
第2演算部29のフィードバックゲインGの大きさを調整
して作動させるので、車両の運転状態に応じて第1およ
び第2演算部28,29の長所をいかして良好な振動低減を
行うことができる。
【0062】また、車両の定常走行状態が検出されたと
き、その検出時から所定時間Tが経過した後に第2演算
部29のフィードバックゲインGの大きさの変更調整が行
われるため、車両の定常走行状態への移行後に暫くの間
はエンジン回転の変化による運転状態の変動が残ってい
ても、それが安定するまでは主として第1演算部28が作
動することとなり、その間の制御の応答性を維持して制
御性能を向上できる。
【0063】なお、この第1参考例では、車両が定速走
行状態にあるときの車両の運転状態を、制御対象とする
車室3内の振動が定常状態になるという振動定常環境状
態として検出し、これにより第2演算部29のフィードバ
ックゲインGの大きさの変更調整を行っているともいえ
る。
【0064】次に、制御対象とする車室3内の振動の状
態が定常状態であるか否かを、車両において生じる所定
の振動の状況がどのような状態であるかを検出すること
により検出するようにした、本発明の第2参考例を説明
する。
【0065】図10は本発明の第2参考例に係る車両の振
動低減装置の全体構成を示す概略図である。なお、この
第2参考例を示す各図において前記第1参考例と同様の
要素を示すものについては、前記第1参考例を示す各図
における符番と同一の符番を付し、その詳細な説明は省
略する。このことは、以下の他の参考例及び実施例につ
いても同様とする。
【0066】図10は前記第1参考例の図3に対応する図
で、異なるのは、車室フロアの振動を検出するフロア振
動検出器50が車室3のフロアパネルに取り付けられ、こ
のフロア振動検出器50の検出信号がコントローラ16に入
力されている点にある。すなわち、前記第1参考例では
エンジンコントロールユニット9での所定信号に基づき
車両運転状態(加減速/定速状態)を検出し、この検出
に基づき第2演算部29のフィードバックゲインGの大き
さの変更調整を行っていたのに対し、この第2参考例で
は、フロア振動検出器50の検出信号に基づき車両におい
て生じる所定の振動(フロア振動)の状態を検出し、そ
の検出に基づき第2演算部29のフィードバックゲインG
の大きさの変更調整を行う。
【0067】上記コントローラ16の構成を図11に示す。
図11は前記第1参考例の図4に対応する図で、異なるの
は、制御演算部22に、直接フロア振動検出器50からの検
出信号pが入力されている点にあり、他の構成は前記第
参考例と同様である。
【0068】この制御演算部22の内部構成を図12に示
す。図12は前記第1参考例の図4と対応する図で、異な
るのは、フロア振動検出器50からの検出信号pに基づ
き、車室3フロアの振動状態すなわち車両において生じ
る所定の振動の状態を判定する振動状態判定器51と、こ
の振動状態判定器51の出力信号に基づき第2演算部29の
フィードバックゲインGの大きさの変更調整を行うゲイ
ン調整器52とを備えた点にある。なお、この第2参考
において、第1および第2演算部28,29の構成、および
濾波部55の構成は前記第1参考例と同様であり、説明は
省略する。
【0069】図11および図12に示すように、この第2
例では、上記フロア振動検出器50および振動状態判定
器51により、環境状態検出手段45が構成され、この環境
状態検出手段45は、車室3フロアの振動すなわち車両に
おいて生じる所定の振動が定常状態であるか否かを検出
するように構成されている。また、上記ゲイン調整器52
により調整手段46が構成され、この選択手段46は上記環
境状態検出手段45の検出した車室3フロアの振動状態に
基づき、上記第2演算部29のフィードバックゲインGの
大きさを変更調整するように構成されている。
【0070】ここで、上記コントローラ16において行わ
れる信号処理動作のうち第2演算部29のフィードバック
ゲインGの大きさの変更調整のための動作について、図
13のフローチャートに基づいて説明する。まず、スター
ト後のステップT1において、フロア振動検出器50から
のフロア加速度信号pにより時刻nでの車室3フロアの
加速度p(n)を入力し、ステップT2では、振動状態
判定器51において今回の時刻nでのフロア加速度p
(n)と前回の時刻(n−1)でのフロア加速度p(n
−1)との差の絶対値によりフロア加速度の変化値Δp
=|p(n)−p(n−1)|を算出する。次のステッ
プT3で上記変化値Δpとその閾値Lpとの大小を比較
し、この判定がLp≦ΔpのNOのときには、車室3フ
ロアの振動状態の変化が大きくて車室3フロアの振動が
非定常状態であると判定し、ステップT4でカウンタk
を初期値Kに設定し、ステップT5で第2演算部29のフ
ィードバックゲインGを基準値G0に設定した後、終了
する。
【0071】一方、上記ステップT3でLp>ΔpのY
ESのときには、車室フロアの振動状態の変化が小さく
て車室3フロアの振動の状態が定常状態であると判定す
る。次いで、ステップT6で上記カウンタkがk=0に
なったか否かを判定し、この判定がk>0のYESのと
きには、ステップT7でカウンタkから「1」を引いて
k=k−1とした後ステップT5に進む。
【0072】以上の繰返しにより、上記ステップT6の
判定がk=0のNOになると、ステップT8で第2演算
部29のフィードバックゲインGを基準値G0よりも大き
い値G0×α(α>1)に変更した後、終了する。
【0073】よって、この第2参考例では、上記制御動
作のステップT1〜T3により、車室3フロアの振動p
の変化値Δpに基づいて車室3内の振動がどのような状
態であるかを間接的に検出するようにした環境状態検出
手段45の動作が示されている。
【0074】また、ステップT4〜T8により、上記環
境状態検出手段45の出力を受け、検出された車室3フロ
アの振動状態に応じてすなわち車室3フロアの振動が非
定常状態であると検出されたときには第2演算部29のフ
ィードバックゲインGを基準値G0に設定し、車室3フ
ロアの振動が定常状態であると検出されたときには、こ
の定常状態の検出時からカウンタkがk=K(初期値)
からk=0になるまでの所定時間Tが経過した後に、第
2演算部29のフィードバックゲインGを基準値G0より
も大きい値G0×αに変更するようにした調整手段46の
動作が示されている。
【0075】次に、上記第2参考例の作用について説明
する。車両の運転中は基本的に、エンジン4の点火信号
がコントローラ16に入力されると、そのエンジン回転周
期測定回路17でエンジン回転周期が測定される。また、
リファレンス信号発生器18でエンジン振動に対応するリ
ファレンス信号rが発生し、上記エンジン回転周期の信
号tおよびリファレンス信号rは制御演算部22に出力さ
れる。さらに、車室3内の各マイクロフォン10により車
室3の所定位置での振動が検出され、この各マイクロフ
ォン10の出力信号mも制御演算部22に入力される。制御
演算部22では、各マイクロフォン10により検出される振
動を低減させるための制御信号sが生成され、この制御
信号sは各スピーカ11に出力されて該スピーカ11により
振動が発生され、このスピーカ11からの振動と上記エン
ジン振動とが互いに打ち消し合い、このことで車室3内
の所定位置で各マイクロフォン10により検出される振動
が低減される。詳しくは、各マイクロフォン10の出力信
号mは低周波成分m1と高周波成分m2とに分けられ、
低周波成分m1は第1演算部28に、高周波成分m2は第
2演算部29にそれぞれ入力され、第1演算部28はマイク
ロフォン10が検出した振動のうち低周波数帯域にあるも
のが低減するように第1制御信号s1を生成して出力
し、第2演算部29はマイクロフォン10が検出した振動の
うち高周波数帯域にあるものが低減するように第2制御
信号s2を生成して出力する。
【0076】そして、上記コントローラ16では、図14に
示す如く、振動状態判定器51においてフロア振動検出器
50にて検出された車室3フロアの加速度の変化値Δpが
閾値Lpと比較されてフロアの振動状態が検出され、こ
のフロアの振動状態に応じて制御演算部22の第2演算部
29のフィードバックゲインGの大きさが調整される。す
なわち、車室3フロアの加速度の変化値Δpが閾値Lp
以上で車両において生じる振動の状態が非定常状態であ
ると判定されると、第2演算部29のフィードバックゲイ
ンGが基準値G0に設定される。この状態では、上記リ
ファレンス信号発生器18およびマイクロフォン10の各出
力信号を受けた第1演算部28により、マイクロフォン10
で検出される振動のうち低周波数帯域にあるものが低減
されるようにリファレンス信号rが加工されて第1制御
信号s1が生成され、第2演算部29により、マイクロフ
ォン10で検出される振動のうち高周波数帯域にあるもの
が低減されるように、各スピーカ11への振動エネルギー
が設定され、このスピーカ11への出力信号s2は各マイ
クロフォン10の出力信号m1、該マイクロフォン10と各
スピーカ11との伝達特性、および基準値G0に設定され
たフィードバックゲインGに基づいて補正されて第2制
御信号s2が生成される。この第1および第2演算部2
8,29からの制御信号s1,s2はスピーカ11に出力さ
れて該スピーカ11により振動が発生し、この振動とエン
ジン振動とが互いに打ち消し合い、このことでマイクロ
フォン10により検出される車室3内の所定位置での振動
が低減され、車両振動の低減効果が得られる。
【0077】このように車室3フロアの振動が非定常状
態であることから、車室3内の振動が非定常状態にある
と判断され制御の応答性が重視されるときには制御の応
答性の低い第2演算部29のフィードバックゲインGが基
準値G0すなわち低めに設定され、マイクロフォン10が
検出した振動のうち低周波数帯域にあるものを制御対象
として、制御の応答性の高い第1演算部28が主として作
動するので、車室3内の低周波数帯域にある振動の状態
の変化に伴う制御の応答性を確保しつつ、良好に振動低
減を図ることができる。
【0078】これに対し、エンジン回転周期の変化値Δ
pが閾値Lpよりも小さく、車室3フロアの振動の状態
が定常状態であると検出されると、その検出時からカウ
ンタkが初期値Kから「0」になって所定時間Tが経過
するまでは、第2演算部のフィードバックゲインGがそ
のまま基準値G0に設定されるが、所定時間Tの経過
後、第2演算部29のフィードバックゲインGが基準値G
0よりも大きい値G0×αに変化される。
【0079】このように車室3フロアの振動の状態が定
常状態であって、車室3内の振動がさほど変化しておら
ず、制御の応答性が重視されないと判断されるときは、
第2演算部29のフィードバックゲインGが大きい値に変
更されるため、演算量の増加を招くことなく車室3内の
振動の全体を良好に低減することができる。
【0080】したがって、この第2参考例では、車室3
フロアの振動の状態に基づき間接的に検出した車室3内
の振動の状態に応じて第2演算部29のフィードバックゲ
インGの大きさを調整して作動させるので、車室3内の
振動の状態に応じて第1および第2演算部28,29の長所
をいかして良好な振動低減を行うことができる。
【0081】なお、この第2参考例では、定常状態であ
るときの車室3フロアの振動の状態を、制御対象とする
車室3内の振動が定常状態になるという振動定常環境状
態として検出し、これにより第2演算部29のフィードバ
ックゲインGの大きさの変更調整を行っているともいえ
る。
【0082】次に、本発明の第実施例を説明する。な
お、この第実施例は、前記第2参考例と同様の構成を
有するので、以下前記第2参考例を示す図10乃至図12を
参照しながら説明する。
【0083】図12に示すようにこの第実施例の制御演
算部22は、前記第2参考例と同じく、フロア振動検出器
50からの検出信号pに基づき車室3フロアの振動状態を
判定する振動状態判定器51と、この振動状態判定器51の
出力信号に基づき第2演算部29のフィードバックゲイン
Gの大きさの変更調整を行うゲイン調整器52とを備えて
いる。この第実施例が前記第2参考例と異なるのは、
前記第2参考例では車室3フロアの振動状態が定常状態
であるか非定常状態であるかに応じてゲイン調整を行う
のに対し、この第実施例では車室3フロアの振動が増
大する状態であるか否かに応じてゲイン調整を行う点に
ある。
【0084】すなわち、この第実施例では、上記フロ
ア振動検出器50および振動状態判定器51により、環境状
態検出手段45が構成され、この環境状態検出手段45は、
車室3フロアの振動が増大する状態であるか否かを、検
出するように構成されている。また、上記ゲイン調整器
52により調整手段46が構成され、この調整手段46は上記
環境状態検出手段45が検出した車室3フロアの振動状態
に基づき、上記第2演算部29のフィードバックゲインG
の大きさを変更調整するように構成されている。
【0085】ここで、上記コントローラ16において行わ
れる信号処理動作のうち第2演算部29のフィードバック
ゲインGの大きさの変更調整のための動作について、図
15のフローチャートに基づいて説明する。まず、スター
ト後のステップU1において、フロア振動検出器50から
のフロア加速度信号pにより時刻nでの車室フロアの加
速度p(n)を入力し、ステップU2では、振動状態判
定器51において今回の時刻nでのフロア加速度p(n)
の絶対値|p|とその閾値Lpとの大小を比較し、この
判定が|p|≦LpのNOのときには、車室3フロアの
振動が増大する状態ではないと判定し、ステップU3で
カウンタkを初期値Kに設定し、ステップU4で第2演
算部29のフィードバックゲインGを基準値G0に設定し
た後、終了する。
【0086】一方、上記ステップU2で|p|>Δpの
YESのときには、車室フロアの振動が増大する状態で
あると判定してステップU5に進む。次いで、ステップ
U5で上記カウンタkがk=0になったか否かを判定
し、この判定がk>0のYESのときには、ステップU
7でカウンタkから「1」を引いてk=k−1とした後
ステップU4に進む。
【0087】以上の繰返しにより、上記ステップU5の
判定がk=0のNOになると、ステップU7で第2演算
部29のフィードバックゲインGを基準値G0よりも大き
い値G0×α(α>1)に変更した後、終了する。
【0088】よって、この第実施例では、上記制御動
作のステップU1〜U2により、車室フロアの振動pの
絶対値|p|に基づいて車室3内の振動がどのような状
態であるかを間接的に検出するようにした環境状態検出
手段45の動作が示されている。
【0089】また、ステップU3〜U7により、上記環
境状態検出手段45の出力を受け、検出された車室フロア
の振動状態すなわち車両において生じる所定の振動の状
態に応じて上記第2演算部29のフィードバックゲインG
の大きさを調整するようにした、詳しくは車室3フロア
の振動の状態が増大する状態でないと検出されたときに
は第2演算部29のフィードバックゲインGを基準値G0
に設定する一方、車室3フロアの振動の状態が増大する
状態であると検出されたときには、この検出時からカウ
ンタkがk=K(初期値)からk=0になるまでの所定
時間Tが経過した後に、第2演算部29のフィードバック
ゲインGを基準値G0よりも大きい値G0×αに変更する
ようにした調整手段46の動作が示されている。
【0090】次に、この第実施例の作用について説明
する。車両の運転中は基本的に、エンジン4の点火信号
がコントローラ16に入力されると、そのエンジン回転周
期測定回路17でエンジン回転周期が測定される。また、
リファレンス信号発生器18でエンジン振動に対応するリ
ファレンス信号rが発生し、上記エンジン回転周期の信
号tおよびリファレンス信号rは制御演算部22に出力さ
れる。さらに、車室3内の各マイクロフォン10により車
室3の所定位置での振動が検出され、この各マイクロフ
ォン10の出力信号mも制御演算部22に入力される。制御
演算部22では、各マイクロフォン10により検出される振
動を低減させるための制御信号sが生成され、この制御
信号sは各スピーカ11に出力されて該スピーカ11により
振動が発生され、このスピーカ11からの振動と上記エン
ジン振動とが互いに打ち消し合い、このことで車室3内
の所定位置で各マイクロフォン10により検出される振動
が低減される。詳しくは、各マイクロフォン10の出力信
号mは低周波成分m1と高周波成分m2とに分けられ、
低周波成分m1は第1演算部28に、高周波成分m2は第
2演算部29にそれぞれ入力され、第1演算部28はマイク
ロフォン10が検出した振動のうち低周波数帯域にあるも
のが低減するように第1制御信号s1を生成して出力
し、第2演算部29はマイクロフォン10が検出した振動の
うち高周波数帯域にあるものが低減するように第2制御
信号s2を生成して出力する。
【0091】そして、上記コントローラ16では、図16に
示す如く、振動状態判定器51においてフロア振動検出器
50にて検出された車室フロアの加速度pの絶対値|p|
が閾値Lpと比較されてフロアの振動状態が検出され、
このフロアの振動状態に応じて制御演算部22の第2演算
部29のフィードバックゲインGの大きさが調整される。
すなわち、車室フロアの加速度の絶対値|p|が閾値L
p以下で車室3フロアの振動が増大する状態でないと判
定されると、第2演算部29のフィードバックゲインGが
基準値G0に設定される。この状態では、上記リファレ
ンス信号発生器18およびマイクロフォン10の各出力信号
を受けた第1演算部28により、マイクロフォン10で検出
される振動のうち低周波数帯域にあるものが低減される
ようにリファレンス信号rが加工されて第1制御信号s
1が生成され、第2演算部29により、マイクロフォン10
で検出される振動のうち高周波数帯域にあるものが低減
されるように、各スピーカ11への振動エネルギーが設定
され、このスピーカ11への出力信号s2は各マイクロフ
ォン10の出力信号m1、該マイクロフォン10と各スピー
カ11との伝達特性、および基準値G0に設定されたフィ
ードバックゲインGに基づいて補正されて第2制御信号
s2が生成される。この第1および第2演算部28,29か
らの制御信号s1,s2はスピーカ11に出力されて該ス
ピーカ11により振動が発生し、この振動とエンジン振動
とが互いに打ち消し合い、このことでマイクロフォン10
により検出される車室3内の所定位置での振動が低減さ
れ、車両振動の低減効果が得られる。
【0092】このように車室3フロアの振動が増大する
状態にないため、制御対象とする車室3内の振動が略全
周波数帯域で増大する状態でないと判断されるとき、す
なわち、マイクロフォン10の検出した振動のうち特定の
振動成分が特に大きな振動レベルを有している状態のと
きには第1演算部28が主として作動するので、この特に
大きな振動レベルを有する特定の振動成分の存在する低
周波数帯域を第1演算部28の制御対象とすることによ
り、車室3内の振動の変化に伴う制御の応答性を確保し
つつ、良好な振動低減を行うことができる。
【0093】これに対し、車室フロアの加速度pの絶対
値|p|が閾値Lpよりも大きく、車室3フロアの振動
が増大する状態にあるため、制御対象とする車室3内の
振動が略全周波数帯域で増大する状態であると判断され
るときには、その検出時からカウンタkが初期値Kから
「0」になって所定時間Tが経過するまでは、第2演算
部29のフィードバックゲインGがそのまま基準値G0
設定されるが、所定時間Tの経過後、第2演算部29のフ
ィードバックゲインGが基準値Gよりも大きい値G0×
αに変更される。
【0094】このように車室3フロアの振動が増大する
状態であって、車室3内の振動が略全周波数帯域で増大
すると判断されるときは、第2演算部29のフィードバッ
クゲインGが大きい値に変更されるため、演算量の増加
を招くことなく車室3内の振動の全体を良好に低減する
ことができる。
【0095】したがって、この第実施例では、車室3
フロアの振動の状態に基づき間接的に検出した車室3内
の振動状態に応じて第2演算部29のフィードバックゲイ
ンGの大きさを調整して作動させるので、車室3内の振
動状態に応じて第1および第2演算部28,29の長所をい
かして良好な振動低減を行うことができる。
【0096】なお、この第実施例では、増大する状態
にあるときの車室3フロアの振動状態を、制御対象とす
る車室3内の振動が略全周波数帯域で増大するという振
動全域悪化環境状態として検出し、これにより制御の切
換えを行っているともいえる。
【0097】このように、この第1実施例では、フロア
振動検出器50により車室フロアの加速度を検出し、この
フロア加速度の絶対値|p|がどのような状態であるか
によって、車室3内の振動が略全周波数帯域で増大する
状態にあるか否かを判定しているといえるが、FFT(F
ast Fourier Transform)アナライザを用いて車室3内の
振動を周波数帯別に分析して検出することにより、車室
3内の振動が略全周波数帯域で増大する状態にあるか否
かをより直接的に検出するようにしてもよい。
【0098】また、車室3内の振動が略全周波数帯域で
増大する状態にあるか否かの判定は車両において搭載さ
れる電子機器等からの様々な情報に基づき間接的に行う
ことが可能である。以下、車両に搭載される種々の電子
機器等からの情報により、車室3内の振動が略全周波数
帯域で増大する状態か否かを間接的に検出するようにし
たものを、本発明の第実施例として説明する。図17は
本発明の第実施例に係る車両の振動低減装置のコント
ローラの構成を示すブロック図、および図18は図17に示
す制御演算部の構成を示すブロック図である。
【0099】この第実施例では、図17に示すように車
両に搭載された所定の電子機器60から所定の情報を情報
信号iとして検出し、この情報信号iに基づき、車室3
内の振動が略全周波数帯域で増大する状態か否かを間接
的に検出する振動状態検出判定器61が、図18に示すよう
に設けられている。また、通常は第2演算部29のフィー
ドバックゲインGを基準値G0に設定し、振動状態検出
判定器61が車室3内の振動が略全周波数帯域で増大する
状態を検出したときには、第2演算部29のフィードバッ
クゲインGを基準値G0よりも大きい値G0×αに変更す
るゲイン調整器62が設けられている。すなわち、この第
実施例では、上記振動状態検出判定器61により、車載
された所定の電子機器60からの所定の情報に基づき車室
3内の振動が略全周波数帯域で増大する状態か否かを間
接的に検出する環境状態検出手段45が構成され、上記ゲ
イン調整器62により、上記第2演算部29のフィードバッ
クゲインGの大きさを変更調整する調整手段46が構成さ
れている。なお、この第実施例における第1および第
2演算部28,29ならびに濾波部45の構成は、前記第1
例におけるそれらの構成と同様である。
【0100】具体的に上記電子機器61としてどのような
ものが考えられるか、およびその電子機器61からどのよ
うな情報を検出した際に、車室3内の振動が略全周波数
帯域で増大する状態であると判定するのかについて、以
下列挙する。
【0101】(1) 電子機器61がエンジンの電子制御を
行うECU(Electronic Control Unit)である場合 (i) ECUより、リーンバーン制御(理想空燃比よりリ
ーン領域での燃料噴射制御)作動時であるという情報を
検出したとき (ii)ECUより、EGR制御(Exhaust Gas Recirculati
on Control)作動時であるという情報を検出しとき (iii)ECUより、電子点火進角制御(ESA Control
;ESA:Electronic Spark Advance)作動時である
という情報を検出したとき (iv)ECUより、エンジン暖機後、空燃比フィードバッ
ク制御作動していない状態で、燃料噴射がされたという
情報を検出したとき (v) ECUより、エンジン暖機後、空燃比フィードバッ
ク制御が作動していない状態で、燃料噴射がカットされ
たという情報を検出したとき (vi)ECUより、パージ制御(フューエルタンク上部の
燃料ガスを吸着した後、エンジンに再度入れる制御)作
動時であるという情報を検出したとき (vii)ECUより、アイドル回転速度制御(ISC;Idl
e Speed Control)作動時であることを検出したとき (viii)ECUより、エンジンが高回転時であるという情
報を検出したとき (ix)ECUより、アクセルが全開であるという情報を検
出したとき (x) ECUより、エンジンブレーキの作動時であるとい
う情報を検出したとき (xi)ECUより、エンジンが高負荷状態であることを検
出したとき (xii)ECUより、ターボチャージャー作動時であるこ
とを検出したとき (xiii)ECUより、スーパーチャージャー作動時である
ことを検出したとき (xiv)ECUより、車両が走行時であることを検出した
とき。
【0102】(2) 電子機器61が電子式自動変速制御を行
うEATCU(Electronic AutomaticTransmission Cont
rol Unit)である場合 (i) EATCUより、EAT変速制御作動時であるとい
う情報を検出したとき (ii)EATCUより、EATロックアップ制御作動時で
あることを検出したとき (iii)EATCUより、EATスリップ制御(ロックア
ップの際、クラッチフェーシングとトルコンカバーとの
間のスリップの制御)作動時であることを検出したとき (iv)EATCUより、シフトレバーがパーキングレンジ
またはニュートラルレンジにあることを検出したとき。
【0103】(3) 電子機器61が、サスペンションの油圧
を電子制御するACSCU(Active Suspention Control
Unit)である場合 (i) ACSCUより、前輪が路面の突起を乗り越えたこ
とを検出したとき (ii)ACSCUより、車両が悪路を走行中であることを
検出したとき (iii)ACSCUより、車両がテンパータイヤを装着し
ていることを検出したとき。
【0104】(4) 電子機器61が、車両の4輪操舵を制御
する4WSCU(Four Wheel SteeringControl Unit)で
ある場合 (i) 4WSCUより、4輪操舵制御作動時であることを
検出したとき。
【0105】(5) 電子機器61が、車両のブレーキを電子
制御するABSCU(Anti-Lock BrakeSystem Control U
nit)である場合 (i) ABSCUより、同相転舵時であることを検出した
とき。
【0106】(6) 電子機器61が、車両の駆動輪の駆動力
を電子制御するTRCU(TractionControl Unit)であ
る場合 (i) TRCUより、トラクションコントロール作動時で
あることを検出したとき。
【0107】(7) 電子機器61が、車室内の空調を制御す
るACCU(Air Condition ControlUnit)である場合 (i) ACCUより、空調装置が作動していることを検出
したとき (ii)ACCUより、エンジン作動時、エンジン冷却水の
水温が低いことを検出したとき。
【0108】(8) 電子機器61が、人工衛星からの信号に
より車両に道路情報を提供するナビゲーションシステム
ユニット(NSU)である場合 (i) NSUより、車両が未舗装路(悪路)走行時やトン
ネル内走行時あるいは高地走行時であることを検出した
とき。
【0109】(9) 電子機器61が、道路と車両間との通信
により車両に道路情報を提供する路車間通信ユニットで
ある場合 (i) 路車間通信ユニットより、車両が未舗装道路(悪
路)走行時やトンネル内走行時あるいは高地走行時であ
ることを検出したとき。
【0110】(10)電子機器61が車外の明るさ等により車
両のランプの点灯、消灯等を制御するランプコントロー
ルユニットである場合 (i) ランプコントロールユニットより、車両のランプが
点灯し、車両がトンネル内走行時であることを検出した
とき。
【0111】(11)電子機器61が、車両のAV機器のコン
トロールユニット(AVCU)である場合 (i) AVCUより、AV機器のボリュームが大きいこと
を検出したとき。
【0112】(12)電子機器61が、車両の駆動方式の切換
制御等を行うTSCU(Torque SplitControl Unit)で
ある場合 (i) TSCUより、4輪駆動方式が選択されたことを検
出したとき。
【0113】以上、電子機器61の具体例、およびその電
子機器61からどのような情報を検出したときに、車室3
内の振動が略全周波数帯域で増大する状態であると判定
するかについて列挙したが、上記列挙したものに限定さ
れるものではない。例えば、ACSCU、TRCUまた
はABSCUによっても車両が悪路走行時であるという
情報を検出することができるなど、上記以外の検出方法
も考えられる。
【0114】この第実施例によれば、電子機器61から
の所定の情報信号iに基づき、車室3内の振動が略全周
波数帯域で増大する状態にないと判定されると、第2演
算部29のフィードバックゲインGは基準値G0に設定さ
れる。この状態では、上記リファレンス信号発生器18お
よびマイクロフォン10の各出力信号を受けた第1演算部
28により、マイクロフォン10で検出される振動のうち低
周波数帯域にあるものが低減されるようにリファレンス
信号rが加工されて第1制御信号s1が生成され、第2
演算部29により、マイクロフォン10で検出される振動の
うち高周波数帯域にあるものが低減されるように、各ス
ピーカ11への振動エネルギーが設定され、このスピーカ
11への出力信号s2は各マイクロフォン10の出力信号m
1、該マイクロフォン10と各スピーカ11との伝達特性、
および基準値G0に設定されたフィードバックゲインG
に基づいて補正されて第2制御信号s2が生成される。
この第1および第2演算部28,29からの制御信号s1,
s2はスピーカ11に出力されて該スピーカ11により振動
が発生し、この振動とエンジン振動とが互いに打ち消し
合い、このことでマイクロフォン10により検出される車
室3内の所定位置での振動が低減され、車両振動の低減
効果が得られる。
【0115】このように車室3内の振動が略全周波数帯
域で増大する状態にないとき、すなわちマイクロフォン
10の検出した振動のうち特定の振動成分が特に大きな振
動レベルを有している状態のときには第1演算部28が主
として作動するので、この特に大きな振動レベルを有し
ている特定の振動成分の存在する低周波数帯域を第1演
算部28の制御対象とすることにより、良好な振動低減効
果を確保することができる。
【0116】これに対し、車室3内の振動が略全周波数
帯域で増大する状態にあると検出されると、その検出時
からカウンタkが初期値Kから「0」になって所定時間
Tが経過するまでは、第2演算部29のフィードバックゲ
インGがそのまま基準値G0に設定されるが、所定時間
Tの経過後、第2演算部29のフィートバックゲインGが
基準値G0よりも大きい値G0×αに変更される。
【0117】このように車室3内の振動が略全周波数帯
域で増大する状態にあり、第1演算部28による特定周波
数帯域の振動の低減では十分な振動低減効果が得にくい
ときは、第2演算部29のフィードバックゲインGが大き
い値に変更されるため、演算量の増加を招くことなく車
室3内の振動の全体を良好に低減することができる。
【0118】したがって、この第実施例では、電子機
器61からの情報に基づき間接的に検出した車室3内の振
動状態に応じて第2演算部29のフィードバックゲインG
の大きさを調整して作動させるので、車室3内の振動状
態に応じて第1および第2演算部28,29の長所をいかし
て良好な振動低減を行うことができる。
【0119】次に、車室3内の振動の状態が略全周波数
帯域で増大する状態であるか否かを、演算手段の演算状
況がどのような状態であるかによって間接的に検出する
ようにした、本発明の第実施例を説明する。図19は本
発明の第実施例に係る車両の振動低減装置のコントロ
ーラの構成を示すブロック図、および図20は図19に示す
制御演算部の内部構成を示すブロック図である。
【0120】図19に示すように、この第実施例に係る
車両の振動低減装置のコントローラ16は、図4に示す前
記第1参考例のコントローラ16と比較して、アクセル開
度測定回路26および車速測定回路27を備えていない点お
よび図20に示す制御演算部22の内部構成が異なり、他の
構成は略同じである。図20に示すように制御演算部22
は、マイクロフォン10から制御演算部22に入力される振
動信号mの状態を、第1および第2演算部28,29の演算
状態を示すものとして検出する演算状態判定器71と、こ
の演算状態判定器71からの信号に基づき第1および第2
演算部28,29の演算状態(振動信号mの状態)に応じ
て、第2演算部29のフィードバックゲインGの大きさの
変更調整を行うゲイン調整器72とを備えている。また、
前記各参考例及び実施例では、マイクロフォン10からの
振動信号mを低周波成分m1と高周波成分m2とに分け
る濾波部55を備えているが、この第実施例ではこのよ
うな濾波部55は備えておらず、マイクロフォン10からの
振動信号mはそのまま第1演算部28および第2演算部29
へ入力される。すなわち、この第実施例では第1演算
部28の制御対象が、マイクロフォン10の検出した振動の
うち特定の振動成分とされ(そのためのリファレンス信
号rが生成される)、第2演算部29の制御対象は、マイ
クロフォン10の検出した振動の全てとされている。な
お、第1および第2演算部28,29の構成は前記第1参考
例と同様である。
【0121】この第実施例では、上記マイクロフォン
10および演算状態判定器71により環境状態検出手段45が
構成され、この環境状態検出手段45は、振動信号mの状
態を検出することにより、第1および第2演算手段28,
29の演算状況がどのような状態であるかを検出するよう
に、詳しくは振動信号mの状態を検出することにより、
車室3内の振動が略全周波数帯域で増大する状態である
か否かを、間接的に検出するように構成されている。ま
た、上記ゲイン調整器72により、選択手段46が構成され
ている。
【0122】ここで、上記コントローラ16において行わ
れる信号処理動作のうち第2演算部29のフィードバック
ゲインGの大きさの変更調整のための動作について、図
21のフローチャートに基づいて説明する。まず、スター
ト後のステップV1において、マイクロフォン10からの
振動信号mにより時刻nでの振動信号m(n)を算定
し、ステップV2では、今回の時刻nでの振動信号m
(n)と前回の時刻(n−1)での振動信号m(n−
1)との差の絶対値とにより振動信号mの変化値Δm=
|m(n)−m(n−1)|を算出する。次のステップ
V3で上記変化値Δmとその閾値Lmとの大小を比較
し、この判定がΔm≦LmのNOのときには、車室3内
の振動が略全周波数帯域で増大する状態ではないと判定
し、ステップV4でカウンタkを初期値Kに設定し、ス
テップV5で第2演算部29のフィードバックゲインGを
基準値G0に設定した後、終了する。
【0123】一方、上記ステップV3でLm>ΔmのY
ESのときには、車室3内の振動が略全周波数帯域で増
大する状態であると判定する。次いで、ステップV6で
上記カウンタkがk=0になったか否かを判定し、この
判定がk>0のYESのときには、ステップV7でカウ
ンタkから「1」を引いてk=k−1とした後ステップ
V5に進む。
【0124】以上の繰返しにより、上記ステップV6の
判定がk=0のNOになると、ステップV8で第2演算
部29のフィードバックゲインGを基準値G0よりも大き
い値G0×α(α>1)に変更にした後、終了する。
【0125】よって、この第実施例では、上記制御動
作のステップT1〜T3により、振動信号mの変化値Δ
mに基づいて車室3内の振動が略全周波数帯域で増大す
る状態か否かを間接的に検出するようにした環境状態検
出手段45の動作が示されている。
【0126】また、ステップT4〜T8により、上記環
境状態検出手段45の出力を受け、検出された車室3内の
振動状態に応じて通常は第2演算部29のフィードバック
ゲインGを基準値G0に設定してさせる一方、車室3内
の振動が略全周波数帯域で増大する状態が検出されたと
きには、その検出時からカウンタkがk=K(初期値)
からk=0になるまでの所定時間Tが経過した後に、第
2演算部29のフィードバックゲインGを基準値G0より
も大きい値G0×αに変更するようにした調整手段46の
動作が示されている。
【0127】次に、この第実施例の作用について説明
する。車両の運転中は基本的に、エンジン4の点火信号
がコントローラ16に入力されると、そのエンジン回転周
期測定回路17でエンジン回転周期が測定される。また、
リファレンス信号発生器18で車室3内の振動のうち特定
の振動成分に対応するリファレンス信号rが発生し、上
記エンジン回転周期の信号tおよびリファレンス信号r
は制御演算部22に出力される。さらに、車室3内の各マ
イクロフォン10により車室3の所定位置での振動が検出
され、この各マイクロフォン10の出力信号mも制御演算
部22に入力される。制御演算部22では、各マイクロフォ
ン10により検出される振動を低減させるための制御信号
sが生成され、この制御信号sは各スピーカ11に出力さ
れて該スピーカ11により振動が発生され、このスピーカ
11からの振動と上記エンジン振動とが互いに打ち消し合
い、このことで車室3内の所定位置で各マイクロフォン
10により検出される振動が低減される。詳しくは、第1
演算部28はマイクロフォン10が検出した振動のうち特定
の振動成分が低減するように第1制御振動s1を生成し
て出力し、第2演算部29はマイクロフォン10が検出した
振動の全体が低減するように第2制御振動s2を生成し
て出力する。
【0128】そして、上記コントローラ16では、図22に
示す如く、演算状態検出器71において振動信号mの変化
値Δmが閾値Lmと比較されて振動信号mの状態が検出
され、この振動信号mの状態に応じて制御演算部22の第
2演算部29のフィードバックゲインGの大きさが調整さ
れる。すなわち、振動信号mの変化値Δmが閾値Lm以
下で車室3内の振動が略全周波数帯域で増大する状態に
ないと判定されると、第2演算部29のフィードバックゲ
インGは基準値G0に設定される。この状態では、上記
リファレンス信号発生器18およびマイクロフォン10の各
出力信号を受けた第1演算部28が主として作動し、この
第1演算部28により、マイクロフォン10で検出される振
動のうち、特定の振動成分が低減されるようにリファレ
ンス信号rが加工されて制御信号s1が生成される。こ
の第1演算部28からの制御信号s1はスピーカ11に出力
されて該スピーカ11により振動が発生し、この振動とエ
ンジン振動とが互いに打ち消し合い、このことでマイク
ロフォン10により検出される車室3内の所定位置での振
動が低減され、車両振動の低減効果が得られる。
【0129】このように車室3内の振動が略全周波数帯
域で増大する状態にないとき、すなわちマイクロフォン
10の検出した振動のうち特定の振動成分が特に大きな振
動レベルを有している状態のときには第1演算部28が主
として作動するので、この特に大きな振動レベルを有し
ている特定の成分を低減することにより、良好な低減効
果を確保することができる。
【0130】これに対し、振動信号mの変化値Δmが閾
値Lmよりも大きく、車室3内の振動が略全周波数帯域
で増大する状態にあると検出されると、その検出時から
カウンタkが初期値Kから「0」になって所定時間Tが
経過するまでは、第2演算部29のフィードバックゲイン
Gがそのまま基準値G0に設定されるが、所定時間Tの
経過後、第2演算部29のフィードバックゲインGが基準
値G0よりも大きい値G0×αに変更される。
【0131】このように車室3内の振動が略全周波数帯
域で増大する状態にあり、第1演算部28による特定の振
動成分の低減のみでは十分な振動低減効果が得にくいと
きは、第2演算部29のフィードバックゲインGが大きい
値に変更されるため、演算量の増加を招くことなく車室
3内の振動の全体を良好に低減することができる。
【0132】したがって、この第実施例では、システ
ムの所定の環境としての振動信号mの状況から、車室3
内の振動状態を間接的に検出し、この車室3内の振動状
態に応じて第2演算部29のフィードバックゲインGの大
きさを変更調整して作動させるので、車室3内の振動状
態に応じて第1および第2演算部の長所をいかして良好
な振動低減を行うことができる。
【0133】以上、本発明による車両の振動低減装置の
参考例及び実施例を説明したが、本発明による車両の振
動低減装置は、かかる参考例及び実施例の具体的態様に
限定されるものではなく、種々の変更を行うことができ
る。
【0134】例えば、前記第1参考例では、車両の運転
状況がどのような状態であるか、詳しくは車両が加減速
走行状態にあるか定速走行状態にあるかに基づき、車室
3内の振動が定常状態であるか非定常状態であるかを間
接的に検出しているが、車室3内の振動の状態が定常状
態であるか否かを、各演算手段の演算状態を検出するこ
とにより間接的に判定することも可能である。具体的に
は、前記第1演算部28の適応フィルタ34の係数は、振動
が定常状態になるとあまり変化しなくなると考えられる
ので、適応フィルタ34の係数の変化状態を直接的または
間接的に検出して、適応フィルタ34係数が大きく変化す
る場合には第2演算部29のフィードバックゲインGを基
準値G0に設定し、係数があまり変化しなくなったら第
2演算部29のフィードバックゲインGを基準値G0より
も大きい値G0×αに変更するようにすることができ
る。
【0135】また、前記第1参考例では、エンジン回転
周期の変動により車両の運転状態を検出しているが、こ
の他、車速やアクセル開度等によっても検出することが
できる。
【0136】さらに、前記第1参考例乃至第実施例で
は、第1演算部28の制御対象を各マイクロフォン10が検
出した振動のうち低周波数帯域にあるものとし、第2演
算部29の制御対象を、各マイクロフォンが検出した振動
のうち高周波数帯域にあるものとするため、濾波部55を
構成していたが、このような低周波数帯域、高周波数帯
域という分けかたではなく、第1演算部28の制御対象が
中周波数帯域、第2演算部29の制御対象がそれ以外の低
および高周波数帯域となるように分けることも可能であ
る。その場合、濾波部55の構成は例えば図23に示すもの
となる。図23に示すようにこの濾波部55は、マイクロフ
ォン10からの振動信号mの中周波数成分を濾波するバン
ドパスフィルタ66と、振動信号mの低周波数成分を濾波
するローパスフィルタ67および振動信号mの高周波数成
分を濾波するハイパスフィルタ68を備えてなり、マイク
ロフォンからの振動信号mを特定の中周波数成分m1と
それ以外の周波数成分m2とに分けて、中周波数成分m
1を第1演算部28に出力し、それ以外の周波数成分m2
を第2演算部29に出力するように構成されている。この
ように濾波部55を構成することにより、制御対象となる
周波数帯域を適宜分けることが可能となる。
【0137】また、前記第実施例では、第1演算部28
の制御対象を、各マイクロフォン10が検出した振動のう
ち特定の振動成分とし、第2演算部29の制御対象を、各
マイクロフォン10が検出した振動の全体としているの
で、第1および第2演算部28,29の制御対象が一部重複
することになる。そこで、図24に示すような濾波部55
を、図20に示す制御演算部22内の第1および第2演算部
28,29の振動信号mの入力側に設けることにより、制御
対象を重複しないようにすることもできる。すなわち、
この濾波部55は、図24に示すように、通過周波数帯域を
変更することが可能な3個のトラッキングフィルタ76,
77,78を備えてなり、マイクロフォン10からの振動信号
mを、第1演算部28が制御対象とする特定の振動成分が
存在する周波数帯域の信号成分m1と、それ以外の周波
数帯域の信号成分m2とに分けるとともに、第1演算部
が制御対象とする振動成分の周波数が変化するのに対応
して、常時この制御対象とする特定の振動成分の存在す
る周波数帯域の振動成分m1が第1演算部28に出力され
るように、各トラッキグフィルタ76,77,78の通過周波
数帯域が連動して変化するように構成されている。この
ような構成の濾波部55を設けることにより、第1および
第2演算部28,29の制御対象が重複しないように、かつ
第1演算部28により、マイクロフォン10が検出した振動
のうち特定の振動成分を制御対象として、常時低減する
ことが可能となる。
【0138】また、前記各参考例及び実施例では、第2
演算部28を、本出願人が特願平4-32217号等で提案して
いる図7に示すような構成を有するフィードバック制御
方式のものとしているが、この第2演算部29を最近のH
∞制御理論により設計した最適フィードバック制御方式
のものに代えることも可能である。この場合、第2演算
部29の構成は図25に示すものとなる。図25は図7に対応
するもので、マイクロフォン10、スピーカ11および第2
演算部29により最適フィードバック制御系が構成される
ように、H∞制御理論に基づき制御器Kが設計される。
このような構成の第2演算部29を用いても、前述したの
と同様の振動低減制御を行うことが可能となる。
【0139】さらに、前記各参考例及び実施例では、車
両の振動源をエンジンとしているが、振動の周期情報に
よりリファレンス信号が得られるならば、その他の振
動、例えば排気振動を制御対象とすることができる。
【0140】さらにまた、前記各参考例及び実施例で
は、振動発生手段をスピーカ11としているが、これ以外
に、例えばエンジンマウントを積極的に加振すること
で、車両振動を低減するようにすることもできる。
【0141】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明による車両
の振動低減装置によれば、リファレンス信号発生手段か
らのリファレンス信号を逐次加工して第1制御信号を生
成し振動発生手段に出力するフィードフォワード的な制
御方式の第1演算手段と、振動検出手段の出力信号に基
づき第2制御信号を生成し振動発生手段に出力するフィ
ードバック的な制御方式の第2演算手段とを備えるとと
もに、第1演算手段の制御対象は限定する一方、第2演
算手段の制御対象は全体的となるように構成することに
より、第1および第2演算手段のそれぞれの特長をいか
しながら両者を併用できるので、システムの様々な環境
の変化に対応して良好な振動低減を行うことが可能とな
る。
【0142】また、システムの所定の環境の状態に応じ
て第2演算手段のゲインを変更する調整手段を備えたも
のによれば、第2演算手段による振動低減が効果的な状
態であるか否かに応じて、第2演算手段のゲインを大き
くしたり小さくしたりすることができるので、より効率
よく車両の振動低減を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一の構成を示すブロック図
【図2】本発明の他の構成を示すブロック図
【図3】本発明の第1参考例に係る車両の振動低減装置
の全体構成を示す概略図
【図4】図3に示すコントローラの構成を示すブロック
【図5】図4に示す制御演算部の構成を示すブロック図
【図6】LMSの適応アルゴリズムを用いた図5に示す
第1演算部の構成を示すブロック図
【図7】図5に示す第2演算部の構成を示すブロック図
【図8】図5に示す第2演算部のフィードバックゲイン
の大きさの変更調整のための動作を示すフローチャート
【図9】エンジン回転の変化に応じた第2演算部のゲイ
ンの変更調整状態を示すタイムチャート図
【図10】本発明の第2参考例に係る車両の振動低減装
置の全体構成を示す概略図
【図11】図10に示すコントローラの構成を示すブロッ
ク図
【図12】図11に示す制御演算部の構成を示すブロック
【図13】図12に示す第2演算部のフィードバックゲイ
ンの大きさの変更調整のための動作を示すフローチャー
ト図
【図14】フロア振動の変化に応じた第2演算部のゲイ
ン変更調整状態を示すタイムチャート図
【図15】本発明の第実施例に係る車両の振動低減装
置の第2演算部のフィードバックゲインの大きさの変更
調整のための動作を示すフローチャート図
【図16】フロア振動の大きさに応じた第2演算部のゲ
インの変更調整状態を示すタイムチャート図
【図17】本発明の第実施例に係る車両の振動低減装
置のコントローラの構成を示すブロック図
【図18】図17に示す制御演算部の構成を示すブロック
【図19】本発明の第実施例に係る車両の振動低減装
置のコントローラの構成を示すブロック図
【図20】図19に示す制御演算部の構成を示すブロック
【図21】図20に示す第2演算部のフィードバッグゲイ
ンの大きさの変更調整のための動作を示すフローチャー
ト図
【図22】マイクロフォンの振動検出信号の変化に応じ
た第2演算部のゲインの変更調整状態を示すタイムチャ
ート図
【図23】本発明の各参考例及び実施例に係る車両の振
動低減装置の制御演算部内に設けられる濾波部の他の構
成を示すブロック図
【図24】本発明の各参考例及び実施例に係る車両の振
動低減装置の制御演算部内に設けられる濾波部のその他
の構成を示すブロック図
【図25】本発明の各参考例及び実施例に係る車両の振
動低減装置の第2演算部の他の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1 車体 3 車室 4 エンジン(振動源) 10 マイクロフォン(振動検出手段) 11 スピーカ(振動発生手段) 16 コントローラ 17 エンジン回転周期測定回路 18 リファレンス信号発生器(リファレンス信号発
生手段) 22 制御演算部 28 第1演算部(第1演算手段) 29 第2演算部(第2演算手段) 31 デジタルフィルタ 34 適応フィルタ 41 加減速/定速判定器 42,52,62,72 ゲイン調整器 45 環境状態検出手段 46 調整手段 50 フロア振動検出器 51,61 振動状態判定器 55 濾波部 71 演算状態判定器 r リファレンス信号 s,s1,s2 制御信号
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 仙井 浩史 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (72)発明者 原田 真悟 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (72)発明者 塚原 裕 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−33625(JP,A) 特開 平2−306845(JP,A) 特開 平3−284098(JP,A) 特開 平3−50998(JP,A) 特開 平5−40482(JP,A) 特開 平5−127680(JP,A) 特開 平6−235439(JP,A) 特開 平6−167988(JP,A) 特開 平6−274181(JP,A) 特開 平6−274183(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/178 F01N 1/00 F16F 15/02 H03H 17/02 601

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両において生じる振動を制御対象とす
    るシステムを構成する車両の振動低減装置であって、 前記車両において周期性振動を生じる振動源の周期情報
    に基づくリファレンス信号を発生するリファレンス信号
    発生手段と、 車体の所定位置での振動を検出する振動検出手段と、 振動を発生する振動発生手段と、 前記リファレンス信号発生手段および振動検出手段の各
    出力信号を受け、該振動検出手段により検出される振動
    が低減されるように前記リファレンス信号発生手段から
    のリファレンス信号を加工して第1制御信号を生成し前
    記振動発生手段に出力する第1演算手段と、 前記振動検出手段の出力信号を受け、該出力信号に基づ
    き該振動検出手段により検出される振動が低減されるよ
    うに第2制御信号を生成し、前記振動発生手段に出力す
    る第2演算手段と、前記システムの所定の環境がどのような状態であるかを
    検出する環境状態検出手段と、 該環境状態検出手段の出力を受け、検出された前記所定
    の環境の状態に応じて前記第2演算手段のゲインを変更
    する調整手段と、 を備えてなり、 前記第1演算手段は、前記振動検出手段により検出され
    た振動のうち前記振動源から生じる周期性振動の特定の
    振動成分のみを制御対象とするように構成されていると
    ともに、 前記第2演算手段は、前記振動検出手段により検出され
    た振動の全体を制御対象とするように構成されており、 前記環境状態検出手段は、前記所定の環境が、前記車両
    において生じる振動が略全周波数帯域で増大するような
    振動全域悪化環境状態であるか否かを検出するものであ
    り、 前記調整手段は、前記環境状態検出手段により前記所定
    の環境が前記振動全域 悪化環境状態であることが検出さ
    れたときには前記第2演算手段のゲインを大きくするも
    のである ことを特徴とする車両の振動低減装置。
  2. 【請求項2】 車両において生じる振動を制御対象とす
    るシステムを構成する車両の振動低減装置であって、 前記車両において周期性振動を生じる振動源の周期情報
    に基づくリファレンス信号を発生するリファレンス信号
    発生手段と、 車体の所定位置での振動を検出する振動検出手段と、 振動を発生する振動発生手段と、 前記リファレンス信号発生手段および振動検出手段の各
    出力信号を受け、該振動検出手段により検出される振動
    が低減されるように前記リファレンス信号発生手段から
    のリファレンス信号を加工して第1制御信号を生成し前
    記振動発生手段に出力する第1演算手段と、 前記振動検出手段の出力信号を受け、該出力信号に基づ
    き該振動検出手段により検出される振動が低減されるよ
    うに第2制御信号を生成し、前記振動発生手段に出力す
    る第2演算手段と、前記システムの所定の環境がどのような状態であるかを
    検出する環境状態検出手段と、 該環境状態検出手段の出力を受け、検出された前記所定
    の環境の状態に応じて前記第2演算手段のゲインを変更
    する調整手段と、 を備えてなり、 前記第1演算手段は、前記振動検出手段により検出され
    た振動のうち特定の周波数帯域にあるものを制御対象と
    するように構成されているとともに、 前記第2演算手段は、前記振動検出手段により検出され
    た振動のうち前記特定の周波数帯域外にあるものを制御
    対象とするように構成されており、 前記環境状態検出手段は、前記所定の環境が、前記車両
    において生じる振動が略全周波数帯域で増大するような
    振動全域悪化環境状態であるか否かを検出するものであ
    り、 前記調整手段は、前記環境状態検出手段により前記所定
    の環境が前記振動全域悪化環境状態であることが検出さ
    れたときには前記第2演算手段のゲインを大きくするも
    のである ことを特徴とする車両の振動低減装置
  3. 【請求項3】 前記特定の周波数帯域が、低周波数帯域
    であることを特徴とする請求項2記載の車両の振動低減
    装置。
  4. 【請求項4】 前記特定の周波数帯域が、前記振動検出
    手段により検出された振動のうち前記振動源から生じる
    周期性振動の特定の振動成分が存在する、該特定の振動
    成分の周波数の変化に伴って変動する周波数帯域である
    ことを特徴とする請求項2記載の車両の振動低減装置。
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